非線形光学デバイス用微小周期分極反転形成法の研 究
著者 長能 重博
雑誌名 静岡大学大学院電子科学研究科研究報告
巻 26
ページ 103‑105
発行年 2005‑03‑11
出版者 静岡大学大学院電子科学研究科
URL http://hdl.handle.net/10297/1332
氏名 。(本籍
)
長能
重
博 (北海道)
学位 の種 類
博
士
(工
学)学位 記 番 号
工博 甲第
251
号 学位授与の日付平成 16年 3月 24日
学位授与の要件
学位規程第5条第 1項 該当 研究科。専攻の名称
電子科学研究科
電子応用工学
学位論文題目
非線形光学デバイス用微小周期分極反転形成法の研究
論 文 審 査 委 員 (委員長)
教 授 岡 村 静 致
助教授 村 上 健 司 教 授 小 楠 和 彦
教 授 皆 方
誠 教 授
天 明 二 郎
論 文 内 容 の 要 旨
高度情報化社会 において、青色光源はきわめて重要な役割 を担いつつある。コヒーレン ト青色光 源の一つに、強誘電体光学結晶であるLiNb03(LN)、 LiTa03(LT)の 非線形光学効果 を用いた擬似位 相整合第二高調波発生(Quasi―
Phasc Mttching Second Harmonic Generation:QPM…
SHG)デバイスがあ り、GaN系青色 レーザ と共 に様々な分野 において活用 されている。今後は、スキャン型 レーザディ スプレイや光情報処理などの分野においてさらなる高出力化が必要 とされてお り、この要請 を解決 するためには、極微小周期分極反転構造 をより大 きな結晶中に深 く全体 に亘って均一に作製する(高アスペク ト比 を実現する
)必
要がある。 しか し、高アスペク ト比 を実現するために必要な微小周期分 極反転の作製法は、研究の緒 についたばか りであ り、未だ確立 されていないのが現状である。そこ で、本論文は、高アスペク ト比 を有する高出カデバイスを実現するために必要不可欠な微小周期分 極反転の形成法 を確立することを目的 とし行 った研究 をまとめた ものであ り、全編5章か ら構成 さ れている。第1章では、本研究における研究背景および目的について述べている。
第2章では、微小周期分極反転の作製に必要なFCE(Full―Cover Electtode)法 を発展 0拡 張 し、新 たな設計理論 を提案 し、その理論に基づいて行った分極反転実験について述べている。FCE法とは、
結晶上 に形成 したレジス トパ ターンを液体あるいは金属電極で覆い、電界印加 により分極反転 を行 う方法の総称である。FCE法の設計理論 は、結晶表面の電界強度比 E/ER(レ ジス ト直下中央部の電 界強度 をER、 電極直下中央部の電界強度 を
E)と
レジス トパ ラメータ(レジス トの高 さh、周期幅W、比誘電率a、 電極部幅L、 レジス ト部幅
S)と
の関係 に基づいてお り、aと s/Lを パ ラメータとした‑103‑
ときの E/ERと h/Wの関係 について計算 を行 っている。その結果、h/Wの値およびS/Lの値 を増加 させること、あるいは,の値 を減少 させることにより、E/ERの 値が大 きくな り、高アスペク ト比 を 有する微小分極反転が得 られやすいことを明 らかにした。計算で得 られた E/ERの 値が周期分極反転 の作製に有効か どうかを調べた結果、分極反転形状 はE/ERの値 に大 きく依存 し、E/ERの値が大 き
くなる程、設計値に近い形状が得 られることが明らかになった。 しか し、矩形型 レジス トパ ターンを 用いたFCE法では、分極反転幅が設計電極幅 よりかな り広 くなるために、500/m厚の結晶において
は周期4。0/m以下の分極反転構造の作製は困難であることが明 らかになった。
第3章では、更なる微小周期分極反転の形成 に必要な知識 を得 るために、分極反転の成長過程 に ついて詳細な検討 を行 った。lms以下の短パルス電界印加法 を用いることにより、周期分極反転の 成長過程 を直接観察することがで きた。その観察結果から、従来用いられてきた矩形電極分極反転で は、電極端 を避けた非電極部に反転核が発生することが明 らかになり、反転領域が設計寸法 よりも拡 がる様相 を明瞭に知ることができた。なお、分極反転電流の分布は、結晶の抵抗率に依存するようで ある。また、電極幅 よりも外側に反転核が発生する要因としては、圧電効果を考慮する必要があるこ とを指摘 した。
第4章では、従来の矩形状 リフ トオフ電極およびFCE法では困難であつた微小周期分極反転形成 に関 して、これまでの実験結果 を考察することか ら新 しい概念 を提案 している。 まず、E/ERの 値が 大 きく、結晶表面に最大電界が存在 しない条件 を満たす電極形状が微小周期分極反転の形成には重要 と考えて、印加電界分布の計算からその電極形状 を求めた。その結果、円形の電極形状 を用いた場合 に、上記の条件 を満たすことが明らかになつた。その結果を踏まえて、二光束干渉露光により作製 し た円形 レジス トパターンとFCE法による電極 を用いて分極反転実験 を行らた。その結果、厚 さ500/m のLN結晶において、反転・非反転領域が等 しい周期2/mの分極反転構造の作製に初めて成功 した。
また、従来の矩形電極 を用いたFCE法では作製が困難であつた0.56μm幅の極微小分極反転 を一部 分ではあるが、形成することがで きた。
第5章では、本論文の結論 を述べている。
以上、本論文は、非線形光学デバイス用微小周期分極反転形成法に関する研究であ り、従来の矩形 型電極 を用いた周期分極反転法の欠点を明らかにし、現状 を打破 し得る新 しい概念 に基づ く微小周期 分極反転形成法の理論 を提案 し、実験的に検討 を行 うことによって容易で汎用性のある分極反転技術 の提案 を行 った ものである。
一 【4‑
論 文 審 査 結 果 の 要 旨
一般 に、強い レーザ光(パワー密度で約107w/cm2以 上)を物質に入射すると、復元力が電子の変位 に比例 しなくなり、出射光には基本波に高調波成分が重なった非線形光学効果が現れる。この効果を 用いた光制御 デバ イスの研究はレーザ発明当初か ら開始 され、第二高調波発生 (SecOnd Harmonic Generation:SHG)を はじめ、和/差周波発生、パラメ トリック増幅デバイス等の波長変化デバイスが 急速 に発展 して きた。 これ らを実現するためには位相整合が重要であ り、 とりわけ擬似位相整合
(Quasi― Phase―Matching:QPM)法 は最 も変換効率が高いことか ら、広い波長領域にわたって実現が期
待 されている。材料面では、強誘電体光学結晶LiNb03、 LiTa03が大 きな非線形光学定数 を有 し、紫 外領域 まで透明で4吋ウェハが容易 に入手で きることか ら広 く実用化 されている。今後、高性能波 長変換デバイスを実現するためには、これらの結晶中に高いアスペク ト比(反転深 さ/反転幅)の周期 分極反転構造 を作 り込むことが重要である。300nmか ら輸 の周期分極反転構造 を自在 に作製す ることができれば、青色光源から遠赤外領域コヒーレント光源が実現できるばか りでなく、通信用 ルータや広帯域光変調器、■L発生デバイスまで広範囲にわたる応用が可能となる。
本論文では、高アスペクト比を有する微小周期分極反転法を採 り上げて、その技術的確立を目指 し て行 った研究 を纏めてお り、全編5章か ら成る。
第1章では、本研究の背景 と目的を述べている。特 に、現状では作製困難な周期・2/m以下・アス ペク ト比
1000程
度の作製技術が確立すれば、loW以上の大出力紫青色 QPM―SHGデバイスの実現が 可能であること等 を述べている。l
第2章では、分極反転の基礎 となるFCE(Full―Cover Electrode)法の計算モデル と計算方法 を述べ、
フォトレジス トの形状 と電界分布の詳細な検討結果、および設計理論に対応 した基礎的実験結果を述 べている。
第3章では、短パルス電界印加法 を考案 して分極反転実験 を行 うことにより、分極反転の成長過 程 を初めて観察できたことを述べている。また、電極幅 と反転核の発生位置に着 日して圧電効果を含
む検討 を行 つている。
第4章では、従来の矩形型電極 による本質的な欠点 を解明 し、新 しい概念の提案 と理論の展開に より「微小周期分極反転作製には円電極が有効」であることを明らかにしている。また、実験的検証に より、周期2/m以下の微小周期分極反転の作製に初めて成功 したことを述べている。
第5章は結論である。
以上の成果は、非線形光学デバイスの開発 に多 くの知見 を与えるものであ り、博士(工学)の学位 を 授与するのに適当な内容であると認定する。
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