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ホール型銅酸化物超伝導体における硫黄置換効果 Effect of sulfur substitution in hole-type cuprate superconductors

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Academic year: 2021

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(1)

[城田健佑,1]

23

ホール型銅酸化物超伝導体における硫黄置換効果 Effect of sulfur substitution in hole-type cuprate superconductors

応用化学専攻 城田 健佑 SHIROTA Kensuke

1. 緒言

2013

年に

Yee

らは,

K2NiF4

構 造 を も つ

La2CuO4

構造内のCuO

6

八面体の頂点酸素イオ ンを硫化物イオンで置 換すると構造歪みが緩 和される事を予言して いる。

1)

一方,小塚ら の研究では,Yee らの予想とは異な

り,

Sr0.16La1.84CuO4

中の酸化物イオンを硫化物イオンで 微量置換すると,

CuO6

八面体の中の

CuO2

面内の酸化 物イオンが硫化物イオンと置換しその結果,構造の歪 みが生じ,超伝導状態が消失すると報告されている。

2)

これらの報告によれば,

La2CuO4

SrxLa2-xCuO4-y

中 の酸化物イオンが硫化物イオンで置換されうる可能 性が示唆されている。

本研究では,この酸化物イオンサイトへの硫化物イ オンの置換が可能かどうかを調査するために,

Sr

置換 されていない

La2CuO4

Sr

置換がなされた

SrxLa2-

xCuO4-y

中の酸化物イオンを硫化物イオンで置換する 事を試みた。得られた物質の構造は、粉末X線回折パ

ターンを

Rietveld

法により解析し評価した。また、磁

化率の温度依存性を測定し、超伝導転移について調べ た。本発表では,硫黄置換が構造および超伝導特性に 及ぼす影響について報告する。

2. 実験方法

試料合成には,原料粉末として

SrCO3

CuO

CuS,

La2O3(いずれもレアメタリック社製,純度 99.99%)を

用いた。秤量前に

SrCO3

CuO

600℃で,La2O3

900℃で事前に熱処理した後,これら原料を化学量論

比に秤量し,メノウ製乳鉢で

1

時間混合粉砕した。

得られた粉末をペレット状に一軸成形し、再度白金 ボートに乗せて管状炉内で

1000℃,12

時間大気中で 熱処理した。得られた試料について,

X

線回折(XRD) による構成相の同定を行った。さらにその XRD デ ータを基に

Rietveld

構造解析を行った。また,得られ た試料の磁化率の温度依存性をSQUID により測定し,

試料の超伝導特性について調べた。

3. 結果及び考察

3.1.

硫化物イオン置換による結晶構造の変化

La2CuO4

中の酸化物イオンを硫化物イオンで置換す るため,以下に述べる手法を試した。

1) CuO,CuS,La2O3

を出発原料に用いた固相反応法による合成法,

2)

すで に合成された

La2CuO4

と過剰量の硫黄を石英管内で反 応させる合成法,

3) CuS,La2O3

を出発原料に用いた高

(6GPa

)合成法,の3

手法による合成を試みたが,

XRD

による相同定の結果,

La2Cu(O,S)4

は得ることが 出来なかった。

続いて,

SrCO3

CuO,CuS

La2O3

を出発原料として 大 気 中 で の 固 相 反 応 法 に よ り 得 ら れ た 試 料

(Sr0.2La1.8CuO4-y-zSz)のXRD

パターンを

Fig.2

に示す。

硫黄仕込み量

z(実際には仕込みのCuS

量に対応) が 多くなると他相が見られるものの, 目的とする

K2NiF4

Fig. 2 Nominal sulfur content z dependence of XRD Patterns of Sr0.2La1.8CuO4-y-zSz samples

(2)

[城田健佑,2]

構造の

XRD

パターンが確認された。さらに,硫黄の仕 込み量

z

の増加に伴い,

33.5°付近に見られる(1 1 0)の回

折ピークが分裂する事が観測された。 これらの結果から、

この回折ピークの分裂が結晶構造内への硫化物イオン の置換と関係している事、さらに言えば

Sr0.2La1.8CuO4-y

中の酸化物イオンサイトへ硫化物イオンが置換された 事が示唆される。

3.2. Rietveld

解析による硫黄置換サイトの同定

SrxLa2-xCuO4-y-zSz(x = 0.2, 0.3 , z = 0 ~ 0.4)

XRD

回折デー タを用いて

Rietveld

構造解析を行い,構造パラメーター を精密化した。

Sr0.2La1.8CuO4-y-zSz

における、硫黄仕込み 量

z

に対する格子定数の変化率を

Fig.3

に示す。

硫黄置換量に対して、格子定数

a

は増加、格子定数

c

は減少傾向にあることがわかる。

格子定数変化の要因については、電気陰性度

χ

が,酸 素(χ=3.44)よりも小さい硫黄(χ=2.58)が置換したこと により,

S2-

から

Cu3+

へ電子与えられ,

S1-

Cu2+

にな ったためと予想している。

S2-

が置換すると小さなCu

3+

が大きな

Cu2+

に変わるため、格子定数

a

が増加し、大 きな

S2-

が小さな

S1-

になることで、イオン半径が小さ くなり、格子定数

c

が減少すると推察される。以上の 仮説の上で現象を考察すると、Sr

xLa2-xCuO4-y

の酸化物 イオンを硫化物イオンで置換するためには、ホールキ ャリアをもつ

Cu

イオン

(Cu3+)が必須であると考えら

れる。次に、結晶構造中の硫化物イオンの置換サイトに ついて述べる。今回の

Rietveld

構造解析では、硫化物イ オンの占有率の初期値を

0

に設定して解析をスタート させ、収束した際の硫黄の占有率の変化を調べた。その 結果、結晶構造の面内に存在する酸化物イオンサイト

(O1

サイト)における硫黄の占有率は変動しなかった。

対して、

O1

サイトの上方に存在する酸化物イオンサイ

(O2

サイト

)における硫黄の占有率が0

から増加して

いき、 最終的に仕込み量に近い値に収束する傾向がすべ ての試料で見られた。以上より、面内サイトではなく面

間の

O2

サイトに硫黄が置換していることが示された。

3.3.

硫化物イオン置換が超伝導特性に与える影響

Sr0.3La1.7CuO4-y-zSz

の磁化率の温度依存性から、超伝導

転移挙動を調べた。得られた超伝導転移温度

Tc

を硫黄 仕込み量

z

に対してプロットした関係を

Fig.4

に示す。

硫黄置換していない試料(z=0)は超伝導を示さなかった が、硫黄で置換することによって、超伝導が発現した。

また、硫黄仕込み量が

0.075

までは

Tc

が増加、その後 減少する傾向が見られた。硫黄置換していない

Sr0.3La1.7CuO4-y

では、ホールキャリアが多すぎて金属 的挙動を示すため、 超伝導を示さないことが知られてい る。一方、硫化物イオン置換は結晶構造内のホールキャ リアを消失させるので、 試料が超伝導を示すようになっ たと考えられる。この結果は、構造解析から推測した硫 黄置換挙動と一致する。以上から、酸化物イオンよりも 電気陰性度の小さな硫化物イオンは、 陽イオンに電子を 与えやすく、その結果、電子を受け取った

Cu

イオン

(Cu3+)が還元されるのでホールが消失する。その変化

が、結晶構造と超伝導特性に影響を与えたのである。

4. 結言

La2CuO4

系に硫黄置換するためには、ホールキャリ アが必要であり、硫黄置換量は母物質のホール量に 依存していることがわかった。そして、超伝導を示さ ない

Sr0.3La1.7CuO4

に硫黄置換することで、過剰だっ たホールキャリアが減少し、超伝導を発現すること が示された。

5. 参考文献

1) Chuck-Hou Yee, Gabriel Kotliar, Phys. Rev. B 89, 094517 – Published 24 March 2014.

2) H. Kozuka et al., Jpn. J. Appl. Phys., 29 (1990) L1608.

学会発表

54

回セラミック基礎科学討論会 講演要旨集

P62 (2016) [口頭]

Fig. 3 Nominal sulfur content z dependence of Lattice Constants of Sr0.2La1.8CuO4-y-zSz samples -0.8

-0.4 0 0.4 0.8

0 0.1 0.2 0.3

変化率[%]

硫黄仕込み量

格子定数a 格子定数c

0 10 20 30 40

0 0.1 0.2 0.3

Tc [K]

硫黄仕込み量

Fig. 4 Nominal sulfur content z dependence of Tc of Sr0.3La1.7CuO4-y-zSz samples

Fig. 2    Nominal sulfur content z dependence of XRD  Patterns of Sr 0.2 La 1.8 CuO 4-y-z S z  samples
Fig. 4    Nominal sulfur content z dependence of Tc                  of Sr 0.3 La 1.7 CuO 4-y-z S z  samples

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