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破壊 され た森林 の原状 回復 に関 す る法 的責任

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(1)

破壊 され た森林 の原状 回復 に関 す る法 的責任

Di eVe r p f l i c h t u n gd e rWi e d e r h e r s t e l l u n gd e sz e r s t O r t e nWa l d e s

熊 田 裕 之 KUMATA , Hi r oyuki

は じめに

森林には、洪水防止、土砂の流出防止、水資源 の滴養、二酸化炭素の吸収 と酸素の供給、野生生 物の保全、自然体験・レク リエー シ ョンの場 の提 供、縁の景観の保持などの重要な公益的機能 があ る

(I)

。自然環境保全 上 こうした重要 な役割 をに なっているにもかかわ らず、森林の破壊が国内外 を問わず生態系を脅かすまでに至 っている。我が 国 においては 1980 年代後半以降の リゾー トブー ム、とりわけ 1987 年 ( 昭和 62 年) に制定 さ れた 「 総合保養地域整備法」 (いわゆ る 「リゾー ト法」 )およびそれに伴 う土地利用規制 の緩和 (2)

や税制 ・金融面での優遇措置 によ るゴル フ場 ・ス キー場・ マ リーナ・ ホテル等の リゾー ト施設の大規 模な開発 によ って森林 の破壊が進んで いる

(3)

。 バブル経済華やかな りし 1985 年か ら 1991 年の間にゴルフ場その他の レジャー施設開発のた

めに許可を受 けた林地 は合計 43,123h a に も 達 した

(4)

ところが同法施行後 12 年経過 した今 日、バ ブ ル経済の崩壊・ 入場者の減少・ 環境問題、そ して ゴ ルフ場の場合には預託金の返還不能が原因 とな っ て開発事業その ものが頓挫 した り、進出企業が リ ゾー ト地か ら撤退す るなどの事態が相次 いで起 き ている

(5)

。バ ブル経済崩壊後 の 1991 年か ら 1997 年の間に倒産 したゴルフ場施設経営企業 は 41 件 で 、1997 年 1 年 間 で は 8 件 に達 し た

。 (6

) 北海道の リゾー ト法指定地域内 にあ るホテ ル(ゴルフ場 9 ホール造成工事完了) がインターネッ

トを通 して売 りに出されている例 もある。まだ倒 産 に至 っていないものの多額の赤字を抱えてい る

リゾー ト企業 も少な くない

(7)0

こうした状況 に鑑み、 リゾー ト法 の廃止 や見直 しを求める声が強 くなっているとともに( 8 ) 、 リゾー ト開発の挫折や事業の放棄により、破壊 されたま ま放置されている環境の回復、 とりわけ森林 の再 生をどのような手段で図 るかが解決 しなければな らない環境問題 として浮上 してきている

(9)。

自然 環境 はいったん破壊 されて しまった ら二度 と元 の 状態に戻す ことので きない不可逆的な環境破壊 で あるといわれている。その意味で、自然環境 が破 壊 されないように事前 に規制することが何 よりも 重要であることは異論のない ところである

(10)

しか し、それ らの規制 と並んで、破壊 された自然 の回復を図 ることも自然環境の保護の重要な手段 である

(ll)。

森林には再生能力があるものの限界 がある

(12)。

破壊 された森林 を放置 しておいたの では良好な森林を回復することはで きない。人が 積極的に森林回復のための施策を講 じ、実現 して や らなければならない。現在ある自然を保全す る とともに、破壊 された自然を回復 し、将来へ継承 してい くことが環境基本法の理念にもなっている。

国 ・自治体 も縁の回復を図 るために様々な緑化政 策をとってきた。

しか し、環境庁が平成 10 年 に、土地利用変化 に伴 う環境への影響等 について自治体 ( 全都道府 県・ 政令市・ 関東地方の市区)に対 し行 ったアンケー ト調査の結果では、森林 について開発及び手入れ 不足 による陸上生態系の劣化や、景観上の問題、

開発 による水源滴養上の劣化、大気浄化機能 の劣 化が生 じてお り、また市街地 については、約半数 の自治体が無秩序な拡大が進行 していると回答 し、

約 4 分の 1の自治体が森林や農地の減少 により、

ー8 5‑

(2)

生態系や水源滴養等の機能が損なわれて きている と回答 している

(13)

。 この調査 か ら明 らか なよ う に、自治体 において も森林の破壊 による問題 の発 生が認識 され、その取 り組みが期待 されているの である。

本稿 は、 こうした基本的認識 に立 ったうえで、

リゾー ト施設を建設す るために森林 の伐採工事 に 着手 した企業がその後事業を放棄 した場合 に、 そ の森林を再生すべ き責任の法的根拠 を原状回復義 務 という視点か ら検討す るものである。

原状回復義務 とは、一般 的 ・抽象的 に定義 すれ ば、ある原因に基づ き生 じた現在 の状態 をその発 生前の状態 に戻す義務である。原状回復義務には、

行政法規 または行政行為 によって課せ られ る①行 政上 の義務 と、私法上の義務がある 。 後者は更に、

②物権的請求権の内容 としての原状回復、( 卦契約 上の債権の効力 としての原状回復、④契約解 除 の 効力 としての原状回復、⑤損害賠償の方法 と して の原状回復 に分かれ る。 この法的根拠の違 いに応 じて回復 されるべ き状態 も異 なる。物権的請求権 の場合 には、妨害状態を排除 し物権 の円満な支配 状態を回復す ることであ り、契約上 の債権の場合 には契約 に定 めた内容を履行す ることであ り、解 除の場合には、契約が締結 されなか ったの と同 じ 状態 に戻す ことであ り、損害賠償の方法 としての 原状回復 は、加害行為が行われる前の状態 に現実 に戻す ことである. この中か ら本稿では( 王 XS ) ④⑤ の原状回復義務 について考察を加えようとす る も のではある( 1 4 ) 0

土地 の所有者がその土地上に生育す る樹木 を切 るか否か、また土地 に樹木を植えるか否かは、基 本的には所有者の自由であ り、土地所有権 に含 ま れ る行為である

しか し土地所有権 といえど も公 共 の福祉 による制限を受 けることは、憲法 29 条 2 項 ・民法 1 条 1 項 により明 らかであ り、土地計 画法や建築基準法等の法律により土地 の利用が規 制 されている。土地 についての基本理念を定 めた 土地基本法 は、土地 については公共 の福祉を優先 させ ると謡 っている (2 条)。国土利用計画法 に も同様の ことが織 り込 まれて いる (2 条)。森林 の回復 について も私的所有権 の尊重 と公共 の福祉 による制限 との兼ね合 いを考慮 して検討 しなけれ ばな らないのはもちろんである 。 しか し我が国で は従来、自然環境 の保全を目的 として土地の利用 を規制す ることは、財産権の尊重 に劣後す る もの

であると考え られて きた。規制す る場合であ って も、人 の生命 ・身体 ・財産 に対す る危険の防止 の 場合 と異 な り、土地 に対す る財産権 の外在的規制 であるか ら、 自然保護のために一定の地域内で木 材を伐採 した り、土地 の形状を変更す る行為 につ いては許可制を取 る一方で、不許可の場合 には損 失を補償すべ き旨が定め られているのはその例 で ある( 都市緑地保全法 7 条 ・自然環境保全法 33

条 ・自然公園法 35 条)

(15)

。 しか し、 こうした 私的財産権偏重 に対す る見直 しが、その結果 であ るバ ブル経済崩壊 の爪跡 を埋めるために環境法学 の立場か ら強 く求 め られているので あ る

(16)

。本 稿 もこうした認識 に基づ くものである

(17)

第 Ⅰ章 森林の原状回復義務を定めた行政法規

自然保護 に関す る行政法規 は、開発等 によ って 自然の破壊が生 じないように事前 に規制を加え る ことを主 たる内容 として い るが、、破壊 され た 自 然の回復を内容 とす る規定 も置かれている。森林 ( 樹木)の原状回復 を定 めた規定が以下の通 り存在 す る。

1.自然環境の保全を直接の目的 とする法律 (1 ) 自然環境保全法

原生 自然環境保全地域 (14 条 1 項) においては、

木材を伐採 し、または損傷す る行為を してはな ら ■ ない (17 条 1 項 6 号)。 ただ し、環境庁長官 は 学術研究 その他公益上の事由により特 に必要 と認

める場合には木材の伐採 または損傷 を許可す るこ とがで きるが( 同項但書) 、その許可 には当該原生 自然環境保全地域 における自然環境の保全のため に必要な限度内において、条件 を附す ることがで きる( 同条 2 項) 。環境庁長官 は、無許可 で木材 を 伐採 した者 または許可条件 に遵反 した者に対 して、

原生 自然環境保全地域 における自然環境 の保全 の ために必要があると認めるときは、その行為 の中 止を命 じ、または相当の期限を定 めて、原状 回復 を命 じ、 もしくは原状回復が著 しく困難であ る場 合に、それに代わるべ き必要 な措置をとるべ き旨 を命ず ることがで きる (18 条 1 項) 0

また環境庁長官が自然環境保全地域 (22 条 1

項)において指定 した特別地 区 (25 条 1 項)内で

木材 を伐採す るためには、原則 として環境庁長官

の許可を必要 とす る (25 条 4 項 2 号)。 この許

(3)

可 に条件を附す ることもで きる( 同条 5 項) 。許可 を受 けずにまたは条件 に違反 して木材を伐採 した 者 に対 し、環境庁長官 は、原生 自然環境保全地域 の場合 と同様、行為の中止命令 ・原状回復命令 ・ 代替措置命令 を発す ることがで きる (30 条 によ

18 条の準用)

(18)。

(2) 自然公園法

環境庁長官が国立公園 または国定公園 の風致 を 維持す るためにその区域内において指定 した特別 地域 (17 条 1 項)内で木材を伐採するためには、

原則 として、国立公園の場合 には環境庁長官 の、

国定公園の場合 には都道府県知事の許可を得なけ ればな らず、また環境庁長官が国立公園 または国 定公園の景観を維持す るためにとくに必要があ る として指定 した特別保護地区 (18 条 1 項) にお いて木材を伐採 または損傷す る行為をす るために は、特別地域 と同 じく、環境庁長官 または都道府 県知事の許可を受 けなければな らない( 同条 3 項 1 号 ・2 号) 。 これ らの許可 には国立公園 また は 国定公園の風致 または景観を保護するために必要 な限度 において、条件 を附す ることがで きる( 1

9 条) 。そ して許可な くまたは条件 に違反 して木 材の伐採 ・損傷行為を行 った者 に対 して、環境庁 長官 または都道府県知事 は国立公園 または国定公 園の保護のために必要な限度 において、原状回復 を命 じ、または原状回復が著 しく困難である場合 に、それに代わるべ き必要な措置を とるべ き旨を 命ず ることがで きる (21 条)

(19).

(3) 都市緑地保全法

都市計画区域内に定め られた緑地保全地区 (3 秦)において木材を伐採す るためには、原則 と し て都道府県知事 の許可を受 けなければな らず( 5

条 1 項 3 号) 、許可す る場合で も当該緑地 の保全 のため必要があると認めるときは、条件 を附す こ とがで きる ( 同条 3 項)。都道府県知事 はこの許 可 または許可 に附せ られた条件 に違反 した者 に対 し、相当の期限を定 めて、当該緑地の保全 に対す る障害を排除す るため必要な限度 において、その 原状回復を命 じ、または原状回復が著 しく困難 な である場合 に、 これに代わるべ き必要な措置 を と るべ き旨を命ず ることがで きる (6 条 1 項)。原 状回復等を命ずべ き者を過失 な くして確知す るこ

とがで きないときは、都道府県知事 は、その者 の 負担 において、当該原状回復等 を自らお こない、

または委任す ることがで きる (6 条 2 項) 。

2. 保全の対象が 自然環境 と共通する法律 (1 )生産緑地法

市街化区域内にある農地等 ( 現 に農業に供 され ている農地 もしくは採草放牧地、現に林業 に供 さ れている森林、または現 に漁業 に供 されている池 や沼)で都市計画により生産緑地地区に定め られ た生産緑地内においては、市町村長の許可を受 け なければ、建築物等の新築 ・ 増築、宅地 の造成等 の土地の形質の変更、水面の埋め立て ・干拓 を行 うことはできず (8条 1 項)、 これに違反 した者 または許可の条件 に違反 した者 に対 し原状回復等 を命ず ることがで きる (9 条 1 項 ・2 項) 0

(2)森林法

地域森林計画の対象 となっている民有林 ( 保安 林等 を除 く)において開発行為 ( 土石 または樹根 の採掘、開墾その他の土地の形質を変更す る行為 で、森林の土地の自然的条件、その行為の態様等 を勘案 して政令で定める規模 を超えるもの)を し ようとす る者 は、省令で定める手続 きに従 い、都 道府県知事の許可を受 けなければな らず、また こ の許可 には条件を附することがで きる ( 森林法 1 0 条 の 2 第 1 項 ・4 項)。 この許可 もしくは条件 に違反 した者 または不正な手段で許可を受 けて開 発行為を した者 に対 して、都道府県知事 は、森林 の有す る公益的機能 を維持す るために必要があ る と認 めるときは、その開発行為の中止を命 じ、 ま たは復旧に必要 な行為をすべ き旨を命ず ることが で きる (10 条の 3) 。 「 復旧に必要な行為」とは、

「 すでに森林を開発 し、森林以外 の ものに して い るところに対 し原形 どお りの樹種、地形 に して原 形 どお りの樹齢の木を植栽せよといって も実際上 不可能 または不合理の場合 も考え られるところか ら、造林その他 の措置によりその森林が従前有 し ていた公益的機能を復旧することを含む ものであ

る」 と解釈 されている

(20)。

また、森林所有者等 ( 森林所有者その他権原 に 基づ き森林の立木竹の使用または収益をす る者)

が、保安林の立木を伐採 した場合 には、当該保安 林 に係 る森林所有者 は、当該保安林 に係 る指定施 業要件 として定め られている植栽の方法、期間及 び樹種 に関す る定めに従 い、当該伐採跡地 につ い て植栽 しなければな らない (34 条の 2) 。

3. 自然物 ・文化財保護 を通 じて自然環境を保護 する法律

(1 )文化財保護法

‑ 87‑

(4)

史跡名勝天然記念物の現状を変更 しまたはその 保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは、

文化庁長官の許可を得なければならず (80 条 1 項) 、その許可を受けずまたは許可の条件 に従わ ないで、史蹟名勝天然記念物の現状を変更 し、 ま たはその保存に影響を及ぼす行為をした者に対 し ては、文化庁長官は、原状回復に関 し必要な指示 をすることができる ( 同条 7 項) 。

(2) 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存 に関する法律

環境庁長官は、生息地等保護区 (36 条 1 項) の区域内で国内希少野生動植物の保存のために特 に必要があると認める区域 として指定 した管理地 区 (37 条 1 項)において許可なくまたは許可 に 附 した条件に違反 して (37 条 4 項 ・7 項)工作 物の新築増築、宅地の造成や土地の開墾など土地 の形質を変更する行為、木材の伐採等の行為を行っ た者 に対 し原状の回復等を命ずることがで きる (40 条 2 項) 0

4. 条例

多 くの自治体が縁の保全と回復を推進するため の条例を制定 している。中には、条例名に自然の 回復 という用語を用い、自然の回復を条例の積極 的な目的とし、そのための施策を盛 り込んだ条例 もある ( 「 東京における自然の保護 と回復に関す る条例」 ) 。その手法 として、まず緑地を保全すべ き地区あるいは緑化を推進すべき地区、 もしくは 保存すべき樹木を指定 し、その指定地域における 樹木の伐採 ・土地の形質の変更等の行為について 許可制または届出制を採用 し、無許可 ・無届 けで それ らの行為を した者に対 し、樹木 ・緑地の保護 に必要な限度において、原状回復を命 じ、または 原状回復が著 しく困難な場合にはこれに代わる措 置を命ずることができる、あるいはその旨を指導 ・ 勧告することができるとする条例が多い

(2

1 ) 0

第 Ⅱ章 原状回復を定めた開発許可の附款の法的 性格

自治体がゴルフ場等の リゾー ト施設の開発に対 し許可を与える際に、許可の条件 として 「開発行 為に着手 した後に、事業を開始または継続す るこ

とができなくなったときは、事業者の責任におい て森林を再生するなど土地を原状に復さなければ

ならない」旨の条件を附すことがある。この条件 は有効であろうか。これは従来、行政法学 におい て 「 行政行為の附款」として論 じられてきた問題 である。

1.行政行為の附款

ゴルフ場は都市計画法上、第二種特定工作物 と されているので (4 条 11 項) 、市街化区域内で ゴ ルフ場の建設の用に供する目的で土地の区画形質 を変更する開発行為にあたっては( 同条 12 項)、

原則 として都道府県知事の許可を受けなければな

らない (29 条)

(22)。

そ して、 この許可には都

市計画上必要な条件を附す ることができる。 (7 9 条前段) 。ただ し、その条件 は許可を受 けた者 に不当な義務を課す ものであってはな らない( 同 条後段) 0

通例、許可条件 として、工事中の防災措置、公 共施設の機能保全、自治体への報告義務、工事施 工状況を記録する義務の他 に、「 工事廃止に伴 う 措置」という見出 しの もと、「この開発行為を中 止 し、または廃止する場合は工事によって損 なわ れた公共施設の機能をすみやかに回復する措置を 行 うこと。また土地の形質の変更等によって周辺 の地域に、交通、排水、水利上の支障を来た し、

または土砂崩れ等による被害を及ぼさないよう適 切な措置を講ずること。」という条件が附されて いる( 筆者が実際に調査 した愛媛県新居浜市の 例 ) 0 ゴルフ場の開発工事の中止又は廃止に伴 う原状回 復義務が条件 ( 以下において 「 原状回復義務条性」

と記す)として附されているのである。もちろん、

原状回復の対象である公共施設とは、道路 ・公園 ・ 下水道 ・緑地 ・広場 ・河川 ・運河 ・水路 ・消防の 用に供する貯水施設である ( 都市計画法 4 条 14 項 ・同法施行令 1 条の 2 ) 。工事によって伐採 さ れた森林の復元は含まれていないが、この原状回 復義務条件は本稿のテーマにとって重要な鍵 とな ると思われるので、以下において条件の法的性質、

効力等について検討を加える。なお、ゴルフ場の 開発については、その存する地域に応 じて、都市 計画法以外にも、 、農地法、森林法、自然公園法、

自然環境保全法上の許可を受けなければならない が、これ らの許可にも条件を附すことができると されている ( 農地法 5 条 2 項、自然公園法 19 条、

自然環境保全法 17 条 2 項 ・25 条 5 項) 0 2. 行政行為の附款の種類 ・効力

許可 ・認可等の行政行為の効力を制約するため

(5)

に、行政庁が主たる内容の意思表示に付加す る従 たる意思表示を行政行為の附款 とい う

(23)

。附款 は、その内容によって、①期限、②条件、③負担、

④撤回権の留保等に分類 されている。期限とは、

行政行為の効力の発生または消滅を将来到来す る ことが確実な事実にかか らしめる附款である。条 件 とは、行政行為の効力の発生又は消滅を将来発 生することが不確実な事実にかか らしめる附款で ある( なお、法令ではこの狭義 の条件 を含む附款 全体を条件( 広義)と表記 している) 。条件 の成就 によって効力が生ずる停止条件 と、条件の成就 に より効力が消滅する解除条件がある。負担 とは、

行政行為の相手方に一定の作為 ・不作為の負担 を 課すことである

撤回権の留保 とは、行政行為の 後 に一定の事情が生 じた場合に、その行政行為 を 撤回 しうる権利をあらか じめ留保 してお く附款で ある

原状回復義務条件 は、附款の分類のうち負担 に あたると解することができる

(24)。

人の生命 ・身 体 ・財産に損害を発生 させないことは財産権に内 在する社会的制約 に属するか ら

(25)

、 開発工事 の中止に伴 う危険 ・災害の防止を目的として、開 発業者に上記負担を課すことは都市計画上必要 な 条件であり、違法なものではない。

( 狭義の) 条件 と異なり、負担の履行は行政行為 の効力に影響 しない。負担を履行 しな くて も、行 政行為の効力は発生 し、また既に発生 している効 力が消滅することはない

(26)。

許可を受 けた者が 負担を履行 しない場合、行政庁は行政上の強制執 行により負担を実現 させることができる。 ゴルフ 場の開発工事によって損なわれた公共施設の回復 および防災工事は、他人が代わって行 うことがで きるので、行政庁は代執行 によって右の措置を実 現 し、その費用をゴルフ場経営者か ら徴収す るこ

とになる

(27)

0

代執行の他 に、負担の不履行を理由として行政 庁が行政行為を撤回す ることができるかという問 題がある。 ゴルフ場の開発工事が中止 されたに も かかわ らず、許可条件に定め られている公共施設 等の原状回復義務を履行 しない場合に、許可を撤 回することができるであろうか。

堀庇な く有効に成立 した行政行為の効力をその 後に生 じた事情により将来に向かって消滅 させ る ことを行政行為の撤回 という

(28)

。都市計画法 は 一定の場合に許可を撤回することがで きると規定

し (81 条 1 項) 、許可条件の違反を撤回原因 とし てあげている( 同項 3 号) 。 しか しなが ら、無条件 に撤回を許す ものではな く、「 都市計画上必要 な 限度において」 撤回 しうるに過 ぎない (81 条 1 項 本文) 。また、一般的に、撤回事 由が生 じたと し て も、当然撤回 しうることにはな らないのであ っ て、相手方の事情等を考慮 した適切な利益考量が 必要 とされる

(29)。

従 って、開発工事中止後 も、

樹木が切 り倒 され山肌がむき出 しになっている山 林をそのまま放置 してお くことが、都市計画の目 的である 「 都市の健全な発展 と秩序ある整備 を図 る」 ことに反するかどうかの利益考量の問題 にな る。許可を一方的に撤回すれば、ゴルフ場業者か ら開発利益を奪 うことになり、また自治体 は代執 行により防災工事等を行 うことができるのである か ら、許可を撤回することには慎重でなければな らないと考えるが、いっまで も放置 してお くこと は都市計画にも影響を及ぼすので、その場合 には 撤回することができると解する

このことは、許 可の附款 として撤回権を留保 していた場合にも妥 当する。

3. 行政行為の附款の限界

附款はどのような行政行為にも附す ことがで き るのではな く、法律行為的行政行為 ( 許可 ・認可 等)で、かつ、附款を附 しうることを法令が認 め ている場合または附款について法令が行政庁に自 由裁量を認めている場合に限 られる。さらに、当 該行政行為の目的に照 らし必要な限度を超えて は な らな

。都市計画法は、許可の条件 は、都市計 画上必要なものであり、かっ、当該許可を受 けた 者に不当な義務を課す ものであってほな らないと いう附款の限界を定めている。「 都市計画上必要 な条件」とは、都市計画を推進す る都市計画の適 正な施行を確保するため必要 な条件をいい、「不 当な義務」とは都市計画を推進す る上で必要 とさ れる合理的な範囲を超えて私権を制限する場合な どをいう

(30)。

都市計画法上の許可の問題ではないが、道路 ・ 河川の占用許可、営業免許、公企業の特許等 にあ

たり、撤回原因を何 ら明示することな く、たとえ ば 「 公益上必要があると認めるときは、何時で も 撤回することができ、その場合には許可免許 を受

けた者の負担において原状に回復すべき旨の義務 を課する」旨の附款の効力については、 これを否 定的に解す る説が有力である

たとえば、田中

‑ 8 9‑

(6)

( 二) 説 は、こうした附款を例文的附款であると考 え、撤回は、 これを行使 しうるだけの十分 な客観 的理由がある場合に限 られるべきであり、また無 償で原状の回復を求めることはできず、公益 のた めに必要な場合で も、相手方の責に帰すべき事 由 による場合を除いて、相手方に加える損失に対 し ては、正 当な補償を与 える必要があるとしてい る

(31)0

それでは、ゴルフ場の開発許可を与える際 に、

「 工事を中止( 廃止)したときは、許可 を撤回す る ことができ、その場合にはゴルフ場の責任におい て山林を原状に回復 しなければな らない」とか、

撤回 しないまで も、「 工事 を廃止 したときは、土 地の地質を原状に復 し、伐採 した森林部分に植林 をすること」といった附款 は有効であろ うか。 こ うした附款は都市計画上で必要 とされる合理的な 範囲を超えて土地所有権の内容を制限 し、ゴル フ 場に不当な義務を課す もにであるといわざるを得

ないであろう。

森林法上の林地開発許可 に右の附款 をつけた場 合 も、同様に無効 と解せざるを得ない。林地開発 許可は、森林の他の用途‑の転用規制でなく、開 発の実施方法の規制で しかないので

(32)

、 ゴル フ 場の開発工事を中断 した後に元の状態に戻す こと を命ずることは林地開発許可制度の趣 旨か らして 認められないであろう。

第Ⅲ章 自然保護協定の効力としての原状回復義務

1.自然保護協定の法的効力

リゾー ト施設の開発業者 と自治体 もしくは住民 との間で、自然環境の保全および回復を内容 とす る協定 (自然保護協定)を結ぶ例が増えている

自治体のなかには条例で協定の締結を義務づけて いるもの もある。たとえば、長野県では、県 自然 環境保全条例によりゴルフ場開発を届出の対象 と し、届出のあったゴルフ場事業者 はあらか じめ県 知事 との間で、「自然 の破壊の防止、植生 の回復 その他 自然の保護のために必要な事項を内容 とす る自然保護協定」を締結 しなければならないとさ れている ( 同条例 23 条)。 そ して、知事 は自然 保護協定を締結 したときは、当該協定に違反す る 行為を しようとし、またはしたと認められる者 に 対 して、当該協定の履行の確保について必要 な括

置をとらなければならないとされ ( 同条例 24 条) 、 ゴルフ場の完成前に事業を放棄 した業者に対 し伐 採 した森林の全面的な回復および防災工事を請求 することができる

業者が この請求に従わない場 合、知事 は業者に代わってその措置を行 うことが できるが、それに必要な資金を担保するため、事 前に事業者に保証金を支払わせている

(33)

。 なお この保証金 は開発工事が完成 し県の検査が終了 し たときに返還 されることになっている。 したが っ て、ゴルフ場オープン後に営業を停止 した場合 に は協定の効力 は及ばない。

こうした自然保護協定の法的性質 については、

従来、公害防止協定 と同一のものとして論 じられ てきた

(34)

。公害防止協定は、締結 の当事者が誰 であるかによって、企業 と住民 との間の協定 と、

企業 と自治体 との間の協定に分けることができる が

(35)

、それぞれの協定の法的性質 については従 来次のように考え られてきた。

前者のいわゆる民間協定が、民事上 の契約であ り法的拘束力を有するという点では見解が一致 し ている。企業が協定上の義務を履行 しない場合、

地域住民団体 は民事裁判を提起 し企業に協定に基 づ く義務の履行を求めることができる。判例 も民 間協定の契約性を肯定 している

(36)

0

企業 と自治体間の協定の法的性質について は、

従来、見解の対立がみ られた。まず、協定 の法的 拘束力をめ ぐって、 これを否定する紳士協定説 と 契約 としての効力を肯定する契約説に分かれ、 さ らに契約説 は行政 ( 公法)契約説 と民事契約説 に 分かれている。

紳士協定説 は、公害防止行政 はあ くまで も法律 に基づいて行われるべきものであるか ら、法的根 拠を欠 く公害防止協定 は合意の名を借 りた行政指 導にすぎず、契約 としての法的拘束力はな く、 そ れに違反 したとして も社会的ない し道徳的責任 に 頼 らざ るをえない紳士協定 に過 ぎな い と解 す る

(37)

。行政契約説 は、協定 は契約で はあるが、

あ くまで も行政の手段たる性質を有 し、また内容 が民事契約の予定する当事者の私的利益に関す る ものではな く、地域社会の環境保全 という公法的 利益に向けられているので、行政 ( 公法)契約で あると解する

(38)

。義務の履行を求めるためには、

まず行政事件訴訟法上の当事者訴訟を提起 し確認

判決を得て、民事執行法上の強制執行を行 う。 こ

れに対 し民事契約説は、自治体 も私法上の人格者

(7)

として企業 と対等な立場で私的自治の原則 によ り 公害の防止等を内容 とす る契約を締結す ることが で きると解す る

(39)。

この説では、義務 の不履行 に対す る法的手段 は、当然、民事訴訟法 ・民事執 行法によることになる。

以上のように、従来 は公害防止協定の法的性質 をめ ぐって見解が対立 していたが、近時 は、協定 の法的性質を一律に断ず るべ きではな く、協定 中 の条項 ごとに権利・ 義務 の内容 ・効力、不履行 に 対す る強制方法を個別的・ 貝体的 に検討べ きであ るとの見解が支配的になっている

(40)

。 その理 由 として次の点があげられている。確かに紳士協定 説が主張するように、協定の中には、「 誠 藍を持 っ て公害が生 じないように努力す る ( 配慮す る )」

とか 「 公害が生 じた場合には、協議の上処理する」

といった条項のように、精神的な内容を定 めただ けで、具体性 に欠 ける条項があり、 これ らは法的 拘束力がないといわざるをえない

(4 1)

。 しか し、

行政 は、法律 による権力的規制だけでな く、契約 という手法 により非権力的に国民の権利義務を設 定す ることがで きるのであり、特 に自治体が住民 の環境上の利益を守 るために企業の任意の承諾 を 得てその経済的自由を制限す ることは法治行政 に 反す るものではな く、また、協定上の義務 を履行 しない場合の強制方法については、行政上の強制 執行ができないときは一般原則 どお り司法権によ り民事執行法により実現することが許 されると考 えるべ きであるか ら、公害防止協定を一律に紳士 協定 と解すべ きではない

(42)。

また、行政 ( 公法) 契約説 と民事契約説の対立 については、協定 の条 項のなかには民事的なものと行政的な ものが混在 していて、協定全体の性質を一律 に決定す ること は的を射た ものとはいえず、また、当事者訴訟 と 民事訴訟 との間に手続 き上の大差があるわけで は な く

(43)

、そ もそ も公法 と私法の区別が ほとん ど 意味を持 たな くなった今 日、行政 ( 公法)契約か 民事契約かは問題 にす る必要がないとの批判があ る

(44)

。以上のような理由により、前述 したよ う に公害防止協定の効力 については条項 ごとに確定 すべ きであるとされている。 こうした公害防止協 定 に関す る解釈方法 は自然保護協定 について もそ

のまま妥当す る。

では、 この章の冒頭 に挙 げた、「ゴル フ場等 の リゾー ト業者が開発工事完成前 に事業を放棄 した 場合には、植生を回復 しなければな らない」 旨の

長野県 自然保護協定の条項 は有効であろうか

(45)

。 まず、契約であるか らには、 この条項が当事者 の 任意の合意に基づ くものでなけ らればな らない。

つ ぎに、本条項 は植生の回復、つまり植林 とい う 具体的な作為義務 を リゾー ト業者 に課す ものであ るか ら、紳士契約条項ではない。従 って本条項 は 有効であ り、その不履行 に対 しては最終的には代 替執行の方法により強制的に内容を実現すること がで きる。その費用をあ らか じめ保証金 とい う名 目で提供 させることも強行法規や公序良俗に反す るものとはいえないであろう

各種の公害規制法に定め られている規制値 ( 塞 準)を緩やかにす る条項 は強行法規違反であるが、

厳 しくす る条項の効力については賛否両論がある。

他の企業 にも影響が及び、産業の発展を阻害 す る することになるというのが無効説の理由であるが、

当事者である企業が承諾 しているのであり、 また 企業の営業の自由より重い価値を有す る住民の生 命・ 健康および自然を保護すべ きで あるか ら、法 規制値を上回 る基準を設定する条項 も有効 と解す べ きである

(46)

。 自然保護協定 につ いて も同様 に 解すべ きであろう

2.契約 ( 協定)解除に伴 う原状回復義務 地方公共団体が造成 した土地を企業 に譲渡す る 際に、公害防止協定を結び、その中で 「 企業が公 害防止義務 に違反 した場合には土地の売買契約 を 解除す ることがで き、解除 された場合、企業 は自 己の負担で土地を原状に復 して明け渡 さなければ な らない」旨を定める例がある ( 解除権でな く、

買戻権を留保 してお くもの もあ る)

(47)。

契約 の 解除に関する条項 は民事契約 と解釈せざるをえな い。なお、解除による原状回復の対象 は主 にその 土地 に建て られた工場等の建物である。

解除権を協定中に留保 していない場合に、公害 防止義務違反を債務不履行 として協定の解除が認 め られるかについては、 これを肯定す る説

(48)

と、

公害防止義務 は土地譲渡契約の主たる義務ではな く、かつその履行を強制することがで きるので、

義務違反によって譲渡の目的が達成で きない場合 にのみ解除を認めるべ きであるとの見解

(49)

が対 立 しているが、解除権を留保 している場合の解除 権の行使 は異論な く認め られる

(50)

。 この条項 の 効力 については、企業の投下資本を保護する見地 か ら、解除 は認めるものの、建物収去 ・ 明渡 し請 求 は否定 し、その後の法律関係を賃貸借 として構

‑ 91‑

(8)

成するか、または企業に建物等の買取請求権 を認 めようとする見解 もある

(51)

。 しか し、原状回復 義務 は解除権を定める条項に当然に予定 されてい る内容であり、また原状回復の否定 は企業に公害 防止義務を確実に履行 させることを封 じ込めるお それがあるので、条項 自体が企業の急迫につけ込 んで設けられたなどの事情がない限 り、有効 と解 すべきである

(52)

0

それでは、「自治体が公有地を リゾー ト業者 に売 却する際に、事業を工事完成前に放棄 したときは 売買契約を解除することができる」旨の協定 は有 効であろうか。自治体 は事業の開始、継続 を土地 売却の前提 としているのであるか ら、目的不到達 の場合に備えての解除権を留保する条項 は有効で あると考えるべきであり、解除がなされた場合の 森林の回復義務に関する条項 も、公害防止義務違 反の場合 と同 じ理由により有効 と解すべきである。

第Ⅳ章 撮害賠価としての原状回復

損害の賠償 とは、損害を填補することである。

損害の填補により債務不履行 または不法行為が行 われなか ったのと同一の状態を回復することが損 害賠償の目的である。 この意味では原状回復が損 害賠償の原則であるといえる。 しか し、それ は損 害賠償の目的ないし理念における原状回復 ( 広義) であり、現実にどのような方法で損害を填補 させ るかは別問題である。損害賠償の方法には、損害 が生 じなか ったのと同 じような状態を現実に再現 する狭義の原状回復 と、生 じた損害を金銭に換算 して賠償金を支払わせる金銭賠償の二つの方法が あり、我が国の民法は金銭賠償を原則 としている (417 条 ・722 条) 。 しか し、例外 として民法 その他の法律において損害賠償の方法 として原状 回復 ( 狭義)が定められている場合があり、 また 当事者は意思表示、すなわち契約によって原状回 復を採用することができる ( 民法 417 条参照)0

たとえば鉱業法は、鉱害賠償の方法について、民 法 と同 じく金銭賠償を原則 としているが (111 条 2 項本文) 、例外 として次 の場合 に原状回復 に よる賠償を認めている

すなわち、第一 に、「 賠 償金額に比 して著 しく多額の費用を要 しないで原 状の回復をすることがで きるとき」 ( 同条 2 項但 香)と、第二に、原状回復による賠償を賠償義務

者が申 し立て、裁判所が適当と認めたときである ( 同条 3 項) 。なお、原状回復 といって も、必ず し も、物理的な原形復旧を意味するものでな く、効 用的に原状 と同一状態に回復すれば足 りると解釈

されている

(53)0

それでは、原状回復に関する規定がない場合 に は、その旨の特約がない限 り、原状回復は認め ら れないものであろうか。判例 ・ 多数説 はこれを否 定する

(54)0

民法の立法者 は、原状回復 は面倒で不便 で あ る

(55)

のに対 し金銭賠償は便利であるとの理由で 金銭賠償を原則的賠償方法 としたが、その前提 に は金銭賠償によって原状回復 と同一の価値を被害 者に与えることができるとの認識があ った

(56)

0.

しか し、場合によっては金銭賠償 と原状回復で は 被害者にもたらされる利益が異なる場合がある。

普通の商品のような代替性のある物については金 銭賠償 と原状回復 ( 代物の給付) とで被害者の利 益状況 ( 特別損害は除 く)に差はないが、土地、

とりわけ農地や森林地 といった個性を有する非代 替物については金銭賠償 と原状回復 との間には差 が生 じ、金銭で賠償 しても原状が回復 されないこ とがある。鉱業法が損害賠償の方法 として原状回 復を認めているのは、鉱害によって汚染 された農 地 は交換価値の低下による金銭賠償を得て も、他 に新 しい農地を取得することは困難であり、また 農地の荒廃は政策的に望ましくないという利益考 量に基づ くものである

(5

7 ) 0

そうであるならば、原状回復を定めた規定が存 在 しない場合であって も、それぞれの事例におい て、具体的に被害者 ・加害者双方の利害得失を考 慮 して、必要 に応 じて原状回復を認める余地があ る

(58)

。原状回復を定める法規定の類推解釈 に基 づき、公害についてではあるが、必要に応 じて原 状回復を認めるべきであると解する説 もある

(59)

0 その理由は、( むいわゆる自然的原状回復が必ず し

も不可能ではないこと、②被害法益に代替性がな いので、金銭でもって代物を得 ることが不可能 ま たは非常に困難、③被害法益が等価交換法則 にな じまず、金銭に換算することが困難、④被害が個 人の私的利益の侵害にとどまらず、社会的性格 を 帯び、それを復元することは社会的利益にも適 う、

という点にある

(60)

以上、損害賠償として原状回復を求めることが

できるかどうかについてみてきたが、 リゾー ト業

(9)

者が開発工事を着手 した後 に事業 を放棄 してい る 場合 は、公害の場合 と異 な り、そ もそ も森林 を伐 採 したまま放置 しているだけで は不法行為 にあた らないので、原状回復 として森林 の再生を請求 す ることは無理であろう

(1 )木下敏之「 森 と水田が危 ない」ジュ リス ト 1 015 号 201 貢。

(2)晴山‑穂 「リゾー ト開発 と農地 の規缶願拝口 」 行政社会論集 ( 福 島大学) 3 巻 4 号 49 貢以 下、同 「リゾー ト開発 と国有林野の規缶脚 口 」 行政社会論集 4 巻 4 号 42 貢以下参照。

(3) 野 口俊邦 『 森 と人 と環境 』 49 貢以下参月 ‰ なお、 リゾー トにつ いて は 佐藤誠 『リゾー ト列島』 、藤原信「自然環境の破壊、特 に 「 森 林 の保健機能 の増進 に関す る特別措置法」 に ついて」自由 と正義 42 巻 4 号 28 頁以下。

(4)山村恒年 『自然保護 の法 と戦略( 第 2 版 )』

178 貢の表 による。

(5)鈴木茂 「 「 休養権」と「 パブリック ・リゾー ト J J

鈴木茂 ・小淵港編 『リゾー トの総合的研究』

7 貢以下。

(6)竹内基「ゴルフ場 と倒産件数・ 倒産原因 の現 状」 金融法務事情 1519 7 貢参照。

(7) リゾー ト法上の全国第一号 の指定を受 けた 宮崎県の「 宮崎・日南海岸 リゾー ト構想」 の中 核施設「シーガイア」を経営す る第三セ クター

「フェニ ックス リゾー ト社」 の 1998 年度 の決算報告で、累積赤字が 1115 億円に も 達 していることが明 らか にな った( 朝 日新聞

1999 年 6 月 3 日西部本社版) 0

(8)阿部泰隆「自然破壊・ 開発資本 ポロ儲 けの リ ゾー トはい らない」法学 セ ミナ ー42 号 63 貢、鶴岡誠「リゾー ト法 の全面 的見直 しを求

める」エコノ ミス ト 68 巻 50 号 95 貢、藤 原信 「ゴル フ場の抱え る諸問題」公害研究 2

1 巻 2 号 33 貢、後藤基「 総 合保養地整備法 (

わゆる リゾー ト法) と地域開発 の論理」名 古屋経済大学法学部開設記念論集 357 貢、

リゾー ト・ゴルフ場問題全国連絡会編 閥 証 ・ リゾー ト開発 [ 東 日本編 ] 』、 同 [ 西 目本編]、

伊藤護也「リゾー ト開発 と環境胡 乱冨井利安 ・ 伊藤護也 ・片岡直樹 『 新版環境法 の新 たな展 開

197 貢以下、林良二 「 環境破壊の リゾ‑

ト法を廃止せよ」エコノ ミス ト 70 巻 3 号 5 4 貢。なお、 リゾー ト法 に関す る最新 の文献 として、前田繁‑他 『 総合保養地域整備法 の 研究』参照。

(9) 畠山武道 「 新 しい環境概念 と法」 ジュ リス

1015 号 108 貢。

(10) 森林法 については、橋本政樹 「 森林保全 の法 と課題一森林法を中心 として」 ジュ リ ス ト増刊 『 環境問題の行方

220 貢以下 参照。 ゴル フ場開発の法的規制については、

中井勝 巳 「ゴル フ場開発の法的規制」行政 社会論集 ( 福島大学) 5 巻 2 号 22 貢以下、

矢島基美 「ゴル フ場開発の公法論的検討」

杉光英俊他著 『 環境保全 と地域環境‑ ゴル フ場開発をめ ぐる学際的研究‑』 103 貢 以下参照。

(11)原田尚彦「自然環境保全立法 の生成 と展 開」ジュ リス ト増刊総 合特集 4 『開発 と保 全 』 112 貢

(12) 佐々木恵彦「 森林 と環境」東京大学公開講 座 『 環境 』 95 貢。

(13) 環境庁編 『 平成 10 年版環境 白書総論』

252 貢。

(14)物権的請求権 としての原状回復 につ いて は環境権 との関係で考察すべ きであると思 われるので後 日の検討課題 とす る。

(15) ただ し、 自然環境を目的 とす る規制 によ り、地域 の特性 に照 らし社会通念 に著 しく 反す る土地利用が制限 されて も損失補償 は 不要である( 杉村敏正 「 土地利用規制 と損 失補償」 ジュ リス ト増刊 『行政法 の争 点 ( 新版 ) 』 284 貢) 0

(16)吉田邦彦 「 環境権 と所有理論の新展 開」

山田卓生編集代表 『 新 ・現代損害賠償法講 座 2 権利侵害 と被侵害利益 』 207 貢以下 参照。

(17) 企業が倒産 した後 に歩む法的手続 きを大 別すれば、再建型である、会社更生 ( 会社 更正法) 、会社整理 ( 商法)、和議 ( 和謝 去)

と、解体清算型 で あ る特別清算 ( 商法)、

破産 ( 破産法)がある。会員制 ゴル フ場 が 倒産 した場合 には、会員のプ レイ権を存続 させ るために再建型の手続 きが取 られ るこ とが多 いが、再建が不可能 なため破産手続 きに移行 した例 もある。再建型の場合 には

‑ 9 3‑

(10)

森林の回復を法的に強制することはできな い。また解体型の場合に、解体後に回復責 任を負わせたとして ももはや負担能力がな いのでその実効性 は薄いといわざるを得 な い。本問題を検討する際には倒産法制 も考 慮に入れる必要がある

(18) しか し、原生 自然環境保全地域 に指定 さ れているのは、 5 地域 5 , 631ha だけ で( 平成 11 年 3 月末現在)、 それ も国有 ・ 公有地に限定 されており、民有地を指定す

ることはできず、また、国有地で も既 に森 林法上の保安林に指定 されている森林を重 ねて指定することはできない。自然環境保 全地域 は民有地で も指定することができる が、実際に指定 されているのは 10 地域 2

1 , 593ha である。

(19)原状回復命令に従わない者がいる場合 に は、行政代執行法により代執行ができるが、

山村・ 前掲書 ・126 貢 によれば、実際 に 行われたのは、 1958 年の鷲羽山、 19

69 年の昭和新山の 2 件 しかない。その理 由として同書には、要件が厳 しいこと、違 反者を発見するのが難 しいこと、代執行 の 前に行政指導するのが通常であるというこ

とがあげられている。

(20)森林法制研究会 『 < 特別法 コンメ ンター ル>改訂森林法森林組合法 』 58 貢。

(21) 荒秀 『自然環境保全条例 』 42 貢。

(22)政令指定都市の場合にはその長であ り、

また都道府県知事 は人口 10 万人以上の市 の長に許可の権限を委任することができる ( 都市計画法 86 条 1 項) 。なお市街化調整 区域における開発行為の許可基準を定めた 同法 34条 は、第 2種特定工作物を除外 し ているので、市街化調整区域ではほとん ど 規制が及ばない。

(23)田中二郎 『 新版行政法上巻( 全訂第 2 版) 』 127 頁。

( 24) 工事が中止 されて も、それによ り直ちに 開発許可の効力が消滅するものではないの で、原状回復義務条件を解除条件 と解す る ことはできない。なお、開発許可を受 けた 者は、開発行為に関する工事を廃止 したと きは、遅滞なく、建設省令で定めるところ によりその旨を都道府県知事に届けなけれ

ばならないと定められている (38 条)。 し か し、工事廃止届 は開発許可の効力を消滅 させるものではない。工事廃止届を提出さ せる目的は次の点にあるとされている。開 発工事に関する工事が中途で廃止されると、

周辺地域に溢水等の被害が生 じたり、公共 機能を阻害 したり、環境を害 したりす るお それがあるので、これを回避するために、

許可に条件を附 して、工事が中止 された場 合の事後処理について定めを置 くことがで きる。そ して、現実に工事が中断された場 合に、都道府県知事が事後処理の履行状況 を把握するためには、どの開発行為がいっ 廃止 されたのかを確知 しなければならない ので、工事廃止届を提出させることとした のである。建設省都市局都市計画課監修

『 逐条問答都市計画法の運用( 第 2 次改訂版) 』

416 貢。

(25) 杉村 ・前掲 ・283 頁。

(26) 芝地義一 『 行政法総論講義( 第 2 版) 』 1 81 頁。

(27) 杉村敏正 『 全訂行政法講義総論上巻 』 2 44 頁、芝池・ 前掲書 ・182 亘。

(28) 田中・ 前掲書 ・154 貢。なお、行政庁 は 瑠痕のある行政行為を、堀症を理由として 取 り消さずに、後発的事情を理由に撤回す ることもできるのであるか ら、成立時の瑠 症の有無にかかわ らず行政行為 は撤回の対 象になると解する説 もある( 芝地 ・前掲書 ・

169・170 貢) 0

(29) 塩野宏 『 行政法 Ⅰ( 第 2 版) 』 144 頁。

(30)建設省都市局都市計画課監修 『 逐条問答 都市計画法の運用( 第 2 次改訂版) 』 659 頁。

(31) 田中・ 前掲書 ・128 貢 ・131 貢。

(32)山村恒年 『 検証 しなが ら学ぶ環掛 q A 165 貢。

(33)宮下隆 「 長野県下 におけるゴル フ場開発 の原状 と開発規制の制度」信州大学環境問 題研究教育懇談会地域開発 と環境問題研究 班編 『ゴルフ場 ・リゾー ト開発 地域 に何

をもたらすか 』 3 貢。

(34)公害防止協定を環境保全のための新 たな

手法 として法的に位置づけようとする最新

の文献 として、高橋信隆 「 環境保全 の 「 新

(11)

たな」手法の展開」 ジュ リス ト増

『環境 問題 の行方 』 48 貢以下参照。

(35) 住民 の健康 と生活環境ない し環境権 を守 るという冒的 と機能の同一性 を根拠 に、契 約条項 の効力を検討す る際 には両協定 の共 通性 ない し連続性 を考慮すべ きであるとい う見解がある

中山充 「 公害防止協定 と契 約責任」磯村保編 『 契約責任の現代 的諸相 ( 上巻 ) 』 322 貢。

(36) 最判昭和 42 年 12 月 12 日判例時報 5 11 号 37 貢、宇都宮地裁大田原支部決定 昭和 46 年 3 月 8 日商事法務 554 号 20 貢、東京地判昭和 56 年 5 月 29 日判例時 報 1007 号 23 貢。

(37) 成 田頼明 「 公害行政の法理」公法研究 3 2 巻 101 貢以下、淡路剛久 「 公害行政 に おける防止協定 の位置」地方 自治職員研修

3 巻 2 号 18 貢。

(38) 原田尚彦 「 公害防止協定 とその法律上 の 問題点」 ジュ リス ト臨時増刊 458 号 27

6 貢、石田喜久夫 『 現代の契約法 』210

貢 ( 石田教授 は公法契約説 と行政契約説 を 分 けていない) 0

(39) 野村好弘 「 公害防止協定 の民事法的

r J E 軋

判例 タイム ズ

248 号 2 貢。

( 40) 松島惇吉 「 公害防止協定」西原道雄 ・ 木 村保男編 『 公害法 の基礎 [ 実用編 ] 』 31 貢 、中山・ 前掲 ・321 頁。 なお こう した 見解 に潜む危険性 を指摘す るものとして、

石田・ 前掲書 ・211 貢 ( 註) 8 0

(41) 芝地義一 「 行政法 における要綱 お よび協 定」芦部信喜他編 『 岩波講座基本法学 4‑

契約 』 294・295 貢。

(42) 中山・ 前掲 ・328 貢以下。

(43) 芝池義一 『 行政法総 論講義 ( 第 2 版 ) 』 236 貢、中山・ 前掲 ・331 貢。

( 44) 阿部泰隆 「 公害防止協定 と住民 の救済方 法」判例時報 988 号 17 貢以下。

(45) 横浜市 は 「 縁 の環境 をっ くり育てる条例」

に基づ き 「 緑地保存特別対策事業矧 」

を制定 し、その中で、法律 による保存 の対 象 とな らない市街化区域内における斜面緑 地や 自然山林を保存す る事業を、土地所有 者 と市が民法上 の契約 を締結す ることによ

り実施す ることを定 めている ( 岩間徹 「 槙

浜市 における緑地保存要項」人間環境問題 研究会編 『 公害 ・環境 に係 る協定等 の法学 的研究』環境法研究 14 号 217 貢)。 こ の契約 において、土地所有者 は土地 の形質 を変更す る行為や木材の伐採 を して はな ら ない義務が定 め られている。

(46) 野村 ・前掲 ・4 貢。

(47) 野村・ 前掲 ・9 貢 (48) 野村・ 前掲 ・11 貢。

(49) 中山・ 前掲 ・342 貢。

(50) 野村・ 前掲 ・9 貢、中山・ 前掲 ・342 貢。

(51) 野村・ 前掲 ・9 貢 (52) 中山・ 前掲 ・342 貢。

(53) 我妻栄 ・豊 島陸 『鉱業法 ( 法律学全 集 51) 』 288 貢。

(54) 大判明治 37 年 12 月 19 日民録 10 輯 1641 貢、四宮和夫 『 事務管理 ・不 当利 得 ・不法行為下巻 』 475 貢以下および同

476 貢引用文献参照。

(55) 被害者が複数 いる場合 には、原状 回復 は 全員一致でなければ行えないという難点 も

ある ( 我妻 ・豊島・ 前掲書 ・288 貢) 。 (56) 四宮 ・前掲書 ・469 貢。

(57)前 田達 明 『民法Ⅵ 2 (不 法 行 為 法 )』

269 貢。

(58) 加藤一郎 『不法行為 ( 増補版 ) 』 215 貢。なお、経済学者 の宮本憲一教授 は、環 境政策の観点か ら、公害 または環境破壊 に よる被害救済 は原状回復が原則であ り、被 害を受 けた人体の健康回復、自然の復元 に よって、被害前 の状態 に戻すべ きであ ると の立場 に立 ち、原状回復 について次の よ う な提言を している ( 「 原状回復 と環境政策」

日本土地法学会編 『 公害 の原状回復 ・宅地 開発 と農業<土地問題双書 14>』 2 貢以 下) 。第一 に、金銭賠償 は損害 を交換価値 に換算す るものであるが、原状回復 は使用 価値を考慮す るものである。た とえば、健 康の回復や自然の復元 は交換価値で は測 り 得 ない問題を含み、経済学でい うところの フローの補償だけでな く、貨幣価値 に換算 で きない自然や人間の健康等の ス トックの 補償を も考え ることである。第二 に、原状 回復 とい って も、被害発生前の状態 に戻せ ばよい もので はな く、二度 と損害が発生 し

ー 9 5‑

(12)

ないような状態へ戻す ことがそ こには含 ま れている。そ して、環境政策上の原状回復 の要件 として以下 の ことをあげる。第一に、

被害者 に対 して慰謝料および生活費が賠償 金 として支払われ るのはもちろんだが、 そ れに付 け加えて、被害者が健康を回復 し職 場で働 くことが保障 されなければな らず、

さらに被害者が暮 らす コ ミュニテ ィが確保 されなければな らない。環境政策 の最終 目 標 は、都市作 り ・地域社会 の再生であ る。

第四に、原状回復 の内容 と方法を決定 す る のは被害者であるとす る。 したが って、農 地が汚染 された場合 に、被害者が農地 へ の 復元ではな く、宅地 あるいは職場 の用地 へ の復元 を希望す るな らば、それ も原状回復 として認めるべ きであるとす る。第五 に、

原状回復の費用 は原則 として汚染者が負担 すべ きである。そ して第六番 目に、従来、

汚染 された土壌 の客土や公害患者の病院等 につ いて公共性 の名の元税金が使われて き たが、第一次的には汚染者が 100% 負担 すべ きである。

(59) 吉村良一 『 不法行為法 』 96 頁、富井利 安 「 公害の原状回復論と差止盈 」富井利安 ・ 伊藤護也 『 公害 と環境法の展開 』 32 亘以 下。

(60) 吉井 ・前掲 ・32 貢。

( 付記)

本稿 は、平成 10 年度科学研究費補助金 の助成 を受 けた研究成果 の一部である。

( 1 9 9 9 年 4 月 3 0 日受理)

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