北海道医療大学学術リポジトリ
Aggregatibacter actinomycetemcomitansの病原性 と伝播
著者 長澤 敏行, 古市 保志
雑誌名 北海道医療大学歯学雑誌
巻 30
号 1
ページ 88‑88
発行年 2011‑06
URL http://id.nii.ac.jp/1145/00006519/
Forward: GCC GAC ACC AAA GAC AAA GTC T A.a.⳦Leukotoxin䛻ᑐ䛩䜛䝥䝷䜲䝬䞊
Reverse: GCC CAT AAC CAA GCC ACA TAC
ltxC ltxA
ࣉ࣮ࣟࣔࢱ࣮㡿ᇦ
ltxC ltxA
ES
-3ᰴ
㏻ᖖࡢ$D⳦ᰴ
Y4 JP2 9710 OMZ IDH 686bp 1216bp 1216bp
686bp
⳦ᰴ
図1 Aa菌JP2株のロイコトキシンプロモーターの特徴
JP2株はロイコトキシンのプロモーター領域に530bpの欠失があ るため,欠失部位の外側を挟むプライマーを用いてPCR法で増幅 すると他のAa菌株(Y4,9710,OM,IDHなど)よりも530bp短い 増幅産物が得られる.
北海道医療大学歯学雑誌 30! 平成23年
[最近のトピックス]
Aggregatibacter actinomycetemcomitans の病原性と伝播
長澤 敏行,古市 保志
歯周歯内治療学分野Aggregatibacter actinomycetemcomitans ( Aa )菌はグラ ム陰性桿菌であり,侵襲性歯周炎の原因菌として注目さ れてきた.侵襲性歯周炎とはこれまで若年性歯周炎,あ るいは早期発症型歯周炎と呼ばれてきた若年期に発症す る重度歯周炎であり, Aa 菌だけでなく宿主の免疫機能 の欠陥が発症と進行に深く関わっていることが報告され ている.
Aa 菌の主要な病原因子としてロイコトキシン( Leu- kotoxin)が存在する.ロイコトキシンはその名の通り 選択的にヒト白血球(Leukocyte)に傷害を与える毒素
( Toxin )である. Aa 菌のロイコトキシン産生能は菌の
株によって異なり,侵襲性歯周炎患者から分離されたJP 2株はロイコトキシンのプロモーター領域に欠失がある ことによってロイコトキシンを多量に産生する株として 知られている(図1).Haubekらは歯周組織が健常な若 年者の縦断研究を行い,この JP 2株が検出された被験者 では検出されなかった被験者よりも歯周炎を発症するリ スクが10倍以上高いことを報告した
1).このことから Aa 菌のなかでもJP2株がとりわけ病原性が高いことが示唆 される.
この JP 2株がどこで発生し,どのように伝播したかと いうことについてHaubekらは世界中から集めた Aa 菌の hemoglobin−binding protein の変異を解析した結果に基づ いて仮説を提唱している
2).それによると Aa 菌のJP2株 は北アフリカで発生し,ヒトの移動とともにヨーロッパ に拡散したと考えられている.また,アフリカ系アメリ カ人には侵襲性歯周炎が多いことが知られているが,
Haubek らは奴隷貿易によって JP 2株が伝播していった
ためアフリカ系アメリカ人でJP2株の保有率が高いこと も,その一因であるとしている.しかし同時に彼らは現 在のグローバルな国際交流の中でもなお特定の人種で JP 2株の保有率が高いことから,宿主によってJP2株に感 染する感受性が異なる可能性も指摘している.このこと は侵襲性歯周炎におけ Aa 菌と宿主の免疫機能の関わり について解明する鍵となる可能性がある.
我々は北海道医療大学歯科内科クリニックで分離され
た Aa 菌が JP 2株と同様の変異をロイコトキシンプロモ ーターに有することを見いだした.ヨーロッパやアメリ カとは異なり,日本,中国,韓国など東アジアではこれ までJP2株の報告はない.この株がアフリカから伝播し たのか,あるいは独自に変異をとげた株であるのか,ま たこの Aa 菌の感染は特定の宿主に限られているのか,
などについて現在検討を進めている.
文献
1)Haubek D, Ennibi OK, Poulsen M, Vaeth M, Poulsen S
& Kilian M. Risk of aggressive periodontitis in adoles- cent carriers of JP2 clone of Aggregatibacter (A) actin- omycetemcomitans in Morocco : a prospective longitu- dinal cohort study. Lancet 371 : 234−242, 2008 2)Haubek D, Poulsen K, Kilian M. Microevolution and
patterns of dissemination of the JP2 clone of Aggregati- bacter (A) actinomycetemcomitans. Infect Immun 75 : 3080−3088, 2007
(88)
88
/【K:】Server/歯学雑誌/第30巻1号 4C150 1C133/本文/088 トピ長澤 Aggr 4C 2011.07.19 10.30