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アメリカにおける証券会社破産と顧客の地位(八・完) : 連邦証券投資者保護法制を中心に

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六 近時のsIPAの運用状況、主な事例およびその課題

前回まで証券業者の経常破綻 (主に破産) を巡るアメリカ法の変遷について、連邦証券投資者保護法制を中心に 検討を行ってきたoすなわち、T九二〇年代からの投資者の権利確保に関するコモン・ロー上の議論、山九三八年 の 連 邦 破 産 法 改 正 に よ る 投 資 者 の 優 先 的 地 位 の 明 確 化 ' 一 九 七 〇 年 の t h e S e c u r i t i e s l n v e s t o r P r o t e c t i o n A c t ( 証

券投資者保護法、以下sIPAとする) に基づ-the Securities lnvestor Protection Corporation(証券投資者保

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3  アメリカにおける証券会社破ILlJEIと顧'#の地位(八・完) そこで、本号では前号までの経緯を踏まえながら'ご-近時におけるSIPAの運用状況、主な事例およびその 課題を検討したうえで'日本法の状況についてアメリカ法との比較検討を行い、この連載の結びとしたい。 (〓 近時のsIpAの運用状況 1 . こ れ ま で の 経 緯 と S I P A の 概 要 一九七〇年にアメリカでは証券業者の連鎖的な破産を受けて、sIPAが制定され、同法に基づいてsIPCが 創設された。その背景となったのは一九六〇年代後半の証券危機であり、詐欺等により証券業者破綻から顧客に山 丁 -一 億ドルを超える損害が発生した。証券業者の経営危機は、銀行の破綻の際のいわゆる取-付け騒ぎを意味する

"bank run"に対して、"broker run"と呼ばれ、証券市場への不信を生み、ひいては株価下落を招き、国家経宿の

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9  ァメリカにおける証券会社破塵と顧客の地位(八・完)

保護されると言われる。これに対し、市場価格の卜落、詐欺ないし契約違反 (fraud or breach of contract) によ

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10 した小規模な事件が一件となっている。 佃 二〇〇l年度-大規模破綻の発生-【 ‖一 これに対して、二〇〇一年度はsIPCにとって忙し-、大変な年となった。大規模な証券業者の破綻が発生し、 その処理に伴う管財人に対する融資額ないし前貸額は一億一、二〇〇万ドルで (補償対象となった投資家数は一七 九、五〇〇)、前年度の約五倍に膨らんだためである (二〇〇〇年度のその融資総額は二、三〇〇万ドルで、投資家 数は一、7四八、破綻開始件数は五件)。それまでの融資の最高額が7九八7年の六、三〇〇万ドルであったことか ら し て も 、 二 〇 〇 一 年 度 は そ の 約 二 倍 に も な り 、 S I P C の 負 担 が 急 増 し た こ と が わ か る 。 二 〇 〇 . 年 度 に お け る 事例の内訳を見ると、新規事件が二一件、sIPC以外の管財人が任命された事件が七件、sIPCが管財人とな った事件が三件、sIPCが直接支払手続で処理した小規模な事件が二件となっている。それまでの破綻開始件数 の最高は一九九二年の一三件であり、新規事件数では過去二番目となった。

二〇〇一年度には二件の大規模な破綻処理が開始されたが、それは、第一に、Donabue Securities ofCinninnati

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11  アメリカにおけるFTLlT:_券会社破l)IIと顧客の地位(八.完) 3   二 〇 〇 二 年 度 -小 規 模 破 綻 の み 〜 二 〇 〇 二 年 度 は 「 良 い 年 で あ る 」 と の コ メ ン ー が s I P C の 理 事 長 に よ り 出 さ れ て い る 。 こ れ は 、 新 規 事 件 が 五 件であったがt sIPC以外の管財人が任命された事件はな-t sIPCが管財人となった事件が二件で、sIP cが直接支払手続で処理した小規模な事件が三件となったことから、sIPCの裁量の範囲内で処理できたためで 一に一 ある。 4   二 〇 〇 三 年 度 -連 鎖 的 破 綻 等 の 発 生 -二〇〇三年度には特にその年を総括するような表現は用いられていないが、前述したように新規事件は若干増え て七件であった。その内訳はsIPC以外の管財人が任命された事件は四件で若干多く、SIPCが管財人となっ た事件が三件であり、SIPCが直接支払手続で処理した小規模な事件はなかった。そのなかで特に注意を要する のは、後述するように証券業者の連鎖的破綻が発生したことである。 そ の ほ か s I P C の 一 般 的 な 活 動 と し て は 、 二 〇 〇 三 年 度 か ら 、 s I P C は s I A   ( S e c u r i t i e s I n d u s t r y -I _ _ ) Assoniatioコ、証券業協会) と協力することになった点が注意を引いている。 (二) 近時の主な事例の動向 ( ; I 1.A.R.Baron&Co.の経営破綻関連事件等 (破産届出日一九九六年七月三日) 川 事件の経緯と会計士に対する損害賠償請求の提起

本件はsIPCが破綻した証券業者の会計監査人 (BDO Seidman LLP、以下BDOとする) の責任を追求した

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14 ( 〓 1 一 Donabue&C0..1nc.の破綻事件があり、そこではsIPCの管財人とSIPCによる会計監査担当者に対する六 〇〇万ドルもの賠償請求について、sIPCは顧客に代わって訴訟を提起する権利は有するが、会計士らは破産証 券業者の顧客を認識していなかったとして'第三者に対する会計士らの責任を否定している。 ハ ー 〜 : ・ 他方、会計監査企業と会計士の責任を認めたものもある。二〇〇二年のR.D.Kusbnir&Co.の破綻事件では、 破産裁判所が管財人としてsIPCによ-'破産した証券業者の以前の会計監査企業と二名の会計上に対して、普 門家としての職務違反と過失による不実表示を理由に、損害賠償を求めて提起された訴えを認容している。そこで

は、sIPCが会計監査担当企業らは一般に認められた会計基準(Genera-Accepted Accounting S{andards) と

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15  アメリカにおける証券会社破産と顧客の地位(八・完) 極的に資金を集めたが、」九九六年夏にはそれも行き詰まっていた。 そこでl九九六年八月にsIPCは連邦地方裁判所に対して保護命令の発行を申請し、管財人が任命された。管 財人が補償対象を決定したが、その決定に対して、三人の請求者らがネズミ講的策略で被った損失の請求を行った。 それらの請求について、管財人はそのうち二人は補償対象にはならないと主張した。 しかし'破産裁判所は管財人の主張を否定し、請求者らは証券を購入するため同社に資金を預託していたとした。 地方裁判所もこの破産裁判所の決定を支持したが、管財人とSIPCが異議を申し立てため、控訴裁判所で審理が 行われた。 佃 控訴裁判所の判決 こ こ で 、 管 財 人 等 が 補 償 を 否 定 し た 理 由 は 主 に 三 つ に 分 か れ る 。 そ れ は 、 第 一 に 、 請 求 者 ら は 破 産 し た ○ -d

Naples Securities社ではな-'別の関連会社である0td Naples Financiat Servicesに委託しており、破産会社の

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者らは債券 (bonds) を購入していたと合理的に考えてお-、債券はsIPAの証券の定義に含まれている。そし

て第三に、管財人等はsIPAの顧客の定義のうち「破産業者が証券業者としての通常の事業において受領等をし

た証券に関する請求権を有する者」という点を取り上げているが、本件では、顧客の定義に関する 「証券を購入す

る目的で (for purpose of purchasing securities)破産業者に現金を預託したすべての者も含まれる」という点を

重視すべきであり'「通常の事業」範岡であったか否かは問題ではないとしている。 刷   若 干 の コ メ ン ト 本件は、別会社を使う等といった複雑な架空投資話を使った証券業者による詐欺が問題となったケースである。 そうした詐欺の犠牲となった一部の顧客らからなされた補償請求について、管財人とSIPCは補償を否定したの に対し、破産裁判所、地方裁判所、控訴裁判所が、請求者らによる実質的な証券購入目的を認定して、補償を肯定 したものである。裁判所がsIPAに基づ-補償対象となる顧客の定義に関して'解釈を広げることによって投資 者を救済したものとして注目される。 3.StrattonOakmont社の経営破綻事件 (破産届出日一九九七年一月二四日) 叫 破綻の経緯

一九九七年7月二四日、仲介ブローカー(introducing broker.IB) であるStratton Oakmont社 (以下t

Stratton社) は不正等を理由としてNAsDから除名された後すぐに、破産法第二章に基づく申請を裁判所に行

った。そして、ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所は、sIPAに基づき同社の顧客の保護命令を出した。そ

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21  アメリカにおけるiL7-:券会社破産と顧客の地位(八・完)

する顧客には該当せず、一般債権者 二enders) に当たると主張し、補償の実施を拒否していた。しかし、控訴裁

判所は異常な投資ファンドとは異なり'社債の販売は同社の事業活動としては異常なものではな-、本件の請求者

らは証拠資料から見ると'「貸付ではな-、投資の意図があった (intended to invest.not loan)」として、sIP

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22 sECが同社と二人の役員について破綻後に詐欺で告発している。 本件破綻では'約10、〇〇〇の顧客勘定がおよそ一〇の別の証券業者に移管されている。そして、sIPCの 理事長のDon氏は本件に関連して'sIPCが関与したほとんどのケースには事後的に窃盗が発見されていると 認 識 し て い る と 述 べ た う え で 、 次 の よ う な コ メ ン ト を 出 し て い る 。 す な わ ち 、 s I P C 基 金 は 証 券 業 者 に よ る 窃 盗 の穴埋めに主に使用されている。しかしt sIPCは一九七〇年以来三億五'四〇〇万ドルを融資し、三三億ドル の顧客資産の返還に携わってきたものの、元来は投資詐欺への補償を目的として設立されているわけではない。そ れに現在sIPCは約一〇億ドル以上の基金を保有しているが、全米ではそれをはるかに上回る毎年一〇〇億ドル から四〇〇億ドルもの投資詐欺が発生していると見積もられている、と。 ・ ; I . 1 7.NewTimesSecuritiesServices社の経営破綻事件 (破産届出日二〇〇〇年二月一六日) 佃 事件の経緯 本件証券業者破綻における全体の顧客通知数は三、六六八でありt SIPCによる融資総額は二、二四四万ドルと なっている。本訴訟では証券 (補償上限五〇万ドル) か現金 (補償上限一〇万ドル) かの区別で、sIPCとSE cとの見解が対立し、sECの主張が採用されたものである。そして結局、架空の投資ファンド (nonexistent fund) に対して投資した資金を証券業者により横領された投資家らは、現金ではな-、証券としてsIPAに基 づく請求を受けることになるとの判決が第二巡回区控訴裁判所によってなされた。 破綻までの経緯の概要を見ると'本件において中心となった証券ブローカーは古典的なネズミ講的な策略を用い

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26 いる)。本件破綻では、一七三、五〇〇の顧客勘定 (顧客資産l〇億ドル以上) を公告から迅速に (一週間以内) 別 の証券業者であるSWS Securities社へ移管されていることから (それまでの顧客数の最高は、一九九五年二月に 破綻したニューヨーク市を本拠としていたAdler.Coleman Clearing社の六五、〇〇〇の顧客数)、大規模な顧客勘 定の移管が行われたものとしても、参考となると思われる。 本件では、二〇〇万ドルまでの個人顧客は一〇〇%保護され、ほぼ一週間以内に自己の勘定にアクセスできたが' それ以上の大口顧客への補償はかなり困難とされ'現在においても破綻処理手続は継続中である。 佃 本件に関する二つの報告書 二〇〇一に発生したMIK Clearing社の経営破綻処理は前述したようにsIPCにとって過去最大の事例であっ たことから、sIPCは二つの専門知識を有する外部機関にそれぞれ別の視点による事後的な検証と、特にsIP cの基金の規模の妥当性について検討を依頼し、その内容が公表されている。

そのひとつは、二〇〇二年五月のDetoitte&Touche (D&T) による"Study of the Failure of MIK

C l e a r i n g . t h e S e c u r i t i e s L e n d i n g B u s i n e s s a n d t h e R e t a t e d R a m i f i c a t i o n s o n t h e S e c u r i t i e s t n v e s t o r P r o t e c t i o n Corporation"である。この報告書は、管財人や規制当局者との意見交換の経緯を検証した後、結論としてt MIK C l e a r i n g 社 は 資 本 規 制   ( s E C ル ー ル 一 五 C 三 -〞 )   や 顧 客 資 産 の 分 別 保 管 義 務   ( s E C ル ー ル 一 五 C 三 -三 ) に違反したおそれが強いとして、同社の活動上の問題点や規制上の問題点が指摘されている。

もうひとつは、二〇〇三年一月のFitch Risk Managementによる"Review ofSIPC Risk Profite and Practices‥

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27  アメリカにおける証券会社破産と顧客の地位(八・完) おいては、MIK Clearing社の破綻原因 (内郭的要因と外部的要因) を詳細に検討した後、証券業界の構造的な分 析にも言及したうえで 二九九九年七月二九日公表のsEC、ニューヨーク証券取引所およびNAsDによる共同 調査"JointStatement‥Broker・DealerRiskManagementPractice"を引用しながら)、sIPCの現行の監視体制 の問題点等を指摘し、い-つかの勧告を行っている。そこでは、MIK Clearing社の破綻で最も問題であったのは リスク管理機能の不備 (内部とSIPC等の外部のもの双方) であるとし、具体的な勧告としては、①sIPCが リスク監視チーム (数名の金融アナリストからなる) を創設すること、②SECとNAsDは必要な情報をSIP c に 提 供 す べ き こ と 、 ③ S I P C は s E C 等 と 共 同 検 査 を 実 施 す る こ と 、 ④ S I P C に よ る リ ス ク 監 視 の 手 続 と 責 任等を明確にすること等を挙げて、リスク要因の算定方法を説明している。そして、現在のsIPC基金の規模 二二億ドルと緊急時用の二〇億ドル) が破綻対応の準備として十分かどうかについては、当面底をつ-というこ とはないであろうとしている。 刷 関連訴訟 なお'この事件に関連して二つの訴訟が提起されている。ひとつは、現金担保 (cash coltateral) はsIPAL の顧客資産には入らないという理由による、返還請求に関するものである。破産裁判所と地方裁判所ともに原告の ( 別 一 二八〇〇万ドルに及ぶ請求を退けているが、控訴中である。もうひとつは、sIPCの管財人と移管先証券業者

ら (Ferris.Baker Watts社,E Trade Securities LLC) による'証券の貸主 (securities lender) に対する損害賠

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28 以上に見た事例のそのほかにも、証券業者の破綻事例に関連してい-つか大き-取り上げられているものとして

は、次のようなものがある。第一に、in re John Dawson&Association社の破綻においては'破産裁判所におい

てsIPAの管財人が、不正な資産譲渡により五七万八、六八六ドルをオーナー、役員および取締役らから取-戻 す判決と、同じく別の最高執行役員を含む二人の役員から四〇万四、四九六ドルを取-戻すことを認める判決が出

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されていな。

第二に、一二の小規模な証券業者の取引を清算していたCtearingServicesofAmerica社 (CSA) の経営破綻

においては、その前に破綻したニューヨーク市のPark South Securitiesの破綻 (二〇〇三年二月五日に破産認定)

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31  アメリカにおける証券会社破庇と顧客の地位(八・完) が 不 十 分 と な る リ ス ク が あ る こ と 、 で あ る 。 川   s I P C へ の 問 題 提 起 L 3 7 T 次 い で s I P C に 対 し て は 、 三 つ の 問 題 を 指 摘 し て い る 。 そ れ は 、 第 l に 、 投 資 者 向 け の 説 明 の た め の 冊 子

("How SZPC Protects You"という表題で、sIPCの役割、補償の範囲および後述の投資者からのよ-ある七つ

の質問等を説明している) とウェブ・サイー上の内容をわかりやす-改善すること、特に無断取引に関する苦情の 申立方法について説明すること、第二に、価格変動リスクは補償対象外である旨を公吉に入れること、そして第三 に 、 s I P C の 説 明 書 に 無 断 取 引 へ の 警 告 を 入 れ る こ と 、 で あ る 。 そ の ほ か 、 F e d e r a -D e p o s i { e H n s u r a n c e C o r p o r a { i o n   ( 以 下 F D I C と す る )   と S I P C は 異 な る こ と   ( す な わ ち 、 F D I C と は 違 い 、 s I P C の 補 償 対 象はかな-限定されること)、SIPCの非会員証券業者との取引に注意すること へ補償対象とならない) 等を明 確に提示すべきであるとしている。 こうした問題点の指摘を受けて、sIPCは随時投資家向けの冊子とウェブ・サイト上の内容を改善し'無断取 引、非会員証券業者との取引や新しい投資詐欺といった注意すべき情報の紹介等といった種々の警告を行い、でき るだけ平易な表現により投資者に注意を促している。そして破綻処理における補償を受ける際には、sIPCのウ

ェブ・サイーにおいてオンラインによるクレームを受け付けているほか (On-ine C-aim Form Center)、補償手続

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33  アメリカにおける証券会社破塵と顧客の地位(八・完) ( m 一 唆に富む。ここでは、sECが二〇〇〇年に公表した報告書の内容を検討する。なお、その内容の一部はすでに実 施されてお-、前述した二〇〇三年のsECの報告書にもそうした内容が含まれている。 そ こ で は 、 s E C に よ っ て 主 に 七 つ の 勧 告 が 出 さ れ て い る 。 そ れ は ' 第 一 に 、 s I P C が s I P C に 基 づ く 破 綻

処理のための手続を開始するときには、sECの市場規制部(the DivisionofMarket Regutation.MR) は文書で

説明を受けること、またsECの市場規制部と執行部(the Di<ision ofEロforcemeコt) が手続の開始ないし投資者

へ の 補 償 を 求 め た に も か か わ ら ず 、 s I P C が そ う し た 請 求 を 拒 否 す る よ う な 場 合 に も   ( S E C と S I P C と の 間 の意見の不一致。その例として、前述したNewTiヨeSSecuritiesSer<ices社の破綻事例参照)、文音で理由等の提 出 を 求 め て お -こ と で あ る 。 い ず れ も S I P C に 文 書 で s E C へ の 報 苦 を 求 め る も の で あ り 、 事 案 の 処 理 の 続 . を 図-、事後的検証を行うためである (なお、二〇〇四年度においてsECは、大統領任命の五名の委員のもと、四 つの部と一八の局が設けられ、約三、一〇〇名のスタッフが活動している)0

第二に、市場規制部とコンプライアンス検査および審査局 (the Office of CompHance lnspec{ions aコd

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に、市場規制部、執行部、北東地方局(the Northeast Regiona10ffice、NERO、経営破綻した多-の証券業者の

本 拠 は ニ ュ ー ヨ ー ク に あ り 、 こ の 局 の 管 轄 下 に な っ て い る ) と コ ン プ ラ イ ア ン ス 検 査 お よ び 審 査 局 は 、 s I P C に 関連する諸問題について定期的に情報交換を行うことである。現在市場規制部はsIPCのスタッフと頻繁に電話 で 連 絡 を 取 -合 っ て い る ほ か 、 三 カ 月 に 一 回 は ミ ィ -テ ィ ン グ を 開 き 、 S I P C は 市 場 規 制 部 へ 毎 月 財 務 報 告 書 を 提 出 し 、 さ ら に 市 場 規 制 部 の ス タ ッ フ は 必 要 に 応 じ て s I P C の 理 事 会 の ミ イ -テ ィ ン グ に も 参 加 し て い る o L か し、市場規制部以外のsECの部局もSIPCの状況について、認識してお-必要があることからこうした点が提 案されている。 第 四 は 、 投 資 者 教 育 お よ び 支 援 局 ( t h e O f f i c e o f t n v e s t o r E d u c a t i o n a n d A s s i s t a n c e 、 0 t E A )   と の 連 携 に つ い てであり、市場規制部は投資者教育および支援局と共同で、sIPCの現在の配布冊子の内容が十分かどうかを検 討し、適切な変更を促すこと、投資者教育および支援局はそのウェブ・サイーにsIPCの内容を加えること (こ の監査後実施済み)、そして投資者教育および支援局はsIPCの職員と共同で、sIPCの配布肝予 (または同

様の説明) を連邦機関である消費者情報センター(the Consumerlnformation Center.CIC) のカタログに含めて

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36 川 投資者協会理事長からのsIPCへの批判 (一九九九年) 大 衆 投 資 者 仲 裁 法 曹 協 会   ( P u b l i c I n v e s t o r A r b i t r a t i o n B a r A s s o c i a t i o n 一 P I A B A )   の 理 事 長 で あ る 弁 護 士 か ら 、 sIPCによる破綻処理の非効率性等を中心とする強い批判が一九九九年になされ、連邦議会やsECに対して制 ・ L I ' 度の見直しが求められている。 そうした批判の内容は、sIPCの破綻処理は非効率的であること (例えば、.;九九八年には破産証券業者等か ら凹〇万ドルを取り戻すのに三六〇万ドルもかかっているケースもある)、補償範囲となる 「資金の横領」 の範囲 が不明確であり、さらに明確にする必要があること、SIPCの理事に公益代表者を増やすこと、管財人の弁護上 をもっと広い範囲から選任すること (現在は狭い範囲から選任されている)、である。さらに'大衆投資者はsI pcをFDICと同視しており'誤解が多いことも指摘している。 潮 投資者のsIPCに関する認識のアンケート調査 (二〇〇一年) sIPCの役割と活動について、アメリカの投資者にどこまで正確に認識されているかは証券市場に関わる重要

な問題である。そこで、二〇〇一年の五月にsIPCと全米投資クラブ協会 (the National Association of

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37  アメリカにおける証券会社破産と轍客の地位り\・完) 今後sIPCは各種機関と共同により、さらなる啓蒙活動を実施する必要があるとしている。 刷 sIPCの補償上限の超過部分(excessSIPCcoverage) に関する民間保険の問題 sIPCの補償範囲の不明確さから、前にも触れたように既存の保険会社の四社中三社が、二〇〇三年にsIP ( ; ) cの補償上限の超過部分に関する民間保険の引き受けから撤退するとの不安が関係者から指摘されている。これは、 近時の証券業者の破綻と'補償金額の増加によ-、民間の保険会社では対応しきれな-なっているという状況が伺 われる。 そのような保険の一部はロンドンのロイドが引き受け手になるようであるが、それだけでは十分ではない。そこ で、大手の証券業者の団体とNYSEのメンバーらは'新しく補償を実施するための組織として顧客資産保護会社 (CustomerAssetProtectionCo..CAPCO) を設立し、S&pから.<の格付けを得ている。この顧客資産保護会社 は詳細は明らかではないものの、sIPCの補償上限の超過部分に関して補償を引き受けるとともに'投資者に対 して詳細な情報提供を行うこととされている。 3.SIPCに関する理論的な問題提起

sIPCに関する著名な論文が一九九九年にカリフォルニア大学の教授により、Southern California Law

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38 示され、sIPAは破産コスーの負担について、経済全体 (緊急時の公的な援助等)、破産した証券業者のl般債 権者 (破産処理費用のコスー負担等)、顧客 (補償範囲の誤解等) にも課すものであるとしている。次いで第二に、 モラル・ハザード (倫理の欠如) の問題として、顧客(補償があるため証券業者に対する監視機能の低下を招-こ と等)、証券業者 (リスクの高い業務へ進みやす-なること等) および証券業界全体のもの (公的な補償に依存し て、自主的な詐欺防止機能が低下すること等) が取り上げられている。さらに第三に、現行のsIPAは破綻の防

止 (failure prevention) ないし破綻に関連した不正の防止 (prevent misconduct) を図ることをほとんど念頭に

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19-1997)′ 中」tJ塔値毎怒号三部豊田(U〔10) uぐニtJ望′ BNA, Convicted Former CFO of A. R. Baron Sentenced to 15-Year

Maximum Prison Term. 30 See. Reg. L Rep. 934 (6-19-1998)心中忌qJ点線竪eりAJO

(盟) SIPC v. BDO Seidman LLP. 2d Cir., Docket Nos. 99-7719 (L). 99-7720 (C) (6/5/2000) .

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(S3) S. D. N. Y.. SIPA Proc. No. 9718074A (TLB), BNA. Some Stratton lnvestors Not `Customers'Entitled to SIPC Protection,

Court Decides, 31 See. Reg. L. Rep. 136 (1129-1999).

(53) BNA, Former Stratton lnvestors Not Customers Entitled to SIPC Protection. Court Affirms, 32 See. Reg. L Rep. 563 (5111

2000) .

(式) S. D. N. Y.. Case No.01-CVl2812 (RCC) (ll ′14/03). BNA. Unauthorized Stock Sales Compensable ln Securities. Not Casll.

Distl・ict Court Says, 35 Sec. Reg.し. Rep. 2031 (12-8-2003)`

(EG) U. S. Bankruptcy Court. District of New Jersey. Adv. No. 97-02165 (SIPA) (RGj (Feb.19.2003) .

(cS) Abammed v. SIPC (loth., No. 0013214 (7/3/02), BNA, Primeline Customers Not Protected by SIPC, Phony lnvestments Not

Securities, Court Says. 32 See. Keg. L Rep. 1094 (8114-2000). BNA, Broker's victims Are Firm's customers Under Investor

Protection Law, Court Says, 34 Sec. Reg.し. Rep. 1147 (7-15-2002).

(curt) 295 F. 3d 1100(loth Cir.2002) , No. 00-3214(7//3/2002).

(宍) BNA, 31 See. Reg. L Rep. 1580 (12-3-99) , BNA, SIPC Pays $31 Million to lnvestors in lts Most Expensive Case in History, 32

Sec. Reg. L Rep. 8 (6-26-2000).

(宍) 2d Cir., No. 02-6166 (6/8/2004).

(Pf,・ノこ迂考W#,騒7壁謹上吋胡銀嶺C/土Ef=14:(L fト

(42)

等 偶) BNA, SIPC, Trustee Arange Transfer of lnvestors ln Bankruptcy Proceeding of MJK Clearing, 33 See. Reg. L. Rep. 1443

(10-8-2001) , BNA, SIPC Advances to lnvestors in 2001, Roughly Five Times Previous Yeal・'s Total, 34 Sec. Reg. L Rep. 435

(3-18-2002).

(宗) In re MJK Clearing. Inc. (Ferris, Baker WattsJnc. V. Stephenson) , 2003 WL 1824937 (D. Minn. April 7, 2003).

(鍔) Stephenson. et al. V. Deutsehe Bank AG, et a1.. 282 F. Supp. 2d 1032 (D, Minn. 2003).

(Sq)鯨● e貫藁りぐニtJ望′ In reJohn Dawson & Association,Inc. (Holland v.Cho. et al.).No.01 A 00337 (Bankr. N. D. Ill. April

25. 2003′ 鯨1 'e弄蔑uぐニtJ望′ In re John Dawson & Association. Inc. (Holland v. Cho. et al.), No. 00 A 01006 (Bankr. N. D,

IIL July 18, 2003日

(講) ∽-p.ugrti--Jo(-I;ヽ刃6=ヨ1F-gNews Release櫛堅o Claims Forms to Go Out to 2. 300 Investors in Eberhard Park South

Brokerage Firm Collapse (February 26. 2003). 3,000 Accounts Frozen il一 St.Luis Brokerage LiquidatioII Tied to Eberhal・d′′Park

South Brokerage Firm Collapse (September 10. 2003). 3.200 Accounts With $106 Million九/loving to Saxony Securities from

Failed Clearing Services of America (September 12, 2003).

(宍)トTiiilはgGAO. Securities Investor Protection : The Regulatory Framework Has Minimaized SIPC's Losses

(GAOノGGD-92-109)′ 了00 7さeGAO. Securities Investor Protection : Steps Needed to Better Disclose SIPC Policies to Investors (GAOl

01-653)鉾C

(wc,7) GAO. supra note 2. at 16.

(Es) GAO.Ibid.

(発)糧韓LiぐニtJ空′ ∽-?.UeやH卜・車←⊥⊥e "Avoiding the Most Common Claim Process Errors"′ 悪軽口ぐニtJ聖堂揮:描

亘とe童LgLl量e "Seven Questions lnvestors Ask Most Often"覇噌…こ、

(C'C,?) GAO. supra note 2. at 7.

( S) SEC. Oversight of Securities Investor Protection Corporation (Audit 301). March 31. 2000.

(a) BNA. SIPC Says SEC Should Have Power to Shut Firms for 'Pervasive'Unauthorized Trading. 33 See. Reg. L. Rep. 1137

(816-2001).り∈村長臣∽-ELU空′ 聖賢照対策車eLJ受Li導鞘1116壁誕心∽h]U工上と1:hケ''(机臣嶋崎AJ・-ij墨」巨ニTQ亡

(43)

43  アメリカにおける証券会社破Ji'(:-:と顧客の地位(A ・ 'J't)

ここで一九九八年に特に多額のコストを要したとして批判の対象となっているのは、主に前述したStratton Oakmont Securities

社の経営破綻処理である。この事件では人規模な証券詐欺があったことがわかっている。 ( 4 3 )   B N A . S u r v e y F i n d s l n v e s t o r s L a c k A w a r e n e s s O f H o w t o D e a l W i t h t n v e s t i n g P r o b t e m s . 3 3 S e c . R e g . L R e p . L t 4 8 ( 甲 6 ・ 2 0 0 ) ) . この調査の内容は五つの項Hからなり、生存者 (survivor) クイズというタイトルが付けられている。_司クイズの内容については、 s I P C の ホ ー ム ペ ー ジ で 知 る こ と が で き る o

(S) GAO.Securities tnvestor Protection.supra note2at20.BNA.Dinget1Reteases Letters on SIPC.Says GAO to Report on

lssuesbyMarch12.36Sec.Reg.L.Rep1343(2・23・2004).こうした問題について、sIPCは証券業協会 (SIA) と共同で証券

業首に説明しているとされる。

(4) Tl10maS W.丁oo.Who Watches the Watchers?.the Securities lnvestot.Protection Act.Investor Confidence.and the

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(45)

45  アメ1)カにおける証券会社破産と顧客の地位(八. ',lt) こうして証券会社の経営破綻に対処する制度である投資者保護基金が創設されたことは、金融機関のセーフテ ィ‥不ツトという観点からすると、銀行の預金保険機構 (預金保険法に基づき昭和四六年に創設)、保険会社の保 険契約者保護機構(保険業法に基づき平成七年に創設され、平成ll〇年に基金から機構へと移行) とならぴ'主要 な金融機関の経営破綻への対応がすべて整備されるという画期的な意義を有している (なお、平成一六年には証券 規制に隣接する商品先物規制においても、商品取引所法に基づき委託者保護基金制度が創設され、平成..七年から 始動している)。他方、こうした証券会社ないし証券業者の経営破綻へのセーフティ‥不ツーの整備は先進国の間 ではかなり以前から整備が進んでおり、前述したアメリカのほか、イギリスにおいても同様の制度が金融サービス

法に基づいて一九八八年に創設され、二〇〇〇年に成立した金融サービス・市場法 (Financiat Services and

Markets Act) 二一二条以下に基づ-金融サービス補償スキーム (Financia-Serくines CompeロSation Scheヨet 旧

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62 2 一般顧客に対する補償額の上限 上述したように一般顧客に対する補償については顧客当た-一、〇〇〇万円という上限が設けられている (証取 七九条の五七第三項、証取法施行令一八条の九) (なお、平成一三年三月三一日までは特例措置として全額を保護 していた)。このように補償額が限定された理由は、証券会社の経営者や顧客 (投資者) 等のモラル・ハザードを 防ぐことが必要であるとされたことと、銀行の経営破綻におけるペイオフやアメリカ・イギリス等の制度との比較 ( ( . ) ) が考慮されたことおよび現実問題として投資者保護基金の財源が限られていること等にあった。この点、多-の先 進国ではこのような場合補償額に上限を設けることが多-、これまでの号で述べてきたようにsIPAでは証券に ついては五〇万ドルであり (そのうち現金については一〇万ドル) イギリスでは補償適格債権のうち三万ポンドま では全額、三万ポンド超五万ポンドの部分については九〇%まで補償するとし、結局補償の上限は四万八千ポンド と さ れ て い る 。 しかし、こうした補償額の上限の設定や上限の金額の妥当性については、再検討の余地もある。すなわち、証券 会社の経営破綻への対応は銀行の場合とは異なり、前述したように分別保管義務が適切に遵守されていれば、顧客 ・ 1. ・ : 資産は本来全額返還できるはずのものである。さらに、投資者によ-証券会社経営への監視を求めることはそもそ も困難であるため、全額保護では投資者の経営監視機能が弱まり、そのため経営者の責任が弛緩するといった意味 でのモラル・ハザードという状況も銀行の場合とは著し-異なっている。アメリカにおいては証券投資者の預託資 産 に 対 す る 所 有 権 は s I P A 制 定 以 前 か ら 当 然 の こ と と さ れ て お -、 s I P A に お い て も 現 実 に は 少 な い も の の 顧

客名義証券 (customer name securities) については補償の上限は適用されず (sIPA八条C項二号および一六

u

廿

T

(63)

63  アメリカにおける証券会社破産と顧客の地位(八・完)

券以外の特定ができない証券に関する上限としてもSIPAでは証券については五〇万ドルであ-、わが国の.、 〇〇〇万円という上限とはかなり隔た-がある。 なお、アメリカでは前述したように二〇〇三年度末までsIPAによる補償の上限を超えた顧客の請求 (C-aiヨS

over the limits) は三三九件であり、全請求件数 (六二三、四三五件) に対する比率では〇・.六-センー、金額

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88 ( 6 9 ) ( 7 0 ) ( 7 1 ) ( 7 2 ) へ 7 3 ) ( 7 4 ) ( 7 5 ) ( 7 6 ) ( 7 7 ) へ 7 8 ) ( 7 9 ) ( 8 0 ) 松岡啓祐「アメリカにおける証券会社破産と顧客の地位 (五こ専修法学論集ヒ七号一.〇頁以卜 二九九八年) 以下。 松岡・前掲注 (64)一一六貫以下。

Thomas W.JoO.supra note45.at L12)以下では、そうした投資者によるSIPCの補償制度に対する過倍ないし誤解といった

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9   ( a ) . ) ( 9 3 ) ( 9 4 ) ( 9 5 ) ( 9 6 ) ( 9 7 ) ( 9 8 ) ( 9 9 ) ( 1 - 0 ) ( 1 - 1 ) ( 1 - 2 ) ( 1 - 3 ) ( 1 - 4 ) ( 1 - 5 ) ( 1 - 6 ) 日本経済新聞二〇〇三年二月∴七日夕刊。丸荘証券の経常破綻では同社が機関投資家として買い受けた法人向け外債をリスクを 十分説明しないまま個人向けに販売した結果、損失を被った被害者数百名が被害者の会を結成し、救済を求めているようである。 特別レポート・前掲注 (49)一〇六頁。 北村・前掲注 (4二三〇頁では 「寄異な規定になっている」と指摘される。 近藤=吉原=黒沼・前掲注 (73) 三1<六頁。服部菅生 『新証券取引法講義[第七版]』 三 三貞 (泉文堂、∴〇〇四年) も融資 限度額の定めがないため 「支払制度が選択された場合の支払額よりも融資額の方が大き-なることもありうる」と指摘される。 S I P C N e w s R e l e a s e . Z n " M o s t E x p e n s i v e " C a s e i n i t s H i t o r y . S t P C R e t u r n s F u n d s t o N e a r r y t 0 . 0 0 0 ( n v e s t o r s ( J u n e 2 0 . 2 0 0 0 ) . S Z P C I N e w s R e l e a s e . B a n k r u p t c y C o u r t C l e a r s S a l e o f T r o u b t e d M i n n e s o t a B r o k e r a g e F i r m ( O c t o b e r 2 . 2 0 0 ) ) . S I P C I N e w s R e l e a s e . S t P C E x p e c t s t o A d v a n c e $ 5 M i l l i o n t o t n v e s t o r s H i t b y T h e f t a t O h i o B r o k e r a g e F i r m ( A p r i t 3 . 2 0 0 ) ) . S Z P C I N e w s R e l e a s e . $ 6 4 M i l l i o n i n C u s t o m e r A s s e t s a t D e n v e r B t ・ o k e r a g e F i r m T r a n s f e r e d t o l n d i a n a p o l i s S e c u r i t i e s   ( M a r c h 3 1 . 2 0 0 3 ) . S I P C . N e w s R e l e a s e 一 3 . 2 0 0 A c c o u n t s w i t h S t 0 6 M i u i o n M o v i n g t o S a x o n y S e c u r i t i e s f t ・ o m F a i l e d C J e a r i n g S e r v i c e s o f A m e r i c a ( S e p t e m b e r ) 2 1 2 0 0 3 ) . 全国商品取引所連合会『平成九年度商品取引員経営構造調査報告書』 六四百二九九八年)、産業構造審議会商=仰取引所分科会 『商‖川先物市場制度の改革について (中間報告)』七頁以F (二〇〇三年.二月一.四日)。なお、預金保険別度については、慎金保 険法研究会 (佐々木宗啓代表) 『逐条解説預金保険法の運川』 (きんざい'∵〇〇二年)'保険契約者保護機構については、山F友 倍=竹慣修-洲崎博史-山本哲生 『保険法』 (有斐閣アルマ、.九九九年、洲崎教授執筆部分) 等も参照。 S I P C . s u p r a n o ( e こ . a t u . 〕 -. 日本経済新聞一九九八年九月三〇日朝刊、日本経済新聞一.〇〇一.年二月二■.H軌刊。■ 読売新聞二〇〇〇年六月二三日朝刊。 朝日新聞二〇〇〇年三月七日朝刊。

SIPC.supranote t.at to上.〇〇三年においては'sIPCとその管財人は積極的に関連訴訟に関与したと評価されており、実

際その数はかなり多い。

(91)

91  アメリカにおける祉券会社破産と顧客の地位(八・完) 110 109 108 114 113  112 AsD等) 単独のもの等がある。 (1 -) SIPC.ibid"at t81年次報告書のこの箇所では、そうした処理方法、管財人名・任命日、破綻証券業者の登録日・破産申請口'顧 客数等がl覧表になっているo 口本投資者保護基金に対し、旧証券投資者保護基金は入会金l五〇万日、年会費三〇〇万円等として負担金を重くしていた。 日本証券経済研究所・前掲注 (50) 二〇ヒ頁。 T h o m a s W . J o O . s u p r a n o t e 4 5 . a t t t 2 2 . (1 1 1) 吉川書簡「金融市場におけるセーフティネット-預金保険機構、保険契約者保護機構、投資者保護基金-」小鳥康裕教授退官記 念論集『現代企業法の新展開』 六四四'六凹五百 (信山社、二〇〇l年) では、証券会社が負担するリスク変動の速さとその公衆 縦覧のタームの短さ 二言月毎) からすると、自己資本規制比率を負担金率に反映させることは難しいため、分別保管不備のリス クとの関連で可変負担金率が基本的には設定され、自己資本規制比率も補完的に配慮されるべき、とされるLlもっとも'分別保管 については外部監査が強制されるようになっており、明確な差別化は困難であるようにも思われる。そこで'可変負担金率を採用 する際に問題となる経営破綻リスクは経営状況を反映した自己資本規制比率を参考にする方法も、ありうるのではなかろうか。 基金の規模の小ささは繰り返し懸念されているところである(E本経済新聞1九九九年一月二三=朝刊、同二〇〇▲年二月二日桝 刊)oなお'イギリスでは経営破綻後に関係機関から徴収して財源に当てる方式を採っているようである。石黒∴別掲注(聖 二正真: =本経済新聞二〇〇二年三月一三日朝刊c

StPC.supra note t.at t41SIPCのその他の収入にはそうした政府証券の利息のほか'会費、過去の融資金の回収額'政府証

券の売却益がある。

八 結びに代えて-市場機能の確保を中心にー

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参照

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