I
はじめに
証券ビジネスのうちブローカー業務はもっとも 基本的な業務の一つであるが、近年のわが国証 券業界における顕著な動向の一つは、このブロー カー業務の分解(アンバンドリング、unbundling
) が進行していることである。 上場株式を対象としたブローカー業務は、実際 には一連のプロセスから成り立っている。その一 連のプロセスとは、大別すれば、①投資アドバイス や勧誘などの営業行為とその結果としての受注、 ②証券取引所への注文の送達と売買執行、③そ の後の受け渡し・決済と顧客への取引報告書送 付、および④顧客口座への入庫(または入金)など の口座管理等である。顧客こそが収入を生みだす 源泉という観点から、業界内ではこのプロセスの うち①を「フロント営業」、②を「ミドル・オフィス」 業務、③と④を「バック・オフィス」業務と呼称して きた。 ところで、証券業が免許制から登録制へ転換 (1990
年代末)するまでは、基本的には、これら① ∼ ④ の 一連 のプロセスは一 つに束 ねられて (bundling
)、同一の業者によって担われてきた。 もっとも、②については、証券取引所の会員権を 持たなければ不可能であるため、非会員証券会社 の場合には、会員証券会社に再発注を行って売 買執行業務を委託してきた1)。しかし、これを除け ば、ブローカー業務は①∼④までの一連のプロセ スを一つに束ねたビジネスとしておこなわれるの が当然と考えられてきたのである。 その理由は、一つは行政側の事情からくるもの であった。すなわち、免許を受けたブローカー業 者が、その一部でも他社に再委託に出すことは免証券
ビジネスのアンバンドリング
中堅・中小証券を中心に
二上季代司 Kiyoshi Nikami 滋賀大学経済学部 / 教授 論文 1)受託する会員証券会社から見れば、 この業務は「取次ぎ業務」と呼称されてきた。 2)投資信託の場合には、運用会社に対する 投信の購入と受け渡し・決済、口座管理、 運用報告書送付などがミドル・バック・オフィスとなる。許制の逸脱につながる、と考えられたからである。 今一つは、固定手数料制度が守られてきており、 その料率は、①∼④までの業務を一括して行いう るのに十分と考えられる水準に、証券取引所は決 めてきたからである。いわば、あえて分解する必要 もなかった、ということであろう。 ところが、
1990
年代に入ると登録制への移行と 手数料の自由化が視野に入り始め、それと同時に、 ブローカー業務の分解が始まった。この時から現 在まで、20
年近く経とうとしているが、近年、ますま すアンバンドリングの進行が加速している。ブロー カー業務のみならず、債券や投資信託の募集業 務においても、フロント営業とミドル・バック・オ フィス業務2)のアンバンドリングが広範に見られる ようになっている。それは特に中堅・中小証券にお いて顕著である。 そこで、本稿では、ブローカー業務および募集 業務を中心に、証券ビジネスのアンバンドリング が具体的にはどのような形をとって進んでいるの か、またその原因背景は何か、それがもたらす意義 について検討してみた。II
バック
・オフィス業務の分離と
コルレス
・ブローカー
免許制のもとで、証券会社が自社のバック・オ フィス業務を初めて外部に委託(アウトソーシング) したのは1993
年1
月であった。「いちよし証券」が 「大阪証券代行」(現「だいこう証券ビジネス」)を 委託先として、顧客向け取引報告書の作成、重要 書類等の管理・配送等のバック・オフィス業務の 一部を委託したのである。その後、「だいこう証券 ビジネス」の受託業務の内容は拡大し、口座開設 や証券事務企画のほか、証券取引所への注文取 り次ぎと執行、決済・清算取次、信用取引に伴う 金銭・証券の貸付等のミドル・オフィスまで拡大 している。また委託先も中小証券を中心にかなり の数にまで拡大している。 こうしたバック・オフィス、ミドル・オフィスのア ウトソーシングはアメリカにおいてかなり以前から 広範に行われてきた。こうした他社のミドル・バッ ク・オフィス業務を専門的に受託する業者はアメ リカでは「コルレス・ブローカー、correspondent
broker
」と呼ばれる。 コルレス・ブローカーがアメリカで比較的早く 出現した背景は、①国土が広いこと、②ミドル・ バック・オフィス業務はその業務内容から、固定 費の高い経費構造になっている反面、ブローカー 収入は株式相場の変動に左右されボラティリティ が大きく、収入と経費のミスマッチが大きいことが 挙げられる3)。そこで、個々のブローカー業者のミ ドル・バック・オフィス業務を多数、受託すること で大量処理を可能にし、規模の経済性と専門化に よって当該業務のコストを引き下げる仕組みが出 来上がったのである。 そして、わが国でもこうしたアウトソーシングが20
年前から始まり、それが拡大している。この面 での受託業者はわが国では「だいこう証券ビジネ ス」が最大手であるが、同社のほか、非会員中小 証券の取引所への取次ぎ業務を比較的多く受託 している証券会社(たとえば「証券ジャパン社」等) もこうしたミドル・バック・オフィスの受託業務に 積極的である。 3)米国は国土が広いうえに、州外店舗を認めないユ ニットバンキング制度が取られてきたという経緯から、 商業銀行の間では、古くから遠隔地での債権の 代理取立てや送金の支払い代行などを委託する コルレスバンキング(correspondent banking)の慣行が 発達してきた。他方、証券ブローカー業者の間では、 国土が広いことのほか、ブローカー収入の変動が 大きいことが加わって早くからコルレス・ブローカーが 生成・発展してきた。6)最新版は『証券業報』2012年12月号に掲載。 4)わが国の証券手数料の自由化は、1994年4月から 部分的に始まり、99年に全面自由化に至っている。 5)これに対して、外務員が顧客へのアドバイスや 勧誘によってセールスを行う営業スタイルを 「対面営業」証券会社と呼んでいる。
III
ネット証券
他方、手数料自由化は外務員の勧誘活動を簡 素化または省略した「手数料割引業者」(ディスカ ウント・ブローカー、Discount broker
)を生み出 した。従来の固定手数料制下の算定料率は、銘 柄情報や投資時期に関する外務員のアドバイス・ サービスの代価も含んで決められていたが、手数 料自由化は顧客が望むサービスに応じた料率提 示が可能になった。そこで、外務員のアドバイス・ サービスを省略し、その分だけ手数料を割引き、 売買執行と受け渡し決済サービスだけを提供する 「手数料割引業者」が現れた。これは1975
年にア メリカで手数料が自由化されて以降に出現した新 しいビジネスモデルである。 その後、アメリカではインターネットが普及し、 顧客への投資情報提供や受発注のアクセスは電 話や専用回線から公衆回線を利用したインター ネットに切り替わった。そこで、アメリカではかつて の「ディスカウント・ブローカー」は、「オンライン・ ブローカー、online broker
」という呼称に変わっ ている。 これに対しわが国では、手数料の自由化がイン ターネットの普及と同時並行的に行われたことか ら4)、割引業者は当初からすべからくインターネッ トをツールとして利用することになり、「インター ネット証券」(あるいは単にネット証券5)と呼ばれる ようになった。 外務員の勧誘・営業行為を省略し、インター ネットを通じて注文を受け付けることで手数料率 の大幅な割引を可能にしたこのビジネスモデルは、 「push
型」ではなく「pull
型」といわれる。すなわち 外務員が顧客にアドバイスを与え、勧誘して、注文 をするように顧客の背中を「押す」のではなく、市 場情報や銘柄情報などの投資情報を見たいとき には、いつでもアクセスできるようにし、顧客の欲 する銘柄の売買発注をいつでもどこでも行えるよ うな便宜を与えることで顧客みずからの発注意欲 を「引き出す」のである。 こうした受注体制では、①外務員や店舗は不要 であるため人件費、不動産関係費は節約できるが、 ②自動受発注を可能とする売買システム、勘定系・ 情報系システムの絶えざる更新・メンテナンスが 必要であり、「事務費」や「減価償却費」などのシス テム関連費用が相対的にかさ張ることになる。そし て受注の決め手は、①手数料など取引コストの低 廉さ、②システムの安定性・信頼性、③投資対象 の品ぞろえ、④投資情報の豊富さ・検索の容易さ 等となる。 では、ネット取引およびネット証券の現状はい かなるものであろうか。 日本証券業協会の月報『証券業報』は毎年2
回、 半期ごとに「インターネット取引に関する調査結 果」を公表している6)。この調査によると、株式委 託取引の売買代金に占めるインターネット取引の 割合は手数料が全面的に自由化された1999
年か ら一貫して上昇し、2006
年度下半期(05
年10
月∼06
年3
月)には31.5%
に達している。これをピークと してその後、2
割から3
割の間を推移し、直近(2013
年度上半期)では22.4%
となっている。ネット取引 の利用者はほとんどが個人投資家であるが、この 期間中の個人投資家による取引シェアは25%
∼35%
を推移している。つまり、個人投資家の9
割近 くがネット取引ということになる。 またインターネット経由での受発注サービスを 提供している業者は50
社前後であるが、このうち7) SBI証券『2013年3月期第2四半期 決算説明資料』 (2012年11月8日)、10ページ。 8)東証『総合取引参加者決算概況』各年版より引用。 9)株式委託手数料収入(東証会員業者ベース)は 2002年3月期の6,045億円から2012年3月期には 3,428億円へと6割近くに低下している (東証『総合取引参加者決算概況』より)。 10) 2007年に証券取引法に代わって「金融商品取引法」が 施行されてからは、「金融商品仲介業」の呼称になっている。 以下では「金融商品仲介業」と呼ぶ。 ネット取引を専業とする大手専業
5
社(SBI
、楽天、 カブドットコム、松井、マネックス)の売買金額シェ アは、2013
年度上半期実績で7
割を占める、とさ れる7)。これまでの経緯を振り返ると、ネット証券 の間で手数料の激しいダンピング競争が起きて おり、これに引きずられて、株式委託売買の実効 手数料率(委託手数料÷委託売買)は、10
年前の0.2%
(2002
年3
月期)から0.06%
(2012
年3
月期) へと急速に低下している8)。つまり、ネット証券の 出現は個人投資家を顧客層とする中堅中小証券 のブローカー業務に収入面からきわめて大きな打 撃を与えたのである。 ネット証券のシェア拡大は、手数料率の激烈な 低下をもたらしてブローカー業務の採算性を悪化 させていった9)。このため、固定費の縮減が改めて 大きな課題となり、先述のような、固定費のかかる ミドル・バック・オフィスの外部委託が中小証券 の間に浸透していったのである。IV
証券(金融商品)仲介業
他方では、固定費をできるだけ節約した営業網 の維持・拡大の工夫が試みられた。その観点から、 証券(金融商品)仲介業者10)の利用がみられるよ うになった。金融商品仲介業は2003
年の証取法 改正により可能となった。顧客へのアドバイス・勧 誘など、フロント営業のみが可能な証券ビジネス である。あらかじめ所属する証券会社と委任契約 を結び、営業活動の結果、受注できれば、その注 文を所属証券会社に取り次ぐ。口座開設や金銭・ 証券の預託などの口座管理、注文執行、受け渡し 決済など、ミドル・バック・オフィスのすべては所 属証券会社が行うことになっている。こうしたフロ ント営業に対して、稼得した手数料の5
∼8
割程 度が分与される。 証券会社からすれば、税理士・会計士、生損保 代理店、自動車ディーラー等と仲介業契約を締結 すれば、改めて営業拠点を設けることなく、彼らの 顧客を潜在的な証券顧客としてアクセスできるわ けである。また、コスト面から地方営業支店を撤 収したい場合でも、当該エリアの退職社員と仲介 業契約を結べば、引き続き地方営業網を維持でき る可能性が出てくる。 また翌2004
年には証取法改正により、仲介業 務は銀行等金融機関が例外的に行える証券業務 に追加されることになった。この結果、親銀行が 金融商品仲介業者となり証券子会社等を所属証 券会社として委任契約を結べば、銀行店舗内で 銀行顧客に証券営業を行い、その結果得られた 注文の執行・決済・口座管理は証券子会社に行 わせて、銀行グループ全体として証券ビジネスを 取り込めることも可能になった。 つまり、ブローカー業務や債券・投信の募集業 務において、フロント営業とミドル・バック・オフィ ス業務を、それぞれ金融商品仲介業者と証券業 者が役割分担するという現象が2003
年以降みら れるようになった。そこで、金融商品仲介業者の動 向を見ておこう。 (1)金融商品仲介業者と所属証券業者 第1
表は、金融庁に登録されている仲介業者の 数とその所属証券業者の内訳である。2012
年7
月 現在、仲介業者総数は701
(銀行を除く)である。 仲介業務には金銭等の預託を含まないので財務 要件は無きに等しく、個人でも営業が可能となって いる。また複数の証券業者と契約することができ11)みずほインベスターズ証券は2013年、みずほ証券と 合併し、みずほ証券となった。なお、同社の「決算報告」には 2010年度まで、みずほ銀行との連携効果が 開示されていたが、以降は開示されなくなった。 るため、契約延べ数は
940
となっている。このうち 複数契約は法人に多い。契約先数が最も多いの がネット証券のSBI
であり、すべて法人となってい る。他方、個人を契約先とするものは対面営業を 主とする中堅証券に多い(エース、高木、ひびき)。 もっとも、これらの仲介業者の契約内容やこれ を経由した手数料収入がどの程度であるかは、開 示されていないため不明である。契約内容には広 狭があって、単に顧客紹介や口座開設の斡旋にと どめているものもあれば、株式・債券・投資信託・ 各種ファンドなどフルラインでの証券商品の勧誘 を行うものまで様々である。一般的には販売・勧 誘対象としては内外の投資信託や債券に限定し ているものが多いようである。 (2)メガバンクの金融商品仲介業 先述の金融商品仲介業者には銀行等の金融 機関は含まれていない。金融機関は原則的に証券 業務を禁止されており、例外的に営業できるものと して国債や投資信託の販売等のほか金融商品仲 介業が列挙されている(金融商品取引法、33
条1
項、2
項)。したがって、仲介業者としては第1
表の701
社(者)のほかに、銀行、保険会社などの金融 機関が加わるのである。というよりもむしろ、仲介 業務を最も積極的におこなっているのが銀行であ り、銀行こそ仲介業の主役なのである。そこで、次 にメガバンクを例にとってみよう。 第2
、3
表はメガバンク系準大手証券会社、三菱UFJ
モルガンスタンレー証券とみずほインベス 第1表 金融商品仲介業者契約数 単独 複数 小計 個人 法人 小計 SBI 125 58 183 0 183 183 エース 116 66 182 108 74 182 三菱UFJMS 99 1 100 12 88 100 PWN 46 40 86 2 84 86 日興 41 27 68 5 63 68 ひびき 13 39 52 35 17 52 高木 32 16 48 35 13 48 スーパーファンド 5 29 34 11 23 34 日産センチュリー 6 27 33 12 21 33 藍澤 6 19 25 0 25 25 楽天 4 17 21 0 21 21 証券ジャパン 3 17 20 2 18 20 トレイダーズ 0 13 13 2 11 13 その他 30 45 75 11 64 75 小計 526 414 940 235 705 940 (出所)金融庁HPより算出。2012年7月末現在 注1)複数契約が認められているため延べ数は940社(者)だが、実数は701社(者) 注2)銀行は含まない。12)三井住友銀行の場合にも証券子会社である SMBCフレンド証券との間で同様の仲介業契約が 締結されている。 ターズ証券11)について銀行との連携効果をまとめ たものである。 三菱東京
UFJ
銀行は三菱UFJMS
証券と、また みずほ銀行はみずほインベスターズ証券と、それ ぞれ仲介業契約を締結しており、かつ共同店舗を 出店している。みずほ銀行の場合、共同店舗は「プ ラネットブース」と呼ばれ159
店(2011
年10
月現在)、 三菱東京UFJ
銀行の場合、「MUFJ
プラザ」とよば れ35
店(2011
年3
月現在)ある。 この連携効果を見ると、みずほインベスターズ 証券では営業収益の約3
割、また三菱UFJMS
証 券では預かり資産の15%
が、親銀行の仲介による ものとなる。2009
年6
月以降、銀行と証券子会社 との間の「ファイヤー・ウォール」がさらに緩和され、 役職員の兼業規制が撤廃されている。証券子会 社は、共同店舗内で銀行員から銀行顧客を紹介 されること、また銀行顧客に自社の証券商品の勧 誘をしてもらうこと、また証券営業員が親銀行に出 向して銀行員を兼職し、銀行顧客に証券商品の販 売勧誘をおこなうことも可能になっている。メガバ ンクの顧客網は圧倒的に厚く、その銀行顧客網に アクセスできることは極めて有利なのである。 こうした、銀行と証券子会社との間での仲介業 契約を通じた役割分担、連携は、メガバンク12)だ けではなく、地方銀行にも拡大している。次にそれ を見よう。 第2表 三菱UFJモルガン・スタンレー証券のリテール営業実績に占める仲介業効果 第3表 みずほ銀行とみずほインベスターズ証券の連携効果 (2012年3月期) (億円) 預かり残高 有残口座数(千件) 株式投信販売 個人向け国債 リテール外債販売 総計 27,492 278 1,053 407 4,738 30,587 262 719 81 4,511 比率 13.0% 19.8% 8.3% 81.1% 53.7% 14.4% 18.6% 5.4% 75.0% 63.0% (出所)「三菱UFJフィナンシャルグループ」2011年度決算説明会「データブック」より作成。 注1)預かり残高、有残口座数は2012年3月末。比率は全体に占める割合。預かり資産は国内営業部門(金融機関含む)。 注2)下段のカッコ内は2011年3月期。 2007年3月期 08年3月期 09年3月期 10年3月期 11年3月期 連携収益(百万円) 35,354 27,508 14,393 15,103 16,594 連携預かり資産残高(億円) 28,179 28,131 26,292 30,260 29,949 連携新規口座登録数(件) 11,159 8,622 12,495 8,131 6,385 (出所)みずほインベスターズ証券「2010年度決算報告」より作成。V
地方銀行と証券子会社
次に掲げる第4
表は、主な地銀系証券子会社に ついてまとめたものである。親銀行とこれら証券子 会社とはすべて、金融商品仲介業契約を締結して いる。 この第4
表によると、地方銀行の証券子会社設 立あるいは既存地方証券の買収が急速に進んだ のは、2006
年以降だったことがわかる。例外的に 最も早く設立された静銀ティーエム証券の場合は、 投信販売に主眼があって、かねて親密先の三菱銀 行(現三菱東京UFJ
銀行)の援助を得て設立され 第4表 地方銀行の証券子会社設立・系列化 所在 社名 親銀行(出資比率) 設立年 (または子会社・ 関連会社化した年) 備考 静岡県 静銀ティーエム証券 静岡銀行グル ープ (85.1%) 2000年12月 静岡銀行と東京三菱銀行(当時)等との共同出資によ り設立。三菱東京UFJ銀行(14.9%)、14店 新潟県 新潟証券 第四銀行(47.0%) 2006年3月 オーナー株主より株式譲受、第四銀行グループ入り。 16店、209名(2008年4月現在)。JBISHD(19.39%) 長野県 八十二証券 八十二銀行(100%) 2006年4月 アルプス証券を買収、2007年9月商号変更。県内12 店、163名(2009年6月末現在) 山口県・ 広島県 ワイエム証券 山口フィナンシャル グループ(60%) 2007年7月 会社分割により東海東京証券の山口、広島エリア内 支店リテール業務を承継して設立、東海東京フィナ ンシャルホールディング(40%)、山口県7店、広島県5 店を中心に13店 茨城県 常陽証券 常陽銀行(100%) 2007年11月 常陽銀行の全額出資で設立。4店、52名(2010年2月 現在) 広島県 ひろぎんウツミ屋証券 広島銀行(ウツミ 50%) 屋証券(50%) 2008年1月 ウツミ屋証券の会社分割により、証券業務(トレー ディング業務等を除く)を承継。広島銀行への第三者 割当増資と同時に現社名に商号変更、広島県内14店、 山口県内6店を中心に26店、250名 神奈川 県 浜銀TT証券 横浜銀行(51%) 2008年7月 会社分割により東海東京証券の神奈川エリア内支店 リテール業務を承継して設立、東海東京フィナンシャ ルホールディング(49%)、9店、152名(2010年4月現 在) 岡山県 中銀証券 中国銀行(81%) 2009年6月 津山証券の筆頭株主(コスモ証券)より全株を譲り受 け子会社化、同時に現社名に商号変更。3店、80名 (2010年5月現在)。 三重県 百五証券 百五銀行(100%) 2009年8月 百五銀行の全額出資で設立 福岡県 西日本シティTT証券 西日本シティ銀行 (60%) 2010年5月 会社分割により東海東京証券の福岡エリア内支店リ テール業務を承継して設立、東海東京フィナンシャル ホールディング(40%)、3店。 千葉県 ちばぎん証券 千葉銀行 2011年1月 旧中央証券、に100%子会社、現社名に変更1998年3月、千葉銀行グループ、2011年 愛媛県 いよぎん証券 伊予銀行(100%) 2012年2月 10月開業予定。資本金30億円。 大阪府 未定 泉州池田銀行 2013年予定 201340%の合弁証券会社を設立予定。年9月開業予定。泉州池田60%、東海東京証券 (出所)各社ホームページ、新聞報道等より作成13)誤販売の場合は、それによって被った損失を 補填するよう要求できる旨の説明を顧客に しなければならないが、同行はそれをせず、 補填を要求してきた顧客にのみ損失を補填したのである。 それが不公平・不適切な行為と判断された。 たものである。投資信託の銀行窓口での販売が 解禁されたのは
1998
年12
月からであるが、静岡銀 行は本体ではなく証券子会社に投信販売を担わ せることとし、銀行は商品説明と同社への顧客紹 介にとどめている。 当時、地銀による証券子会社設立は一般的で はなく、投信販売は銀行本体が行う場合が多かっ たのである。しかしながら、2006
年以降になると、 地銀が証券子会社を設立したり、既存証券会社 を買収して証券会社を傘下に収める事例が増えて きたのである。 ところで、06
年以降の地銀の証券子会社を仔 細にみると、3
つの類型に分類できることがわかる。 第1
に、オーナー等から株を譲り受けて既存の証 券会社を傘下に収めた事例であり、新潟証券、 八十二証券、中銀証券、ちばぎん証券などがそれ にあたる。このほかオーナーの出資がなお残って いる地銀系証券子会社としては、ふくおか証券(福 岡市、福岡銀行系)や上光証券(札幌市、北洋銀 行系)などがある。 第2
の類型は、地銀が証券会社を新設するとい うもので、上述の静銀ティーエム証券以外に、常 陽証券、百五証券、いよぎん証券などがあげられ る。第3
の類型として、既存の証券会社との提携に よる証券子会社設立によるものがある。たとえば 東海東京証券は横浜支店を分社化し、それを母 体にして横浜銀行が共同出資し、浜銀TT
証券が 設立された。同様の例として西日本シティ証券、ワ イエム証券、泉州池田銀行が予定している証券子 会社もそれに当たる。ひろぎんウツミ屋証券も類 似の例といえよう。 さて、こうした地銀系証券子会社が2006
年以 降に急増した理由は何か?まず銀行サイドの考え られる理由として、次のような事情が挙げられる。 第1
は、2004
年6
月の「株券電子化」に関する法 律公布である。この法律は、上場株券につき本券 を廃止し5
年以内に一斉に電子化を行うことを定 めている(2009
年1
月より電子化は実施された)。 このため、本券を保有するものは、証券会社に口 座を開設して預託しなければならないことになった。 もし株券電子化が実施されると、株式本券を地 方銀行の貸金庫に保管している地方の資産家は、 これを引き出す恐れがあるため、証券子会社を 作って引き続き顧客資産の漏出を防ごうとした、と いうのが考えられる理由の一つである。 第2
に、銀行による投信窓販についてコンプライ アンス(法令順守義務)の負担が重いことを銀行 サイドが痛感するようになったことである。特に2007
年6
月に三菱東京UFJ
銀行が投信の不適切 販売を放置していたことが明るみに出て、金融庁 から業務改善命令を受けたことは銀行界にショッ クを与えた。これは、顧客の注文と異なる投信商 品を銀行員が誤って販売した行為に対して事後 対応が不公平・不適切であった13)、という事案で ある。投信窓販は銀行本体に許されている営業行 為であるが、この事件を受けて、証券販売におけ るコンプライアンス体制に不慣れな銀行本体で 行うよりも証券子会社に分離して行わせた方が良 い、という判断が働いたものと考えられる。 第3
は、本業である預貸金業務の収益性悪化に 直面した銀行が収益源多様化を求めて証券子会 社を設立した(あるいは既存証券会社を傘下に収 めた)というものである。第2
表は、証券子会社の 設立が西日本の地銀に多いことを示している。こ れは、西日本において歴史的に証券資産の保有 者が比較的多いこと、その反面、貸付難に苦しむ14)同じく西日本シティ銀行と東海東京証券との 合弁証券会社「西日本シティ証券」でも12.5億円の 受入手数料に対し親銀行への支払い手数料2.8億円と なっている。 地銀も比較的多いということを反映している、と推 測できる。 他方、地銀の出資を受け入れた既存証券会社、 また共同出資に応じた証券会社サイドの事情はど うであったのか。 第
1
に地銀の傘下に入った既存証券会社につい ては、オーナーが支配権を失うものの当該地域の 地銀の出資を受けて財務力を強化できること、ひ いては銀行顧客にアクセスできることが最も魅力 のあるメリットであったと考えられる。 第2
に、共同出資に応じた証券会社にとっては、 ①フロント営業部隊のコスト負担を軽減できるこ と、②ミドル・バック・オフィスを請け負うことで銀 行の証券子会社から手数料が取得できること、③ 顧客層の広がりが期待できることがあげられる。 後者について具体的にみれば、たとえば東海東 京証券は、山口・広島エリア、神奈川エリア、福岡 エリアの営業拠点を分社化し、これをもとに、山口 フィナンシャルグループ(山口銀、もみじ銀、北九 州銀)、横浜銀行、西日本シティ銀行とそれぞれ合 弁の証券会社を設立している。これによって地方 拠点の営業コストが節減できること、またこれら合 弁証券会社は証券取引所の会員権を持たないた め、証券取引所への発注と売買執行などの「ミド ル・オフィス」業務、受け渡し決済などの「バック・ オフィス」業務などを東海東京証券は請け負うこと ができる。また、各種投資信託等のファンド商品 を組成し、これを各合弁証券会社に卸売りするこ とで、中間マージンを取得できるのである。 ちなみに地銀グループの場合、親銀行と証券子 会社との連携効果はどの程度なのだろうか。これ ら証券子会社につき金融商品取引法(第46
条の4
)に義務付けられている開示資料『業務及び財 産の状況に関する説明書(2012
年3
月期)』から手 がかりを探ってみた。 それによると、山口フィナンシャルグループと東 海東京証券との合弁証券会社「ワイエム証券」で は、受入手数料39
億円のうち親銀行への支払い 手数料は20
億円となっている14)。仲介業にあたる 親銀行は、顧客紹介・商品説明・注文仲介などに 対し手数料を受け取っている。例えば、投資信託 の販売が仲介業者によって成約に至ると、投信販 売にかかる手数料収入のうち50%
∼80%
程度の 手数料が割り戻されるといわれる。もっとも手数 料の割戻率は仲介業者の関与・貢献度の程度に よるのだが、それにしても受入手数料の半額を親 銀行に割り戻しているとすれば、フロント営業の 過半を親銀行に依存していると考えて間違いない だろう。 他方、共同出資の他方の側である東海東京証 券にとっては、同社が組成した投資信託の有力な 販路が確保できるわけである。同社は投信の組成 にあたって外債組み入れで外債を仕入れ、為替を 売買している。この過程で債券売買益や為替手 数料を得ることができるし、運用の期間中は信託 報酬を得ることもできるのである。投資信託の組 成から販売に至る過程も多くのプロセスから成り 立っているが、その節々でコスト・パフォーマンス を計算し、自社に有利なかたちでアンバンドリン グを行うことが有力な経営戦略になっていること が理解できるだろう。 同様の例を、「ひろぎんウツミ屋証券」について みよう。同社は、ウツミ屋証券が株式のブローカー 業務、債券や投信などの募集業務からなる営業部 門を分社化し、その営業部門の現物出資とメイン バンク広島銀行からの現金出資で設立された。そして本体のウツミ屋証券は株式のディーリング専 門に特化することになった。「ひろぎんウツミ屋証 券」は証券取引所会員権を持たないため、上場株 式の売買を受注した場合には、証券取引所への 取次ぎをウツミ屋証券に委託するのである。この 結果、ウツミ屋証券はブローカー業務のうちフロ ント営業はひろぎんウツミ屋証券に譲るものの、ミ ドル・オフィス業務を分担することで、同社営業収 益の約
4
割に相当する取次手数料を得ることに なった(2012
年3
月期実績)。VI
金融商品仲介業への転換
以上の例は、フロント営業を簡素なものにする か(ネット証券)、他者に委ねるか(金融仲介業契 約)、分社化して切り離す(地銀との合弁証券会社 の設立)という形での「アンバンドリング」であった。 次は、みずから仲介業者に転換してフロント営 業だけを残し、ミドル・バック・オフィスすべてを 完全に切り離す(あるいは廃業する)こととし、他 社へ委託する例である。2012
年、ひびき証券は金融商品仲介業子会社 「ひびきフィナンシャルアドバイザー」を設立し、同 社へフロント営業部門を移管した。同時にミドル・ バック・オフィス業務は分社化した上で、楽天証券 が分割吸収した。この結果、同社はディーリング 専門の証券会社となった。先述の「ウツミ屋証券」 の事例と比較すると、フロント営業部門は子会社 として引き続き傘下におさめるものの、ミドル・バッ ク・オフィスの営業権を他社(楽天証券)に完全に 譲渡する点が異なる。つまり、フロント営業部門は 「金融商品仲介業者」となり、ミドル・バック・オ フィスを楽天証券に外部委託するわけである。 同様に、大徳証券は役職員の一部が独立して 金融商品仲介業「だいとく投資ビレッジ」を設立、 フロント営業権は後者が承継し、ミドル・バック・ オフィス部門は吸収分割の形で証券会社「証券 ジャパン」が承継し、大徳証券は自主廃業した。 こうした事例は、現在までのところ、この2
社だ けであるが、固定費のかかるミドル・バック・オフィ ス部門は廃棄して、顧客網を維持しつつフロント 営業部門だけを残すという戦略は、株式ブロー カー業務の収益性低下が傾向的なものであるだ けに、今後も続く可能性が高いと思われる。VII
中堅・中小証券の再編成
もちろん、同時期においてブローカー業務や募 集業務の見直し戦略としてアンバンドリングだけ が考えられたわけではない。合併・営業譲渡や自 主廃業は究極の選択であり、こうした証券会社自 体の再編成もあったのである。それをまとめると、 第5
表のようになる。 この表によれば、証券会社の合併(営業譲渡を 含む)は、2007
年以降、急速に増え始めている。こ の合併事例を被合併・譲渡側からみれば、ブロー カー業務の収益性低下に直面してなかなか業績 悪化から抜け出せないために、何らかのつながり のある業者に、実質的に営業を譲渡して撤退した ものが多い。その多くは一部(ジェット証券、オリッ クス証券)を除けば伝統的な「対面営業」の証券 業者である。 他方、合併・譲受側からその背景・理由をみると、 ①親グループ内の資源集約、②同一営業地域内 での顧客層・営業資産の拡大、③これまで未進出 であった地域における営業網の獲得、などがあげ第5表 最近の中堅中小証券の再編成
被合併・譲渡 合併先・譲受先 備考
2007年
金吉証券 日の出証券 大和系列証券の集約
SBI証券 SBIイー・トレード証券(のちSBI証券に商号
変更) SBI グループ内の集約統合 2008年 シティバンク証券 日興コーディアル証券 シティグループ内の集約統合 丸和+ネットウィング(旧日本協栄、2003年に横浜証券と合併) 現、証券ジャパン CSK-RB証券 コスモ証券 CSKグループ内の集約統合 三菱UFJウェルスマネジメント証券 三菱UFJ証券 三菱UFJグループ内の集約統合
2009年 ジェット証券 オリックス証券 ネット証券同士 みずほ証券 新光証券(のちみずほ証券に商号変更) みずほグループ内の集約統合 荒町証券 坂本北陸証券 北陸地域内の合併 カドヤ証券 大山日の丸証券 山陰地域内 ジョインベスト証券 野村証券 野村グループ内の集約統合 2010年 大石証券 六二証券 中京地域内、岡三証券系の集約 トヨタファイナンシャルサービス証券 東海東京証券 環証券 いちよし証券 オリックス(旧茜)証券 マネックス証券 ネット証券に転換したオリックス 証券が撤退 武蔵証券 そしあす証券(のち、むさし証券に商号変更) ユニマット証券 三田証券 2011年 佐世保証券 いちよし証券 飯田証券 いちよし証券 金十証券 ばんせい山丸証券 のぞみ(旧福山)証券 むさし証券 堂島関東証券 内藤証券 ジャパンウェルスマネジメント証券 あおぞら証券 伊勢証券 いちよし証券 2012年 神崎証券 廣田証券 富証券 島大証券 北陸地域内 コスモ証券 岩井証券 ソニーバンク証券 マネックス証券 (出所)各社ホームページおよび新聞報道より作成
られよう。とくに最近では、地方証券が再編成の 対象となる事例が増えている。 従来、地方では地元業者の店舗しかないところ が多く、同業者間の競争が都市部よりも緩やかで あったため比較的、経営状態は良好だったのであ る。また中央の業者も、取引所会員権を持たない 地方証券と証券取引所への取次ぎの委任契約を 結んで、取次ぎ注文を受託した方が、営業上も効 率的と考えて出店を控えてきたのである。 ところが、ネット証券取引の拡大により、地方顧 客がネット証券へ流れていく傾向が出てきたこと、 また旧来の顧客が高齢期に達し顧客資産が子息 等に相続されて営業資産が流出する恐れが強まっ てきたことなど、地方証券の営業環境が近年、厳 しくなってきたのである。そこで、防衛上からも同 一地域内(北陸、山陰、中京地区など)での同業者 の合併による固定費削減、営業力強化のほか、中 央の業者が地方の県庁所在地以外の未進出地 域15)に営業網を持つ地方証券の営業権を譲受す る動きがここ数年、加速したのであった。
VIII
さいごに
─証券市場の機能と証券業務 以上、日本の証券会社におけるブローカー業務、 募集業務の営業展開をみてきたが、最後に、こう した動きはどのように評価すべきなのだろうか。こ の点について、最後に証券市場の機能と関連させ ながら、評価してみよう。 前号でも見たように16)、証券市場のもつ機能に は、その一つとして証券形態での黒字主体から赤 字主体への資本移転機能(赤字主体から見れば 資本調達、黒字主体から見れば資本運用)があげ られる。この資本移転機能を促進、向上させる条 件の1
つは、証券の流動性向上である。この証券 の流動性維持・向上のニーズに対して、証券業者 は共同で証券取引所を作り、ブローカーとして、そ こに証券の需給を集中させ、秩序だった大量売買 の機会を提供すると同時にディーラーとして一時 的な需給の不均衡を埋めることで継続的な流動 性の維持・向上を果たしてきた。 ところで、赤字主体の資本調達ニーズが強い時 代(高度成長期)には、新規証券の発行が続くこと から、証券業者には分売業者(ディストリビュー ター)として、支店網や営業員の拡充を通じて販 売網の構築・整備、新規顧客の開拓、新規証券 の募集に注力することが求められる。つまり高度 成長下のブローカーは、投資家の売買発注を執行 する能力に加えて、新規証券の販売力が必要とさ れたのである。 しかし、黒字主体の資本運用ニーズが強くなっ てくると、顧客属性に応じた多様なリスク・リター ン特性の証券商品を提供することが求められるよ うになる。このためには投資すべき証券の選別や 売買タイミングなど投資アドバイザリーの質的向 上や、多様なファンドの組成能力・提供能力が求 められる。つまり、高度成長から成熟経済への移 行とともに、販売力よりもむしろ投資アドバイザ リー能力、ファンド組成・提供能力が求められる ようになるのである。高度成長から成熟経済への 移行とともに資金調達より資金運用のニーズの方 がより高まってくるだろう。 加えて、流動性維持・向上の機能を果たすもの としての証券取引所の在り方自体も、大きな変化 を余儀なくされていることに注意しなければならな い。証券取引所のもつ同業者団体的性格が「カル 15)例えば、いちよし証券が譲受した地方証券の 本店所在地をあげると、環証券=和歌山県新宮市、 佐世保証券=長崎県佐世保市、飯田証券=長野県飯田市、 伊勢証券=三重県伊勢市となっており、いずれも 県庁所在地から外れ、競合他社の店舗がない地域である。 16)拙稿「証券市場の機能と証券業務」 『彦根論叢』394号、2012年12月。テル」として否定的に評価されるようになり、その 結果、手数料の自由化や市場集中義務の撤廃(し たがって取引所類似の私設取引システムの容認) などの措置が取られるようになったからである。 こうした証券取引所をめぐる環境変化は規制 緩和の一環として行われたのであるが、そのこと自 体が、実体経済の成熟化がもたらした産物である。 経済成長の鈍化に直面すると、先行的にはアメリ カ、イギリスをはじめとする主要各国で、規制緩和 によって潜在成長率の底上げを図ろうとする「新自 由主義」的思想が台頭するからである。 以上のように、最近の証券ブローカー・ディー ラーのビジネスモデルにおける論点として、①証券 流動性維持・向上ニーズを満たすうえでの前提条 件の変化(手数料自由化をはじめとする規制緩 和)、②販売力よりも投資アドバイザリー能力、ファ ンド組成能力が求められるようになったことをあ げなければならない。これらが、株式委託手数料 の絶対的減少、投信関連手数料の増大などの収 益上の変化を起こしているのである。 以上のことを念頭に置きながら、これまでのブ ローカー業務、募集業務の営業展開を評価すると 次のようになるだろう。 第
1
に、個別株のフロント営業においては、ネッ ト証券に見られるように全体として簡素化の方向 が見られる。 他方、第2
に、証券業者の金融商品仲介業への 転換に見られるように、個別株のブローカー業務 からミドル・バック・オフィス業務を切り離して、固 定費のかからない身軽な個別株営業のビジネス モデルが見える。つまり、コルレス・ブローカーや ネット証券等がミドル・バック・オフィス業務を、 金融商品仲介業者等がフロント営業を担うといっ た新しい役割分担の関係が見えるのである。 第3
に、銀行の金融商品仲介業も含めた仲介業 者総体のフロント営業は、個別株営業というより も投資信託などの集合投資商品に偏っている。証 券業者の収入構成を見ても個別株の委託手数料 よりも投資信託の募集手数料や代行手数料の方 が多く、投信などの募集業務へ注力しているので ある。 このように見ると、これまでの証券業者の戦略 は、証券市場の機能の移り変わりに沿った適切な 動きだと、積極的に評価できるだろう。もっとも、販 売商品の中心を個別株から投資信託に変えてい るだけでは、投資アドバイザリー・サービスを提供 しているとは言えないだろう。 この面での模範はやはりアメリカである。顧客 への投資アドバイザリーは独立系の投資助言業 者が担い、その結果としての投信購入の発注に関 するミドル・バック・オフィスはネット証券が担い、 これらサービスに対して顧客から資産残高に応じ て徴収した手数料を両者が分け合う、といったビ ジネスモデルは、オンライン・ブローカーのチャー ルズ・シュワブが独立系投資助言者と提携して、20
年ほど前に確立させたものである。 我が国の証券業界にも、ようやくこうした動きの 萌芽が見られるようになった。それが、どのように 展開していくのか、それが今後の注目点だろう。Unbundling of Securities Business in Japan
Focusing on Small and Medium-Sized Securities