小樽商科大学国際 コンファレンス
『 転機に立つ金融 ・証券規制 と資本形成
‑・ 日米比較を中心に』の記録
斉 藤 美 彦
I .は じめに
1 994 年の夏の 日本列島は前年 とは様変わ りに猛暑 とな った。北海道 も例外 ではな く暑い日が続いたが,その暑い最中の 7 月 25 日に小樽商科大学において 同大学および東京大学社会科学研究所現代金融研究会の共催で国際コンファレ
ンスが開催 された。本 コンフ ァレンスの 目的 は ,1 98 0 年代以降の 日米 におけ る金融 システム不安の克服,市場規律の確立,さらには資本形成の促進などを 目的 とす る金融 ・証券規制がどのように変貌 し機能 してきたのかを明 らかにす ることにあ り,その意味で表題 も 「 転機に立っ金融 ・証券規制 と資本形成‑日 米比較を中心 に」 とされた。
コンファレンスは冒頭に山田家正小樽商科大学学長の挨拶があ り,吉田暁武 蔵大学経済学部教授,首藤恵中央大学経済学部教授,渋谷浩小樽商科大学商学 部助教授の 3 名で議長団が構成 され議事の進行が行われた。
報告者は米国か らの 2 名の招待研究者を含めて 6 名, コメンテーターが 2 名 であり,報告テーマは以下のとお りであった。
〔 第 1 セッション〕
<報告 >
( ∋ 「 金融 ・証券規制の 日米比較 ‑バ ブル ・資本形成 と規制政策の転換 ‑」
小樽商科大学商学部助教授 井村進哉
② 「日本の金融行政について」
〔 1 8 5 〕
1 86 商 学 討 究 第 45 巻 第 4 号 神奈川大学経済学部助教授 伊藤修
③ 「アメ リカにおける金融市場 と規制の枠組みの再構築」
ボス トン大学講師 ジェーン ・W ・グ リスタ
<コメン ト>
日本銀行金融研究所所長 洋本‑穂
〔 第 2 セッション〕
④ 「日本 におけるバ ブル経済の遺産‑株式持 ち合 いの動揺 と資本形成‑の含 意」
( 財) 日本証券経済研究所主任研究員 北候裕雄
⑤ 「アメ リカにおける株式所有構造 と資本形成」
ペ ンシルベニア大学 ・ウオー トンスクール ・
ロ ドニーホワイ ト研究所所長 マーシャル ・E ・ブルーム
<コメン ト>
大阪市立大学商学部教授 佐賀卓雄
〔 総括討論〕
東京大学社会科学研究所教授 渋谷博史
( 以上の職名については,いずれ も当時の ものである。 )
Ⅱ. 金 融 ・証券規制 の転機 について ( 第 1セ ッションの議論か ら)
まず第 1セ ッションでは,金融 ・証券規制が転機にあるとの認識のもと,盟
まれ る新たな規制体系 はどのよ うな ものであるのかを中心 に議論が展開 され
た。 日米両国では,従来の規制体系が維持できな くなり, 自由化 と一般にいわ
れる事態が進展す る過程で,金融 ・証券市場の混乱が発生 した。また, この過
程は金融サー ビス業における業務の同質化の進展の過程で もあった。 この事態
をどのように分析するかは,金融 ・証券論研究の現在において極めて重要であ
る。他方,実務家 ・研究者か らは新 しい規制体系,金融制度等についての提言
『 転機に立っ金融 ・証券規制と資本形成‑日米比較を中心に』の記録 1 87 がなされている。第 1 セ ッションにおいては,転機の分析 とともに新たな規制 体系への提言がなされ,それをめ ぐって活発な議論が展開された。
〔 井村報告〕
井村報告では, 1 9 8 0 年代 に規制緩和が進展 し,その過程でバ ブルの形成 ・ 崩壊が生 じたという共通性にもかかわ らず 日米の金融 ・証券規制のあり方には 大 きな違いがあるとしている。その際に強調 されるのは両国における産業組織 論的にみた金融 ・証券業の態様の相違である
。すなわち日本においては,銀行
・金融機関の集中度が相対的に高 く,産業組織が垂直的 ( vert i ca l )であるの にたい し, 米国においてはそれは水平的 ・並列的( hori zont alandparal l el ) であることが金融 ・証券規制に大 きな影響を与えているというのである。 日本
において金融機関の相互関係 と資金供給 ・信用連鎖のあり方 に垂直的性格を与 えている要因のひとつ として銀行 ・金融機関‑の株式保有の認可を挙げ, こう
した産業組織の垂直的な性格 は, 日本の企業 と銀行 との関係を特徴づけてきた メイ ンバ ンク ・システムの金融システムにおける表現形態であるとしている。
これにたい してアメ リカの金融システムは,銀行業の分散性が高 く,銀行そ の もの と株式市場 は分断 され,相互 に独立 している
。さらに 1 9 3 3 年銀行法 に より商業銀行 による株式保有 は原則 として禁止 されてお り,銀行のノンバ ンク 業務への進出は主 として持株会社を通 じた関連会社 によって行われている。そ して銀行 とノンバ ンクとの間には種 々の厳格なファイアー ・ウォールが構築 さ れている。アメ リカの金融 システムは,銀行業に即 してみればパ ラレル ・バ ン キ ング ・システム (これはグ リスタ報告における中心的論点である),証券市 場を含めて検討すればパラレル ・ファイナ ンシャル ・システムであるとしてい
る。
このような 日米の金融 システムにおける相違は両国のバ ブルの形成 と崩壊の
過程の相違へ と結びっ くこととなる。すなわち日本 においてはバ ブル期にノン
バ ンクは銀行の別働隊 として不動産関連貸出を中心に活躍 し,その崩壊の過程
では大量の不良債権を抱えることとなった。 この リスクは銀行業の垂直的組織
構造ゆえに銀行を直撃する。 これに加えて銀行 ・金融機関の集中度の高さは,
1 8 8 商 学 討 究 第 4 5 巻 第 4 号
マクロレベルでの リスクの分散を制限 し,金融 システム全体の崩壊 とい うリス クさえ生 じさせている。
これにたい してアメリカの金融機関のバ ブル期の拡張 も商業用不動産貸出を 中心に行われたが,その崩壊の過程での信用 リスクは貯蓄貸付組合や商業銀行 本体 に集中的にあ らわれた。そ して米国の銀行業における産業組織的特性,す なわち集中度の低 さ,地域的分散性等は,マクロレベルでの リスクを小 さいも のとしている。その意味で井村報告においてはアメリカにおけるバブルの崩壊 の金融機関に与える影響はその倒産数の多 さ等にもかかわ らず, 日本における それよりも小 さいと分析 しているのである
。以上のような ことは両国における規制政策のあ り方の評価 に も関わ って く る。井村報告ではアメ リカにおいては1 9 80 年代における金融市場の混乱を反 映 して,規制政策の転換が図 られて きた としている。た とえば1 984 年 にはブ
ローカー経 由預金 にたいす る規制が導入 された り, 1 980 年代後半 においては リスクを勘案 した自己資本基準や商業用不動産貸付規制が定着す るなど規制の 再強化への動 きが現れた。さらに金融サービスの地域的不均等が顕在化 し,金 融機関の資本形成 にとっての役割が問われ るようにな り ,1 977 年地域再投資 法の規定の強化や, コミュニティ再開発銀行等の構想が打ち出されている。
こうしたアメ リカの動 きに くらべて, 日本 における規制体系 は表面的には 種々の変更 ・自由化がなされたものの,金融機関に株式保有を認めることによ り垂直的産業組織特性を温存 した とい う意味では不変であった と分析 してい る。そ してバブルの崩壊後の危機管理政策 として裁量的行政指導を含む規制が 強化 される方向がみ られるとしている。また進展中の金融制度改革に して もマ クロレベルにおける産業組織の垂直的な性格を一層強め,集中度をさらに高め ることとなるのではないか との懸念を表明 しているのである。
〔 伊藤報告〕
伊藤報告 は, 日本型金融行政の形成過程および近年の変化,その成果 と問題
点,将来の展望を論 じた意欲的な ものであった。まず, 日本型金融行政の起源
を第 1次世界大戦後に求め,その基本を規制内容を法律 に詳細に規定す るので
『転機 に立っ金融 ・証券規制 と資本形成 ‑ 日米比較 を中心 に』の記録 189 はな く,規制当局の裁量に任せる方式であるとした。その後,第 2 次世界大戦 後のアメ リカによる占領の もとで銀行 と証券の分離等のアメ リカ的制度がい く つか導入され,アメ リカ型の規制の具体的法規定主義をとることも指示 された が, これは結果的には 「 経営諸指標」を用 いた当局裁量型の行政指導へ と変形 されたとしている。高度成長期以降においては 「 拡張の抑制」を基調 とす る規 制体系が整備 され, ここにいわゆる日本型金融行政が確立 したとしている
。伊藤氏は,大蔵省が金融行政の基本 目標を 「 預金者保護」 と 「 信用秩序の維 持」であると説明 していることについて,その説明においては 「 弱者保護」な い し 「 財産保護」 と 「 金融 システムの防御」 という観点が暖味に混在 している ことに注意すべ きであるとす る。そ して こうした目標では対象が銀行に限定さ れる根拠 はな く , 「 預金者保護」 と並んで 「 ( 証券)投資家保護 」「 ( 信託)受益 者保護 」「 ( 保険)加入者保護」等の 目標が導 き出され金融制度全般 にわたる保 護が正当化 されることとなるとしている。
このような大蔵省による裁量的規制を中心 とする日本型行政指導の結果,金 融機関 と金融 システムの安全性はほぼ完全に維持された。健全経営のための基 準数値を達成 しない場合 も多 く, しか もこれにたいする罰則 も与え られない場 合 も少 な くなか ったが,基準数値 その ものに絶対的な根拠があるわけではな く,また金融機関 ごとに リスク負担能力には差があるはずであるか ら, この方 式に問題があるとは必ず しもいえないこととなる。
ただ しこのようなシステムの問題点 として伊藤氏 は,( 丑貯蓄者か ら金融機関 への所得移転の構造が ビル トイ ンされたこと,②行政の公開性を欠 き,チェッ
クが困難であること,( 釘市場規律の機能を代替することによって,それを弱め ること,④多 くの小口顧客は発言 しない一方で金融機関の側では既得権益を守 ろうとすることか ら,固定化す る力が働 くこと,⑤既存の金融機関 とは異なる 選好 ・行動パターンを もつ主体 ( たとえば外国金融機関)にとって受入れに く
いシステムであること等を挙げている。
このような高度成長期に典型的であった日本型金融行政は近年大幅に変化 し
たようにみえる。金融制度改革 は子会社方式により段階的に実施されてきてい
190 商 学 討 究 第 45巻 第 4号
るし,金利の自由化 もほぼ達成 された。行政のあり方 自体 も大蔵省によりそれ が透明であることが望ま しいと表明され,行政手続法 も 1 993 年 に制定 された。
しか しなが ら伊藤氏は日本型金融行政のコアの構造 は変わっていないとして いる。 文章上で改革が表明された として も, 行政の方式の実態 はそれ とは別で, 今 日まで基本的に不変である。そ して, このような日本型金融行政の有効性は 今後低下 し,それに対応す るための行政のあり方を再編成 しなければな らない
と伊藤氏は主張す るのである。
以上の 日本型金融行政の問題点および将来見通 しを踏まえ,報告の最後で伊 藤氏は以下の提言を行 っている。
( 1 ) 金融行政の目的を再検討 し,明確に定式化 しなおす こと。従来の 「 預金者 ( 等)保護」 と 「 信用秩序の維持」は唆味であり全般的金融機関保護行政を正 当化す ることか ら, これに代え 「 貨幣決済 システムの維持」 と 「 不公正取引の 排除」の 2 つの目的を明確に定式化すべ きである。
( 2 ) 金融行政の透明性の向上のために,行政措置の明示的ルール化等の実効的 改革が行われるべ きである。
( 3 ) 以上の目的を明確化 した金融行政を実現す るために 「 決済勘定」 と 「 投資 勘定」への勘定分離 ( 預金保険については 「 決済勘定」の保全が第一 に優先 さ れ る)を中心 とす る金融制度の再改革を行 うべ きである。 (この提言 は 「ナ ロ ウバ ンク」ない し 「コアバ ンク」構想が 目的 とするところを勘定分離方式で現 実化 しようとす るものである。 )
〔 グ リスタ報告〕
グ リスタ報告 は,アメ リカにおける近年の金融市場の変化を踏まえ新 しい金 融規制体系を提言するものであった。現状認識 においては伊藤報告 との共通性
はみ られるものの,そこか ら導 き出され る提言 は対照的な もの となった。
グ リスタ氏はまず近年のアメ リカにおける金融市場を取 り巻 く変化の うち重
要な三つの点を挙げ,それにより現状の規制の枠組みが不適切なもの とな り,
金融システムを脆弱な ものとし,金融政策の実効性を低下 させ,さらに実体経
済の要求に応ええない ものとなっている点を批判 している。
『転機 に立っ金融 ・証券規制 と資本形成 ‑ 日米比較 を中心 に』の記録 19 1 変化の第一 は,金融市場における銀行の地位 (シェア)の低下である。 これ は戦後一貫 して進展 し ,1 9 8 0 年代以降に加速化 した現象であるが, グ リスタ 氏はこれにより金融政策の伝播経路が弱まりその有効性が低下す ることについ ての懸念を表明 している。
第二の変化は,ノンバ ンク ・コングロマ リッ トの成長である
。これ らは非銀 行企業によりコン トロールされてお り,その全体を監督す る機関は存在せず, 法規制体系外の存在 となっている。 この結果成立することとなったのがパラレ ル ・バ ンキ ング ・システムであ り, この言葉はグ リスタ報告におけるキーワー
ドとなっている。パラ レル ・バ ンキ ング ・システムとは銀行業において結びっ いていた伝統的な二つの要素を,MMMF による資金調達 とファイナ ンス ・ カ ンパニーによる貸出に分解す るものである。 この二つを結びっけるのが CP
市場であ り,発行市場における最大の発行体が ファイナ ンス ・カンパニーでそ の最大の購入者が MMMFなのである。
このよ うなシステムは銀行 システムよ りはるかに規制 コス トが少な くてす み,そ して ここにおいて銀行が行 うこととい うのが CP のバ ック ・ファイナ ンスであるのである。 これは一種のセイフティネ ッ トではあるが,地位の低下 した銀行が関与す るこのようなものが果 して十分なものであるのか という疑問 をグ リスタ氏は提示 している。
第三の変化は,デ リバティブ等のオフバランス取引の急増である。 これ らの 取引における特徴 は参加者の数が少な く, しか も主 として店頭取引によりそれ が行われ ることである。そこには大 きなシステ ミック ・リスクが存在 し, しか もディスクロージャーは不十分である. このような事態は市場 システムそれ 自 体を掘 り崩すおそれがあるとダ リスク氏は指摘 している
。以上のような現実認識を踏まえてグ リスタ氏が提案す る新たな規制 システム
とは,簡単 にい うな らば 「 機関別の規制」か ら 「 機能別の規制」へ ということ
である。なぜな らば現行の規制 システムは伝統的銀行のみに規制が集中 し,ほ
ぼ同様の業務を行 っているノンバ ンクは規制 されずに自由に業務拡大ができる
という不均衡が存在するか らである。
19 2 商 学 討 究 第 45 巻 第 4 号
まず免許制度を一元化 し,( 9公衆か ら投資資金を受 け入れ,② 自己資本以外 の資金を もって公衆 に貸出を行 った り, 貸出債権 ・証券を購入 し, ( 卦金融機関, 投資家に貸出債権や第三者発行の証券を販売す る機関はすべて同一の免許を取 得 しなければな らないこととする。次にこれ らの免許機関については準備率規 刺,自己資本比率規制,流動性比率規制等同一の規制を課す こととす る。また 預金保険的な保証制度 (これは個人預金等の一定額および取引勘定にたい して 保証す るもの)を保険,証券,年金にも拡大す る。ただ し投資信託 については 健全性規制を課す ことにより公的な保証を与えるものとする。
こうした規制 システムの統一化により,規制の違いによる機関毎の有利不利 はな くな り金融政策の有効性が高まり,金融 システムが持続的成長に寄与 しう るようになるとグ リスタ氏は結論づけている。
〔 コメン ト・討論〕
第 1 セ ッシ ョンの 3 報告 にたい して,洋本‑穂氏 よ りコメ ン トが加え られ た。
まず井村報告にたい して洋本氏は,報告の前提 となっている事実関係につい て大 きく 3 点の疑問を提示 している。その第一 は,バブル期における銀行 とノ ンバ ンクの関係 は井村報告のような垂直的な ものではな く錯綜 した ものではな か ったか との疑問である。第二 は,バ ブル崩壊後かつてのメインバ ンクが経営 が悪化 したノンバ ンクを救済で きずにいること自体が垂直的産業組織が存在 し ていない証拠ではないか との ものである。最後の第三の疑問は,井村報告では 1 980 年代後半の混乱か ら抜 けだ したアメ リカと比較 して現在の 日本の危機 の 方が深刻であるとしているが, これは比較時点が不適切ではないか とのもので
ある。
次に伊藤報告 にたい しては,最後の提言である 「 決済勘定」 と 「 投資勘定」
の分離に関 して,理論的にはそれによりモラル ・ハザー ドを防げる等のメ リッ
トはあるものの, 「 決済勘定」のみを提供す る金融機関の収益性が低 くなると
考え られ ることか ら,非現実的ではないかとの疑問が提示 された。さらに決済
『 転機 に立っ金融 ・証券規制 と資本形成 ‑ 日米比較 を中心 に』の記録 19 3 が投資か ら分離 され ることによ り,マネ‑の持っ情報伝達 という重要な機能が 奪い取 られることとなって しまうことについて も疑問が提示 された。
グ リスタ報告にたい しては,その現状認識については同意 しつつ も,提言部 分については,政府ない し監督機関による介入 ・規制に過度に依存 しているの ではないか との疑問が提示 され, このような提言 は市場参加者 には魅力的な も のとは思われないとした。また,規制に関 して も銀行業 は規制 されているが, それは同時に保護 されているとい うことで もあるとしている。そ してそれによ り過剰投資状態 となってお り,銀行のシェア低下 はその現れ とはいえないか と の疑問が提示された。さらに規制の目的そのものについて も,グ リスタ報告で は個人預金者の保護が前面に出されているが, システ ミック ・リスクの防止に 重点が置かれるべ きであ り,預金保険について もそのような目的を持っ もの と 認識すべ きではないか とされた。
最後に洋本氏は,健全性規制について以下のとお りまとめ られ,コメ ン トを 結ばれた。
( 1 ) 金融活動 は支払 ・決済機能 と金融仲介機能に分 けて論ぜ られ るべ きであ る。
( 2) 支払 ・決済機能 については公的な介入 ・規制の余地がある。それはこれ ら の機能については外部不経済が発生 しやす く, システ ミック ・リスクによ
る混乱を防止す る必要があるか らである。
( 3 ) 金融仲介機能については規制 は緩和 し,イノベーションおよび競争を奨励 すべ きである。
( 4) 問題 は銀行業に串いてはこれ ら二つの要素が混在 していることであ り,銀 行業の分析について総合的ない し折衷的アプローチをとらなければな らな いことである。
以上の洋本氏のコメン トにたい して,それぞれの報告者か らの回答がなされ
たが,まず井村氏 は 1 9 8 0 年代のバ ブル形成期 においてメイ ンバ ンク ・システ
ムあるいはグループを越えて共同出資,協調融資が形成 された事実については
194 商 学 討 究 第 45巻 第 4号
指摘の とお りであるが,その ことをメイ ンバ ンク ・システムの動揺あるいは崩 壊 ととらえることはできないのではとした。井村氏はこうした事態を,む しろ メインバ ンク ・システムが全体 として拡大 しているという形で考えるべ きとの 見解を披露 した。 したが って,住宅金融会社等のノンバ ンクの処理の困難につ いて も,垂直的な統合形態,資金連鎖のひとっの発現形態 と考えたいとした。
次に伊藤氏は,氏の提言する勘定分離 についての現実性について,具体的 シ ステムについて詰めて考えているわけではないとしつつ も,支払を受 ける側が
「 決済勘定」への支払を求めるような市場か らの圧力が働 き,それにより 「 決 済勘定」が存立できれば望ま しいと回答 した。
グ リスタ氏は, コメン トは提言の内容が経済政策的 というよりは社会政策的 であり,監督 ・規制に重点を置 きす ぎとの ものであろうが, これ らはアメ リカ においては極めて重要な ものであるとした。た と. えば連邦 レベルの預金保険は 約 6 0 年の歴史を有 してお り, この機能を他の金融資産へ拡張す ることは重要で あるとした。また,提言の基本的な考え方 は,金融 システムは資金配分に中立 的でなければな らないということであるとし,アメ リカの監督機構 は複雑にす ぎ,その規制を必要以上に受ける部門がある一方で,そうした規制を受けずに すむ部門があることは,競争上問題であるとした。
コンファレンスにおいては, この後,フロアか らの質問 ・意見等があり討論 が行われた。なお,最後の総括報告の終了後 も,全体討論が行われたが, ここ ではそれ も含めて,第 1セ ッションの諸報告に関連す る議論を紹介す ることと す る。
第 1 セ ッションに関連す る議論 としては,立命館大学の福光氏が,井村報告 に関連 して,アメ リカの制度をパラレル ・バ ンキング ・システムと規定 し, こ れを証券市場まで拡張 して考えるな らばパラレル ・ファイナ ンシャル ・システ ムであるとした点 につ き,その含意について質問がなされた。
これにたい して井村氏 は,パ ラレル ・バ ンキ ング ・システムとい う用語 は,
氏にあってはアメリカの金融 ・証券業の産業組織論的にみた特性,すなわち集
『 転機に立っ金融 ・証券規制と資本形成・ ・ . 日米比較を中心に』の記録 195 中度が 日本 と比べて低 く,大規模金融機関において も銀行持株会社傘下に各金 融機関があ り,系列会社間には厳密なファイアー ・ウォールが存在す ることに 着 目した ものであると回答 した。すなわち,グ リスタ氏が強調 した規制のア ン バ ランスという問題 よりも,金融 ・証券業の組織的結びっ き,資金の流れが水 平的 ・並列的であることに着 目したものであり,その意味で証券市場にまで拡 張 して考えた場合 には,パ ラレル ・ファイナ ンシャル ・システムと規定できる
と考え られ るとした
。次に,伊藤報告に関連 しては,同様に福光氏か ら,アメ リカにおいてナロウ バ ンク等の提言がなされたのは,具体的には預金保険危機,さらには銀行持株 会社の存在,バ ンキ ングとコマースの分離等のアメ リカ金融 システムの特殊性 が反映 しているものであると考え られるが,そ うした提案を日本において行 う 理 由は何か との ものであった。
これにたい して伊藤氏は, 日本 においてアメ リカにおいて提案がなされたよ うなバ ックグラウン ドが存在 しないことは承知 しているが, 日本 におけるいわ ゆるバブル崩壊後の処理 に関連 しての議論において,自己責任原則を貫徹せよ との議論 と金融 システムの保護は重要であるとの議論が,規制,公的介入の根 拠を問 うことな しに行われていることにたいす る疑問か らものであったと回答 した。すなわち金融 システムが危機にあるとして,その際に公的に保護 しなけ ればな らない部分 と,そ うではない部分を峻別すべきでの立場か らの提言であ るとしたのである。伊藤氏はここで,規制および公的介入の根拠 という注 目す べ き論点を提示 した。
グ リスタ氏の提言 は,アメ リカにおける従来の規制の枠組みを ドラスティッ クに変革すべ きとの ものであり, これに関連 して多 くの質問がなされた。
まず,阪南大学の桜田氏か らは,規制を統一化す る効果についての疑問が提
示 された。その論拠 として,桜田氏は,①規制の統一化 は抽象的にな らざるを
えないので,実際の行為規制には役立たないのではないか,②反対に,具体的
規制を設けたとして も抜け穴探 し ( ループホ‑ リズム)がはびこることとなる
のではないか,③たとえば問題資産への準備率を統一す るとして も, これが ク
19 6 商 学 討 究 第 45 巻 第 4号
レジッ ト・クランチの発生原因 となるなどして,新たな規制が必要 となるので はないか, という 3 点を挙げた。
これにたい してグ リスタ氏は,保険会社を例に挙げ,それ らは州 レベルの規 制を受けているが,銀行 と同様に商業用不動産にたいする貸出等を行 っている が,銀行が受けているような準備率規制等は受けていない。 これ らの活動にた い して銀行 と同様に連邦 レベルの規制を課す ことは必要であるとした。どのよ うな場合 もループホールは存在す るが,現在の問題は,従来的な業態のカテゴ リーと業態の業務実態がかけ離れていることにあるのであ り,規制の統一化に は効果があ り,悲観的には考えないと回答 した。
次に,福光氏か らは預金保険的セ‑フティネ ッ トの拡大 ・統合化は, リスク を増加 させ,結果 として公的負担を増大 させ るのではないかとの質問がなされ
た 。
これにたい してグ リスタ氏 は,預金保険や年金給付保証公庫 ( PBGC) 等 の現状 こそが リスクが大 きく,公的負担の増大 につなが る可能性が高 いとし た。提言 のよ うにすべての個人金融資産等が保護 され るシステムとす るな ら ば,巨大な基金が形成され リスク対応力が増加 し,公的負担の増大の可能性 も 少な くなるとした。
明治大学の高木氏か らは,金融サー ビス業において一部業者が規制 されてい る場合,規制の及ばない分野における金融革新が,業界全体に影響を及ぼす と い うケースが従来多 々あったわけであるが,規制が統一化され るな らば, この ような金融革新が発生 しな くなるのではとの疑問が提示 された。 これは,鈴木 淑夫氏の 「 金融革新の一般理論」 とほぼ同様の観点か らの質問であった。
これにたい してグ リスタ氏は,氏の提言 は真の金融革新の機会を与えるもの だ とした。規制を統一化 し競争条件を同一にす ることにより,ループホール探 しのような ものでない,合理的なインセ ンティブを もった,実体経済および顧 客に役立っような真の金融革新が展開す ることとなると回答 した。
桜田氏か らは, さらに金融 ・証券市場規制 と金融機関にたいす る監督 との合
理的整合性 についてどのように考えるか との質問が寄せ られた。規制について
『 転機に立っ金融 ・証券規制と資本形成‑日米比較を中心に』の記録 1 97 はそれが過剰にな りコス トについて も過剰 となるおそれがある。アメ リカ金融 制度改革の現状 は,監督が重視 されてきているように思われるが, これについ てどのように考えるか との ものであった。
この質問にたい しては,グ リスタ氏およびブルーム氏 より回答がなされた が,まず,グ リスタ氏は,銀行にたいす る規制 ・監督の潮流 は,証券市場にお ける規制メカニズムを利用 した自主規制 にその重点が移 ってきているとした。
ひとっには,それは規制当局が変化する動 きに対応できないか らである。その 他の問題 は銀行 にたいす る直接介入である。 グ リスタ氏 は 1 9 91 年連邦預金保 険公社改善法 ( FDI CI A) において,監督当局が銀行業‑営業停止を含む直 接介入を行える権限を有す るようになったことを批判 し, これでは銀行業は衰 退す るとした。グ リスタ氏 は銀行 システムがアメ リカ経済において大 きな役割 を演 じるべ きであるとした。
次 にブルーム氏 は,株式市場の規制 について述べ るとし ,1 9 3 0 年代 におけ る証券取引委員会 ( SEC) の設立の主 たる目的は零細投資家の保護であった とした。その後 SEC は,証券市場のルール としてのディスクロージャー規定 の整備等を行 って きた .SEC のディスクロージャー規定に沿 った目論見書を 零細投資家が読む ことはまれである。また,機関投資家は, SEC の規制やそ の規定によるディスクロージャーを必要 としてはいない。 したが って,アメ リ カにおける現在のディス クロージャー規定 は,過剰で不要 な ものであるとし た 。1 9 7 5 年の証券取引法の改正 によ り SEC の規制権限は強化 され ることと なった。 しか し,規制は しば しば規制 しない状態よりも害 となる場合があると
した。
Ⅲ. 転機の要因としての構造変化について ( 第 2セ ッションの議論か ら)
第 2 セ ッションでは,主 として 日米両国の株式保有構造についての議論がな
された。 これは,金融 ・証券規制が転機にあるとして,それはまさしく市場構
19 8 商 学 討 究 第 45巻 第 4 号
追,産業構造が変化 したか らであって,その分析な しには転機を論 じることは できないとの認識か らであった。その際のキーワー ドは 「 機関化」であるが, その 「 機関化」がいわゆる自由化の進展す る過程で, 日米両国においてどのよ うに進み,結果 として株式保有構造がどのように変化 し,そこか らどのような 問題点が発生 し,また発生 しっつあるのかが,第 2セ ッションにおける焦点 と なった。
〔 北候報告〕
北候報告では,近年において 日本の株式保有構造の特徴であった,株式持ち 合いが動揺 してきていることを分析 し,それに対応 した政策の必要性を強調 し
た 。
まず北候氏は,株式持 ち合いについて,それを戦後の統制的な金融 システム の もとで発展 した ものとした。そ してそれはメイ ンバ ンク制,企業集団の形成 につなが り,それが企業の資金調達を保証す る機構 として機能 してきた。その 結果,メインバ ンクと企業集団が株主の代表 として,企業行動をモニタ リング す ることを企業の側 も受け入れ るというシステムが形成 されたとしている。 こ のようなシステムの もとで企業集団のメンバー企業 は,メイ ンバ ンク等による モニタリングを受 ける一方で,資金調達においてメイ ンバ ンクにより優先的な 地位を保証 され, これにより外部資金依存体質が定着化 したとしている。
このような高度成長期の企業金融 システムの特徴の一部をなす株式相互持ち 合いの機能 は,北候氏によれば,( 丑株式公開にともな う乗 っ取 り等の リスクの 抑制 ( および企業間関係の強化) と②株式の資金調達機能の空洞化である。
以上のような,株式持ち合いをその重要な部分 とする企業金融システムは,
1 97 0 年代以降の経済的 ・制度的諸条件の変化 と金融 システムの再編の過程で,
変化を余儀な くされて きている。金融 システムの再編 とは,具体的に,①企業
の外部資金依存度の低下,②銀行の資金運用難 とそれによる間接金融優位の空
洞化 ( 銀行のモニタ リング機能の低下) ,③資金配分機構の市場 メカニズム化
(日本銀行による統制的な ものか らの変化) ,( 参公募時価発行増資の普及によ
る株式持ち合いの維持費用の上昇であるとしている。
『 転機 に立っ金融 ・証券規制 と資本形成 ‑ 日米比較 を中心 に』の記録 19 9 こうした金融 システムの再編の進行 は, 1 9 8 0 年代後半 には 「 バ ブル経済」
と現在では呼ばれ る金融活動の活況を もた らした。企業金融面ではこの ことは 株式関連証券の大量発行 として現象 したが, この ことは株式持 ち合いの停滞を
もた らしたとしている。
さらにいわゆるバ ブルの崩壊により,企業や金融機関のバランスシー トの内 容が悪化 したことにより,株式持 ち合いの一部 として保有されていた株式を売 却す ることへの圧力を高めたことが,株式持ち合いをさらに動揺 させ, これが
メイ ンバ ンク制を解体 させ る方向への圧力 となっているとしている。
そ してこのような変化 は, 日銀信用に支援 されたメイ ンバ ンクによる資金供 給への依存 という従来の企業金融のあり方を,市場メカニズムに基づいた証券 発行による資金調達へ と変貌 させつつあ り, この限 りでは日本の企業金融を市 場メカニズムに即 した開放的なシステムに向かわせ るという点で重要な意義を
もっていたと,北候氏は分析 している。
ただ し ,1 9 8 0 年代 における株式関連証券大量発行 は,資本形成促進だけで な く金融証券市場の投機的拡張に用い られたとい う新たな問題を提起 した。 こ れにたい して北候氏 は, 日本の金融 システムが市場メカニズムに基づいたシス テムとして再編 されてい くためには,一方で資金調達 コス ト削減策 としての証 券規制緩和および資金供給促進策 としての金融機関の規制緩和を進めるととも に,メインバ ンクに代わる企業の行動を監視す るシステム (自社株保有の解禁 や株主の諸権利強化を含む株式会社制度の整備等)を構築す る必要があると報 告を締め くくった。
〔 ブルーム報告〕
ブルーム報告 は,アメ リカの株式保有構造に関するファク ト・ファイ ンデイ ングを中心 に,それ と資本蓄積および規制 との関係を考察するものであった。
まず,ブルーム氏はその報告をアメ リカの株式保有構造の特徴のまとめか ら始
め,( 丑かって株式のほとんどを保有 していた家計部門の普通株の保有比率は低
下 しているとはいえ,現在 において も 5 0% を超えている,② しか しなが ら株式
を保有 している家計 の割合 は 30% にす ぎない,③近年急速 に発展 して いる
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ミューチュアル ・ファン ドの株式保有割合は 1 0% 以下 にす ぎない,④機関投資 家による株式保有は少数のそれに集中 している,⑤個人による株式保有 も非常 に集中 している (1 %が家計保有分全体の 3 分の 2 を保有) ,⑥一握 りの機関 投資家が企業をコン トロール している ( 5 機関が 6 5 90 社の うちの 3 分の 1の 企業の ,1 0 機関が 5 分の 2 以上の企業の株式の 20% 以上を保有) ,⑦個人 は資 本金 1 億 ドル以下の企業 ( 全体の半数以上)の主たる所有者である,等の興味 深い事実を明 らかにしている。
次に,資本市場の役割について資金調達機能 と経営効率のモニタ リングであ るとしたブルーム氏は,アメ リカの第 2 次世界大戦後の証券規制等を歴史的に サーベイ した 。1 95 0 年代 60 年代の機関投資家の急成長 は,民間における給付 建の年金制度の普及が大 きく影響 した。そ して年金基金の破綻等を防 ぐことを 目的 として 1 9 75 年 には従業員退職給与保障法 ( ERI SA 法) が成立 した。 こ の ERI SA 法の成立 は,投資の観点か らは,個別の運用資産の収益率ではな くポー トフォリオ全体の収益率が問題 となるようになったという点で注 目され る。 このような動 きは,それ以前の規制体系を内生的に変革す る圧力 とな り, 1 97 5 年の証券取引法の改正 によ り,証券取 引における固定手数料制が廃止 さ れ,他方で証券取引委員会 ( SEC) の規制権限が強化 された。
1 977 年以降 はジャンクボ ン ド市場が発展 し, これは金融機関間の競争を激 化 させ,それ らの区別を暖味な ものとした。 さらに M&A や LBO の盛行 は, 企業 コン トロールに非常 に大 きな影響を与えた。
1 9 80 年代の前半 においては金融市場 において預金金利規制の撤廃 とい う大 きな出来事があ り,その他では貯蓄貸付組合 (S&L)の業務拡大がなされた。
この結果多 くの貯蓄貸付組合 は リスキーな投資を行 うよ うになったのであっ た。
1 9 80 年代の後半以降 は,商業銀行の業務拡大が顕著であ り, ミューチ ュア ル ・ファン ド,投資銀行業務,デ リバティブ等 に進出す る一方, ATM ネ ッ ト
ワーク等を通 じて地域的にも営業範囲を州を越えて拡大 した。また, この時期
における特徴的な動 きとしては,州 レベルで会社買収を規制す る動 きが出てき
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たことであり, これにより巨大機関投資家 は短期的運用成績を重視 して頻繁に 売 り買いす るという行動か ら,企業の行動をコン トロール しようとする,いわ ゆるコーポ レー ト・ガバナ ンスに興味を もっようになって きた。ブルーム報告 の冒頭のファク ト・ファイ ンディングに明 らかなとお り,一握 りの巨大機関投 資家がそうしようと望めばコン トロール可能な企業 は数多いわけであるか ら, この ことの影響は極めて大 きいわけである。 この他, この時期にはデ リバティ ブ市場の急速な拡大を挙げることができる。
以上のように,アメ リカの第 2 次世界大戦後の証券規制等を歴史的にサーベ イ したブルーム氏は,報告の最後で今後の証券規制等についての問題点を指摘 した。その第‑ は,ニ ュー ヨーク証券取 引所 に上場す る外国企業 にたい L SEC が米国の会計基準遵守を求めていることである。 これは巨大企業の株式 の取 引が グローバル化す るなかで,国際機関 による基準 ない し本国の基準 ( SEC が適当 と認めた もの)によるもの も認める方向で考えるべ きであると している。
第二,第三の問題点は,預金保険制度 と金融機関の貸出の質の関係およびデ リバティブの規制についてである。第四の問題点 は,各金融機関が伝統的業務 以外の業務に進出す ることになったことにより,規制機関間の調整が必要 とな
ることである 。
最後の問題点 として,ブルーム氏は,証券市場 にたいす る国内規制は,市場 が国際化す るなかでその有効性を失いっつあることであることを挙げた。
〔 コメン ト・討論〕
第 2 セ ッションの 2 報告 にたい して,佐賀卓雄氏 よ りコメ ン トが加え られ
た 。
まず北候報告については,大 きく 4 点の疑問点が提示された。その第‑ は,
北候報告においては株式持ち合いが進展 した背景のひとつ として,為替管理を
挙げているが, これはどうしてか との ものであった。第二 は,北候報告では時
価発行増資が株式持 ち合いのコス トを上昇 させ,持ち合い比率が低下 した点を
強調 しているが,1 97 0 年代前半において時価発行増資への転換が進んだのは,
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その資金調達機能が注 目されたか らであ り,実際にそ うした機能を果た したの ではないか との ものであった。また,株式持ち合いは通常 は同時に相互保有 と いうことはな く,一方的所有の後に一定期間を置いて逆方向の所有があり,結 果 として持ち合いとなるわけであり, この時間的ズ レによって も資金調達機能 を果た している部分があるのではとの指摘 もなされた。
第三の疑問点 は,企業 ( 法人)部門の資金調達において,部門内相互間のそ れを積極的に考えるべ きではないか という点である。北候報告 は, この点で家 計部門か らの資金流入のみに着 目しているのではないかとした
。第四の疑問点 として,仮に持 ち合い比率が低下す る傾向があるとして,将来のコーポレー ト
・ガバナ ンスの システムはどのよ うになると考えているのか との ものであ っ た。株主の権限が強化 されるとして, 日本のガバナンス ・システムはアメ リカ のそれに近づ くと考えているのか との ものであった (この点についてはブルー ム氏にも回答が求め られた) 0
次に, ブルーム報告にたい しては,まずアメ リカにおいて機関化現象が一層 進展 していて,機関投資家,個人投資家のいずれにおいて も集中度が顕著に上 昇 していることが明 らかにされていることに関連 して質問がなされた。その内 容 は,機関投資家 においては1 980 年代 にイ ンデ ックス投資が三割近 くまで上 昇 しているが, このイ ンデ ックス投資の増大 と株式保有の集中度の進展 との間
にはどのような関係があるか との ものであった。また,株式保有の集中度の高 まりと資本形成の間にはどのような関係があると考えているのかについて も質 問がなされた。
以上の佐賀氏のコメン トにたい して,まず北候氏は第一点 については,為替 管理が外資による株式保有に抑制的に働 いたとし,第二点については時価発行 増資の普及 は株式持ち合 いを困難に した第一歩ではないかと回答 した。第三点 については今後の検討課題 としつつ も,第四点については今後 はおそ らく機関 投資家による企業行動の監視 システムが重要な ものとなるのではとした。
次にブルーム氏 は,まず 日本のコ‑ポ レー ト・ガバナ ンス ・システムの変化
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の方向について,ポル トガルの例を出 しっっ,外国人投資家等の従来の投資家 と違 う層の投資家が新たに参入す る場合 は, システムは変化せざるをえないで あろうとした。また,株式保有が集中 してきているとい う状況において,一方 で会社買収 にたいす る規制が導入 され始めたことか ら,大機関投資家は会社経 営に従来より関心を もち,口をだすようになってきているとした。機関投資家
にによるイ ンデ ックス運用は増えて きているが,巨大機関投資家は 6 0 0 か ら 8 0 0 億 ドル規模の投資を行 っているわけであ り,イ ンデ ックス運用の うちのい く つかの企業の経営に思わ しくないケースがある場合には,取締役会等に経営改 善を要求す る動 きもでてきているとした。
第 2 セ ッションにおいて も,フロアか らの活発な質問 ・意見等があり討論が 行われたが, ここにおいて も総括報告終了後の討論における関連の もの も含め て紹介す ることとしたい。
まず,北傑氏の報告にたい しては,北海道大学の浜田氏か ら,①株式持ち合 いを論 じる際には生命保険会社について も視野に入れる必要があるのではない か,② 日本の株式保有構造 は,いわば土星の輪のように何層かに分かれてお り ( 内側に最 も緊密な企業があ り,外に向か って関係が薄 くなる) ,バ ブル期に はこれが外側に拡大 し,バ ブルの崩壊 とともに内側 に戻 ったと考え られないか との質問があった。
これにたい して北候氏は,生命保険会社 は相互会社であ り,ペーパーの もと となる比率計算には入れてr いないとした。また,第 2点 については,基本的に 質問者の考えに同意す るとし,株式持ち合いの解消にたいす る耐久性について は二つに分 けて考える必要があるとした。ひとつはバブル期に増大 した金融機 関による保有分であ り, これについては解消す る方向に向か うであろうが, も
うひとつ ともいうべ きコア部分については容易に解消 しないのではないか とし
た 。