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税収の差の累計

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Academic year: 2022

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都市開発・整備のための新たな財源調達・運営システムの実現可能性に関する研究 

         

 

春名 攻*・清水 雄太** 

By Mamoru HARUNA and Yuta SHIMIZU  

  1.はじめに 

現在、地方都市において、整備事業の立ち遅れ、財源の減少 等の問題が相乗し深刻化している。今後、地方分権化の流れか ら地方都市を取巻く関連構造も変化していくことが予想され、

各地方自治体に個性ある自立も求められている。これらの状況 を受け、都市の発展・積極的な都市整備のためには、新たな財 源調達方法の検討が必要であると考えられる。 

このような考え方に基づき、本研究では、新たな資金調達方 法として「市民参加型ファイナンシングシステム」を構想した。 

現在の地方都市では、地域住民にとって必要とされ る都市基盤整備、また教育環境の向上や雇用機会の創 出等、公共性が強く効果も期待できる都市整備事業を 計画していながら、財源不足という理由から積極的な 対応ができずに好機を逸し、実現が不可能になり都市 全体にとって損失を招くといった現状が多く見られ る。この「市民参加型ファイナンシングシステム」は、このよ うな迅速な対応が望まれる整備事業があった場合に、自治体と 市民及び地元企業等が計画面・資金面において事業参加・連携 することで好機を逸する事のない迅速な対応を実現すること を目的としたファイナンシングシステムである。その市民参加 型ファイナンシングシステムの概念図を図1−1に示す。

この「市民参加型ファイナンシングシステム」では地域住民 の資金投資の他に地権者の土地出資や、立地企業の人材派遣等、

多様な主体が連携し都市整備を行うことを構想している。今回 はその中の地域住民の資金面での事業参加に焦点を当てて検 討を進めることとした。 

そこで地域住民の事業参加方法として住民参加型市場公募 債に着目し、対象地滋賀県草津市において構想されている、JR  草津駅周辺商業公園整備事業の資金調達に適用し検討を行い、

その実現性を探ることとした。そして対象地における実証的検 討をふまえ、実現可能であると言えるならば、この新たな資金 調達方法が財政にとって本当に有効な資金調達と言えるのか、

また、このような資金調達方法が財政に対しどの程度影響があ るのかということについて、財政シミュレーション分析を通し て、その効果を分析した。 

さらに草津市以外の地域において草津市以外の地域におけ る検討を行う必要があると考え、滋賀県大津市及び滋賀県栗東 市においても検討・分析を行い、草津市を合わせた三市間にお いて比較検討を行った。 

                               

2.対象地滋賀県草津市における住民参加型市場公募債に   対する地域住民意識調査・検討 

対象地滋賀県草津市は近年急激に人口増加し都市化が進ん でいる地域であり、急激な成長を支える社会基盤整備が重要に なっている。また大規模都市・地域開発事業も複数計画されて おり、そのインパクトによってさらに大きく発展する可能性を 秘めている。 

本研究では、住民参加型市場公募債の実現可能性の検討のた め、JR 草津駅周辺商業公園整備事業において実現可能な資金調 達規模の把握するアンケート調査表を作成し、対象地域住民に キーワード:市民参加、財源・制度論 

正会員,工博,立命館大学理工学部環境システム工学科 

(〒525‑8577 草津市野路東 1‑1‑1,TEL 077‑561‑2736 FAX 077‑561‑2667) 

**学生員,立命館大学大学院理工学研究科環境社会工学専攻

1−1 市民参加型ファイナンシングシステムの概念図

個性的事業化・マネジメント構想

都市機能計画

開発地区デザイン

基盤機能計画

(土地利用計画)

都市開発構想 機能施設デザイン

民間施設

公共施設 共有施設

ファイナンシング構想

周辺施設 投資活動

財務活動

(含資金調達・償還)

経営活動 事業関連者全てが開発利益を享受することが出 事業関連者全てが開発利益を享受することが出 来るよう

来るように配慮に配慮することが重要である。することが重要である。

開発利益を享受するには開発プロジェクトに直接 開発利益を享受するには開発プロジェクトに直接 参加して内容を確認しておくことが必要である。

参加して内容を確認しておくことが必要である。

資金・知恵・労力を使って直接参加者となり機動 資金・知恵・労力を使って直接参加者となり機動 力があり柔軟な組織的対応を図るべきである。 

力があり柔軟な組織的対応を図るべきである。 

長期的なリスク回避を図りながら脱トレンド型の安 長期的なリスク回避を図りながら脱トレンド型の安 定的で大きな発展をめざすべきである。

定的で大きな発展をめざすべきである。

計画策定、事業化における

「直接投資・周辺投資」を通 して開発事業へ参加する。

(基盤整備投資を含む)

計画策定、事業化における「直接 投資」運営組織への「人材派遣」当、

中心的に開発事業へ参加する。

長期的展望にたった地域投資家、自 分たちの地域を守り永続的に発展さ せる立場からの支援的投資家、等々 の立場から開発事業へ参加する。

地元自治体

立地企業 関連主体

資金提供者

地権者 1.立地企業と重複 2.上記以外

移転立地企業は、自己の財産保 全・将来発展のためにも、積極 的投資と柔軟な変革を推進する。

主体3になるよう説得する。

あるいは事業が遅延しないよ うに出来る限りの手を打つ。

各関連主体の積極的事業参加姿勢の誘導

主要な各種都 市施設の混成

各種機能の混成 と多様な訪問者

確実で的確な財源調達・

配分・借金返済(償還)

ファイナンシング・シミュレーショ ファイナンシング・シミュレーショ ン分析による客観的 ン分析による客観的マネジメントマネジメント 情報

情報の獲得と公開型経営判断の獲得と公開型経営判断

可能性の追求 実現性の確保

Study on Realization Status of the New Financing System for the Urban Development Project Management under Participants of Related Citizens and Local Companies

(2)

対し、アンケートを実施した。このアンケートでは、既に発行 されている類似債券を参考にして利率・償還年数を組み合わせ 条件を決定、18 通りの債権を想定し、それぞれについての投資 意志の有無と投資可能額を質問した。 

アンケート調査の結果としてこのような目的の住民向けの 市場公募債があれば投資してもよいと答えた方が、全体の 64.7%であった。つまり、64%の人が投資に対し積極的な意識 を持っていることがわかった。この結果より草津市における市 民の事業参加意識は高く、市民参加型市場公募債による資金調 達の実現もある程度可能だと考えられる。詳しい調査結果の報 告は発表時に行う事とする。 

 

3.新たな資金調達方法の財政への効果・影響の実証的  分析・検討に用いるシミュレーションモデルの概要    次に本研究では、この住民参加型市場公募債による資金調達 と投資の行為が草津市に及ぼす影響を明確化するため、既往研 究において研究開発されている財政シミュレーションを用 いて、その影響・効果について分析・検討を行うこととし た。この財政シミュレーションは財政・経済・社会各セクタ ーと社会基盤整備との関係を中心に構築されている。財 政セクターは税収をもととした歳入と経常経費をもとと した歳出を中心に構築されている。また、社会セクター においては人口動態および労働力の流出入を中心に構築 されている、さらに経済セクターにおいては各産業活動 を捉えそれらを中心に構築している。シミュレーション モデルでは、これら各セクターの構成要素の変化によっ て、市町村が公共投資した後にフィードバックしてくる 社会基盤立地効果を捉えている。図3−1に以上の関係 をもとに構築した財政シミュレーションモデルの骨格を 示す。

4.草津市における住民参加型市場公募債による資金調達の  効果の実証的分析 

  先に述べた財政シミュレーションモデルを用いて、対象地 での JR 草津駅周辺商業公園整備事業の整備費用を、住民参加 型市場公募債の発行によって借り入れ、10 年間かけて分割して 返済することで資金調達しプロジェクトを実施した場合と、投 資的財源の中から単年度に一括で投資しプロジェクトを実施 した場合の地域への影響効果について、この対象プロジェクト を実行することによる財政への効果・影響を、投資後 20 年間 の税収と基盤整備量ストックについて比較検討を行うことと した。 

この JR 草津駅周辺商業公園整備事業を実施することが対象 地域へもたらす効果・影響は多方面に渡ると考えられる。 

まず地方自治体にとってはプロジェクト実施に伴う周辺環 境の向上による地域ポテンシャルの向上や固定資産税等によ る税収の増加が考えられる。 

さらにプロジェクトに参加する立地企業にとっては店舗の 集客力の増加、また消費者である地域住民にとっても生活環境 の向上等の効果・影響があると考えることができる。 

本研究の分析では、住民参加型市場公募債の償還期限は10 年に設定することとした。 

以下に示す図4−1、4−2、4−3は財政シミュレーショ ンモデルによって得られた分析結果である。 

         

         

                 

・民間ストック

・生産額

・雇用 地域経済セクター

・人口の増加・定住

・労働力の流出入 地域社会セクター 歳出

地方財政セクター

社会基盤 税収 交通流動

歳入 補助金

国・県

地方都市

近隣都市 国庫支出金

県支出金

基盤整備 大規模プロジェクト

行政サービス 行政による 直接雇用

人口移動の要因

立地環境 の改善

生活環境の 水準向上 ・固 雇用・所得・消費

人口および労働力の流出入 経済的動向

図3−1 財政シミュレーションモデ

基盤整備量ストック

475000000 500000000 525000000 550000000 575000000 600000000 625000000 650000000 675000000 700000000

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 年度 千円

プロ債基盤整備ストック 一括基盤整備ストック

図4−1 分析結果①−基盤整備量ストック

(3)

                                                                   

以上のシミュレーション結果を受けて考察を述べる。 

まず、基盤整備量ストックの差について、一括で投資した場 合と分割で事業実施した場合の比較検討を行った。図4−1で 示した事業実施後 20 年間での基盤整備量ストックをプロット したグラフでは、ほとんど差がないように見えるが、図4−2 で示した毎年度の差を並べたグラフをみると基盤整備ストッ ク量全体と比べてしまうほとんどないように見える差が見え てきた。またこれは、分割で投資を行った場合の基盤整備量か

ら一括で投資を行った場合の基盤整備量をひいたものである。

次にこの基盤整備ストックの差を示したグラフの考察を述べ る。 

初年度に投資する額に大きな差があるために二年目の基盤 整備ストックの差もやはり大きくなり、その後 10 年間は差が 徐々に小さくなる。しかしながら、それ以降も約 8000 万円の 差が出ていることから、住民参加型市場公募債のような債券を 発行し負担を多年度に振り分けることで、一括で投資するより も基盤整備ストックが増加するということが認められた。 

次に税収への影響に関する考察を述べる。図4−3に示した 税収の差は、分割で事業実施した場合の毎年度の税収から一括 で投資した場合の毎年度の税収を差し引いたものを累計した ものである。そのグラフを見てみると、投資後5 年目から税収 に差が出てきた。毎年の差を累計していくと投資後20年間で、

住民参加型市場公募債による資金調達を行ったほうが、約3 億 2000 万円もの税収増が見込めるという結果が得られた。 

これらの結果より、11 億円という税収全体からみたら わずかと感じられる財源でも、住民参加型市場公募債に よって資金調達し投資を行った場合、一括で投資を行っ た場合のような投資方法の違いにより、投資後 20 年間で 基盤整備ストックと税収を合わせ、4 億円もの差が生ま れると考えることができる。故に住民参加型市場公募債 による資金調達は財政にとって有用な資金調達手段であ ると考えることができる。 

 

5.市民参加型ファイナンシングシステムに対する住民意識の 地域間比較 

  次に草津市以外の地域における市民参加型ファイナンシン グシステムの実現可能性について検討を行うとために、大津市 において市民参加型ファイナンシングシステムに対する意識 調査を目的としたアンケート調査を行うこととした。 

 そのアンケート調査によって得られた結果を以下に示す。 

                 

   図5−1 大津市民の事業参加に対する意識  図4−2 分析結果②−基盤整備量ストックの比較

基盤整備ストックの差

0 100000 200000 300000 400000 500000 600000 700000 800000 900000 1000000

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18(年度)

図4−3 分析結果③−税収増分の累計

税収の差の累計

0 50000 100000 150000 200000 250000 300000 350000

4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 年度

(千円)

no 39%

yes 61%

yes no

図5−1 事業参加に対する意識割合 

(4)

                           

     図5−2 投資条件別の資金面での事業参加者割合   

 大津市で行ったアンケート調査の中で、都市整備事業に対し 地域住民の意見を取り入れる機会があれば参加したいと思う かという質問を行った結果、参加したいという答えが全体の6 1%であった。またその都市整備事業に対して資金面での事業 参加を行うかという質問に対しては、図5−2で示したように 国債と同程度の利息がつく場合は52%もの人が投資を考え てもよいという結果が得られた。さらに利息が無い場合でも2 7%、約3割の人々が投資してもよいと考えていることがわか った。 

 草津市で行ったアンケートでも似たような結果が得られて いたが、利息が無い場合については今回のアンケート調査で初 めて質問項目の中に入れたため、3割もの人々が投資してもよ いと考えているということは大変驚きであると同時に利息が 無くても資金調達を行うことができるのではないかという可 能性も見ることができた。 

 しかしながら、今回大津市で行ったアンケート調査では、JR 南草津駅周辺における複合商業公園施設構想という具体的な 事例を挙げて事業参加意思を尋ねた草津市で行ったアンケー トとは違い、対象地における具体的な都市整備事業の事例をあ げずに都市整備事業に対する事業参加意思を尋ねたため、対象 事業の内容を具体的にあげてもらわなければ答えづらいとい う指摘を多数受けた。よって今後の課題として対象地でのニー ズ把握を行い、具体的なプロジェクトを挙げた上でのアンケー ト調査を行う事とする。 

   

6.おわりに 

 本研究では、対象地である滋賀県南草津市において住 民参加型市場公募債による資金調達方法の実現可能性を 検討するため、アンケート調査を行い、その実現可能性 述べた。そして住民参加型市場公募債による資金調達が 財政へ与える影響を、財政シミュレーションモデルを用 いて実証的検討を行い、その有用性を述べることができ た。 

 さらに、その他の地域でも同様の資金調達方法が実現 できるかどうか検討するために、滋賀県大津市において 市民参加型ファイナンシングシステムに対する意識調査 を行い、その実現可能性を述べるために有意義な結果を 得ることができた。 

 しかしながらこの市民参加型ファイナンシングシステ ムは地域住民との協働や、行政参加に対する意識如何に よりまだまだ検討すべき点がある。 

よって、今後の課題としては、この住民参加型市場公 募債を用いることで、地域住民の事業参加・行政参加を 促す方法に関する検討を行う。さらに地域住民以外の関 連主体も参加・協働する事ができるような都市整備方策 の検討を行う事、そしてその運営も視野に入れた総合的 な市民参加型ファイナンシングシステムを構築するため にさらなる検討を行っていくこととする。 

   

参考文献   

1) 田平正則:地方公共支出の最適配分、多賀出版、2 003 

2) S・N・ネフツィ:ファイナンスへの数学[第二版]

−金融デリバティブの基礎−、朝倉書店、2001  3) 渡邉朋彦:都市整備事業のための効果的・効率的財

政計画に関する研究、2003 

5) まがいまさこ:株・投資信託・債券・外貨がわかる事 典、西東社、2003 

6) 総務省:地方財政白書、2002 

7) 草津市:草津市統計書、草津市企画部企画調整課、

2001. 

8) 草津市:草津市統計書、草津市企画部企画調整課、

2002. 

9) 草津市:草津市統計書、草津市企画部企画調整課、

2003  27

45 48 52

0 10 20 30 40 50 60

便

利息

参加割合(%)

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