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社交不安における安静時と不安喚起時の注意バイアス

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-38 196

-社交不安における安静時と不安喚起時の注意バイアス

○松原 弘和1)、境 泉洋2) 1 )医療法人 養生園 TAOKAこころの医療センター、 2 )宮崎大学教育学部 【問題と目的】 社交不安症は最も多くの人が苦しむ不安症の 1 つと いわれている(NICE,2013)。Clark & Wells (1995) とHofmann(2007)は社交不安症状を維持する認知的要 因として,自己注目を挙げている。Rapee & Heimberg (1997)は内的な情報と社交的環境における脅威の認 知の両方に注意資源が割かれるとしている。これらの 認知モデル・認知行動モデルについての研究では,社 交不安症における注意に関する見解が一致していると は言い難い。 Kanai et al.(2012)は事象関連電位を用いて高社 交不安者の注意について検討し,内的刺激に対する注 意が顕著に認められることを示している。しかし、守 谷・丹野(2007)および金井(2013)は社交不安の注 意を検討する際には安静時のみでなく不安喚起状態で の注意に注目する必要があると指摘している。 本研究では、社交不安の高い者は低い者に比べて, 不安喚起状態で脅威刺激に対する注意バイアスがより 喚起されるかを検証する。研究参加者を高社交不安群 と低社交不安群に分類し,安静状態と不安喚起状態で 外的刺激に対する注意バイアスに差が示されるかの検 討を目的とする。Mogg et al.(2004)は社交不安者 について,健常者よりも抑うつ傾向があると示してお り,Mathews et al.(1996)は抑うつ者は健常者より も社会的脅威刺激に対する注意バイアスが認められる と示している。このことから,抑うつが社交不安に与 える影響を考慮して検証を行う。 【方法】 1 . 対象者 A 大学で心理学に関する講義を受講する大学生411 名(男性:233名;平均年齢:19.59歳,標準偏差:2.13) を対象に質問紙を配布し,得点によってスクリーニン グを行った。日本語版Social Interaction Anxiety Scale(SIAS,金井ら,2004)の得点が平均値±0.5以上 離れている者で,研究参加協力を得られた者を高社交 不安群(19名)および低社交不安群(11名)として, 対象者とした。 2 . 測度 1 . 社交不安傾向:SIAS(金井ら,2004) 2 . 抑うつ傾向:自己評価式抑うつ尺度(Self-Rating Depression Scale:SDS,福田・小林,1973) 3 . 主観的不安:Subjective Units of Distress

Scale(SUDs) 4 . 注意バイアス:ドット・プローブ課題 5 . 注意の不安定性:河崎ら(2009)を参考に11件 法で測定。 3 . 手続き 安静期前:SUDsへの回答 安静期: 3 分間の安静期 安静期後:SIAS,SDS,SUDsへの回答およびドット・ プローブ課題の遂行 教示: 3 分間のスピーチ課題を教示 教示後:SUDsへの回答およびドット・プローブ課題 の遂行 準備期: 2 分間のスピーチ準備時間 直前期:オーディエンス入室およびSUDsへの回答 課題実施: 3 分間のスピーチを実施 終了後:オーディエンス退室,SUDsへの回答および デブリーフィング 4 . 倫理的配慮 平成27年度徳島大学総合科学部研究倫理審査委員会 の承認を得て実施された。 【結果】 1 . 操作チェック 独立変数を群(高社交不安/低社交不安),従属変 数をSIAS,SDSおよび注意の不安定性とする多変量分 散 分 析 の 結 果,Wilksの λ は 有 意 で あ り(F(3,26) =36.43, p <.001),SIAS(F(1,28)=109.20,p <.001, ηp 2 =.80),SDS (F(1,28)=36.18, p <.001,ηp 2 =.56), お よ び 注 意 の 不 安 定 性(F(1,28)=12.15, p <.01, ηp 2 =.30)は有意な主効果が認められ、いずれも高社 交不安群の方が低社交不安群よりも高い値が示され た。SIASに差が認められ,社交不安の高低に関する群 分けは妥当と判断された。また、SDSと注意の不安定 性に差が認められ,以後の分析ではこれらを共変量と した。 2 . 不安喚起手続の有効性 課題による不安喚起手続の有効性を確認するために 独立変数を群(高社交不安/低社交不安),測定時期を 5 時点(安静期前/安静期後/教示後/直前期/終了後), 従属変数をSUDsとする反復測定分散分析を行った。 Mauchlyの球面性の仮定が有意(χ2=41.38, df =9,p <.001)であったことから,Greenhouse-Geisserの方 法による自由度調整を行った。分析の結果,有意傾向 の交互作用(F(2.54)=2.56,p <.10,ηp 2 =.09)、およ び 有 意 な 時 期 の 主 効 果(F(2.54)=4.78,p <.01,

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-38 197 -ηp2=.16)が認められた。有意な群の主効果は認めら れなかった(F(1,26)=.01, n.s. ,ηp 2 =.00)。有意な 時期の主効果が認められたことからBonferroniの方法 による多重比較を行った。多重比較の結果,時期にお ける有意な差が認められ(F(4,23)=15.28,p <.001, ηp 2 =.73),直前期と教示後はその他の時期よりもSUDs 得点が高いことが示された。以上から,スピーチ課題 の教示によって,参加者の不安が高まったといえる。 3 . ドット・プローブ課題 注意バイアス得点の算出はMansell et al.(2003) およびNotebaert et al.(2015)を参考に,非脅威刺 激と手がかり刺激の提示位置が一致している時のRTか ら脅威刺激と手がかり刺激の提示位置が一致している 時のRTを引いた値とした。なお、手がかり刺激の位置 を誤答している反応,100ms未満の極端に早い反応お よび参加者内で平均値+2S.D.以上の極端に遅い反応は 注意バイアス得点の算出から除外した。群を独立変 数,注意バイアス得点を従属変数,測定時期を 2 時点 (安静期後/教示後)とする反復測定分散分析行った と こ ろ、 有 意 な 交 互 作 用 が 認 め ら れ た(F(1,26) =5.41,p <.05,ηp 2=.17)。単純主効果の検定を行った ところ,低社交不安群における時期の主効果(F(1,26) =6.93,p <.05,ηp 2 =.21)が認められた。有意な時期 の主効果(F(1,26)=7.27,p <.05,ηp 2 =.22)が認めら れ安静期後よりも教示後の方が注意バイアス得点は高 いことが示されたが,有意な群の主効果(F(1,26) =0.04, n.s. ,ηp 2 <.01)は認められなかった。この 結果をFig.1に示す。 【考察】 仮説に反して,不安換気手続による高社交不安群の 注意バイアスの増加は認められなかった。安静期後の 注意バイアスに関して,兼子(2010)と同様に社交不 安の程度による差異は示されなかった。また,金井 (2013)は日本人を対象とした研究では脅威刺激への 注意の偏りは認められにくいと指摘しており、本研究 でも同様の結果が示された。このことから、五十嵐・ 嶋田(2005)の指摘と同様に高社交不安者は不安状態 に関係なく注意バイアスが生じ,低社交不安者は不安 が高まると注意バイアスが生じると言える。本研究の 結果から高社交不安者の外的刺激に対する注意を指摘 するRapee & Heimberg(1997)のモデルを支持しな かった。 限界として、高社交不安群と低社交不安群で社交不 安の程度に有意な差は認められたものの、平均値から +0.5以上離れている基準でスクリーニングであり、社 交不安の特徴が十分に反映されたとは言い難い。ま た、不安喚起手続についても主観的評価のみでの判断 に留まった。さらに、本研究は外的刺激に対する注意 バイアスについての検討であるため、内的刺激に対す る注意バイアスに関しては検討できていない。そのた め、今後の研究ではより厳しいスクリーニング基準で の検討、不安喚起手続についての多面的評価および内 的刺激に対する注意バイアスの検討が求められる。

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