• 検索結果がありません。

日本の貿易収支と為替レートの関連 : マーシャル= ラーナー条件の変容

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "日本の貿易収支と為替レートの関連 : マーシャル= ラーナー条件の変容"

Copied!
24
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

日本の貿易収支と為替レートの関連 : マーシャル=

ラーナー条件の変容

その他のタイトル Trade Balances and Exchange Rates of Japan with Reference to the Marshall‑Lener Condition

著者 村田 安雄, 里麻 克彦

雑誌名 關西大學經済論集

40

5

ページ 863‑885

発行年 1991‑01‑15

URL http://hdl.handle.net/10112/13914

(2)

8 6 3  

論 文

日本の貿易収支と為替レートの関連

—マーシャル=ラーナー条件の変容一——

1 .   序

2 .   均衡為替レートの安定メカニズム 3 .   マーシャル=ラーナ一条件 4 .   197185 年統計による検討 5 .   198689 年の I カープ効果 6 .   対米貿易収支と実質為替レート 7 .   ラグ付きマーシャル=ラーナ一条件 8 .   結 語

1 .  

この論文の主な目的は, 1 9 7 1 年以降今日までの日本の貿易収支が為替レート によって如何に影響されていたかを実証的に解明することである。変動為替相 場制のこの 2 0 年間に 2 度のオイル・ショックを経験し,為替レートは大幅な上 下運動を続けてきたが,その貿易収支への影響に何らかの規則性を見出すこと が我々の関心事である。

貿易収支の弾力性アプローチにおいて,為替レートと貿易収支の関連に中心

的役割を果しているのがマーシャル=ラーナ一条件 (ML条件)であるが, 実際

に上記の期間の日本について

M L

条件は成立するのであろうか,或いは,それ

は弾力性アプローチで想定されたものより変容しているのではないか,等につ

(3)

8 6 4  

関西大學「純清論集」第

4 0

巻第

5

( 1 9 9 1

1

いて実証的な分析を行う 1 )

最初に M L 条件が為替レートの均衡の達成に如何にかかわっているかを説明 し(第 2 節),ついでこの条件を定義した後にその修正形を示す(第 3 節)。この修 正形が現実に妥当する時期は 1971 77 年であり,それ以降は不成立であること を年データを用いて, 色んな角度から検証する(第 4 節)。そして 1986 年からの 大幅で連続的な円高に伴う]カープ効果を, 円表示およびドル表示の貿易収 支の変化で示す(第

5

節 ) 。 これらの不規則的とも見える変動にも拘らず, 実質 為替レートと貿易収支の日米間の関係を四半期データを用いて推定すると,高 い統計的有意水準で, 中期的な規則性を見出す(第

6

節 ) 。 この推定式に基づい て,修正形マーシャル=ラーナー条件がラグ付き実質為替レートに関して成立 することを証明する(第

7

節 ) 。

2 .  

均衡為替レートの安定メカニズム

日本と米国との間の外国為替需給が均等するところで,両国間の為替レート

b もの

は決定するのであるが,いま直物の為替レート決定を輸出入との関係において 説明しよう。日本は米国からの輸入に対してドルを支払わねばならないので,

外国為替(ドル)を需要する。 この輸入財の日本国内での販売価格(円表示)が安 い程,輸入財への需要は増え,従って輸入量も増加するので,それに比例して 外国為替に対する需要も増大する。つまり円高(円/ドル・為替レートの下落)にと もなって外国為替(ドル)の需要は増大する。 この関係を描いたものが図 1 にお ける

DD

線である。

日本から米国への輸出は日本にとってはドルの入手であり, その外国為替

(ドル)を円に交換するために, 外国為替が供給される。従って外国為替の供給 額は販売価格(ドル表示) X 輸出量に等しい。いま輸出財の日本国内価格を所与

1)

弾力性アプローチを詳論する文献として

Niehans( 1 9 8 3 )  

〔邦訳,

1 9 8 6

4

を参照。

(4)

日本の貿易収支と為替レートの関連(村田・里麻) 865 

S i  

1

, ド ̲ ル,  e 

外国為替(ドル)

図 1 安定的均衡レート

とし,それを円/ドル・為替レートで除した値が米国での販売価格とすると,

円安(円/ドル・レートの上昇)はドル表示販売価格を下落させるので,輸出数量を 増加させるが, 輸出金額(ドル表示)は輸出の為替レート弾力性に依存する。 こ の弾力性が 1 であれば輸出額は不変であるので, S , $ 1 線のような垂直線で表 わされ, その弾力性が 1 より大(為替レートの上昇率より輸出量の増加率の方が大)

であれば, SS 線のような供給曲線で描かれる。逆に弾力性が 1 より小さけれ ば ,

S

。&線のような右下りの曲線となる 2) 。

いずれの供給線でも,為替レート ( e ) は外国為替の需要線

DD

と供給線との 交点において決定される。このように外国為替需給が財の輸出入だけによって 生じるとした場合に決定される均衡為替レート e * は,図 1 のいずれの供給線 との関係においても安定的(ワルラスの意味で)である。すなわち e が e * から

2) S 。 S o線の勾配は,絶対値でみると, DD線のそれより急である。もし S。 S o線の勾 配が, 絶対値において DD 線のそれよりゆるやかであれば,後述の安定メカニズム は作用しない。

(5)

866  闊西大學「経清論集」第40巻第5

( 1 9 9 1

1

少し乖離すれば自ずから e * へ戻る性質があり,それは例えば e * より大きな eに対し外国為替の超過供給が引き起こされ,それがドル安を生じさせるか・ら である。つまり均衡レートを基準にして円安となれば日本の対米貿易収支は黒 字となって, ド)レ為替の超過供給が生じ,逆の場合は超過需要が生じるという メカニズムが作用すると考えられ,この均衡為替レートの安定機構を成立させ る要件が次に述べるマーシャル=ラーナ一条件である丸

3 .   マ ー シ ャ ル = ラ ー ナ ー 条 件

輸入財価格が輸出財価格に対して相対的に割高になると,傾向的には輸入額 が減少して,その国の貿易収支は改善されるものと考えられる。このことが厳 密に成立するための条件は,当事国の輸入需要の価格弾力性と,その国の輸出 財に対する外国の需要の価格弾力性との和が 1 より大きいという条件であり,

これをマーシャル=ラーナー ( M a r s h a l l ‑ L e r n e r )条件と呼んでいる。いま記号を つぎのように約束しよう。

M = 自国の輸入量(実質)

M " ' = 自国の輸出量(実質)

p  =自国財の自国通貨表示価格 炉=輸入財の外国通貨表示価格

e  =外国通貨の自国通貨建て為替レート

これらの記号を用いると,自国通貨表示の貿易収支は輸出額から輸入額を引 いた差額として,

貿易収支 =PM*‑ep*M (1) 

と表わされるが, この両辺を P で除して, 自国財で測った実質的な貿易収支 を

. 3 )

貿易収支と為替レートの短期均衡の安定性については, 天 野

( 1 9 8 0 ) ,

4

章が詳し い解説を与えている。

(6)

日本の貿易収支と為替レートの関連(村田・里麻)

867 

TB=M*‑EM  .  (2) 

と表示しよう。ここに

E=ep*/p  (3) 

と置かれ,

E

は輸出財

1

単位と交換し得る輸入財の量を示し, 「実質為替レー

( r e a le x c h a n g e  r a t e ) と呼ばれる。注意すぺきは, いわゆる自国の交易条 件( t e r m so f  t r a d e ) は E の逆数である。ところで,

Y = 自国の国民所得(自国通貨表示の実質額)

Y " ' = 外国の国民所得(外国通貨表示の実質額)

とすると, 自国の輸入量

M

E

Y

の関数で,自国の輸出量 M* は

E

と 戸の関数であると考えられるので, (2) 式はまた

T B = M ‑ l < ( E ,  Y " ' ) ‑ E M ( E ,   Y)  ( 2 ' )   と表現される。

さて輸出財価格が輸入財価格に比して相対的に低下すれば,外国財 1 単位を 得るためにより多くの自国財を輸出しなければならないという意味において,

E

の上昇は交易条件の悪化であると言われる。

E

の上昇に対し外国への輸出 量は実質的に増し,自国の輸入量は実質的に減るであろう。これらを価格弾力 性で表わして

e * = =  8MI'E  8E  M l '   > O  

‑aM E 

E==  ‑

8E  M  > o  

J ,

4 5  

︵  

と記す。 e * は外国の自国財への需要の価格弾力性, C は自国の輸入財への需 要の価格弾力性である。 ( 2 ' ) 式を E について偏微分すると,

8TB  8M*  8M 

― aE  aE  =‑‑E‑‑M  aE  (6) 

となるが,当初に貿易収支が均衡していたと想定して, ~=EM を (6) に考

慮すれば

6TB 

= 

BE  M(e*+e‑1)  ( 6 ' )  

(7)

8 6 8  

闊西大學「純清論集」第

4 0

巻第

5

( 1 9 9 1

1 月 ) が得られる。従って

e*+e>l  (7) 

のマーシャル=ラーナー条件が充たされると, ( 6 ' ) 式の左辺は正値をとり, E の上昇(つまり交易条件の悪化)は実質的貿易収支を改善することになる%

( 6 ' ) 式は実質表示の貿易収支が交易条件の変化に対して受ける影響を提示す る。つぎに名目表示の貿易収支について為替レートの変化が及ぽす影響を考察 しよう。 (1) 式をつぎの (8) 式のように書き換える。

T=X‑eZ 

こ こ に

T= 自国通貨表示の貿易収支

X ( = = P M 4 ' )   =自国通貨表示の輸出額

Z ( = = P * M )   =外国通貨表示の輸入額

いま (8) 式の両辺を為替レート e で微分すると

ar  a x   a z  

=・ 

― ―  

a e   a e   8 a e   z 

となり, (3) ・ (4)・(5) を考慮して

堅 → 虻 皐

a e   aE  a e   1 1 *

az  *aM aE  z 

‑=P ‑ ‑=‑11 a e   aE a e   ― 

(8) 

( 8 ' )  

(9) 

( 1 0 )  

が得られる。そして当初に貿易収支の均衡を想定して, X=eZ と置き, (9) と ( 1 0 ) を( 8 ' ) 式へ代入すると

AR 

a e  

‑=Z(e*+e‑1)  ( 1 1 )  

が導出される。従ってマーシャル=ラーナー条件 (7)が充たされると, e の上 昇(つまり自国通貨価値の下落)は名目的貿易収支を改善する。 ( 1 1 ) における e * と

4)

我々は輸出と輸入の供給の弾力性を無限大と想定する。これらを有限の値とする場合

については, W i l l i a m s o n ・ ( 1 9 8 3 ) 〔 邦 訳 , 1 9 9 0 年 〕 , 4 . 3 節を参照せよ。

(8)

日本の貿易収支と為替レートの関連(村田・里麻)

869 

C は , (9) と ( 1 0 ) によって

e*==ax  e  弱 天 > o  

‑ a z   e 

E =   ‑

a e   z  > O  

と定義し直されることは明らかである。

( 9 ' )   ( 1 0 ' )  

ところで当初の貿易収支が不均衡である場合には, (9) と ( 1 0 ) を ( 8 ' ) 式へ代 入して

a -=Z(t* r   +t-1)

a e   eZ 

が得られ, e の上昇が T を改善するためには

・ *   eZ  +•>l

( 1 2 )  

( 1 3 )   の条件が成立しなければならない。現実の変動する経済においては, ( 1 3 ) の形 のマーシャルーラーナー条件が重要である。

4 .   1 9 7 1 ‑ ‑ ‑ ‑ 8 5

年統計による検討

( 1 3 ) の形のマーシャル=ラーナ一条件が変動相場制の 197177 年の期間の日 本において大体成立していたこと,より正確には第 1 次オイル・ショックの 1 9 7 3 年とその翌年の世界的景気急落の時期を除いて, マーシャルーラーナー条件は 成り立っていたことを,明らかにしよう。ただし,この期間には輸出の成長ト レンドが価格変動に関係なく定数であって,全輸出からこのトレンドを除去し た残りの輸出部分のみが為替レート変動によって影響を受けるものと考える。

つまり 0を輸出トレンドの成長率,むを第 t 期の全輸出とすると,

も = ( 1 + f J ) 1fo+X,  ( 1 4 )   となり,ふが為替レートによって影響される部分の第 t 期輸出を示す。かく して第 t 期の貿易収支は

Tt=(l +8)'f 。 +X,‑e ( 1 5 )  

(9)

8 7 0  

闊西大學「罷清論集」第

4 0

巻第

5

( 1 9 9 1

1 月 ) と表わされ,これを釘で微分して

堕 = 盛 堕

a e , e ,   a e ,   ‑ z ,  

= 砧 * 払 + 勺 ー ) 1

が ( 1 2 ) 式と同様に求められる。ここに

e,*= 知—x,~

e i + i

e ,   X ,  

Et=̲Zt+i‑Z 、且 8 t + i   ‑ e ,  .   . z ,  

はそれぞれ( 9 ' ) と( 1 0 ' ) に対応する。そして Xt+i‑Xt 

C

e , * X ,  

= 

( e Z )

( e Z ) 、 生 1‑1 e ,   1 一但盈出立 ( e Z ) ,   e t + 1  

e , =  

血— 1

e ,  

の定式を用いて,実際のく 1 と , e を計算する。

( 1 6 )  

( 1 7 )   ( 1 8 )  

( 1 7 ' )  

( 1 8 ' )  

日本の変動為替相場制は 1 9 7 1 年から実施に移されたと見られるので,この時 以降の年次デークを用いて前記の c , と勺を計算する。為替レート e 、は各暦 年の平均値 (OECD の公表した)を,そして輸入と輸出は e , に対する反応時間ラ グを 3 ヶ月と考えて,年度のデークを採用する。また日本の輸出が本格的とな った 1 9 6 7 年 70 年の:年成長率 f ) がそれ以降の数年間のトレンドを決めると想 定して,

( 1  + 0 ) 3  =1970 年度の輸出 =82.87 〔千億円〕

1 9 6 7 年度の輸出 4 4 . 5 5   (千億円〕 ( 1 9 )   によって, 8=0.2 2 9 8 を算出する。かくして, 197180 年の関連する統計デー ク は 表 1 に掲げられている。表 1 では, 0 と実際の輸出額むを用いて,

( 1 4 ) 式から : x , : を算定し, また為替レート e 、と輸入額の系列が掲示されてい

る。これらの変数値を ( 1 7 ' ) と ( 1 8 ' ) へ代入して, , ,   と勺を計算したのが表 2

(10)

日本の貿易収支と為替レートの関連(村田・里麻)

8 7 1   に示され,そこではら+勺が 1 より大きい i は 1,2,5,6,7 の場合である。

つまり修正マーシャルーラーナー条件( 1 3 ) は , 日本では1971 77 年の期間 ( 7 2 年

7 3 年を除く)に成立していたと言える。そして78 年以降はこの条件があてはま

らない。

1

日本の為替レート・輸入・輸出

I I

円/

e ド t

ル/

( e

Z)

t I 

輸 出

f t

額 /変 動

X

t

1 9 7 1   1  3 4 8 . 9 4   7 1 .  9 3   9 5 . 2 5   ‑6.67  1 9 7 2   2  3 0 8 . 0 0   8 1 .  7 0   1 0 0 . 6 3   ‑24. 7 1   1 9 7 3   3  2 7 1 .  4 9   1 3 2 . 5 9   1 2 2 . 5 9   ‑31. 5 6   1 9 7 4   4  2 9 1 .  7 9   1 9 5 . 7 2   1 9 3 . 0 8   3 . 5 0   1 9 7 5   5  2 9 6 . 8 2   1 9 2 . 5 4   1 9 5 . 5 1   ‑37. 6 4   1 9 7 6   6  2 9 6 . 5 4   2 1 7 . 1 4   2 3 3 . 2 6   ‑53.48  1 9 7 7   7  2 6 8 . 4 8   2 0 7 . 1 2   2 4 4 . 1 0   ‑108. 5 4   1 9 7 8   8  2 1 0 . 4 4   1 9 8 . 1 0   2 2 2 . 2 9   ‑211. 3 9   1 9 7 9   ,  2 1 9 . 2 0   3 0 9 . 9 6   2 7 8 . 9 2   ‑254.44  1 9 8 0   1 0   2 2 6 . 7 0   3 4 6 . 3 1   3 3 5 . 6 9   ‑320. 2 5  

〔注〕

e

い毎日の為替レートの第

t

(1

12

月)平均値。

( e Z ) , :  

t

年度

(4

月〜翌年

3

月)の輸入額〔千億円〕。

&:第

t

年度の輸出額〔千億円〕。

X,= むー ( 1 .2 2 9 8 ) も ( f o = 8 2 .  8 7 )  

〔出所〕

e ,  

OECD,E c o n o m i c  O u t l o o k  ; 

輸出と輸入は

経済企画庁,「国民経済計算年報』。

2

日本の輸入・輸出価格弾力性

t  I

e 1‑1 c ( e e Z ) 1 /  X 1 ( + e 1 Z ) , X1 /  (   1   E t  

1  ‑0.1173  1 . 1 3 6   ‑0.251  2 . 1 4   2 . 4 5   2  ‑0.1185  1 .  6 2 3   ‑0. 0 8 4   0 .  7 1   7 . 1 0   3  0 . 0 7 4 8   1 .  4 7 6   0 . 2 6 4   3 . 5 3   ‑5.0  4  0 . 0 1 7 2   0 . 9 8 4   ‑0.210  ‑12.2  1 .  9 0   5  ‑0. 0 0 0 9   1 . 1 2 8   ‑0.082  9 1 . 1   1 4 3 . 3   6  ‑0. 0 9 4 6   0 . 9 5 4   ‑0.254  2 . 6 9   0 . 5 7   7  ‑0.2162  0 . 9 5 6   ‑0. 4 9 7   2 . 3 0   1 . 0 2   8  0 . 0 4 1 6   1 .  5 6 5   ‑0.217  ‑5.2  ‑12.1 

,  0 . 0 3 4 2   1 . 1 1 7   ‑0. 2 1 2   ‑6.2  ‑2.3 

︐ 

(11)

8 7 2  

闊西大學『純清論集』第

4 0

巻第

5

( 1 9 9 1

1 月 )

さて為替レート変動率 ( ( e , ‑ e 1 ‑ 1 ) / e

1 ) 1 年のラグをもった「貿易収支/国 民総生産」比率に対して大きな影響を及ぽすことを,両者の相関係数の算定に よって明らかにする。この算定のための統計数値は表 3 に提示されている。こ の 表 の の と b 1 + 1 の相関係数 ( r ゅ)を t=1971 85 年について計算すると,下 記のようになる。

B C a 1 b 1 + 1 )   1 1 5 .  27 

rab= 

vBalv 区 b t + i 2

= 

4 .  529 

X  3 3 .  549  =O. 759 

この r ゅの高い値は, 貿易収支の国民総生産に占める比率が, 大体において 1 年前の為替レート変動に対応して,前述の第 2 節での安定メカニズムに則し た方向に変化していることを意味している。

つぎに,為替レート変動に対する対 GNP 貿易収支比率の「長期的」弾力性 を求めよう。ここに「長期的」弾力性 ( 7 / )とは, t=1971 85 年と t=1971 77

表 3 日本の為替レート変動率と貿易収支/国民総生産の変化

t 年 円 / e ド ,

e , ‑ [ a e 』 , 

I 貿 易 ( 億 収 円 支 ) T 

6 1 ‑ 1   (%) 

国 民 ( 総 億 生 円 産 ) YI 

Y 1   [ b 』 [ c 』

_ 恥

y , ̲ ,   (%)  b , / T Y t t ‑ ‑ 1 1    1 9 7 0   3 5 8 . 1 5  

7 1   3 4 8 . 9 4   ‑2. 5 7 2   2 1 , 9 8 0   8 0 5 , 9 1 9  

7 2   3 0 8 . 0 0   ‑11. 7 3 3   2 1 .  3 4 3   9 2 4 , 0 0 8   ‑0. 4 1 7   ‑0.153  7 3   2 7 1 .  4 9   ‑11. 8 5 4   3 0 2   1 , 1 2 5 , 1 9 5   ‑2.283  ‑0.988  7 4   2 9 1 .  7 9   7 . 4 7 7 ‑9, 9 9 3   1 .  3 3 9 , 9 6 8   ‑0. 7 7 3   ‑28. 6 3 0   7 5   2 9 6 . 8 2   1 .  7 2 4   6 2 4   1 , 4 8 1 , 6 9 9   0 . 7 8 8   ‑1.056  7 6   2 9 6 . 5 4   ‑0. 0 9 4   1 3 , 3 5 1   1 , 6 6 4 , 1 6 9  

. 7 6 0 1 8 . 0 9 5   7 7   2 6 8 . 4 8   ‑9. 4 6 2   3 0 , 4 0 3   1 , 8 5 5 , 3 0 1   0 . 8 3 7   1 .  0 4 4   7 8   2 1 0 . 4 4   ‑21. 6 1 8   3 5 , 5 4 6   2 , 0 4 4 , 7 4 5   0 . 0 9 9   0 . 0 6 0   7 9   2 1 9 . 2 0   4 . 1 6 3   ‑20,013  2 , 2 1 8 , 2 4 5   ‑ ‑ 2 .  6 4 0   ‑1. 5 1 9   1 9 8 0   2 2 6 . 7 0   3 . 4 2 2   ‑21, 4 9 7   2 , 4 0 0 , 9 8 4   0 . 0 0 7   ‑0. 0 0 8   8 1   2 2 0 . 5 9   ‑2. 6 9 5   2 0 , 4 9 7   2 , 5 6 8 , 1 6 8   1 .  6 9 3   ‑1.892  8 2   2 4 9 . 0 8   1 2 . 9 1 5   2 0 , 4 9 5   2 , 6 9 6 , 9 7 1   ‑0. 0 3 8   ‑0. 0 4 8   8 3   2 3 7 . 4 8   ‑4. 6 5 7   5 0 , 1 6 3   2 , 8 0 5 , 6 7 6   1 . 0 2 8   1 .  3 5 3   8 4   2 3 7 . 5 5   ‑0. 0 2 9   8 2 , 0 0 5   2 , 9 8 4 , 5 2 7   0 . 9 6 0   0 . 5 3 7   8 5   2 3 8 . 6 2   0 . 4 5 0   1 0 7 , 7 5 5   3 , 1 7 4 , 4 0 9   0 . 6 4 6   0 . 2 3 5   1 9 8 6   1 3 2 , 9 8 8   3 , 3 1 2 , 5 3 5   0 . 6 2 1   0 . 1 8 3  

1 0  

(12)

日本の貿易収支と為替レートの関連(村田・里麻) 印

3

年の全期間にわたって,為替レート変動率の和を分母とし,対 GNP 貿易収支 変化率の和を分子とする分数によって定義され, それは表 3 の の と

0

を用 いてつぎのように算出される。

TJ*== 

:D*  :D*a C t +I   =― 3 1 4 2 . .5  7 8 6 7 3     =O. 3 7 0  

}:,1 C t + 1  

T / 1  

==

} : , 1 の ー 1 2 1 6 . .  6 5 1 2 8 4   =0.439 

(D*喋::〗

図 啜 : : : )

かくして, 197177 年の 7 J (つまり 7 / 1 ) の値 0 . 4 3 9 に較べて, 197185 年の 7 J

(つまり 1 / * ) の値 0 . 3 7 0 は 16% も小さく, このことは緩やかな意味でのマーシャ ルーラーナ一条件の成立期 ( 1 9 7 17 7 年)以降では,この条件は現実に妥当しなく なっていると解釈できる 5) 。事実, t=1978 85 年の

n

を計算してみると,下 記のような低い数値である。

7 / o  

==

OC 、 + 1 =― 1 . 1 5 9  

: E , O a

、一

8 . 0 4 9 =0.144  ( B o 啜 : : )

さて 1 9 8 6 年以降は円/ドル・レートは連続的に円高方向へ変化し続け, 日本 の貿易収支は短期的な理論では説明できなくなった。この問題を次節で論じよ

う 。

5 .   1 9 8 6 . . . . . . . , 8 9 年 の J

カーブ効果

1 9 8 6 年から 8 8 年にかけて, 円の対米ドルの名目為替レート ( e ) は大幅に連続

的な円高の方向へ進行し, 1985年の e=239 円/ドルから, 86年の ~69 円/ドル,

8 7 年の 1 4 5 円/ドル, 8 8 年の 1 2 8 円/ドルヘと, e の値は急速に低下した。これら の e の変化に対して日本の商品貿易収支は, いわゆる]カープ効果によっ て,急増から漸減へと推移した。まず]カープ効果 ( e の低下による)について 説明しよう。

基本的な貿易収支の式は次のようになる。

5) 同様の見解をとっているものに須田 ( 1 9 8 8 ,

4 章)がある。

1 1  

(13)

8 7 4  

闊西大學

r

継清論集」第

4 0

巻第

5

( 1 9 9 1

1

貿易収支〔自国通貨表示〕

=(輸出価格)・(輸出量)ー(為替レート)・(外国価格)・(輸入量)

ここに為替レートは自国通貨建てであり, 例えば 1 ドル 2 3 0 円というように,

外国貨幣 1 単位の値段である。

いま自国通貨建て為替レートを e と記し, 円の価値が上昇した場合を想定 しよう。例えば, 1 ドル 2 3 0 円から 1 7 0 円へと e が小さくなったとする。 この 変動の直後においては輸入量は以前の水準を保つので,上式の為替レートのみ が低下し, その結果として貿易収支は黒字拡大(赤字縮小)となる。すなわち通 常の意味における自国通貨価値の上昇は,即時的には貿易収支を改善させる。

しかし輸入財の価格が e の低下によって下落すると, 輸入量は次第に増大す るので,輸入額も漸次的に増大方向に転じるであろう。

他方 e の低下は外国人にとっての輸入財, つまり我が国の輸出財の外国通 貨建て価格の上昇を意味するので,輸出量従ってまた輸出額は次第に減少する であろう。

かくして

8

の低下は漸次的に輸入額を増加させて, 輸出額を減少させるの で,次第に我が国の貿易収支の黒字縮小(赤字拡大)をもたらすものと考えられ る 。 このように為替レート

6

の低下が貿易収支に及ぼす影響には即時的効果 と漸次的効果があり,これらを時間の経過に沿って連続的な動きとして表わす と,図 2 のように

J

字を傾けた形となる。 これは為替レート変動の貿易収支 に及ぽす「]カープ効果」と呼ばれている。

いま]カープ効果を 198689 年の日本の貿易収支について検討しよう。そ のためにドル表示と円表示の貿易収支を別々に系列化して,比較する。その際 に季節要因による変化を除去するために,四半期移動による 1 年間の時系列デ ークを作成する(表4 の第 1 欄を参照)。 このように作成された年データは四半 期づつずらした 1 年間の貿易収支を示し, そのドル表示のものを D e , 円 表 示のものを出として,表 4 に掲示した。そして

Ht

を 以 で 除 す こ と に よ って実際の為替レート(円/ドル)を算出し, これを実効為替レート(/,)と呼ぼ

1 2  

(14)

日本の貿易収支と為替レートの関連(村田・里麻)

8 7 5  

貿易収支

時間

図 2

J

ヵーブ

う 6 ) 。 J , の変動を描くと図 3 のようになり, 85 年から 88 年まで下落し続けてい ることが分かり,その後は漸増している。これに対応して変動する D, と 比 の形が図 4 に描かれており, 円表示貿易収支出は,図 2 の]カープと似た 形状を示すのに, ドル表示貿易収支 D 、は 1986 88 年にわたって高原水準を保 っていることが明らかとなる。 D 、 は 比 I f , に等しいので, J , が図 3 のように 長期間にわたって連続的に低下すれば, 当然に出の減少を相殺して, D 、の 変化を小幅なものにする。かくして 1986 年の急激な円高と,その後の一層の円 高の進行によって, ドル表示貿易収支の黒字状態は長期的な現象となった。も し逆に急激な円安が生じて,それ以降も一層円安が進行するような状態が生じ たら,上述と全く対称的な逆の局面が現われるであろう 7)

6)

実効為替レートの通常の定義は, 「各相手国との貿易額の自国の総貿易額に占めるシ ェアをウェイトとして, 各相手国通貨との為替レートを加重平均したものである。」

(田中

( 1 9 9 0 , p .   3 0 ) )  

7)

為替レートの上昇が持続的であるとき,

p r i c e  maker

が存在すると, 価格転嫁が生 じて Jカープを発生させるという考えもある(田中

( 1 9 9 0 , p p .   1 5 8 ‑ 1 5 9 )

を参照)。

なお為替レートが持続的にドル高であった局面から逆転して,円高が持続的に進行す る場合,米国市場への参入した日本企業は履歴効果によって, しばらくは輸出ないし 生産活動を続ける(村田

( 1 9 9 0 )

を参照。)

1 3  

(15)

8 7 6  

隅酉大學「継清論集」第

4 0

巻第

5

( 1 9 9 1

1 月 ) 表 4 日本の年間貿易収支と実効為替レート ( 1 9 8

をッ

8 9 年 )

四半期移動の年次 t  貿 D )  t  貿円醤表陪示の 比 八 〔 = 出実効為替レート / D , J (

1 9 8 5 年 1 月 85 年1 2 月 8 5   I  5 5 , 9 8 6   1 3 1 , 4 1 5   2 3 4 . 7 3   8 5 年4 月 86 年 3 月 8 5   I I   6 1 , 6 0 1   1 3 5 , 1 1 6   2 1 9 . 3 4   8 5 年 7 月 86 年 6 月 8 5   I I I   7 1 , 3 3 0   1 4 0 , 2 3 4   1 9 6 . 6 0   8 5 年1 0 月 86 年9 月 8 5   I V   8 3 , 0 4 6   1 4 5 , 9 7 0   1 7 5 . 7 7   1 9 8 6 年 1 86 年1 2 8 6   I  9 2 , 8 2 7   1 5 3 , 4 1 0   1 6 5 . 2 6  

8 6 年4 月 87 年 3 月 8 6   I I   1 0 1 , 6 4 8   1 6 2 , 3 5 0   1 5 9 . 7 2   8 6 年 7 月 87 年 6 月 8 6  ] [   1 0 2 , 7 6 4   1 5 7 , 3 9 4   1 5 3 . 1 6   8 6 年1 0 月 87 年 9 月 8 6   I V   9 9 , 5 5 6   1 5 0 , 2 8 7   1 5 0 . 9 6   1 9 8 7 年 1 月 87 年1 2 月 8 7   I  9 6 , 3 8 6   1 3 9 , 0 4 0   1 4 4 . 2 5   8 7 年4 月 8

i = ‑ 3 月 8 7   1 1   9 4 , 0 3 4   1 3 0 , 1 9 5   1 3 8 . 4 6   8 7 年 7 月 88 年 6 月 8 7 皿 9 1 , 4 4 4   1 2 2 , 6 6 9   1 3 4 . 1 5   8 7 年1 0 月 88 年 9 月 8 7   I V   9 1 , 6 2 4   1 1 9 , 8 2 1   1 3 0 . 7 7   1 9 8 眸 1 月 88 年1 2 月 8 8   I  9 5 , 0 1 2   1 2 1 , 6 7 7   1 2 8 . 0 6   8 呼 4 月 89 年3 月 s s   n  9 5 , 3 0 2   1 2 2 , 1 8 1   1 2 8 . 2 0   8 呼 7 月 89 年6 月 8 8   I l [   9 2 , 6 4 8   1 2 1 , 2 1 8   1 3 0 . 8 4   8 眸 1 0 月 8 碑 三 9 月 8 8   I V   8 8 , 6 5 3   1 1 7 , 6 1 8   1 3 2 . 6 7   1 9 8 9 年 1 月 89 年1 2 月 8 9   I  7 6 , 9 1 7   1 0 5 , 7 6 2   1 3 7 . 5 0   8 9 年4 月 90 年3 月 8 9   I I   7 0 , 1 7 8   1 0 0 , 1 6 1   1 4 2 . 7 2  

〔注〕貿易収支 D と H の統計は日本銀行,「国際収支統計月報」に基づく。

ド ル 2 2 0   2 0 0   1 8 0   1 6 0   1 4 0   1 2 0   I ‑

851  I I 血 N 8 6   I  I I   I i i   N  871  I I 皿 881  i I   I i i  

891  i r  

図 3 実効為替レート f t (198589 年 )

1 4  

(16)

日本の貿易収支と為替レートの関連(村田・里麻)

877 

1 60 15 0. 14 01 30 12 01 10 10 0

, , , 

ヽ/ ドル表示貿易収支 D , U i E I 盛り〕

, . ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ . ̲  

,  ‑

、 ‑   , . .   . ̲   ̲  . --·---•-· ---•-

` 

●、

円表示貿易収支凡〔左目盛り〕

'•、‘‘

0 0   0  0  0  ︒ ︒

̲ 1 9 8 7 6 5

8 5  I I I   I l l   N  8 6  I I I   I I I   N  8 7  I  i I   I l l   W  8 8  I  i r   I i I   N  8 9  I  I I t  ・

図 4 日本の貿易収支(ドル表示と円表示, 198589 年 )

6 .   対 米 貿 易 収 支 と 実 質 為 替 レ ー ト

第 3 節における ( 6 ' ) 式は実質為替レートの変化が及ぽす実質貿易収支への影 響を定式化するが,名目的な貿易収支が実質為替レートの変動によって現実に 受ける効果を推定することも重要であろう。特に第 5節での実効為替レートと 名目貿易収支の関連の分析を補うために,推定期間を 1979 89 年に拡大して,

日本の対米貿易収支が円/ドルの実質為替レートや米国の国民総生産に依存す る程度を統計的に明らかにする。

従って本節での実質為替レートは,

E = e p * / p   ( 2 0 )  

と定義されるが,ここに e は円/ドル・名目レートを示し, p * は米国の, そ

して

P

は日本の卸売物価である。物価水準は貿易財生産部門の両国間の競争

1 5  

(17)

8 7 8  

闊西大學「鰹清論集」第

4 0

巻第

5

( 1 9 9 1

1 月 )

力を反映するものを選んで,我々は工業製品の卸売物価を採用する。かくして ( 2 0 ) 式は米国と日本との相対的な輸出物価比を表わしており, e p * が

P

より も大きければ,円で比べて米国の物価が日本のそれよりも高いことになり,米 国の輸出競争力は低下し,逆に日本から米国への輸出が増加して,日本の対米 貿易収支は黒字増大(赤字減少)となる。すなわち E の上昇は日本の対米貿易収 支にプラスの影響を及ぽすわけであるが,その影響が現われるまでに時間を要 する。故に統計資料として四半期データを用いることにより,この時間遅れの 大きさを判断する。

表 5 では1 9 7 9 年第 1 四半期 ( 1 9 7 9I ) から順に,第 2 四半期 ( I I ) , 第 3 四半期 ( i l l ) ,   そして第 4 四半期

(IV)

と続き,最後は1 9 9 0I で終了する。その表の②欄 は円/ドル・名目レート e を , ⑧欄は米国生産者価格(工業製品) p * を,④欄 は日本卸売物価(工業製品)

P

を示しており, p *

P

は1 9 8 5 年を 1 0 0 とする物 価指数を表わす。そしてこれらのデータを用いて ( 2 0 )

E を計算した値は,

⑥欄に掲げられており, E の時系列を描いたものが図 5 における破線である。

つぎに日本の対米貿易収支の時系列を表 5 の⑥欄に,また米国の国民総生産 (GNP) を⑦欄に,それぞれ名目数値で掲示した。前者は後者の変化に対して 直ちに同方向へ変化するものと考えられるので,両者の比率を算出し,その時 系列を⑧欄に示した。この比率の推移を図 5 に実線で描いて ,E 変動を示す破 線と共に観察し比較すると,実線は破線から大体において 7 四半期の時間遅れ をもって対応していることが判る 8) 。 かくして我々は,日本の対米貿易収支を 同時期の米国 GNP および 7 四半期以前の実質為替レートに依存させる関数を 想定する。

推定においてはこの関数を自然対数の対数線形式に特定し,また第 1 四半期 にダミー変数 ( D t ) を付けて季節変動を処理した 9 ) 。その結果, t=1980IV 1990

8)

同様に米ドル実質実効為替レートの

7

四半期前の値に対応する,米国経常収支(対

G NP)

の関連を図示したものとして西村

( 1 9 8 8 ,

3図)がある。

9)  t

が第

1

四半期のときには

D

= 1 ,

その他では

D,=O

である。

1 6  

(18)

日本の貿易収支と為替レートの関連(村田・里麻)

879 

I の全部で 3 8 のサンプル数の,表 5 のデータ T 1 ,G t ,   E 1 ‑ 1 の対数値を用いた最 小二乗推定式は下記のようになる 1 0 ¥

l o g  T,=‑25. 85+3. 2 0  l o g  G け 1 .5 6  l o g  E 1 ‑ 1 ‑ 0 .  2 5  D 1   ( 2 1 )   ( ‑ 2 1 .  4 )   ( 3 0 .  8 )   ( 1 3 .  0 )   (‑5. 9 )  

2 = 0 .9 6 4 ,   DW=l.17, SE=0.117 

( 2 1 ) の推定式の各係数は t 値がすべて有意であり, 自由度修正済み決定係 数だは非常に大きく, ダービン=ワトソン係数 D W は誤差の自己相関の有 無を判別し得ない値である 11) 。かくして 198089 年においては, 日本の対米貿 易収支 T の米国 GNP についての弾力性は 3 . 2 であり, また T の実質為替 レート (7 四半期以前の)についての弾力性は 1 .5 6 である。 (なお E いの代りに E 1 ‑ s または E 1 ‑ s とした場合の推定結果は, あらゆる点において ( 2 1 ) 式の数値より悪く なる。)

さらに日本の国民総生産の増加が日本の輸入増加を引き起こし,従って日本 の貿易収支 (T) を悪化させる程度を推定するために, 上記の推定式に日本 G N PCJ と記し,その四半期データを表

5

の⑨欄に掲示する)の対数を説明変数の一つ として追加して,推定を行った。]の変動が T へ影響するまでに為替レート と同様の時間遅れが見られ,最も良い推定結果をもたらすラグは 6 四半期であ ることが判った。推定期間は以前の ( 2 1 ) 式と同じにとって,その推定式は下記 の通りである。

l o g  T,= ‑10. 0 1  +5. 2 5  l o g  Gi‑2. 6 3  l o g ] i ‑ s + l .  6 3  l o g  E 1 ‑ 1 ‑ 0 .  2 5  D ,   ( 2 2 )   (‑1. 7 8 )   ( 7 .  3 0 )   (‑2. 8 7 )   ( 1 4 .  6 )   (‑6. 3 2 )  

寮=O.9

7 1 ,   DW=l. 6 0 ,   SE=0.107 

( 2 2 ) 式では ] t ‑ 6 に対する

T1

の弾力性は一 2 . 6 3 で,,前述の経済学的意味に 合致している。この ] t ‑ 6 の追加によって, G 1 に対する m の弾力性は 5 . 2 5

なって, ( 2 1 ) 式におけるそれ ( 3 . 2 0 ) よりも可成り大きな値であり,これは m

1 0 ) 係数の下の()内は t 値 , SE は推定の標準誤差を示す。

1 1 )   1% の有意水準で検定。

1 7  

(19)

5

日米間の実質為替レート,貿易収支および両国の

G N  P  (197990

年四半期) ① 

四半期 IIllillVIIllillVIIllillVIIllillVInlillVIIl  9081828384 

8  99  99  7  99  111111 

② 

為替レー ト

e (円/ドル)

201.  46  217.62  218.86  238.62  243.53  232.69  220.08  210.67  205.57  220.00  231.  89  228.02  233.49  244.27  258.88  259.68  235.74  237.53  242.53  234.24  230.91  233.36 

⑧  米国物価 指数

P* I 

指数

P (1985

=100) 68.8  71.  5  74.3  77.5  81.  8  84.1  85.8  87.7  91.  3  94.0  94.8  95.6  96.2  95.7  96.6  97.2  96.9  96.8  97.9  98.3  99.0  99.8 

④  日本物価

83.3  85.9  89.4  92.4  98.1  101.  5  101.  9  101.  3  100.4  101.  2  102.1  102.1  102.3  102.4  102.9  103.0  101.  6  101.  0  100.  9  100.7  100.8  100.8 

⑤  実質為替 レート

E (eP*IP2  166.39  181.14  181.  89  200.14  203.07  192.80  185.31  182.39  186.94  204.35  215.31  213.50  219.57  228.29  243.03  245.06  224.84  227.65  235.32  228.66  226.79  231.  04 

⑥  日米貿易 収支T (百万ドル)

1,259  1,365  1,616  1,730  1,260  1,537  1,802  2,358  1,820  3,114  4,229  4,147  2,909  3,160  3,083  2,996  2,970  4,150  4,944  6,116  5,817  8,696 

⑦  米国

GNP G  t+

億ドル)

2,420  2,474  2,546  2,591  2,673  2,672  2,734  2,848  2,978  3,017  3,099  3,114  3,112  3,159  3,179  3,212  3,265  3,367  3,443  3,545  3,674  3,754 

⑧ 

T/G 

(形)

0.052  0.055  0.063  0.067  0.047  0.058  0.066  0.083  0.061  0.103  0.136  0.133  0.093  0.100  0.097  0.093  0.091  0.123  0.144  0.173  0.158  0.232 

⑨  日本

GNP J 

(十億円)

215,458  220,088  223,457  226,714  231,527  .  236,841  242,934  247,606  252,456  253,997  258,363  261,372  264,799  268,983  272,263  272,491  276,205  278,279  282,857  284,745  290,851  296,065 

8 尖︺

蚕囲汁懐「階遥酪津」瀕

40~ffi

(1991~1

JI) 

(20)

皿 243.36  99.8  101.  3  239.76  8,979  3,807  0.236  300,422  IV  .246.  03  99.9  101.  3  242.63  9,581  3,851  0.249  305,632  1985  I  257.70  99.6  102.1  251.  39  6,574  3,925  0.167  309,913  II  250.74  100.3  101.  0  249.00  10,195  3,979  0.256  314,879  皿 238.76  99.9  99.6  239.48  10,503  4,047  0.260  319,181  IV  207.20  100.3  97.3  213.59  12,210  4,107  0.297  324,713  1986  I  187.73  98.5  95.8  193.02  10,418  4,181  0.249  325,118  JI  170.11  96.2  93.5  175.02  12,615  4,194  0.301  330,439  皿 155.88  95.2  91.  5  162.18  13,754  4,253  0.323  334,113  N  160.14  95.6  90.5  169.16  14,613  4,297  0.340  335,285  1987  I  153.09  97.2  89.9  165.52  11,014  4,388  0.251  338,671  II  142.76  98.3  89.2  157.32  13,588  4,475  0.304  339,137  Ill  147.09  99.  7  90.0  162.94  13,375  4,566  0.293  348,793  N  135.62  100.4  89.8  151.  63  14,109  4,665  0.302  353,376  1988  I  127.98  100.8  89.1  144.79  9,768  4,739  0.206  363,221  JI  125.68  102.2  89.0  144.32  11,151  4,838  0.230  359,160  Ill  133.71  103.0  89.6  153.71  12,388  4,926  0.257  370,452  IV  125.22  103.  7  89.1  145.74  14,287  5,017  0.285  372,981  1989  I  128.55  106.1  89.4  152.56  11,126  5,113  0.218  382,890  ]I  138.26  108.2  91.  8  162.96  10,933  5,201  0.210  384,374  Ill  142.22  107.8  92.4  165.92  11,654  5,281  0.221  395,057  N  143.01  108.3  92.2  167.98  11,227  5,340  0.210  401,595  1990  I  148.  07  109.6  92.5  175.44  8,935  5,431  0.165  410,811 

19 

〔資料出所〕③, ④,⑥は東洋経済,「経済統計年鑑 1990 』。⑧,⑦,⑨は OECD, Main  Economic  Indicators 。 〔注〕⑧と④は工業製品卸売物価指数である。

m

0

涵如活沖

r夢囃てーご品乞 E(

#田・佃琉︶

g1 

(21)

g2 

ドル

260  240 

円/ドル・実質為替レート

E 〔左目盛り〕 ¥‑41  ̲,..̲"' 

、、¥ 

p ーヽ ‑, 

, ,'.,. ー、,...、...̲ .. ̲,.,, ¥ 

  :::  :,  戸/-~-,.~~-ヽ,/、たヤ, Art~• 、\ .. ,,,..  ..、•~A、こ、^、ず'ヽ ---·Y

220  200  140 

日本の対米貿易黒字 米国

GNP 〔右目盛り〕

73951739  33222110 

••••••••

00  0  0  0  0  0  0 

% 

蚕固汁懐『華遜齢瀕」瀕

40~ffi

(1991:f"f 

jj) 

0.05  I  II  III  N  I  II 

III 

N  I  II  III  N  I  II  IiI  N  I  Ir  III  N  I 

II III 

N  I  ii  Iii  N  i  iI  IiI  N  I  iI  IiI  N  I  II  III'N  I 

II 

III  N  I  t  1979  1980  1981  1982  1983  1984  1985  1986  1987  1988  1989  1990  図 5

日米間の実質為替レートと貿易収支/米国

GNP

(22)

日本の貿易収支と・為替レートの関連(村田.里麻) 883  が G , に単独で大きく依存することを示している。 E ー 、 1 に対する

m

の弾力性

( 1 .   6 3 )は以前と余り変わらない。推定式の統計的信頼性は ( 2 2 ) 式の方が ( 2 1 ) 式 よりも全般的に高まっていることは,炉,

D W

係数,

SE

を比較すれば明らか である。

推定式( 2 2 ) は理論式( 2 ' ) に対応するものである。 ( 2 ' ) 式は自国財で測った貿 易収支力ら外国 GNP の増加関数であり,自国 GNP の減少関数であることを 含意し, さらに実質為替レートについてマーシャルーラーナー条件が充たされ るものと考える。推定式( 2 2 ) は自国財価格を 1 とした日本の貿易収支が米国 G NP,  日本 GNP および実質為替レートに対して,理論式 ( 2 ' ) の含意するもの をおおむね実証している。特にマーシャル=ラーナ一条件について次節で説明 する。

7 .   ラ グ 付 き マ ー シ ャ ル = ラ ー ナ ー 条 件

推定式( 2 2 ) においては,貿易収支 T の実質為替レート (7 四半期前の) E‑1  I C   対する弾力性は 1 より大きい。すなわち

a r   E‑1 

8K7  T  > 1   ( 2 3 )  

ここで自国財価格 =1 と考えると, T は ( 2 ' ) 式の TB と同じである。いま E‑1 を E と置き, ( 2 3 ) 式を, (2')・(4)・(5) ・ (6) の関係を用いて書き換える と

8TB E  e*M*  = ( + e M .   M  E  蒻 四 了 ー ) Ml'‑EM 

e*M‑t‑(e‑l)EM 

Ml'‑EM  > 1   ( 2 4 )  

となる。ところで, 197989 年においては日本の対米貿易収支は黒字を保持し

ていたので, (24) 式の両辺に(~-

EM)  I  E M   C > O ) を乗じて,整理すると,

M*  +E>  M* 

E *  

E M   E M   ( 2 5 )  

2 1  

(23)

8 8 4  

爛西大學「継清論集」第

4 0

巻第

5

( 1 9 9 1

1 月 )

が得られる。 ( 2 5 ) の右辺は 1 より大であるから,明らかに ( 2 5 ) 式は ( 1 3 ) の修正 形マーシャル=ラーナー条件を充たしている。ただしこの場合の E は E ‑ 1 ,

まり 7 四半期前の実質為替レートであるので,正確には ( 2 5 ) は下記のように表 現されなければならない。

t *  M* 

丑>

M* 

E‑1M  E‑1M  ( 2 6 )  

そして e * と eも実際は 7四半期前の E ‑ 1 に対する弾力性を意味する。かく して ( 2 6 ) 従ってまた ( 2 3 )は時間ラグ付きの修正形マーシャル=ラーナー条件を 示すと解釈できよう。

なお日本の対米貿易収支 T が赤字(負値)の場合 (O<M*/EM<I) においても,

ラグ付きマーシャルーラーナ一条件は成立することを明らかにしておこう。 こ の場合には ( 2 3 ) 式に代って次式が成立する。

ar E ‑ 1   8 E ‑ 7   ‑T  > 1  

これに ( 2 4 ) 式導出と同じような想定と操作を加えると,

8TB  E  t*M*+(t‑l)EM  8E  ‑TB  EM‑M*  > 1  

を得る。この両辺に (EM‑ M l < )   I  EM を乗じて整理すると

e*~- 甚?

EM  +e>2  EM 

( 2 3 ' )  

( 2 4 ' )  

( 2 5 ' )  

となる。 o<M*/EM<l を( 2 5 ' ) 式右辺へ考慮すれば, 明らかに ( 1 3 ) のマーシ ャルーラーナ一条件が成立する。 もちろん ( 2 5 ' )式における E は E ‑ 1 に等し く , e * と eは( 2 6 ) 式でのそれらと同様のラグ付き弾力性を意味する。

8 .   結 語

マーシャルーラーナ一条件は厳密な形(7) ではなく, 修正形( 1 3 )としてしか 現実に妥当しないことが, 1 9 7 1 年以来,現在までの統計によって確かめられ た。特に79 年以降ではそれはラグ付き条件式( 2 6 ) へ変容した。従ってそれはも

2 2  

(24)

日本の貿易収支と為替レートの関連(村田・里麻) 8 8 5   はや第 2 節 で の 均 衡 為 替 レ ー ト 成 立 の た め の 安 定 条 件 と は 無 関 係 と な っ て お り,単に為替レート変動に対する貿易収支への効果を説明するのがマーシャル

=ラーナ一条件の役割であると理解するのが我々の結論である 1 2 ) 。 か く し て 為 替レートの変動と決定に関しては, マーシャル=ラーナ一条件以外の:要因を探 究しなければならない。

引 用 文 献

〔 1 〕天野明弘,『国際金融論』,筑摩書房, 1 9 8 0 年 。

〔2〕村田安雄,「為替レート変動と企業の生産・価格・参入・退出」, 関西大学「経済論 集」 4 0( 1 9 9 0 年 ) , p p .6 5 9 ‑ 6 8 6 .  

〔3〕N i e h a n s ,  J . ,   I n t e r n a t i o n a l  Monetary E c o n o m i c s ,  Johns Hopkins U n i v .  P r e s s ,   1 9 8 3 .  

〔邦訳,天野•井川・出井訳,『国際金融のマクロ経済学」,東京大学出版会,

1 9 8 6 年 。 〕

〔 4 〕西村陽造,「米ドルの持続可能な均衡為替相場」, 「東京銀行月報」 4 0 ( 6 ) , 1 9 8

f ,

p p .  4 ‑ 3 5 .  

〔 5 〕須田美矢子,、『国際マクロ経済学』,日本経済新聞社, 1 9 8 8 年 。

〔 6 〕田中茂和,『為替レートと国際金融』,中央経済社, 1 9 9 0 年 。

〔 7 〕W i l l i a m s o n ,   J . ,   The  Open  Economy and t h e   World Economy, B a s i c  B o o k s ,   1 9 8 3 .   〔邦訳,須田・奥村・柳田訳,『世界経済とマクロ理論』,多賀出版, 1 9 9 吟 三 。 〕

1 2 )時間ラグのあるマーシャルーラーナ一条件が成立する場合には,「各期の均衡為替レー

トの時間経路が長期的均衡水準へ収束しないという,動学的な意味での不安定性が生 じる可能性があるといえる。」(天野 ( 1 9 8 0 , p .   5 6 ) )  

23 

図 4 日本の貿易収支(ドル表示と円表示, 198589 年 ) 6 .  対 米 貿 易 収 支 と 実 質 為 替 レ ー ト 第 3 節における ( 6 ' ) 式は実質為替レートの変化が及ぽす実質貿易収支への影 響を定式化するが,名目的な貿易収支が実質為替レートの変動によって現実に 受ける効果を推定することも重要であろう。特に第 5節での実効為替レートと 名目貿易収支の関連の分析を補うために,推定期間を 1979 89 年に拡大して, 日本の対米貿易収支が円/ドルの実質為替レートや米国の国民総生産に

参照

関連したドキュメント

関西学院大学産業研究所×日本貿易振興機構(JETRO)×産経新聞

日 日本 本経 経済 済の の変 変化 化に にお おけ ける る運 運用 用機 機関 関と と監 監督 督機 機関 関の の関 関係 係: : 均 均衡 衡シ シフ

一連の貿易戦争でアメリカの対中貿易は 2017 年の 1,304 億米ドルから 2018 年の 1,203

権利

する。逆に・唯・ト業ならば為替レー/は上昇することがわか洲

本研究の目的と課題

それ故,その成立条件の提示は積極的であるよりも,むしろ外国貿易の終焉条

日中の経済・貿易関係の今後については、日本人では今後も「増加する」との楽観的な見