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Measurement of Changes in Individual Consciousness Using Panel Data

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Academic year: 2021

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パネル・データを利用した個人の意識の変化の測定

小島 秀夫*・篠原 清夫**

(2013 年 11 月 26 日 受理)

Measurement of Changes in Individual Consciousness Using Panel Data

Hideo KOJIMA* and Sugao SHINOHARA **

(Received November 26, 2013)

問 題

 意識調査では個人の過去についての生活体験や経験について質問することがよくある。たとえば,

卒業目前の学生に対して「大学の授業は満足のいくものでしたか。それともあまり満足できません でしたか」といった質問や,調査対象者の母親が亡くなっている人に対して「あなたご自身はどの 程度介護・看病にかかわりましたか」といった質問が頻繁に使用されている。こうした過去の出来 事に対する回答は回顧的回答(retrospective responses)とよばれており,その信頼性が問題とさ れている(小島・篠原 2011)。回顧的回答の信頼性と同時に問題となるのは,時間が経過した場 合の同一の項目に対する個人の意識の変化である。たとえば,大学の授業満足に関しては卒業時点 と卒業後 10 年ではどのように個人の意識は変化しているのか。また,死亡した人に対する介護の 程度も半年前に母親が死亡した場合と,5 年前に母親が死亡している場合では回答結果が異なる可 能性が考えられる。母親が死亡した時点と 10 年経過した時点では介護の認知の内容が個人内で変 化している可能性が考えられる。こうした点についての研究の蓄積はあまりなされていない。本研 究の目的は,パネル・データを利用して,個人の意識の変化を測定することである。

データと方法

 その点を解明するためには,同一個人を対象とし,同一の調査項目を使用したパネル調査が必要 とされる。ここで使用されるパネル・データは教師の職業的社会化過程の解明を目的として実施さ れたものである。1984 年と 1986 年に茨城大学教育学部学生 1,024 人を対象に調査を実施し(学生 調査),その後 1991 年に第 1 回のパネル調査を実施し,第 2 回のパネル調査は 2011 年に実施され

茨城大学教育学部社会情報研究室(〒310-8512 茨城県水戸市文京2-1-1).

三育学院大学看護学部(〒298-0297 千葉県夷隅郡大多喜町久我原1500).

*

**

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た。ここで分析の対象とされるのは,学生調査・第1回パネル調査・第 2 回パネル調査のすべてに 回答した対象者 252 名である。サンプル数が小さくなっているのは,パネル調査独特の問題と同時 に,教師の職業的社会化の解明のために,教職についていない人は調査の対象とはならなかったた めである。

 分析に使用される項目は全部で 6 項目であり,満足度に関しては学生調査では「あなたは,次の ようなことがらについて,どの程度満足していますか。それとも不満ですか。それぞれについて答 えて下さい」と質問し,「自分の友人関係」や「自分の学歴」など 9 項目について,「おおいに満足」

「やや満足」「どうともいえない」「やや不満」「おおいに不満」の選択肢の中からそれぞれ1つを選 択してもらった。第 1 回パネル調査と第 2 回パネル調査では項目数を減らし 5 項目を設定した。質 問は第 1 回と第 2 回パネル調査では,「大学時代をふりかえってみて,あなたは,以下のそれぞれ について,どの程度満足していますか。それぞれについて,記入例にならって答えてください」と 質問し,「大学時代の友人関係」「大学の授業内容」「大学の教師との人間関係」「大学の施設・設備」

と「大学生活全般」の項目について,「おおいに満足」から「おおいに不満」の選択肢の中から1 つを選択してもらった。

 他の質問項目は教職に就いた時のリアリティ・ショックに関する質問であるが,この質問文の説 明は後述することとする。これらの回答は具体的にどのように変化しているのかを,単純集計の結 果とクロス表を分析することによって解明する。

分析結果

 満足度の変化

 友人関係などの満足度の結果が調査時点別に,表1に示されている。ここでは,分析の対象はす べての調査に回答してくれた人となっているために,パネル調査で問題とされるパネルの脱落によ るバイアスの問題はない。

 表 1 に示された結果より,ただちに明らかにされるのは「大学の施設・設備」に対する満足度以 外のすべての項目において,学生調査よりも第 1 回パネル調査,第 1 回パネル調査よりも第 2 回パ ネル調査において満足度が上昇していることである。「大学の施設・設備」満足度についても,学 生調査と第 1 回パネル調査の間では統計的に有意な差は観察されないが,第 1 回パネル調査と第2 回パネル調査,学生調査と第 2 回パネル調査の間では統計的に有意な差が観察される。こうした事 実は過去のある事象や経験に対する評価を測定するためには,現時点における評価を使用するのは 問題であるということを示すものである。たとえば「大学の友人関係」に関して,現時点で「おお いに満足」の比率が高いからといっても,学生時代も同様に満足度が高かったと推定することがで きないということである。

 では,なぜこのように時間が経過するとともに満足度が上昇しているのであろうか。時間が経過 するにつれて過去の記憶が曖昧になって,過去についての評価が不明確になり,その結果満足度が 上昇するということも考えられるが,われわれはこうした過去の体験や事象についての質問に対す る回答のプロセスには,選択的回答傾向が存在すると考えている。選択的回答傾向とは,現在の職業や

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社会的地位,個人が置かれている社会環境にとって合理的な情報のみを選択したり,過去の体験や 事象を現在の個人の状況にとって合理的・整合的になるように選択することをいう。この選択的回 答傾向とは仮説的な概念であるが,このように考えてよい根拠がある。「大学の施設・設備」満足 度は他の項目の満足度と比較して,比率はあまり上昇してはいない。これは大学の施設・設備といっ たものは客観的なものであり,回答者の選択的回答傾向の対象とはなりにくいためであると考えら れる。これに対して,この項目以外の項目は選択的回答傾向の対象となりやすいために,満足度が 上昇していると考えられよう。もし,大学を卒業後に個人の職業的地位が不安定であったり,社会 的地位が低下しているような場合には,選択的回答傾向の結果,過去の大学などでの経験などに対 する満足度は低下しているであろう。

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 パネル調査の利点を生かして今度は,各項目についての満足度の変化を分析してみることとする。

具体的には表 2 に示されたようなクロス表を作成することによって,一致率や上昇率を求めてみるこ ととする。一致率とは満足度に変化がなかった人々の比率であり,主対角線上の人数を全体で除した 値である。

 上昇率とは満足度が高くなった人々の人数を全体の人数で除した値である。表 2 では主対角線の左 下の人数がそれにあたる。低下率とは満足度が低下した人々の人数を全体で除した値であり,表 2 で は主対角線の右上の人数である。近接上昇率とは,たとえば満足度の変化を「やや満足」から「おお いに満足」のように1ランク上のカテゴリーに上昇させた人々の人数を満足度に変化があった人々の 合計数で除した値である。近接上昇率を求めるのは全体的に満足度が上昇していることと,表2に示 されているように,満足度の変化も近接するカテゴリーに変化しているためである。たとえば,「おお いに満足」から「おおいに不満」といったような極端な変化は観測されないのである。近接上昇率と 同じように近接下降率を求めることも可能であるが,満足度は低下するよりは上昇しているため,近 接下降率は求めなかった。ちなみに,表 2 において近接下降率と近接上昇率の合計は .92 となっている。

このことは満足度の変化は,近接するカテゴリーにおいて観察されるものであるということを意味し ている。

 表3に示された項目別の満足度の変化について簡単にみてみよう。学生調査から第 1 回パネル調査 にかけての満足度の変化についてみると,一致率は「大学の施設」において相対的に高く,「大学の教師」

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で相対的に低くなっている。上昇率は「大学の教師」において相対的に高く,「大学の施設」において 相対的に低くなっている。低下率は「大学の施設」で相対的に高く,「大学生活全般」で相対的に低く なっている。近接上昇率はどの項目においても .5 前後となっている。このことは,満足度を変化させ た人の約半数が 1 ランク上のカテゴリーに変化しているということを意味している。すなわち,満足 度の変化は急激なものであるというわけではないのである。

 第 1 回パネル調査から第 2 回パネル調査への変化についてみると,一致率は「大学の友人関係」と「大 学生活全般」において相対的に高くなり,「大学の施設」で相対的に低くなっている。上昇率について みると,相対的に比率が高い項目には「大学の施設」があり,反対に相対的に比率が低い項目には「大 学の友人関係」がある。低下率はどの項目においても .13 前後となっている。近隣上昇率に関しても項 目により大きな差は認められない。以上の分析より,全体的に満足度は上昇しているが,満足度の上 昇は漸進的なものであるといえる。

 この点をさらに明らかにするために,ここでは調査時期別の各項目を使用して潜在クラス分析 (latent class analysis) を実施してみることとする。潜在クラス分析についてここでは詳しく説明はしないが,

最近の潜在クラス分析の研究については Hagenarrs and McCutcheon(2002) などが参考になる。ここ では「大学の友人」を使用して,具体的な分析方法を説明しておくこととする。分析では満足度をカ テゴリカルな変数としてではなく,量的変数として取り扱うこととした。すなわち「おおいに満足」

に 5 点,「やや満足」に4点,「どうともいえない」「やや不満」と「おおいに不満」にそれぞれ3点,

2点,1点を与えて,学生調査,第1回パネル調査,第2回パネル調査の「大学の友人」を分析に投 入した。こうすることによって,時間の経過による満足度の変化を解明することができる。

 表4に最適モデル採用に至るまでのプロセスが示されているが,潜在クラス(G)が1から4の場合

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までを想定した。最適モデルは AIC が最小のものや,分類誤差が最小のものなどを規準として採用さ れるが,ここでは潜在クラス数が3つのモデルの適合度が良いことが明らかにされた。

 表5に分析結果が示されているが,表中の変数の数字は満足度の平均値である。潜在クラス1には 対象者の 50% が分類されるが,満足度は比較的高い集団であることが理解できる。潜在クラス 2 は全 体の 40% を構成しているが,満足度が中程度からやや上昇する集団である。潜在クラス3は満足度が 相対的に低い集団であり,全体の 10% がこの集団に分類される。この潜在クラス分析の結果でも,満 足度の差はあっても,満足度の変化は比較的安定しており,満足度が急激に変化しているクラスは検 出されていない。このことは,近接上昇率が高いことでも理解できる。ここで,それぞれの潜在クラ スについて満足度の最大値と最小値の差を求めてみると,クラス1では 0.8,クラス2では 0.58,クラ ス3では 1.24 となっており,満足度の変化は「どうともいえない」から「やや満足」を少し超える程 度であることが理解できる。他の残りの 4 項目についても潜在クラス分析を実施してみたところ,2 から4つのクラスに分類できることが明らかにされ,その中で平均値の差が最大であったものは「大 学の教師」満足で,大学時代に比較的高い満足度を示していた集団においてであり,最大と最小の差 が 1.89 であった。しかしながら,これは例外的なものであり,残りは最大と最小の差は 1 前後がほと んどであった。したがって,ここでも満足度は時間の経過とともに変化するが,その変化は急激に上 下するものではなく,漸進的に変化していることが確認される。

 ここまでは個別の満足度の変化をみてきた。全体的な満足度の関連はどのようなものなのであろう か。この点を明らかにするために,ここでは確証的因子分析 (confirmatory factor analysis) を使用し てみることとする。

 確証的因子分析は,今日では比較的一般的な分析方法となっていると思われるので,以下では簡単 に説明しておくこととする。確証的因子分析は図 1 のように図示されるが,ここでは説明を簡潔にす るために,観察変数を 6 個とし潜在変数(因子)を 3 個としてある。図 1 において□は調査で測定さ

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れた観察変数を示し,○は潜在変数を示している。λ は因子負荷量を示し,δ は誤差,φ は潜在変数 間の相関係数を示している。δ 間で両端に矢印のある線は誤差項間の相関係数を示している。この確 証的因子分析は共分散構造モデルの一部をなすものであるが,モデルの適合度は一度では通常決定さ れず,修正指数などを参考にして,モデルを修正することによって最終モデルが選択される。共分散 構造モデルの理解には,たとえば Bollen(1989) や Dunn,Everitt and Pickles(1993) などが役立つ。実際 の分析では「大学の友人関係」など各調査時点の 5 項目,合計 15 項目が観測変数として使用されている。

 表6に分析結果が示されているが,最初のモデルは誤差項間に相関のないモデルで =428.9df=87 GFI=.792 となり,データへの適合度は良くなかった。そこで漸次,誤差項間に相関があるモデルに改 良し,最終的なモデルでは =67.89 df=60 GFI=.967 となった。分析結果についてみると,どの調 査時点においても満足度を構成する主要な要因としては「大学生活一般」満足と「大学の友人関係」

満足となっていることに変わりはない。それぞれの観測変数への因子負荷量は,時間の経過とともに 大きくなっている。満足度の相関係数は学生調査と第1回パネル調査間では .530,学生調査と第2回 パネル調査では .460,第 1 回パネル調査と第 2 回パネル調査では .460 となっており,中程度の相関が あることが理解できる。

リアリティ・ショック

 ここでは,リアリティ・ショックについて検討してみることとする。リアリティ・ショックは調査 では「あなたが初めて教師になった時に,学生時代の頃考えていた教職についてのイメージと現実は どのようなものだったでしょうか。以下の中からあてはまるもの 1 つを選んで下さい」と質問し,選 択肢として「学生時代に予想していたものとあまりに違っていて,とまどいを感じた(とまどった)」,「少

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しはギャップを感じたが,大方は予想していた通りであった(少しギャップ)」と「ほとんど予想通り で,ギャップはほとんど感じなかった(予想通り)」を用意した。

 この質問の単純集計の結果が表 7 に示されているが,統計的に有意な差はなく回答は安定している ように思われる。しかしながら,この項目のクロス表を第 1 回パネル調査と第 2 回パネル調査間で作 成し, 2検定をしてみると L2=49.89 df=4 p=.000 で統計的に有意となり,関連があることが明らか にされた。ここでの一致率は .64 となっている。表8は主対角線を挟んで左下と右上の数値が対称になっ ているように思われる。そこで主対角線のセルを除去し,準独立モデル (quasi-independence model) をあてはめてみたところ,L2=0.07 df=1 p>0.1 となり,準独立モデルが成立していることが明らかに された。このことは,主対角線以外のセルの間の関連はないということを意味している。したがって,

この質問はどちらを使用しても,他の変数との関連では結果の数値に変化は現れるが,実質的な結論 は同じになるということを意味している。

要約と結論

 本研究の目的はパネル・データを使用して,個人の意識の変化を解明することであった。分析の結果,

以下のようなことが明らかにされた。

(1) 満足度は年数が経過するにつれて大きく変化していることが明らかにされた。しかしながら,そ うした変化も急激に意識が変化するというものではなく,漸進的に意識は変化していることが明 らかにされた。こうした結果は,過去の事象に対する満足度を推定する場合には,現在の満足度 で推定すると結論が大きく異なる可能性があることを意味している。

(2) リアリティ・ショックの質問については,第 1 回パネル調査と第 2 回パネル調査の単純集計結果 に差は認められなかった。しかしながら,第 1 回パネル調査と第 2 回パネル調査のクロス表の分

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析では統計的に有意な差が認められたが,主対角線のセルを除去した場合の準独立モデルが成立 しており,これらの変化はランダムであることが明らかにされた。

 最近我が国においてもパネル調査が実施されることが多くなりつつある。そうした調査を利用して,

回顧的回答の信頼性などの研究が進展することが期待できる。本研究もそうした目的のための研究で ある。

引用文献

Bollen, Kenneth A.. 1989. Structural Equations with Latent Variables, New York, Wiley.

Dunn, G., B. Everitt and A. Pickes. 1993. Modelling Covariances and Latent Variables Using EQS, London.

Hagenaars, Jacques A. and Allan L. McCutcheon(eds.). 2002. Applied Latent Class Analysis, Cambridge, Cambridge University Press.

小島秀夫・篠原清夫 .2011.「回顧的回答の安定性・不安定性について」『茨城大学教育学部紀要(人文・

社会科学,芸術)』60,pp.85-98.

附記:本研究は科学研究費(平成 22 年―平成 24 年度)によるものである。調査に御協力いただい た皆様に感謝申し上げます。また,本研究は第 85 回日本社会学会大会(2012 年 11 月 3 日・4 日札 幌学院大学)で発表したものを加筆・訂正したものである。

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