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関本栄一(訳註) (38.10.1)

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(1)

43

中世英詩「梟とナイティンゲール」(III) 関本栄一(訳註)

(38.10.1)

1291.ナイティンゲールは,溜息をついてじっと止り木にとまってお りました.彼女が大変思慮深くなっていたのには,それ相応の理由がござ います.何故ならば,梟の抗弁には,至極最もな筋道が通っていましたの・

いらう

で.彼女は考え深くなって,これからさき,梟にむかって如何に応答べき か,大いに迷いました.

1297.だが,彼女はよく考えぬいてから(機智を充分働かしてから)・

「何ですッて!」と叫んだ. 「梟!お前さんは,ご自分の知識をひけらか していらっしゃるね. (ご自分が頭が縦横に働くのを自慢しているね.)お 前さんは,ご自分の知識が,那辺よりきたるかを(如何なる源よりきたる

BB

かを)ご存知ないが,そりゃ,妖術が因となっているんだよ1).そこで,お 前さんが‑この痴れ者めッ!‑もし人間様の近くにおりたいと願うならば, 身についた妖術をきれいさっぱりぬぐいとらにゃならないよ.そうでなけ れば,片田舎に飛び去らなげやならないんだよ.

1305.何故ッて,妖術に秀いでた者は皆,昔から坊さんによって現わ れていたからだよ.お前さんも決して妖術を棄てなかったね.私はたった いまさっき,お前さんは呪われているんだといった.すると,お前さん

は,却って,私が聖職についているのかと軽蔑にみちた調子で私にしっぺ

おちこち

返しをしたね2).だが,お前さんが呪われていることは3',遠近問わず, 広く知られていることなので,この上,さらにお前さんのことを悪くいう

のに田舎住いの坊さんのロをかりるまでもないが,どうでもお前さんは悪

い奴なんだよ.何故ッて,子供達もお前さんのことを悪し様にいい,大人

(2)

二達も悪賢い臭めと呼んでいるからね.

1317.私や,次のようなことを聞き及んでいるよ. ‑それは筋の通っ てることだがね‑お前さんが,自分こそは(起りそうな事態を知っている) と常日頃いっておいでのように,如何なる事態が惹起すかを正しく知って いる者は,さだめし占星術に熟練しているに達いないということを.4)だ がお前さんは天空の星屑を遠くから眺める以外,一体,星について何をご 存知なのかね?この痴れ者めッ! ‑恰度,そういうこと(占星術)につい て何一つ知らない動物や人間様が天が下に沢山いるようにね.

・′ヾ・‑ン′

1325.例えば,猿とい奴は5),なるほど,本を眺め一枚一枚貢をくくり, さらにそれを元通りに閉ぢることはできようが,だからといって,以前よ りずうッと学識を身につけるわけじゃないんだよ.お前さんもご同様に星 をみつめていなさるけれど,だからといって,それだけ賢こくなるわけじ ゃないさ.この痴れ者めッ!しかもお前さんは,私が人間様のお住居の傍 で歌い,奥方達に不義を犯すよう教えたといって,私をばひどく批難なさ ったもんだれお前さんは,全く大嘘つきだ.嫌らしい奴めッ!私が原因

aa完

となって,夫婦の契が犯されたことは決してなかったよ.

うるをとめ

1337.だが,私が,奥方達や見目震わしい処女のおる処で歌い,叫ぶの は本当だし,また私が愛について歌うのも本当だよ.何故ッて,恥Lから

ssss

ぬ結婚生活を送っている貞淑な奥方は,密男と恋をもてあそぶよりも,㊨

:lSis

のが殿御を愛することができるんですよ6).また処女さんは,貞操を失う ことなしに恋人を選ぶことができるんですよ.しかも, 「背の君」とお呼 びするにふさわしい方を清らかな愛情をもって愛し申し上げることができ るんですよ.

1347.かような愛をば,私や,常日頃お教えしてまたおいさめ申してる

λノで,私の申上げたことといったら,こういうことだけなんですよ.だが,

(3)

中世英詩「梟とナイティンゲ‑ル」 (Ill) 45

世間には意志の弱い(情にもろい)奥方もおられるけれど,一体,私やそ

ヨsss

ういう奥方のために責を負うべきでしょうかね.と申しますのも,女性は 生れつき情にもろい甲で,一人のひどく溜息まじりにしきりに求愛する馬

をみ冴

鹿者の手練手管にあって,たまさかに女性が,一時道を踏み外すこともあ

m.盟酵;

るんですよ.女性が道ならぬ恋をしたからといって,そのために私の歌が

をみか

‑責めらるべきでしょうか?たとい,女性が人知れぬ恋に身をやつしている からとて,私や私の歌でもって,その恋心を抑えることはできませんよ.

をみ7>もナそ

1359.女性とは気のむくままに浮かれて,衣の裳裾を濡らすものなんだ

こころ

よ.一意志のおもむくまま,女の道を守ることもあるし,踏み外すことにも

こころ

なるんだよ. ‑そこで,女が意志のむくままにたわむれて道を踏み外そう が,私や私の歌を振舞っているんだよ.何故ッて,誤まって用いれば,

しろものこがねしろがね

この世のものはどんな代物でも悪くなるもんだよ.例えば,黄金・白銀は

・何時の世にても値打ちのあるものだが,それらで,お前さんは不義(密通)

しろもの

とか不正を購うことができるんですよ.さらに,武器という代物は,平和 を維持するのに役立つものだが,盗賊共がそれらを振り廻すような淋しい

L・ところ可

土地では,武器のために人間様は法に反した(理不尽な)殺され方をする んですよ.

1373.このことは私の歌についても御同様さ.私の歌がよいものであ っても,人間様はそれによって身を誤まり,私の歌をば,悪徳や,その他

切韻tmi

の淫らな不行跡のもっともらしい原因にしてしまうのだよ.これでもお前

しめ

さんは‑この痴れ者奴ッが!‑愛の女神を責めるおつもりかね.男女 の間の愛というものは,それがどんなものであっても,ごくあたりまえの ことなんですよ.だが,愛が強姦やら誘拐によって盗まれた場合には,そ の愛たるや清純さを失い,道ならぬ恋となるんですよ.聖なる十字架の怒

のり

り(神の怒り)が,このように正しき自然の法則に逆う者のうえに下され

(4)

んことを!こういう者は気がふれなければ不思議なくらいですよ.いや,

きやつねぐらやから

彼奴等はまさに気がふれてるんですよ.蝿なしに青くまれる輩は気狂いな んだからね.

をみTTさが

1387.女性は情欲に弱い性の持主であって7),しかも情欲(肉欲)を抑 えることは困難なんですよ.女性が情欲に耐えられなくて,情欲のために

つまづ

道を踏み外したとても,何の不思議はないんですよ.また,情欲という贋 き石によって,誤を犯すが,彼等(女性)とてすべてを失ったわけではな いですよ.何故ッて,身を誤まらせた結果,堕落の淵から起ち上った女性

も多いんだよ.一体8),この世の罪障はただ‑種類じゃなくて,二種類あ るんだよ.肉欲に起因している罪障と,精神欲(心の欲)に起因してる罪 障とだよ.

わな

1399.いずれにしても,人間様は肉欲という民にかかって,酒ぴたりに

こころしつと

なり,奔放になり,好色になり,その結果,人間様の精神は嫉妬と憎しみ によって,道を誤まりその後ずうっと世上の享楽から生ずる快楽をもとめ, さらにはだんだんと途方もなくそれを追い求め,温和な寛大な心情には少 しも意を払わず,倣憎さによって高い地位にのぼると,身分卑しい者達を 軽蔑するんですよ.

からだこころ

1407.もしお前さん御存知ならば,肉体と精神といずれが悪いのか,私 に本当のことを云っておくれでないか.もしお前さんが誠意をもって答え

からだこころ

るつもりなら,肉体(肉欲)は精神(の欲)より小さな悪だと答えること

こころ

ができようよ9).汚れのない肉体をもちながら,精神は悪魔の友であるよ

をのこをのこをみな

うな男性が世には多い10)だから,男性は女性にむかって,肉欲があると て,大声を出して激しくその非を鳴らすべきではないんだよ.だが,おの

をのこによし上う

れが倣慢11)という最も悪い罪悪に耽ってる男性は,女性を淫奔だと責める

だろうよ.

(5)

中世芙詩「梟とナイティンゲール」 (Ill) Wi

をとめ

1417.しかし,もし私が歌を歌う時,奥方や処女に愛を説いたとして

をとめ

ち,私やよろこんで奥方や処女の味方になるつもりですよ.たとい,‑お 前さ ̄んが如何ように一部始終をお考えなさろうと.私のいうことをお聞き

わけ

なさいッて!私や,お前さんにとことんまで理由を話してやるからね・

をとめをみ方

1423.処女が人知れぬ恋の道にてみそかごとしている場合,女という

さがやみぢみさを

ものの生れついての性によって,恋の闇路に頃き操を失うんだよ.

をみ7>

だが,暫しの間,女は浮気者でいるが,ひどく道を踏み外してしまうこ

をみな

とは決してないんだよ.女は教会の拘束(聖式)によって,おのれの犯し た罪悪から逃れ,正しい路に戻れるものなんだよ.そしてその後は,何等

とのごいと

辱しめを受けることなく,おのが殿御として愛しき人を手中にし,以前に は小暗き夜毎に人目を忍んで会いにいった人に,晴れて日の目の明るい時 に会いにゆけるんですよ12)

をとめをとめ

1433.若い処女は,次のような仔細を全然知らないんですよ.処女の

i‑5Eサ

若い血潮がおのが進退を誤まらせ,また愚かな男によって,あらゆる手練

をのこ

手管を用いられて,自分が誘惑されるということを.つまり,愚かな男は

をとめこころ

処女の前に姿を現わしたり隠したりし,また,意のままにしたり,膝を屈し

をとめをと

て愛をこうたりして,おのが手中に入れて,その処女を顧みない結果,処

めをとめ

女が屡々長い間悲歎にくれるんですよ13)若い処女がこうして道を踏み外

をとめ

したとしても,どうしておさえることができましょうか.処女はそれが (恋の闇路)がどういうものか知らなかったので,恋の遊びをしてみようと

やわらて浄ず

思ったのさ.その結果,無法な輩を手懐ける恋の戯れがどんなものか,と くと知ったわけさ.

¥3Bms,

1446.私や,恋の与える悲しみで,処女が顔をしかめてるのを見ると, あわれに思って,放っておくわけにはゆかずに,彼女のために楽しい歌を

SB

歌ってやるんですよ.私や,恋の痛手に瑞いでいる者たちに,私の歌によ

(6)

って,かような恋は決して永続きはしないんだということを教えてやって るんですよ.つまり,私の歌だって暫しの間しか続かず,また愛(の女神)

ほほえこいごころ

ち,かような処女の上に暫しの間しか微笑まないで,消え失せ,熱き恋情 も素早く静まるものなんですよ.私や,彼等の間に入って歌いますよ.

‑始め高く,終りは低い調子で‑そして,暫らくして,私やまったく

くだんをとめこいごころ

歌うのをやめてしまいます.件の処女は,私が歌をやめてしまうと,恋情 も私の歌と同様になることを知ってますよ.というのは,恋情とは.素早 くやってきて,素早く消え去ってゆくただ一瞬の熱情にすぎないものです から.

くだんこいごころ

1463.件の処女は,私の示したみせしめによって恋情の機微をさとり, おのがなした無分別な振舞をば,よき忠告となし,私の歌によって嘆息し, 奔放な(出来心の)恋愛は永続きはしないことをさとるのですよ.

しかし,お前さんが次のような事情を御知りになることを,私や,心か ら望んでるんですよ.私にとっては,奥方の奔放さはまことに我慢ならな いんですよ.だが,奥方が私のことに充分御注意くださるならば,私や, 私がひなを生む時節には決して歌を歌わないことが御分りの筈ですよ.そ して,奥方にとっては,夫婦のちぎりはきびしく思えても,馬鹿者のいう ことなどは振り捨てねばならないんですよ.また,殿方が,他人様の奥方 に思いを寄せるがごとくお振舞いなさるのは,私にとっては,心に衝撃を

くらうことなんですよ14.

1477.何故ッて,この間の事情(つまり,他人様の奥方に思いをよせる

こと)は,次の二つの条件のいづれかの場合で,決して第三の例証をあげ

ることはできないんですよ.つまり,殿方が大変御立派でたくましい方で

あるか,虚弱で取柄のない方であるか,いずれかの場合です.もし殿方が

御立派でおられるなら,分別のあるものは誰だって,その御方を汚すよう

(7)

中世英詩「梟とナイティンゲ‑ル」 (Ill) 49

Ii:ことをば決して望みませんよ.‑とりわけ,その方の奥方を通じて.

何故ッて,こういう方(分別のある方)は,恐らく赤面させられたり, 万が一にも,去勢されたりすることを恐れるんですよ15)っまり,それほ

どまでになることは望まないんですよ.たとい,こういう仕儀を恐れない ものでも,御立派な方から奥方をかどわかすようなことは人倫にそわない 愚かしい振舞なんですよ.

1491.また,もし殿方が虚弱で,夜のお勤めがまことに拙なく,食事も

やから

細々としてたら16)かような取柄のない輩が奥方の体を自由にした時,ど

やから

うして奥方としては我慢できましょうかね.かような輩が恋するものの股

をみ乃・

をまさぐったら,どうして女性は我慢できましょうかね?こういうことか ら,もし他人様の御寝所にこっそりしのびこめば,一方の殿御(たくまし い殿方)はその名誉を汚され,虚弱な殿御は,奥方を通して,恥しい目に あわれることを,お前さんはとくとお分りだろうね17)

1500.何故ッて,たくましい御立派な御方が殿方でいらっしゃる場合

ふしど

は,お前さんは,その方の奥方と臥所を共にしたら,恐らく散々な目にあ うことをお考えだろうね.一方,もし殿方があわれにも虚弱でいらっしゃ る場合は,お前さんはどんなお楽しみを手中にすることができようかね.

また,もしお前さんが,奥方は誰と床を共にするかに思いをはせれば,む かむかするような気持で,お楽しみをあがなうのももっともなことだよ.

私や,そのあと,どんな御身分のある御方が奥方を御訪ねになっていらっ しゃるのか存じませんよ.

おくがたふしど

もし,殿方が,奥方は誰と臥所を共にしたのだろうかと思案するなら, 愛情はきっと消えうせてしまうものですよ.』

1511.梟はナイティンゲ‑ルのかような弁論には満足していました.

といいますのも,梟は相手のナイテ1ンゲ‑ルは,最初こそ大変巧みにま

(8)

くしたてていましたが,結局は間違った弁論をやりおったと考えたからで した.そこで,次のようにいいだしました18)

をとめ

「今こそ,お前の考えている処女というものが分ったよ.お前はそうい った処女たちの味方となり,弁護し,あまつさえ,手放しにお覚めだね.

をとめほ

ところが,御夫人がたはわしの処えやってきて愚痴をこぼされるんだよ.

何故ッて,屡々御夫婦の仲が不和になり,その結果,殿御は好んで他の女

を ん7>つく

性を犯すがごとき罪過を犯し,おのれの財貨をば女性のことに費し尽し,

をみ廿

一片の真心もない女性につきまとっているのに,壁も破れ廃屋同然の家に は,食も細々としている貞淑な正妻が待っておるんだよ.殿御はたまさか 家に戻ってはくるが,あえて自分からは一言も声を掛けようとしないで, 気でもふれたかのように,声をあげて叱りつけ,何等これといってよいこ

とをもたらさないんだよ.

1535.女房の振舞は,すべて夫にとっては不愉快の種であり,口に出し ていうことは,すべて夫の気拝をいらいらさせるんだよ.そして妻君が何 ̄

げき

一つ不行跡を働かない時でも,屡々歯に夫より一撃喰らわせられるんだ よ.こういう事情では,どんな夫だって,その妻君をして女の道を踏み外

日KSA

せてしまうというもんだよ.つまり,女性がおのが心を滞足させるように

;as]旨SB盟娼

と,世の男性が女性を虚待するようなもんなのだよ.ああ,神様は御見通

をみ乃・

しのことさ!だから,たとい女房が,おのが夫をして不貞を働く女性の亭 主とさせても,決して女性は責められるような筋合はないんだよ.

かんばせ

1545.ところで,御自分の奥方が,その容貌美わしく,体も均整がと れ,いと愛情のこまやかな場合がままあるよ.ああ!それなのに殿方たる, や愛情を無暗やたらと,奥方の髪の毛一本の価値もないような女性にふり

をんTT をのこ

そそぐなんて,一段とものの筋道に適わぬことだよ.こういう手合の男が

mm*

この世には数多おるので,奥方としてもしっかりと身を持することができ

(9)

中世英詩「梟とナイティンゲ‑ル」 (Ill) 51

をd)な

+i:いんだよ19)っまり,殿方ときたら,どんな方でも女性にきっと話しか

をのこ

けるものさ.そこで,殿方は奥方が他の男と‑諸にいていと睦ましく話し ている姿をみると,奥方を直ぐにも離婚しようとお思いなんだよ.殿方は 奥方をば,錠を下し鍵をかけて幽閉しなさるんだが,こういうことからし て,結婚生活が屡々破られるんだよ.つまり,こういう虐待を受けると以 前には考えもつかなかったことが,ふと奥方の胸のうちに浮かんでくるも

ESS莞

のさ.そこで,こういう仕儀を噂の種となす輩はいづれ不運にあうもの さ.たといかような仕打ちをうけた奥方達が殿御に恨を晴らすとも.こう いう仔細について,御婦人がたは私の処え愚痴話をされにき,大変私の心 を悩ますんだよ.私や,御婦人方の御心痛の姿を拝見すると心が張り裂け ん許りになるんだよ.私や,御婦人がたと‑諸になって紅涙をしぼり,御 1‑婦人がたのためにキリスト様(神様)に御願いするんだよ. ‑御婦人が たが殿方から御自由の身になって,さらによき伴侶を御婦人におくり給え

とね.

1571.さて,私や,お前さんに反駁できることが他にあるのさ.そこで

きづ

だ,お前が無痛でありたいなら,これ以上答を出そうとなさるな.お前の 反駁には斬新さが全くないんだよ.つまり,多くの商人や騎士も奥方を愛

かみさん

し,養なっておられるんだし,多くの百姓さんも同様に女房を愛し,養な っているんだよ20)したがって,貞淑な妻君は,結婚の際に誓ったように, 瀕舞も口もいとも憤しみ深く,あらゆる点において夫たるものに仕え21)t

殿方の御気持をいかにしたら御喜び申し上げることができようかと,千々 に心をくだいておられるんだよ.殿御が,所要あって,遠い国えと旅立た れると,その貞淑な奥方がたは,殿御の旅路についてまことに心安からず,

おろ

じっと腰を下し,溜息をつき,心に悲しみを抱いて,殿御を思いこがれて

は御心労されるんだよ.そして,皆さんがた,それぞれ,殿御のためを思

(10)

っては,悲しみの日々を送り,夜も寝ないでおられ,その間といったら, 奥方たちにとっては,まことに‑歩一歩が, ‑哩に思えるのだよ. (一日:

千秋の思いでおられるんだよ.)

1593.私や,奥方を除いた他の方たちが寝てしまわれると,ただひとり 屋敷の外で,奥方の心の苦しみをお聞きし,胸中を御察し申し上げるんだ よ.そして,奥方のために,夜になるとお歌い申し上げるんだよ.しか

しらべ

ち,彼女のためを思って,私や,歌の調子をばいささか悲しみにみちた調 べにするんだよ.私や,彼女の悲しみを幾分なりとも私が背負ってやるの・

で,彼女には大歓迎を受けるのだよ.つまり,私や,自分で,できるだけ

ささ

彼女の心の支えとなってやってるんだよ.彼女が真直ぐな路を歩めるよう にね.ところが,お前は,私をひどくいらいらさせたので,私の心は怒り で張り裂けんばかりで,やっとロを開いてるくらいなんだよ.だが,私や,.

まだまだお前に反駁するつもりだよ.

1607.お前は,私が人間様の憎まれもので,皆さんが腹をたてて,石や 棒切れでもって私を脅やかし殺してしまい,人間様のお住居の生垣にぶら

かささぎ

さげて,畑から鵜や魂をおどして,私めに追い払わせるのだとほざかれた ね.成程,御尤もなことだが,私や人間様に親切心をしめし,人間様のた めには血を流してるくらいですぞ.私や,人間様のために死を陪して親切 心をしめしているんですぞ.だからお前は私にゃもう勝目はないのさ22)

ほむくろ

1619.何故だって!お前は死んで干し上ったとしても,その尻体は何の,, お役にもたたぬからね.私や,お前がどんなお役にたつことができるのか

しろもの

とんと知らんね.お前ははいともあわれな代物にすぎないからさ.

いのち

1623.ところが,私や,たとい生命を失なっても,立派な御役にたっ

むくろ

ておるんだよ.私自身は,小枝にぶらさげられ,屍体となっては,森の繁

みにおかれるかもしれないが,それでこそ,人間様は′上島をおびきよせ捕λ

(11)

中世英詩「梟とナイティンゲ‑ル」 (Ill) 53

えることもできるし,食膳のためには,素晴らしい焼肉を手に入れること ができようというものさ23)ところが,お前たるや,この世にあっても,

彼の世にいっても,何一つ人間様の御役にたってないじゃないかね.だか

ひ乃.

ら,私にや,お前が如何なる目的で,雛鳥をおかえしなさるんか分らんね.」

1635.ナイティンゲ‑ルは,梟のこういった反論を聞いていましたが, 花の咲き乱れている小枝の上をぴょんぴょん飛んで,前よりももっと高い 小枝にとまりました.そして,次のように梟にむかっていいだしました.

「梟よ!今度はお前さんが用心なさいよ!私やお前さんにこれ以上答弁 するつもりはないよ24)何故ッて,こうなってはお前さんの博識も何の役 にもたたないからだよ.お前さんは人間に嫌われており,生きとし生きる ものがお前さんに対して腹をたてているとて御自慢なさっていらっしゃる ね.そのうえ,金切声や大声をあげたために,お前さんは御自分が呪われ たものだということをよくよくお欺きの御様子だね.

1645.お前さんは,子供達がお前さんを捕えると,切枝に高々とぶら下

かかし

げて八つ裂きにしておいて,案山子をつくるんだとお云いだね.思うに, 私や,お前さんは勝負を投げだしたんだとね.また,お前さんは御自分の 恥をさらして御自慢なさってるよ.思うに,お前さんは私に対して敗北し たことを甘受すべきだよ. (白旗をかかぐるべきだよ.)とどのつまり,お 前さんはおのれの恥を御自慢なさっているんだよ.」

1653.ナイティンゲ‑ルは,これだけの言葉を云ってしまうと,非常に

のど

結構な美しい場所にとまってから,喉(声)の調子をととのえて非常に長 く楽しげに噛りましたので,あちこちの人々の瓦にその鳴る声音は達した

SES^^^^^^^^^^^^^^^^^^E^^^S^Ei

ほどでした.そこで,棉,うたい鵜,啄木鳥25)その他多くの大小様々な

まわり

鳥がすぐと彼女の周囲にと飛んできました.それらの鳥達には,ナイティ

ンゲールが梟に打勝ったと思えたので,彼等は手離Lで,喜びの声をあげ,

(12)

樹々の間に喜びがみちわたるほどに,いろいろの声で噛りました.ちょう ど,人間様がダイス遊び26)をやっていて,負けた者にむかって,みっとも ない,恥さらしだといって,ひどく批難するように.

1667.くだんの梟はこれらの声を聞くとすぐさま叫びました.

・SB嗣p

「お前はおのが仲間を招き寄せて,私と闘うつもりかね.この馬鹿者奴ッ が!笑止千万なことだッ!お前にはこの私と聞える力なんかありゃしない よ.ここえ集ってきたお前の仲間達が叫び声をあげてるのはどういうつも りかね.私にゃ,お前が私と闘うために,仲間を呼び寄せたと思えるね・

お前がここを飛び去る前に,私の仲間のものたちの力量がどんなものかを

やから

知らしめてやるよ.鈎形の境と鋭く曲った爪をもった輩こそみんな私の仲 間で,もし私が彼等にやってこいと,一声,声をかければきっとやってく るんだよ.

1679.勇猛な戦士の雄鶏だって,当然こちらに味方するんだよ.何故 ッて,私も雄鶏もともに声がさえており,夜には身をひそめているからだ よ. (夜の闇にまざれているからだよ.)もし,私が『泥棒!泥棒!』と叫

おごりごころ

べば,お前をやつけようとする強い仲間達がやってくると,お前の自負心 はすぐとぐらつくんだよ.私や,お前なんかちっとも気にかけてないよ!

夕方にならないうちに27)いやらしいお前の羽毛一本だって残しちゃおき ませんよ.だが,我々がここ‑やってきた時,我々に正しい判断が与えら れるならば,その判決を守ろうではないかと意見の一致をみているんだよ.

それなのに,今,この協定(約束)を破ろうとなさるんかね.私や,思う

i:<

んだが,お前は判決を受けいれ難いんじゃないかね. (みとめがたいんじゃ ないかね.)そこで,お前は判決をあえて守ろうとしないで,今こそはと,

C*;<.

御託をならべて闘いたいんだね.

1697.だが,私がお前と闘うために仲間にやってこいと,一声,声を掛

(13)

中世英詩「梟とナイティンゲ‑ル」 (Ill) 55

ける前に一言御忠告しておくよ.お前は私との闘いを中止して素早くここ から飛び去るべきだと.何故ッて,もしお前が私の仲間の攻撃をここで待 機している気ならば,私がもっている鋭い爪で,きっとお前に今までとは 適った調子の歌を歌わせ,あらゆる争いごとに悪態をつかさせてやるぞ.

それにお前の仲間にや,私の顔を正視できるような勇猛果敢な輩は一人だ っておらんからね.」

1707.梟はかように,いとも大胆に陳べたてました.何故かというと, 彼女はおのが仲間を素早く呼び寄せるつもりは毛頭心になく,却って,こ

いらえ

ういった抗弁に対するナイティンゲ‑ルの応答を望んでいたからです.そ れにまた,人間様のうちにも,鋭い槍や楯をもちながら,力量は少しもな

as巳

くとも,戦の庭においては,大胆不敵な言葉を弄したり,かまびすしい振 舞をして,敵をしてその肝ッ玉に冷汗をかかせる輩もございます28)

みそさざい

1717.だが,この時,嘲るのに妙をえている鴬が夜明けと共に,このナ イティンゲ‑ルを助けるためにやってきた.何故ならば,彼女の声は目立

oi

たぬが(小さいが),その咽喉はよく,その歌声は多くの聞く人々の心を 楽しませるからです.かてて加えて,彼女は頭が明敏であった29)と申しま すのは,彼女は樹々の間で青くまれないで,人間様の間で青くまれ,人間

いづこ

様から知慧を授かったからです.また,彼女は何処の地にても,答弁しよ うと思えばやれるんですよ.もし必要とあれば,王様の御前でも30) ‑ で,この彼女が次のようにいいだしました.

ひとこと

1729. 「私の云うことをよくお聞きなさい.私にも一言云わせなさい!

何ということですッ!お前様方は,平和を掻き乱して御立派な王様に恥を

sxmi.

かかせるお心算かね3.ところが,まさかにも,王様はお隠れになったり, 御不具になったりしてはいませんよ.ですから,もし,王様の御統治遊ば

されている領地で平和(治安)を掻き乱すことがあれば,お前さん方御二

(14)

人共,苦難と辱しめを蒙むらねばなりませんよ.口論をやめて,仲直りを

Ho

なさいよ!すぐにもお二方が判断を下して,この論争(申立て)に決をな さいよ.‑一刻も早く一件が落着するように.」と.

いらえ

1739.ナイティンゲールは次のように応答ました. 「みそさざいさん!

貴方のおっしゃる通りですよ. (そうありたいものですよ.)ですけど,私

のり

ゃ貴方のお願いごとには従いませんよ.私は法律は守りたいんですよ.臥

のりこんりん

や法律を無視して,その結果,敗北(敗訴)させられるようなことは金輪

ぎい

際のぞみませんよ.だからといっても,私や如何なる裁決をも恐れちゃい ませんよ.しかも,私や賢人であらせるニコラス先生32)が,われわれの間に 判官としてたっていただくことを前もって約束しておいたんですよ.私や, 先生がきっとそうして下さることを信じてるんですよ.ですが,一体,わ れわれには先生のおられる場所が分りましょうかね?」

ta‑

1750.くだんのみそさざいは科の木にとまっていまして,次のように

いらえ

応答ました.

芦眉smms

「何ですッて!お前さんたち御二人は先生の御住居を御存知ないのかね?

ポート・シャム33)に住んでおられるんですよ.その町はド‑シット州にあ って,小高い草原地が海にむかってひらけてるんですよ.先生はその地で,

E3Eォ^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^Ka唱だ

数多の正しい御判断を下され,また,数多の賢いことを述べられたり,普 かれたりすることによって,遥かにスコットランドにいたるまで34)お蔭で, ものごとすべてが,一層うまくいってるんですよ.

1759.先生をさがし申し上げるのは誠に容易なことですよ.というのは, 先生のお住居はただ一軒で他にございませんからね. (いぶせき住居に隠 れ住まわれていること.)こういう事柄に対しては,坊さんたちは当然批難

されると同時に,また,先生の御名前を耳にし,その御仕事ぶりを御存知

の方々も批難されるべきですよ.一体,何故,そういう人々は,先生から

(15)

中世莱詩「具とナイティンゲール」 (Ill) 57

知識をお教えいただくために一緒に住み,先生と行住坐臥を共にしようと,I それ相応の御住居を諸処方々に御供申し上げようと計画されないんですか ね.」

いらえ

1769.梟はこれに応答て次のようにいいました. 「まことに御尤もなこ

すぐ

とですね.富裕な方々は,多くの事柄に老練の才をもっていらっしゃる傑 れた御方を打すてておくような誤まった振舞(物の道理にあわぬ振舞)を・

してるんですね.しかも冷淡にも(無分別にも)充分なる蔵費を差上げず, 御人柄を過少評価してるんですね.富裕な方がたは,御自分たちの身内の・

ものに対しては,大変大らかで子供たちにも金銭を与えているんだよ. (千 供の生活も充分にしてやってるんだよ^35)だから,そういった人々の才智 では,ニコラス様の当然ともいえる御権利(御もとめ>36)を実行すること ができましうかね.いや,とんでもないこと,できッこありませんよ.だ が,我々は急いでニコラス様の処に赴き,おっしゃらんとする御決裁をお 聞きしましょうよ.」

「勿論,我々はそういたしましょう」と,ナイティンゲールはいってか ら,さらに,

「だが,我々が,それぞれ自分の意見こそ正しいんだと主張した事情を, 先生が御被断下さる前に,一体,誰が細部にわたって一部始終を繰返して 話すのだろうかね.」といいますと,梟は,次のようにいいました.

1784. 「そのことについては,私が充分貴方の御満足のゆくように,で きるだけ,全部にわたって始めから終りまで,一語一語(口移しで)お話 し申上げましょう・もし,私のいうことが間違っていると思われたら,皮 対されて,私めをおさえて下さい.」と.

こういった論議をしてから,彼等はそれぞれの仲間(の軍勢)を全く連れ

ないで、彼等の目的地であるポート・シャムに飛びたちました.だが,痩

(16)

様がたが私に彼等の論争はいかにうまい具合に終ったかをお尋ねになって ち,私には分りません.何故ならば,このお話しはこんな具合に終ってお

りますので. ‑第三部了. (全訳了)

⊂言主コ

1) Cawley氏が指適しているように,ナイティンゲ‑ルは1145行‑74行におい て,梟を批難しているが,少しもsorceryのことには言及していない. 1301行 から30行にわたる思想は次のように要約されるだろう.

「占星術に精通している人は,星から未来を占うことができるが,お前さんは星 について何一つ知らん.だから,お前さんは死者との霊感によって未来の出来 事を示さんとする.いわゆる̀necromancyをあやつって,奇妙な知識を手に入

れる破目になったのだ」という具合に梟を論難しているのである.

2) 1169行一74行及び1178.‑82行を参照のこと.

・3)ここは, 12世紀後半から13世紀前半において,非常に多くの者が破門された り「聖務停止」を云いわたされたことに対するallusionであるというのが,多 くの批評家(Borch, Dr. Huganir)などの通説である.

・4) 1317行‑20行は,本文校訂によると,数々の解釈があるが,一応このように 訳出してみた.

5) NeckamのDe Naturis Rerum, II. chaps. 128‑9に猿のもってうまれた人 真似の才能について詳述してある. 「猿は身振りばかりでなく,顔つきまで人間 に酷似しており,猿自身は人真似することに大いに満足感をいだいている」と.

・6) E.G. Stanley氏によれば,ナイティンゲ‑ルの見解は"courtlylove"に共 感よせるのが予想されるのに,反対の立場をとっているとしている.

7) 1387‑94行にわたるところで,ナイティンゲ‑ルは女の心の弱さ‑HFrailty, thy name is woman"‑をのべたてている.

S) 1395‑1416行にわたるところで.女の心の弱さから自然と罪悪の分析えと論

をすすめている.以下,七罪悪(SevenDeadly Sins)のことがのべられている

が,ナイティンブールの七罪悪についての取扱いはformalではなくて,しばし

ば七罪悪から分れた小枝ともいうべきものをあらわしている.普通は,七罪悪は

Gregory the Greatの分けかたに従っている.即ち,高慢心又は野心,怒,羨

望,強慾,怠惰,含食,淫蕩である. Carleton Brown氏編の「十四世紀の宗教

的押情詩」のうちの"An Old Man's Prayer" (No. 6)にも次のように七罪

悪のことがのべられている. 「わが生涯は悪と虚偽そのものだった.貧食はわが

(17)

中世英詩「梟とナイティンゲ‑ル」 (Ill) 59

楽人にして,しばしわれと共にあり,高慢はわが遊び友達,好色はわが洗濯女

‑‑羨望はわが伴侶,嘘はわが通弁,怠惰と眠りはわが同会者にして時折われ をいざなった」と.要するにナイティンゲールの七罪悪の取扱いは上述の宗教 行情詩と同様に,甚だ体系をととのえてはいないのである.

9)中世にあっては,肉体の罪悪は精神の罪悪よりも軽いとされているのが普通 である.

Ancrene Riwleにも次のようにのべられている. 「肉体の誘惑は足の傷になぞ らえるし,精神の誘惑は‑危険のあるため,当然もっと恐れられるが‑脂 の傷と呼ばれてよかろう.‑‑」と.

10) Atkins氏はここのところを, Lambeth Hamiliesの次のようなpassageと 此較している.

「高慢心.そはあらゆる悪の根元(始めであり,終り)である.そそは天使をシナ がらわしき悪魔にし,また人間にしても余りにも高慢になると,高慢のために.

天国より落ちたる悪魔の友人になってしまう」

ll)ここでも,やはり,高慢心を淫蕩よりも悪い罪悪としている.

12)ここの情況はHamlet IV. V. 49‑66におけるOpheliaの歌の感情と通ずる.

ものがあるが,ここでは,道徳的には健全ではないが,幸福なものとして終っ・

ている.

13)ここのくだりは, 「思いを懸けている処女」を手に入れんとする思性のやり方 を叙しており,一度手に入れてしまうと棄て去ってしまい,だまされた処女の 状態を,ごく常識的にのべている.

14)結婚と両立しない「宮廷風恋愛」 (amom courtois)を不可とし,結婚に終る 恋愛を可としている. cf. ll. 1417‑1433. (厨川文夫著;中世の英文学と英語よ

り引用)

15) 13世紀にあっては,自分の妻が姦淫をしているのを見つけた夫は,アングロ

・サクソン時代と異なって,妻や相手の男を殺すことは許されず,ただ相手の 男を去勢することが許されていた.日本の江戸時代の武士および町人の場合を 考えてみると仲々面白い.武家の場合には,いわゆる「お手討」,町人の場合に は相手の男から五両をとりあげた. (「川柳」などに詞刺されている.)

16)原文に"at bedde & at borde"とあるのは,結婚式において花嫁の応答と して心に秘めらるべきことであるが, "full maritalrelations"という意. 1506 年にPynsonによって印刷されたSarum Manualにも次のように書かれてあ

る.

「‑・私は(‑花嫁のこと),床においても食卓にても,神が私達を引き離すベ

(18)

く細命じになるまで, N.を私の夫とする」.

17)ここのところは,男が,相手の女が床を共にした卑しい奴のことを憶えてい る時には,姦夫姦婦の間には真の愛などあろう筈がないという意.

18) 1521行から1602行にわたる臭のいっていること,‑つまり,正妻には充分 衣食住を与えず,しかも屋敷に待たせておき,情婦にうつつをぬかしているよ

うな男の話‑は, Stanley氏によれば, The Penyworth of Wyttに幾分か 似ているということである.

19)ここのところは, Proverbs of Prophets, Poets, and Saintsのpassageと Stanley氏は比較している. 「もし美しい妻をもち,しかも妻には一生涯夫に対

して忠実であらんことを望むならば,妻が誰か男の者と一緒にいるというよう な過失をみても,やきもちをやいてはならぬ‑‑」

20)原文bondeman; the Conquest以前にはceorlもbondaも"un free peasant, villein"を意味していたが,ここでは意味が変ってbondeは"a tiller of the soil, a husbandmanという意味である.

21)貞淑な妻が夫の留守中,如何にひたすらに夫のことを想い,その身の上を心 配しているかということは, Ancrene Riwleにもparableとして叙述されてい るが,またChancerのFranklin's TaleにもDorigenがその夫に対する想い が叙述されている. Franklin's Tale V (F) 815‑36参照.

22)ここで,泉が人間様に対して,甚だ有益であるという議論をして,ナイティ ンゲ‑ルを苦境に追いやっている.

23) 1625‑30行にわたるところの意は,梟は死んで屍体となっても人間様の卸役 にたってるんだということを強調している.こういう論旨をして,ナイティン ゲ‑ルを沈黙させんとする心算.

24)農がこれ以上とやかく論争しあうことはないというのは論争文学によくあら われる表現であって, Winter and Summerにもこういう表現がある.いわば, 論争文学における常套表現と考えてよからう.

25)論争の終末において,種々の鳥,またはその他のものを集めるという形式は, やはり常套的表現であって, Water and WineとかFlorence et Blanchefleur などにもこの表現が用いられている.

26)ゲルマン民族は,ローマ人からアングロ・サクソン定住以前の時代にダイス を用いる遊びを身につけた.チェスのような盤は種々仕切られていた.最も普 通なダイスを用いる遊びは,いわゆる「西洋双六」であったそうだ.

27)夕暮には,中世期にあっては,両軍の軍勢は戦斗を中止するのが酎子であっ

た.お互いに暗闇の中ではお互いに敵方の姿を観察しえないからである.ここ

(19)

中値芙詩「梟とナイティンゲ‑ル」 (Ill) 61

では泉自身は夜間に眼がきくわけだが,戦いの慣行上,ナイティンゲ‑ルを夕 碁にならぬうちに敗北させるぞと意気をあげているのである.

28)ここのところの泉の叙述は1067‑74行にわたるナイティンゲ‑ルの叙述を意 識しているのである.

29)みそさざいは鳥類の王となった.つまり,鳥類が集って,一番高い処まで飛 んだものを仲間の王としようと議決した時,みそさざいは鷲の翼の下にかくれ て空中を飛んだのである.そこで,他の鳥たちより空中高く飛んだわけで,仲 間より王にされたものであった.

なお,みそさざいが梟と戦いをいどむことは, Macbeth, IV. ii. 9‑11参照.

30)みそさざいは上述のように鳥類の王であるから王様の御前でも対等にロをき きうるのである.

31)ここの王様とは多分Richard Iのことであろう.

32)原文; Maisterとは,学問と地位のある村の僧侶に対する名称と考えられてよ かろう.

33)多分,ギルフォードのニコラスはAbbotsburyの僧院に住んでいたのだろう.

AbbotsburyはPorteshamからわずかに2哩以内で,海から約一哩位の処であ る.しかも, Porteshamはその僧院の所有地である.

34)ギルド・フォードのニコラスとスコットランドとの関係は批評家などが述べ ているそうであるが,ただ遠隔の地までニコラスさんの名が鳴りひびいている と考えてよかろう.

Carleton Brownが偏した13世紀の英国拝情詩集のNo. 82.に,西の国(the West)の美女をたたえて, 「彼女たちの一人を,私はアイルランドからインドに 至る地域で,最も美わしき女性とはめん」というのがある.

35)子供たちが食べるものを充分にたべて肥えて健康そのもののこと.

36)ニコラス様の御権利とは,聖職者の高位昇位のことを意味している.

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