人 事 管 理 と 業 績 管 理 の 関 係
│ │ ト ヨ タ 自 動 車 に お け る 制 度 と 実 態 │ │
樋 口 純 平
1 本 稿 の 課 題
1︱1分析視角
本稿の目的は︑評価・処遇制度の設計と運用実態に注目し︑日本を代表する自動車メーカーであるトヨタ自動車の事
例から︑人事管理と業績管理の関係を明らかにすることである︒ここで中心的な検討対象とするのは︑同社において
﹁事技職﹂︵事務・技術職︶と呼ばれるホワイトカラーの組合員と管理職の人事管理である︒
一九九〇年代以降︑多くの日本企業で成果主義というコンセプトにもとづいた評価・処遇制度の改革が進められてき
た︒それは︑年功的昇進・昇給を抑制し個々人の評価に応じた処遇格差を拡大させることにとどまらず︑評価自体の基
準として業務成果を明示的に組み込もうとする取組みであったといえる︒しかし︑非定型的・創造的な業務に従事する
ことの多いホワイトカラーの業務成果を正確に測定することはきわめて難しく︑その評価には本来的な困難が伴わざる
をえない︒こうした問題に対する一つの理論的かつ実際的なアプローチとして︑本稿では人事管理と業績管理の関連づ
けに注目する︒
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民間企業では︑多くの場合︑収益や売上等の組織業績を安定的に確保してゆく必要から︑業績管理を通じた組織的統
制が行われているものと考えられる︒その基本的な構造は︑次のように一般化することができる︒通常︑どのような企
業でも︑収益︑売上︑あるいは生産性といった企業組織としての目標を達成するための指針として︑毎期の経営計画を
策定する︒全社的な経営計画は︑各部門の業容に応じた業績目標として具体化され︑各部門の業績目標は︑部︑課︑係
等の組織下位レベルへとブレークダウンされる︒組織の各レベルでは︑会議体等を通じて︑ブレークダウンされた業績
目標の達成状況や業務計画の進捗状況が定期的にモニターされ︑目標達成のための方策が状況に応じてくり返し検討を
加えられ実行に移される︒組織の各レベルにおけるこうした活動の積み重ねによって︑部門の業績目標の達成︑ひいて
は全社的な経営計画の実現が目指される︒すなわち業績管理とは︑経営計画を組織下位レベルの業績目標としてブレー
クダウンしてゆく仕組みであり︑同時にこれを達成するための業務の進捗を管理する仕組みであるといえる︒
一方︑こうした業績管理の仕組みと対応関係をもった人事管理の下では︑組織目標からブレークダウンされた個々人
の業績目標の達成度を業務成果として評価し︑処遇に反映させることになる︒すなわち︑定性的・定量的に定義するこ
とのできる組織目標との関連付けによって個々人の業務成果を把握し︑これを評価・処遇の基準に据えるということで
ある︒したがって︑業績管理と対応関係をもった人事管理の下では︑評価・処遇制度に︑組織目標と連動した個人レベ
ルの業績目標へと︑従業員の労働意欲を方向づけてゆく仕組みが組み込まれるということになる︒本稿では︑このよう
︵1︶な評価・処遇制度のあり方を︑便宜的に成果主義的評価・処遇制度と呼ぶことにしたい︒
こうした人事管理の成否を決めるのは︑最適な制度の設計と適切な運用である︒成果主義的な評価・処遇制度の設計
には︑業績目標の達成度のみを評価するのか︑あるいは目標達成に向けたプロセスや業績目標とは直接的に関係しない
要素も評価の対象に含めるのか︑評価結果は処遇のすべてに反映させるのか︑あるいは賃金の一部や賞与に限定するの
かといった多様なヴァリエーションが存在しうる︒また︑最適な制度設計が行われていたとしても︑それが適切に運用
人 事 管 理 と 業 績 管 理 の 関 係
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されていなければその効果は半減する︒本稿で分析の中心に据えるのは︑トヨタ自動車においてこうした成果主義的な
評価・処遇制度がどのように設計され︑運用されてきたのかという視角である︒
1︱2﹁テーマ管理﹂と評価・処遇制度改定の概要
トヨタ自動車では︑一九九〇年代に︑全社的な評価・処遇制度の改定が二度行われている︒一つは︑一九九〇年に実
施された制度改定であり︑ここにおいて業績管理と一定の関連性をもった評価・処遇制度が導入されたものと見ること
ができる
︵ 以 下 で は ︑ ﹁ 一 九 九 〇 年 改 革 ﹂ と 略 ︶
︒この改革は︑前年におこなわれた組織のフラット化とそれにともなう職位・資格体系の見直しを受けて実施されたものであり︑ここで採用された﹁テーマ管理﹂の考え方は︑トヨタにおける
成果主義的評価・処遇制度のベースとして現在に至るまで活用されている︒
﹁テーマ管理﹂とは︑後に詳しく述べるように︑部を主な単位とする組織目標にもとづいて︑組織の最小の構成単位
であるグループの編成をおこない︑さらに各グループのテーマを個々のメンバーの重点テーマとしてブレークダウンす
ることを企図したものである︒評価・処遇制度との関係からいえば︑上司との目標面接を通じた個人のテーマ設定↓テ
ーマの遂行と進捗管理↓テーマの遂行状況の評価とフィードバック︑というサイクルとして整備されている︒すなわち
﹁テーマ管理﹂には︑トヨタの業績管理と人事管理を接合するものとしての位置づけが与えられている︒
一九八九年に実施された組織のフラット化︑そして一九九〇年に﹁テーマ管理﹂の導入と合わせて実施された全社的
な制度改定の概要は︑以下のようなものであった︒
漓
の︑従来の部・課・係制組象織が︑部・室・グルーに対一ッ九八九年の組織のフラトを化では︑事務技術系職場プを単位とする大括りでフラットな組織へと再編された︒また︑職位は管理業務を担うマネージャー職と専門能力の
発揮が期待されるスタッフ職とに分けられ︑前者には部長と新設された室長のみが位置づけられることとなった︒
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人 事 管 理 と 業 績 管 理 の 関 係
これとともに︑係長級以上の資格の名称変更がおこなわれている︒
滷
式それまでの総合考課方がす︑能力要件にもとづいる価一令九九〇年改革では︑年・評能力・業績を総合的にて﹁保有能力﹂を評価する﹁能力考課﹂と︑重点テーマにもとづいて﹁業績・取組み姿勢﹂を評価する﹁期間考課﹂
へと二元化された︒これに対応して︑管理職では︑積上げ方式の﹁本給﹂一本であった従来の賃金制度が︑﹁能力
考課﹂を反映する﹁本給﹂と﹁期間考課﹂を反映するテーブル方式の﹁職能給﹂へと二元化されている︒また︑組
合員では︑﹁基本給﹂と集団能率給である﹁生産手当﹂から成っていた制度が︑﹁基本給﹂︑﹁生産手当﹂︑﹁年令
給﹂︑﹁職能給﹂という四本立ての体系へと改定された︒賞与については︑管理職と組合員のいずれも考課反映分で
ある﹁職能配分﹂の割合が高められており︑ここには﹁期間考課﹂が反映される仕組みとなっている︒
二つ目の全社的な改革は︑一九九六年と一九九九年にそれぞれ管理職と組合員を対象に実施された一連の評価・処遇
制度改定である︒一九九六年の管理職を対象とした改革は﹁チャレンジ・プログラム﹂︑一九九九年の組合員を対象と
した改革は﹁プロ人材開発プログラム﹂と呼ばれている
︵ 以 下 ︑ 前 者 に つ い て は ﹁ C P 改 革 ﹂ ︑ 後 者 に つ い て は ﹁ P P 改 革 ﹂
と 略 ︶
︒ここでの︑制度改定の概要は以下のようなものであった︒漓
件れ︑新設された能力要に止もとづいて﹁発揮能力さ廃C課P改革では︑﹁能力考﹂もと﹁期間考課﹂がいずれ﹂を評価する﹁職能考課﹂と︑重点テーマ及び査定期間内に遂行された業務全般にもとづいて﹁業績﹂を加点的に評
価する﹁業績加点考課﹂が導入された︒これにともない︑﹁本給﹂は廃止され︑資格別に決まるテーブル方式の
﹁資格給﹂が新設された︒そして︑従来の﹁職能給﹂には﹁職能考課﹂が反映され︑﹁業績加点考課﹂は賞与のみに
反映される仕組みとなっている︒賞与については︑﹁基礎賃金比例分﹂が廃止され︑﹁職能考課﹂を反映する﹁職能
配分﹂と﹁業績加点考課﹂に応じた加算額のみで構成されることとなった︒また︑この改革において︑トヨタの評
価・処遇制度における運用上の主要な規範となってきた年次別管理の見直しが行われている︒
人 事 管 理 と 業 績 管 理 の 関 係
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(管理職)1990年改革 CP改革
(組合員)1990年改革 1993年改革 PP改革
1989 1990 1993 1996 1999 評価・処遇制度改定 賃金制度改定 評価・処遇制度改定
(フラット化・テーマ管理導入) (年次別管理見直し・育成体系整備)
滷
こ制度の改定がおな評われている︒賃価でPPP改革では︑C改ち革と同様なかた金制度については︑従来の賃金項目が全て廃止され︑賃金等級別に決まるテーブル方式
の﹁職能基準給﹂と︑﹁職能考課﹂が反映される積上げ方式の﹁職能個人給﹂から成
る二本立ての制度となった︒また︑賞与については︑﹁職能配分﹂から考課反映分を
分離し︑ここに基幹職の﹁業績加点考課﹂に相当する﹁賞与考課﹂を反映する仕組み
となっている︒また︑従来一〇段階あった資格が能力の実質的な開発フェーズに応じ
た三段階の資格に大括り化され︑それと共に新たな育成体系の整備がなされた︒
この他にも︑一九九三年には︑組合員を対象とした賃金制度の改定が行われている
︵ 以
下 ︑ ﹁ 一 九 九 三 年 改 革 ﹂ と 略 ︶
︒後に詳しく述べるように︑個々の制度改定には固有の目的があるが︑これらの改革に通底する基本的な制度改定の方針は︑年令要素の縮小と個人の能
力・業績要素の一層の拡大であるといってよい︵以上︑図1参照︶︒本稿の課題は︑各々
の改革における制度の改定内容とその運用実態をトレースすることで︑トヨタにおける成
果主義的な評価・処遇制度が︑評価・処遇体系の中でどのように位置づけられ︑展開され
︵2︶てきたのかを明らかにすることである︒
1︱3先行研究との関係
トヨタ自動車の人事管理を対象とした研究は︑すでに一定の蓄積がなされている︒一九
九〇年以降の研究に限定しても︑野村
﹇
1993﹈
︑畑﹇
1995﹈
︑石田・藤村・久本・松村﹇
1997﹈
が︑一九九〇年改革と一九九三年改革における制度改定の経緯を明らかにしてい図1 評価・処遇制度改定の経緯
(a)概要
― 99 ―
人 事 管 理 と 業 績 管 理 の 関 係
昇格 賃金 総合考課
(能力・業績・年令)
賞与
昇格 賃金 能力考課
(保有能力)
期間考課
(業績・取相姿勢) 賞与
昇格 賃金 職能考課
(発揮能力)
業績加点考課
賞与考課(業績) 賞与
(1990年以前) (1990年改革) (CP改革・PP改革)
本 給
(100%)
【資格×昇給考課】
(1990年以前)
︵ 賃 金
︶
︵ 賞 与
︶
本 給
(40%)
【資格×能力考課】
職能給
(60%)
【資格×期間考課】
(1990年改革)
職能給
(60%)
【賃金等級×職能考課】
資格給
(40%)
【資格】
基本給比例分
職能配分
基礎賃金比例分
(30%)
職能配分
(70%)
職能配分
(100%)
加算額
(CP改革)
基本給
(40%)
【資格×昇給考課】
生産手当
(60%)
【基本給×支給率】
(1990年以前)
︵ 賃 金
︶
︵ 賞 与
︶
基本給
(40%)
【資格×能力考課】
生産手当
(40%)
【基本給×支給率】
年令給(10%)
職能給(10%)
(1990年改革) (1993年改革)
基本給
(40%)
【資格×能力考課】
年令給(20%)
【学令】
職能給
(40%)
【資格×期間考課】
職能個人給
(50%)
【資格×職能考課】
職能基準給
(50%)
【賃金等級】
基本給比例分
(75%)
職能配分(25%) 職能配分
(40%)
基礎賃金比例分
(60%)
基準額(40%)
基礎賃金比例額
(60%)
加算額
(PP改革)
(b)評価制度の推移
(c)賃金・賞与の推移(上:管理職、下:事技系組合員)
※図中の斜線部は、定期昇給的性格を持つ賃金項目の段階的な縮小・廃止を表してい る。また、一九九〇年以前の管理職の賞与について、点線部及び双方向矢印は、資 格によって各要素の配分比率が異なり、高資格者ほど職能配分の比率が高いことを 示す。PP改革以降の事技系組合員における賞与の点線部については、従来の職能 配分原資四〇%が、「基準額」(定額部分)と「加算額」(考課反映分)とに分割・
移行されたことを示している。
出典 トヨタ自動車グローバル人事部資料。賞与部分は、ヒアリング記録にもとづい て筆者が作成。
人 事 管 理 と 業 績 管 理 の 関 係
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る︒また︑猿田
﹇
1999﹈
︑杉山﹇
2004﹈
は︑一九九〇年改革からPP改革以降に至る制度改定の経緯を概説しているし︑︵3︶畑
﹇
2000﹈
はPP改革について詳しく紹介している︒これらの研究は︑いずれも人事管理と業績管理の関係に注目したものではないが︑議論の前提となる評価・処遇制度の基本的な設計に関する記述ついてはある程度の重複を避けられな
い︒そこで︑本稿では特に次の諸点に留意した検討をおこないたいと考える︒
一つは︑組合員だけでなく管理職の評価・処遇制度についても明らかにすることである︒先行研究は︑基本的に組合
員を検討対象とすることが多く︑非組合員である基幹職の人事管理の実態についてはこれまで殆ど明らかにされてこな
かった︒上掲の猿田
﹇
1999﹈
︑杉山﹇
2004﹈
は︑CP改革以降の管理職の制度設計について一部紹介しているが︑そこにおける事実発見は限定的である︒成果主義的評価・処遇制度の具体的展開を明らかにするためには︑成果が組合員以上
に明確に問われていると考えられる基幹職の人事管理について詳しく検討する必要があろう︒二つ目は︑制度改定の経
緯にとどまらず︑その運用実態を明らかにすることである︒この点については︑上掲の石田・藤村・久本・松村
﹇
1997﹈
が︑一九九〇年改革からPP改革までの間に適用されていた評価・処遇制度の運用実態を詳らかにしている︒しかし︑ここで中心的な検討対象とされているのは技能職であるために︑ホワイトカラーである事技職と基幹職につい
ては十分にカバーされていない︒また︑調査時点がCP改革・PP改革以前であるため︑それ以降の実態については明
らかにされていない︒特に︑成果主義という視角からは︑ホワイトカラーである事技系社員を対象とした評価制度の運
用実態を明らかにすることが不可欠である︒三つ目は︑改革の各時点において十分に明らかにされてこなかった評価・
処遇制度改定に関連する重要な論点を詳述することである︒ここには︑組織のフラット化の実態とその後の経緯︑賞与
の配分方式の詳細︑そして年次別管理見直しの意味等が含まれる︒また︑直近の二〇〇二年〜二〇〇四年に行われた一
部の制度改定についても︑可能な範囲で言及する︒なお︑賃金制度の改定をめぐる労使の議論等︑既に先行研究におい
︵4︶て詳述されている事項については︑必要最低限の検討を加えるにとどめたい︒
― 101 ―
人 事 管 理 と 業 績 管 理 の 関 係
2 組 織 の フ ラ ッ ト 化 と ﹁ 一 九 九 〇 年 改 革 ﹂
2︱1組織のフラット化
トヨタでは︑一九八九年に組織のフラット化とそれにともなう職位体系の見直し︑そして係長級以上の資格の呼称変
更がおこなわれた︒その後︑CP改革において︑管理職の資格の呼称変更が︑また︑PP改革において組合員の資格の
大幅な見直しがおこなわれているが︑組織編成と職位体系については︑基本的にこの時かたちづくられた枠組みが現在
まで維持されているものと考えてよい︒
組織のフラット化では︑図2
秬
課の下に二〜三のを部ひとまとめにし長︑の部ように︑従来の・が課・係制の組織た室と組織の最小の構成単位であるグループから成るフラットで大括りな組織へと再編された︒そして︑室には室長が︑
またグループにはマネージャー職とスタッフの中間的な位置づけを与えられたスタッフ・リーダー
︵ 以 下 ︑ ﹁ S L ﹂ と 略 ︶
が置かれることとなった︒グループは︑SLを含む一〇〜二〇人程度のスタッフによって構成され︑ここには部次長ク
ラスである主査から一般社員に至る幅広い層の従業員が配置される︒また︑部長は︑主査︑主担当員︑担当員の中から
SLを任命する他︑重点テーマやプロジェクトの内容に応じてグループを柔軟に改廃することができる︒以上の改革に
より︑従来一七三部七五八課であった組織は︑一七七部六三三室・課へと再編され︑﹁担当員↓係長︵↓副課長︶↓課長
↓次長︵↓副部長︶↓部長﹂という重層的な業務の決裁ルートは︑﹁グループ・メンバー↓SL↓室長︵↓部長︶﹂へと
大幅に簡素化された︒
組織のフラット化と合わせておこなわれた職位体系の見直しでは︑次長以下の職位を廃止し︑部長及び新設された室
長のみを事務技術系組織の責任者である﹁マネージャー職﹂とした︒それ以外の職位については﹁スタッフ職﹂とし︑
人 事 管 理 と 業 績 管 理 の 関 係
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担当者 係長 係長 係長 係長 係長 係長 係長 係長 係長 係長 係長 係長 係長 課長
副課長 主担当者
主査 次長
部長 副部長
次長 課長 課長
副課長
課長 副課長
課長
係長
グループ 部付
グループ
グループ 室長
部長
室長
グループ グループ グループ グループ
理 事
参 事 1 級 参 事 2 級 副参事1級 副参事2級
主 務
上級指導職1級 上級指導職2級 指導職1級 指導職2級 指導職3級 準 指 導 職 一般職1級 一般職2級 一般職3級
職能資格 役 職 部 長 副部長
係 長 次長・部長代理 課長・副課長
担当員 主査 主担当員
理 事
部 長 級 次 長 級 課 長 1 級 課 長 2 級 係 長 級 上級指導職1級 上級指導職2級 指導職1級 指導職2級 指導職3級 準 指 導 職 一般職1級 一般職2級 一般職3級
職能資格 役 職 マネージャー職 スタッフ職
スタ ッフ リ ー ダ ー 部 長 室 長
担当員 主 査 主担当員 図2 組織のフラット化
(a)組織
(b)職位・資格体系
出典 『労政時報(第2944号)』(1989年9月29日)をもとに作成。なお、技能系部 署の職位体系については省略している。また、後に言及するように、図中のス タッフ・リーダーについては、2002年にグループ長職と改名されており、職 位としての位置づけにも若干の変化が生じている。
― 103 ―
人 事 管 理 と 業 績 管 理 の 関 係
組織運営よりも専門知識・技術を活かして主に日常業務や重点テーマの解決に取り組む層と位置づけている︵図2
秡
参照︶︒これにより︑従来六︑二四〇人いた職制の数は︑マネージャー職及びSLに任命されたスタッフ職の計二︑〇六
〇人へと減少している︒なお︑このマネージャー職とスタッフ職は︑仕事上の役割の違いであり︑同じ資格であれば同
じ処遇である︒また︑職位体系の見直しにともなって︑係長級以上の職能資格が従来の職位に相当する﹁部長級﹂︑﹁次
長級﹂等の名称に改められている︒
以上の改革における主要な目的としては︑次のような点があげられる︒一つは︑業務の決裁ルートと命令系統を簡素
化することによる意思決定の迅速化である︒二つ目は︑職位にこだわらずに能力に応じた仕事をし︑創造性を発揮でき
る職場づくりをおこなうことである︒そして三つ目は︑戦略的な課題に即応できる柔軟な組織体制と高能力者の能力を
十分に引き出せる仕組みの構築である︒この内︑1〜2の目的については︑若手社員の業務遂行上の裁量性を高め︑能
力の有効活用を行うという狙いが含意されていた︒トヨタでは︑一九八八年から意思決定の迅速化を促すために︑起案
者↓確認者↓決裁者の三人で決裁を済ませる﹁決裁のハンコ3つ運動﹂を展開しており︑組織のフラット化ではこれを
制度として定着させるとともに︑組織下位への権限委譲を積極的に進めている︒また︑職位にこだわらない職場づくり
を進めるための取組みとして︑社内での職位や資格による﹁〜部長﹂︑﹁〜室長﹂等の呼び方を廃止し︑役員に至るまで
﹁〜さん﹂と呼ぶ﹁
!さん
"希譲や上下関係の薄の化を促す取組みに委限づっけ運動﹂もおこなて権きた︒こうした︑よ
り︑若手社員の積極的な企画・立案とそれを通じた能力の活用を促し︑組織の活性化をはかろうとしたのである︒ま
た︑他方においては︑﹁課長﹂︑﹁係長﹂といった従来の役職を失った多数の職制のモラール・ダウンを防止するために
資格の名称変更をおこない︑対外的には名刺等に従来の役職名に相当する資格の肩書を用いることができるようにして
いる︒以上のような目的と取組みは︑組織のフラット化における重要な背景をなすものであった︒しかし︑本稿のコン
テクストからより重要と考えられるのは︑評価・処遇制度の改定と関係する第三の目的である︒以下では︑この点につ
人 事 管 理 と 業 績 管 理 の 関 係
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︵5︶いて︑資料とヒアリング記録をもとに少し詳しく検討したい︒
組織のフラット化における第三の目的であった﹁戦略的な課題に即応できる柔軟な組織体制と高能力者の能力を十分
に引き出せる仕組みの構築﹂は︑一九九〇年改革において導入されたテーマ管理を梃子として推進されている︒このテ
ーマ管理とは︑毎期の部・室目標にもとづいてグループの編成をおこない︑さらにそれを個々の従業員に重点テーマと
してブレークダウンしてゆくことを企図したものである︒その基本的な仕組みは︑次のように整備されていた︒
まず︑﹁各部・室において年初に部・室方針を決定︒室長は各グループの重点テーマ及びグループ編成を起案︑部長
はその決定を行い︑SLはその過程でテーマ設定及びグループ編制に関する意見具申を行う﹂︒﹁上司・部下間では︑面
接の場で個人のテーマ設定に関する話し合いを行い︑組織の目標︵テーマ︶との整合性などを見たうえで決定﹂する︒
テーマの遂行にあたっては︑﹁各グループは設定されたテーマの達成及び日常業務の適切な推進を目標とし︑SLがそ
の責任者となって業務を遂行する﹂︒また︑﹁部長・室長は組織のテーマにつき︑日常の進行管理を行い︑年央・年末に
点検・評価を実施﹂︒﹁組織の立場から︑各メンバーに分割されたテーマが完全に遂行されたかどうかを評価することの
他に︑個人の指導・育成の立場から︑テーマの点検・評価を通じて各人が反省し︑次のテーマ︵目標︶・能力向上に向
︵6︶けて︑さらに意欲づけを図っていくこと﹂とされている︒
組織のフラット化との関係からテーマ管理導入の目的として意識されていたことは︑﹁
漓
重点テーマを中心とした業務遂行の定着から︑柔軟な組織編成の定着をはかる︑
滷
を築構の制体行遂務業たい置き日重に革改ずれさ流に務業常をはかる︑
澆
人ることにより有効な材与活用をはかる﹂というえをスにタッフ化した人︵特高マ能力者︶に適切なテー三︵7︶つの点であった︒また︑トヨタの取締役人事部長︵一九九九年当時︶である木下光男氏は︑特に
澆
の点を強調して次のように述べている︒﹁スタッフ職を創設し︑部長・室長以外は全員スタッフ職という組織体制にドラスティックに切り
替えたのは︑マネージャー職以外の人は管理業務に縛られたり組織に埋もれたりせずに︑専門性と創造性を発揮して新
― 105 ―
人 事 管 理 と 業 績 管 理 の 関 係
たな課題に積極的に取り組んでもらいたいという会社の考えを全社に対して明確に示すため﹂であった︒そして︑こう
した方向性を促すために﹁日常業務・ルーティン業務だけではなく︑全員がチャレンジ性の高いテーマに挑戦するよ
︵8︶う︑﹁重点テーマ登録制度﹂を設定した﹂と述べている︒
一方︑評価・処遇制度との関係からいえば︑このテーマ管理は一九九〇年改革において新設された業績・取組み姿勢
を評価する﹁期間考課﹂の基準としても活用されていた︒すなわち︑それは︑一方で柔軟な業務遂行体制とスタッフ職
の業務遂行能力の活用を促すツールとして︑他方ではそこから生み出された個々人の業績を評価・処遇するためのツー
ルとして導入されたものであった︒﹁期間考課﹂とテーマ管理の関連性については次節で詳しく検討することとし︑そ
れでは︑組織編成の柔軟化とスタッフ職の能力活用につながるような働き方の変化は実質的な意味で進行したといえる
のであろうか︒
先に述べたように︑組織のフラット化以降︑部長は重点テーマやプロジェクトの内容に応じて組織の最小の構成単位
であるグループを柔軟に改廃し︑主査︑主担当員︑担当員の中からそのまとめ役であるSLを任命することができる仕
組みとなった︒しかし︑たとえば毎期に設定される部や室のテーマに応じて︑年度単位でグループが頻繁に変化しうる
のかといえばそうではない︒むしろこうした仕組みは図2
秬
reformbusiness心︶︵RB︑に中のを﹂プールグ付部﹁と呼ばれる業務改革の運動体によって限定的に活用されてきたというのが実態のようである︒﹁これ
︵ 部 付 グ ル ー プ ⁝ 筆 者 ︶
は何をやるのかといいますと︑特命業務⁝急に新しい環境変化があってこういう仕事が増えたから解決してほしいとい
ったことをする人たち⁝いわゆる遊撃的な一つの集団として置かれております︒﹂﹁︵筆者︶それが︑ちょっとまとまっ
た仕事になるねということになればグループになるわけですか?﹂﹁はい︑BR何とかグループということになる場合
もありますし︑それがもっと定着して一つの業務になれば︑BRはとれちゃいます︒﹂﹁︵筆者︶とれて︑何々グループ
と︒﹂﹁はい︒それから︑そうではなくて︑まだ急に現れたり消えたりする︑そういった場合には部付きグループという
人 事 管 理 と 業 績 管 理 の 関 係
― 106 ―
︵9︶かっこうでつけてます﹂︒
それでは︑スタッフ職の働き方の変化についてはどうか︒図2の職位・資格体系の変化を見れば明らかなように︑
﹁スタッフ職﹂という職位上の役割区分を設ける以前から︑主査︑主担当員︑担当員という職位の系統自体は存在して
いた︒ここに改めて﹁スタッフ職﹂という名称を冠したことについては象徴的な意味合いが大きく︑先の人事担当者も
﹁これは意識改革です︒制度をかえるというよりも意識を変えようということです︒﹂と述べている︒したがって︑働き
方が実質的に変化したといえるのは︑課・係制の廃止にともなってスタッフ化した従来の課長・係長を中心とする多数
の職制であり︑これらの従業員層が︑テーマ志向の働き方を通じた能力の活用に向かったものと考えられる︒しかし︑
ポストを失ったことによるモラール・ダウンとの見合いからその効用を推し量ることは容易ではない︒加えて︑こうし
た変化は︑スタッフ職でありながら実質的なマネージャー職でもあるプレイング・マネージャーとしての役割を与えら
れた多数のスタッフ・リーダー達に︑能力活用のあり方についての微妙な判断を迫ることとなった︒トヨタの人事担当
者は︑SLの位置づけについて次のように説明している︒﹁スタッフ・リーダーというのはですね︑ほんとに通称なん
です︒ただの呼び名なんですね︒基本的に﹁基幹職3級の職位は何?﹂と聞かれたら︑それは主担当員ということなん
です﹂︒しかし︑SLに付与されている役割は︑﹁職場管理の第一線としてグループの職場管理全般に責任をもつ﹂︑﹁テ
ーマ設定およびグループ編成に関する意見具申﹂︑﹁考課案の作成﹂︑﹁メンバーの教育・育成﹂等︑明らかに課長クラス
︵
なえうに微妙な位置づけを与らのれた背景には︑次のようよことがうべき第一線の管理職しのてのそれである︒SL担 !︶
人事施策上の配慮があった︒﹁フラット化を進めたときにですね︑いわゆる基幹職3級︑世間でいうところの課長級で
ありながら課長になれない人がものすごく出てきたわけです︒その人たちというのは︑今までは課長をはっていたの
に︑あるいは課長になれたのに部下はいないということになって︑モラールのダウンが著しいと︒それで︑たまたま主
担当員の中のある人がスタッフ・リーダーというリーダー的な役割を担っているけれども︑その職位としての位置づけ
― 107 ―
人 事 管 理 と 業 績 管 理 の 関 係
はまったく変わりませんよということを強くやってきたという経緯がございます︒ただまあ︑その結果ですね︑スタッ
フ・リーダーといわれる人たちの︑いわゆるマネジメントに対する意欲といいますか責任感がですね︑逆に薄れてきて
しまって︑そこに今︑問題意識を持っているということでございます﹂︒このように︑組織のフラット化にともなう多
数の職制のスタッフ化と高能力者の活用は︑同時にモラール・ダウンとSLの管理業務離れという二つの新たな課題を
ともないながら推進されたのであった︒
2︱2評価制度
トヨタでは︑一九八九年に実施された組織のフラット化と職位・資格体系の見直しを受けて︑翌一九九〇年に評価制
度と賃金制度の見直しをおこなっている︒ここでは︑まず評価制度について制度改定の意味を確認し︑テーマ管理との
関連性を中心にその設計と運用実態を見てゆくことにする︒
一九九〇年改革では︑年令・能力・業績を総合的に評価するそれまでの総合考課方式が︑能力要件にもとづいて﹁保
有能力﹂を評価する﹁能力考課﹂と︑重点テーマにもとづいて﹁業績・取組み姿勢﹂を評価する﹁期間考課﹂へと二元
化された︒処遇への反映方式についても︑従来は︑昇格︑賃金︑賞与の全てが総合考課によって決定されていたが︑こ
の制度改定によって﹁能力考課﹂が昇格と賃金︵=﹁基本給﹂︶に︑﹁期間考課﹂が賃金︵=﹁職能給﹂︶と賞与に反映さ
れる仕組みとなっている︵図1
秡
及び表1参照︶︒こうした制度改定の主要な目的として労使により共有されていたのは︑賃金決定基準の明確化であった︒人事担当者
によれば︑従来の総合考課にも︑能力︑業績︑勤務態度等の評価要素は定められていた︒しかし︑運用上は考課要素が
十分に意識されることは少なく︑評価は過去の実績や取組みもふまえた︑文字通り総合的な視点からなされていたため
である︒総合考課のこうした特徴に加えて︑制度改定の意味を考える際に忘れてはならないことは︑トヨタが評価・処
人 事 管 理 と 業 績 管 理 の 関 係
― 108 ―
遇の中心に︑全社的な見地からお
こなわれる年次別管理を据えてき
たということである︒ここでいう
年次別管理とは︑人事部が資格別
・入社年次別に過去の評価実績も
含めた長期的な視野から昇格者を
調整する仕組みである︒こうした
仕組みには︑短期的な業績にとら
われず長期的な視野から従業員の
育成に重きを置いた評価・処遇が
可能になるというメリットがある
反面︑一度ついた格差を挽回する
ことがむずかしくなるという側面
があった︒また︑長期的な評価・
処遇によって同一年次間にある種
の序列が形成されることになれ
ば︑その分評価を厳密に行う必要
性も薄らいだものと考えられる︒
年次別管理に基礎を置くこのよう
表1 人事考課の概要
期 間 考 課
冬賞与考課 業種、取り組み姿勢を評価
(過去の業績や能力を問わない)
冬賞与 漓テーマの達成度
滷テーマへの取り組み姿勢(チャレンジ度)
・テーマの達成度に重点を置いて評価
・テーマ以外のことのでの成果も勘案
前年 当年 5/1〜10/31 蜴10月
【対象者】 【考案者】
理事・部長級………役員
次長級………[1次考課]部長級SL、室長、部長[2次考課]役員 課長級………[1次考課]次長級SL、室長 [2次考課]部長 係長級………[1次考課]課長級SL、室長 [2次考課]部長 工長級………[1次考課]課長 [2次考課]部長(次長)
上級指導職以下…[1次考課]SL、室長(課長) [2次考課]部長 出典 トヨタ自動車人材開発部資料にもとづいて作成。
夏賞与考課
▼夏賞与
前年 当年 11/1〜4/30 蜴3月
(6月見直し)
職能給考課
▼職能給
前年 当年 2/1〜1/31 蜴3月
能 力 考 課
保有能力
▼基本給(本給)昇給
▼資格昇格 漓専門知識・技術 滷革新力
チャレンジ・マインド 企画想像力
┌ │ │ │ └
判断力行動実行力
澆人材活用力(指導力)
前年 当年 2/1〜1/31 考課の種類
・名称 考課の考え方 考 課 の 反 映
考課要素
(資格により 違います。)
査 定 期 間 考 課 時 期
考 課 者
― 109 ―
人 事 管 理 と 業 績 管 理 の 関 係
な評価の性格は︑一九九〇年改革以降も︑新設された﹁能力考課﹂によってある程度受け継がれていたものと考えてよ
い︒トヨタの年次別管理はこの時の改革以降も維持されており︑﹁能力考課﹂は従業員の長期的な能力伸長度である
﹁保有能力﹂にもとづいて︑従来と同じく昇格と積上げ給に反映されるかたちになっていたからである︒
以上の理解をふまえるならば︑一九九〇年改革では﹁保有能力﹂と﹁業績・取組み姿勢﹂という二つの側面から評価
制度の明確化がなされているが︑実質的には従来の評価・処遇体系に後者の体系が新たに組み込まれたものと見るのが
妥当であろう︒すなわち︑﹁期間考課﹂とこれを反映する﹁職能給﹂の導入によって︑過去の成績を問わない直近の頑
張りを評価・処遇する仕組みが補われたということである︒そして︑その仕組みこそが︑テーマ管理と連動した評価と
それを受けた洗替方式の賃金項目という︑当時のトヨタにとっては革新的ともいえる制度体系の整備であったことは銘
記されてよい︒それでは︑以下で﹁能力考課﹂と﹁期間考課﹂の具体的な設計と運用実態について検討してゆくことに
︵
しよう︒ !︶
盧
能力考課
能力考課の対象となるのは保有能力であり︑﹁現在保有している能力の内容と高さを︑一定のものさし︵職能資格別
の能力要件︶に照らして判定﹂することとされている︒能力要件の具体的内容は︑表2のようである︒また︑これとは
別に︑能力考課の考課要素が︑係長級以上と上級指導職以下の別に定められている︒係長級以上の考課要素は︑﹁専門
知識・技術﹂︑﹁革新力﹂︑﹁人材活用力﹂の三つに大別され︑﹁革新力﹂はさらに﹁チャレンジマインド﹂︑﹁企画・創造
力﹂︑﹁判断力﹂︑﹁行動・実行力﹂に分けられている︒上級指導職以下では︑﹁人材活用力﹂のかわりに﹁指導力・協調
性﹂が設定されている︒
考課要素はさらにいくつかの考課項目に分かれており︑各項目には︑係長級以上でマネージャー職とスタッフ職の別
に︑上級指導職以下では︑上級指導職︑指導職︑準指導職︑一般職の別に考課のウェイトが定められている︵表3参
人 事 管 理 と 業 績 管 理 の 関 係
― 110 ―
照︶︒表2と表3を見
比べればわかるよう
に︑両者の内容には一
定の対応関係があり︑
考課要素は求められる
能力の﹁内容﹂を︑能
力要件はそれにもとづ
いた能力の﹁高さ﹂を
規定しているものと考
えられる︒考課要素の
一つである﹁専門知識
・技術﹂を例にとれ
ば︑能力要件では︑
﹁経営上なくてはなら
ない極めて高度な知識
・技術﹂︵理事︶︑﹁全
社でトップクラスの極
めて高度な専門知識・
技術﹂︵部長級︶︑﹁極
表2 能力要件 課長2級以上
能 力 要 件
1.経営上なくてはならない極めて高度な知識・技術と経営的な視野・
識見を有する。
2.全社的に極めて重要なプロジェクト又は経営テーマの遂行にあたっ て余人をもってかえがたいと認められる。
3.部長級以上の能力を有すると認められる。
1.全社でトップクラスの極めて高度な専門知識・技術と豊富な経験及 び実績を有する。
2.新しい時代を切り拓いてゆく卓越した先見性と決断力を有し、全社 的に極めて重要なプロジェクト又はテーマを独力で、あるいは組 織のリーダーとして企画・遂行できる。
3.会社の経営的課題・技術的課題を的確に把握し、柔軟な発想で現状 を改革できる。
4.当該組織の人材を戦略的に活用できるとともに、次代を担う優れた 後継者を育成できる。
5.当社の部長として社会的にも通用する、幅広い視野・識見と優れた 人格を有する。
1.極めて高度な専門知識・技術と豊富な経験及び実績を有する。
2.新しい時代を切り拓いてゆく卓越した先見性と決断力を有し、全社 的に重要なプロジェクト又はテーマを独力で、あるいは組織のリ ーダーとして企画・遂行できる。
3.会社の経営的課題・技術的課題を的確に把握し、柔軟な発想で現状 を改革できる。
4.当該組織の人材を戦略的に活用できるとともに、下級社を計画的に 育成できる。
5.当社の次長として社会的にも通用する、幅広い視野・識見と優れた 人格を有する。
1.高度な専門知識・技術と豊富な経験及び実績を有する。
2.困難な課題を克服する優れた決断力・実行力・創造力を有し、部の 重要なプロジェクト又はテーマを独力で、あるいは組織のリーダ ーとして企画・遂行できる。
3.当該組織(部・室・課・グループ)の課題を的確に把握し、柔軟な 発想で現状を改革できる。
4.当該組織の人材を最大限に活用するとともに、下級社を計画的に育 成できる。
5.当社の課長として社会的にも通用する、幅広い視野・識見と優れた 人格を有する。
1.上記に準ずる能力を有すると認められる。
主たる職位 部長 主査
部長 室長 主査
室長 主査
室長 主担当員
担当員 職能資格 理事
部長級
次長級
課長1級
課長2級
― 111 ―
人 事 管 理 と 業 績 管 理 の 関 係
めて高度な専門知識・技
術﹂︵次長級︶といったか
たちに︑考課要素と対応関
係をもった能力の水準が相
対感をもって設定されてい
る︒
能力考課は︑1次考課↓
考課調整会議↓2次考課↓
最終調整↓評価の決定︑と
いう手続を踏む︒1次考課
と2次考課の考課者と被考
課者の資格は表1に示した
とおりであり︑考課の要領
は次のようである︒1次考
課では︑まず考課要素別
に︑○=特に優れている︑ ブランク=だいたい満足で きる︑△=育成してゆく必
要がある︑という三段階の
係長級以下(事技系)
能 力 要 件 1.高度な専門知識・技術と多くの経験を有する。
2.優れた判断力・実行力・創造力を有し、室(課)の重要かつ高度な テーマを独力で、あるいは組織のリーダーとして企画・遂行でき る。
3.当該組織(部・室・課・グループ)の課題を的確に把握し、柔軟な 発想で現状を改革できる。
4.グループのリーダーまたは中核的なメンバーとして、グループの人 材を最大限に活用できるとともに、下級社を計画的に指導・育成 できる。
1.高度な専門知識・技術を必要とする、グループの重要なテーマを独 力で企画・遂行できる。
2.グループの中核的なメンバーとして、グループのテーマ全体を把握 し、下級者を的確に指導しながら担当のテーマを円滑に遂行でき る。
3.優れた判断力・実行力・創造力を有する。
1.比較的高度な専門知識・技術を必要とするテーマを、独力で企画・
遂行できるとともに、複雑・高度なテーマについても、上級者の 包括的な指示にもとづき、主要なメンバーとして遂行できる。
2.グループのテーマ全体について理解があり、定常的なテーマについ ては下級者を適切に指導しながら的確に遂行できる判断力・実行 力を有する。
1.比較的高度な専門知識・技術を必要とするテーマを、独力で企画・
遂行できるとともに、複雑・高度なテーマについても、上級者の 具体的な指示にもとづき、主要なメンバーとして遂行できる。
2.グループのテーマ全体について理解があり、定常的なテーマについ ては下級者を適切に指導しながら的確に遂行できる判断力・実行 力を有する。
1.比較的高度な専門知識・技術を必要とするテーマを、上級者の具体 的な指示にもとづき、メンバーとして遂行できる。
2.担当のテーマを十分に理解し、定常的なテーマについては、上級者 の包括的な指示にもとづき、自らの判断を加えながら適切・迅速 に処理できる。
1.業務に必要な知識・技術を習得し、上級者の具体的な指示にもとづ き、手順・方法等にある程度の判断を加えながら担当業務を適切 に処理できる。
出典 トヨタ自動車人材開発部資料。
主たる職位 担当員
−
−
−
−
− 職能資格 係長級
上級指導職 1級 2級
指導職1級
指導職2級 3級
準指導職
一般職1級 2級 3級
人 事 管 理 と 業 績 管 理 の 関 係
― 112 ―
評定をおこなう︒その際︑マネー
ジャー職については︑適切なテー
マ管理の推進と下位者の考課にお
ける基準分布の遵守を﹁人材活用
力﹂に反映させることとされてい
る︒次に︑作成された要素別の評
定にもとづいて︑A〜Eの5段階
で総合評価をおこなう︒ここで
は︑Cが﹁到達すべき基準レベ
ル﹂とされており︑﹁例外﹂とし
てF〜Gが設定されている︒
1次考課の評定は︑2次考課に
かけられる前に考課調整会議で調
整がなされる︒実施単位は︑考課
対象が課長級以下の場合は各部で
あり︑基本的に部長・室長・SL
が参加することとなる︒ただし︑
係長級を対象とした会議に参加す
るSLは課長級以上であること
表3 能力考課の考課要素
◎ 特に重点を置く評価対象項目
○ 評価対象項目
1)係長級以上 − 評価対象としない
スタッフ 職
◎
◎
◎
◎
○
◎
○
◎
◎
○
◎
◎
○
○
○
○
○ マネージ
ャー職
○
○
◎
◎
○
◎
○
◎
◎
○
◎
◎
◎
◎
◎
○
◎ 能力考課の考課要素
・高度な専門知識・技術をもっている。
・最新の知識・技術を探求し、吸収してゆく力がある。
・関連業務を含めた幅広い知識がある。
・新しい課題やテーマに積極的に取り組んでいる。
・常に自己啓発に努力している。
・会社の発展につながる、独創的でイノベイティブな企画・
発想ができる。
・業務の改善・効率化に結びつく企画・発想ができる。
・社会的責任を自覚し、常にお客様第一の考え方に立った判 断ができる。
・経営ニーズと情勢の変化を的確に把握した上で、先を読ん だ判断ができる。
・今後取り組むべき課題やその方向について、上司や関連部 署に提言できる。
・自ら当事者として取り組むと同時に周囲を巻き込んで、課 題解決ができる。
・プレッシャーに強く、厳しい局面でも冷静かつ粘り強く対 処できる。
・部下の能力・適正を見きわめ、公正な評価、計画的な育成 ができる。
・部下や下級者に権限委譲を行い、部下の能力を最大限に活 用できる。
・意思疎通が円滑で、労使相互信頼を基盤とした明るい職場 づくりができる。
・周囲の人望を集めている。
・既存の観念にとらわれることなく、会社ニーズと人材の育 成を考慮した柔軟な組織編制・配置・活発な移動ができる。
専 門 知 識 ・
技 術
チャレンジ マ イ ン ド 企 画 ・ 創 造 力
判 断 力
行 動 ・ 実 行 力
人 材 活 用 力
革 新 力
― 113 ―
人 事 管 理 と 業 績 管 理 の 関 係
が︑また︑課長級を対象とした会議
に参加する室長・SLは次長級以上
であることが求められる︒次長級の
考課調整会議については︑部門統括
及び組織担当役員が必要に応じて開
催し︑理事・部長級については︑人
事担当役員による全社調整がなされ
る︒考課調整会議の目的は︑二つあ
る︒一つは︑﹁調整会議を通じて︑
被考課者の能力・業績に関する情報
を参加メンバーが共有し︑異動・育
成・活用の参考﹂とすること︑いま
一つは︑﹁調整を通じて︑多角的・
多面的な評価情報を収集し︑考課の
公平性を確保﹂することである︒
2次考課では︑1次考課の評定を
もとにして︑部別・資格別の平均が
Cになるように︑A︑B︑C︑D︑
Eの5段階で定められた一定の基準
2)上級指導職以下
一般職
○
○
−
◎
○
−
○
−
○
○
−
○
−
○
−
○
○ 出典 トヨタ自動車人材開発部資料。
準 指導職
○
○
○
◎
○
−
○
○
○
○
○
○
−
○
○
◎
○ 指導職
◎
○
○
◎
○
○
○
◎
○
○
○
○
○
○
◎
◎
○ 上級 指導職
◎
○
◎
◎
○
○
○
◎
○
◎
◎
○
◎
○
◎
◎
○ 能力考課の考課要素
・専門知識・技術を持っている。
・専門知識・技術を探求し、吸収してゆく力があ る。
・関連業務を含めた幅広い知識がある。
・新しい課題やテーマに積極的に取り組んでい る。
・常に自己啓発に努力している。
・会社の発展につながる、独創的でイノベイティ ブな企画・発想ができる。
・業務の改善・効率化に結びつく企画・発想がで きる。
・必要な情報を的確に把握したうえで、正確な分 析・判断ができる。
・何が問題点か、的確に把握できる。
・自分の意見・アイディアを積極的に上司に進言 できる。
・相手を正確に理解したうえで、的確な主張がで きる。
・業務の進行状況や問題点をタイミング良く報 告、相談している。
・自ら当事者として取り組むと同時に周囲を巻き 込んで、課題解決ができる。
・困難な仕事にも積極的に取り組むことができ る。
・きめ細かく、かつ的確に下級者を指導できる。
・立場に応じたリーダーシップを発揮できる。
・労使相互信頼を基盤とした明るい職場づくりに 努力している。
専 門 知 識 ・
技 術
チャレンジ マ イ ン ド 企 画 ・ 創 造 力
判 断 力
行 動 ・ 実 行 力
指 導 力 ・ 協 調 性
革 新 力 人 事 管 理 と 業 績 管 理 の 関 係
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分布に従って部内調整がなされる︒その際︑これと合わせて考課依頼時に人事部から提示される年次別の規制に従う旨
が明記されており︑この点が年次別管理の要になっているものと考えられるが︑その詳細については明らかにされてい
ない︒なお︑役員によってなされる次長以上を対象とした2次考課の内容についても不明である︒以上の手続をへて︑
全社調整がおこなわれ︑最終的な評価が決定する︒
能力考課のポイントとして指摘しうることは︑第一に︑考課要素について評価対象項目と特に重点を置く評価対象項
目が上位の資格ほど多くなっていること︑また︑最終的な考課の分布が︑7A︵指導職2級︶以下では三段階になって
いることである︒このことは︑キャリア初期には選別的な評価を避け︑育成に重きを置いた処遇を行っていることを意
味しよう︒第二に︑係長級以上の考課要素について︑マネージャー職では﹁人材活用力﹂が︑スタッフ職では﹁専門知
識・技術﹂が特に重点を置く評価対象項目として相対的に重要視されているということである︒考課要素の細目に表現
されているように︑マネージャー職には︑﹁部下の能力・適性を見きわめ︑公正な評価︑計画的な育成ができる﹂︑﹁部
下の能力を最大限に活用できる﹂︑﹁柔軟な組織編制・配置・活発な異動ができる﹂といった能力が︑また︑スタッフ職
には︑﹁最新の知識・技術を探求し︑吸収していく力がある﹂ことや﹁関連業務を含めた幅広い知識があること﹂等が
特に求められているということである︒
盪
期間考課
期間考課の対象となるのは業績・取り組み姿勢であり︑﹁テーマの達成度﹂と﹁テーマへの取り組み姿勢︵チャレン
ジ度︶﹂の二つが考課要素となる︒期間考課にも各考課要素について複数の考課項目が設定されているが︑これらは事
技系社員で統一されている︒しかし︑係長級以上と上級指導職以下では︑考課項目のウェイトが異なる︵表4参照︶︒
テーマの設定は︑組織のフラット化の箇所で説明したように︑テーマ管理の手続に従っておこなわれる︒テーマの内
容については︑部長・室長・SLは﹁それぞれの組織方針が基本﹂であり︑グループ内のメンバーについては﹁所属組
― 115 ―
人 事 管 理 と 業 績 管 理 の 関 係
織の方針︵上位者のテーマ︶をブレークダウンしたも
のが基本﹂となる︒テーマ設定に際しては︑﹁上司は
部下一人ひとりにつき︑何がどこまでできれば目標
︵テーマ︶達成といえるのか︑またその判断基準は何
かを明確化しておき︑部下と了解しあっておく必要﹂
がある︒年間の流れとしては︑期初︵二月︶に目標の
設定を行い︑期中︵七月︶に達成度の中間チェックと
必要に応じた目標の修正︑期末︵翌二月︶に達成度の
最終評価を行うこととされている︒
期間考課では︑能力考課と異なり︑原則的に︑1次
考課↓考課調整会議↓2次考課︑という手続を経て最
終的な評価が決定される︒最終調整が行われないの
は︑﹁各部の調整は各部で完結することが原則﹂とさ
れているためである︒ただし︑役員による全社調整が
なされる次長級以上については︑この限りではない︒
1次考課では︑考課要素を参考にして︑下図のよう
に﹁達成度﹂と﹁取り組み姿勢﹂の加算評価で評点化
をおこなう︒﹁達成度﹂については︑3点=期待値を 上回る︑2点=期待どおりの成果︑1点=まずまずの
表4 期間考課の考課要素 1)事務技術系
上級指導職以下
◎
○
○
−
−
○
(注)※についてはSL以上で部下を有する者のみ対象。
上級指導者以下
○
◎
○
▼テーマの達成度に重点を置いて評価する。
出典 トヨタ自動車人材開発部資料。
課長級以上
◎
◎
◎
◎※
○
○
係長以上
◎
◎
○ テーマの達成度
1.テーマの達成度は期待値を上回る。
2.テーマは上位目標と正しくリンクしている。
3.テーマ達成の為に上司・部下の協力を上手く 得ている。
4.テーマ達成の為に、部下のテーマ管理を妥当 に行っている。
5.数多くのテーマを処理している。
6.テーマ以外のことでも成果をあげている。
テーマへの取り組み姿勢(チャレンジ度)
1.テーマは総じて意欲的だ。
2.テーマ達成の為に努力している。
3.テーマ達成以外でも努力している。
人 事 管 理 と 業 績 管 理 の 関 係
― 116 ―
成果︑であり︑﹁取り組み姿勢﹂については︑3点=極めて意欲的︑2点=かなり意欲的︑1点=意欲的︑0点=努力
不足︑という評価基準になっている︒ただし︑﹁取り組み姿勢﹂が0点の者は︑﹁達成度﹂の如何にかかわらず0点とな
る︒こうして決定された評点は︑能力考課と同じように考課調整会議にかけられる︒
達成度321点+取り組み姿勢3210点= 6〜2点︵0点⁝例外︶
2次考課では︑1次考課の評点をもとに︑部別・資格別の平均が4点になるように︑2点〜6点までの5段階で定め
られた一定の基準分布に従って部内調整がおこなわれる︒0点は例外規定であり︑﹁取組み姿勢﹂が0点であれば﹁達
成度﹂の如何にかかわらず最終評定も0点となるために︑1点という最終評定は存在しない︒﹁2次考課者は︑より高
い立場・視野から︑設定された目標︵テーマ︶の高さ︵チャレンジ度・難易度︶を考慮し総合的な判定を行うことに重
点を置いて考課﹂する︒その際︑能力考課とはことなり︑期間考課には年次別の分布規制が存在しないこと︑また2次
考課に際しては︑﹁達成度に重点を置いた調整﹂が行われること︑という二つの点に留意する必要がある︒なお︑役員
によってなされる次長級以上を対象とした2次考課の内容については不明である︒以上の手続をへて︑最終的な評価が
決定する︒
期間考課における最大のポイントは︑評価の対象となる個々人の短期的な業績・取組み姿勢が︑テーマ管理との連動
をはかることで︑組織の業績目標と一定の関連づけを与えられていたということである︒換言すれば︑ここでは︑組織
の目標にもとづいて個々人のテーマを設定し︑個々人の働き方をテーマの達成に向けて統制してゆくことで組織の目標
を達成するという業績管理の基本的な枠組みが意識されていたということである︒しかし︑次のような発言に見られる
ように︑こうした制度設計上の意図に反して︑制度の運用はかならずしも厳格になされていなかったものと考えられ
― 117 ―
人 事 管 理 と 業 績 管 理 の 関 係
る︒
﹁テーマ管理っていうのは考課というよりも︑コミュニケーション促進ツールという意味合いが強かったんじゃない
ですかねえ︒一応︑それをもとに処遇には反映させてゆくということだったんですけどね⁝︵中略︶⁝僕もいろいろと
書いてやってましたけど︑何かその目標もふんわりしてましたよね︒自分で書くんですよね︑目標は︒自己申告なんで
すよ︒それで︑それに対して上司に何かいわれるでもなし⁝﹁そうだね︑こういうことも必要だね︒﹂みたいな︵笑︶︒
なんていうのかなあ︑職場にもいろんな人がいましてね︑やっぱり何かね︑言い方は悪いですけど︑自分を⁝俺が俺
が︑というのがあって︑自分は評価されたいという︑そういうタイプの人間と︑まあ︑そりゃあ誰かが評価してくれる
だろうというタイプとやはり二通りありまして︑俺が俺がという人たちは一生懸命そういったツールを使おうとします
よね︒ですから︑そこにはかなり明確なものを書いて︑普段の業務以上にそれをやることにすごく力を注ぐといいます
かね︑それでやりましたというのをアピールする人というのも僕の経験上おりましたけど⁝︒それが︑会社にとって良
いことかということだと思うんですよね︒その人は︑そうやって宣言して自分を評価してもらいたいからやるんでしょ
うけど︑全体の⁝僕がいた経理部としてそれが部のパフォーマンスとしてどうかというのはまた別の問題で︑だとした
ら管理職が︑例えば部長が﹁これは︑あなたのテーマ﹂というふうにわりふらなきゃあいけないですよね︒それでもや
はり限界はあって︑それはある一つの項目でしかなくて︑その人がやっている業務全体に広がるかといえばそんなこと
ないですもんねえ﹂︒
上記のコメントには幾分ネガティブな解釈が含まれているとしても︑ここにはテーマ管理の実態についての重要な指
摘がなされている︒それは︑テーマの設定が︑上司との面接を前提としながらも自己申告によって行われていたという
ことである︒テーマ設定が自己申告であったということは︑組織目標を個々の従業員にブレークダウンする仕組み︑ひ
いては個々の業務を組織目標の達成に向けてオーガナイズする仕組みがここでは確立されていなかったということを意
人 事 管 理 と 業 績 管 理 の 関 係
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味しよう︒これと合わせて指摘しておくべきは︑テーマが自己申告であったにせよ︑期間考課は︑従業員の働き方の変
化を促すインセンティブとしては確実に機能していたということである︒それは︑次節で詳述する︑図1
秡
に示したような期間考課の賃金への反映の大きさを考えれば自然なことである︒そして︑重要と思われるのは︑それがテーマ志向
の働き方を通じた高能力者の能力活用や直近の頑張りを促すというメリットと共に︑組織目標の達成には必ずしも結実
しない個人テーマに様々な面で重点が置かれすぎるというネガティブな側面を合わせ持っていたということである︒こ
うした負の側面は︑別のインタビューでも指摘されている︒﹁︵筆者︶その時にやはり︑達成度についてはきっちり評価
して処遇に反映するということをやっておられたわけですか?﹂﹁そうです︒﹂﹁︵筆者︶ただし︑その達成度の準拠すべ
きテーマというのは︑必ずしも上から降りてきたものではないと︒﹂﹁ないと︒だから︑この辺が非常に不鮮明なわけで
す︒かえって不鮮明になっちゃうんです﹂︒
期間考課については︑﹁職能給﹂との関係から以下の賃金制度の箇所で再度言及することにする︒さしあたり︑ここ
で確認しておくべきは︑テーマ管理が︑業績管理を展開するためのツールとして︑同時にこれと評価を連動させるため
のツールとしては十分に機能していなかったということである︒他方において︑期間考課には短期的なインセンティブ
としての看過できない影響力があった︒組織のフラット化の箇所において指摘したように︑SLの管理職としての側面
を後退させ︑プレイヤーとしての側面を前面に押し出したのも︑個人テーマの達成度を重視した評価・処遇のあり方が
関係していたものと考えられる︒
2︱3賃金制度
一九九〇年改革以前のトヨタの賃金制度は︑図1
秣
な賃の職理管︒たっあでのもルにプンシてめわきにうよたし示金は︑資格別・考課別に昇給額を積上げてゆく完全積上げ方式の﹁本給﹂一本であり︑賞与については︑これに一定の係
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