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ティームティーチングによる算数・数学教育の実践 的研究(1)

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(1)

奈良教育大学学術リポジトリNEAR

ティームティーチングによる算数・数学教育の実践 的研究(1)

著者 重松 敬一, 井戸野 佐知子, 勝美 芳雄

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

巻 44

号 1

ページ 19‑32

発行年 1995‑11‑24

その他のタイトル Research on Team‑teaching in Mathematics Education

URL http://hdl.handle.net/10105/1619

(2)

奈良教育大学紀要 第44巻 第1号(人文・社会)平成7年 Bull. NaraUniv. Educ, Vol. 44, No. 1 (Cult. &Soc), 1995

ティ‑ムティーチソグによる

算数・数学教育の実践的研究(1)

巾: 」・、敬 ・ (奈良教育大学数学教育学教室)

井戸野 佐知子 ・ 勝 美 芳 雄

(京都府教育委員会)  (奈良市教育委員会) (平成7年4月28日受理)

1 はじめに

平成5年度から文部省の第6次公立義務教育諸学校の教職員配置改善計酎こよって、小学校、

中学校の教師の加配によるティームティーチソグが実施されるようになった。これによる全国の 教員の加配は、平成10年度までに合計14,297人(小学校8,441人、中学校5,856人)である。

奈良県の場合、平成5年度に限ってみれば、小学校15人、中学校18人の合計33人が加配された。

加配教師がどのような教科を担当しているかの詳しい資料はないが、近くのある県では、小学 校では算数、中学校では数学を担当する加配教師が、全体的に多いという。

新しい学力観にもとづく教育課程では、幼稚園の環境による保育、小学校の生活科、中学校の 選択教科、高等学校のコア・オブショソによるカリキュラムと、学習者主体による教育のシステ

ムや学習指導の改善が指向されている。この一連の教育改革の中で、ティームティーチソグも捉 えなければならないが、児童生徒の減少に伴う教師の減員防止対策のみで捉えられないか懸念さ れるところである。

本稿では、まず、ティームティーチソグの概念を歴史的、今日的に再度検討したい。そして、

今回の計Lljによって実施されているティームティ‑チソグの事例から、算数・数学におけるティー ムティーチソグの概念形成を志向した一斉学習での授業モデルを提案したい。

2 ティームティーチングの概念 (1)ティームティーチングの意味

ティームティーチソグとは複数の教員が協力して授業を行う指導方法の総称であり、 「協力教 授」または、 「協力的な指導」とも呼ばれ、 「TT方式」とも略称されている。

ティームティーチソグは、 1957年、マサチューセッツ州レキシソトソのフラソクリソ小学校で 開始され、レキシソトソ・ティームティーチソグ・プログラム(LTTP)を契機に全米的な広 がりを見せ、やがてわが国にも紹介・導入された。そこにみられるティームティーチソグの多様 さを整理するため、 J. T.シャブリソはティームティーチソグを定義して、 「授業組織の‑樵 式で、教職員と彼らに割り当てられた生徒を含み、二人もしくはそれ以上の教師が、協力して、

同じ生徒グループの授業全体、またはその主要部面について責任をもつものである(1)。と表現し ている。

19

(3)

20 重 松 敬 一・井戸野 佐知子・勝 美 芳 雄

この定義が最も一般的なものと考えられている。これによると、校内での公的な、合法的な組 織であることを意味し、教師と生徒を一体とした組織なり授業を基本単位とするものであること、

また、 I 二人以上の専門教師間の協力組織であり、一人の教師と非専門的職員との協同は含まない ことを示している。

日俣周二は、授業改善、学校組織の改造、及び、その二つを、関連させる各学年毎の組織の改善 の三つをティームティーチング導入のねらいとしてあげ、単位学級を二人以上の教師が受け持つ 二人担任制ではなく、複数の教師が協力して指導をするのだという見解を示している(2)。

このようなティームティーチソグで協力して行う内容としては、

(D 指導計画や指導案の立案、作成、

実施単元をティームで指導する意義、教材研究、諸調査の実施、指導方法の決定、指導形態 及び、協力・分担の方法、学習集団編成の基準作成、担当者の決定、評価方法の検討等

② 必要な教材・教具の収集、作成

施設・設備の有効な活用、教材作成、器具・機器の準備等

③ 指導の実際 協同・分担授業

④ 指導の評価

児童生徒の評価、ティーム運営の評価、次回の課題検討、器具・機器の収納、教材・教具の 保管等

が考えられる。これらすべてにティーム全員の教師が関わることにより、 「ティーム全員の先生 が、自分たちの先生」という意識を児童生徒に持たせることができる0

指導の実際の場面では、学習の目標や課題に応じて、学習者の集団構成や指導形態を弾力的に 変えることにより、指導の効果を上げようとするものである。その際、教師がそれぞれの専門性 や持ち味を出しながら互いに協力して指導・支援に当たる必要がある。しかし、効率的な指導が 必ずしも児童生徒にとって充実した学習になるとは限らない。そこでは、児童生徒一一人II‑人が自 らの特性を生かし、充実した学習が行えるという学習者の視点からティームティーチングの意義 を考えていく必要がある。

(2)ティームティーチングの歴史

前出のように、全米に広がったティームテ{‑チソグは、その後わが国にも紹介された。その 第1波は、昭和43年(1968年)の学習指導要領で「指導の効率を高めるため、教師の特性を生か すと共に教師の協力的な指導の工夫をすること」と示され、各学校でのティームティーチソグの 研究実践が次第に進められるようになった。

近くでは、例えば奈良県桜井市桜井南小学校が、昭和45年から5年間、 「児童の全人的指導と 創造的学力の育成をめざしての協力指導‑学年共同経営と教担、 T ・ T方式の試み‑」と題し、

教師個々の特性・能力を認め合い生かしながら、協力分担による授業に取り組んだ事実がある(3)。

その報告書によると、このような授業の長所として児童の立場からは、次のようなことが挙げら れている。

① 興味が刺激され学習意欲が高まる。

② 他学級児童の意見や学習方法にふれることにより、思考や学習方法の幅が広がる。

(4)

ティームティ‑チソグによる算数・数学教育の実践的研究(1) 21

③ 他学級担任の人格や指導法に接し、隠れた個性・能力を伸長することができる。

④ 学年児童間の親密度が増し、仲間をひろげることができる。

また、教師の立場からは、次のようなことが挙げられている。

① 学年教師の共通理解を図ることにより、学級間の格差を少なくできるO

② 児童の能力を学年全体にレベルアップすることができる。

③ 個人観察・個人指導が行き届き、 ・人 ‑人を生かすことができる。

④ 教師の教材研究が徹底し、指導方法が向上する。

⑤ 器具・資料等の準備・製作等が効率的にできる。

⑥ 学年教師の人間関係が円滑になり、共同経営の実をあげることができる。

具体的には、自力解決を助けるプリントや「考えるシート」を作成し、問題解決の意欲を高め る方法が採られている。そして、児童はティームティーチング方式を好意的に受けとめ、学級の 壁が薄れのびのびと意欲的に学習するということが報告されている。

さらに、課題として次のようなことが挙げられている。

(彰 打ち合わせ時間がない。

② 学級経営で持ち味を出したいという願いと学年共同経営の絡み合わせが難しい。

③ 加配教員がほしい。

このようにして取り組まれたティームティーチソグも、日本では学級担任制‑の指向が根強く、

また、施設が対応できなかったこともあり、これ以上の広がりを見なかった。

しかし、その後、学校の施設面では、 1957年イギリスでオープソスペースでの授業が取り入れ られ、日本でも文部省の校舎の基準が変わりオープソスペースをもつ学校が増えてきた。また、

昭和56年に出された文部省教育課程一般指導資料で「個人差に応じる学習指導」の必要性が強調 され、教師達が‑一斉指導による授業のLtlで個人差に応じる指導の必要性を意識するようになった。

そこに、平成5年度からの文部省の第6次公立義務教育諸学校の教職員配置改善計画によって、

小学校、中学校に加配教員を加えたティームティーチングが実施されるようになったのである。

このティ‑ムティーチソグの広がりは、イタリアでは、児童数の減少により1990年には2学級 に3人の教師が配置され、 1700クラスで第3学年からのティームティーチングが実施され、イギ リスでは、外国語補助教師によるティ‑ムティ‑チソグがおこなわれるなど、諸外国で盛んになっ てきているといえよう。

(3)ティームティーチングに対する児童生徒の反応

ティ‑ムティ‑チソグは、授業計画、実施、評価において考えることができるが、このような 事例は、最近、数多く紹介されるようになった(4)。

ここでは、ティームティーチングの児童生徒‑の意義を考えるために、ある中学校数学でのティ‑

ムティーチソグ実施後の生徒‑のアソケ‑ト(5)から、児童生徒からみたティ‑ムティーチングの 問題を探ってみたい。アンケ‑トは、 学期の最後に1年生と3年生に対して行われ、ティーム

ティーチングでの学習の感想、希望、その他の項目で、自由記述による回答が求められた。

結果からみると、授業改革にふさわしく、ティームティーチソグによって授業が変わったとい

う実感は残ったようである。しかし、生徒にしてみれば、教師が二人になったのだから、一人で

指導されるよりも、もっとよくわかるはずとの期待があったが、実際には期待ほどには学習が進

(5)

22 重 松 敬 ‑‑・井戸野 佐知子・勝 美 芳 雄

まなかったようである。

以前と指導方法が同じで、むしろ精神的に緊張する、集中できない、などの批判的な意見もみ られた。これには、週2回しか実施できないという時間的な制約にもよることが多いようである。

今後として、副の教師も主たる教師の単なる補助ではなく、内容や指導の方法に応じて、主と 副の教師が交代して教えるなど、指導上のr̲夫が生徒の希望にみられた。

3 ティームティーチングと算数・数学教育

(1)ティームティーチングによる算数・数学教育の指導のねらいと形態

習熟の程度に差がつきやすい算数・数学においては、ティームティーチソグのねらいを次の2 点におく場合が多い。

(9 個に応じた指導を通して基礎的・基本的な学習内容を全員に確実に身に付けさせる。

② 学ぶ側にたった学習方法や学習形態を工夫し、 T̲体的に問題解決に取り組める児童生徒を育 成する。

そして、これらのねらいを達成するための指導形態を算数・数学の教材との関係で大まかに考 察すると次の四つになる。

(彰 概念形成教材での一斉指導を中心としたティームティーチソグ

② 習熟度に差が生じやすい教材での習熟の程度に応じるティ‑ムティーチソグ

③ 体験を重視する教材での興味・関心の違いに応じるティームティーチソグ

④ 作業を重視する教材での学習スタイルの違いに応じるティームティーチング

上述した4つの指導形態について、現在実践されている例を挙げながら、詳述してみよう。

① ‑斉指導を中心としたティームティーチング

ア. Tlが児童生徒の全員を対象に一斉指導を行い、 T2が必要な児童生徒へ個別指導をする場合 これは、教師の役割がはっきりしており、 1時間の授業の流れを止めることなく個別指導を行 うことができるので、最も導入し易い形である。

例えば、ある中学校では、 1時間中、 Tlが全員対象に従来の一斉指導を行い、 T2がときどき 遠慮気味に、必要生徒へ個別指導をしていた。中学生という段階で、特定の2、 3人だけを特別

に指導すること‑の抵抗を考えてのことであろう。

また、小学校の6学年の「比」の授業では、自分の意見を前に出て板書し、説明の途中で分か らなくなった児童ができたとき、 Tlがその児童に席に戻って考えるよう促し、次の児童を指名 した。すると、 TZがその児童のところへやってきて、考え方を整理することを支援し始めた。

その結果、この児童の顔には安堵感が戻った。 T。の動きがごく自然な流れの中での行動であり、

ティ‑ムティーチソグのよさが発揮されている。

ィ. TlとT2が役割を交代する場合

1時間の授業の中で、 Tl (一斉指導)と、 T2 (個別指導)の役割を交代しながら指導してい

く方法で、小学校での実践に多い。 1時間の授業の中で、一斉指導をする教師が代わることによ

り、授業の流れに変化ができ、児童の集中力を持続させることができる効果がある。しかし、あ

まり交代すると逆効果であり、 1時間の中に1‑2回が適当である。

(6)

ティームティーチソグによる算数・数学教育の実践的研究(1) 23

例えば、ティ‑ムティ‑チソグ加配であるTlが導入とまとめを担当し、学級担任であるT2が 展開部分の授業をするという役割分担をする小学校があった。また、ある小学校では逆に、学級 担任であるT2が導入とまとめをし、ティームティーチソグ加配であるTlが展開部分の授業をす るという役割分担をしている。 Tlが授業している間、 T2は自分の学級を客観的に見られてよかっ たとか、個別指導を学級担任がする方が、児童の実態がよくわかっていてよかったという感想が 聞かれた。

どちらの形態を取るかは、学級担任と加配の力量にもよるであろうし、単元や教材によって役 割を変えてみるなど、柔軟な対応が必要であろう。

(卦 習熟の程度に応じるティームティーチング ア.個別学習をT.とT2が分担して指導する場合

小学校の問題解決学習の形式をとったときの自ノJ解決の場面に多く見られる。 TlとTZが担当 グループを決めて、ヒソトカードを渡したり、つまずき部分の説明をしたり、質問に応じるなど 個人指導をしていく。一人で、学級全員を指導するより、的確に指導でき、児童生徒もすぐに気 軽に教師に質問できる。このとき観察したことをもとに、 TlとT2が集団解決の展開の打ち合わ せをする。

もう一つの分担の方法に、 Tlが全体の自力解決の観察や机間指導をし、 T。が教室のサイドで、

かなり遅れている子の取り出し指導を担当する場合がある。

ィ.コース別学習をTlとT2が分担して指導する場合

小学校の高学年や中学校では、練習問題は、習熟度によりグループ学習をすることがある。基 礎・基本の復習をしなおし、定着を図ることを選択した児童生徒は、教師の説明を聞いてから、

同類問題に取り組んでいく。 ‑一方、基礎・基本の理解と応用・発展問題を解こうとする児童生徒 は、教師に質問しながら、できるだけ自力解決をしていく。コースは自分の意志で選択させるの で、自分が理解できていない部分を意識し、そこを理解しようとする児童生徒が増えてくる。

ウ.自由進度型学習をTlとT2が分担して指導する場合

児童は学習の手引きに従い、教科書やヒソトカードを参考にしながら学習プリントをする。 2 枚の学習プリソトができると診断テストをする。児童は奇数番号の答え合わせをする。学級担任 であるT2は机間指導をしながらヒソトカードを見ても分からない児童への指導と診断テストの 偶数番号の答え合わせをする。診断テストで間違っていた場合は、その問題をなおした後、間違 いに応じた復習プリソトをする。加配であるTlはその復習プリソトをする児童を中心に個別指 導をする。学級担任が採点をするのは、児童だけに任せていると、先に進むことに関心がいき、

不十分なまま学習が進むこと‑の歯止めのためである。児童は学習進度表にその日の学習内容・

学習方法・反省を書いて提出する。加配が一覧表に整理して学習状況を把握し、進度の遅れてい る児童については、次回の学習時間に個別指導をする。一方、予定の学習プリントを終えた児童 には、発展プリソトが用意されている。

この形態では、プリント等準備物がたくさん必要なので、有効に活用するため学校としての整 理と保管が大切でろう。授業後のアソケ‑トでは、約9割の児童が学習内容がよく分かった、楽

しかった、質問しやすかった、また、こういう形態で学習したいと答えていた。

(7)

24 重 松 敬1‑‑・井戸野 佐知子・勝 美 芳 雄

③ 興味・関心の違いに応じるティームティーチング

児童の興味・関心の違いに応じるために、小学校6年/Lの「資料の整理」において、 3人の教 師による学年ティームティーチングが行われている(6)。

算数科の統計指導では、これまではサンプルデータが与えられ、その統計的な処理の方法の学 習が中心になってきた。しかし、これからは、統計的な処理の方法だけでなく統計的な見方・考 え方が学習の中心にならなければならない。そのような学習のために、児童たち自身の身の卜りり にある資料に目を向けさせ、目的をもって統計的な処理・考察をする学習を設定した。もともと、

統計は日常生活と密接な関係を持っているが、このような学習を通して、児童たちに統計的な処 理・考察に関心をもたせ、更により積極的に活用しようとする態度を身に付けさせることができ る。児童は、自分たちの調べたい資料ごとにグループを作り、 3人の教師が分担してそれぞれの

グループの指導に当たるOそのために、 3人の教師は、授業前、ティームティーチングの進め方 について、次のことについて打合わせをしている。

・児童生徒たちが取り上げそうな記録を予想する。

・それぞれの記録をどのように集めるか考える。

・児童生徒たちが取りLげた記録が、整理するのに適切でないとき、グループ別に指導する。

・次時からの学習の進め方とその準備物について打ち合わせておく0

このように、サソプルデータではなく児童勺二徒たちの身の回りにある資料を使って学習を進め ると様々な問題にぶつかる。例えば、度数分布表の区間をどれくらいにするか、柱状グラフの日 盛りをどのようにとるか、さらには代表値として何をとるかなどである。これらの問題をグルー プで共同解決し、また、学年全体でも共同解決するために「研究発表会」を設定している。なお、

「研究発表会」は国語科との倉科学習になっていた。

④ 学習スタイルの違いに応じるティームティーチング

単元全部をコース別学習する場合と一斉学習の後のまとめなど部分的にコース別学習する場合 がある。

ある中学校の場合、 2学級を基礎コース、標準コース、発展コースの3コースに分け、 3名の教師 で指導していた。生徒は、コ‑ス別学習での学習のねらいや進め方などについてのオリエソテーショ ソを受け、自己評価表や小テスト・自己診断テストに基づいて自らの力でコースを選択する。コー ス分けは生徒の希望を最優先していると共に、単元の途中でも変更可能である。基礎コースは、

生徒の興味ある日常の事柄と結びつけ、教師の人柄も加わり楽しく授業していて、数学嫌いをい かに克服するかが課題とされていた。コ‑ス別の授業は、それぞれ別々の教室で行われていた。

一方、ある小学校の場合、作業を多く取り入れ易い「立体」の単元に限り、 t体的な自力解決 をめざし、 2学級3コースの学習を行っている。 1時間目に、学習内容・コース別の学習の流れ とその方法についてオリエソテーショソし、児童の希望でコ‑スを決定した。それぞれのコース は、のびのびコース(資料を活用し、自分なりの方法で問題を解決していくコース) 、すくすく コース(友達と協力して問題を解決していくコース) 、わくわくコース(具体物を操作し、友達 や先生と共に、問題を解決していくコ‑ス)と、ネーミングされているO 前出の中学校の場合と 違い、広い一つの多目的ルームで、児童の学習意欲を呼び起こすような環境を作るために、学習

に必要と思われる教材教具を配置し、学習カードなども必要に応じて自由に使えるように用意さ

れている。他のコースの声もよく聞こえるので、よほど授業に集中していないと、友達や教師の

(8)

ティームティーチソグによる算数・数学教育の実践的研究(1) 25

声が聞こえにくい面もある。

(2)一斉指導を中心としたティームティーチングのモデル

この節では、上述した指導形態のうち、算数・数学においてもっとも広く活用されている、一 斉指導を中心としたティ‑ムティ‑チソグの指導形態について、教師の役割の観点から考察し、

授業展開のモデル提案したい。

(D 教師の役割について

(1)で詳述した実践形態に示されたように、ティームティーチソグによる指導では、それぞれの 教師の役割が一人で指導するときよりもかなり明確になることがわかる。そして、 2人の教師が それぞれの役割を果たしながら、どのように協力するかが最も問われるところである。

もともと授業では、教師の説明、発問、指示、評価などの言語活動を通して、教師の算数・数 学に対する考え方や、問題解決の手法、よい体験が児童生徒に蓄積されていく。その過程を、重 松らは、教師のメタ認知が児童生徒に内面化し、児童生徒のメタ認知(内なる教師)となり問題 解決に機能すると考えた。そのようなメタ認知を育成する教師の役割として、次の4つがあげら れている(7)。

ア.モデルとしての役割

例えば、 「学校と家は4 km離れています。兄は家から学校に向かって自転車に乗って分速320m で、弟は学校から家に向かって分速80mで歩いて同時に出発しました。二人は、学校から何mの ところで出会うでしょう。」という問題があったとき、多くの教師は、無意識に、学校近くに出 会う地点を黒板に図示することが多い。このとき、児童はなぜ学校と家の両地点の真ん中や家の 近くではないのかと思う。そこで、なぜここに出会う地点を表す点を打つことが自然で、問題解 決ができるのかという児童の思考のプロセスを児童

に見せる事が大切になる。最初はわざと正解をかか ① 学校 ず、まず、      弟‑

家 一見

「出会うんだから‑」と言いながら①のように真

ん中で出会う図をかいて、それを、 「自転車と歩き ② 学校  】     家 だから兄の方がたくさん進むな‑」と言いながら、   弟‑      ‑兄 (彰のように修正していく。次に、

「兄は、 4倍進むのだからもっとこっち。」と言 ③ 学校 つ        家 いながら、 ③‑修正していく。      弟‑       ‑兄

このように、分からないとき、つまずいたとき、

どのようにして問題解決学習をして行けばよいのか、児童生徒に代わって考えるプロセスのよい モデルを示す必要がある。特に、低学年においては、大切なことである。

ィ.モニターとしての役割

「前にやったことはないかな。 」 「何を求めたらよいのかな。 」 「少し整理できないかな。 」

「数値に誤りはないかな。 」 「条件を全部使ったかな。 」 「図や記号をうまくつかえないかな。 」

「いつでもこうなるかな。 」 「他の考え方はないかな。 」など、学級全体での話し合いや机間観

察、個別指導の際に、児童生徒のメタ認知的モニターの役割を教師が代行し、助言する。

(9)

26 重 松 敬1‑‑・井戸野 佐知子・勝 美 芳 雄

ウ.評価者としての役割

「これでいいね。 」 「前のパターソに当てはめられたね。 」 「半分までできているね。 」 「お もしろい方法だね。 」 「いつでも使えるね。 」 「この方法はたいへんだ。 」など、児童生徒の問 題解決の結果を評価し、児童生徒のメタ認知的評価の役割を教師が代行する。

エ.コソトローラーとしての役割

「問題をよく読んでみよう。 」 「図を書いて考えてみよう。 」 「一つの方法でできたら、別の 方法でやってみよう。 」など、児童生徒のメタ技能としての自己評価に基づいて、児童生徒のメ

タ技能的コソトロールを教師が代行する。

これら四つの役割を教師が実際の授業で演じる場合は、児童生徒に対する発問や指示によって なされることになる。

そこで、児童生徒の認知、メタ認知の育成に大切な教師の役割を2人が分かける視点からティー ムティーチソグのモデルを作成した。

この役割分掛ま、主がTl、副がT2という設定で、役割分担をしている。そして、評価の役割 については、観点別評価の視点も示した。

② 一斉指導を中心としたティームティーチングのモデル 学 習 活 動 指 導

形 態 T 1の 役 割 T 2 の 役 割 評 価

1 . 学 習 課 題 を つ か 一斉

個 別

個 別

全体 指 導 観 察 . 興 味 を 示 め し課 題

2 . 見 通 しを 立 て る

. 問 題提 示

観 察 / 支 援

. つ ぶ や き 表情 支 揺

. 学 習 へ の 意 欲 を 持 た せ る声 か け

観 察 / 支 援

が児童の ものにな っ て い る か

(関心 . 意 欲 )

. 方 法 の 見通 しと結 (見 通 しカI ドへ . 経 験 的 知 識 の 把 握

観 察 / 支 援

. 見 通 しが 立 た な い 巣 の 見 通 しが た つ の 記 入 )

3 . 自 力解 決 を す る

児 童 の チ ェ ック と ア ドバ イ ス . T lへ の 報 告

観 察 / 支 援

て い るか

(数 学 的 な 考 え 方 . 表 現 処理 )

. 自分 の 考 え た 方 法 ( 自分 な りの 考 え 自力 解 決 進 行 中 の 児 糸 目が つ か め な い 児 で 解 決 で きた か

方 で 考 え る) 童 へ の 支 援 童 へ の ア ドバ イ ス (知 識理 解 . 表 現処 . 激 励 、 賞 賛 . コ】 ナー で 具 体 物 f l M

. 考 え の 把 盤 の 準 備 . 他 の 更 に 良 い 方 法 . 多 様 な 考 え を 促 す . 集 団 解 決 に 参 加 で を 見 つ け よ う と し . 自分 の 考 え の 説 明 き る段 階 ま で の 引 て い るか

準 備 を 促 す T 2 と 情 報 交 換 し発 表 順 を 決 め る

き上 げ 指 導 (助 言 . ヒソ トカI ド) . T lへ の報 告

(数 学 的 な 考 え 方 )

(10)

ティームティ‑チソグによる算数・数学教育の実践的研究(1)

4.集団解決をする (自分の考えを発 表したり、友達 の考えを聞いた りして数学的に 練り上げる)

5.まとめをする (今までもってい

た知識・技能・

考え方と新しい 知識・技能・考 え方と関連をつ け、自分の言葉 でまとめる)

全体指導

・話し合いが深まる よう指名

・発表児童の支援

全体指導

・考えの共有化

・よさへの気づかせ

・考えの個性化を促

観察/支援

話し合いを深めるよ う、ポイソトでの発 言/参加

・ゆきぶり

・念押し

・つぶやき紹介

全体指導

・全体的評価

・はめたい児童への 賞賛支援

・観察児童‑の支援

27

・数学的な価値に迫っ ているか

(数学的な考え方・

表現処理)

・新しい知識が自分 のものになってい るか

(知識理解)

・次の課題‑意欲が 沸いたか

(意欲・態度)

(3)算数・数学におけるティームティーチングのモデルの検討事例

上述した役割分担モデルを算数の具体的な事例によって検討してみたい。

学年・単元  小学校6年「比」

指導計画   本時6/8

本時のねらい 比の値や比の性質を用いて問題を解決することができる。

本時の展開

学 習 活 動 指 導

形 態 T 1の 役 割 T 2 の 役 割 評 価

1 . 学 習 課 題 を つ か 一 斉

一 斉

. 「前 時 の 復 習 を し ま し ょ う0 」 姉 と 妹 の お こ づ か い

の 比 は 4 :3 で す 0 姉 が 8 0 0 円 と す る と 妹 の お こづ か い は 何 円 で す か 0

全 体 指 導 . 問 題 提 示

. 前 時 の 課 題 を 0 H P で う つ す O . 課 題 を 整 理 して 答

え を だ す 0 4 :3 = 8 00 :x x = 80 0 ÷ 4 ×3 = 6 00

答 え 6 0 0 円

観 察 . 前 時 の 課 題 と の 達 む . 「で は 、 今 日の 間 . 表 情 を 観 察 す る ○ い が 分 か っ て い る

題 は こ れ で す 0 読 ん で み ま し よ う0 」

. つ ぶ や き を 拾 う 0 か 0

(11)

28

2.見通しをたてる。

3.自力解決をする。

Aグル‑フ

図に表せないタイ プ

Bグループ

図に表せるが5と いうまとまりが分 からないタイプ

重 松 敬 一‑・井戸野 佐知子・勝 美 芳 雄

3000円のおこづかい を兄と弟で分けます。

兄と弟の金額の比を 3:2になるようにL mm

何ftjずつになるでしょ う。

・ 「見通しを立てて 解いてみましょう」

観察

・分かっていること と求めることがノー トにどのように整 理できているか観 察する

[ 「 iV.:

6年では、問題解決 のパターソを身に#

けているはずなので、

分かっていることと 求めることなどをノー トに整理し始めるた め指示は省いている。

全体指導

・ 「解く方法にも注 意してノートに書 きましょう。」

観察

支援

・ 「どういう作業を するとよいのかな。 」 (モニタ一例)

支援・個別指導

・見通しが立たない 児童のチェックと、

つまづきに対する アドバイスをする。

・ 「分かっているこ とは何かな。 」

・ 「何を求めるのか な」

・ 「おこづかいは∴

人で・‑。 」

・ 「兄と弟の比は・‑。」

・ 「兄と弟はどちら が多いのかな。 」

(モニタ一例)

姐・*'て

机間を回りながら、タイプ別に児童のノー ト‑、 A、 B、 Cと書いていく。指導は、

まだしない。

全体指導

・ 「A、 B、 C、同 じ記号同士集合し なさい。 」

・本時の課題に興味 を示し、課題が児 童のものになって いるか。

(関心・意欲)

・方法の見通しが立っ ているか。

・結果の見通しが立っ ているか。

(数学的な考え方・

表現処理)

(12)

ティームティーチソグによる算数・数学教育の実践的研究(1) 29

Cグルーフ

全体を5としてと らえ、自力解決で きるタイプ

指示

・Cグループへ 圧1分の考えを説 明できるようにし ておきましょう。 」

「友達の考えを聞 いたり、相談した りして別の解き方 を考えましょう。 」

「できた人は、発 展プリソトをしま

しょう。」

(コソトローラー例)

支援

・Bグループへ 自力解決進行中な ので、分かりにく い部分のヒソトカー

ドを渡す。

支援

・糸口がつかめない Aグループへ

「絵や図にかいて みよう。」

(コソトローラ一例)

「直線を引いて区 切ってみよう。 」

「3 :2に分ける というのは、どの ようにすることか

蝣/*m

3 : 2に分ける 図をかくモデルを

・J ‑‑す

線分を半分に分ける

‑兄が多いのか‑こ れくらいかな‑きっ ちり3 : 2にするに は‥・ (モデル例)

TlとT2で情報交換し、

める。

・様子を見ながら、

ヒソトカードや、

具体物としての10 0七模型かおはじ きを渡し、 3 :2 に分けていく操作 をさせ、 5という 全体の数を意識さ せる。

・集団解決に参加で きる状態になって きたら、 Tlへ連 絡する。

発表者と順番を決

自分の考えた方法 で解決できたか。

(知識理解・表現処 理)

・他の史に良い方法 を見つけようとし ているか。

(数学的な考え方)

(13)

30

4.集団解決をする。

5.まとめと練習を する。

重 松 敬 一・井戸野 佐知子・勝 美 芳 雄

観察

・発表に対するつぶ やき意見を拾い、

紹介する。

授業参加

・話し合いが深まる ようポイソトとな るところで、揺さ ぶり発言をする。

支援

・発表中につまずい てうまく説明でき なくなった児童に 対し、もう一一度考 えを鞍理させた。

全体指導

・ 「自分の言葉でま とめましょう。」

・よさに気付かせ、

考えを共有化させ る。

・ 「練習問題をしま しょう。」

・考えの個性化を図

全体指導

・ 「自分の求め方を 発表しましょう。 」

・話し合いが深まる よう順番を考えて 指名する

・発表児童の言葉を 大切に板書する。

・同じ意見であると 意思表明した児童 の名札プレートも 板書の横へ張り、

話し合いを深める とき、指名する。

観察/支援

・ポイソトが書かれ ているか、考えの 共有化ができてい るかを見て回る。

・各自のよいところ を賞賛する。

・ 「数値が変わって も大丈夫だね。 」 (評価者例)

・数学的な価値に迫っ ているか。

(数学的な考え方・

表現処理)

・新しい知識が自分 のものになってい るか

(知識理解)

前述したモデルとこの事例を比べると、学習活動と指導形態において一致している。 TlとT2 の役割もほぼモデルと一致しているが、 4の集団解決の場面でTlとT2の役割が入れ替わってい る。これは前述した小学校に多い事例で、上述したモデルの派生型として考えられ、事例によっ てもモデルの有効性が確かめられる。

さらに、事例の各場面での教師の言語行動を認知やメタ認知を育成する教師の役割に分類して

分析してみた。そのことから、次の2点について、事例でのティームティーチソグによる教帥の

役割分担が有効に機能したことが挙げられ、ここにおいてもモデルの有効性が検証された。

(14)

ティームティーチングによる算数・数学教育の実践的研究(1) 31

(彰 児童の習熟度に応じた教師の役割の分担がみられた

自力解決の場面で、 TlはCグループの児童に対してコソトロ‑ラ‑の役割を果たしているの に対し、 T2はAグループの児童に対してモデルの役割を果たしている。

② 教師の異なった役割の同時効果があった

まとめと練習の場面で、 Tlがコソトローラーの役割を果たしていると同時に、 T2は評価者と しての役割を果たしている。 Tlのコソトロールによって喚起された児童の認知行動をT2が即座 に評価できることは、児童にとって自分が行った認知行動が正しかったという肯定的なメタ認知 の育成につながると考えられる。

4.おわりに

本稿では、教員配置の改善により実施されるようになったティームティーチソグについて、ま ず、その概要と算数・数学における実践形態をまとめた。そして、算数・数学において巌も広く 活用されているティームティーチングであるが、より一層の指導の充実を図るために、認知やメ

タ認知を育成するための教師の役割を特徴化し、算数・数学におけるティームティ‑チソグの基 本的な役割分担モデルとして提案した。さらに、このモデルを用いた具体的な例を検討した。

この結果、その事例を通してモデルの有効性が示された。さらに、認知やメタ認知の育成の視 点からも教師の役割が、ティームティーチソグにおいてより児童生徒の個に応じて機能すること が明らかになった。

もとより、ティームティーチングには、今回示したモデルには現れない多くの問題が存在する。

例えば、ティームティーチングが児童生徒の期待に応えるためには、 2人の教師の数学観、教育 観などの価値観を¥‑ftに話し合った上で、授業計画から評価までの協力体制の綿密な計画が必要 である。今後、ティームティーチソグは、単に指導形態の改善だけで終わるのではなく、算数・

数学と他教科間との総合などをも考えた授業改革として、今後のよい授業のモデルとなることが 期待される。

引用文献

(1) J‑T シャブリソ/H‑F オールズ共編、 『ティ‑ムティーチソグの研究』梨明書房、昭和41年、

p27

(2) H俣周 二「ティームティーチソグの方法」 『学校運営研究』第403号、 1993年

( 3 )奈良県桜井市桜井南小学校研究紀要『児童の全人的指導と創造的学力の育成をめざしての協力指導』

1973

(4)例えば、教職員配置改善研究会編『教師のためのティームティーチソグ実践事例集』ぎょうせい、

1993.7

(5) OECD算数・数学調査研究委員会『新しい学力観による算数・数学の教育課程の実施及び教育方法改 善の学校事例調査研究』 1994.3、 1995.3

(6)勝美芳雄「関心・意欲・態度を高めるティーム・ティーチソグ」 「共同解決の時間を充実するティー ム・ティーチソグ」 『ティ‑ム・ティーチソグによる授業のアイデア』明治図書、 1995.4

pp.92‑102

(7)重松敬一、勝美芳雄、上田喜彦「了・供の思考を生かした算数指導(2)」日本数学教育学会誌 73巻12

号1991.12 pp.8‑17

(15)

32

Research on Team‑teaching in Mathematics Education

Kenchi Shigematsu

{Department of Mathematics Education, NARA University of Education, Nara 630 , Japan) Sachiko Idono

{Kyoto Prefecture's Local伽rd of Education, Kyoto 619‑02, Japan)

and Yoshio Katsumi

(Namル勉rid一触/ Board of Education, Nara 630, Japan) (Received April 28, 1995)

Recently, there are many classes in which at least two teachers teach mathematics in elementary and lower secondary schools. We call that kind of teaching team‑teaching.

In some countries, it is called co‑operative teaching.

In this paper, we investigate the concept of team‑teaching in mathematics education implementing a questionnaire, interviews or observing classroom lessons.

Today, team‑teaching has been administratively systematized. For example, additive teachers are sent to local schools from a Local Board of Education for team‑teaching in Japan. Team‑teaching is aiming to be a system used to support each student who does not like mathematics and have difficulty in solving mathematics problems.

We have obtained several interest findings as follows:

1. Historically, we learned the system of team‑teaching from USA and other foreign countries. Today, we are developing our own style of team‑teaching.

2. Analysing a number of case studies, we recognized several patterns in

team‑teaching ',

* Whole‑class style which is aiming to build up the ideas of mathematics.

* Several streaming style which is aiming to support students who have different levels of attainment in cognitive and metacognitive ability.

Hi Several grouping style which is aiming to give situations where students can learn mathematics by their own learning style.

We got some other results about team‑teaching in Tapani

* In a case study at lower secondary schools, the number of questions from students in a class increased in team‑teaching.

5K Even when team‑teaching was adopted, there was no immediate change in students Interest/Willingness/Attitude.

Finally we presented and investigated a model of team‑teaching style which is

mainly aiming to build up the ideas of mathematics.

参照

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