Instructions for use
Title Characterization of genetic diversity of bovine trypanosomes in African and Middle Eastern countries [an abstract of dissertation and a summary of dissertation review]
Author(s) Marsela, MEGASARI
Citation 北海道大学. 博士(獣医学) 甲第14274号
Issue Date 2020-09-25
Doc URL http://hdl.handle.net/2115/79705
Rights(URL) https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
Type theses (doctoral - abstract and summary of review)
Additional Information There are other files related to this item in HUSCAP. Check the above URL.
File Information Megasari̲Marsela̲review.pdf (審査の要旨)
Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP
学位論文審査の要旨
博士の専攻分野の名称:博士(獣医学) 氏名:
Megasari Marsela
審査委員
主査 准教授 山 岸 潤 也 副査 教授 大 橋 和 彦 副査 教授 野 中 成 晃 副査 准教授 今 内 覚 副査 助教 林 田 京 子
学位論文題名
Characterization of genetic diversity of bovine trypanosomes in African and Middle Eastern countries
(アフリカおよび中近東におけるウシ感染性トリパノソーマ原虫の遺伝的多様性 に関する研究)
Human African trypanosomiasis(HAT)およびAfrican animal trypanosomiasis
(AAT)はサブサハラアフリカ地方のヒトと動物に甚大な被害をもたらしてきた。
HATはTrypanosoma brucei rhodesiense およびT. b. gambienseが引き起こし、
AATはT. b. brucei、T. congolense、T. vivax等の病原体が引き起こす。さらに T. bruceiと起源を同じくするT. evansiは、家畜のSurra病の原因となる。ウシ
(Bos spp.)は古来より人類が家畜として飼養し、共にその分布域を広げてきた。
ウシはT. b. rhodesienseに感染するため、HATの感染源動物の一つとして報告さ れている。また、T. evansiに感染した場合に慢性症状を示すことが多く、他の感 受性動物への感染源となっているとも推測されている。そこで本研究では、ヒト・
動物感染性のトリパノソーマ原虫の存続様式を、ウシとの関係性において説明する ことを目的に、遺伝情報に基づくウシ感染性トリパノソーマ原虫の検出方法の改良 と、その多様性についての研究を行った。
シリアはアフリカと中東の結節点に位置する。T. evansiは北部アフリカにお いてT. bruceiから進化したと考えられているため、T. evansiが現在のように世 界中に分布する最初期にシリアで定着した蓋然性は高く、拡散の痕跡やそれを可能 とした要因が現在のシリアのT. evansiに残存する可能性を想定し、その遺伝的な 特 徴 を 検 証 し た 。 ト ラ ン ス フ ェ リ ン の レ セ プ タ ー で あ る expression-site- associated gene 6 (ESAG6) 遺伝子を標的にPCRを行い、増幅産物16検体の配列
をサンガー法により決定した。これまでに報告のある各地域・各宿主の配列と共に 系統解析を行った結果、シリアに由来するESAG6は5つのクレードに分散し、シリ アに特異的なクレードを形成することはなかった。一方、宿主に注目した場合、ウ シ特異的なクレードを形成することもなかった。ESAG6 は表面抗原であることから 常に宿主免疫からの選択圧に曝されており変異速度も高いことが示唆されている ことから、時空間的な解析には適さない可能性も考えられた。
マラウィはアフリカ南東部に位置し、HATの流行地である。マラウィにおいて、
446検体の牛血液内における原虫陽性率の調査を行った。T. b. rhodesienseの検 出にはserum resistance-associated (SRA) 遺伝子を標的としたPCRを用いた。
その結果、5.4%の陽性個体が確認され、ウシがマラウィにおける原虫保有宿主の一 つとして感染環の維持に関与している可能性が示唆された。一方、動物感染性のト リパノソーマ原虫の罹患率を明らかにするために、internal transcribed spacer
1 (ITS1) を標的としたPCRを行った。この方法では増幅産物のサイズに基づき種
同定を行うが、T. vivaxとT. godfreyiなど増幅産物のサイズの類似する原虫の区 別が困難であること、不明瞭な増幅産物の判定が困難であることが知られている。
この欠点を克服するため、近年普及が進む携帯型次世代シーケンサーMinIONを用い た配列解析による特異性向上を試みた。その結果、不明瞭な増幅産物、多重感染と も に 、 感 染 原虫 の 特定 が 可 能 と なっ た 。結 果 、T. congolense(5.6%) と T.
vivax(2.7%)、T. b. brucei (0.4%)の感染が認められ、特にT. congolenseの感染 と牛の貧血症状との統計的な相関が認められた。したがってマラウィにおいては、
人とウシのトリパノソーマ症の統合的対策が、公衆衛生と家畜衛生の向上のために 急務であると考えられた。
以上、本学位論文提出者は、ウシに感染するトリパノソーマ原虫について、遺 伝情報に着目し、シリア並びにマラウィで調査を行った。シリアにおいてはウシに おける高いT. evansi感染率とESAG6の遺伝的多様性を初めて明らかにし、マラウ ィにおいては、ウシがHATの感染源動物である可能性を明らかにすると共に、より 信頼性の高いトリパノソーマ原虫種同定法の開発に成功した。これらの結果はトリ パノソーマ原虫の理解とそれが引き起こす疾病の対策に寄与するものである。よっ て、審査委員一同は、上記学位論文提出者Megasari Marsela氏の学位論文は、北 海道大学大学院獣医学研究科規程第6条の規定による本研究科の行う学位論文の 審査等に合格と認めた。