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(1)

器楽教育における指導と評価についての一考察 :  口ずさみのシラブルを用いてIII

著者 松下 允彦

雑誌名 静岡大学教育学部研究報告. 教科教育学篇

巻 21

ページ 49‑57

発行年 1990‑03‑27

出版者 静岡大学教育学部

URL http://doi.org/10.14945/00008306

(2)

器楽教育における指導 と評価 についての一考察

―一 日ずさみのシラブルを用いて Ⅲ一―

A Study of Teaching and Evaluation in Instrumental Education

松 下 允 彦 YoshihikO MATSUSHITA

(平 成元年 10月 H日 受理

)

I  は 1じ め に

器楽教育における吹奏楽器の指導, とりわけアーティキュレーションや音色の指導は ,現 状 では決して充分に行われているとは言えない。

特に,  リコーダー指導でタンギングを扱う時 ,tu tu tuと 吹くノン・ レガー ト奏法を身に付 けることと同時にレガー ト奏法を並行して指導しなかった場合 ,片 手落ちの指導である

´ 言わ なくてはならない。よくある例として, リコーダー教材に歌唱曲を用いる場合, レガー トの曲 に 1音 1音 タンギングを付けノン・ レガー トで演奏してしまうことがあげられる L

そこで筆者は ,ア ーティキュレーションをレガー トの音色,ノ ン・ レガー トの音色として捉 え ,そ の音色を言葉で表す 回ずさみのシラブル ":を 考察し ,音 色の指導に取り組んできた。

音色の指導において, 日本音楽で用いられているものに口唱歌がある :)由 唱歌とは歌詞を唱 えることではなく ,楽 器の旋律もしくはリズムを回で唱えることであり 1)そ れは音色唱法とも 言われている 1)そ の楽器の音色に最も近い言葉におきかえて歌って覚え ,そ の後 ,楽 器で演奏 するための教習・記憶のためのものなのである。

この音色唱法は ,  ウグイスやカッコウ等の野鳥の鳴き声の擬声音表示 と似ている。また ,私

たちが回ず さむ時遮、と発せ られる ,日 ず さみの シラブルともよ く似ている。それは ,言 葉 と し ての意味は持たないがアーティキュレーションや音色 ,ま たはリズム等を模倣するものである。

すでに ,筆 者は回ず さみのシラブルと リコニダーの演奏技術との関連を考察 してきた :)本 論 では ,モ ーツァル トの ドイツ舞曲を回唱歌のようにあ らか じめ用意 したシラブルで歌わせ ,そ

の後 リコーダーで演奏させてみて ,日 ず さみの シラブルが回唱歌 として どのような機能を持つ ものかを考察 したものである。

49

(3)

彦 50 下

Ⅱ 資 料 に つ い て

1,曲 目について

モーツァル ト作曲  3つ の ドイツ舞曲  K.605‑3よ リ   ハ長調  <そ りすべり >を 用いた。

この曲は ,「 ドイツ舞曲」として小学校 6年 生の教科書で扱われてい %。 教科書では器楽合奏 として扱われているが ,  ここではその主旋律のみを抜きだ し ,次 の譜例に書き込まれているよ うな口ずさみのシラブルを回唱歌として用いた。

ティヤッタッタッタ ヤッ   ティヤッタッタッタ   ヤ ティ   ティ   ティ   タァ   ヤン ティヤ   タ タ タ タ タ タ

ティヤッタッ   タッ   タ ヤッ   ティヤッタッタッ   タヤッ   テイヤッタッ タッ   タ セ    タァン

2.資 料の収集方法

本校 (223名 )及 び県内私立大学 (139名 )の 教員養成学部 3年 生 ,計362名 の資料を収集 した。

ただ し ,調 査不可能な資料が 7点 あったので 355名 の資料を分析・ 考察 した。

資料収集の方法 は ,次 のような手順で行 った 6

① リコーダーの レガー ト奏法 ,ノ ン・ レガー ト奏法の説明をする。

②楽譜にシラブルを書 き込んでおき ,  シラブル唱とリコーダー奏の練習をさせ る。

③ l人 ずつ シラブル唱をさせた後 ,  リコーダーで演奏をさせ る。

リコーダーの レガー ト ,ノ ン・ レガー ト奏法 は , aス タッカー ト , bノ ン・ レガー ト , cレ ガー ト , dス タッカー トとレガー トの混合をタンギ ングのシラブルを用いて音階を使 って説明

した。 dは eの ように演奏す ることもあ り 「 ドイツ舞曲」の前半は eの 方がふさわ しいことを付

け加えておいた。

(4)

器楽教育における指導 と評価についての一考察

ユ ニ

l.+y hav Fety lo.,t. l.Evl'Ev Fqrrl.Ev .d

ト ゥトゥ ト ゥ  ト ゥ      トゥ

以上の方法で 1人 ずつ シラブル 唱 とリコーダー演奏を録音 し

,

それを分類 した ものを資料 とし た。

3,シ ラブル唱 と リコーダー演奏 の評価 の観点

分類 に際 して ,次 の 6項 目を重点的 にチ ェ ック した。

A, 1・ 2小 節目    B, 3・ 44ヽ 節目   C, 5〜 8小 節目    D, 9010小 節目 E,11012小 節目    F,17〜 32小 節目

Ⅲ 結 果

355名 の うち ,  シラブル唱・ リコーダー演奏のどちらにおいて も全 く問題のなか った者 は 96 名で ,全 体の僅か 27%で あった。 これ らの学生 は ,指 示 したシラブル通 りに歌え ,  シラブルで 示 されているアーティキュレーションで リコーダー演奏 されている。 しか し ,残 りの 259名 に

は ,シ ラブル唱か ,  リコーダー演奏のどちらか一方 ,ま たは両方に何 らかの問題が認め られた。

ここで は ,問 題のあった資料を集計 し ,分 析をす る。

A, 1・ 2小 節 目

1

① シラブルの子音の発音の強さで音の立ち上が りを 捉え ,  リコーダーの演奏に生かされているか。

これに関 しては ,子 音の発音の強 さと拍子か らく る強拍・弱拍がほぼ完全に理解 され ,演 奏 されてい

る。 taの 発音より tiの 発音の方を強 く感卜 じているし ,そ れが リコ =ダ ー演奏にも影響 している。

シラブルによって強拍・ 弱拍感が伝達 されていると考え られる。

②撥音で書かれている音をスタッカー トと捉え ,短 く ,は ずんで歌えた り演奏 した りで きるか。

この部分では , 348名 (98%)が 撥音で歌えてお り ,ま たスタッカー トで演奏で きている。

ティン   タン′ "と 書かれているのに撥音で歌わなか った者が 2名 いるが ,そ の うち 1名 は リコ ーダーではスタ ッカー トを付けていた。逆に撥音を付けて歌 っていたにもかかわ らず ,  リコー ダニでスタッカー トをつけずに演奏 していた者が 1名 いた。けれどもこの 2名 も意図があ って そうしたのではな く ,つ いうっか り落 したという程度であろう。殆 どの者には ,撥 音で示 され たシラブルの音 は ,ス タッカー トであるということが容易に理解 されていると思われ る。

また ,  この部分が 3小 節 目のスタッカー トの付いていない (撥 音の付いていない )4分 音符 と区月りされていることは ,  シラブルの撥音が示すスタ ッカー トがはっきり提示 されていると言 える。

その他 ,読 譜ができないために リズムが とれなか った者 も若干名いる。また ,シ ラ ブル唱で

,

2小 節 目の 4分 体符が抜けていた者 , 4分 休符が 1つ 多か った者が各 1名 み られる。

B, 3・ 4小 節 目

トゥッ トゥッ

  

トゥ

 

  

トゥットゥッ

l,,r-y Fov

1.,?y

(5)

彦 下 允

このシラブルでフレーズ感を捉えて歌えたり演奏 したりできるか。

ここでは ,  シラブルが示す撥音で ,  リコーダー   3

演奏のフレーズの切れ目を意識 させ ることがで き るかどうかを見てみる。

シラブル唱 ,  リコーダ‐演奏共に問題な くで き ていた者は 312名 で 89%に あたる。撥音が音を切

ったり止めた りす る働 きをす るのに非常 に有効であることがわかる。その他の者の うち ,  シラ ブル唱ではフレーズ感は認め られたが ,  リコーダー演奏ではテヌー トが付 き ,次 のフレーズと 切れ目がな くな って しまった者が 10名 (3%)い た。当然 ,  これ らの演奏にはフレーズ感 は認 め られない。また ,  シラブル唱‐ で も撥音を歌えず ,そ のため リコーダー演奏で もフレーズ感を 出せない者が 5名 いた。

これ らのことか らシラブル唱で撥音を歌えず フレーズ感を出せなかった者は ,  リコーダー演奏 で もフレーズ感を出す ことがで きないと言 うことがで きる。

その他 ,4小 節 目の 1・ 2拍 目の音 に ティ ーヤン

"

の シラブルを付けたが ,  この シラブルか らスラー を付けて演奏 した者が 5名 いた。 yaの シラブルの 発音 が弱 か ったのだ ろ う。 その部 分 を ティー

タン "と 歌わせた方が良かったのか もしれない。

また ,A(1024ヽ 節目 )の 各音にスタッカー トが付いているのに , B(3・ 4小 節 目 )の

各音には付 いていないことに気付 くことによって , Bを ノン・ レガー トで演奏 させたい。

・一方 ,譜 読みがで きてない者 もかな りいる。次のフレーズに入 る前で 4分 休符を入れて歌 っ た者が 17名 (5%)い た。また ,  リコーダーで も同 じように 4分 体符を入れた者が 12名 いた。

C, 5〜 8小 節 目

ティ ヤッ タッタッタ ヤッ    テイヤッタッタッ タ   ヤ    タァン

この部分が今回の調査のメインとなるものである。シラブル唱 ,  リコーダー演奏共に正確に 表現できた者は 164名 で 46%に あたる。かなり難 しい課題であったにもかかわらず ,約 半数が 合格できたということは, シラブル唱を評価することができると言えるのではないだろうか。

残 り 191名 の者は次に述べる①〜③のいずれかが IE確 にできていない。

①スラーとスタ 'カ

ー トの区別を理解 し ,表 現できているか。

シラブル唱においては ,ス ラーとスタッカー トの区別はほぼ全員ができている。 5小 節目の アフタクトのスラーをタヤと歌わずにタタと歌 った者が 2名 。 7小 節目の 3拍 目のタヤのスラ ーをタタと歌ったものが 1名 のみである。 しか し ,  リコーダー演奏では ,タ ンギ ングが理解で きずにスラーとスタッカー トのどちらもが付けられず ,  ノン・ レガー トのみ ,あ るいは ,タ ギングす ら付けられなかった者が 22名 と全体の 6%に のぼる。アーティキュレーションとタン ギングの関係は ,前 述の簡単な説明 しか していなかったため, これだけでは理解 し難かったの かもしれない。

ティー   タ   タ   タ   タ     テイー   ヤン

ティー   タン

(6)

器楽教育における指導 と評価についての一考察

② スラーに付 いた促音を ,音 を短 く切 る意味で理解 し ,演 奏で きているか。

スタッカー トの音には全て促音を付けておいた。促音を用いるときは ,よ り短 く 。より軽 く

。より堅い音色を必要 とする時であり ,撥 音のスタッカー トは重 く・柔 らか く :余 韻を残す音 色に用いられる。 したが つて ,A(1・ 2小 節 目 )の スタッカー トにだけは撥音が付いている。

i  スラーとスタッカー トの区別が付いている音符において , 2つ の 8分 音符にスラーが付い ている場合 , 2つ めの音を切 るようにシラブルに 夕 ⌒

ヤッティ ⌒

ヤッ "と 促音を付けておいた。

しか し ,こ の促音を歌えなかった者が多 く ,94名 (26%)の 者に見 られた。その うち ,  夕 ⌒ ヤ ティ ⌒

"と 両方の促音が抜けた者は 78名 (22%)で あ った。 この者たちは単 に注意力が足 りな

いと思われる。

残 りの者 は ,片 方だけに しか促音が付け られなかった者である。   夕 ⌒

ヤッ   ティ ⌒ ヤ "が 5名 ,  夕 ⌒

ヤ   ティ ⌒

ヤッ "が 11名 である。 これ らも単 に不注意によるものであろう。

五   シラブル唱で促音が抜けた 94名 の者の うち ,  リコーダー演奏で正 しくスタッカー トが付い ていた者は 28名 である。 これは ,イ メージとしてはスタッカー トが理解で きていたわけであ り

,

シラブル唱よリリコーダー演奏が先行 している数少ない例である。 しか し ,  シラブルが示 して いるように ,ス ラーは付いていたが , 2つ めの音にスタッカー トを付けて演奏できなか った者 が 19名 いる。やはり ,  シラブルを正確に読み取れなか った者は ,  リコーダー演奏にも正確 さを 欠 くと言えそ うである。

また ,  夕 ⌒

ヤッ   ティ ⌒

ヤ "と 歌 った 5名 は リコーダー演奏では全員正 しく演奏で きてい たが ,  夕 ⌒

ヤ   ティ ⌒

ヤッ "と 歌 った 11名 の うち 6名 ,  リコーダー演奏で も ,  この シラ ブルが示す通 り ,前 のスラーはそのままで ,後 のスラーのみスタッカー トを付けて演奏 してい る。 このデニタか ら見れば ,  シラブルを間違えて歌 った者が ,  リコーダー演奏で も間違えたシ ラブルの示すアーティキュレーションで演奏 していると言える。 これはシラブル唱が口唱歌 と

して機能 している ことを示 している。

残 りの 5名 は促音の付いている位置を意識 していなか ったようである。全体的に ,  このよう な微妙なアーティキュレーションを理解することは非常に難 しく ,そ うできなか った者が多数 いたと考え られる。

澁   指定 されたシラブルで正 しく歌えた者は 233名 (66%)で あった。 しか し ,そ の中で も48 名 (21%)の 者は リコーダーで何 らかの ミス (ア ーティキュレーション )を 犯 している。同 じ ようなアーティキュレーションの ミス ,特 にシラブル唱で促音をつけ違えて歌 った者では 94名 中 44名 (47%)で ある。その殆 どはスラーの位置やスタッカー トの位置がずれている者である。

この ことは ,シ ラブルを正確に読み取れなか った者は ,  リコーダー演奏で も正確に演奏で きて いないと言 うことを如実に示 している。

市  7小 節 目の 3拍 目のスラーを正 しく歌えなかった 者が 15名 いる。スラーが付かなか った り ,ス ラーが 長 くなって しまった為である。右はアーティキュレー ションを勝手に変えて しまっ・た例 (8名 )だ が ,  これ らはこの部分のアーティキュレーションが ,か な り難 しいことを物語 っている。

③読譜力の問題 o 4分 休符を正 しく数え られるか。

53

8小 節目に 4分 体符が 2つ あるが ,こ れを 1つ抜かす者がかなりいる。シラブル唱で 1つ抜

(7)

下 彦

54 松

か した者は 26名 いた。その うち リコマダー演奏で も同 じ 4分 体符を抜いた者が 24名 いる。反対 にシラブル唱では正確だつたが リコーダー演奏で 4分 体符を落 とした者 は 3名 にす ぎない。 こ の結果 もシラブル唱と リコーダー演奏の強い関連を示 している。

シラブル唱‐ が正確に歌えていた者 は 233名 (66%)で ,そ の うち リコーダー演奏が正確にで きた者が 169名 (46%)で ,正 確にシラブル唱で きた者の 73%に あたる。 これは ,27%の 者が シラブル唱は正確にできたが リコーダー演奏では正確にできなか ったということであ り ,  この ような ,ス タッカー トとレガ ,卜 の混合 したパター ンは ,  リコーダー演奏ではかな り難 しいと いうことがわかる。

D. 9,10小 節 目

この小節では シラブル唱 ,  リコーダー演奏共に問題のない者が 331名 (93%)と ,高 い数値を 示 している。

① テイ "に 撥音が無 く , 3音 とも tで 強い立 ち上が りを要求 していることを理解できているか。

撥音を付けた者が 5名 。その うち リコーダ‐でスタ ツカー トが鋭す ぎると感 じた者は 3名 であった。

スタッカー トとノン   レガー トの区月 1は ,  シラブル唱 0リ コーダー演奏ともによく理解され ていた。

② タア   ヤン "で フレーズが切れていることに関 しては理解できているか。

シラブル唱で 10小 節目の 102拍 目にスラマが付いた者が 9名 いたが , 2名 はリコーダー演 奏では楽譜通 りに直っていた。シラブル唱で 2拍 目にテヌー トが付いて しまいフレーズの切れ 目がわからない者が 2名 いた。この 2名 はリコーダー演奏でも同じようにテメー トが付いて し まった。

E.11.124ヽ 節目

シラブル唱 ,  リコーダー演奏共に問題 のなかった者は 250名 (70%)で ある。

①アフタク トの ティ   ヤ "に はスラ ーが付いていないことに気付き ,歌 えた

り演奏 したりで きるか。 ティヤ   タ タ タ タ タ タ   ティ‐ ヤン

シラブル唱では正 しく歌えていたにも

かかわ らず ,  リコーダ‐演奏ではスラーが付いて しまった者が 11名 いる。 しか し ,  シラブル唱 において既にスラーを付けて歌 った者が 84名 (24%)い た。その申で ,シ ラブル唱ではスラー を付けて歌 らたが ,  リコーダーではスラーを付けずに正 しく演奏で きた者が 23名 (27%)い た。

シラブル唱よりもスラーの記号が優先 して しまったためである。 しかし ,両 方共にスラーを付 けて しまった者は 60名 (71%)に ものぼった。これは ,い かにシラブル唱による音の表情が演 奏に影響するかを証明 している o

ティ   ティ ティ タァ    ヤ ン

(8)

器楽教育における指導 と評価についての一考察

この音にスラーを付けた者が多か ったのは ,当 初の シラブルの設定に問題があったためだと考え られる。

このよ うな問題 は ,そ の部分を ティヤ "か ら ティ

カ "と 変更す ることによって改善 されよう。

12小 節の 2拍 目でフレーズが変わ っていることを理 解で きているか。

2拍 目の音にテ ヌー トを付け ,フ レーズの切れ目を 曖昧に している者は 3名 しかいない。 しか し ,  シラブ ル唱・ リコーダー演奏共に , 102拍 日にスラーを付

けた者が 8名 見 られた。これは ,① 同様シラブルの設定が良 くなかったためで ,  ティーヤン

"

を ティータン 'と 変更することで改善できよう。

F. 17‑32/Jヽ

1鋼

ここでの シラブル唱は ,全 員に問題な く歌われている。

はかな りいる。 また ,18小 節 目のような 4分 音符 3つ

勿論音程や リズムが とれなか った者

のスラーの箇所で , 1音 1音 アクセ ン トを付けて歌 っ た者が 28名 み られ ,  レガー トの意味が理解で きていな いことが伺える。 これ らの者の殆 どは リコーダー演奏 で も hu― hu― hu― と吹き ,タ ンギ ングの技術 も身に 付いていない。

①スラーの位置を正 しく演奏できているか。

リコー ダー演奏で スラーを正確 に演奏で きた者 は 173名 (49%)で ある。約半数がスラーの付け方で問 題を残 している訳であるが ,全 くスラーを付けること

ができなか った者が 59名 (17%)と 多か ったのは ,事 前の リコーダ演奏におけるレガー ト奏法 の指導が充分でなか ったことを示 している。

シラブル唱の音程歌唱能力とアーティキュレーションの理解度 とは関係があると予想 し ,調

べてみた。 シラブル唱で音程が極端に悪かった者は 75名 (全 体の 21%)で ある。その うち ,  シ ラブル唱では音程が取れなかったが ,  リコマダ 演 奏でほぼ完璧にスラーを付けることがで き た者 は 15名 (20%)で あ ったる これ らの者は ,歌 を歌 うことは不得意だが ,楽 器を演奏す るこ とには自信を持つ者達であろう。

なかで も Fの 部分では ,  シラブル唱で音程が悪か った 75名 の うち ,  リコーダー演奏でスラー を 1つ も付けることが出来なか った者は 39名 (52%)に のぼる。 しか し ,  シラブル唱で音程が 取れなか った者の中の半数以上は ,  リコーダー演奏におけるレガー ト奏法がで きていないので ある。

それ以外の者 は ,ス ラーの位置が指示 されたとお りに演奏で きていなかった。全 くスラーを付 けることができなか った者を加えると ,  シラブル唱で音程が悪か った者の 75%は ,ア ーテキキュ

レーションが正 しく理解 されていないという相関関係をみることができる。 この結果か らも

,

シラブル唱は ,充 分 に練習す る必要があると言える。反対に ,シ ラブル唱で音程が正 しく取れ ているが ,  リコーダー演奏ではスラーが 1つ も付けられなか った者が 20名 (6%)い た。 これ らの者 は楽器演奏は不得意だが ,歌 唱能力は充分にあることを示 している。

タ ン

(9)

彦 下

②全体をレガー トで歌え ,演 奏できるか。

18小 節日のシラブル唱で , 3つ 4分 音符にそれぞれアクセントを付けて歌っていた者が 40 名 (11%)い た。 この者のうち , 5名 (13%)は リコーダー演奏で

│ま

正 しいスラーで演奏 して いるが ,29名 (73%)は スラーが全 く付けられず , 6名 (15%)は スラ‐は付いているが ,そ の位置が正 しくない。すなわち ,シ ラブル唱で ,ス ラーが付いているにもかかわ らずアクセン

トを付けて歌つた者のうち 35名 (38%)は ,  リコーダー演奏において ,正 しいアーティキュレ

‐ションで演奏することができなかった。          

③フレーズを正 しく捉えて演奏できるか。

フレーズを正 しく演奏できなかった者は ,全 体で 115名 (32%)確 認できた。 17小 節目から レガー トな表情にかわることは, シラブル唱からも理解されているようである。 しか し ,  レガ ー トの表情とタンギングとの関係を正確に理解 していなかった者が ,次 に挙げる3つ のパター

ンに分類できた。

1)1小 節ごとにスラーをつけて演奏 した者が 33名 (29%)。

2)2分 音符だけを別にしてスラーをつけて演奏 した者が 38名 (33%)。

3)2小 節単位でスラーをつけて演奏 した者が 15名 (13%)。

1)       2)       .   3)

これらのフレーズを作らた者の殆どは ,シ ラブル唱でも同 じフレーズで歌っているのが特徴で ある。また ,こ のパターンを繰 り返 している者が殆どである。従 って ,こ のような問題は ,  こ れらのパターンになった者にそれぞれ次に示すシラブルを回唱歌として与えることによって

,

改善することができると考えられる。

ティヤ     ル    ラ    ラ ティヤ   ティ   ヤ   ラ

スラーをパターン化せずに演奏 したり ,勝 手にアーティキュレーションを変えて演奏 してい るフレーズ感のないような者 も 29名 (25%)い る。

以上の事項を考え合わせると ,  レガー トの曲の場合 は回ずさみのシラブルよりも ,ア ーティキュレーショ ンそのものであるタンギングシラブルを用いた方がよ り合理的な方法であると思える。

これらの者の申で ,シ ラブル唱で音程が取れなかった者は 19名 (17%)い た。しかし,こ の 点だけみれば ,音 程が取れる能力とフ レーズ感との相関関係はなさそ ・

うである。    .

Ⅳ おわ りに

回ずさみのシラブルを ,日 唱歌のように音色の指導法として用いる方法を検討 してきた。ス

(10)

器楽教育における指導 と評価 についての一考察

タッカー ト ,ノ ン・ レガー ト ,  レガー トをそれぞれスタッカー トの音色 ,ノ ン・ レガー トの音 色 ,レ ガー トの音色と捉えれば ,日 ずさみのシラブルはかなり音色に忠実に模倣することがで

きることがわかった。

日ずさみのシラブルは ,音 色の誇張ができるところに特徴がある (こ の機能は口唱歌には無 い )。 今回の調査で ,27%の ものは与えられたシラブルで問題なかった。 しか し ,そ れ以外の 者に対 しては ,別 のシラブルを与えた方が良かった。例えば ,」7に タヤとシラブルを付けた ら 夕 vヤ とスラーを付けて演奏 して しまった。この場合シラブルをタタと置き換え子音の音の立 ち上がりを誇張することによって, ノン・ レガー トの正 しい演奏を促すことができるのである。

また ,  レガー トの場合 ,柔 らかしヾrの 子音を用いるということを理解できなかった学生がかな りいた。このような場合には ,半 母音の yを 用いるか , uと か aと いった母音をそのまま用い るほうが ,よ り口唱歌的で良い結果が望めたのではないかと思われる。これは ,よ リタンギン グ 0シ ラブルに近づ くことになる。すなわち ,音 色を模倣する回ずさみのシラブルにタンギン グを指示するリコーダーの奏法を加味することによって ,よ リー層口唱歌の機能を持たせるこ とができて くるのである。また ,タ ンギング・ シラブルに回ずさみのシラブルのような音色模 倣を応用させることを考えるのも ,同 じ結果を生むものと思 う。すなわち ,日 ずさみのシラブ ル (タ ンギングのシラブルを含む )を リコーダーの音色唱法としての口唱歌に位置付け ,よ り 合理的なシラブルを確立することが可能だと考える。

また ,  シラブル唱でスタッカー トを示す促音の位置を間違えて覚えて しまったために ,  リコ ーダー演奏で もスタッカー トの位置が正 しくなかったという例があった。このことから , 1つ

1つ のシラブルが ,重 要な役割 ,機 能を持っていることがわかる。このことも ,事 前に何度 も 何度 もシラブルで歌 ってみる。そして ,そ れが正確にできるようになってからリコーダ演奏に 入っていくという方法として ,シ ラブル唱が口唱歌のように応用できることを示 している。

以上のことから ,日 ずさみのシラブルを回唱歌のように器楽練習用として用いることが充分 に可能であるということがわかった。

引 用 ・ 参 考 文 献

1)松 下允彦   「音色指導の方法に関する一考察」静岡大学教育学部研究報告 (教 科教育学編 ) 第 20号  1988 p. 60

2)垣 内幸夫   「日本伝統音楽における『唱歌』 (ソ ル ミゼーション )に ついて」音楽教育学 第 17‑1号   日本音楽教育学会  1987 p.38

3)平 野健次   「唱歌」音楽大事典 3  平凡社  p.1216

4)横 道萬里雄   「口唱歌体系」 CBSソ ニー  00AG457〜 61解 説書 p.10   '

5)松 下允彦   「器楽教育における指導と評価についての一考察」静岡大学教育学部研究報告 (教 科教育学編 )第 19号  1987 p.57

6)石 井   歓ほか 「小学音楽 6」 教育出版株式会社  1982 p.16

参照

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