非自発的失業とピグー効果
藤井栄一
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非 自発 的 失 業 と ピ グ ー 効 果
ポスト・ケイソジアソ達は︑自由な市場の自動的な力が︑今日では︑決して︑資源の完全雇用を保証するような方
向にむかっては作用していない︑と主張しているようである︒そして︑この市場の不完全さを補完するために︑政府
の積極的な経済政策︑とくに財政政策︑を中心に考える︑という立場が導かれてくる︒
これに対して︑市場の自動的な調整作用だけでは不充分であるということを認めながらも︑政府の積極的な経済へ
の介入が市場の不完全さを補完せずに︑かえって︑逆に調整作用を妨げている︑と理解する立場も弱くないようであ
る︒前者が弾力的な経済政策を主張するのに対して︑後者は︑現在の経済学の限界のなかでは︑むしろ政府はあらか
じめ設定された硬直的な政策を維持し︑自動的整調作用がよりうまく働くようにした方が具合がよい︑特に今日まで
の財政・金融政策は景気変動の波を強化し︑能率的な資源配分を阻害している︑と主張する︒そして︑もし︑市場の
自動的な力がなんらかの要因で充分に作用しないのならば︑そういう構造的な要因を直接に排除した方がよい︑ある
いは排除しなければ︑短期的な財政政策では問題が解決されたことにはならないし︑さらには︑所得分配についても
ももも直接的な再分配政策によった方が︑価格政策や補助金政策で市場のメカニズムにひずみを与えるより︑もっと適切な
資源配分が行われる︑と考える︒
このような後者の主張の背後にある一つの論理的な前提条件である経済モデルを静学の枠のなかで考察することが
本稿の問題である︒
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両8昌Oヨざ諺のωOO冨江OP"・b︒㊤9より]
需要と供給
よく知られているように︑消費者の財およびサービスに対する需要は無差別曲線︑あるいは︑効用(指標)函数か
ら導かれ︑通常の条件のもとでは︑価格の一値減少函数である︒同じく︑生産者の生産要素に対する需要は︑生産物
に対する需要から導かれる派生需要であって︑通常の条件のもとでは︑生産要素の価格の一値減少画数であるQ
一方︑供給函数は︑価格と供給数量の関係をあらわし︑企業の利潤極大行動から導かれる︒一方︑特化されてない
生産要素の供給価格は機会費用(代替費用)によって定まる︒任意の商品且を生産するのに必要な生産要素Xを使用す
るための費用は︑Xが他の任意の商品β︑C︑⁝⁝を生産する際に得られる報酬額のなかでの最高額である︒たとえば
資本がほかで10パーセソトの資本報酬を受けとることが出来るならば︑たとえF産業では自己資本でまかなっている
非 自 発 的 失 業 と ピ グ ー 効 果
としても︑なお︑F産業における資本費用はその使用資本額の10パーセソトである︒この意味で経済学上の費用"生
産費概念は︑会計上の費用概念と異る︒このようにして︑たとえば︑従来ある生産要素︑たとえばある一定の質の労
働が︑各産業で一人一時間当り一〇〇円の賃金を受けとっていたのが︑G産業では生産性向上によって︑労働生産性
が上り︑一五〇円の賃金を受けとるようになったとすると︑他の産業における同一の労働の賃金費用も一五〇円にな
る︒ただ︑実際の資本利子負担は︑F産業では︑自己資本でしかも︑配当を何らかの理由でしなかったり︑あるいは︑
低くおさえたために他産業における資本費用10パーセソトよりも低いこともありうるだろうし︑労働の賃金もG産業
以外では︑労働のイソモービリティとか他の制度的あるいは摩擦的要因あるいはさらに一般に不完全競争的な要因の
ために︑一五〇円でなくて︑一〇〇円にとどまるかもしれない︒このようなとき︑資本の例でいえば︑資本利子に対応
する金額は︑何らかの形で︑別の費用項目のなかに︑かくされているか︑あるいは︑利潤項目が経済学的に考えた時
の真の利潤より水ましされていることになる︒また︑賃金の場合でいえば︑0産業以外は︑競争的な条件の下で行わ
れる活動水源以上の率で営業していて︑そのために(労働の限界生産力がてい減する条件の下で企業が活動していると仮定
して)労働の限界生産力が低いか︑あるいは︑独占的要因などのために︑労働の限界生産物以下しか賃金が払われて
いないかの︑何れかである︒前者の場合であれば︑労働は︑0産業に移ることによって︑一五〇円︑あるいは︑それ
に近い水準の賃金をうけとることが出来るのであるから経済全体としては不均衡の状態にある︒後者であれば︑賃金
と労働の限界生産物との差額は独占による利潤である︒しかし︑この場合でも労働はG産業に移ることによって︑よ
り高い賃金を受けとることが出来る︒
特化された生産要素の供給価格はその機会費用と準地代の和である︒たとえば︑職業野球の選手の一年の収入が︑
一︑○○○万円であったとしても︑別の産業に入ったときに︑たかだか一年二〇万円しか得られなければ︑職業野球
産業にとっての︑この選手の費用は︑二〇万円であり︑この選手の準地代は九八〇万円である︒もし︑他の産業では
全然使いものにならなければ︑一︑○○○万円全部が準地代である︒
個々の産業については︑このようにして導かれる需要と供給によって均衡価格と均衡数量が定まる︒生産要素︑し
たがってまたその一つである労働についても同様である︒
ところで︑経済全体を一つの産業と考えても︑問題に本質的な差は出て来ない︒
資本量が一定の短期を問題にすると︑産出量は雇用量によって決定される︒
遍11瀬黛)(H)
労働需要は︑実質賃金によってきまる︒
さ11b(ミく包(b︒)
労働の供給も実質賃金の函数である︒
≧岡11⑦(ミ哩ご(ω)
ただし︑ここでは︑労働の産業間移動は︑産業が一つしか存在しないのであるから︑存在しない︒労働の唯一の機会
費用は蚕ω葺・の効用︑すなわち︑労働のマイナスの効用である︒雇用量は労働の需要と労働の供給が一致する点で
きまる︒従って︑均衡条件︑
≧11壽11さ(蔭)
から︑雇用量および実質賃金が決定される︒ここでは︑その(実質)賃金水準でオファーされる労働量が完全に雇用
されているのであるから︑非自発的失業は存在していない︒労働供給は決して︑賃金水準と独立に決定されず︑従っ
て︑伸縮的賃金の下では非自発的失業は存在しない︒たとえ労働の供給函数が一定の雇用量以下で完全に弾力的で
G
非 自発 的 失 業 と ピ グ ー 効 果
あったとしても︑均衡雇用水準とその賃金水準に対応する供給労働量との差額は非自発的失業を示すものではない︒
第1図で云うと︑労働需要がnのとき︑雇用量は9心に︑また︑(実質)賃金はFに決まるが︑このときにオファー
される労働量はOOであり︑したがって﹄Oだけの労働はオファーされながら雇用されないことになる︒しかし︑こ
れは﹁非自発的﹂失業ではない︒同じように︑労働需要が凸にシフトして失業がさらに﹄切だけ増加してもこれらは
﹁非自発的﹂失業ではない︒なぜなら︑もともと︑ここで︑供給函数は労働の機会費用によって定義されているから
である︒いいかえれば︑傭曲線は︑その賃金でならば労働に従事してもよいとオファーされる労働量を各賃金水準
について示したものであり︑その水準より僅かでも低ければ§ω霞Φの効用の方が高く︑その水準よりも僅かでも高け
れば提供した労働によって得られる所得の
⊥p 旺L〜
0
第1図
D旦pHF κ﹂0
第2図
効用の方が芭ω自︒の効用よりも高いこと
を示す︒恥は丁度この両者が無差別であ
るような点をつないだものだからである︒
従って︑ここでの失業は全て﹁自発的﹂失
業である︒非自発的失業は︑硬直的な賃金
の下でのみ存在することになる︒たとえば
第2図で︑硬直的な実質賃金水準が9醐に
きまると︑この賃金水準の下では︑ミしか
雇用されない︒ところが︑9閑の範囲内で
はその賃金よりも低くても働きたい︑すな
わち︑或の霞Φよりも雇用された方が効用が実際に高い︑Xのであるから︑洩は﹁非自発的﹂失業をあらわす︒
Fこのようにして︑古典派体系では︑伸縮的な賃金の下
では︑非自発的失業は存在せず︑しかも︑賃金がきまる
と同時に雇用量Nもきまるので︑これから︑生産量Xも
きまることになる(第3図)︒図
PN鄭ニマ季・イル←ヨンと幕肇
古典派の体系
これらの経済の実質面に対して︑貨幣的な面は独立と
考えられていた︒これをもっとも︑はっきりと示すもの8
が︑フィッシャーの交換方程式によってあらわされる︑
Wp刀﹁貨幣ベール観﹂である︒
ミ京川智嶋田轟(α)
不均衡から均衡への回復過程のごく短い期間ではM︑γ︑およびPがXに影響をあたえることも分析されているが︑
長期的にはγは一定(あるいは︑交通・通信の進歩による取引きの容易化によって漸増)し︑Xは経済の実質面によって決
定される︒ということから︑結局︑この定義式は︑Mの大きさがPを決定する︑というように解釈され説明されてい
る︒そこで︑γも一定とすれば︑PとXの関係は双曲線であらわされ︑
非 自 発 的 失 業 と ピ グ ー 効 果
支"共Nδ(①)
ミー1き(刈)
第3図にこの関係をつけ加えたものが第4図である︒従って︑貨幣量を必︑雌と変化させても︑一般物価水準が︑
n︑瓦と変化するだけである︒
ところで︑賃金の硬直性を生み出す労働組合の賃金要求は︑実質賃金よりは多くの場合名目賃金を中心に行われ
る︒とすると︑労働供給函数は㈹の代りに︑
ミ"§(G︒)
MM↓㎝であ発労働需要側にはマネー.イルージ.ソはないものとす
F
P島唱
旦pD
第4図
S る︒㈹からPと§萄の関係は双曲線であらわされることにな
る︒これを第4図につけ加えたものが第5図である︒この場合
には︑貨幣数量政策によって物価水準のみでなく生産数量まで
も動かされることになる︒貨幣数量が必の場合には︑貨幣量が
少なく︑従って物価も安く︑そのため実質賃金が高く︑潜在的
な労働供給が高いにもかかわらず労働需要は低く︑卜切の非自
発的失業が発生し︑生産量は孟である︒貨幣数量を増加してゆ
くに従って︑物価および生産量はOO曲線に沿って増加してゆ
く︒しかし貨幣数量が砥になると︑完全雇用に達し︑それ以
後は︑労働供給が︑名目賃金に依存するかぎりは︑物価のみが