Attentional Blink 現象を利用した注意バイアスの 測定方法の検討
著者 松本 圭
雑誌名 人間社会環境研究
巻 13
ページ 121‑130
発行年 2007‑03‑15
URL http://hdl.handle.net/2297/3692
論文
人間社会環境研究第13号2007.3 121
AttentionalBliIlk現象を利用した注意バイアスの 測定方法の検討''2)
地域社会環境学専攻
松本圭
AnExaminationofaMethodforEvaluatingAttentionalBiasUsing
theAttentionalB1inkTask
MATSUMOTOKei
Ahstract
lthasbeenreportedthattheemotionalStrooptaskanddotprobetaskmeasureon]ydifncully
ofdisengaginghDmthreatstimuH,andcan'tmeasureenhancedorientingtowardlhreatstimulL Inthisstudy,itwasexaminedWhethertheattentionalblink(AB)taskinwhichthreatwordsare
presentedasthe2ndtarget(T2)measureUlefacihtationaspectoftheattenlionalbiasMoreover,toveriiyWhethertheattentionalbiasmeasuredbytheABtaskwaspeculiartocontentsofon6s
anxieW,wordsrelatedtosocialanxielywerepresentedasT2inadditiontogeneralthreatand neutralwords,andT2accuraciesofthesewordsinhighandlowsocialanxiousgroupswere comparedTY1eresultsshowedthattheT2accuracywashigherinhighanxiousgroupwhenT2 werethreatwordslhanneutralwordsSuchatendencywasnotseeninlowanxiousgroup・How告 ever,theheightenedaccuracyfOrthreatT2wasfOundnotonlyinshortT1T2intervals,butin longT1mmtervalFurthermore,1hecomparisonbetweenhighandlowsocialanxietygroups showednodifferencesinT2accuracies・FurUlerresearchesareneededtoclarnythevaudiWof theABtaskfOrmeasuringthefaciHtationaspectofattentionalbias.KeyWords
attemtonalbias,attentionalbhnktask,anxiely
れやすくなると仮定されている。例えばパニック 障害の患者は,外的な脅威刺激への注意バイアス により,入ごみや広場等のパニック障害患者には 脅威となる刺激に注意が向けられやすい状態にあ る。脅威となる刺激を知覚すると,「パニック発 作が生じるのではないか」という思考から,最初 は僅かな不安が生じる。同時に,身体的な不安反 応として心拍数の増加,発汗といった自律神経系 の反応が増加する。その時にも注意バイアスの影 響により自身の身体反応の変化に対して多くの はじめに
不安障害に対橇する認知行動モデルでは,不安障 害の発症と維持に注意バイアスが重要な役割を持 つとされている(cg,Beck&Clark,1988;Eysenck,
1992;Mathews&MacLeod,1994)。注意バイアス とは,その個人にとって脅威となる情報に対して 選択的に注意が向けられる傾向を指す。不安障害 患者や高不安者では注意バイアスが強く見られる ために,脅威情報の入力が増力Ⅱし,不安がl喚起さ
122 人間社会環境研究第13号2007.3
注意が向けられ,身体的な不安反応が過剰に検出 される。最初は僅かな自律神経系の反応であって も,それが破局的な結果をもたらすものと解釈さ れることで,さらなる不安の増大がもたらされる。
その悪循環の結果,最終的にパニック発作が生じ るとされているに]ark,1988)。パニック障害以 外にも,全般性不安障害,単一恐怖,社会恐lYii (Clark&Wells,1995),心的外傷後ストレス障害
(Yule,1991),強迫性障害(Foa&McNally,1986)
といった他の不安障害についても,同様に注意バ イアスが症状の発症と維持を媒介するという説明 がなされている。
認知心理学の実験パラダイムを応用して,上記 の注意バイアスを測定する試みがなされている。
注意バイアスを測定する方法の中でも,広く使用 されている方法がStroop課題を応用したEmo‐
tionalStroop課題(以下ES課題とⅢ各す)とDot Probe課題(DP課題と'11各す)である。いずれの 方法を用いた場合にも,不安障害患者や高不安者 で注意バイアスが見られることが示されている(e g,Williams,Watts,MacLeod,&Mathews,1997)。
ES課題とは,着色された情勅語の色命名を求 める課題である。この課題は主課題である色命名 の処理が,妨害刺激である単語の意味処理によっ て干渉される現象を応用している。ES課題にお いて高不安者や不安障害患者は,刺激語が中性的 な意味の単語(II1性語)である場合に比べて,ネ ガティブな意味を持つ単語(脅威語)である場合に,
また特に個人の症状や懸念に関連する脅威語の場 合に,色命名の反応時間が遅延することが報告さ れている(Williams,Mathcws,&MacLocd,1996)。
これは注意バイアスによって,脅威情報である単 語の意1床情報に注意が向けられた結果であると解 釈され,脅威語に対する色命名の反応時間からに'二’
性語に対壜する色命名の反応時間を減じた値が注意 バイアスの指標とされる。DP課題は,’1二'性語と 脅威語を対呈示し,単語が呈示された何れかの位 置に現れる標的(小さなドットなど)の検出を求 める課題である。高不安者や不安障害患者はDP 課題において,脅威語とは逆位置(中性語の呈示
される位置)に出現する標的への反応時間と比較 すると,脅威語と同じ位置に現れる標的への反応 時間が短くなることが報告されている(MacLeod,
Mathews,&Tata,1986)。その反応時間の差が注 意バイアスの指標とされ,その差が大きい程,脅 威情報に対して空間的な注意が向けられていたと 解釈される。
しかし,ES課題やDP課題で測定される注意 バイアスが,注意のどのような成分を反映してい るのかについては議論がある。ES課題において 高不安者に見られる脅威語の色命名の遅延につい ては,脅威情報の処理を避けようとする認知的回 避(cognitiveavoidance)によって生じていると する指摘や(DcRuitcr&Brosschot」994入脅威 語によって引き起こされた情動的な覚醒が反応を
遅延させた結果であるという指摘があり(Mogg
&Bradley,1998),純粋な注意バイアスの指標とは いえない可能性がある。またDP課題で見られる 注意バイアスも,これまでは高不安者が脅威刺激 に促進的に注意を向けている結果と解釈されてき たが,最近になってそうとはいえないとする研究 結果が示されている(Koster,Crombez,Verschuere,
&DeHouwcr,2004)。DP課題を考案したMacLeod ら(1986)は,脅威語と中性語のペアに対する反 応時間のみから注意バイアス指標を算出しており,
その後の研究でも同じ算出方法が取られてきた。
しかしMacLeodら(1986)の算出方法では,中 性語と中性語のペアに対する反応時間を基準とし ていないため,脅威語に対して促進的に注意が向 けられた結果(脅威語と同位置に出現する標的へ の反応時間の短縮)と,脅威語に向けられた注意 の解放が困難であった結果(脅威ごとは逆位置に ,Ⅲ,現する標的への反応時間の遅延)とが区別でき ないという問題がある。そこでKosterら(2004)
は中性語と中性語のペアに対する反応時間を基準 として,DP課題で見られる注意バイアスの成分 を切り分ける実|験を行った。その結果,DP課題 において高不安者が示す注意バイアスの主要な成 分が,脅威語に向けられた注意の解放の遅延であ ることが明らとなった。さらに松本(2005)は,
AttentionalBunk現象を利川した注意バイアスの測定方法の検討 123 意資源が限られている状態であっても脅威刺激に 対して自助的に注意が配分され,脅威語の報告率 が上昇する可能性がある。このことが検証されれ ば,高不安者や不安障害患者が脅威刺激に対して 促進的に注意を向ける傾向を有することを示すこ とになると共に,注意バイアスの促進的な成分を 測定する新しい方法を提案することができる。そ こで本研究では,Anderson(2005)と同様のAB 課題において,低不安者と比較した場合に高不安 者で脅威語のT2に対するAB低減が見られるか を検証し,この課題で見られるAB低減が注意バ イアスの概念と一致するかを検討することを第1 の目的とする。また注意バイアスは個人の不安内 容に関連する刺激に対して強く見られるとされて いる。そこで,T2に使用する刺激語として一般 的な脅威語,中性語以外に,社会不安に関連する 脅威語,中性語(以下,社会的脅威語,社会的中 性語とする)を加え,実験参加者を社会不安の水 準によっても分類し,実験参加者の不安内容と一 致するT2に対してAB低減が見られるか調べる
ことを第2の目的とする。
Kosterら(2004)と同じ方法でDP課題を実施し,
DP課題とES課題で1Ⅲ定される注意バイアスの 関係を調べた。その結果,ES課題の脅威語の色 命名の遅延と,DP課題で見られる脅威語からの 注意の解放の遅延との間に11コ程度の相関が見られ た。つまり,ES課題で測定される注意バイアス も,DP課題と同様,脅威語からの注意の解放の 遅延を反映している可能性が高いといえる。この ように,これまで注意バイアスを測定するために 使用されてきた課題では,高不安者や不安障害患 者の有する,脅威刺激に向けられた注意を解放す る困靴さを主に測定しており,少なくともこれら の課題では脅威刺激に対して促進的に注意を向け る傾向を捉えることができないと考えられる。
高不安者や不安障害患者が有する注意バイアス の促進的な成分を測定できる可能性を持つ実験パ
ラダイムの一つに,RSVP(mpidserialvisualpres-
cntation)課題に見られる注意の瞬き(attentional blink:以下ABと略す)を援用した方法が挙げら れる。このような着想は,Ande正Son(2005)の研 究が元になっている。Andmson(2005)は,SOA が100,sで呈示される白色の中性語の系列'1]に 緑色で定義された2つの標的語(呈示11頂にTL T2と呼ぶ)を,lOOms刻みで100から700,sの異 なる標的間隔(それぞれLagl~7と呼ぶ)で呈 示し,全15語から成る刺激語系列の呈示後に両標 的の報告を求めた。通常は標的間隔がおよそ500,s以下の場合に,T2の報告成績が低くなるAB
が見られるが(Raymond,Shapiro,&AmelL1992),
Anderson(2005)ではT2に脅威語が呈示された 場合にT2の報告成績が上昇し,ABの低減が生 じることを見出した。この結果をAnderson(2005)
は,脅威情報に対しては注意資源の限界を超えて 自動的に注意が向けられることで,変化する環境 の中でも脅威情報が意識されやすくなった結果で あると結論している。
Anderson(2005)では不安水準とAB低減の関 係に言及していないが,高不安者や不安障害患者 でT2に脅威語が呈示された場合にAB低減が強 く生じるつまり注意バイアスの影響により,注
方法
実験参加者4年制大学の学生27名(男性21名・
女性6名,平均年齢20.33±L34歳)が実験に参 加した。
刺激松本(2005)において行った2字漢字熟語 の情動Illiの評定結果から,T2として一般的脅威 語,社会的脅威語,一般的中性語,社会的中性語 (以下,それぞれGT語,ST語,GN語,SN語と ''1各す)の4単語タイプ,各10語からなる単語セッ トを2セット選択した3)。使用する単語セットは 実I験参加者間でカウンタバランスした。妨害刺激 にはT2とは異なる中性語80語を使川した。T2,
および妨害刺激に使用した単語を付録に示した。
SN語,ST語については,社会不安者の注意バイ アスに関する先行研究(e9.,Mattia,Heimbcrg,&
Hope,1993)で使用されている社会不安関連語か ら.2字漢字熟語に翻訳可能な語を選び,情動価
124 人間社会現境研究第13号2007.3 の評価結果と照らして中性語と脅威語に分類した。
各単語タイプ間で総画数,文字単語親密度(天野・
近藤,2003a)をマッチングした。またGT語と ST語,GN語とSN語で情動価をマッチングした。
雑誌や新聞などへの出現頻度(天野・近藤,2003 b)については,GT語とST語,GN語とSN語
間ではマッチングできたが,全ての単語タイプ間 で一致させることができなかったooT1には記 号の「○○」と「××」を使用した。黒色の背景 に,妨害刺激は白色で,T1,T2は緑色でそれ ぞれ呈示した。妨害刺激,Tl,T2が同輝度と なるよう調整した。刺激サイズは視角で縦18゜×横3.6゜であった。
装置刺激はパーソナルコンピュータ(ソニー社 製VGN-S91PS)のMATLAB(MathWork社製)
用ツールポックスCogent2000で制御し,22イン チCRT(三菱電機社製RDF233G)に呈示した。
AB課題AB課題は11語の妨害刺激と2つの標 的(Tl,T2)から成るRSVP課題であった。
はじめにコンピュータディスプレイ中央に注視点 として「++」をlOOOms呈示した。注視点の消 失後,画面中央に刺激系列が呈示時間100,s(ISI Oms)で継時的に呈示された。Tlは刺激系列の 2,3,4番目の何れかにランダムに呈示した。
T2はTlからSOA100ms(Lagl),300,s(Lag 3),700,s(Lag7)の何れかの間隔を空けて呈 示した。Tl-T2間にはLaglで011111,Lag3で2 個,Lag7で6個の妨害刺激をそれぞれ呈示した。
全試行は,T2の単語タイプ(4タイプ:GT,Sm GNSN語)×各単語タイプに含まれる単語数(各
10語)xLag条件(3条件:Lagl,2,3)×
2ブロックの240試行であった。妨害刺激の種類,
Tlの種類(「○○」か「xxL系列内でのT1 の出現位置は施行毎にランダムとした。ただし’
試行内で同一の妨害刺激が重複して呈示されるこ
とは無かった。またT2,Lag条件の呈示順序は
ブロック毎にランダマイズした。各試行は実l険参 加者がスペースキーを押すことで開始された。実 験参加者には刺激系列の呈示終了後,緑色の2つ の標的を口頭で報告するよう教示した。実|験参加者の報告は実験者が記録した。
手続き実l験参加者はコンピュータディスプレイ
から約55cmのU1n雛に座り,80試行の練習試行の
後,本試行を実施した。なお練習試行のT2には 本試行で使用しない'''性語を使用した。AB課題終了後特性不安と状態不安の測定に 新版State-TraitAnxietylnventory(肥田野・福原・
岩脇・曽我・Spielbe亜gcr,2000;以下STAIと111各し,
特性不安尺度をSTAI-T,状態不安尺度をSTAI-S とする)を,抑うつの測定に日本版BeckDepres‐
sionlnvcntory-SecondEdition(小嶋・古川,2003;
以下BDIとⅢ各す)を,社会不安水準の測定に日
本版FearofNegativeEvaluationscale(石Ⅱ|・佐々 木・福井,1992;以下FNEと略す),日本版Social
AvoidanceandDisressSca]c(石川ら,1992;以 下SADSと略す),日本語版InteractionandAudi- cnceAnxietyscale(岡林・生和,1991;以下I-AAと略す)をそれぞれ実施した。なおI-AAには下位 尺度として相互作用不安(InteractionAnxiousness)
尺度(以下1A尺度と略す)と聴衆不安(Audicncc Anxiousness)尺度(以下AA尺度と略す)が含 まれている。
最後にT2に使用した語の情動価評定を実施し た。情動価の評定は,単語を見たり読んだりした ときの印象を「とても不快」を1,「とても快い」
を7とする7件法により回答を求めるものであり,
予備調査と同一の方法であった。
結果
データの整理Tlが誤答の試行(全体の1.00%)
は分析から除外した。またLag7条件におけるT
2の平均正答率が30%未満であった4名は,AB 課題に関する結果の分析から除外した。したがっ てAB課題の結果の分析の対.象となった実験参加 者は23名(男性17名・女性6名,平均年齢2q26±q92歳)であった。
T2の情動価評定T2の単語タイプ毎に各実験 参加者の平均評定値を算出した(Tablel)。その 平均評定値を従属変数として,単語セット×単語
AttentionalB1ink現象を利11]した注意バイアスの測定方法の検討 125 タイプの2要因分散分析を行った。その結果,単
語タイプの主効果のみが有意であり(F(3,63)
=107.115,p<01),Ryan法による多重比較の 結果,GT語とST語,ON語とSN語の間には情 動価に有意差が見られず,その他の全ての組み合 わせで中性語に比べ脅威語で評定値が有意に低か った(全てp<01)。したがってT2の情動価の 操作は適切であったといえる。
Tabie2高・低特性不安群の心理検査の平均得点と標準偏差
1日i特性不安群W=7)低特性不安群(jV=8)
Ⅲ(S、)〃(S、) /(値 年imi
FNE SADS
AAS IAS STAI-S STAI-T BDI
19.86 18.71 1357 24.43 19.86 49.43 62.14 2614
(0.90)
(1021)
(635)
(695)
(6.20)
(8.14)
(5.08)
(849)
20.13 14.75 11.75 19.25 16.63 44.38 41.38 5.88
(0.99)
(4.62)
(6.32)
(6.84)
(6.57)
(10.03)
(4.78)
(4.42)
ヰヰヰ*
【「]〔、)〆0Pへ』COQ、『色勺ニニヘ]〈u〆く〕川升ハツnUハツOOnU〈Ⅲ)lnU1上nU117J川〒
Tablel各単語タイプの平均評定値(括弧内はSD)
**p<、0]
単託セットGT語ST語ON語SN語 SetlW=12)2.58(0.44)2.63(026)420(0.54)4」7(0.56)
Set2(/V=11)2.27(0.判2.37(0.28)4.19(0.26)3.77(051)
ったが,各群内での単語タイプおよびLag条件 によるT2正答率の違いを明らかにするために,
群毎に単語タイプ×Lag条件の2要因分散分析を 行った。而群ともLag条件の主効果が有意であ
った(高特性不安群:F(2,12)=2q34,p<01
低特性不安群:F(2,14)=17.43,p<01)。いずれの群ともLaglよりLag3Lag3よりLag
7でT2の正答率が高かった(いずれの群ともそ れぞれp<05,ノフ<01)。単語タイプの主効果に ついては,高特性不安群でのみ有意であった(F(3,18)=7.13,p<01)。Ryan法による多重
比較の結果,GN語に比べてGT,ST語の場合に有意にT2正答率が高かった(それぞれ〃<01,
p<05)。注)評定値はl:とても不快-7 語はそれぞれ,一般的脅威認 識を表す。
とてもlソヒいの7段階評定。CT,ST,GN.SN 社会的lfl威語,一般的【''性語,社会的「l1fii
特性不安水準によるT2正答率の比較STAIの 特性不安得点について全実験参加者の平均±0.5 mを基準として,高特性不安群(jV=7,得点 平均6214±5.08)と低特性不安群(ノV=8,得 点平均4138±4.78)に群分けした(Table2).
各群の条件毎の平均T2正答率をFigurelに示す。
T2正答率について,群×単語タイプxLag条件
の3要因分散分析を行ったところ,交互作用はい ずれも有意ではなかった。交互作用は見られなか
9 8 7 6 5 43 21 0 0 0 0 0 00 00
「
高特性不安群W=7 低
霊
側汕HNト
グ
=
一一GT語
=生ST語 一○一GN語
I ~一sN語
LaglLag3Lag7 Lag条件
Figurel高・低特性不安群の平均T2正答率(エラーバーは標準誤差)
Lagl Lag3 Lag条件
Lag7
人1111社会環境研究第13号2007.3 126
状態不安水準によるT2正答率の比較STAIの 状態不安得点について全実|験参加者の平均±q5 sDを基準として,高状態不安群0V=7,得点 平均57.00±3.56)と低状態不安群(ノV=8,得 点平均36.00±3.34)に群分けした(Table3)。
各群の条件毎の平均T2正答率をFigure2に示す。
T2正答率について,群×単語タイプxLag条件
の3要因分散分析を行ったところ,交互作用はい ずれも有意ではなかった。特性不安水準による群分けの場合と同様に,群毎に単語タイプ×Lag条 件の2要因分散分析を行った。両群ともLag条件の
主効果が有意であった(高状態不安群:F(2,12)=2818,p<01,低状態不安群:F(2,14)=
11.36,p<01)。Ryan法による多重比較の結果,
高状態不安群ではLaglよりLag3,Lag3より Lag7でT2の正答率が高かった(それぞれ/,
<01,p<05)。低状態不安群ではLaglより
Lag7,Lag3よりLag7でT2の正答率が高かったが(それぞれp<05,p<01),LaglとLag
3の間には正答率の有意差は見られなかった。単 語タイプの主効果は高状態不安群でのみ見られた(F(3,18)=10.37,p<01)。Ryan法による
多重比較の結果,ON語に比べてGT,ST語の場合に有意にT2正答率が高かった(いずれもp
<01)。またSN語がT2の場合もGN語に比べ
て有意に正答率が高かった("<05)。いずれの
群においても交互作用は有意ではなかった。Table3高・低状態不安群の心理検査の平均得点と標準偏差
高状態不安祥(jV=7)低状態不安群(Ⅳ=8)
〃(,、、)M(S、) /値 年lliii
FNE SADS
AAS IAS STAI-S STAI-T BDI
20.29 16.14 13.29 21.14 18.43 5700 51.14 12.00
(0.76)
(9.04)
(3.73)
(5.52)
(5.68)
(3.56)
(963)
(9.45)
20.25 14.88 11.63 1938 15.75 36.00 47.25 14.6]
(0.71)
(4.85)
(8.18)
(6.14)
(5.15)
(334)
(9.35)
(10.80)
0.09 0.33 051 0.59 O95 1L31 0.79 0.50
**〃<、01
社会不安水準によるT2正答率の比較FNE SADSI-AAの下位尺度であるAS尺度とAA尺 度の4つの尺度において,全実験参加者の平均十 0.5sDを少なくとも2つの尺度で上回り,他の 尺度がその基準を下回らないことを高社会不安群 0V=8)の基準とし,その逆を低社会不安群(jV
=8)の基準として群分けした(Table4)。各群
の条件毎の平均T2正答率をFigure3に示す。T 2正答率について,群×単語タイプ×Lag条件の
3要因分散分析を行ったところ,交互作用はいず れも有意ではなかった。これまでの分析と同様に,群毎に単語タイプxLag条件の2要因分散分析を
0.9
0.8
0.7 654 高状態不安群W=7) 篭 低状態不安群W=8)
000
舟即日N」 王ロ五口垂明至咀晴晴NNGSGS 李圭一寺
0.3
ロム■
I
02
0.1
LaglLag3Lag7 Lag条件
Figure2高・低状態不安群の平均T2正答率(エラーバーは標準誤差)
Lagl Lag3 Lag条件
Lag7
AttentionalBlink現象を利ⅡIした注意バイアスの測定方法の検討 127 では単語タイプの違いがT2の正答率に影響を与 えることはなかったが,高特性不安群,高状態不 安群では,T2が中性語である場合と比べて脅威 語である場合にT2の正答率が高くなることが示 された。したがって,高不安者は時間的に変化す る刺激系列中で,情動的な負荷が中性的な情報よ りも脅威的な情報をより高い確率で認識していた といえる。Anderson(2005)では実験参加者の不 安水準を操作していないため明らかではなかった が,AB課題における脅威語のT2への正答率の 高さに,他|人の不安水準が影響を与えていること が明らかとなった。
また不安水準による脅威語のT2に対する正答 率の違いには,特性不安と状態不安の両方が影響 を与えていることが示唆された。特性不安と状態 不安のどちらが(もしくは両方が)注意バイアス に影響を与えているのかについては,特性不安が 高い場合に注意バイアスが増大するという結果が ある ̄方で(Mogg,Mathews,Bird,&MacGregor- Mo1Tis,1990),特性不安と状態不安の相互作用が 注意バイアスを増大させるという報告もあり(MacLeod
&Mathews,1988;MacLeod&Rutherford,1992;
Mogg,Bradley,&Hallowell,1994;Egloff&Hock 2001),一貫した結果は得られていない。本研究 の結果は後者の結果と類似すると考えられるが.
行ったところ,高社会不安群,低社会不安群ともLag 条件の主効果のみ有意で(高社会不安群:F (2,14)=26.04,/〕<01,低社会不安群:F (2,14)=16.29,p<01),いずれの群において もLaglよりLag3,Lag3よりLag7で正答率が 高かった(いずれの群においてもLaglとLag3 の間でp<05,Lag3とLag7の間で〃<01)。
Table4高・低社会不安群の心理検査の平均得点と標準偏差 高社会不安群(jV=8)低社会不安群(jV=8)
/{「'1{
〃(、)M(5,)
年齢 FNE SADS
AAS IAS STAI-S STAI-T BDI
(0.71)
(5.06)
(3.85)
(3.88)
(230)
(1002)
(6.48)
(6.70)
0.29 3.33**
5.68**
5.95**
6.58*簿 0.89 1.98十 2.85率
20.13 22.38 17.00 26.75 23.00 4788 54.00 20.63
(0.99)
(5.83)
(2.93)
(417)
(3.70)
(6.31)
(lL76)
(11.24)
20.25 13.25 7.00 14.75 11.88 44.13 44.38 7.00
*p<,05,**p<、01,↑p<」0
考察
本研究では,T2に脅威語を用いたAB課題に よって,注意バイアスの促進的な成分をin,|定でき るかを検証することを第1の目的として,高不安 者と低不安者の脅威語のT2に対・する正答率を比 較した。その結果,低特性不安者,低状態不安者
987
000
鼻
低社会不安群W=8)
高社会不安群W=8)
I 〆//
蕊 ジム
654 000
冊即日引侯 玉ロ玉ロ壺咀壺咀龍韮即訓一志一》
L…
0.3 0.2
0.1
LaglLag3Lag7 Lag条件
Figure3高,低社会不安群の平均T2正答率(エラーバーは標準誤差)
Lagl Lag3 Lag条件
Lag7
人間社会環境研究第13号2007.3 128
特性不安と状態不安が独立に影響を与えているの か,例えば高特性不安者が状態不安の高まった状 態でのみ脅威語のT2への正答率が高まるといっ た,両不安の相互作用が影響しているのかは明ら かでない。特性不安と状態不安が及ぼす影響を明 らかにするためには,高特性不安者と低特性不安 者の状態不安を操作した上でAB課題を行うなど の方法をとる必要があろう。
本研究によって,高不安者が中性語と比べて脅 威語のT2に対して高い正答率を示すことが示さ れたが,単語タイプとLag条件の交互作用は有 意ではなかった。Figure1,2に見られるように,
Tlの処理により注意資源の制約を受けるとされ るLagl,Lag3条件に限らず,注意資源の制約 を受けないとされるLag7条件においても,高不 安者でGN語よりもGT語の正答率が高くなって いる。つまり高不安者ではLag全般に渡って脅 威語のT2に対して高い正答率が見られたといえ る。したがって,高不安者で脅威語のT2によっ てABが低減するとは必ずしもいえず,T2が脅 威語の場合に注意資源の制限を超えて注意が配分 されたとは結論できない。別の解釈として,T’
の処理によって注意資源が|浪られた状況ではなく とも,高不安者では脅威語を知覚する閾値が低く,
脅威語が知覚されやすいという可能性もある。脅 威語のT2への正答率の上昇が注意資源の配分の 問題かどうか,つまり今回のAB課題が脅威情報 への促進的な注意バイアスを測定しているのかど うかを確かめるためには,高速提示される中性語 および脅威語の再生,再認語彙判MIT課題などを 行い,高不安者の脅威語に対する閾値の測定を行
う必要がある。
本研究の第2の目的は,AB課題によって実験 参加者の不安内容に特異的な注意バイアスを測定 できるか検証することであった。もし実)験参加者 の不安内容に特異的な注意バイアスが見られるな ら,実験参加者を社会不安水準によって群分けし た場合,高社会不安者では特に社会不安に関連す る語のT2において,T2正答率が上昇すると予 測された。しかし実験の結果.高.低社会不安群
とも単語タイプの主効果は有意ではなく,不安内 容と一致するT2に対する正答率の上昇は見られ なかった。このような結果となった原因は幾つか 考えられる。一つは,もし今回のAB課題が脅威 情報への促進的な注意配分を反映しているとすれ ば,注意バイアスの不安内容による特異性が,注 意バイアスの中でも注意の解放の困難さの成分に のみ見られるという説明である。つまり,脅威的 な情報全般に対しては注意バイアスの促進的に注 意が配分される傾向が見られ,その脅威情報が自 分の不安内容と一致する場合には注意の解放の困 雌さが生じるという可能性がある。他にも,本研 究の実験参加者は健常者であったが,注意バイア スの不安内容による特異性が臨床群にのみ見られ る可能性もある。また本研究で使用したT2のST、
SN語の種類が10語と少数であったため,各個人 の社会不安の内容と一致する語が少なかったとい う可能性も考えられる。これらの可能性について は今後,吟味していく必要がある。
謝辞
本研究の計画,立案,実行にあたり,多大なご 協力をいただきました金沢工業大学人間情報シス テム研究所の近江政雄教授,伊丸岡俊秀識llili,同 大学心理科学研究所の塩谷亨教授,ならびに石川 県知的クラスター創成事業の沢田晴彦研究員に深 謝いたします。
注
l)本研究は'-1本パーソナリティ心理学会第15回大 会(於:東京富士大学)において発表されたもの
を加筆,修正,再分析したものである。
2)本研究は文部科学省知的クラスター創成事業(金 沢地域)「石川ハイテク・センシング・クラスター」
橘想の一部として行われた。また木研究の一部を 第15回「1本パーソナリティ心理学会にて発表した‘
3)木研究に引き続き,間隔をおいて同じ課題をlil じ実験参加者に実施する予定である。同じ単語セ ットをlTil-の実験参ljⅡ者に便」1]することを避ける ため,単語セットを2セット用意した。
4)天野・近藤(2003a)において,文字単語親密度 が単語認知の困難さに影群を与えることが示され
AttentionalBunk現象を利J1]した注意バイアスの1Ⅲ定方法の検討 129 ている。そこで出現頻度よりも文字単語親密度を
単語タイプ間でマッチングすることを優先した。
またGN語,SN語に比べてGT語,ST語で出現頻 度が低くなっており仮に出現頻度が単語認知に 影響を与えるとしても,GT語,ST語で正答率が 低くなることが予想される。本研究では高不安者 でGT語,ST語のT2の正答率が上昇することを 予測しており,出現頻度が正答率に影響を与える ことで,誤ってその予1111を支持する可能性は低い と考えられる。
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付録:実験に用いた刺激語の一覧
表中の怖]1mは松本(2005)の予備i洲査によって得られた平均liIjH川lIiを表す。また,出現頻度Ⅲ総画数Ⅲ文字jit語親密度は天野・近藤(2003a,b)から算出した平均値 である。GT,ST,GN,SN語はそれぞれ,一般的例成語,t'二会的轡成iiiF1-股、リ中'11{紹,社会的ill性招を指す。
RSVP課題のT2に使用したjliIl激語
T2(Sctl) T2(Scl2)
Dislracta]
GT語ST語0N語SN語GT語ST語0N語SN調 窒息
泥棒 乱暴 犯罪 怪我 苦悩 不潔 故|IIT 変態 惨711台
逆算 座席 皮府 往復 慎重 FljmU 1il}除 国道 登録 賜而
喝滅幸忍薬悔害染災熱恐全不残源後危感鰹商
失望 悪口 重圧 幻滅 舌打 軽蔑 敵意 非雌 孤立 WF111i
内側 気櫛 市長 勉強 食塩 業紙 陶器 冷蔵 速度 偶数
発汗 緊張 対人 態度 目線 接客 雑談 観察 沈赫 表IW
嫌悪 拒絶 中傷 無視 低能 陰気 文句 失態 迷惑 混雑
沈黙 顔色 同iii 面接 視線 注目 聴衆 雄弁 朗読 会話
競争 装腫 調査 産業 移1,J 権利 厳正 範U11 駐」に 背jit
柔道 我慢 階段 除繭 '1輪Ⅲ 自慢 部,ll1 書研 首都 部屋
運命放送 銀行両面 施設平然 釣具食券 献血抱負 漂白本棚 通信伝票 任期地域 脈拍ドI間 家具戸棚
乗り工 理山 寿命 強火 近所 案外 対決 図形 l逢上 室内
欧米 窓口 対応 呼吸 派手 内Ihi 美化 出版 合図 呑気
辛口 参加 石油 昆布 仕甑 手洗 円卓 記入 正大 大変
外見 IIL圧 町内 一般 必死 方角 重力 牛肉 人物 氏名 iivqilJlilli
出現頻度 総画数 文字親密度
3,3 5224 21.10 5.80
4.11 14035 16.38 602 2.38
2469 [9.60 5.68
2.37 2582
【9.00 5.56
4.00 5548 21.20 5.85
3.96 5561 21.20 5.73
2.33 2389 19.80 5.79
2.37 2437 19.20 5.67
4.()0 5567 20.,0 590