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アメリカ公教育における規制緩和と自由化の傾向

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(1)

長野工業高等専門学校 ・紀要第

3 1

( 1 9 9 7 ) 9 9

アメリカ公教育における規制緩和と自由化の傾向

中 村 護 光

RECENT TRENDS OF DEREGULATION AND PRIVATIZATION IN AMERICAN PUBLIC SCHOOLS

M o r i m i t s u   N A K A M U R A

Thea ppl i c at i o no fma r ke tt he o r yt opu bl i ci ns t i t ut i o nsi nt he1 9 9 0 Sha spo s e danumbe rofc ha l l e nge s t oAme r i c anpu bl i ce d uc a t i o n. Co mmun i t ydi s s a t i s f ac t i o nwi t ht heac a de mi cac hi e ve me ntofpu bl i cs c hool s t ud e nt s ,e s pe c i al l yi nl a r geAme r i c anc i t i e s ,ha sl e dt oapu bl i cout c r yt ha tmo no pol yof K ‑ 1 2e duc at i on byl o c algo ve r nme nt si shar mf ul .Suc hc r i t i c i s m i sappa r e nt ,f o re xampl e ,i nt her e c e ntde mandsf o r i nt e r ‑ di s t r i c ts c hoo lc hoi c ea ndvo uc he rs c ho olpr o gr ams . Si mi l a r l y, s i t e ・ ba s e dmana ge me ntt he o r yhasl e d t ot hede ve l o pme ntofane wt ypeofp ubl i cs c hoolknownast hec ha r t e rs c hool ,whi c h,al t ho ughho t l y de ba t e da mon ge d uc a t o r s ,ha ss uc c e s s f ul l yc l e a r e dt hel e ga lhur dl e so fma nys t at el e gi s l a t ur e s .Pe r ha ps , t hemo s tuni q uef o r m ofr e s t r uc t ur i nghasbe e nt hepr i vat i z at i o noft hel o c alpubl i cs c hools y s t e m i t s e l f t hr o u gha ne xpe r i me ntwhi c hal l owspr i va t ec o mpani e st oma na gep u bl i cs c ho ol s .Thi spa pe rf oc us e so n s uc hc hal l e n ge st oAme r i c a npu bl i ce d u ca t i o ni n1 9 9 5andco ns i de r st he i re f fe c t so nf ut ur ee d uc at i o n.

キーワー ド:

Choi

c

e,Pr i vat i zat i on,Vouc he r ,Char t e rs chool

1 .は じ め に

アメ リカ合衆国は,公教育が抱 える様々な問題 に 近年 どの よ うな教育政策 を持 って対処 しよ うとして いるのだろ うか. 1 99 0 年代 に入 り,特 に 1 9 94 年 1 1 月 の中間選挙 における共和党の勝利が弾み とな り,公 教育 のシステムその ものの縮小を図 って,連邦政府 か ら州へ,州か ら学校 区 ( 地方教育委員会)へ,学 校 区か ら学校 へ と,各々が持 つ権 限 の多 くを よ り s i t e ( 学校現場) に近づ け,委譲 しよ うとす る動 き が顕著 となった. この潮流の中で,学校 区の持つ カ リキ ュラム,教職員雇用 ・解雇,規律 に関す る権限 を現場 に下 ろして校長に委任す る s i t e・ bas ed man‑

age me nt ( 現場 管理主義) は加速 し,加 えて c har ‑ t e rs c hool s の誕生 を見 た. また,公教育 の教育独

占は有害であるとの考 えは,公教育の中の al t er na・

t i ve s ( 代 替 教育)の存在感 を強 め,同時 に publ i c s c hoolc hoi c e ( 公立学校 の 自由選択)を広 く認 知 させ ることとなった.公教育 の中にも選択の機会が I1 9 9 6

年 8

3

日日本学校教育学会第11回大会 にて口頭発表 日 一般科教授

原稿受付

1 9 9 7

7

3 1

なければ,公立学校 の主体的改善努力 は期待 で きず, 公立 か ら私立‑の生徒の流出は続 き,低迷す る学力 問題 は未解決のままであろ うとの現状分析 に基づ く 市場原理の導入である.更 に徹底 した競争原理 の追 求 は,本来学校 区か ら各学校 に向け られ るはず の教 育予算を学齢期 の子 どもを持つ親 に一律 に vouc he r

( 教育奨学金交換券)の形で交付 し,通学校 への授 業料 に充 てさせ,公立私立 を問わない学校 の選択 を 教 育 "消 質 者"で あ る 親 に ま か せ る voucher s c hoolc hoi c e を進行 させた.そ して究 極 は,公教 育 の pr i vat i z at i on ( 民 間委 託)で あ る.公 共 サ ー ビスに対す る不満,都市部での教育の質 の低下 の対 応策 として,個々の学校 はおろか,学校 区の経営 ま で も私企業 に委託す る考 えである.

1 99 5 年 におけ る合衆 国教育界 で の 自由化指 向 と pr i vat i zat i o n の実験 を考察 してみた.

2. より小 さい政府へ

2‑ 1 国の段階で :議会での共和党 の優勢 は,逮 邦政府が持つ権 限を更 に縮小 ・制限 し,州 に権限 を 委譲 し,州 の裁量 にまかせ よ うとの動 きを活発化 さ せた.また州議会 においても同様,州 か ら学校 区‑

の権限委譲の動 きが加速 された. A Nat i onatRi s k

(2)

の報告書が出 されて以来 これ までは国家 ・州主導型 学校改革が基調 にあ り,州では法律 による厳 しい卒 業要件を設 け, よ り多 くの生徒がアカデ ミックな教 科 目を学習す ることをめ ざす厳格 なカ リキ ュラム化 への教育政策が進め られてきた.その最終段階 と言 うべ きものが,専門家が中心 となった主要基礎科 目 の全国 カ リキ ュラムの基準設定であ り,全国学力 テ ス トへの道 を開 き,連邦政府主導の学校改革 を促進 す ることであった. しか し,共和党 の教育政策 は, その よ うな連邦政府 のイニシアチブを排除 し,規制 緩和 と地方分権 をめ ざす全 く対照的 なものである.

共和党 は,小 さな政府,個人 の自由,予算 の効率化, pu bl i cac c o un t a bi l i t y ( 納税者 に向 けた教育提供者

の責任制) を政策の柱 とし,学校が,教育 の " 消費 者" によ り素早 い対応 を可能 とす る改革が必要 であ ることを強調 した.共和党の有力 なシンクタンクで ある t heHe r i t a geFo u nda t i o n は小 さな政府実現 の ため,次の提案 を公表 した.

0

連邦教育局 の機能 の再評価 と停止. 5 年以 内に廃 止 をめざ し,予算 と責任権限を州へ委譲す ること.

O TheGoa l s 2 0 0 0: Ed uc a t eAme r i c aAc t の条項 の大多数を廃止す ること.

州か ら自主的 に提出 される州 のカ リキ ュラムの基 準 と評価案 を承認す る機関 t heNa t i o nalEdu c a t i o n St a nda r ds a nd l mpr o ve me ntCo u n c i l 及 び ,t he Na t i o nalEdu c a t i on Goa l sPa n e l ,t heNa t i o na l Ski l l sSt a nda r dsBoa r d の廃止 もこの案 の中に入 っ ている.

2‑2 州段階で :

( 1 ) 教育法規 の全面的見直 しの動 き

共和党 の小 さな政府 の理念を受けて,幾つかの州 では,現行法 を見直す動 きが始 まった. Ca l i f o r ni a 州 では ,1 9 9 5 年 1 月 に Wi l s o n 知事 が 1 9 9 7 年 までに 州 のすべての教育法を見直す よ う州議会 に求めた.

Mi c hi ga n 州では ,Engl e r 知事 が,州 の現行 の学校 法規 を廃止 し,新 しい法規 を作 ることを宣言 した.

これ は Ca l i f o r ni a 州知事 と同様 に教育 に関す る権 限の分権化 をめ ざす ものであ り,そのためにはゼ ロ か らスター トす ることが最良 との判断に よるもので あ る. またテキサスで も ,Bus h 知事 は州 の教育法 規 の見直 しと 1 9 9 4 年の選挙公約 である学校 区に独 自 性 とよ り自由な教育 を可能 とさせ る ho me ‑ r ul ee d u‑

c a t i o ndi s t r i c t s の考 えを推進す る決意 を表明 した.

( 2 ) 州教育局 の再編成及 び縮小 の動 き

TheNa t i o nalAs s o c i a t i o no fSt a t eBo a r dso f Ed u c a t i o n の調査 では ,1 9 9 5 年 においては ,3 0 州が 教育局 の再編成や縮小 を検討中であ った. また ,1 0

以上の州の議会 では,州教育委員会廃止の提案が検 討 された. これ は,州政府 の介入 をな くし,教育政 策 の決定権限を学校 区へ委譲 しよ うとす る共和党優 位の政治的な流れを反映 した もの といえる. Nor t h Ca r o l i n a 州 は,現在 の教育局 の規 模 を半分 に縮 少 す る大規模 な再編成計画を立案 した.同様 な動 きを 見せた州には, この他に Ne w Yo r k, Ca l i f o r ni a , Fl o r i da,Ge o r gi a ,Al a ba ma,Te nne s s e e ,Mi c hi ga n , No r t hDa ko t a,Al a s ka の諸州があった.

3. Chart ers c hool s ( チャーター ス クール)の動 き

Char t e rs c ho o l s は,教育政策上,最近 では最 も 急成長 の実験 であると言 える. この種の学校 の設立 趣 旨は,親 に公教育 システムの代替 を提供 し,同時 に制度 のシ ェイプア ップを図 ることにあ る. Cha r ‑ t e rs c ho ol は公立学校 であるとの位置づけに よ り, 予算は生徒一人当た りでは学校区が通常の公立学校

‑支出す る額 とほぼ同額が保証 され,在籍生徒数 に 応 じて積算 され る. しか し,通常 の公立学校 と違 っ て学校 区か ら独立 した管理運営が行われ,公立学校 を規制す る州及 び学校区の規則 のほとんどが免除 さ れ る. Cha r t e r とは,学校 を開校 す る人々 と c ha r ‑ t e r 認可の権限を持つ公的機関 との間の学校運営 の 基本事項 に関す る契約 を言 う. この c ha r t e r には, どのよ うに学校が運営 され るか, どのよ うな教育 目 標 を持 ち具体的に何が教授 され,その評価 は どの よ うに行われ るのか等が明記 され る. Cha r t e rs c hoo l の認可 を受けた学校 は,その c ha r t e r で約束 した成 果 を上 げ うる限 り ,c ha r t e rs c hoo l の特権 は維持 さ れ,他校 と異なる独 自の学校運営の継続が可能であ る. しか し ,c ha r t e r の記載事項 の不履行,業績不 振 の場 合 は ,c ha r t e r の 取 り消 し とい う形 で の a c c o un t a bi l i t y が 課 せ ら れ る. し か し ,c ha r t e r s c ho o l は,あ くまで も公教育 の枠 内 に留 ま ってい

る ことか ら ,pr i v a t es c hoo lvo u c he r s ほ ど極端 で

急進的改革でない,ゆ るやか な al t e r na t i v e として

且 られ,次第 に多 く州で支持 され,認知 され るよ う

にな って きてい る. 1 9 9 1 年 に Mi n ne s o t a 州 で最初

に c ha r t e rs c hool 法が通過 して以来 ,1 9 9 5 年 4 月現

1)

,1 2 州 が これ らの独 立 した公 立 学校 を認 め る

c ha r t e rs c hoo l 法 を通過 させ た.全 国で は 2 0 0 以上

の c ha r t e rs c ho o l s が仮認可 を受 け,その うちお よ

そ 1 1 0 校 が この時点 で開校 してい る. また, これ を

サポー トす る連邦政府の助成 プログラムも承認 され

た. 1 9 9 4 年 1 0 月 の議 会 通 過 で 再 更 新 され た The

El e me n t a r ya ndSe c o n da r yEd u c a t i o nA c tでは,

(3)

アメリカ公教育における規制緩和と自由化の傾向 今回新た に p u bl i c s c ho o l c ho i c e と共 に c h a r t e r

s c ho o l sde mo ns t r a t i o np r o gr a m が設 けられて予算 面で も補助対象 となった.

これ ま で の 州 議 会 の動 向 を 見 る と ,c ha r t e r s c hoo l s を認可 している州の法律 は一律ではな く, そ の 認 可 姿 勢 に は 強 弱 が あ る.州 が c ha r t e r s c ho o l s に対 して積極的法律 を持つ場合 は,認可 さ れる c har t e rs c ho ol s の数 も多 く,州や学校 区の法 規則のほとんどが免除 されてお り, また学校 区当局 の他にも c ha r t e rs c ho ol の認可権限を持つ機関が定 められている.一方,慎重な法律を持つ場合 は,公 立学校 にのみ c ha r t e rs c ho ol となる資格が認められ ていた り,学校 区 当局 のみ が認 可権 限 を持 つ.

Ca l i f o r ni a 州の法律 は,1 9 92 年 に施行 されたが,州 全体で1 00 校 までの c har t e rs c ho ol s の認可枠を持ち, 1 9 9 5 年 4 月現在でおよそ8 0 校が許可 されている積極 的法律 に属 す る もので あ る.一 方 ,Wyo m in g の 1 9 9 5 年 の新 法 は個 人 が 学 校 区 の学 校 を c ha r t e r s c hoo l s に転換す る認可 申請がで きることを認めて

はいるが ,c ha r t e rs c hoo l の対象 となる学校の教員 の 50%以上の署名を必要 としてお り,慎重 な法律 に 属す ると言 える.

Cha r t e rs c ho o l s が よ り浸透す るにつれ,公立学 校 としての c ha r t e rs c ho o l s を疑問視す る声 も強 ま った. Cha r t e rs c ho o l s が ac c o u nt a bi l i t y を欠 き, 家庭が裕福で学力の優れた特権的生徒を対象 とし, 公教育に二本立ての選別のシステムを作 る恐れがあ るとす る当初 か らの批判論 で あ る. しか し ,The Edu c a t i o nCo mmi s s i o no ft heSt at e s

1 9 95

4 月 現在 で 7 つ の州 の1 1 0 校 ( 27, 5 0 0 名在籍)の p u bl i c c ha r t e rs c ho ol s を対象 とした調査 の結果 は,その 懸念を打 ち消す ものである.回答のあった半数の学 校はかえって低位性,問題を抱 えた生徒が主 として 対象であ り,才能 ある生徒 と‑ 答 えた ものは1 / 3 であ った. この他 に大多数の c ha r t e rs c ho o l s は小規模 で,平均生徒数は 2 87 名であること,調査対象の2 / 3 の学校は学校区を越 えて通学 して くる生徒を受け入 れていることもわかった.また c ha r t e r に盛 られた 学習面での最 も多い目標 は総合 ・合科的科 目編成の カ リキ3 .ラムであ り,次にテクノpジー,基礎基本 の確立であった.

Cha r t e r の推進者 は,公教育の真価 を認めなが ら も,その欠陥に危機意識を抱 き,多 くが真 の改革 に は大胆な変革 とそれな りの リスクが必要であると考 えている. Cha r t e rs c ho o l s は反公立学校 とい うよ り,子 どもを中心 とし,公教育の中の選択拡大を求 め真の a l t e r na t i v e を提供す ることを運動 の趣 旨と

1 01 している. Ch a r t e rs c hoo l は,現行の公教育にとっ てかあるものでは く,教育環境の向上に拍車をかけ るために必要な生産的緊張を提供す る手段 と言 える.

このため,合衆国の 2 大教育者 団体 の一 つで あ る t he Na t i o na lEd uc a t i o n As s o c i a t i o n も c ha r t e r s c hoo l s の条件的支持 を打 ち出 し , 6 つ の州 ( Ar ・ i z o na,Ca l i f o r ni a,Col o r a do ,Ge o r gi a,Ha wa i i , Wi s c o ns i n) に於 い て,会 員 が c ha r t e rs c hool s を 開校す る場合の援助計画,及 び c ha r t e rs c hool s が 学習の向上 につながる可能性 を研究す る 5 ケ年計画 をスター トさせている.

4. Vouc her s の動 き

Sc ho olc ho i c e の 目的 は K‑1 2( 幼 稚 園 か ら 1 2 学 年に至る)教育 に関す る公教育の独占を破 り,教育 分野での競争原理を促す ことによ り教育内容の改善, 質の向上 を図ることにある.特に,都市部学校 区の 住 民 の公 教 育 の現 状 に対 す る慢 性 的 な不 満 は vo uc he r の使用 を含 んだ c ho i c e プ ログラムへ の支 持 をマイ ノ リテ ィーの間 に広 げてい る. Vo uc he r s c hoo lc hoi c e は,公的補助 を受 けて,貧 しい者 に

も豊かな者同様 に私学教育選択の機会を与 え,平等 な教育を受 ける機会を提供 しようとす る趣 旨である が, また同時に,教育経費の節減や,教育費の投資 効率を高め ることもそのね らいのひとつである.

1 99 0 年代 に入 り,州が助成す る vo u c he r s c hoo l c ho i c e は ba l l o ti ni t i a t i v e とい う形で州民投票 にか

けられたが ,Cal i f o r ni a,Col o r ado,Or e go n で完敗 した.1 9 95 年には ,Ar i z o na

,

I l l i noi s , Pe nns yl va ni a 州で提案 された法案 も州議会での採択 に至 らず敗北 を喫 したのであ る. しか し ,vo uc he r s 推進者 の熱 意 は衰 える ことな く,今後 も様々な形 で vouc he r 実現 へ の提 案 が続 くもの と予 想 され る.現 に, Ame r i c a nSc hoo lBo a r dJ ou r nal 誌による1 99 5 年の Vi t al Si gns の中で は,20 以上 の州 が教育政策 に vo uc h e r s を考慮 中 ( いずれ も法制化 には至 ってい ないが)である. この様 な状況下 で ,Wi s c o ns i n 並 び Ohi o 州では,学校 区を限定 した低所得家庭 の子 どもを対象 とす る vo uc he rpl a ns が打ち出された.

Ohi o 州 の場合 は州最 大 の,かつ最 も問 題 の多 い Cl e ve l a n d 学校区を対象 とした ものである.1 9 9 6 年 秋 か ら ,2, 5 0 0 名 の生 徒 に 州 が 生 徒 一 人 当 た り

$ 2, 5 0 0 を上 限 とした vo uc he r s を与 え,宗教 系私 立学校への通学 も可能 とす る計画である.

また ,Wi n c o n s i n の プ ログ ラ ムは,1 99 0 年以 来

実施 され て きた全 国初 の実験 で あ る Mi l wa uke e

pr i va t es c ho o lc hoi c ep r o gr a m の継続 ・拡大であ

(4)

る.学校 区の プ ログラム ( 生徒一人 当た り$ 3, 2 0 0 の vouc he r を支 給 す る)へ の参 加 生 徒 を現 行 の 1, 5 0 0 名 か ら 1 9 9 6 ‑97 年度 には 1 5, 0 0 0 名‑ と増 やす とい うものである. Sc hoo lchoi c e が大都市の公立 学校の改革を促す十分な競争を生み出すために,宗 教 系私立学 校 も vouc he r 通 用校 と した. Mi l wau・

ke e では ,1 3 0 の私立学校 の うち 9 3 校 が宗教系であ る との事情 もあ る. Ohi o ,Wi s c ons i n 両 州 と も, 1 9 9 4 年秋の選挙で共和党が州議会の多数を占め, 普 た両州 ともに共和党知事であ ることが vo uc he r の 動 きを加速 させた要因で もあった. しか し,両州 と もに宗教系学校をも対象に含めた ことで,政教分離 の点か ら憲法違反 の訴訟が起 きてお り ,Wi s c o ns i n 州最高裁判所 はこの拡大計画の差 し止め命令 を出 し ている.

Sc hoolc hoi c e は,学校改革 を専 ら f r e ema r ke t に頼 るものであ り,教育内容そのものの改善 にむか

うより,不平等を加速 させるだけではないか とい う こと. Vouc he r の対 象 に宗教系私立 を含 め ること は政教分離を うた った合衆国及 び州の憲法 にあきら かに違反す るものではないか との強 い反対意見が こ れまで vouc he rs c hoolc hoi c e の大規模 な実施 を阻 んできている.今 の ところ c hoi c epr o gr am の実験 で一番 経験 の積 んで い る Mi l wa uke e にお い て も c hoi c e が生徒 の学力向上 につ なが った とい うデー タはでていない.親が自分の人種や文化的背景を反 映 させ る学校 を選ぶ傾向から,人種分離を深めてい くことになるだ ろ うとの懸念 があ る. Mi l wauke e の場合, これ迄の ところこの予想が当た っている.

Choi c e s c hool s の うち 最 も大 規 模 な 2 校 は al l bl ac k であ り , 3 校 目は al lHi s pani cと報告 されて

いる. しかし,計画に参加 している親や生徒の満足 度 は高 く ,c hoi c e の提唱者 は親 は良 き " 消費者"

であることを前提 にして,親 の賢明な選択 と,市場 原理に信頼を置いている.

5. Pri vat i 2 : at i o

mへ

教育 におけ る pr i vat i z a t i on の動 きは ,1 9 8 8 年 に Mas s ac hus e t t s 州 Che l s e a が自発的に学校区管理下 の学校 を民 間 に委 託 して pr i vat i z at i o n の最 初 の publ i cs c hools ys t e m となった ことに始 まる. Che l ‑ s e a 教育委員会 は 1 9 8 9 ‑1 9 9 0 年度を初年度 として私 立大学の Bos t o nUni ve r s i t y と 1 0 年間の学校区運営 の契約 に調印す る決定を下 した.その後 ,Fl o r i da の DadeCo unt y,Bal t i mo r eCi t y が実旋 に踏み切 っ たが,契約は学校 区全体ではな く,その中の幾つか の学校運営を民間会社に任せた ものであった.全国

で初めて予算を含めた学校区全体の管理運営を試験 的 に民 間 会 社 に委 託 す る決 定 を した の は Co n‑

ne c t i c ut の Ha r t f or d 学 校 区

2)

で あ った. 1 9 9 4 年 1 0 月 に そ の運 営 を Mi nne a pol i s に本 部 を 置 く The Educ at i on Al t e r nat i ve s l nc . ( EA I )に委託 し, 2 5, 0 0 0 名の生徒が通 う 3 2 の公立学校の管理をまかせ

る契約 に合意 したのである.合意事項は 5 年契約で, EAI に学校 区の予 算 $ 1 7 1 mi l l i o n と ,$2 9 mi l l i o n の連邦政府の助成金から成 る約 2 億 ドルの年間予算 をまかせ るとい う契約であった.

この EAI と並 んで pr i va t i z at i o n に参入 した主た る民間会社 に t heEdi s onPr o j e c t がある. 1 9 9 5 年秋 までに 3 か ら 5 校の公立学校の運営開始を目標 に, Te xas の She r man , Kan. の Wi c hi t a , Mi c h. の Mo untCl e me ns ,Bos t on で各々 1 校 の公立学校 の 運営を委託 されている. これ らの学校は授業 日数の 増加 , 2 年間同一集団の hous e sofs t ud e nt s での共 同学習,古典,人格教育,テクノロジーを強調 した

カ リキ ュラムを特徴 としている. この他 に ,Pe nn‑

s yl vani a 州 の Wi l ki ns bur g 学校 区は,生徒数 1, 9 0 0 名 の小規模学校 区で あるが ,1 9 9 2 年 に設立 された Nas hvi l l e に 本 部 を 置 く Al t er nat i ve Publ i c Sc hool sl nc. に学校区の 3 つの小学校の うち 1 校 の 運営をまかせ る票決を 1 9 9 5 年 3 月に行 った.

Pr i vat i z at i o n を実施 している学校 区に共通す る ことは,学校 区に通 う生徒人 口の弱体である.例 え

Har t f or d では,生徒 のは ば2 / 3 が生活保護 を受 けている家庭の子 どもであ り,半数以上の家庭では 英 語 が母 国 語 と して話 され て い ない こ と.また Bal t i mor e は,全国で 1 7 番 目に大 きな学校 区である が ,1 0 8, 6 6 0 名の生徒 の 81 % がアフ リカ系 アメ リカ 人であって, 白人 はわずか 1 8% といった状況 にある こと. Wi l ki ns bur g の場合は小規模ではあるが,早 は り,生徒の大多数は低所得家庭 からの通学者であ って ,7 8% が昼食費の免除, または補助を受 けてい る実態が報告 されている.

Pr i vat i z at i o n の支持 ・推進者 は,私企業 を公教 育 に参画 させ,競争の中か らこそ, よりよい結果を 生みだす ことが出来 ると信 じている.また ,pr i va t i ・ z at i o n が公立学校の過去 2 0 0 年にわた って支配 して

きた準独占体制を打破す ることを期待 している.つ

ま り,市場の実勢が公教育 システムの力を越 えた効

果を引 き出す との論拠に基づ くものである. しか し,

pr i vat i z at i on ‑の強 い警戒感 もあ る.民 間会社 の

学校経営に関す る訓練の不足,特別 なケアの必要な

子 どもが顧み られない可能性,利益を動機 とす る会

社が行 う社会サービスの妥当性などである.現に,

(5)

アメリカ公教育における規制緩和と自由化の傾向 1 9 9 5 年 に見 られたい くつかの pr i va t i z a t i o n の失敗

例 は関係者 に p r i va t i z a t i o n の再考 を促す もの とな った.

Fl o r i da の Da d eCo u n t y は これ まで,そ の管轄 下の So ut hPo i nt e 小学校 について 5 カ年 のカウン セ リング契約 を EAI と結 んだが,特別 の成果が上 がらずに ,1 9 9 5 年 6 月に契約を解消 した. この契約 の中では ,Da deCo un t y 学校 区が教員 と建物 を管 理 し ,EAI が 授 業 内 容 を 管 理 し,教 材 と s t a f f t r ai ni ng を 提 供 し て き た の で あ る. ま た, Ba l t i mo r e 市においても 1 9 9 2 年 に 9 つの学校を EAI に 5 ヶ年契約で委託 したが ,1 9 9 5 年 1 2 月には市教育 委員会 は圧倒的多数で EAI との契約解消 を決定 し た. このケースは全国的にも注 目を集めた学校改革 への努力であったが,生徒の学力向上の成果が上が らないまま,該当校の生徒一人当た りの支出は,過 常の公立学校 におけるより 1 1 % も上回っていたので ある.

Pr i va t i z a t i o n は 1 9 9 0 年 の政治的 キ ャッチ フt /‑

ズであるといわれ,公教育の規制緩和の時代 を招 き 入れた. しか し, この動 きはまだ新 しく,教育サー ビスを契約す る方法に関す るコソセンサスもない.

今後 のモデルや基準 の開発が この pr i v at i z a t i o n の 将来を大 きく左右 して くるであろ う.

6.

今後の展望

1 9 9 5 年 5 月末 か ら 6 月 にかけて実施 された The 2 7 t hAnn ualPhiDe l t a / Gal l u pPo l lの調査は,教育 の自由化 ,pr i va t i z at i o n に関す る市民 の意識動 向 を探 っている.連邦及び州政府,学校区の役割につ いての 8 6 年 と 9 5 年の比較では,連邦政府の影響力低 下を望む割合は 5 3 % から 6 4 % に増加 し,州政府 に関 しては 3 2 % か ら 3 7 % ,学校 区の影響力低下 を望む割 合 も 1 7 % か ら 2 4 % へ と増 えている. この一方で,州 政府 により強い リーダーシ ップを求める割合 は 4 5 % か ら 5 2 % に増 え,学校区に対 しても 5 7 % か ら 6 4 % と 増加が見 られる. この中から公教育 システムに関 し ては中央か ら地方へ,またシステム自体の影響力そ のものを弱め ,s i t e へ権限委譲 を期待 し,支持す る 意識動向が うかがえる.

Choi c e に 関 し て は,公 立 学 校 内 で の p ubl i c s c ho o lc ho i c e に賛成 が 6 9 % ,反対 2 8 % と,支持 が 高 く,その上, この質問の初年度 1 9 8 9 年の賛成 6 0 % , 反対 3 1 % と比べても,着実 に p u bl i cs c ho olc ho i c e の 支 持 者 が 増 え て い る. こ の 一 方 で ,p r i va t e ( vo uc he r )s c ho o lc ho i c e には賛成 3 3 % ,反対 6 5 %

と従来同様強い反対が表明 された.ただ し,前回の

1

03

1 9 9 3 年の賛成 2 4 % ,反対 7 4 % と比べ ると市民の意識 は確実に変化 している.教育システムの軽孟化,自 由化や学校 区や s i t e へ の権 限委託 は市民 の間 では 概ね好意的に受け止め られていると考 えられ る.そ の背景には教育の意思決定者は地域社会や親である とす る伝統的 ローカル ・コン トロールを尊重す るア メ リカ的思考が生 きてい ると考 え られ る. Cho i c e に関 しては Cl i nt o n 大統領 は pu bl i cs c hoo lc ho i c e は支持 しなが らも ,vo u c he rs c ho olc hoi c e には断 固反対 の意 を表明 している.

Pr i va t i z a t i o n に至 るまでの背景 は,合衆 国 とい う連邦制の問題 ,1 5, 0 0 0 を こえる地域 と結 びついた 独 自性 の強い学校区の問題,強制バス通学 によ り学 校の人種的バランスを保 とうとす る人種融和政策等 を背負 った アメ リカの公立学校 の宿命を考慮 しな く てはならない.それ故 日本 の公立学校関係者 に とっ てまだ対岸の火を見 る思いである. しか し,教育の 分権,教育 " 消費者" としての生徒や親,市民 のニ ーズの多様化 と積極的な教育参加,納税者 の権利意 識の高ま りはアメ リカ独 自の問題であろ うか.わが 国の平成 8 年を振 り返 ってみて も, まず 3 月末 に地 方分権推進委員会がその中間報告で都道府県の教育 長任命承認制の廃止を求めている.教育 の荒廃 は, 地域や家庭 の力を借 りな くては克服できるものでは な く,住民の参加を得た教育改革の必要性 を強調 し, 地方教育委員会が真に自立 して, よ り主体性 を発揮

し,その機能を果たす ことを期待 した もの と言 える.

7 月には政府の行革委規制援和小委員会で,教育分 野の規制緩和をテ‑マに加 えて,公立小 ・中学校の 越境入学を認める選択 自由化の是非論を検討課題 と す る方針が決め られた.年末には行革委の意見書が 首相 に提出 され,政府は翌 3 月 2 8 日に規制緩和推進 計画を閣議決定 した.

Vo uc he r s は 1 9 世紀 のフランス国民議会での学校 教育 クーポンの提案

3)

に逆上 るが,古 くて新 しい発 想である.上智大学岩田規久男教授は読者向け経済 解 説 記 事 r 代 理 人 ・依 頼 人 の 関 係4 ) Jの 中 で vo uc he r s を説明 しているが, まさに合衆国 に於 け る vo u c he rs c hoo lc ho i c e を推進す る リーダー達の 主張そのものである.わが国においてもこの よ うな 理論を納得 させ る現象が大都市及びその近郊 で起 こ っている.合衆国における自由化指向の一つ一つの 実験 はまだ まだ成熟 した ものではないが,公教育が より住民 に近づ き,そのニーズや意見を反映 しよ う とすれば,画一的公教育では対応 しきれない矛盾や 歪みが露呈 されて くる.公教育 の中の al t e r na t i ve s

は公教育を維持 しなが ら,公教育を補 う手段 である.

(6)

合 衆 国 に お け る教 育 政 策 の諸 実験 と, 学 校 改 革 の成 否 や是 非 論 を総 括 す るに は今 少 し時 間 が い る. しか し早 晩 , 我 が 国 で も教 育 "消 費 者 " 主 導 の教 育 改 革 の声 が起 こって きて も不 思議 で は な く, そ の時 公 教 育 の規 制 緩和 , 自由化 は必然 的 に テ ー マ とな り, 覗 在 合 衆 国 で提 唱 され ,進 行 して い る実験 の い くつ か が具 体 的 モ デ ル と して提 示 され て こ よ う. 中央 教 育 審 議 会 は平 成

9 年 5 月 3 0

日に第 二 次 答 申 で あ る 「 議 の ま とめ」 を発 表 した .第 一 章 の画 一一性を脱 した 教 育 を求 め る基 本 的 な考 えの 中 にみ られ る 「子 ど も た ち の選 択 の機 会 の拡 大 」や 「学 校 や地 方 公 共 団体 等 の裁 量 の範 囲 の拡 大 」 は, ま さに ̀̀消 費 者 " サ イ ドか らの教 育 シ ス テ ム改 革 の必 要性 を認 識 した 提 言 で あ る とい え る.

注】

1. 1 9 9 7

6月 末 現 在,2 8

州 及 び

t he Di s t r i c t of Col umbi a

Char t e rs c ho ol

設置 に関す る法律 を持 っ ている. また

c har t e rs c ho o l s

の数 は全国でお よそ

5 0 0

校 にのぼ る.

( ' 9 7Educ at i o nWe e k, J une2 5p. 1 0 , J ul y 9p. 1 7

よ り)

2. Pr i vat i z at i o n

の全 国 で最大 規模 の実験 として注 目 を浴 びた が,教員組 合 の強 い反対

,EAI

へ の契 約金 支払 い等 の トラブルで

1 9 9 6

1 月 2 3

日学校 区教育委員 会 は

EAI

との契約解 消 を決 め る. しか し,そ の後 も 学校 区内の生徒 の実態 は改善 されず州議会 は

1 9 9 7

6 月 1

日に学校 区教育委員会の解散 を承認.今後

3

年間 の学校 区の管理運営 は州 にまか された.

3.

世界教育 白書

1 9 9 4

」 ユネス コ編

1 9 9 5

3

章教育 選 択 の拡 大

p. 6 2r

ス クールバ ウチ ャーの原案』 に出 典掲載.

4.

平成

8

6 月3 0

日信濃毎 日新聞総合

7

面掲載 r代理 人 ・依頼人 の関係J代理人 と依頼人 の立場 が逆転 され た例 が示 され てい る.保護者 (子 どもの教育依頼人) が学校教育 (代理人) を不満 に思 って も,保護者 には 子 どもの公立学校 を変 える権利 がない ことにふれ,過 学 区制 を廃止 して,教育予算 を直接子 どもに補助金 と して与 え,保護者 が学校 を選べ る制度 を考 えてみ よ う とい うもので ある.

参考文献】

1

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Ne wYo r kNY 1 9 9 4

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1 993 . ・Ov e r t ) l e wwi t hFo urCa s eSt u d i

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c a t i o ns ,I nc .Al e xan dr i a,Va.

参照

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