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真武友一*・今井康文*

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Academic year: 2021

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全文

(1)

大型鋼材の調質熱処理に及ぼす冷却条件の影響

真武友一*・今井康文*

        Effect of Heat Transfer Condition

on the Tempering Operation of the Large Turbine Rotor

by

Tomokazu MATAKE and Yasufumi IMAI

(Department of Mechanical Engineering)

  Unsteady temperature field was analyzed numerically on the large turbine rotor which was in tempering operation without introducing temper brittleness. Several combinations of values of the heat transfer coefficients were examined to observe those effect on the entire cooling rate and to obtain the most apPropriate combination. Heat trarlsfer from the outer surface of the rotor was dominant and almost controlled the entire cooling rate, even on the bore surface. The temperature of the bore surface remained still high in the temper brittleness region after the temperature of the outer surface cooled down far below that region. Hence, it was concluded that the t6st specimens which are cut out near the outer surface might mislead the stre㎎th evaluation unless the special care is made.

1.緒   言

 真空鋳造や品質管理の技術の向上などによる造戦法 の改善や,大型鍛造機械,工作機械の出現によって機 械や構造物の大型化が技術的にも可能になった.一方

コスト低減の目的で船舶や発電プラント大型化の需要 が切実となり需要と供給の関係は相助長してプラント や機械は大型化の道を辿っている。事実発電機の一軸       1)

当り出力は階段的に年を追って増大してきた.(図1).

 回転体は中心部に最大応力が発生することは衆知の ことであるし,インゴットは中央部に偏析や巣などの 存在する汚い部ができることも避けられない事実であ る.一したがって大型ローターのように最大応力が劣化 した中央部に発生する場合には,欠陥を含む部位を除 くために内孔(ボア)をあける.当然最大応力はこの ボア表面に生ずるのでこの部分の材質の強度が問題と

なる.

 従来,このローター内部の材質の強度は外周部より        2>

採取した試験片の試験結果から推定されているが(図 2)その根拠は明らかではない.またコアを抜いて調 査しても重要なのはボア表面付近であり,偏析などを 考えればコア中心の材質が必ずしもボア表面付近の材 質の強度を示すとは考えられない.このことは,たと

え靱質であったとしても調質を必要とする特殊鋼にお いては,熱処理温度が材質を左右するのでローター表 面温度とボア付近の温度の関係については正確な考察 が必要である.これは調質の方法や確性試験の方法や その取扱い方について適確な指示を必要とするからで ある.しかしこのことが問題になったのは鋼塊が高級 材料でその上大型になったためである.たとえば表面 が焼戻脆性温度を避けるように調整されていても,ボ ア付近までそうなっているかはわかっていない.すな わち表面付近で採取した試験片の確性値ではボア付近 の脆化を推定できない危険性が考えられるのである.

*機械工学科

(2)

2 長崎大学工学部研究報告第7号 昭和51年7月

3

Σ

ξ

9 8

2

β

6

Σ

1000 900 800 700 600 500 400 300 200

loo ol920

1

o 3600RPM

ringle Shof書

8

1800RPM SinOle rhα脅or Cross

@ Compound

1

1

_一・」一

■♂・一」

9950      1940      1950          Ser》ice Yedr   Fig.1Machine sizes versus years

A B

1960 1970

o 哺      一

一  一  一      一 一 一一

鴨  一 一 一     一  一 働 一 一 一

一    一 一  一 一     一     一 画 一 一 一 一 一  一 一  一  一

      A B

Fig.2Test location on mi・Cr−Mo.V low pressure rotor

 したがって本論文では大型化によって起こる問題と して低圧ローターの熱処理の問題を調査したのでその 結果を報告する.一般に構造用ニッケル・クロム鋼種

は500〜550℃および675℃に長時間保持すると著し

       3)

く脆性を現わす(二次焼戻し脆性)といわれている.

この焼戻し脆性を避けるためには,上述の中間の温度 範囲(550〜650℃)を焼戻し温度とし,そこから急冷 する必要があるが,余り急激な冷却は熱応力に基づく 残留応力を生じせしめることとなる.適当な冷却条件 でも外径寸法が大きい個所では,外周近傍と内部で,

冷却速度にかなりの差が生じる場合がありうると考え

られる.

 そこで,最大外径部分に注目し,初期温度570℃か ら二次焼戻し脆性領域を出た憩O℃までの,冷却状態 を計算から明らかにする.

2.温度分布の基本的解法

 軸対称非定常温度分布とその時間的変化は,次の微 分方程式を所定の初期条件,境界条件のもとに解けば 得られる.

夢一・(券+÷÷+劃θ (・)

 ここで,渉=時間,θ二温度,α=材料の温度伝導 率(m2/hr).

 初期条件として,ガ=0でθこθ。(一様).境界条件 として,外気(外気温一定)と熱伝達があるとし,

その熱伝達係数を図3のようにα。,α、,伽,α

する.

 軸方向の対称性から考えて,ここで考慮する領域を

図2で,A−A, B−B間に限定し,局部的な温度分 布はA−A,B−B線に対して対称であるとする.

 (1)式を差分近似で解くことを考える.図3のように

(3)

B

/・

L δr

→α諭

@  を↑αs

10

T →α

  1

齒¥1

1

1    5      10      15      20

@     一一伽1

一一

̀

 Fig.3Division of the axi−symmetric region      between A−A and BB in Fig.2with      usi㎎the nodal number I and J

z軸を含みz軸に平行に切った断面を長方形格子(格 子の大きさ,δ×h)で分割する。格子点の番号を1,

Jとし,任意の時間(t)での温度をθ1(1,J),それ から△t時間後の温度をθ2(1,J)とする.格子点が境 界上にない場合は,(1)式はつぎのような差分近似式に       4)

書き替えられる.

θ2(1;ノ)一θ1(Z;ノ)    θ1(∫一1−1,ノ)十θ1(1−1,ノ)一2θ1(五ノ)

      =α  △

θ1(∫+1,ノ)一θ1(1−1,ノ)

    δ2

θ1(云ノ+1)+飢(〃:一1)一2θ1(五ノ)

 例えば,外周1=21,2≦J≦7では

θ・㈲一(  2α△ 2α△ 2α。△  、R。1一δ・「・一,γδR。一勉)θ1(切

    2α△ .瓦一%

      θ1(∫一1,ノ)

   十    δ・,瓦一%

   +穿{θ1(五ノL1)+θ1(五ノ+1)}

   +21手会肇磁   .(・)

 ここで,馳6,γは材料の比熱と比重量,R。は外半径,

のは外気温である.

 ところで,安定な解を得る花めには,1ステップの       5)

時間間隔△ は任意には決められず,各節点での平衡式

(3)式右辺第1項の係数が負でないことが十分条件である.

2δ7

Are・・lr一蔓)φh\

θ{1−1,J)

φ r

ぬ2

θ{1,J+1)

 峻

θ 1.の

Volume

・rφh

  8

θ(1,J−1)

    (2)

A「eo冒r・φ・δ  θ{1+lgJ}

Are・・(・芸}φh

Fig.4Axi−symmetric element surrounding the

     nodal point(1, J)

②式は図4に示すような領域での熱エネルギの平衡 を考えることによっても得られる.

 格子点が境界上にある場合も同様にして差分近似式 が求められる.

3.各種係数値の評価

3−1 熱伝達係数

 a,自然対流熱伝達

 垂直円管の外表面での自然対流熱伝達係数は次式          6)

で与えられている.

N・一・・652i Pr21:1÷Pr)㌔・%(P・〉…)

  ここで,Pr, Nu, Grはそれぞれプラントル数,

 ヌセルト数,グラスホフ数である.

  さて,外周の平均温度485℃(=(570+400)/2)

 と外気温30℃の平均値258℃での空気の物性値を使 用すれば,

  Pr=0.689

  Gr=4.40×109H:3

 よって,Nu=L21×102H%が得られる.すなわち 平均熱伝達係数は代表寸法H=5mとして,つぎの

 ように求められる.

     α。二3kcaI/m2hr℃

 b.輻射等価熱伝達

 計算中,直接境界表面での輻射による熱エネルギ の移動を取扱うこともできるが,ここでは,つぎの  ような輻射等価熱伝達係数を使って境界条件を簡単

 にした.

   ・一4・88×10−8・角・/,(T4一乃)/(T−7})

ここで漁≒1疏≒・一・.翫ηは絶文寸温 度で表わした物体表面と周囲の温度である.物体表 面温度が570℃,400℃とき,この値はそれぞれα

=35,21kcal/m2hr DCとなる.

c.その他

 外表面での熱伝達係数は(α),(∂)のようにして予想で きるが,スリット側面や底面での値α、,απは予想

(4)

4 長崎大学工学部研究報告第7号 昭和51年7月

がむつかしい.しかし,これらの量は後にのべるよ うに余り重要ではない.

3−2 内円孔表面の境界条件

  内円孔内の境界条件として,簡単に熱流亡が一定  と仮定し,その大きさをαf×△T=0〜2000kca1/m2  hrに変化させた.(ここで△7 は所用熱流束を与える  に必要な境界と外界との温度差)

3−3 材料の物性値

  ニッケル・クロム鋼の熱伝導率λ,比熱。,比重 量γとして570〜400℃の範囲でおよそつぎのような 値であるとした.

   λ=29kcal/mhr℃, c=0.165kca1/kg℃

   γ=7.90×103kg/m3

3−4 格子の大きさ

 軸方向に10等分,半径方向に20等分した.δ,hの  およその値はそれぞれ0.04,0.05mである.

 図5は冷却開始後3.5時間での(1=21,J=2)点

の温度をα。に対してプロットしたものである.この時 α、=伽=0としているが,これらの影響はα。によるも のに比べはるかに小さい.3.5時間後の表面温.度が400

℃程度と考えれば,図からそのような状態はα。が30 kcal/m2茸r℃付近で起っている.自然対流と熱輻射の 平均値を加えた場合α。がおよそ31kcal/m・hr℃にな るので,実際の冷却作業では,強制送風を行なっても その効果は少なく,ほとんど輻射伝熱のみに依ってい ると考えられる.

ε Φ

450

400

350

 1

αsαm鷺。・期睡

::1

● 10  5

3−5 時間間隔

 材料の物性値,格子間隔の値を使い,熱伝達係数 50kca1/m2hr℃程度の値に対して△t≦0.02hrが得  られる.

  △t=0.01hrとすれば十分安定な解が得られる.

4.計算結果とその考察

 外表面の熱伝達係数としては,3−1(α),(∂)に述 べたもののほか,強制送風を行なう場合には強制対流 の影響をも考慮する必要がある.そこで,α。を0から 50kcal/m2hr℃まで変化させ,α。による外周表面の 冷却状態への影響を見た.

β

600

T00 S00

R00

Q00

   28      r 30        32        34        36

         αO{kcoレ循2hr℃}

Fig.6 耳ffect of heat transfer coefficients α。,

   α、,α拠on the outer surface temperatur6     after 3.5hr

 α。=30kca1/m2hr℃付近で,α、,伽をα、ニα例=5。0 とα、=10.0,伽二5.Okcal/m2hr℃に変化させ,その影 響を見たものが,図6である.外表面での輻射湿熱に より,α。は少なくとも28kcal/m2hr℃程度はあると 考えられるから,α、,伽 をこれ以上大きくとって計 算しても意味がない。

 図から,α。=28〜30,α。=0〜10,α飢=0〜5 kca1/m2hr℃の範囲が実際に近い.例としてα。=28,

α、=伽=5kcal/m2hr℃の場合の表面(1.=21, J

;2ン,中間部(1;11,J二2)と内穴面(1;1

J=2)の温度時間変化を図7に示す.

 図7は内穴面での熱流速がα △T=1000kca1/m2hr に対するものであるが全体の冷却の様子に与えるω△T の影響は図8に示すように非常に小さ匝.

  0       20       40       60       α0(kcd/㎡hr℃}

Fig.5 Effect of heat transfer coefficientα。

    on the outer surface temperature after     3.5hr(ass㎜i㎎α,=伽=0)

(5)

3

Φ

t 600

T00

S00

θq1,2}

θ(し2}

θ(21,2) 1

  024681012

       ↑(hr)

Fig.7Variation of temperature,θ(1,2),

    θ(11,2),θ(21,2)with time t for     α。=30,α。=α観=5.Okc al/m2hr℃ and     α£△T=1000k cal/m2

bore surfαce

500

S00 oufer surfαce

 0        5QO       IOOO      l500      2000

      Q(kc9殉hr)

Fig.8Effect of heat flux from the bore     surface on outer and surface     temperature after 3.5 hr forα。

    =28.0, α5;αη;5.Okcal/m2hr℃

5.結   論

 大型ローターの寸法を一応設定し,熱伝達係数を種 々仮定して,ローター表面が焼戻し脆性を避けるため の冷却速度を保った場合外表面およびボア面の温度分 布の計算結果から次のことがらが明らかになった.

1)ローター切込部よりの放熱は影響が少ない.

2)ボア面の放熱はほとんど無視できる.

3)外周部は脆化を避け得ても,ボァ部は焼戻し脆   性域にある.

4)したがって,外周部より採取した試験片でボア   部の靱性値を推進することは特別に配慮しない   限り危険である.

6.文   献

 1)A.W. Rankin;ASTM STP231. p16,

  ASTM,(1958)

 2)R.M. Curran;Progress in the development   of large turbine rotor forgings, Internationa1,

  .forge masters meeti㎎, Terni, Italy, May    6−9,(1970)

 3)今井勇之助他;鉄鋼材料 金属工学講座材料編    18,P.92,朝倉,(1966)

 4)寺沢寛一;自然科学者のための数学概論 応用    編,P.290,岩波,(1966)

 5)片山死蔵他;非定常熱伝導の数値解法,藤井哲   編 伝熱工学の進展Vo1,3, P.163,養賢堂,

   (1974)

 6)日本機械学会編,伝熱工学資料 改訂第2版    P.39,(ユ966)

 7)文献6)のP.101

参照

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