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症 例:44歳,男性 主 訴:頚部リンパ節腫大

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Academic year: 2021

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は じ め に

表面マーカー・染色体・遺伝子検査等の進歩 により,血液疾患の診断能は劇的に向上した が,診断確定が困難な症例も依然として存在す る。今回我々は診断と治療に苦慮した,CD7陽 性幹細胞性白血病/リンパ腫に対する造血幹細 胞移植例を経験したので報告する。

Ⅰ 症 例

症 例:44歳,男性 主 訴:頚部リンパ節腫大

現病歴:平成 24年5月頃より頚部リンパ節腫 大を自覚。しばらく経過観察を行っていたが,

増大傾向あるため近医受診。悪性リンパ腫疑い にて同年9月当科紹介入院となった。

既往歴:特記すべきことなし 家族歴:特記すべきことなし

入院時現症 :身長 173cm,体重 60kg,体温 36. 3

℃,血圧 118/ 70mmHg,脈拍 72/分,整。眼 瞼結膜貧血なし,眼球結膜黄染なし。両側頚 部,腋窩,鼡径に5~ 10mm 程度の可動性良 好,弾性硬のリンパ節を触知した。腹部理学所 見に異常なく,肝脾を触知しなかった。神経学 的異常は認めなかった。

入院時末梢血検査所見(表1) :血球減少は認め なかったが,白血球分画に異型リンパ球を認め た。生化学,凝固系検査に異常を認めず,可溶 性 I L- 2レセプター値は 445U/ ml と正常であっ た。

入院時画像所見(図1) :画像検査所見として は,10mm 程度の頚部リンパ節の他,縦隔や肺 門,傍大動脈リンパ節にも5 mm 程度のリンパ 節を複数認めた。診断目的に頚部リンパ節生検 を実施した。

小 沼 祐 一

*1

酒 井 俊 郎

*1

舘 越 鮎 美

*1

幸 田 久 平

*1

菊 池 智 樹

*2

小 幡 雅 彦

*2

安 藤 政 克

*2

CD7陽性幹細胞性白血病/リンパ腫と考えられた 難治性リンパ腫に対する造血幹細胞移植経験

KeyWor ds :CD7陽性幹細胞性白血病/リンパ腫,造血幹細胞移植

旭赤医誌 27;17~ 24,2013

症例1

*1

旭川赤十字病院血液・腫瘍内科

*2

同 病理部

HAEMATOPOI ETI CSTEMCELLTRANSPLANTATI ONEXPERI ENCETOTHEI NTRACTABLELYMPHOMAREGARDED ASCD7POSI TI VESTEMCELLLEUKEMI A/ LYMPHOMA.

Yui chiKONUMA

*1

,Tos hi r oSAKAI

*1

,AyumiTATEKOSHI

*1

,KyuheiKOHDA

*1

, TomokiKI KUCHI

*2

,Mas ahi koOBATA

*2

,Mas akat s uANDO

*2

*1

Depar t mentofi nt er nalmedi ci ne, hemat ol ogyandoncol ogy, As ahi kawaRedCr os sHos pi t al

*2

Depar t mentofpat hol ogy, As ahi kawaRedCr os sHos pi t al

(2)

頚部リンパ節病理所見(図2) :LCA染色と H- E染色所見より,リンパ節内外に大型リンパ球 様 細 胞 の び ま ん 性 増 殖 像 が 認 め ら れ た。

CD79a染色が陽性であることから,病理診断 としては CD20陰性びまん性大細胞型B細胞性 リンパ腫が考えられた。

骨髄穿刺所見(図3) :末梢血に出現していたも のと同じ,細胞質が塩基性で核小体を有する細 胞を 10. 4%認め,リンパ腫細胞の骨髄浸潤と考 えられた。後日判明した染色体分析結果は正常 核型であり,遺伝子再構成(PCR)結果では,

J Hが陰性であったにも関わらず,TcRβ陽性

と判明した。

臨床経過1(図4) :以上の検査結果全てを説明 できる病型を確定できないまま,s t age4のT細 胞性リン パ腫として CHOP療法を2コース実 施するも全く効果は認めなかった。ESHAP療 法に変更し3コース繰り返したところ,骨髄中 の腫瘍細胞は減少したが,リンパ節の縮小をわ ずかに認めるのみであった。残存する表在リン パ節に 放射線照射を 行い,I RI - Mi Dex療法を 行ったところ,鏡検上骨髄中の腫瘍細胞は消失 した。自家末梢血幹細胞移植を予定し,採取の ための HD- Ar a- C投与を行ったが,直後の CT

表1 入院時末梢血検査所見

図1 入院時画像所見

(3)

で縦隔と傍大動脈リンパ節に急激な増大を確認 した。これにより自家移植をあきらめ,HLA 完全一致の同胞より末梢血幹細胞採取を行うこ ととし,CY+TBI に VP- 16を加えた前処置で同 種末梢血幹細胞移植を行った。GVHD予防は s hor t - t er m MTXと タ ク ロ リ ム ス で 行 い,

day15に生着を確認後も重篤な GVHD発症な く,day103に退院となった。退院時の骨髄穿 刺検査では鏡検上リンパ腫細胞の残存を認めな かったが,TcRβ再構成(PCR法)検査結果は 陽性のままであった。早期にタクロリムスを終 了するものの GVHD発症なく,外来で経過観

察を継続していたが,11月に入り CTで腹部の リンパ節が急激に増大してきたことを確認した ため,治療目的に再入院となった。

再発時骨髄穿刺所見(図5) :再発時の骨髄穿刺 検査で,浸潤したリンパ腫細胞は 66. 4%を占め ており,染色体分析では多彩な複合異常を認め た。

表面マーカー検査所見(図6) :骨髄中にリンパ 腫細胞を多数認め,表面マーカー検査で性状を 捕らえることができるようになり,CD 5,CD7,

図2 頚部リンパ節病理所見

図3 骨髄穿刺所見

(4)

CD34陽性の腫瘍であることが判明した。

骨髄生検病理所見(図7) :骨髄生検像では髄腔 に芽球様細胞の増生認め,免疫組織染色におい ても CD7,CD34陽性とともに,CD4,CD8陰 性が確認され,CD7陽性幹細胞性白血病/リン パ腫と診断した。

頚部リンパ節病理所見・免疫染色追加(図8) : 初診時のリンパ節生検組織にたいして,CD7,

CD34染色を行ったところ陽性であり,同じ起 源に由来する腫瘍であることを確認した。

臨床経過2(図9) :増大するリンパ節に対して 放射線照射を実施し,GDP療法を試みるも,骨 髄中のリンパ腫細胞は減少しなかった。前回の

図5 再発時骨髄穿刺所見 図4 臨床経過1

(5)

図6 表面マーカー検査所見

図8 頚部リンパ節病理所見・免疫染色追加 図7 骨髄生検病理所見

(6)

移植の際に採取した同胞の末梢血幹細胞が残っ ていたため,この時点までに使用してない薬剤 の中から選択したイホマイドとカルボプラチン を前処置として,GVHD予防を行わずに 12月 24日末梢血幹細胞移植を実施した。day24頃 から gr ade2の皮膚 GVHDを発症したが,少量 のステロイドでコントロール可能であった。再 移植後 day53の骨髄中のリンパ腫細胞は鏡検 上認めなくなり,表面マーカー検査でも CD7 と CD34が両方陽性となる細胞集団は 0. 5%程 度まで減少した。

しかし平成 25年3月に入ると末梢血中に急 激 に リン パ 腫 細 胞 が 出 現し 再 発 を 確 認。L- as par agi nas eを投与したところ,腫瘍の増殖 抑制効果を認めた。本人,家族の治療の希望が 強く,HLA半合致となる 16歳の長男から採取 した末梢血幹細胞移植を4月 16日実施した。

day28に生着を認め,末梢血中の腫瘍細胞は消 失した。VODによる黄疸の進行に対しての治 療を継続中であったが, 5月 30日出血に伴う呼 吸不全で永眠された。

Ⅱ 考 察

悪性リンパ腫は WHO分類(第4版)にて5 つの大項目に分けられ,CD7陽性幹細胞白血病

/リンパ腫は前駆リンパ球腫瘍,Tリンパ芽球 のうちの1つに分類される (表2) 。Kur t z ber g ら が 提 唱し た 疾 患 単 位 で あ り,CD7陽 性,

CD4,8陰性の腫瘍を認め,i nvi t r oで骨髄系や リンパ系,赤芽球系に分化する能力を有するこ とから,造血幹細胞レベルでの腫瘍化と考えら れている。臨床的特徴としては①縦隔腫瘤や皮 膚,中枢浸潤を高頻度に認める②しばしば高度 の白血球増加を認める③標準的化学療法に抵抗 性 で あ ると 報 告 され て い る。問 題 点 と し て Kur t z ber gらの報告では,CD56や myel oi d抗 原の発現についての検索が行われておらず,本 邦報告例でも CD56陽性のものをこのカテゴ リーに入れている報告もあり,混乱が生じる原 因 と な っ て い る。CD56の 検 索 に よ り,

myel oi d/ NKcel lpr ecur s oracut el eukemi aと

の関係が明らかになるものと思われる

3)

。鑑別

の意味でも,CD7陽性幹細胞腫瘍は CD56陰性

図9 臨床経過2

(7)

であることを含めて,症例の検討を行いたい。

以上の条件で検索される,本邦での詳細報告 例

4)5)6)7)

は自験例を含めて7例であり特徴を示 す (表3) 。少数での検討ではあるものの,発症 年齢は 27歳から 44歳と一般的なリンパ腫に比 べて発症年齢の若さが注目される。中枢浸潤は 1例のみで,白血球数増加例はなく,遺伝子再 構成検査では TcR以外に J H陽性であった症例

も報告されている。標準的化学療法には反応に 乏しく,自家移植後の長期生存の1例以外は予 後は不良であった。自験例も化学療法抵抗性で あり,CHOP療法に反応を示さず,放射線療法 を組み合わせながら同種末梢血幹細胞移植を行 うことで一時的に寛解が得られたが,早期再発 を来たし,再移植を試みるものの救命すること はできなかった。

表2 悪性リンパ腫の WHO分類(第4版)

表3 CD7陽性幹細胞白血病/リンパ腫の本邦報告例

(8)

Ⅲ お わ り に

今回我々は診断と治療に苦慮した,CD7陽性 幹細胞性白血病/リンパ腫に対する移植例を経 験した。診断に苦慮し,治療を継続したが難治 性であった。適切な症例の蓄積による病態の解 明が必要であり,治療としては同種移植を考慮 すべきと考えられた。

文 献

1) NakamuraS,etal.:WHO ClassificationofTu- mours ofHaematopoietic and Lymphoid Tis- sues.4thedition,Lyon,IARCPress:334,2008.

2) KurtzbergJ,etal.:CD7+,CD4-,CD8-acuteleuke- mia:A syndromeofmalignantpluripotentlym- phohematopoietic cells.Blood 73:381-390,

1989.

3) 鈴木律朗:CD7,CD56陽性急性骨髄 NK前駆細胞 性白血病とその周辺,血液・腫瘍科,35(6):585-

593,1997.

4) Katsuno M,etal.:CD7+stem cellleukemia/

lymphoma.Featuresofasubgroupwithoutcir- culatingblastcells.Cancer72:99-104,1993.

5) 高橋 徹,他:腹腔内腫瘍で発症し,化学療法に抵 抗性を示した CD7陽性幹細胞性リンパ腫,臨床血 液 39:1185-1189,1998.

6) 郷田治幸,他:リンパ節と骨髄にて異なった形質を 示した CD7陽性幹細胞性白血病の1例,臨床血液

33:1046-1051,1992.

7) NaganoM,etal.:T-stem cellleukemia/lymphoma withbothmyeloidlineageconversionandT-spe- cificδ recombination.Leukemia Reserch 21:

763-773,1997.

参照

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