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氏名 山田

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Academic year: 2021

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(1)

氏 名 山田

ヤ マ ダ

菜子

所 属 理工学研究科 生命科学専攻 学 位 の 種 類 博士(理学)

学 位 記 番 号 理工博 第

215

号 学位授与の日付 平成

28

9

30

日 課程・論文の別 学位規則第4条第

1

項該当

学 位 論 文 題 名

Asymmetric hybrid formation revealed by artificial crossing experiments between Asplenium setoi from the Ogasawara and the Ryukyu Islands, Japan.

人工交配実験により明らかになった日本産ヤエヤマオオタニワタリ

(

チャセンシダ科)の非対称な交雑可能性(英文)

論 文 審 査 委 員 主査 教 授 村上 哲明 委員 准教授 江口 克之 委員 准教授 角川 洋子

【論文の内容の要旨】

本文

種(species)とは生物の分類における最も基本的な単位であり、種の定義については古 くから多くの生物学者により議論されてきた。現在最も広く受け入れられている種の定義 は、 「互いに交雑して繁殖能力のある子孫を残すことができ、他の同様な集団から生殖的に 隔離されている」個体群の集まりを種とするという生物学的種概念である。視覚を持つ動 物に繁殖を依存しないシダ植物や菌類は、種分化、すなわち生殖的隔離が進化する際に必 ずしも形態的分化を伴わず、形態的特徴から種を識別できないことが多い。

ヤエヤマオオタニワタリ(チャセンシダ科、以下ヤエヤマ)は、日本では沖縄本島以南 の南西諸島および小笠原諸島で普通に見られるシダ植物である。先行研究において、葉緑 体

DNA

rbcL

領域の解析から、南西諸島産ヤエヤマと小笠原諸島産ヤエヤマの間に

1,194

塩基中

7

塩基の差異が認められることが指摘されていたが、当時の解析技術の精度の問題 もあり、本当にそのような差があるのか明確ではなかった。一方、ヤエヤマを含む分類群 であるシマオオタニワタリ節では、形態的には大きな違いがないにもかかわらず

rbcL

の塩 基配列が異なり、互いに生殖的隔離が存在する種が多数見つかっていた。したがって、南 西諸島産ヤエヤマと小笠原諸島産ヤエヤマの間にも何らかの生殖的隔離が存在する可能性 が考えられた。

そこで、第一章において、それぞれの集団から採集したヤエヤマの

rbcL

の塩基配列を決

(2)

定し比較したところ、小笠原諸島産ヤエヤマと南西諸島産ヤエヤマの間に

1,197

塩基中

3-4

塩基の差異が確かに存在することが確認された。また、Kimura’s 2 parameter method に 基づき算出された両者の遺伝距離は

0.003

であった。ヤエヤマが属するシマオオタニワタ リ節のシダ植物を材料とした先行研究によって、

rbcL

の塩基配列に基づく遺伝距離は生殖 的隔離の強さと相関し、 遺伝距離が

0.005

の集団間に生殖的隔離が存在し、 遺伝距離が

0.001

の集団間には生殖的隔離が見られなかった事例が報告されていた。しかし、その中間の遺 伝距離の集団間についてのデータは存在せず、小笠原諸島産ヤエヤマと南西諸島産ヤエヤ マとの間に生殖的隔離が見られれば、シマオオタニワタリ節においてどの程度遺伝距離が 遠ければ生殖的隔離が成立しうるのかということに関する新たな知見が得られると期待さ れる。

また、シダ植物における

rbcL

の進化速度(数百万年に

1

塩基の置換)と小笠原諸島が陸 化した推定年代を考慮すると、小笠原諸島産ヤエヤマと南西諸島産ヤエヤマは小笠原諸島 の陸化以前に遺伝的に分化していた可能性が高いことも分かった。すなわち、海洋島であ る小笠原諸島にたどり着く以前に南西諸島産ヤエヤマとはすでに分化していたことになり、

これらの起源が異なることが示唆された。

第二章では、ヤエヤマを含むシマオオタニワタリ節用の核

DNA

マーカーの開発と核遺伝 子を用いた系統解析を行った。生殖的隔離の有無を調べる人工交配実験においては、両親 判定のために核共優性マーカーが必須である。また、核遺伝子は、母性遺伝し進化速度が 遅い

rbcL

などの葉緑体遺伝子と異なり、 両性から遺伝し進化速度が速いという性質がある。

そのため核遺伝子の解析によって葉緑体遺伝子の解析からは見えていなかった遺伝構造や 系統関係が明らかになることが期待された。そこで、本研究では、核

PgiC

遺伝子を

PCR

増 幅できるプライマーを新たに開発した。そしてこれらを用いて解析したところ、小笠原諸 島産ヤエヤマと南西諸島産ヤエヤマの間に、核

PgiC

領域の塩基配列約

666

塩基中

16

カ所 の変異が見出された。

また、同じ領域を用いて分子系統解析を行った結果、小笠原諸島産ヤエヤマと南西諸島 産ヤエヤマは異なるクレードを形成した。またマレーシア産の個体と大東諸島産の個体が、

南西諸島産ヤエヤマと同一の

rbcL

の塩基配列をもつにもかかわらず、小笠原諸島産ヤエヤ マと類似した

PgiC

の塩基配列をもつことが示された。大東諸島は小笠原諸島と同様に海洋 島であり、大陸島である沖縄本島や西表島など他の南西諸島の島々とは異なる特異な生物 種が分布していることが知られている。ヤエヤマについても、大東諸島には南西諸島とも 小笠原諸島とも異なるものが見られることが示された。一方、マレーシアから小笠原諸島 産ヤエヤマと類似した

PgiC

の塩基配列をもつ個体が見出されたことから、これが小笠原諸 島産ヤエヤマの祖先となった可能性がある。

第三章では、小笠原諸島の母島産ヤエヤマと南西諸島の西表島産ヤエヤマを用いて人工

交配実験を行い、生じた若い子孫胞子体の両親判定を、本研究で新たに開発した核

PgiC

ーカーを用いて行った。その結果、合計

108

個体の胞子体が得られ、そのうち

25

個体の雑

(3)

種個体が確認された。このうち母方が母島産ヤエヤマのものが

23

個体、西表島産ヤエヤマ のものが

2

個体で、母島産ヤエヤマを母方にしたときには、逆の組み合わせのときより有 意に多くの雑種が形成された。

以上の結果より、ヤエヤマは

2

つの地域間で

rbcL

の塩基配列が大きく異なっているもの

の互いに交配可能である。ただし、雑種の形成率は両親の組み合わせの正逆で大きく異な

ることが明らかとなった。このような交雑可能性の非対称性は、シマオオタニワタリ節に

おいて完全な生殖的隔離が成立する組み合わせより近い遺伝距離の種間で見られ、生殖的

隔離が成立する進化途中の段階として見られると考えられている。同様の例は、動物のシ

ョウジョウバエ類からも報告されている。ヤエヤマの

2

タイプも種分化の途上にあると考

えられる。

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