静岡大学教育学部研究報告 (人文0社会科学篇)第57号
(2007.3)・
1〜16
バ ングラデシュ農村における就業構造の変容
:非農業雇用 の質的高度化 をめ ぐる考察
Change of Occupational Structure in Rural Bangladesh:
Changing Non―fttm Employment among the Rural Poor 池 田 恵 子
Keiko IKEDA
(平
成18年10月
2日受理)
は じめ に
池田 (2002)で は、乾季 と雨季が明確な対象を見せ るバ ングラデ シュ農村の貧困世帯 の就業形態を
「季節的多就業」 と特徴づけた。南西部のボ リシャル県Q村における1994年の調査資料 に基づいて、農 業だけでは年間通 じて飯米の確保が困難な50の貧困世帯について、世帯単位で一年間 (1993年 9月か ら 1994年8月)の就業全体を考察 したし個々の生業が著 しい季節性を帯びているため、雇用機会が季節的 に減少 し、貧困世帯では飯米の確保が困難 となる。そのため多 くの貧困世帯 は、零細な農業 と農業賃金 労働に加えて雑多な非農業の経済活動への依存度を高めている。 また複数の職業を季節に応 じて意図的
に組み合わせた戦略的な多就業が営まれていることが明 らかにされた。
1990年代に入 って以降、バ ングラデシュ経済 は顕著な成長を続 け、独立後 はじめて5%前後の高い経 済成長率が維持 されている (Artha Mtttranalaya 2006:193)。 首都 ダカや主要地方都市では消費や 建設のブームが起 き、農村においても交通網が内部 まで整備 されて都市 との近接性が格段 に向上 してい る。農村の市場 にも家電製品など都市的商品を扱 う店舗が展開 し、地域 によっては都市的景観がそのま ま農村地域 にまで連続 して都市 と農村の境 目が分か りにくい場所 さえある。一方、2000年の栄養調査に よると、近年のめざま しい貧困緩和にもかかわ らず、農村人 口の半数近 い42.3%が一 日一人当たり
2,122
キロカロ リーの栄養を摂取できない貧困線以下にある。農村住民 は平均 して73.3%の熱量を米 のみか ら 摂取 している。最貧困世帯では食費が家計支出の67%を占め、 さらにその
70%が
米のみに充て られてい る (BBS 2003:33、38、 142…
144)。 これ らの数値 は、季節的に雇用機会 と収入が減少 して飯米確保が 困難 となる状況、すなわち季節的貧困が現代において も依然 として貧困層 にとって深刻な問題であることを示 している。
1990年代を通 して農村内非農業部門は著 しく発展 した。近年、 この部門はもはや貧困層が最終手段 と して従事す るような低生産 0停 滞的部門ではな く、農村貧困削減の牽引力 となるダイナ ミックな部門ヘ と質的変容を遂 げたとす る議論が見 られるようになった (World Bank 2004a;2004b;Toufique and Turton eds.2002)。 非農業部門の質的変容 とは、雇用機会 と収入の季節変動を解消 して消費の平準化 をもた らす性質の ものであったのか。かかる変化 は、個々の農村貧困世帯 レベルでは就業構造 にどのよ うな影響をおよぼ したのか。一層の多就業化が進んだのか、 または脱農化や特定の固定 された非農業の 職業の増加 という多就業化 とは逆向きの変化が起 きたのだろうか。そ して何より、季節的な飯米確保の
池 田 恵 子
困難 という問題 は改善 されたのか。
筆者 は2002年にQ村を再訪 し、1994年当時の調査対象世帯の就業がいかに変化 したかを知 る機会を 得た。本稿の目的は、経済成長下で農村貧困世帯の季節的多就業がどう変化 したかを明 らかにし、農村 内非農業部門の発展に伴 って農村世帯の就業構造にも質的な高度化が生 じた事を実証的に示すことであ る。 まず、 1節 で二つの調査の間に生 じたバ ングラデ シュ全国 とQ村における世帯の収入構成や就業 の構造的変化を二次的な統計資料を用いて把握 し、1990年代における農村内非農業部門の重要性を示す。
2節では、Q村における開発の進展 に簡単 に触れた後、1994年と2002年の調査時に°
おける50世帯の就 業構造の変化を季節性 に対応 し飯米を確保す る貧困層の戦略 という視点か ら把握する。飯米確保の状況 は全体 として改善 されたが、あまり改善がみ られない集団 も存在する。3節では、 どのような就業の選 択を した世帯に改善が見 られているのか、貧困世帯 にとって1990年代に見 られた急速な非農業部門の発 展が季節性の克服 という観点か らどんな役割を果た したのかを中心 に考察する。
1節
1990年代 にお ける農 村 内非 農業部 門 の構 造 的変化(1)バングラデシュ農村における産業 0就業構造の長期的変化傾向
まず1994年と2002年の二つの調査期間にバ ングラデシュの農村部で生 じた主要な構造変化を各種統計 か ら把握 し、1990年代 における農村内非農業部門発展の長期的傾向を理解する。
バ ングラデシュの産業構造を部門別GDP比率で見 ると
(図 1‑1)、
東パキスタンとして独立 した直後 の1950年当時 は農業が65。
2%、 製造業 はわずか3.9%で あった(藤
田 2005:13‑14)。 バ ングラデシュ独 立後の1975年でさえ農業 は54.6%を 占めていた。農業の比率の減少に拍車がかかるのは1980年代に入 っ てか らである。一方、製造業の発展 は遅れ、農業・ 製造業以外の部門が国内生産の約 6割 を占める構造 が1990年代初めまでに出来上が る。1995年にGDPの25.6%ま で減少 していた農業 は2002年には22.7%へ とさらに減少を続 け、ようや く製造業が安定 して成長する兆 しを見せ始めている。農業・ 製造業以外 の部門の内訳 は、1993年以降ほぼ一定 して建設業が7%前後、販売業が
13%前
後、運輸・ 倉庫・ 通信 と 不動産・ 金融がそれぞれ9%前後、残 りが公務・ 教育 0保健などその他のサービスである (BBS 2004a:462)。
就業構造 も大 きく変化 した。1961年に就業者 の84.6%を 占めていた農林水産業従事者 は、1995年に 51.1%に まで減少 した。それ以降の減少傾向は緩和 され、就労人口の約半数が農林水産業に従事する状 況が続 く。製造業従事者 の比率 は1970年代の後半か ら1980年代の前半にかけて倍増 したが、その後10%
前後にとどまっている。商業、建設業、運輸業などに従事す る者の比率 は1975年には合わせて も6.1%
であったのが1995年には23.8%ま でに増えた。1995年以降は、 さほど増加 していないようである。
すなわち、1970年代の後半か ら80年代 にかけて製造業に先立 って第三次産業が発展 し、産業や就業先 としての農業の相対的地位が急速 に低下 した。その変動が一段落 し構造がひとまず安定 したのが、1990 年代だといえるだろう。
1994年と2002年の間にマクロ的な就業構造の大 きな変化 はなか ったように見える。 しか し、1995年と 2002年の労働力調査及び家計支出調査の比較か らは農村世帯 に大 きな変化がおきていることが分か る。
表
1‑1は
、1995年か ら2002年の間に増加 した労働力 (15歳以上男性1り
が どの部門に吸収 されたかを示 したものである。農村労働力 は290万人増加 し、その48.6%が 商業や運輸業などに吸収 されている。特 に運輸業 と水産業の伸びは顕著である。注 目すべ きは、農業の労働力吸収率 はマイナスで、労働力が流 出 し始めていることである。都市では農業が新規労働力の50%以
上を吸収 しているが、 これは統計上でバングラデシュ農村における就業構造の変容
図
1‐
1 パ ングラデ シュの産業構造(部
門別GDP比率)と
就業構造の変化 (1961〜2002年)
就業人口比率
I・‐……‖貧奮きサ
ビ
¨ 遥糟二F庫・
L中―」
"拳
嵌査桑
□田因回建設業 ・ ・
r謝
神‖製造業・ 鉱業
・・ ‐ 農林水産業
部 門 別 GDP比率
― 農林水産業
‐‐
A‐
‐製造業・鉱業…・・
B‖
‖・その他1961年 1995年
注)1961年とは
1961会
計年度(1960年 7月
か ら1961年 6月
)を指す。以下同様。バ ングラデシュ統計局は
1996年
に部門細分類や諸定義を改定 し、物価基準年 も1983/84年
から1995/96年
に変更 された (BBS 2004:455)。 そのため1995年
前後の統計には厳密な連続性が見 られない。1995年
以前の労働力 調査は10歳
以上の男女が対象であるが、2002年
の労働力調査では同一の定義 (調査実施日以前の 1週 間に、1
日最低 1時 間以上、報酬を得るために、または無給の家族従事者として働いた者。たまたま、同期間中には休 んでいたが、通常は従事 している者を含む。)では
15歳
以上の男女が対象の数値 しか示されていない。**電気・ ガス・ 水道を含む。***金融・ 不動産を含む。GDPは
1975年
の数値を1974年
の箇所に示 した。出所 :1995年までは藤田
(2005:14、 22)、 2002年
は2002年統計年鑑 (BBS,2004a,&αιおιjcaJ ybα rbο
ολ o/Bα
ttJα ttsん
2 2,p.462)及 び2002/2003年労働力調査 (BBS,2004b,Rttorιoπ Labo
r Forca SItrυり2θ
″―2θ
,p.47)よ り筆者作成。都市域 と分類 されている地域 の中に実際 には農家世帯が多 く存在 し、 それ らの地区で は集約的な養鶏や 都市向 けの野菜生産が導入 され るなど、農業経営 に変化が見 られていることが伺 える
2に
ぃずれにせよ、純然 たる農村であるはず の農村域 において農業 はもはや労働力を吸収 しえないのである。全国平均で も 農業 の労働力吸収率 は20%にす ぎない。
(2)1990年
代 にお ける農村 内非農業部門の発展1970、 80年 代 の農村 内非農業部 門の増大 につ いて は以下 の点 で多 くの研究者 の見解 は一致 している (Toufique and Turton 2002:23)。 第一 にその大部分 は農村階層 の最底辺 において生 じた ものであ り、
第二 にそれ は貧困圧力 によ って生 じた ものであること、すなわち収入源 を多様化す ることによって危険 を回避す る生存戦 略であ った とい う点3)でぁる。 それ に対 して、 1990年代 を通 じた農村内非農業部門の 発展 に関 しては、前述 の よ うに、 この部門 は もはや貧困層が最終手段 と して従事す るような低生産・ 停 滞的部門ではな く、農村貧困削減 の牽 引力 となるダイナ ミックな部門であるとす る対照的な解釈が与え られて いる。 1990年 代 に農村世帯 の平均所得 は年率2.2%で増加 し、 その内訳 を見 ると非農業所得 の増
0 . 0
%
40.0
池 田 恵 子
表
1‐
1 1995年か ら2002年 にか けての男性 (15歳以上)労働力吸収率(万 人 )
農 村 都 市
全 国95年
02年
吸収率
95年 02年吸収 率
95年 02年吸収率
農林業水産業 鉱業 製造業
電気・水道・ガス 建設業
商業・ホテル・飲食業 運輸・倉庫・通信 金融 0不 動産 公務
教育・保健 社会サー ビス 対個人サー ビス 分類不明
1,450 1,441
36 92 1 7 135 1714 5 66 92 347 408 120 200 6 15 36 43
‐ 80 49 72 68
17 ‐
‐3,1%
19。 30/0
2.1%
12.4%
0。
3%9.0%
21.0%
27.6%
3.1%
2.4%
6.2%
58.5%
2.8%
0.0%
0.0%
0.0%
14.2%
16.50/0
1.7%
5。
7%0.0%
‐
0.60/0
72H l 93 4 53 34 96 24 48 43 4︲
1 2 69
6 1 93 4 28 05 93
︲4 48 2
1,519 1,613 20。
2%42 103 13。
1%2 8 1。 3%
228 264 7.7%
8 9 0.2%
94 145 10.9%
552 642 19。
3%213 296 17.8%
20 39 4。 1%
84 91 1.5%
¨
123ぷ 鷺
%%
23 ‐ 27
52 6
2,336 2,626 646 822 982 3,448
出所:1995/96年労働力調査(BBS,1996,Report on Labour Force Survey in B田lgladeh 1995‐
96,pp.160‑161)、
及び
2002/03年
労働力調査 (BBS,2004,Report on Labour Force Survey 2002‐ 2003,p.47)よ り筆者算出。加が年率4.2%で あったのに対 し、農業所得 は僅か0.3%し か増加 しなか った。 また貧困率 は年率1%で
減少 した (World Bank 2004a:1‑2)。 農村域で主要な所得源が農業である世帯 は1995年の49.5%か ら 2002年には31.2%へ と激減 している (BBS 2002:13)。 農村 における世帯収入の多 くの部分が非農業部 門か ら得 られるようにな り、1990年代後半か ら一層顕著に出稼 ぎ者の送金 と商業か らの収入が急増 して いる (図
1¨ 2)。
これ らのことか ら、農村世帯の収入の向上 は主 として非農業部門か らもた らされたこと が分かる。世界銀行 (World Bank 2004a)は2000年の家計所得支出調査のデータを分析 し、農村で男性が製造 業や商業部門で雇用労働 に従事 した場合、教育水準や地域格差などの諸要因を排除 して も、農業部門で 賃金労働者 として雇用 されるよりも25‑34%高 い賃金を得 られると試算 している。 また、非農業の自営 業 と農業 における貧困の発生率がほぼ同 じであることか ら、非農業の自営業 は特に貧困層が最後の手段 として営む低生産の生存戦略ではないと論 じる。そ して農村内非農業部門は1990年代に発展が加速 して 新たな段階に入 ったと結論づけている。
このような非農業部門に依存 したダイナ ミックな農村世帯像 と、マクロな統計資料 に現れる農村世帯 像、つまり就業人口の約半数が主 として農業に従事 し
(図 1‐ 1)、
2002年で も52.7%の 世帯が主たる生産 活動 は農業であると自認す る4)(BBs 2004b:23)農
村世帯像 とは、互いに重なり合わないようにも見 える。二つの像の乖離 は、主たる職業や主な収入源以外の ものを捨象す ることによって生 じている。新 たな段階に入 ったとされる農村内非農業部門を含めて改めて世帯の多就業構造全体を分析することによっ て二つの像を重ね、農村貧困世帯の就業の実態を探 ってみよう。⁝ ⁚ ⁝ 一 ⁝ ⁝ ⁚ 1 6
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172
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゛燒きヽ偽ヽRヽ六塞萎嚢聖萎羹一爾
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冽≡≡萎〒一一一扇一 華≡
蕎︲︲︲︲︲︲︲︲︲︲︲一︲︲⁝⁝⁝︲⁝ ⁝⁝⁝⁝一郷
334
バ ングラデシュ農村における就業構造の変容
図
1‐
2 バ ングラデ シュの農村及び都市世帯の収入構成 (1985〜2000年)
100%
80%
60%
40%
20%
0%
国その他 ヽ 回贈与・送金 口家賃な ど 回賃金 目商業 口農業
19昴
年1991年 19%年
農 村1985年 1991年 1995年 2000年 1985年 1991年 1995年 2000年
都 市 全 国 注)収
入額全体に対する割合。主要な収入源による世帯比率ではない。出所:2000年家計所得支出調査および
1995/96年
世帯支出調査―(BBS,2003,Rttοrι o/ι
んθH%SθんοJご Lcottο
&Expθ
厖ごjι
″ 助rυ
%"θa p.22、 BBS,1998,H粥 んo"attθπごjι
″ 助rυ
り 」99,9a p.33)よ り筆者作 成。2節
調査対象 世 帯 の飯米確 保状 態 と就業形態 の変化
(1)調査村における1994年以降の開発の経緯
まず、Q村が二つの調査間に経験 した主要な変化を紹介する。Q村の概要については前の報告 (池 田 2002)に て詳述 したので、 ここでは繰 り返さない。Q村における開発事業の導入略史を表
2‑1に
示 し た。1994年以降の開発による主要な変化 とは、第一に1998年前後から急激な交通インフラ整備が行われた ことである。隣村にある常設市Zバザールから幹線道路
(首
都ダカと県庁所在地ボリシャル市を結ぶ)
に出るための支道や、Zバザールとその他の主だった常設市を結ぶ道路が舗装された。 またQ村とZ
バザールの間にある川には橋が架けられ、オートリクシャ(オー ト三輪)や大八車が通行可能となった。
定期的に村と幹線道路や首都ダカまたは地方の大都市を結ぶ公共交通手段が導入され、村は一気に都市 と結び付けられることとなった。Q村周辺だけではなく、ボリシャル市の手前の河川にも橋が掛かか り、渡 し舟に乗る時間が短縮されてボ リシャル市が通勤圏内に入 った。
第二の大きな変化は、小規模金融プロジェクトがより高密度に展開 し、 もはやQ村の貧困層の日常
の一部 ともいえる状況 となったことである。小規模金融がQ村内に始めて導入されたのは1986年で、
1994年の調査時点ではグラミン銀行はじめ2団体が活動 していた。ウジルプル郡全体では5団体が活動 し、会員世帯数は延べ7,000を越え、郡全体の世帯数約45,000の 6分の 1に 上 っていたが、まだまだ貧 困層全体がカバーされる状況ではなか った。小規模金融の第二波は1996年か ら押 し寄せ、Q村内だけ
でも新たに5団体が活動を始めた。2002年現在合計 6団 体が一つの村の中で顧客を奪い合 う状況であり、
対象階層の大半がカバーされるどころか一つの世帯が複数の団体か ら融資を受けている。 また1996、
1997年には砒素対策
5)と
して深井戸の設置が集中して行われている。池 田 恵 子
表
2…
l Q村への開発事業の導入 略史 (1970年代以降)
事
項
。 中心セ クター1977〜
85年 ・ 高収量品種 の乾季作米導入、灌漑設備 の充実 農 業の近代化 1982年 ̲ 0 ノくワーテ ィラー導入 (1990年代後半 に急速 に普及)
1983年 ・
BRACノ
ンフォーマル小学校 開始1986年 ・ グラミン銀行が活動開始 小規模金融ブーム
・ 電化 され る その1 1987年 ・ カ リタス
USAが
活動 開始(ロ
ー ン、養殖・苗床)
1991年 ・ カ リタス
USAが
活動主体 を住 民組織 に移管 して撤退 1995年 ・ BRACがロー ン・ 訓練事業開始1996年 ・
PrOshikhaが
活動 開始(ロ
ー ン、浅井戸、衛生0有機農法) 小規模金融ブーム・
ASAが
ロー ン、保健 医療事業開始 その 2・ CARSAが活動 開始
(ロ
ー ン、砒素対策)
1997年 O VOSTが 活動 開始
(ロ
ー ン、砒素対策) 砒素対策 1998年 ・ Q村か らZバザニル に行 く途 中の川 に橋が架 か る・ Zバザール と幹線道路 を結ぶ道路が舗装 交通イ ンフラ
・ 幹線道路 に出 るまでの乗 り合 い ジープ開通 整備
O BRAC小学校 閉鎖
1999年 ・ Zバザールか らダカヘ の直通客船 が開通
(毎
日運行)
2002年 ・ 保健セ ンター建設
注
)村
人約10名
に村の開発において重要だと考え られる事項を列挙 して もらった。BRAC、 カ リタス、Proshikha、
ASA、 CARSA、 VOSTはすべてNGO。
出所 : 2002年 の調査により筆者作成。
表
2‐
2 Q村における就業 と世帯 の収入源の変化 (1991〜2001年)
a)10歳以上の男女の主たる就労部門 (96)
農業 製造業 建設業 運輸業 商業 サー ビス その他 合計
19914 81.0 1.1 2.r 0.8 6.3 r.s 7.r 100.0 200L+ 6r.8 4.6 9.4 1.3 r2.0 1.8 9.0 100.0
b)世 帯の主た る収入源 (96)
農林 賃金労働 製造業・ 商業 運輸業 建設業 公務・ その他 合計 水産業 農業 非農業 家内工業 サービス
19914 36.6 36.4 4.3 0.1 7.3 r.0 0.4 7.3 6.s 100.0
200L+ $.4 20.6 1.0 2.9 9.6 r.2 7.2 18.4 s.7 100.0
注)a)表は、就業 していない者
(2001年
で32.7%)、
失業者(同0.8%)、
家事従事者 (同38.3%)を除いた人 口に 占める各産業部門の従事人口の割合である。 なお、 これ らの就業人 口に数え られない者の比率 は1991年
と2001
年でほとんど変化がない。
Q村
全体の10歳
以上の人口は1991年
で4,440人
、2001年
には5,110人
であった。出所 :1991年 は、BBS,1993,BttEladesh Population Census 1991,Community Series,Zila:Barisal,p.182,
183。
2001生Fは
、BBS,2005,Population Census 2001,Community Series,Zila:Barisal,p。169,190。
バ ングラデシュ農村における就業構造の変容
Q村の人々とりわけ貧困層が1980年代後半に経験 した開発が、農業の近代化 (雨季作米か ら近代的 灌漑を使用する乾季作米へという稲作の急激な変化)と制度金融の導入であうたとすれば、1990年代後 半の顕著な開発とは交通インフラ整備による都市経済への近接および制度金融の日常化であったといえ
る。
ところで、 このよ うな開発 による変化の中、前節で概観 したような非農業部門の発展傾向はQ村で
も見 られている。1991年と2001年の人ロセ ンサスの村落別統計を比較すると、農業従事者が大幅に減少 し商業を中心 としたその他の産業の従事者が増加 している (表2‑2の
a)。
また、主 たる収入源が農業 である世帯は1991年の段階ですでに36.6%と 少数であ ったが、2001年には33.4%と さらに減少 した (表 2‑2のb)。
農業収入よりも減少傾向が著 しいのは、農業賃金労働が主たる収入源である世帯で、1990年 代を通 じて36.4%か ら20.6%へ と減少 している。替わ って公務・ サービスや建設業などが増加 している。貧困層 ほど農業賃金労働に依存す る傾向が高いことを考慮すると、 ここで も農村貧困層の就業 と世帯収 入に大 きな変化がおきていることが予想 される。
(2)1994年
と2002年の調査結果の比較1994年の調査対象50世帯のうち、6世帯 は離村す るなどして存在せず、他方 2世 帯 に分割 された世帯 が一つあったので、2002年の調査対象 は45世帯 となった。1994年には50世帯中、ムス リムが33世帯、 ヒ
ンドゥーが17世帯で、2002年にはそれぞれ30世帯 と15世帯であった。離村世帯については次節の考察で も触れる。なお農家世帯数は37から32へ減 り、非農業世帯数 は13世帯で変化がなか った。
以下 に、季節的な飯米確保の変化 に応 じて世帯の就業の変化をみてみよう。村人 によると、「食べて い くのに苦労する時期」 は年 に2回訪れる。 自家飯米 もな く収入源 も限 られ、米を買 って くるにもお金 をどこか らか工面 しないといけないという時期である。 1回 日は雨季の訪れ (6月)から始 まり、雨季 開けとその直後
(10月
)にピークを迎える。2回目は、主力の稲作である乾季作米(通
称イ リ米)の収 穫直前の2月か ら4月である。 この 2回 の季節の組み合わせによつて、世帯を 5つ に分類することがで きる。①飯米確保 に一年中困難がない世帯、②イ リ米の収穫直前のみ困難な世帯、③雨季のみ困難な世 帯、④雨季の後期か ら雨季明けとイ リ米の収穫直前の両方困難な世帯、⑤一年中困難を感 じる世帯である。
表2‑3は、1993年 9月 か ら1994年 8月 の一年間について、上記の5分類 ごとに飯米確保が困難 な月の 数、 自家飯米がある月の数、農業経営規模、農業以外の主な就業先 と従事期間を示 したものである。一 年中米の確保に苦労 しないグループ 1で は、世帯で消費 される米のすべてを自家生産で賄える世帯が5 戸あり、その他の農家世帯は平均 して約 3か 月分を購入 した。比較的規模の大 きい商業0自営業か、医 師、教員、公務員のような固定の月給が得 られる仕事があるため、米の購入には困 らない。相対的に農 業への依存度は低 く、農業以外の職業 に時間を割 くため農地の一部を意図的に貸 し出す傾向がある。 グ ルァプ 2は 、自家飯米 と農業賃金労働の現物賃金 として入手 した米で約8ヶ月分を賄 った。そのほかの 4ヶ月は米を調達することになり、 うち平均 して2ヶ 月は調達に苦労す る。 このグループは最 も農業経 営規模が大 きく、農業収入への依存度が最 も高い。村外での就労 は見 られない。
これ以外の大半の世帯がイ リ米収穫前 と雨季の両方で食糧の確保が困難、または雨季のみ苦 しい世帯 に属する。農家世帯では農業賃金労働の現物賃金 として入手 した米を合わせて も平均 して3‑5ヶ月分 賄えるだけである。 グループ 3は 農業賃金労働への依存度が高 く、村内での非農業就業は少ない。村の 外での就業が多 く見 られるが、その内容 は店員などであり、 グループ 1の 専門性の高い職業 とは内容 も 収入の水準 も明 らかに異なる。 これに対 して、 グループ4では、農業賃金労働にもかなり従事 している
表
2‐
3 1994年の飯米確保状況と農業経営、農業以外の職業食糧確保が困難 な時期 による分類
F〒 農業経営、N=非 農業経営 (世 帯数 )
困難 な 月数
目家 飯 米 の 月数
平均 世 帯 員 数
平均 所有 面積 (acre)
平均 経 営 面積 (acre)
目営 農 業 外 職 業 数
農 業 経 営 以 外 の
1定額給与の恒常雇
用 9ヶ 月間以上の従事
5‑8ヶ月以下の従 事
4ヶ 月以下の従 事
不定期 の送 金 な ど
1。 ない
(世 帯数 12)
1
(5) 0.0 12.0 5.2 1.46
0。
82 1.4ガー ドマ ン
輌蘭鋤蕩菌下藪… 事務
.教
員・ 家族 計回ワーカー農薬・ 肥料販売
,竹容器仲
買
,仕立て屋経営
,精米所経
営
椎魚
1甲
買,粗糖 商,
lF②
(6)
0。 0 8。
9 5.40。 71
0.53 1.4稚魚仲買
,本屋経営
,手押 し 井戸補修
農業労働 耕運機運転 (日
雇 )
lN
(1) 0.0 0.0
4。
0 0.00 0.00 1.0ジュー トエ場労 働
2.イリ米収穫前
のみ
2/3‑3/4月(世 帯数
4)2F
(4) 2.0 7.8 6.3 1.95
0。
73 2.0牛平
L生産販売
2,大工棟梁
,農業労働
晨 業 労働,魚収 り販 売
バナナ仲 買
3.雨
季のみ
6/7‑9/10月(世 帯数 15)
4F
(8) 2.5 3.4 5.0 0.25 0.35 1.8
農業労働
3,大工
,養魚場労 働
,キンマの葉生産
,竹容器 製造
稚魚仲買
,晨業 労働
,牛乳生産 鼻買
,大工
,竹容器製造
農業労働,リ キシヤ引き
4N
(7) 3̀7 1.4
5。 4 0。
050。
00 2.4F―
ゴプ務成 θ
,農業労働
2,卵
生産販売
2,大工
,鍛冶
,ビスケ ッ ト商′ ブ
/ シ鰐 約 ″
晨 業 労
fOJ 2,
エヘ ル パー,容器 製 造
大
竹 稲苗生産
,晨業労働
4.雨
季後半〜雨 季開け及び イ リ米収穫前 8/9‑10/11、
2/3‑3/4月
(世 帯数 14)
3F
(12) 4。 3 5。 1
6.80。
33 0.44瞑
=層員・ 個人
運転手
,ガー ド マ ン
.服地店員
農業労働
2,自転車 リヤカ引 き,リ キシヤ引き ,芦 ゴデタ 成
,鍛冶
卵 生産販 売,農
業 労働2,小船 先 導
(自
営),野菫 由
農業労働
2,魚取 り販売
,稲苗生産
店員・
リ シャ引き
3N
(2)
4.5 2.5 5.5 0.00 0.00 2.0 農 業 労働2 製 ダルエ場労 働
工
5.一
年 中
(世 帯数 5)
5F
(2) 3.5
2.5・
0.150。
05 農 業 労働,家カ ガ ″ 補助,〃 ι
5N
(3) 2.5 4.7 0.00 0.00 2.3
農業労働
2,牛
乳生産販売
,家内労働 働
晨業労働
,ココ ナ ツ仲 買
米収 穫後 翅〃
注)lF①は、 自家飯米で消費をすべてまかなえる世帯。lF②は、賄えないが苦労な く購入で きる世帯。「農業以外 の職業」:ゴ シック=村外での就業。 イタリック=女
性 による就業、 なお、屋敷地で生産 された野菜や畜産物の販売 は、 当初か ら販売することを 目的 としている場合 にのみ含め、臨時に販売 した ものは除いた。職業名 の後に示 した数字 (2など)は、従事者数である。数字がない場合 は1人。
出所 :1994年 の調査 によ り筆者作成。
詳 田 弧
中
表
2‐
4 2002年の飯米確保状況 と農業経営、農業以外の職業による分類
F=農
業経営、N=非
農業経営(世
帯数)
1。
ない(世
帯数21)
イ リ米収穫前 のみ
2/3‑3/4月 (世
帯数6)
雨季後半〜雨 季開け及び イ リ米収穫前
8/9‑10/11、
2/3‑3/4月 (世
帯数7)
雨季のみ
6/7‑9/10月
(世
帯数 9)5。
一年中(世
帯数 2) 注)表 2‑3参
照。出所 :2002年 の調査 よ り筆者作成。
不定期の送 金な ど
2, IJ」
"
ぎ
,,海 ぎ
うヽヽ¶洵ヽ卜剛裁再計喜夕灘淋鎌酢0掛幌
芦 ゴザ
4.
9ヶ
月間以上の従事5‑8ヶ 月以 下の従 事
し,仕立て屋経営 ジャー,農
薬・ 肥料販売
糖商,耕運機 運転
(日
雇) 員口病院勤務医
.個人
"′
,
員口眼鏡作成見習い
き
(自
営)
4,農
業労働
2,牛肥育
,家庭散師
,家庭教師
,電気
習 い,洋裁,キンマの葉商
,大工
,芦ゴデタ炭 き (自 営
),家具盤装エ 自転車 リヤカ引き
,ジー プ運転手
中学校教員
,製薬会社動 ジュー トエ場労働
牛 乳 生産販 売
,芦ゴ
力引き,斎業 ガ″
2,建設労 働,椰子蜜採
大 工
2,大エヘ ル パ ー
2,農 業 労働
,芦ゴ デ作成
自転車り拗―引き,F ゴ デ侑成,魚採 り販売,農業労働,竹容器作成
便器製造、農業労働、道路
影 、
務
ネジャー,建設 労働,アイスク リーム 売 り,農業労働,農業
労働2, ″勤療∂`ろクヽ,
芦 拗
10
池 田 恵 子ものの、村周辺に農業以外の自営による職業を持ち、村の外での就労が少ないという明確な違いがある。
農業賃金労働を含めた産業 としての農業への依存度が低いのである。農業経営 にまった く関与 しない世 帯が最 も多 く見 られるの もこのグループである。雑多な職業を短期間に組み合わせるという多就業の傾 向が最 も強いという特徴 もある。
グループ 5の 大半 は息子夫婦の世帯か ら切 り離 された老人や、夫を亡 くした女性世帯主の世帯である。
これ らの世帯 は、農業経営の有無を問わず、年間に消費 される米の2‑3割を親戚や近隣か らの援助 に よって賄 っている。
8年 後の2002年の状況を表2‑4によって見てみよう。 まず気がつ くことは、飯米確保に困難がない世 帯が大幅に増えていることである。調査対象世帯全体の半数近い21世帯で飯米確保に困難がない。特に、
自家飯米だけでは足 りないが、楽 に購入できる世帯 (グループ 1の lF②)が13世帯にまで増えている。
これ ら世帯の自家飯米 は、
5.8ヶ
月分 と半年分以下 しかない。すなわち、飯米確保 において 自営農業や 農業賃金労働の現物報酬の重要性が低下 している。第二 に、 ほとんどのグループで自家飯米の比率が変 わ らないか減少 しているにもかかわ らず、飯米確保 に苦労する期間は短 くなっている。例えば、 グルー プ4の 雨季明けとイ リ米収穫直前の両方で飯米確保 に苦労するグループの農業経営世帯においては、 自 家飯米がある平均月数が5.lヶ
月 (1994年)から4.8ヶ
月 (2002年)に減 っているのに、飯米確保が困難 な平均月数 は4.3ヶ
月か ら2.8ヶ
月に減少 している。 これ らの変化は、農外収入の増加や安定化 によって 楽に米が購入できるようになったということを意味 していると想定できる。(3)農外の経済活動 と収入の季節変動の改善
では、主要な非農業の職業の雇用 と収入に見 られていた季節変動 は解消 されたのだろうか。農業賃金 労働、零細製造業などに加え、急増 した運輸業
(自
転車 リヤカー引 き)や出稼 ぎについて、1994年と 2002年の状況を比較する。く農業賃金労働>
調査対象世帯では、農業賃金労働の形態 と従事者の属性に大 きな変化が見 られた。まず雇用 日数が減 っ た62002年には専従者またはほぼ一年中従事する者の雇用 日数は、苗の移植が行われるため最 も労働需 要の高い12‑1月 で も合計
15‑16日
間であった。1994年にはこの2ヶ
月間 は月間約25日
の雇用があったの だか ら、大 きな変化である。1994年には4‑5月 に収穫のため平均15日
程の雇用があったが、10‑12日 に減少 した。雨季 とイ リ米収穫直前の時期の雇用 日数 はあまり変化 してお らず、月間10日
以下である。男性従事者数 は1994年の26人か ら2002年には14人へ減少 した。そのうち専従者 は 3名 、非専従だがほぼ 一年中従事する者 は 4名 しかいない。20歳代か ら40歳代のいわゆる働 き盛 りの男性農業賃金労働者 は、
ほとんど姿を消 した。大半が
50、
60歳代か10歳代で労働参入 したばか りの若者である。替わ って雇用 さ れるようになったのが、 ヒンドゥー女性 と村外か ら来 る労働者である。女性 は苗の摘み取 りと草取 りに 雇用 される。村外労働者の大半 はウジルプル郡西部の湿地帯か ら通 って来 るが、稲刈 り時には他県か ら 労働者が集団でや って来て泊 り込みで作業をするようになった。単位面積あた りの作業 に対 して賃金を支払 うティカの慣行がな くな り、稲刈 りの日当のみ現物払 い (労働者が受 け取 る比率 は不変
)、
その他の作業は現金払 いとなった。名 目賃金 は大幅に上昇 した。1994 年現在 日給Tk。30だったが、1997年頃にはTk.40に、1999年にはTk.50に急上昇 したのである。バ ングラデシュ農村における就業構造の変容
<運
輸業(自
転車 リヤカー引き)>
′ 次に、急増 した自転車 リヤカ引きについて見てみよう。 自転車 リヤカとは、 自転車の後ろに大八車を つけた もので、荷物や人を運搬す るのに使 う。荷台 は大人2‑3人が乗れる大 きさである。常設市Z バザールか ら3方向に伸びる舗装道の各入 り口に乗 り場があり、 自転車 リヤカが列を作 って客待ちを し ている。登録制度や組合組織などはな く、バザールで顔を知 られた近隣の住人であれば誰で も客待ちの 列に並ぶ ことがで きるという。2002年の調査時に、調査対象世帯 には8人の自転車 リヤカ引 きが存在 した。30‑40歳代が多 く、その大半が1994年の調査時には農業賃金労働 に従事 していた。雇用 日数 は一年 を通 して月に約25日であり、雨季 にも同 じであるという。一 日の収入 は雨季で一 日
Tk.40‑60、
乾季で はTk.60‑100である。雨季にも、一 ヶ月当たりTk。
1,000程度の収入がある。く零細製造業>
鍛冶 はQ村か ら姿を消 した。儲か らないという理 由であった。 また、竹容器製造に携わる世帯 も減 少 している。 これ らの職種 は産業 として この地域か ら徐々に消滅 してお り、 これ らの産業に依存する世 帯にとっては大 きな脅威 として受 け止め られている。大工、竹容器作成、芦製のゴザ作成か ら得 られる 収入額 とその季節変動は1994年とあまり変わっていない。すなわち、雨季の収入の落ち込みは解消され ていない。
<商
業、その他の自営業>Zバ
ザールの雑貨屋の売 り上 げの季節変動 は、イ ンフラ整備が進んだ後 も変化が見 られない。売 り上 げが最 も多いのは1/2〜2/3月 で、4/5月 〜7/8月 に│ま
売 り上 げが1/3に減 り、3/4月 にもっとも売 り上 げ が落ち込む。<出
稼ぎと送金>都市での就業 は大幅に増え、その内容 も多様化 した。従来か らあった リキシャ引きや車の運転手、工 場労働、店員などの職業に加えて、電気工、家具の塗装、眼鏡作成などある程度の技能訓練が必要な職 業が増えた。都市の建設労働 は雨季で も需要があるという。急成長する多様な民間企業での雇用 も増え ている。
3節
考察 :飯米確 保 の視 点 か ら見 た就 業構造 の変化
どのような就業の選択を した世帯で飯米確保状況の改善がみ られたのだろうか。表 4‑1に 調査対象世 帯が、1994年と2002年の間に先に提示 した飯米確保状況による分類のカテゴリー間をどのように移動 し
たかを示 した。飯米確保状態が改善 された世帯が見 られるのは、1994年に主 にグループ 4の 雨季後半 と イ リ米収穫前の両方の時期で困難があった世帯であり、改善されていない世帯が多 く見 られるのはグルー プ3の 雨季のみ困難があった世帯であることが分かる。
再び表2‑3と表2‑4を比較 しなが ら、 これ らの世帯の就業構造、経済機会の活用の変化 について考察 しよう。飯米確保状況が改善 された世帯の職業を見 る。まず飯米確保の困難がない世帯の就業構造につ いて二つの表を比べてみると、年間を通 じてまたは長期間就業する職業または定額給与のある職業が増 え、替わって4ヶ 月以下の短期間の就業や季節的な出稼 ぎが減 っている。次に自転車 リヤカ引きが増え ているが、前述のように農業賃金労働か らに転職 した人が多 く、 これ らの世帯で最 も状況が改善 してい
池 田 恵 子
表
3‐
1 飯米確保状況による世帯数の変化 (1994〜2002年)
1.困 難 な し
2.イ
リ米収穫 前 のみ 2/3‑3/4月
3.雨
季 のみ 6/7‑9/10月
4.雨
季後半〜
雨季 開け及 び イ リ米収穫前
8/9‑10/11、2/3‑3/4月
5。 一年 中 村
ど 離 な
*
1.困 難 な し
9l
122.イ
リ米収穫前
のみ2/3‑3/4月 1
43.雨
季 のみ
6/7‑9/10月
2 6・一 4(2)
154.雨
季後 半〜
雨季 開 け及 び イ リ米収穫前
8/9‑10/11、2/3‑3/4月
9
・・一¨一
2
1
2 145。
一年申 2(2) 5
*分離 した世帯
1
計 21 6 9 7 2
5
50出所 :1994年 及び
2002年
の調査より筆者作成。る。バザール周辺のイ ンフラ整備に伴 い、運輸業が雨季 にも操業可能 となったことがいかに大 きなイ ン パ ク トを持 ったか分かる。 このように農村で交通イ ンフラが整備 されて運輸業が俄かに発展 し貧困層の 生活が改善 され る事例 は、北西部のボグラ県 におけるモノグラフで も報告 されている (Westergaard
&Hossain 2000)。 また、 自転車 リヤカを購入す る際に小規模金融が活用 された ことが多い。1994年 か ら2002年の間における経済機会の変化 は、農業賃金労働者 として雇用 されるしかなかった働 き盛 りの 男性 にそれ以外の複数の選択肢をもた らした。規模の大 きい農家 は農業労働者を探すのに一苦労するよ うになったという。賃金が低 く雇用 も確実ではない農業賃金労働 は、それ以外選択肢のない老人、雇用 経験の浅い若者、女性の職業 となったように見える。
送金収入のある世帯が、状況が改善 された世帯の中に多 く見 られるようにな った。首都や地方都市に 働 きに出る子息や親戚が増加 している。その形態 は1994年に多 く見 られたような、農閑期にのみ行われ る短期的な ものではな く、年間通 じて安定 して行われるものとなった。内容 も建設労働のような非熟練 労働だけではな く、恒常的で安定的な収入があり、ある程度の技能や熟練または教育水準が要求 される
もの、例えば家具の塗装や眼鏡作成など多様性が出てきた。 このような職業 は、豊かな都市住民の消費 ニーズに呼応 して生み出されてきたものといえよう。
これ らの世帯では、農業経営にも変化が見 られている。小作地を増やす、抵当貸 しを行 って用益権を 得 る、農地や家畜を購入す るなど生産への投資が増えている。農地の平均所有面積が平均
0.39エ
ーカー か ら0.47エ
ーカーヘ、平均経営面積は0.56エ
ーカーか ら0.61エ
ーカーヘ と増加 した。一方、雨季に所得の落 ち込みが改善 されていない世帯では、農業賃金労働や大工などが主な収入源で あり、魚業、竹容器作成、芦のゴザ作成など依然 として生産活動 自体に季節性がある生業を短期的に組 み合わせている。就業構造 に大 した変化が見 られなか ったことになる。2002年にグループ3と 4に 所属 す る世帯の非農業の職業の平均数 は