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中国の都市部における社区についての実証的研究 —大連市をフィールドに— [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)中国の都市部における社区についての実証研究 ―大連市をフィールドに キーワード:社区、中間集団、単位、地域再組織化、社会化 発達・社会システム専攻 李 珊 1. 始めに. どの活動によって、 「社区」という地域機能集団が形成. 近年、「社区建設」(コミュニティづくり)事業が. されつつある。この地域機能集団は行政の末端組織=. 中国の都市部において盛んになるにつれ、「社区」(コ. 街道弁事処と住民組織=居民委員会を中心組織として. ミュニティ)という言葉は社会学上の学術用語から一. いる。この社区という概念は地域範域的な意味以外に、. 般住民の身近で使われるようになってきた。ニュース. 人々に対する集団的な福祉機能が求められ、地域集団. や新聞などマスコミの注目の話題から、都市企画・住. として認められつつある。社区の形成過程は地域社会. 宅建設の中心、大学生の就職先まで、社区が人々の日. の再組織化過程である。. 常生活の中に早くも馴染み、発展している。従来の生. 社区については多くの学者や現場の専門員によって. 活の質を評価する指標としては耐久消費物の所有、住. 論じられている。しかし、この「社区」を概念化する. まい、教育を受ける程度、人々の余暇の取り方などが. ことは非常に困難である。なぜならば、中国の各地に. あるが、それに加えて社区発展指標が新たな生活の質. おいてそれぞれの地域特徴に合わせた社区建設の実践. の指標となっている。特に社区における社区環境、社. があり、社区についての共通の枠組みはあるが、具体. 区治安、社区保障、社区服務、社区衛生、社区教育、. 的な形として統一されていない。これは中国だけでは. 社区文化、社区への住民参加、社区自治などの指標が. なく、他の国でも同じ情況が見られる。日本のコミュ. 揚げられている。一体、社区とは何か?本稿では、現. ニティを考えてみると、多くの地域では、校区がコミ. 代都市部における社区に限って、社区について考察す. ュニティの単位となっているが、神戸のような大震災. る。. の時にはボランティア救助団体によるコミュニティ復. 社区の形成及び発展は、78 年の改革開放をスタート. 興活動があり、また、伝統的住民組織である自治会や. ラインとして始まった社会変革の一環であり、マクロ. 町内会もコミュニティとして大きな役割を果たしてい. 的に言うと中国社会の近代化の一成果である。経済に. る。従って、コミュニティ、或いは共同体は一般用語. おける市場の開放、私有制の承認と、行政における地. になっていても具体的には極めて多様なものである。. 方分権、規制緩和等政府の政策と、近代社会の産業化、. その有様はさまざまであるが、基本的に、人々の参加. 都市化への急激的な発展が経済・政治領域における社. が不可欠である。中国の場合、従来の住民組織である. 会変動をもたらしたと同時に、社会体制の変動を促し. 居民委員会がその一つである。居民委員会とは、一方、. ている。それまでに旧体制によって支えられてきた社. 日本の町内会と同じく、日常生活においてごみの収集. 会の基礎集団=「単位」も崩壊しつつある。生産・生活・. 規則や、校区内のイベント活動を組織するような共同. 管理の機能を担ってきた単位集団の機能縮小によって、. 体組織であるが、他方、中国社会の独自な性格を持つ. 新たな機能集団が次々と現れている。社区は一つの機. ものである。それは行政の末端組織=街道弁事処から. 能集団として都市部で形成されてきた。80 年代からの. の指示を受け、地域内の治安・環境衛生等を維持する。. 「社区服務」(地域福祉)は住民自身による自発的参加. 街道弁事処は、都市社会における社区建設事業の中核. を伴っており、それが社区の発展を加速させた。90 年. 組織である。そこで、社区とは、一体どのような概念. 代都市部における住宅供給制度の改革に伴い、旧地域. といえるか、また、どのような機能を持つかに関する. 社会が解体し、新しい地域住宅区が次々と建設される。. 考察を本稿の目的とする。. それに加え、「社区建設」事業及び社会保障制度の改. 社区分析の枠組みとして中間集団論を用いる。社区. 革は、従来の地域近隣集団とみなされる「社区」が地. 集団形成の背景には社会主義中国の基礎構造(国家=. 域福祉の受け皿として位置付けられる。社区服務(地. 社会)の変動がある。それは経済の市場化をはじめと. 域福祉)及び社区建設(コミュニティづくり)事業な. した、社会の自由化と政治の民主化である。土台―上.

(2) 部構造という社会体制を維持してきた「単位」という. の必要性が迫られている。改革開放前に、単一な中間. 国家と個人間の媒介的機能を果たす集団が、社会・経. 集団として「単位」は中央政府(国家)―個人を主体と. 済・行政の領域における機能分化によって、専ら生産. して媒介的機能を発揮していた。改革開放以後、地方. 機能を持つ企業集団となりつつある。基礎社会集団で. 分権によって地方政府―個人という中間集団の媒介主. あった「単位」の崩壊と共に様々な機能集団が形成して. 体が形成している。国家と個人の間に様々な媒介的機. いる。社会における社会成員の個人化と原子化によっ. 能をもつ集団が現れている。そのため、社区は地域再. て、政府と個人の間に様々な媒介機能を持つ集団の形. 組織化の過程に出現する中間集団の一つであると指摘. 成が必要となってきている。全面的社会変動は様々な. できる。. 問題を引き起こしている。第三次産業の未発達状態に よる人々がサービスに対する要求と、急激な都市化の. 3. 社会の多元化過程における中間集団の多元化. もとにおける人々の生活の場への回復欲求、人口の少. 第2章では、単一的社会の中間集団だった「単位」の. 子高齢化と地域間人口移動の増加が、地域に根ざした. 機能構造変容を検討し、社区形成の必然性を論じた上. 福祉集団の形成を促している。そこで、地域再組織化. で、社区は地域再組織化の過程において形成される中. の過程において社区という地域福祉集団が形成されて. 間集団であり、この集団は社会の管理機能と保障機能. きた。そこで、コーンハウザーの中間集団論を取り入. をもつことを論じる。そこで、社区は地域福祉集団と. れ、地域基礎集団が「単位」から「社区」へという変容過. しての仮説を提出する。. 程を検討し、また機能的な考察を行う。. 単位集団は 50 年代に農業・工業など生産活動の「集. 本稿は地域社会の変容、都市化、産業化、人口構造. 団化」の結果である。全ての人が国家の下位集団の構. の変化等の社会変動による社会構造の変容過程、つま. 成員として位置付けられていた。この社会集団は産. り、地域社会の再組織化の過程において、福祉機能を. 業・商業・農業集団を含め、官公庁など行政機関や学. 担う社区集団に対する実証研究である。. 校など教育機関も包括されている。いわゆる職場組織 は、一括して「単位」と呼称している。. 2. 社区分析の枠組み―中間集団論. この単位集団の特徴は、①集団成員の全員及ぶその. 第1章では、社会主義中国における国家と個人の二. 家族に対する「ゆり篭から墓地までの福祉厚生制度」. 元化構造によって形成された社会基礎集団「単位」が. である。②諸成員が集団に対するアイデンティティ的. 中間集団として位置付けられる。この中間集団の機能. 帰属及び地域生活の完結圏意識である。単位集団は生. とは国家と個人と間に媒介的機能である。そのため、. 活共同体としての性格を持つのである。③社会におけ. 国家と社会との統合が達したのである。この体制は成. る移動が極めて制限されている社会において、単位集. 立した当時社会的資本を最大限に発揮できたため、大. 団はヒエラルキー的性格を持つのである。. きな社会発展を見せてきた。しかし、社会体制が安定. しかし、このような集団が存在する社会は厳重な問. することに従い、体制自体の弊端が現れている。平等. 題を抱えている。それは①都市と農村との二元化社会、. 的配分の原則による競争意識の欠如、市場に対する政. 或いは工業と農業との二元化発展。②第三次産業が抑. 府のコントロールの無力化、そして人々の生活の向上. えられた社会である。③都市化が遅れる社会である。. への欲求等の要因によって、78 年「改革・開放」とい. ④人々の自由な移動が制限された。このように一見で. う社会変革は始めた。それは様々な社会変動を引き起. は平均平等的な社会だが、実際は政府の権限の大きさ. こしている。社会の多元化、政治の分権化、個人の民. が個人の性格まで消し、極めて同一性を要求する一元. 衆化と経済の自由化による社会成員の個人化(原子化). 社会であった。. が進まれている。政府と諸個人との間に媒介的機能を. 1978 年、鄧小平による「改革・開放」政策はこのよ. 持つ中間集団の必要性が現れている。従来の地域共同. うな単一社会へ終止符を打った。その政策において、. 体としての「社区」(コミュニティ)が一つの地域機能. 国家・中央政府から地方政府・企業・勤労者への「権. 集団として形成されている。そこで、社区に対して分. 限の下放と利益の譲渡」が行われた。続いて 1992 年に. 析の枠組みとしてコーンハウザーの中間集団論を提出. 「社会主義市場経済」という名目で経済改革の第二弾. する。地域社会の変容過程に出現した地域社会再組織. が打ち出された。改革の重心は国有企業(単位)の改. 化の必要性及び、新たな社会管理・社会保障システム. 革と生産資料の非公有制改革である。単位の機能は経.

(3) 済・社会・行政上において縮小しつつある。その中に、. くり運動である。この事業は社区内全住民の自覚的参. 住宅制度の改革と社会保障制度の改革によって新たな. 加が必要である。公的地域社会開発事業として捉える。. 地域集団が形成する必要性は現れた。社区はこのよう. その他、社区組織である街道弁事処と居民委員会に. な社会的背景において形成した地域管理機能と福祉機. ついて説明し、また、中国における社区研究について. 能をもつ集団である。. 整理する。 本章において、以下のような論説が検証されている。. 4. 社区事業及び社区研究に関する考察. 社区は地域社会の再組織化の過程において強化されつ. 第3章では、先ず、社区という言葉の由来と概念に. つある福祉機能集団である。この集団の主体は地域一. ついて考察する。現代社会における社区の意味が社区. 般住民である。構造的に行政の下級組織と住民自治組. 服務と社区建設の事業によって一般化され、定着して. 織が中核である。. きた。そして、社区服務と社区建設事業に対する考察 を通じて、現代社会における社区の意味を検討し、ま. 5. たその概念について学術研究を文献的に整理し、社区 の地域福祉集団としての特徴を考察する。. 社区に対する実証研究―大連市をフィールドに 第 4 章においては、大連市の社区を例として、社区. の地域福祉的機能について検証する。. 社区服務とは行政によって正当化された地域生活体. まず、大連市社区の類型について帰納する。そして、. における住民間のインフォーマルな助け合いであり、. 社区組織である街道弁事処と居民委員会のそれぞれ 1. 行政による福祉と住民自身による福祉の両者を含む中. 例を挙げる。特に居民委員会のリーダーシップをもつ. 国の地域福祉サービス事業である。この事業は87 年に. 人が地域への自発的参加や福祉活動への提言等を通じ. 提出された。社区服務の内容は、特定の人々(高齢者、. て大きな役割を果たしていることを分かった。. 児童、障害者等)に対する福祉性服務、地域住民に対. 次に、街道が運営している福祉施設―社区老人ホー. 象とする公益性服務と営利性服務である。従って、福. ムについて考察する。高齢者福祉施設をその運営主体. 祉性、大衆性、地域性、サービス性といった特徴をも. の相違から三つの類型に分け、それぞれの類型につい. つのである。社区服務の役割は、単位体制の時に、地. て検討する。そこで、社区の福祉機能と経済機能に注. 域における企業の縦割りシステムを取って代わり、街. 目する。変革している中国社会においては、諸機能集. 道弁事処と居民委員会が中軸機関として、地域におけ. 団の出現は社会の多元化を反映する一方、機能上にま. る企業間の横的繋がりが形成されてきた。また、社区. た制限される点がある。従って、諸集団における機能. 服務は現在の失業問題及び就職難に対して、サービス. 分化がまた続くと予想される。つまり、行政による福. 業として就職の場を提供している。. 祉と福祉サービスの民営化との発展は社会分業の過程. 社区建設事業とは都市建設という大きな地域開発の. を示している。. 枠組みにおいて、住宅、環境、治安、福祉施設、文化、. そして、高齢者の自発的活動に対する考察を通じて、. 教育、体育など人々の生活の質を向上させるための、. 地域住民の自発的活動に対する社区組織の支援が明ら. コミュニティ・ディウェロップメントの運動である。. かである。そこで、福祉サービスの 2 つの供給圏が現. 1996 年に提出された。社区建設における社区行政は集. れ、中国の地域福祉の構図が見えてくる。それは行政. 団生活の場における環境整備として大きく機能してい. 側の福祉サービスと住民側の自発的福祉サービスの結. る。. 合である。社区が地域福祉の機能集団として成り立つ. 社区服務事業は地域福祉事業であり、都市部の地域. ことを示す。この場合、社区という地域集団の概念は. 共同体において住民の自発的相互扶助によって生活の. 空間的範域ではなく、人々の社区帰属感の拠り所とな. 質を向上させようとする運動である。政府の提唱によ. る組織である。. って全国範囲に展開されたが、その根源は地域共同体 を支える隣人愛、ボランティア的奉仕精神である。そ. 6. 中間集団の構図変容―失業者組織に対する考察. れに対して、社区建設は都市化の進むによって都市発. 第5章において、中間集団としての社区の仲介的機. 展の一環として取り上げられる。それは中国の都市化. 能について失業者の社会復帰を図った社区組織の形成. の急速な発展、人口の移動、地域共同体の崩壊、環境. 過程について考察し、社区集団のメカニズムを把握す. 問題などに対し、共生の思想に基づくコミュニティづ. ることを試みた。.

(4) その結果において、中国社会における権力の分権化 を指摘し、中間集団の分析図式を提出する。つまり、. の課題として提出できる。 また、地域福祉集団として定義されていた本稿では、. 地方自治体(市政府・区政府)への権限委譲により、. 社区に対する住民の地域への帰属感がいかがなもので. 新たな中間集団の構図が形成されている。中間集団を. あるかは緊急な課題となっている。その背景に、都市. 媒介とする主体は従来の中央政府と個人ではなく、地. 部への人口流入、単位社会の解体と住宅・社会保障制. 方行政政府と個人である。地方分権による「行政」と. 度の改革などによって人々が地域生活への復帰を要求. いう行為の意味変容を指摘する。その際、社区(街道). することである。そこで、社区という地域生活の場の. が地方自治体と個人の間に媒介的機能をもつのである。. 凝集性は都市開発にとっても、人々の生活にとっても. また、失業者組織の形成の過程についての考察から. 重要なポイントになる。. はその形成メカニズムにおいては注目しておきたい点. そして、多元化になりつつある社会において、家族. とは、従来行政における上下関係による政策決定の過. の形態は変化しつつある。地域社会―社区集団―家族. 程の取って代わり、地方自治体の権限拡大と共に、政. ―個人といった生活圏の中に、家族の形態変容が地域. 策決定における合理化の過程において、専門家の姿が. 集団の形成にいかなる影響を与えているかは課題とし. 現れている。そこで、中国社会における知識人の役割. て残っている。. 及び社会的位置の変容は非常に興味深い課題であるこ とを示している。社区組織の成立が社会の分権化、合 理化の過程を反映していると思われる。 7. 結論及び課題 結びにおいては,中国社会に対して権力構造論的な. 分析枠組みを用い、社会における分業と第三的空間の 拡大に従い、社区が地域福祉集団としての展望が見込 まれる。 そして、以下のような結論を提出する。中国社会に おける政治分権が中間集団=「単位」の機能分化をも たらす。この機能分化は「社区」という地域集団の形 成を促している。そして、社区の形成は中国における 地域福祉事業の展開を意味するものである。具体的に は、①地域福祉は行政による福祉サービスと住民によ る福祉サービスの結合である。②社区は行政性を持つ 経済実体である。その運営の過程に民間的資源が利用 されるため、人々の生活の質を向上させる社区服務が 第三次産業として取り上げられる。③社区の機能は社 会保障の機能と共に社会管理の機能を持つ。社会管理 の機能は社会保障制度に従い、社会保障の受け手にな る一部の住民(失業者、生活貧困者、障害者、外来人口 等)に限って行われている。 社区の発展は全体の社会変動の一部にすぎず、本稿 は極めて限定されている領域=中間集団の機能変容に ついての探索である。 今後の課題としては、まず、社区は一般的に言われ る「コミュニティ」という言語の概念を含む、地域行 政による地域開発の事業である点からは、社区集団の 福祉機能以外に、媒介的な諸機能に対する検討は今後.

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参照

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