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新生ストラテジーノート第 206 号 2015 年 12 月 1 日 調査部長江川由紀雄 (03) 住宅金融支援機構 MBS の自己資本比率規制上の扱いに関して 証券化エクスポージャー の定義に合致するが 機構向けとして

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住宅金融支援機構

MBS の自己資本比率規制上の扱いに関して

「証券化エクスポージャー」の定義に合致するが、機構向けとして扱うことも「可能」

現行の日本における自己資本比率規制では、米国の Fannie Mae や Freddie Mac が発行 するMBSは証券化エクスポージャーではないものの、住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)が発 行するMBS は証券化エクスポージャーの定義に合致するとされている。しかし、機構 MBS(旧住 宅金融公庫が発行した回号を含む)の条件に組み込まれている「受益権行使事由」が発生するま では、発行体が元利払いの債務を負うため、住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)向けのエクス ポージャーとして取扱うことも「可能」とされている。 これは、2004 年 6 月のバーゼル合意(後に「新 BIS 規制」または「バーゼル2」と呼ばれるよう になった合意内容)を2007 年 3 月末から国内導入する際に改正された金融庁告示等と「金融庁 Q&A」から導き出される解釈である。その後、数次にわたり自己資本比率規制は改正を経てきて いるものの、この解釈に影響を及ぼすような改正はいまのところは行われていない。 バーゼル委員会では、証券化商品の資本賦課規則、信用リスクの標準的手法の見直し、同・ 内部格付手法の修正、信用リスクとしてのソブリンリスクの扱いなどの検討が進んでおり、近い将 来、証券化エクスポージャーとして扱うにせよ、機構向けエクスポージャーとして扱うにせよ、機構 MBS の自己資本比率規制上の扱いを見直す必要が生じる可能性がある。本稿では、住宅金融 支援機構MBS の自己資本比率規制上の扱いについて整理する。

現状の扱いの整理―機構

MBS は「証券化エクスポージャー」とする解釈

現行の「銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の 充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準」(平成18 年金融庁告示第 19 号)(以 下、本稿では便宜的に銀行法関連金融庁告示と称する)およびそれと実質的に同内容の信用金 庫等の健全性基準関連の告示 1では、「証券化取引」および「証券化エクスポージャー」を次の通 1 これを掲載している出版物やインターネット上の媒体は複数あるかと思うが、金融庁のウェブサ

206 号

2015 年 12 月 1 日

調査部長 江川 由紀雄 [email protected] (03) 6880-6035

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り定義している。なお、この定義規定は、2007 年 3 月以来、一切改正されていない2 「証券化取引」 原資産に係る信用リスクを優先劣後構造の関係にある二以上のエクスポージャーに階 層化し、その一部又は全部を第三者に移転する性質を有する取引をいう。ただし、特定貸付 債権に該当するものを除く。 「証券化エクスポージャー」 証券化取引に係るエクスポージャーをいう。 出所: 銀行法金融庁告示 第1条 なお、こうした定義は、自己資本比率規制に「証券化」の概念を初めて持ち込んだ 2004 年 6 月のバーゼル委員会 International Convergence of Capital Measurement and Capital Standards: a Revised Framework (以下、 BCBS June 2004)3における定義と解釈できるパ ラグラフの文言 4と整合的である。「証券化」(securitiastion)の定義として、 “at least two different stratified risk positions or tranches reflecting different degrees of credit risk” (信用リスクの度合いが異なることを反映する少なくとも2つの分割されたリスク持ち分また はトランシェ)、 “payments to the investors depend upon the performance of the specified underlying exposures” (投資家への支払いは特定された裏付資産のパフォーマン スに依存する)といった要件が盛り込まれた。優先劣後の関係にある複数のトランシェと、(原則と して)特定された裏付資産のみが責任財産となっていることを求めている。 バーゼル委員会または金融庁による「証券化」・「証券化取引」の定義と、一般的に証券化商品 と呼ばれるものの範囲は一致していないことには留意しておきたい。一般に証券化商品の範疇と 2 この経緯は、前掲 http://www.fsa.go.jp/policy/basel_ii/ の下の方に掲載されている 「過去の経緯」のリンクをたどることで振り返ることができる。 3 バーゼル委員会のウェブサイトに掲載されている。(なお、現行のものではなく、あくまで、2004 年6 月にとりまとめられた際の合意テキストである。その後、多数の修正・改訂が加えられてきて いることに留意されたい。なお、事後的に見出しの冒頭に “Basel II” の字句が追加されたようで ある。) BCBS, International Convergence of Capital Measurement and Capital

Standards: a Revised Framework, June 2004 http://www.bis.org/publ/bcbs107.htm

4 前掲文書のパラグラフ 539 ないし 541。

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され、市場関係者が何の疑いもなく「証券化商品」と呼び、日本証券業協会・全国銀行協会による 「証券化商品の動向調査」5の対象となっているもので、自己資本比率規制上の「証券化取引」等 の定義に合致しないものがある。逆に、一般には証券化商品だとは思われていないが、「証券化 取引」等の定義に合致するために、自己資本比率規制上は、「証券化エクスポージャー」として扱 われるものもある。 たとえば、相互会社に対する基金債権の証券化商品は、それ自体には優先劣後構造が組み 入れられているとは言えないため、自己資本比率規制上は、証券化扱いとすることは妥当ではな い。いっぽうで、クレジットデフォルトスワップを用い、複数の参照債務を対象に免責金額のあるク レジットプロテクションを売るポジションは、一般的には証券化商品と捉えられることはない(そもそ も、運用や投資の対象になっている「商品」が存在しない)が、バーゼル委や金融庁の「証券化」・ 「証券化取引」の定義を満たすため、自己資本比率規制上は、「証券化エクスポージャー」として 扱い、リスクアセットを計算することになる場合が多いだろう。

超過担保方式は実質的に優先劣後の優先と同じという見解

住宅金融支援機構 MBS については、優先劣後構造の関係にある二以上のエクスポージャー」 に分割されている訳ではない。住宅金融支援機構MBS は、いわゆる「超過担保」方式が採用され ている。たとえば(以下、金額は架空である)、発行体は、残高 1250 億円の住宅ローンを信託設 定し、その信託受益権を裏付けに、額面1000 億円の債券としての MBS を発行する。この場合に、 総額1000 億円の債券を持つ投資家にとっての究極的な責任財産は 1250 億円の住宅ローン債 権ということになるので、信用補完率 20%((1250-1000)÷1250)とか、超過担保 125% (1250÷1000)と表現したりする。格付会社が機構 MBS に対して、発行体の格付けを上回る格 付けを付与している主たる根拠がここにある。裏付となっている住宅ローン債権の量と質である。 劣後受益権やMBS のメザニンやエクイティのトランシェは存在しない。 「受益権行使事由」が発生しない限り、MBS の元本償還は、裏付資産が減少する「金額」ではな く、「率」をもって連動する。裏付資産が1250 億円から 1000 億円へと 250 億円減少する期間に おいて、発行したMBS を 250 億円償還するわけではなく、200 億円だけ償還するのである。発行 当初の裏付資産の残高(この事例では、1250 億円)を 1 とした場合(これを、プールファクターま たは単にファクターという)に、裏付資産の残高が1000 億円になると、それは 0.8 になる。そこで、 5 日本証券業協会 「証券化市場の動向調査」 http://www.jsda.or.jp/shiraberu/syoukenka/doukou/

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MBS の発行残高が当初の 0.8(これを、ノートファクターというが、機構 MBS においては、丸め・端 数による差異を除き、ノートファクターがプールファクターに同じになるように運営されるので、どち らも単にファクターという)になるように、その時点では残高が800 億円になるような金額を元本償 還する。ある特定の回号のMBS の発行残高は、その裏付資産となっている信託財産に「相似形」 で減っていくことになる。 「受益権行使事由」は、発行体の債務不履行事由以外に、主に、MBSの元利払いの債務を負う 者に会社更生手続きまたは類似の手続きが適用可能になるような組織変更や法制度の改正も含 まれる。信託受益権の「更生担保権化」を未然に回避し、機構MBS の信用力を維持するためのト リガーである。現状、MBS の元利払いの債務を負う者は、住宅金融支援機構であり、同機構は独 立行政法人形態を採っている。(住宅金融公庫はいわゆる特殊法人であった。)会社更生法は株 式会社を対象とした再建型の倒産法である。(会社更生法第 1 条「この法律は、窮境にある株式 会社について…」)また、会社更生手続きと同様の更生手続きを協同組合組織や相互会社などを 対象に行う枠組みである金融機関等の更生手続の特例等に関する法律(更生特例法)は、同法 の第 1 条に「この法律は、協同組織金融機関及び相互会社について…」とあるように、対象を限 定している。このため、機構について更生手続きを可能とするには、機構が株式会社に転換する か、独立行政法人に更生手続きを可能とするような立法措置が行われる場合が想定されるが、 機構の組織を株式会社に転換しようとするような動きは生じていないし、筆者の知る限り、更生手 続きまたは同様の手続きの適用範囲の拡大(たとえば、株式会社以外の法人などへの拡大)を検 討するような動きも生じていない。受益権行使事由が発生してしまうと、債券としての機構MBS は 消滅し、投資家は、信託の受益者として、信託財産のみを責任財産とする形で、信託受益権の配 当と元本償還を受ける立場に変わる。 このような構造を持つ機構MBS の自己資本比率規制上の扱いについては、金融庁は「バーゼ ル2」導入の直前である2007 年 3 月に公表した(自己資本比率規制に関する)「Q&A」として、次 のような問答を行っている。 第1 条第 16 号 Q1 住宅金融公庫が発行する資産担保証券に対しては、証券化エクスポージャーの取扱いを適 用して良いですか。(平成19 年 3 月 23 日追加) A 住宅金融公庫(平成19 年 4 月 1 日以降は住宅金融支援機構)が発行する貸付債権担保住 宅金融公庫債券(以下、「住宅金融公庫債」という。)については、住宅ローン債権プールを裏付け としており、超過担保が実質的な劣後部分として機能しているという意味で「優先劣後構造」を有

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すると解することができることから、第1 条第 16 号に基づき、証券化エクスポージャーの取扱い が適用されます。もっとも、(中略)受益権行使事由発生前は住宅金融公庫向けのエクスポージャ ー(標準的手法の場合は金融庁Q&A 第 61 条-Q1 を参照)として取扱うことも可能です。 出所: 金融庁 「自己資本比率規制に関するQ&A」 つまり、2007 年 3 月の時点で、金融庁は、機構 MBS は(優先劣後構造を採用していないにも かかわらず)証券化エクスポージャーに該当するという解釈と、いっぽうで、受益権行使事由が発 生していない限り、自己資本比率規制上は、機構向けのエクスポージャーとして取り扱ってもよい とする見解を公表したことになる。このQ&A は、その後、改廃されていない6。 こうした金融庁の解釈が明らかになっていることもあり、現状では、ほとんどの国内金融機関が、 機構MBS については、自己資本比率規制上は、機構向けのエクスポージャーとして扱っているも のと推測される。

Fannie Mae, Freddie Mac のパススルー型 MBS とは異なる解釈となる理由

機構 MBS については、証券化エクスポージャーとして扱ってもよく、機構向けのエクスポージャ ーとして扱ってもよいのだが、機構 MBS と類似するキャッシュフロー特性を持つ米国の Fannie Mae および Freddie Mac のパススルー型 MBS およびそれを裏付けとする CMO については、 金融庁は異なる見解を明らかにしている。金融庁は、これらの米国のパススルー債および CMO については、発行体(Fannie Mae であれば、Fannie Mae)に対するエクスポージャーとして扱う ことを求めている。機構 MBS との違いは、「超過担保」の有無ということになる。Fannie Mae 等 のMBS には、超過担保方式は採用されていない。 第1 条第 16 号 Q2 米国政府関連のモーゲージ担保証券(MBS)等の住宅ローン担保証券に対しては、証券化エ クスポージャーの取扱いを適用して良いですか。(平成19 年 3 月 23 日追加) A 米国政府関連のモーゲージ担保証券には、①米国連邦政府機関である政府抵当金庫(ジニー メイ<Ginnie Mae>)が裏付けとなる住宅ローン債権(モーゲージ)プールからの投資家への支 払いを保証するパススルー証券、②米国政府関係機関である連邦抵当金庫(ファニーメイ< 6 金融庁「自己資本比率規制に関する Q&A」 http://www.fsa.go.jp/policy/basel_ii/index.html

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Fannie Mae>)又は連邦住宅貸付抵当公社(フレディーマック<Freddie Mac>)が住宅ローン

債権プールを裏付資産として発行・保証するパススルー証券、及び③これらの機関が発行・保証 するCMO や REMIC 等のペイスルー証券があります。いずれも住宅ローン債権プールを裏付け としていますが、投資家への支払い順序(ウォーター・フォール)に「優先劣後構造」は基本的にみ られません。これらの一部には、金利水準や最終償還日が異なる二以上のエクスポージャーに原 資産の信用リスクを区分するものもありますが、あくまでキャッシュ・フローの加工に留まり、優先 部分に対する契約上の支払いを妨げることなく劣後部分が損失を吸収する「優先劣後構造」を構 成すると解し得るものは含まれていないと考えられます。従って、これらについては、発行体によ る保証が付された債券と認識し、①は米国政府向けのエクスポージャー、②及び③は現時点にお いては米当局により公共部門として認識されていることを踏まえ、標準的手法では外国の中央政 府等以外の公共部門向けエクスポージャー(第 59 条)、内部格付手法では金融機関等向けエク スポージャー(第1 条第 37 号)として取り扱うこととなります(以下略)。 出所: 金融庁 「自己資本比率規制に関するQ&A」

柔軟性があると考えるべき

バーゼル委員会では、証券化商品の資本賦課規則を2018 年から大きく変えることを 2014 年 12 月の文書で公表、同最終規則の修正が進んでいる他、信用リスクの標準的手法の大幅な見 直しが進んでいる。内部格付手法における行内モデル利用の制限、ソブリンリスクの信用リスクと しての扱いについても検討が始まっている。順調に進めば、証券化商品(より厳密には、「証券化 エクスポージャー」として扱われるもの)の扱いは2018 年大きく変わり、2019 年からは大口エク スポージャー規制の第1の柱としての規制が始まる。更には、2019 年以降のいずれかの段階で 信用リスクの標準的手法が大きく変わり、内部格付手法には修正が加えられることになる。ソブリ ンリスクの扱いがどうなるかについては、現状は全く流動的ではあるが、中央政府が過半または 全部を出資していることを理由に自己資本比率規制上は特例扱いを受けているものについては、 ソブリンリスクの扱いが変われば、それと整合的な扱いとするために、扱いが見直されることは必 至であろう。 こうした過程で、機構 MBS を証券化エクスポージャーとして扱った場合と、機構向けエクスポー ジャーとして扱った場合の差異が変化して行くものと思われる。現状では、標準的手法採用行に ついては、「証券化エクスポージャー」として扱うと最低でもリスクウェイトが20%になるのに対し、 機構向けエクスポージャーとして扱えば、「我が国の政府関係機関(特別の法律に基づき設立さ

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れた法人(業として預金又は貯金の受入れを行う法人を除く。))等向けの円建てのエクスポージ ャーとの扱い(銀行法金融庁告示第61 条)に該当し、リスクウェイトは 10%で済む。内部格付手 法採用行の場合は、機構にどのような行内格付けを付しており、その行内格付けに対応する PD (デフォルト率)等の水準次第でもあるが、現状では、「証券化エクスポージャー」として扱っても(こ の場合は、リスクウェイト 7%相当の最低水準で済むであろう)、機構向けエクスポージャーとして 扱っても、どちらでも大差ない資本賦課水準になっているケースが多いであろう。言うまでもない が、行内格付けおよび対応するPD は銀行によって異なる。 今後、証券化、標準的手法、内部格付手法の全てが見直されるため、近い将来、証券化エクス ポージャーとして扱う場合と機構向けエクスポージャーとして扱う場合の資本賦課の差異が変化 する可能性がある。更には、政府関係機関が将来にわたって大口エクスポージャー規制の対象 外になるとは必ずしも言い切れない。 本稿で振り返った通り、現状、日本における自己資本比率規制上は、住宅金融支援機構 MBS については、証券化エクスポージャーとして扱っても機構向けエクスポーじゃとして扱ってもよいと の金融庁の見解「金融庁 Q&A」の形で明らかになっている。こうした金融庁の見解は、日本の金 融機関にとって、機構MBSを保有する際の扱いについて、柔軟性を提供してくれているとも考えら れる。 (調査部長 江川 由紀雄)

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名称 :新生証券株式会社(Shinsei Securities Co., Ltd.) 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第95号 所在地 :〒103-0022 東京都中央区日本橋室町二丁目4番3号 日本橋室町野村ビル Tel : 03-6880-6000(代表) 加入協会 :日本証券業協会 一般社団法人金融先物取引業協会 一般社団法人日本投資顧問業協会 一般社団法人第二種金融商品取引業協会 資本金 :87.5 億円 主な事業 :金融商品取引業

参照

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