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(1)

地方 自治体における人事管理の実態 と 環境変化への対応

山 本 清

1 .はじめに

民間においては円高,低成長期に対応 した人事管理の見直 し論議が盛んであ り,全体的な改革方向として年功序列制の廃止 と業績主義の徹底を図る一方, 専門的能力を有する層 については人材の流動化を推進 しよ うとする動 きが有力 である

ただ,流動化政策は終身雇用制 と対立するため,終身雇用による雇用 の安定及び企業へのコ ミッ トメン ト価値を重視する者 は労使 とも否定的な意見 が多い。 しか しなが ら‑ ,例えば ミサ ワホームのように経営者 自ら終身雇用を将 来 とも維持す ると宣言 している1 )場合で も,業績 ・実力主義 による人事 は徹 底 してお り,人材の効率的かつ効果的な管理方策 として目標による管理,人事 考課の公開,年俸制等の 「 契約主義」に基づ く制度が導入 ・適用拡大されてい

るのは全企業に共通 した特徴である。

こうした民間の動 きに対 して公的部門, とりわけ政府 ・自治体の人事管理の 見直 しは積極的 とはいえないが,昭和

40

年代に福祉政策の先取 り等の住民ニー ズに職員を増加 させて対応 して きた多 くの自治体では,当該採用者が管理職世 代に突入 してきたためポス ト管理が内部的に大 きな課題になっている。また,

1

)例えばミサワホームの三洋千代治社長は 「 終身雇用制はうちは絶対に崩しません」

と述べている。しかし,一方で同社は厳 しい資格試験を行っている。詳細は千葉

(1994)

参照。

209

(2)

210

商 学 討 究 第

45

巻 第

3

外部的には細川 旧連立政権以降,行政改革,地方分権が第

2

次臨調以来ひさか たぶ りに現実的検討課題 に挙げ られ,公務員の試験 ・採用制度の見直 しが政府 の方針 として唱われ るようにな って きている

2) 。

したが って,公的部門にお いて もかかる環境の変化に対応 した人事管理制度 になるよう改革 し,適正な人 的資源の活用により効率的行政を推進 し公共の福祉の向上に務める必要がある が,人事管理 という機密に関す る性格か ら給与,定員等の集合統計が公表 され ているだけでその実態は従来明 らかにされて こなか った。そこで,本稿では人 事管理の実態 と将来の改革方向を把握するため自治体の人事管理責任者にア ン ケー ト調査を実施 し,先に行 った職員 ( 係長級)意識調査の結果 と併せ改革の 方策を検討するものである。すなわち,次節では調査方法の概要 と人事管理政 策の動向が述べ られ,第

3

節では人事考課の評価項 目,評価手続 き,考課者訓 練の状況が分析 される。ついで,第

4

節では昇進管理の実態が昇進基準,昇進 格差に関 して明 らかにされ,第

5

節では賃金管理,特 に特昇 ・勤勉手当の運用 実態 と給与格差の状況が示 される。そ して,第

6

節では管理者の年功制の評価 と業績主義への対応が,また,第

7

節では人事管理の有効性を保証す る双対原 理を提示 しア ンケー ト結果に基づ く検証がなされる。最後に人事管理制度の改 革の方向と解決 されるべき課題が提示 される。

2

.人事管理政策の動向

( 1) 調査の概要

ア ンケー ト調査 は1

993

8

月に47 全都道府県及び政令指定都市

1

1を対象 に 実施 した。調査内容の正確性を確保す るため,人事管理責任者 ( 基本的に人事 課長)に直接郵送により調査票を送付 し回収す ることに した。その結果都道府 県か ら

41(87%)

,政令都市か らは1

0(91%)の高い率の回答が得 られ, 自治

体の うち第一層に関す る全体概要を把握するに必要なデータを入手す ることが

2

)臨時行政改革推進審議会の最終報告

(1993.10.27)Ⅵ 4

公務員 において 「 年功

序列的人事の硬直的な面 は改めるべ きであ り,人材の適切 な配置や特別昇給の弾力

的実施等 により,意欲 と能力ある職員の士気の高揚を図 る」 とされている。

(3)

地方 自治体 にお ける人事管理の実態 と環境 変化への対応

211

できた。調査項 目の詳細は紙幅の関係で省略するが,民間企業 との比較可能性 を確保す るため今回の調査に先立 ち実施 された労働省

(1987)及 び連合総合

生活開発研究所

(1992)

の調査項 目を参考 にす るとともに,民間調査で触れ られていない人事管理の手続 きや給与格差等について独 自の項 目を設定 した。

また,人事管理は職階により異なるのが通常であるため基本的に係長に対する もの とした。 これは,別途行 った係長に対す る意識調査 と比較す る意義 もある か らである。

(2)

職員の意識 ・態度の認識

これは公務員 として採用 される者を管理者側がどのように認識 しているかを 把握す るために設定 した項 目である。雇用が保障されている公務員では新規採 用者 は自動的に将来の中堅職員を構成するため,若手層の意識構造を把握 して 人事政策を検討する必要があると思われるか らである。その結果 は,下表 に示 すように全般的に政令都市の方が個性的で国際感覚に優れているとする傾向に あり,民間企業 と比較 して も国際感覚については際だって評価が高いのが特筆 され る。地方部の自治体は受験層に地元出身者が多 く,反対に都市部に所在 し 転勤の心配のない政令都市 は若い意欲のある者にとって魅力的なのか もしれな

い。

1

若手層の態度

(%)

項 目 都道府県 政令 都市

民間企業

素直で明 るい

ハ ング リー精神が不足

言 われ た こと しか しない 納得 した仕事 な ら努 力す

自分本位 で あ る

忠誠心が希薄

国際感覚 に優 れ てい る

12.8 7.9

12.8 7.9

10.6 15.8

8.5 2.6

8.

0

5.3

4.8 10.5

10.4 12.1 10.4 10.2 10.2 1.3

個性が豊か 5.9 13.2 5.7

その他

36.6 36.8 39.7

100.0 100.0 100.0

1:民間企業の値 は労働省 (1987)

調査 によ る。

2

:複数回答のものを合計が

100%

にな るよ うに換算 して あ る。

(4)

212

商 学 討 究 第

45

巻 第

3

(3)

人事管理への影響項 目

今後の人事管理 において影響す る要素について尋ねたところ,団塊世代の処 遇が トップであり,ついで職員の意識 ・価値観の変化及び高学歴化が挙げ られ る。調査時点が民間の

1986

年 と異な る

3)

ものの,組織の 自律的成長を通 じて ポス トも増加できる民間 と異な りポス トに制限がある ( 条例で定員管理がされ ている)政府組織では民間以上 に高学歴者が多い

4)

こともあ り処遇が最大の 課題 となっている。 この要素が職員か ら客観的な評価 ・人事考課が要求 される

ことにつなが り,また,同期採用者問で一斉に昇進 させ ることが不可能になる ( 年功制の維持を困難にさせ る)ため,「 格差」を合理的につけることが必要 になって くると考え られる

そ して, この傾向は,職員の採用を増加 して住民 ニーズに対応 した公害規制や福祉サービスの充実を実現 した政令都市において 都道府県より一層明確に現れていることがわかる。

2

人事管理への影響項 目

(,oo)

目 都道府県 政令都市 民間企業

団塊世代の処遇

23.9 33.3

職員の意識 ・価値観の変化

19.0 20.0

高学歴者の増加

12.0 16.7

女子職員の勤続期間の増加

9.9 13.3

情報化 ・技術革新の進展

職員の高齢化

政治 ・経済情勢の変化 その他

9.9 3.3 3.5 3.3

21.8 10.1

9.5 15.8 5.9 5.9 10.6 22.2 12.6 17.5 100.0 100.0 100.0

荏 :民間企業は労働省

(1986)調査 による。

3)1993

年 の労働 省 「 雇用管理調査」で は,雇用管理上 の問題点 と して 「団塊 の世代 の処遇」及 び 「中高年 ホ ワイ トカラーの配置及 び処遇」をあげた ものは,それぞれ

5.5%,8.1%であ るが,5000

人以上 の大企業 につ いて は各28.4%,61.8% と最大 の課題 にな っている。

4

)男子労働者 の うち大卒者 は26.3% (

1992

年)で あ るの に対 し,地方 自治体一般行

政職 ( 男女計)で は

33.9% (1991

年)である。

(5)

地方 自治体 における人事管理 の実態 と環境変化への対応

213

(4)

採用政策及び団塊世代対策

こうした内部的及 び外部的な要因変化に対応 して今後の採用政策について は,定年延長 ・再雇用や民間委託 により職員の採用を抑制 していこうとする傾 向が都道府県及び政令都市双方 に見受け られる。政令都市において都道府県に 比 レ ヾ‑ 卜・アルバイ トの活用を挙げるものが多 いのが着 目され る ( 表

3

参 顔) 0

表 3 採用政策 (1)

(単位 :%)

都道府県 政令都市

定年延長 ・再雇用 民 間委託

中途採用

パ ー ト・アルバ イ ト活用 その他

26.7 18.2 25.6 18.2 20.0 13.6 5.6 22.7 22.1 27.3

100.0 100.0

また,今後採用時に職種をどの程度考慮 して採用 してい くかについては,事 務系職員 は概ね現状通 り

(90%)であるのに対 し技術系職員は専門性を強化 し

てい く方 向

(35%)が認 め られ,連合総研 (1992)

の調査 においてそれぞれ 約 7割及び約 5割 としているのと比較す ると,専門性を重視 してい く傾向は弱 くゼネラ リス トとしての能力に期待 していることがわか る。ただ,パ ブリック サービスも福祉職 ・都市計画職等については専門的要素が強いため,全ての職 員 についてゼネラ リス ト能力に着 目して採用す ることが適切かは疑問が残 る。

一方,団塊世代の直後世代 ( 少数世代)にも当然影響が予想 されるが, これ に関 しては表

4

,

5

に示すように 「 影響あり」 とす るものが圧倒的であ り,逮 合総研による民間調査の

8

割より高 く,影響項 目の トップとして昇進の遅れが 次いで勤務意欲の減退が挙げ られている。 この点 は,民間以上 に合理的な昇進 管理が当面の団塊世代だけでな く引き続 く少数世代について も肝要であること

を示 している。

(6)

214

45 3

号 表

4

少数世代への影響

(%)

項 目 都道府 県 政令 都市

民間企業

州 当あ り ゃや影響 あ り あ ま りな し ほ とん どな し

53.6 50.0 41.5 50.0

4.9

19.0

100.0 100.0 100.0

5

少数世代への影響

(%)

項 目 都道府 県 政令都市

民間企業

昇進 の遅 れ 権 限委譲 の遅 れ 仕事負担 の増 大 研修 機会 の減少

給与

52.8 58.8 73.0

2.8 27.0

5.6 4.2

勤 務意欲 の減退

34.7 41.2

100.0 100.0

(5)

新 しい人事政策の導入状況 と有効性

公務員の人事管理に対す る一般の印象は,究めて年功的な給与 と学歴 ・採用 試験区分 による昇進に集約 されるであろう

したが って,ある意味で最 も日本 的経営の表面的特質を残 しているとみなされるが,その実態についてみると表

6

に示すように,予想外に抜擢人事がなされていた り,自己申告制度 も活用 さ れていることがわか る。 特 に抜擢 に関 しては連合総研や東京商工会議所

(1994)

調査 と比較 して も民間より高い実施率 となっている。それゆえ公務員の世界で

も昇進競争 は相当厳 しいことが管理者側のデータか ら窺える。その一方で,フ

レックスタイムや業績給, 目標管理や面接評価,人事考課の公開は民間より導

入率が低い。すなわち,管理者側 において公務員の人事管理の原則であるメ

リッ ト主義に したが った政策をある程度実施 している一方で,人事の機密性 は

維持 されてお り、職員の意向を勘案 した対等の立場での評価や職員の参画につ

いては慎重な姿勢を保持 している。 しか しなが ら,人事考課結果の公平 とそれ

へ の納 得 は秘 密 主 義 で得 られ る もの で はな く,別 途 職 員 に対 して行 っ

(7)

地方 自治体 にお ける人事管理の実態 と環境変化への対応

215

た補足調査に現れているように現行の人事考課をメ リッ ト主義に沿 って行われ ていると認識 している職員は少数派 ( 約

4

%)であ り,多 くの者は評価基準の 公開や 目標面接方式を支持 している( それぞれ, 約

7

割及 び

4

割) 。 このため, 結果的にメ リッ ト主義による人事管理がなされていて も被考課者である職員の 認識が年功的で不公平 ( 公平 と認識 しているのは約

3

割)と認識 してい る限 り, 公平理論

5)

が説 くように充分な業績改善効果 を もた らさない危険性があると

いえる

6

新 しい人事管理政策の導入状況

(%)

目 都 道 府

政 令

民間 (連合) 民間 (中産) 民間 (東商)

人事

申告

評価

ト公募

考課

公 開

・能

力給

キ シ

ブル

門職

主義

評価

管理

5 6 .1 7 0 . 0

36.5

7 8 . 0 4 0 . 0

70.5

3 6 . 6 1 0 . 0

9 . 7

1

0 . 0

22.6

2 . 4 0

22.0

1 7 . 0

2

0 . 0

4 . 9 0

48.2

2 6 . 8

2

2 . 2

2 0 . 9 2 2 . 2 1 2 . 2

2

0 . 0

1 2 . 2

1

0 . 0

0060786801425233 L6148801234

注 1 : ‑

調

に該 当項 目

が な

とを

示す 。

2

: 「中

は中部産業

連盟 (

19

93 )

によ る

調

,

また, 「東商

は東京商工会議 所 (

1 9

9 4)が行った

調査

示す

東商 は調

企業が連合 と

なり中小企業を 含む

次に連合総研の調査 と比較する意味で自己申告,ポス ト公募及び専門職制度 の有効性について尋ねたところ,自己申告については管理者側の評価が高 く専 門職について も導入率の割には肯定的評価が多か ったのに対 して,ポス ト公募 については民間の評価が高 いの と対照的に否定的であった ( 表

8

参照) 。 これ

5

)人 は他人 と比べて自分の立場や役割を決めよ うとすると考えるもので,他人 に比べ

て自分の努力に対す る報酬が少ないと感 じるとき不公平 とみな し,努力を低下 させ

自己の報酬 とバラ ンスさせ るか,他人の報酬を低下 させ る,あるいは比較の他人を

変化 させ る行動を とるとみなす。詳 しくは

Adams(1963)

参照。

(8)

216

商 学 討 究 第

45

巻 第

3

は,自己申告に関 しては前述 した通 り職員側の意向を把握す る手段 として有効 性を認識 しているもの と考え られ,また,専門職については将来のポス ト不足 対策 としての期待感を反映 しているものと思われる。そ して,公募が民間より 低い評価 となっているのは,公的組織では新規施策 も財源や法制度による制約 を受けるため,( 組織の利益になるな らば管理者の自由裁量で新規事業に進 出 で きる民間企業 と異な り) ,公募 ポス ト自体が少な くかつ当該 ポス トにかか る 仕事が完了 した後に同等のポス トをあてが うことが困難 ( ポス トがなければ降 格 させざるを得ない) という状況が影響 していると考え られる。

8

人事制度の有効性

(%)

項 目

都道府県

政令都市

民間 (連合) 民間 (産能)

自己申告

100.0 100.0 93.8 59.7

ポス ト公募

40.0 40.0 72.2 51.8

専 門職

70.7 80.0 55.7

症 :

「産能」 は産能大学 (1992)によ る調査 を示す。

3.

人事考課の実態

( 1 ) 評価項 目

人事考課は人事管理の基礎情報を提供 し,報酬及び異動 ・昇進の決定並びに

能力開発の基本 となるものである。それゆえ,人事管理の成否は人事考課にか

かるといって も過言でない。公務員を始め我が国では人事考課がなされていて

も形式的で,同期採用者間では一定の年限まではほぼ同 じ評点をつけるだけで

あって積極的意義を兄いだ し難いとす る意見 もあるが,具体的な評価項 目の次

元に立 った議論 はほとんどなされていない。そこで, 自治体の勤務評定の一環

として行われている人事考課の評価項 目 ( 係長級)の提出を調査に際 して依頼

し,協力戴いた 8自治体についてとりまとめたのが,表 9である。 これを見 る

3

自治体を除き,業績 にかか る評価項 目を設定 しているものはな く,態度 と

能力を中心 とした評価になっていることがわかる。 これは,パブリックサー ビ

(9)

地方 自治体 における人事管理の実態 と環境変化への対応

217

スについて 目的の計量化が困難なため業績評価に制約が生 じていることを反映

しているとみなせ るが,

D

自治体のような正確性 ・迅速性 ・計画性等のスルー プ ッ トにかか る業績な らば測定 ・評価は可能であるか ら,イ ンプ ッ ト管理重視 と判断 され る。これを公表 されている民間企業の評価 と比較す ると( 表

10

参照) 態度及 び能力の評価項 目については類似項 目が多い こと,業績の評価項 目は全 ての民間企業 において考慮 されていることがわか る

ただ,注意深 く観察す る

と, 1)態度 に関 しては協調性及び規律性が 自治体 よりも民間企業 において多 く採用 されていること, 2 )能力に関 しては企画力,交渉力,統率力及び指導

9

人事考課の評価項 目

A B C D E

F

感 心 性 性 性 律 力 力

力 能

積 性 性 性 質 量 性 性

任 究 極

調

正 規

率 画

断 技

の の 率 頼

事 事

責 研 積

公 服

統 企

判 知

実 正 迅

仕 能 信 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇

〇 〇 〇

〇 〇 〇

〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇

〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇

〇 〇 〇 〇

〇 〇 〇 〇 〇 〇

〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇

(10)

218

45 3

10

民間企業 との比較

(係長級の項 目の採用率%)

体 民 間 企 業

感 性 性 性 性 能 力 力 力 力 力 力 力

性 性

調

画 速

︿

計 迅

100.0 87.5 62.5 25.0

100.0 87.5 37.5 12.5 75.0 100.0 75.0 87.5 12.5 25.0 12.5 12.5 25.0

100.0 62.5 100.0 75.0 62.5 5500500077557000008223555 555555577227723361331

注 :民間企業 は 日経連 (1992)

によ る。

力の採用率が 自治体の方が高いこと,が指摘できる。 この結果については, 自 治体では業績管理を行わず管理者個人の能力 ( 特に リーダシップ) ・資質に期 待 して組織の運営を行お うとしているとみなせ るか もしれない。

(2)

実績の評価

以上 は規定上の評価項 目であり,現実の評価項 目や各項 目の重み付けを示 し

たものでないため,係長級に対する評価項 目の概要 と総合評価への重みづけを

把握す るためアンケー ト調査で実績,態度及び能力の

3

分類 につきどのような

評価がなされているかを尋ねたところ,表11に示す通 り,評価様式を提出 した

自治体には現れていない実績 も勘案 した総合評価が圧倒的になっている。 これ

は,質問上の定義 として実績をアウ トプッ トとプロセスの両方か らなるもの と

(11)

地方 自治体 におけ る人事管理 の実態 と環境変化への対応

219

したことが影響 しているか もしれないが,具体的な実績の評価尺度についてみ ると定性指標中心の ものが大半であること ( 表

12

参照)か ら総合評定段階で考 慮 されていると考えるべ きと思われる

しか しなが ら,今後の評価の在 り方 と

しては仕事の実績を重視す る比率が高 く ( 表1

3

参照) ,業績 ・実力主義人事へ の意欲は窺われ る

6)。

表11 人事考課の評価項 目と重みづけ

( %)

都道府県

政令都市

能力,態度及び実績の

3

つを同等

80.5

能力重視

7.3

態度重視

4.9

実績重視

2.4

その他

4.9

100.0 100.0

表1 2 実績の評価尺度

( % )

都道府県

令都市

定量指標のみ 定量指標中心 定性指標中心 定性指標のみ その他 ( 総合)

2.8 16.7 36.1 22.2

22 .2

22.2 44.4 22.2 ll.1

1 00 .0

100.0

6

) もとより能力及び態度 と業績 とは相互 に独立的ではないか ら,人事考課の項 目が能

力 と態度 になっていることが即非 「 科学的」な制度 とみなすのは適切ではない。た

だ,能力及び態度 は業績の規定要因を構成するに して も必ず しも能力または態度が

優れているものが高い業績を もた らすわけではないこと,また,公務員の場合 は身

分保障されているため一端採用 された者 について管理者及び労働者側で能力及び性

格はある程度所与の もの とせざるを得ないか ら,業績を第一次的評価尺度 とす る方

が組織業績を向上 させ る点で合理的 と考え られるのである。能力 と業績,あるいは

性格 と業績 との関係 は産業心理学において分析 されてお り,たとえば前者について

Hunter(1986)

,後者 については

DayandSilverman (1989)を参照 された い。

(12)

220

商 学 討 究 第

45

巻 第

3

号 表 1 3 今後の在 り方

(各項 目を重視 す る比率 :%)

都道府 県

政令都市 民 間 (連合総研)

仕事 の実績

85.4 90.0

専 門的能 力

70.8 60.0

管理 的能 力

75.6 80.0

人柄 ・協調性等 56.1 50.0

年齢 ・学歴

2.4 0

公 的資格

7.3 10.0

採用試験 区分

2.4 0

研修経験

39.0 100

(3)

評価手続 き

1

)最終考課者

係長の人事考課 に対す る最終評定者が誰であるかを検討することは, 自治体 組織の人事 システムが青木

(1989)の 「

情報分権 と人事集 中」型である

J

組 織の性質を有 しているかを検証す る意義があるとともに係長の位置づけが自治 体間において異なる程度を組織論的に把握するために重要である。最終評定者 別 に整理 したのが表1

4

であ り,田尾

(1990)の分析 と異 な り人事権の トップ

( 首長)への集中がなされているというよりむ しろ人事課長または総務部長に 委任 されている状況を示 している。ただ し,各部局に委任 されているわけでは な く,総務部局 という間接部門において集中管理 されている場合が多いか ら, 各部局での裁量性 は制約 されているといえる。

14

係長の人事考課の評定段階

都道府県

政令都市

人事課長 まで 各部 (局)長 まで 総香部 (局)長 まで 知事 (市長) まで

55.0 22.5 20.0 2.5

30.0 40.0 30.0 0

100.0 100.0

2

)人事考課の所要時間

人事考課を客観的かつ公平に行い,同時に被考課者の納得を得 るには考課手

(13)

地方 自治体 におけ る人事管理 の実態 と環境変化 への対応

221

続 きの透明化の他,必然的に考課に時間をとることになる。業績給を導入 して いる英国公務員では一人当た り数時間の面接評価を行 っている

7)。

先 に対等 の立場で評価す る人事政策の導入率が低いことを指摘 したが,その観点か らは 評価にかける時間 も短いと想定 され,実際の ところ係長の人事考課は年間延べ 時間で‑人当た り

2

時間未満が約

6

割であって,最頻値は

30

分か ら

1

時間の問 である ( 表

15

参照) 。

15

考課時間

都道府県 政令都市

‑30

30分 ‑1時間 1‑ 2 2‑ 3 3‑

その他 ( 不明)

12.8%

25.6 17.9 7.7 7.7 28.2

0

37.5 25.0 0 12.5 25.0

100.0 100.0

3)

評価方法 ・考課者訓練

目標面接 とか業績給制度の導入を行お うとす ると, 目標 ・計画達成度 と報酬 が リンクす る必要がでて くるため評価 も相対的評価か ら絶対評価 とな らざるを 得ない。一定の目標基準を突破すれば,資格試験 と同様,全体の横並 び評価で 標準程度のランクであって も何 らかの成功報酬的な誘因を提供 しないと労働者 側の勤労意欲が低下す る恐れがあるか らである。年功か ら実力主義への変換を 唱 う自治体が相対的評価か ら絶対的評価への移行を主張す るのは当然である が, その現実を第一次考課についてみると表

16

に示すように都道府県で約

4

割, 政令都市で

6

割が絶対評価 となってお り,絶対評価‑の移行を裏付 けている

( ただ し,人件費における財源制約,具体的には業績給枠を別途設定 していな い ことか ら最終評定 は相対評価が多い) 。 しか しなが ら,評価の客観性 と公平 性を確保す る上で肝要な統一的な基準による評価の実施に関 し,基本 となる評

7)

英国の国家公務員についての人事考課 は,目標面接評価方式であ り期首,期中及び

期末の

3

度実施 され一人当た り延べ数時間要す る。山本

(1993)

参照。

(14)

222 45 3

価マニュアルの配付率は都道府県で約 7割,政令都市で 6割 となっている。評 価評定用紙の注意事項だけで評価を実施するのは評価者の個人的判断が介在す るだけでな く,他部門との評価 との合理的な調整 も困難にす る危険性があるた め,マニ ュアルの存在は必須の要件であるのに,何等のマニュアル もな しに行 われているのは人事管理 として も問題があろう

16

評価方法 ( 第一次考課)

(%) 都道府 県 政令都市 民間企業 (中部産業連盟)

絶対考課 43.6 60.0 66.0

相対考課 23.1 20.0 34.0

両者 の混合 33.3 20.0

100.0 100.0 100.0

そ して,約

3

割のマニ ュアル無 しで考課を行 っている考課者の訓練状況 も表

17

のように,実質的に訓練 ・研修を受 けていない比率が約

6

割 に上 っている ( 表

17

参照) 。考課者訓練の少なさは,我が国の横並び主義の人事管理の伝統 に起因する点 も少な くない ( 民間企業で も毎年

1

度以上実施 している割合は約

4

割)が,人事管理の人事部局への集中政策にもよると思われる。人事当局が 各原課の判断よりも自らの ヒア リング結果を重視す る人事管理手続 きは,人事 課の権力 ・権威を組織内で高める上で有効であるが,より秘密主義的になる側 面があること及び現場の主体性が無視 され組織へのコ ミッ トメ ン トが失われる 危険性があることを忘れてはな らない。

17

考課者訓練の実施状況

(%)

都道府県 政令都市 民 間企業 (中部産業連盟)

1 12.5 0

2 2.5 10.0

新任 時のみ

22.5 40.0

ほとん ど実施せず 20.0 20.0

実施せず 40.0 30.0

その他 2.5 0

25.9 12.1

53.4

8.6

100.0 100.0 100.0

(15)

地方 自治体 における人事管理 の実態 と環境変化への対応

223

( 4) 評価の客観性

人事考課 は最終評定者が原部局でない場合,第一次評定者 となる直属の上司 か ら複数段階の評定を経て最終評定が確定する。 したが って,第一次評定 と最 終評定の差異が人事管理部門の介入度 ( 修正行動の程度)及び評価の客観性を 反映 したものと解することができる。評価への現場 ・ライン部門の参画が人事 管理 と業績管理を結び付 ける上で重要であるとす る見解 8) が多 いように,各 考課者間の評価バイアスを減少 させる必要性は認め られるものの,ラインの評 価 と最終評価のカイ リが大 きくなるとライン管理者側の考課作業への動機付け

・意欲が低下する恐れがある。制度‑の無力感 と必要悪視である。そこで,評 定の一致度を調査 したところ,都道府県では 「ほぼ一致」と 「 異なる」場合が 同 じ程度であり,また,異なる場合の態様については,第一次評定の方が甘い ( 最終評定の方が厳 しい)率が約

8

割 となっていて,最終評定段階での修正が 広範 に行われていることを窺わせる ( 表

18,19

参照) 。 この理由としては, 自

表 1 8 人事考課の評定一致度

(%)

目 都道府県

政令都市

ほぼ一致 や や異 な る 異 な る

大 き く異 な る

48.7 30.8 20.5

0

19

評定差異の実態

項 目 都道府県

第一次考課の

方が

甘い 最終評定の方

が甘

い 第一次考課の

方が

厳しい 最終評定の方が厳 しい

6 3 . 2 5 . 2 1 0 . 5 21 .1 計 1 0 0 . 0

荏 :政令都市についてはデータ数が少ないため除いてい る。

8)

制度変革への参画の重要性を主張するものに人間関係論学派があり,参画 と満足度

及び文化の変化 に関係があるとす る。たとえば,

MillerandMonge(1986)

照。

(16)

224

商 学 討 究 第

45

巻 第

3

分の部下が昇給 ・昇進において少 しで も有利になるように配慮す ることにより 自己の管理下の労働者に仕事へのコ ミッ トメン トを増大 させたいという現場管 理者の欲求に したが った行動 とみなせる側面があるが,一方で考課者訓練や評 価の合理的実施への手続 き面の不十分性による点 も少な くないと思われる。

4.

昇進管理

( 1 ) 昇進基準

公務員の場合は民間大企業以上 に年功が重視 され,同期間で昇進格差を設け る時期をなるたけ遅 くして,昇進競争を通 じた高いモラールの維持を達成 しよ うとしているといわれる。中央官庁で同期が事務次官に昇進す ると,残 りの者 は全員勇退す る慣例 はその典型である。 しか しなが ら,先に示 したように抜擢 人事 はかな り広範に行われていることか ら,現実の昇進政策はどのようになっ ているかを調べたところ,表21 に示す通 り最後まで同時昇進させ る自治体 はゼ ロであり,多 くは係長級まで横並び昇進政策を採 っていることがわかる。 これ を労働省

(1993)調査 と比較す ると,民間企業の方が昇進格差を設 ける段階

が早 く,最 も多いパターンは採用後

5

年間程度まで同時昇進政策で以後は実力 主義 となっている。 自治体で係長級になる時期は早い者で採用後

15

年であるが 民間で

15

年 まで同時昇進を行 っている企業 は

5.3%

と自治体の

48.8%

に比べ圧 倒的に少ない状況になってお り,同期採用 ・同時昇進及び遅い選抜 という慣行 は公務員の世界で存続 しているが民間では過去の ものにな りつつ あるといえ る。

21‑ 1

同期採用者の昇進政策 ‑自治体 ‑

(%)

項 目

都道府県 政令都市 都道府県 政令都市

最初か ら実力主義 14.6 70.0 19.5 90.0

係 長 まで 同 時昇 進

48.8 30.0 58.5 10.0

課 長 補 佐 まで 同 時

31.7 0 17.1 0

課 長 まで 同 時

2.4 0 2.4 0

退 職 まで 同 じ 0 0 0

0

その他

2.4

0

2.4

0

100.0 100.0 100.0 100.0

(17)

地 方 自治体 にお け る人 事 管理 の実 態 と環 境 変化 へ の対 応

225

21‑2

‑民間企業 ‑

( %

)

項 目

今 後

最初か ら実力主義

5

年 まで同時昇進

10

年 まで

15

年 まで 退職 まで

24.3 48.7 19.4 5.3 2.3

39 .

2

4 6 . 4 1 3 . 3

0 . 4 0 . 4

100.0

1 0 0 . 0

次に具体的な係長への昇進決定に際する評価項 目 ( 現行)については,都道 府県において係長に対す る人事考課項 目と同 じく能力 ・態度及び実績を同等に 評価す るとす るものが41

.8%

と トップであ ったが,今後重視 しないとされた 年齢 ・学歴及 び採用試験 の要素がそれぞれ21

.5,22.8%

となっている。 この 結果 は年功 と試験区分が現状でかな り重要 な項 目になっていることを想定 さ せ,大卒者に対す る試験が上級 と中級に分かれている自治体においてより顕著 な ものとなっている

22

係長への昇進評価項 目一現行 ‑

( %)

項 目 都道府県 政令都市

能力 ・態度 ・実績を同等 能力重視

態度重視 実績重視 年齢 ・学歴

採用試験

その他

41.8(

1) 4 6 . 2( 1 )

7.6

1 5 . 4( 2 )

1.3

1 5 . 4( 2 )

3.8

0

21.5(3) 7.7 22.8(2) 15.4

( 2 )

1.3

0

100.0

1 0 0 . 0

注 :括弧内は順位である。

( 2) 昇進格差

公務員の昇進格差を検討する場合 には,試験区分による格差 と能力 ・実績に

よる格差を区分す る必要がある。後者の格差は国家公務員法及び地方公務員法

により人事 はメリッ ト主義に基づ くこと ( 国家公務員法第36,37 条及び地方公

務員法第

15,17

条)になってお り,また,高い能力 ・業績 と報奨を連動 させ る

(18)

226

45

3

ことは能率 ・効率的な組織運営及び情実人事の防止 として合理的であるか ら, 理念 として問題 はない。議論になるのは同 じ学歴でありなが ら採用試験が異な るというだけで 「 差別」を受ける前者の 「 不当」格差である ( ただ し,試験区 分による格差 は公平な選抜が実施 され能力を客観的に評価 し,かつ,その判定 された能力 と職務に従事 して必要 とされる能力 とに合理的な関係がある限 り一 概に 「 不当」 とはいえないが)。一般事務職 に関 して大卒者程度 として試験を 1 本化 している自治体 も全体の約半数に上 っているが,残 りの自治体は学歴 と 試験区分が一致 しないのである。大卒者が少なか った時代 はともか く大卒者が 地方公務員の約

4

割を占めるようになった現在では,一皮の試験で生涯のキャ

リアが相当程度規定 される制度 は組織の安定管理 というメ リッ トを有す るもの の職員内部の不満は大 きいものがある。 こうした現状についての人事管理者側 の意見は表

23

に示すように弾力的適用を図 り,改善策 として も上級職でポス ト を独 占しないという消極的対応である。中級職を廃止 して大卒者に一本化する

ことは簡単であるが,そうす ると採用者が多数になり昇進管理が重要にな り,

23‑1

試験区分 による昇進格差 に対する意見

(%)

都道府県 政令都市

やむを得 ない 7.3

弾力的運用をす る 68.3 致 し方 ない

格差 はない 学歴別試験 の実施 昇進試験 を行 う

2.4 17.1

4.9

0

0 70.0

0 0 10.0 20.0

100.0 100.0

23‑2

改善策

(%)

都道府県 政令都市

中級職 の廃止 中途での昇進選抜 上級職での独 占回避 実力主義 の徹底 その他

13.8 13.8 44.8 20.7 6.9

25.0 50.0 25.0 0 0

100.0 100.0

(19)

地方 自治体 における人事管理 の実態 と環境変化への対応

227

24

課長への昇進格差

( 最 も早い者 と平均者の年齢差)

都道府県

政令

都市

1 2

3 4 5

2.5 12.8 38.5 23.1 7.7

6

1 5 . 4

l

l.1 22.2 33.3 33.3

1 0 0 . 0

100.0

客観的な業績評価尺度に欠けるという人事管理者の悩みが増すか らであろう。

この点で係長昇任試験を都市部の自治体が実施 しているのは,公平な昇進機会 保障の観点か ら一つの方向として評価 されてよい。

それでは,大卒男子 という同学歴 ・同性においてどの程度の昇進格差が生 じ ているかを知 るため,最 も早 く本庁課長に達 した者 と平均的な者 との年齢差を 採 ってみると,表

24

のように都道府県では

3‑4

才で約

6

割を占めるのに対 し 政令都市では 6 才以上の差がつ く場合 も約 3 割あることがわかる。連合総研の 調査では民間企業では約

4

才の格差であるか ら,自治体において特に昇進格差 が小 さいとはいえない。先の昇進政策の調査結果で官民 とも係長以降は少な く

とも実力主義による人事管理がなされていると考え られるか ら,課長の前段階 で選別がなされ,課長に達するものについては一定の質が確保 されているとみ なすべきか もしれない。

実際,大卒男子職員の昇進 について最高位 と最下位のパ ター ンを整理す る

と,40 才では係長 と一般職員の組み合わせが トップであるのに対 して,50 才で

は課長 と一般職員 との組み合わせが トップになってお り,課長になるの も大変

であることを示 している ( 表25 参照) 。また,最 も早 く課長に昇進 した者の年

齢分布 は表26のようになっていて,40 代後半が平均で民間大企業の部長 に相当

す る年齢である。 したが って, 自治体の係長 は企業の課長に相当す るポス トと

みなす ことがで き, 先の係長昇進の評価項 目( 表

22)

を 日本労働研究機構

(1993)

の課長昇進で重視 され る項 目と対比す ると,民間では能力 ・業績が トップと

(20)

228

45

3

表25 昇進格差 ( 最高位 と最下位)

40

才 時

50

才 時

都道府県

政令

都道 府県

政令都市

・補佐 と‑ 一般職員

32.5 0 2.

6 0

・部長 と一 一 一般 職員 0

0 23.7 90.0

・補佐 と係長

5.0 0 0

0

・課長 と係長

5.0 0 0

0

・部次長 と係 長 0 0

7.9

0

・ 部次長 と補佐

0 0 0.5

0

・格 差 な し

5.0 0 0

0

・その他

0 0 7.9

0

26

都道府県 における課長昇進

最 も早 い者 平均者

40 ‑ 44

27.5 45 ‑ 47 35.0 48 ‑ 50 37.5

51 ‑ 53 0

0

20.5 33.3 46.2

100.0 100.0

な ってお り年齢 ・学歴要素 はほとん ど重視 されていない状況であ り,公務員の 人事管理 ( 昇進) における年功制 と学歴主義の強 さを物語 っている。

(3)

配置転換

同期採用者 は同 じ職場 に配属せず多 くの職場を体験 させ,同期採用者 間の連 帯意識を醸成す るとともにお互 いの競争を促進す ることによ り人材育成 ( 管理 者の選抜) と組織効率を高めるのが 日本的雇用慣行であるとされ,官僚機構 も

その例外でない とされて きた。いわゆるゼネラ リス トの育成が重視 されて きた か らであるが,昇進 ・選抜 は相対業績評価を とらざるを得 ないか ら,異 なる配 属政策が同期採用者 間の負 の相互干渉を抑止す る意義 も

GibbonsandMur‑

phy (1990)

らの労働経済学者か ら指摘 されてい る。同期採用者間の競争が厳

しす ぎると互 いの業績を低下 させ よ うとす る妨害行動を とる可能性があ り, こ

の可能性 は別の部署 に配置す ることによ り物理的に防止で きるか らとす る説で

(21)

地方 自治体 にお け る人事管理 の実態 と環境 変化 へ の対応

229

ある。 しか しなが ら,今回の調査では異なる職場 ( 課または事務所の単位)に 配置するように している自治体 は,政令都市では

70%

と高率であったが都道府 県では

36.6%

にす ぎず,必ず しも同期採用者が異 なる職場 に配置す る政策が 採 られているとはいえない。そ して,表

27

に示すように異なる職場に配置する 理 由は,人材の適正配置を挙げるものが トップであり,次いで多 くの職場を経 験 させるというゼネラ リス ト育成政策が続 き, この両者で

9

割を超えるが,労 働経済学の指摘す るような負の相互交渉を防止す るとす るものはなか った。現 在の地方公務員で同期採用者間の昇進競争があるとはいえ,イ ンフォーマルな 同期会等を通 じて中傷 ・妨害等の行動が抑制されているのか,あるいは攻撃的 なタイプの気質の者が少ないのか もしれない

9) 0

27

異なる職場 に配置する理 由

( %)

都道府県

政令都市

人材配置のバ ランスを維持

競争促進

多 くの職場を体験 させる お互いや りに くい

結託 ・共謀を防止 その他

50.0 0 40.9

4.5 0 4.5

5 8 . 3 0 4 1 . 7

0

0 0

100.0 100

. 0

5

.賃金管理

( 1 ) 特昇 ・勤勉手当の運用

公務員の場合,上位等級への昇格はメ リッ ト主義によるとされているが,莱 質 は能力 ・業績以外の経験年数 と試験区分により管理 されている面が少な くな い。 これは,たとえば国家公務員の場合には人事院規則九 一八第

20

条第

1

項第

2

号及びその運用通知により,職員を昇格 させ る場合には必要経験年数 または

9

)筆者が先 に係長級 に対 して行 った意識調査では,昇進 ・昇格で同期 に格差をっけ ら れた場合の対応行動 として妨害行動 に訴え る者は皆無であった。 詳 しくは山本

(1994

a)

参照。

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