戦略的 ミドルの行動分析
玉 井 健 一
は じ め に
近年, ミドルの重要性が認識 されつつある。 これは,従来の公式的組織の ヒ エラルキーの中間に位置づけ られた ミドルの限定的役割か ら,戦略や変革にた いする役割への移行である。
管理者行動論 は実際の管理者の行動を観察 し,ユニ ッ トの管理者 とい う立場 か ら各種の行動を論拠づ ける。 (Mintzberg,1973)ユニ ッ トの管理者 として の位置づげはあ らゆるレベルの管理者‑ と分析範囲を拡大 し, ミドルの行動が 組織 レベルの戦略や変革 と関連づけられることを予測させ るのである。
しか し,管理者行動論 はユニ ッ トの管理者 という立場 に基礎を置 くため,組 織的な視点 は示唆的な ものにとどまっている。 そのため組織的な分脈に ミドル を位置づけなす ことが必要 になって くる。すなわち ミドルの行動を促す組織要 因および ミドルの行動の結果 として現れ る組織現象を明 らかに しなければな ら ない。
ここでは, ミドルの行動を組織的に位置づけることを目的とした最初の分析 結果を報告す る。分析内容 は, ミドルの行動 にたいす る市場環境, トップの影 響力の関連性,戦略適応にたいす る ミドルの行動の関連性,および ミドルの行 動 と戦略適応をモデ レー トす る トップの影響力の関連性である。 結果の報告 に 先立 ち,先行研究を簡単 に検討す ることに したい。
〔297〕
Ⅰ. ミ ドルの行動 の組織 的分脈 1.管理者行動論から変革型 ミ ドルの行動へ
管理者行動論 は,古典的管理論で兄いだされた計画,組織,指揮,調整,疏 制の管理サイクルが,現実の管理者の行動を説明 していないという批判的見解 を提起する。また,従来の リーダーシップ論が照射 してきた行動特性が管理者 行 動 の 一 つ にす ぎな い こ とを 指 摘 し, 管 理 者 の 役 割 を 再 構 成 す る。
(Mintzberg,1973)
このよ うな展 開の中で,Rotter(1982)は自らが統括す る組織 において, 主体的な構想をネ ッ トワークを通 じて実現 してい く管理者の 日常的な行動基盤 を明 らかに しよ うとしている。具体的には,(1)アジェンダの設定,(2)ネ ッ
トワークの構築, (3)ネ ッ トワークを通 じた実行の行動 プロセスを提出 して いるO.
新 たな管理者行動 の発見事実 によ り,従来 の管理者,特 に ミ ドルマネー ジャーの研究 は,変革主体 としての役割を考慮 していない (田尾,1986)と いうという認識につなが り,にわかに変革型 ミドルの行動が注 目され るように な って きた。金井 (1991) は, 日常的な管理者行動 と ミクロの変化をマ クロ な変化へ と結 び付 ける企業内企業家の行動 (Kanter,1983).との一致点を兄 いだ し,変革型 ミドルの操作可能な行動次元を位置づ けた実証研究を行 ってい る。
このように,管理者行動論か ら新たな ミドルの行動へ と展開された一連の研 究は, ミドルの行動,特 にユニ ッ トに働 きかける行動が組織の戦略や変革 と関 連づけられ ることを予測 させ る。 しか しミドルの行動が,戦略的,変革的であ ると結論づけには,具体的な組織の戦略や変革の分脈に ミドルを位置づけなけ ればな らない。
2.戦時の分脈 におけるミ ドル
管理者行動論か らミドルの行動特性へ続 く一連の研究 は, ミドルの行動の新
戦 略的 ミ ドル行動分析 299 たな側面を明 らかに した。 しか し,そこでの焦点 は行動その ものにあ り,戦略 や変革の分脈に直接 ミドルを位置づけているわけではない。
このような状況にたい し,戦略論や組織変革論の分脈か らミドルの行動を位 置づけた研究が始 ま り・つつある。Burgelman (1983)は,下位の 自律的な戦 略行動が ミドルのチャンビオニ ングによって支援 され,組織の戦略が変化す る ことを提示す る。 また,Wooldrige等 (1990)は, ミ ドルの戦 略的イ ンボル ブメ ン トを認知 (逸脱的か統合的か)一行動 (上方‑の行動か下方への行動か) の次元か ら把握 し,代替案のチャンビオニ ング(championingalternatives), 情 報 の 統 合 (synthesizing information), 適 応 の 促 進 (facilitating adaptability),慎重 に計画 された戦 略の遂行 (implementing deliberate strategy)を導 き出 し,戦略のタイプによって ミ ドルの行動 に差異 あるとを 明 らかに している。 ミドルは,戦略の分脈 に置いて単なる戦略の遂行者 とい う だけではな く,戦略創造において も重要な役割を果すのである。
同様 に,組織の変革プロセスの研究 もミドルの役割の重要性を明 らかに して いる。そこでは, トップダウンの変革促進のプロセスの中で, ミドルが具体的 な見本例を創造 し変革 は実現す るのである (加護野,1988)。 これ らは, ミド ルア ップダウンマネジメン トとして トップが ビジョンを語 り, ミドルが上下左 右 に働 きかけて実行す るとい う役割 (野中,1990)と同様な分脈 にあ り, 卜ヅプ が変革の支援者あるいは促進者 として認識 されている。
これ らの研究が示唆す ることは, ミドルの行動の差位が異なるタイプの戦略 として立ち現れること,また ミドルの行動の要因 として トップの影響力が大 き な役割 となっていることにある。以下では, これ らの認識 に基づいて戦略的 ミ
ドルの行動を実証的に検討す ることに したい。
Ⅱ.組織 的分脈 にお ける ミ ドルの行動 の実証 的検討 1.調査課題
これまでの議論か ら、戦略変化や変革 といった組織 レベルの分脈 において ミ
ドルの行動を位置づ ける必要性を認識 した。そのためには, ミ ドルの行動を う みだす組織要 因を把握す ること, また ミドルの行動 によって生み出され る組織
レベルの戦 略や変革 を明 らか に しなければな らない。 ここで は,四国企業100 社か ら回収 されたデータ (設 問回答者 は,人事や総務担当の管理職及 び役員) に もとづ いて調査を行 っている。1)
調査項 目は, (1)企業環境 と トップの影響力の ミ ドルの行動 にたいす る影 響。 (2) ミ ドルの行動の戦略適応 にたいす る影響,(3) トップの影響力を媒 介変数 と した ミ ドルの行動の戦略適応 にたいす る影響であ り,統計的な分析 に よ りその特徴 を把握 している。
2.調査結果
1. ミ ドルの行動特性 (表 1)
調査 に先立 ち,調査 に必要 な設 問項 目の変数2)を因子分析 によ り集約 した。
因子分析 の結果 (固有値 1以上,バ リマ ックス回転後 の因子負荷量) は巻末 に 記 してあ る。 ここでは ミ ドルの行動 に関す る因子分析 の結果 を検討 してみ よ
う。
ミ ドルの行動 は,従来の リーダー シップ論でいわれ るよ うなタスク志 向性 と 配慮 に加 えて,ネ ッ トワークの広 さや,組織 な価値 の理解,戦略的課題 のプロ モー シ ョン的な側面を加えた9変数か らなる。 ミ ドルの行動 は2因子 に集約 し た。第 1因子 は,「部課 内の融和 につ とめ る」, 「部下の提案実現 のために頑張 る」,「会社の方針や哲学を理解」,「部下 に魅力的な機会 を投 げか ける」,「自己 啓発 に熱心であ る」の5変数か らな る。部下 に新 たな試みの機会 を与え,その 1)データは1991年夏,四国生産性本部の人材育成委員会が実施 した人事戦略実態調 査か らの郵送質問調査 (5点評価法)を利用 している.調査企業100社 (回収率 100%)は,従業員1000人以上の企業25社,300人以上1000人未満の企業42社,300 人未満の企業33社か らなり,年間売上 は,5億円か ら7413億円,従業員数77人か
ら5698人の間にある.なお質問解答者は人事や総務担当の管理職および役員であ る。
2)分析に利用 した変数は,(1)企業環境に関する設問,(2)ミドルの行動に関する 設問, (3) トップの影響力に関する設問, (4)戦略適応に関する設問である.
戦略的 ミドル行動分析 301 実現のための積極的にチ ャンビオニ ングを行 う。 しか し,会社の進むべ き方向 性 をよ く理解 した よ うでの行動 で もあ る。 これ らの行動 は 自己啓発 や配慮 に よって促進 されている。すなわち,組織 レベルの ビジ ョンや価値 と現場の視点 を連動 し具体的化す る ミ ドルの行動 とそれ らの行動を促進す る行動が結 びっい た因子 として捉 え ることがで きる。 ここで は,価値連動行動 (F l)とよぶ こ とにす る。第二因子 は, 「社 内外 に人脈 を持っ」。「厳 しい仕事ぶ りを求 め る」。
「仕事 は最後 までや りこうとす る」か ら構成 されてお り, タス ク志 向の行動 と ネ ッ トワー クの広 さが集約 している。 す なわち自らが築 いたネ ッ トワー クを通
じて外的な職務環境を形成す るとともに,部課 内では職務を促進す る行動 とし て把握で きる。 このよ うな ミドルの行動 を職務環境形成行動 (F 2)と呼ぶ こ とにす る。以下で は, ミ ドルの行動 の 2因子3)と他 の設 問で集約 した因子 と の関係を確認す ることに したい。
表 1.ミ ドルの行動 の因子分析
F 1 F2
部課内の融和につ とめる .634 .281 社内外に広い人脈を持 っている .001 .831 部課の提案を実現させようとがんばる .671 .383 会社の方針や哲学を理解 している .616 .491 部下に魅力的な企画を投げかける .842 .006 厳 しい仕事ぶ りを求める .273 .567 公私 ともにつきあいがよい .451 .413 自己啓発に熱心である .774 .232 仕事 は最後 までや り抜 こうとす る .361 .669
固有値 4.10 1.00
3) ミドルの行動の2因子は,相関係数がかなり高いため,2因子の独立性を維持 して て分析する必要性が生 じた. したがって,以下の分析では2因子間の相関関係を排 除 した残差を測定値として利用している.
2. 市場環境, トップの影響力 と ミドルの行動 (表 2,3)
ミドルの行動 は,組織の要因や外的な環境勢力 によって影響 されていると考 え ることがで きる。 ここで は,市場環境 と トップの影響力の ミドルの行動 にた いす る関連 を確認 している。調査結果 は, ミドルの行動が市場環境 によ って規 定 され ることが ほとん どないことを示 している。 これにたい して トップの影響 力 は, ミ ドルの価値連動行動の要因にな っている。 特 に トップのチャンピオ ン 行動,創発的職場創造,現場主義の影響 は顕著であ る。トップが現場のアイデ ィ アに注 目し, 自由度の高い職務環境を創 出す ることに加えて,具体的な支援を
表 2.ミ ドルの行動の決定因 と しての市場環境 (単 回帰分析)
従属変数̲
独立変数 β価値連動行動係 数 職務環境形成行動β 係 数 作業条件の変化 ‑∴058 (‑.55) ‑.196+ (‑.19) 市場の不確実性 .030 ( .29) .021 ( .02) ( ) 内はt値 +p<.1 *p<.05 **p<.01 * * *p<.001
表 3.ミ ドルの行動の決定因 と しての トップの影響力 (単 回帰分析)
従 属 変 数
独 立 変 数
β価値連動行動係 数 職務環境形成行動β 係 数チャンピオ ン行動 一 .477*** (5.32) ‑.181+ (‑1.82) 創発的職場創造 .363*** (3.78) .血 ( 0.99) 制度的 リーダ‑シップ .183+ (1.82) .090 ( 0.90)
( )内はt値 +p<.1 *p<.05 **p<∴01 * **p<.001 行 うことは ミドルの価値連動行動を強めるのである。 しか し,職務環境形成行 動 にたい して トップの影響力 は関連 していない。職務環境形成行動 は, ミ ドル が主体的に構成 した外的な職務環境 にたいす るパ ワーや知識に基礎を持っのか
もしれない。
戦略的 ミドル行動分析
表4.戦略適応 の決定因 と しての ミ ドルの行動 (単 回帰分析)
303
独立
変 数
従 属 変 数
β価値連動行動係 数 職務環境形成行動β 係 数褒品開発戦略 ‑.155 (‑1.54) .135 ( Ⅰ.32) 組織変革戦略<.̲ .255* ( .2.51) ‑.2.97.** (T3.03) 異業種進出 .̲108 ( 1.07) ‑.058 (‑.559) 生産プロセス変革 .238* ( 2.35) ‑.215' (‑2.08) 海外進出 ‑.102 (‑1.01) .090 ( 0.89) ( ) 内はt値 +p<.i *p<.05 **p<.01 ***p<..001
3.ミ ドルの行動 と戦略適応 (表4)
ここで は, ミ ドルの行動の戦略適応への影響を調べた。分析の結果,組織変 革戦略 と生産 プロセスの変革戦略が価値連動行動 と関連 している。 ミ ドルの行 動の戦略適応‑の影響 は,市場志向的な戦略よ りも組織能力の蓄積や変革にた いす る戦略 と関連 している。また,職務環境形成行動 は,戦略行動にほとん ど 影響 していない。
ミドルの戦略的行動 とは‑〜 ドな職務の構造づ くりではな くソフ トな関係を つ くり出す ことにあ り,具体的には個 々の部門の活動を組織的な活動 として連 動 させ ることであると結論づ けることがで きるように思われ る。
4.トップの影響力を媒体変数 とした ミ ドルの行動 と戦 略適応
これまで, ミ ドルの行動 にたいす る組織要因 と戦略適応にたいす る ミ ドルの 行動を確認 して きた。 ミドルの行動 は,環境 よ りも トップの影響が作用 してい ること,特 に トップが現場経験を重視 し,職場 に自由度を与え るとともに積極 的に支援す ることで ミ ドルは価値の連動行動を強めることが確認 された。
また,戦略適応にたいす る ミドルの行動 は,製品 一市場的な戦略にたいす る ものよ りも,組織変革や生産 プロセスの変革 といった,組織能力の蓄積や変革 にたい して価値連動行動が重要であることを示 していた。
ここでは, ミドルの行動 と戟略適応の関連に対す る トップの影響力の媒介効 果を確認す るため,交互作用項つ きの回帰分析を行 った。交互作用項つ きの回 帰分析 によって, トップが ミドルの行動 に影響 し戦略適応を生み出す側面 と, ミドルおよび トップの固有の戦略適応への影響を確認す る。また,先の分析で ミ ドルの職務環境形成達成行動 は,戦略適応にたいす る影響が認 め られなか っ たため, ミ ドルの価値連動行動 にのみ焦点を当て議論す ることに したい。
(1) 市場志向戦略 との関連性 (表 5,6,7)
まず,市場志向的な戦略 との関連を確認 してみよう。製品開発戦略に, トッ プの行動 と交互作用項を加えた ところ, ミ ドルの価値連動行動がマイナスの作 用を及ぼ していることが確認 された。 これは, トノブの影響力を コン トロール
表 5.製 品開発戦略の決定因 と しての トップの影響力 とミ ドルの行動の交 互作用効果 (重 回帰分析)
トップの影響力の各項目 トップの影響力β 係 数 価値連動行動β 係 数 交互作用効果β 係 数 チャンピオ ン行動 ∴169( 1.43) ‑.233*(‑2.02) .007( 0.08) 創発的職場創造 .194+( 1.75) ‑.263
*
(‑2.49) ‑.172+(‑1.77) 制度的 リ‑ダ∵シップ .067( 0.
63) ‑ .161(‑1.55) .069( 0.84) 人事の活性化 .131( 1.20) ‑ .178+(‑1.73) ‑.024(‑0.25) ( )内はt値 +p<.1 *p<.05 **p<.01 ***p<.001 表 6,異業種進 出戦時の決定因 と しての トップの影響力 とミ ドルの行動の交互作用効果 (重 回帰分析)
トップの影響力の各項目 トップの影響力β 係 数 価値連動行動β 係 数 交互作用効果β 係 数 チャンピオ ン行動 .251*( 2.19) ‑.015 (‑0.13) ‑.063(‑0.66) 創発的職場創造 二155( 1.36) .054( 0.49) .009( 0.09) 制度的 リーダー̲シップ .084( 0
.
79) .093( 0.89) .004( 0.05)人事の活性化 .079( 0
.
72) .092( 0.88) ‑.063(‑0.65) ( )内はt値 +p<.1 *p<.05 **p<.01 ***p<.001戦略的 ミドル行動分析 305 表 7.市場拡大戦時の決定因 と しての トップの影響力 とミ ドルの行動の交
互作用効果 (重 回帰分析)
(トtirプの影響力の各項目) トップの影響力 価値連動行動 交互作用効果
β 係 数 β 係 数 β 係 .数 チャンピオ ン行動 .031( 0.28) ‑.048 (‑0.43) 二.023(‑0.25) 創発的職場創造 ‑.013(‑0.ll) ‑.039(‑.0.36) ‑.052(‑0.53) 人事の活性化 .070( 0.69) ‑.040(‑0.40) ・.096( 1.04).
( ) はt値 +p<.1 *p<.05 **p<.01 ***p<.001
した場合, ミ ドルの価値連動行動の直接的な戟略への影響が弱まることを示 し ている。
特 に,創発的職場創造 と交互作用項を加え ると,製品開発戦略に正の作用を 及 ぼす に もかかわ らず交互作用がマイナスにな ってい る。 また異業種進 出に トップの影響力を加えたところ,チャンピオ ン行動 と創発的職場創造の直接的 作用が見 られ る。 トップの影響力に も関わ らず ミ ドルの行動 は戦略に影響 して いないのである。以上の結果 は,市場志 向的な戦略の中で も新たな市場適応を 遂進す る場合, ミドルに新たな行動様式の探索が求め られ行動が試行錯誤的に な り, トップの支援的な影響があった として も行動の一貫性が欠如す るためで あると思われ る。
これにたい し市場拡大戦略では,制度的 リーダーシップと ミドルの価値連動 行動 との相互作用項が正 に作用 している。市場拡大戦略では, トップの シンボ リックな行動の理解が容易であ り, ミ ドルの上下の連動行動を積極的に展開す ることがで きるように思われ る。
(2) 企業能力蓄積 ・変革戦略 との関連性 (表 8,9)
先の製品市場戦略 と比較 して企業能力蓄積 ・変革型の戦略では,異なる結果 が見 られ る。まず,組織変革戦略で は ミ ドル価値連動行動の作用が見 られ,トッ
プの行動 に関わ りな くミ ドルの価値連動行動の重要性が理解で きる。また,坐
表8.組織変革戦略の決定因 と して トップの影響力 とミ ドルの行動の交互 作用効果 (重 回帰分析)
トップの影響力の各項 目 トップの影響力β 係 数 価値連動行動β 係 数 交互作用効果β 係 数 チャンピオ ン行動 .125( 1.09) .194+( 1.70) ‑.014(‑0.14) 創発的職場創造 ‑.029(‑0.26) .248
*
(̲2.26) ‑.056(‑0.54) 制度的 リーダーシップ .015( 0.14) .248*
( 2.38) ‑.074(‑OT89) 人事の活性化 .004( 0.03) .253*( 2.44) .004( 0.04) 現場主義 .115( 1.10) .221*( 2.09) ‑.056(‑0.60) ( )内はt値 +p<.1 *p<.05 **p<.01 * **p<.001 表 9.生産革新戦時の決定因 と しての トップの影響力 とミ ドルの行動の交互作用効果 (重回帰分析)
トップの影響力の各項 目 トップの影響力β 係 数 価値連動行動β 係 数 交互作用効果β 係 数 チャンピオ ン行動 .192+( 1.66) .144( 1.25) ‑.025(‑0.27) 創発的職場創造 .119( 1.◆06) .184+( 1.68) ‑.050(‑0.51) 制度的 リーダーシップ .140( 1.36) .212
*
( 2.03) .021( 0.25) 人事の活性化 ‑.046(‑0.43) .245*
( 2.35) ‑.012(‑0.13) ( )内はt値 +p<.1 *p<.05 **p<.01 * **p<.001産革新戦略で も同様 に, ミ ドルの価値連動行動の直接的作用が見 られ,生産戦 略にたいす る ミドルの価値連動行動の独立の影響力があることを示 している。
要す るに ミドルの戦略的行動 とは,企業能力の変革 にたいす る戦略を トップ の影響力 とは独立 にユニ ッ トの内外へ働 きか けて,組織的な運動を創 出 してい
くことにあると考え られ る。
Ⅱ.
要約 と課題今回の調査 は,組織的な分脈 に位置づけた戦略的 ミ ドルの姿を明 らかにす る ことにあった。そのため,組織 レベルの要因が ミ ドルの行動を促進 し,戦略適 応に影響 してい くことを仮定 して,統計分析 による検証を行 った。
戦 略的 ミ ドル行動分析 307 ミドルの行動を促す組織要因は,市場環境ではな く トップの影響力であるこ とが確認 された。 ミドルの行動を直接換起するのは, トップの創 る組織特性や
トップの人的な接触にあると思われる。
また, ミドルの価値連動行動の戟略適応への影響 は,製品一市場志向の戦略 よりも組織能力の変革や蓄積 に向けた戦略にたいす るものであった。戦略的 ミ
ドルの本質 は,ユニ ッ トの内外へ働 きかけ組織能力を開発 してい くことにある といえそ うである。
このように, ミドルの価値連動行動の戦略適応‑の影響が確認 されたが,職 務環境形成行動,すなわち自ら築 き上げた人的ネ ッ トワークを通 じて職務を達 成す る管理者行動の戦略適応への影響 は見 られなか った。 しか し,職務環境形 成行動が戦略適応に不必要であると結論づけることはできない。 これ らの行動 は,組織 レベルでは確認 されていない将来を担 う戦略適応を下位 レベルで生起 させているのか もしれない。 クロスセクシ ョナルな分析を越えた検討が必要で あろう。
また,今後の調査の課題 として, ミドルの行動 と戦略の関連に対する企業の 管理構造,文化 といった組織特性の媒介的な影響,企業業績が ミドルの行動 と 戦略に与える媒介的な効果 も確認す る必要がある。
さらに今回の調査 は,質問対照者が企業の人事部長 (もしくは総務部長)で あ り,企業 における ミドルの平均像であって,企業内の異なる部門に配属 され ている ミドルの行動の差異を明 らかにす ることはで きない。 このような差異の 中に, ミドルの戦略性 はより明確 に反映されると考え られ る。体系だった調査 に加えて,個別的な ミドルの行動の発見事実を蓄積す ることが必要である。
付録 1.因子分析 による変数の集約 (1) 市場環境 の変化
市場環境 の変化 (付表 1) は,3因子に集約 され る。第1因子 は,「設備 の陳腐化」,
「過大受注の処理」, 「取 引条件の厳格化」,「投資資金の調達」が集約 した。 これ らは業 務環境 の変化 にたいす る因子であ る。 したが って業務環境の変化 (F 1)と した。第二 因子 は,「商品寿命の短縮化」,「主力製 品の成熟化」,「国際化 の進展」の3変数で構成 されてい る。 3変数 は市場環境の異質性や多様性の因子である。 したが って市場不確実 (F 2)の因子 と呼ぶ ことにす る。第3因子 は,「他社 との競走激化」,「大手企業の新 規参入」か らな り,市場の競争状況の高ま りに関す る因子 と して考えることがで きる。
第 3因子 は競争圧力 (F3)とした。
(2) トップの影響力
トップの影響力は,2つの因子が抽 出された。第 1因子 は 「重要意思決定 に部下の参 加 を求 め る」「社員研修 に金を惜 しまない」「部下 との熱 い議論を好む」「下か らの意見 を積極的 に取 りあげ る」「親身 に社員の相談 に乗 る」か ら構成 されてい る。 これ らは, 社員の行動の積極的な支援を示 している。 したが って,チ ャンピオ ン行動 (F 1)とす る。第2因子 は,「チャ レンジした失敗 は問わない」,「敗者復活の道を閉ざさない」,「任せ た ら口を出さない」,「若 い人 に大 きな仕事を もたせ る」の変数か らな り,社員が積極的 に行動で きる場 を創造す る トップの影響力 として促え ることはがで きる。 したが って, 創発的職場 の創造(F 2)と した。第 3因子 は,「行動 的で 情熱 あふれ る目だっ存在」「常 に自身 に満 ちた行動を とる」 「常 に経営哲学や ビジョンを説 く」か らな り,組織の シン ボル として価値を体現す る行動が集約 している。第3因子 は制度的 リーダー シップとす る (F3),第4因子 は 「厳 しい昇進競争や人事考課 を求め る」,「積極 的に人事移動 を 行 う」の トップの人事の取 り組み方が集約 している。そのため人事の活性化 (F 4)と した。第5因子 は 「仕事 こそが能力資質を磨 く」,「採用 より育成が勝負 だ」,「成功体験 を意図的に積み重ね させ る」で構成 され現場 の体験を重視す る トップの姿勢 として考え
ることがで きる。 したが って第5因子 は現場主義 (F5)と した。
(3) 戦略適応
戦略適応 (付表4) は,5因子であ る。第1因子 は 「新製品開発」,「生産設備の自動 化」,「生産の外注,下請」か らなる。 これ らは,製品開発 にあた って生産 プ ロセスの変 更が必要 であ ることを示 してい る。 そのため プロセス面の変更 を含 んだ製 品開発戦 略 (F 1)とす る。第 2因子 は 「戦略情報 システムの構築」,「分社化,社 内ベ ンチ ャー」,
「マ トリックス組織 の導入」で構成 されている。 これ らは,組織の構造や情報経路の変 革であ り,組織その ものの変革 として考 え られ る。第2因子 は組織変革戦略 (F2)と す る。第 3因子 は 「異業種進 出」 と 「CIや社名変更」が集約 した。新 たな業種‑の進 出には,企業イメー ジの変更が必要 なためであると思われ る。第 3因子 は異業種進出戦
戦 略的 ミドル行動分析 309
略 (F3)とす る。第4因子 は 「TQC(全社的品質管理)」,「かんぽん方式の導入」か らなり,生産 システムの変革に関わる因子である。 したが って生産革新 (F 4)と呼ぶ ことにす る。第5因子 は,「海外進出」 と 「M&A」か らなり,海外市場での企業展開 には,外的資源を利用するためにM&Aが必要 となるように思われる。 したが って,第 5因子は海外進出とする (F5),第6因子は,「広告宣伝活動の強化」,「営業販売網の 拡充」で構成されており,市場の拡張を意図 した戦略適応 と考え られる。そのため,市 場拡大戦略 (F 6)とした。
付表 1.市 場 環 境 の 因子 分 析
F1 F2 F3 他社 との競走激化 ‑ .054 .120 .727 大手企業の新規参入 .140 .240 .735 商品寿命 の短縮化 ̲.124 .885 .135 主力製品の成熟化 .434 .718 .032 設備 の陳腐化 .759 .161 ‑.092 過大受注 の処理 .746 .113 .146 取 引条件 の厳格化 .517 .184 .368 投資資金 の調達 .599 ‑.188 ;535 国際化 の進展 ‑.075 .631 .442 固有値 3.17 1.32 1.10
付表2. トップの影響力の因子分析
F1 F2 F3 F4 F5 仕事 こそが能力資質を磨 く ‑.001 ‑.219 .040 二031 .763 人紬 ま療用より育成が勝負だ .107 .147 .141 ‑.014 .569 成功体験を意図的に積み重ねる .028 .285 .153 .1310 .647 チャレンジした失敗 は問わない .083 ⊥題旦 .004 ‑.229 .l10'3 厳 しい昇格競争や人事考課を求める .049 ‑.134 .038 .833 .051 敗者復活の道を閉ざさ‑ない .326 ⊥旦萱旦 .165 .070 ‑.015 積極的に人事移動を行 う .̲122 .253 .100 .733 .049 任せた ら口を出さない .165 ̲」迎 .00? .182 .096
重要意思決定に部下の参加を求める ⊥亘ヱ旦 .365 .312 .073 ‑.167 社員の研修 に金を惜 しまない .831 二.008 ‑.028 .054, .017 部下 との熱い議論を好む ⊥ヱ旦1 .203 .145 .127 .026 部下からの提案を積極的にとりあげる ⊥聖迫̲ .315 .042 .133 .193 親身で社員の相談 にのる .599 .187 .278 ‑.119 .116 行動的で情熱にあふれた目たつ存在. .216 .068 ∴874 ‑.021 .151 常に自身に満ちた行動をとる .141 」027 ・」坦旦 .020 .163 常 に経営哲学や ビジョンを説 く .046 .167 .727 .459 .117 固有値 ・5.19 2.02 1.40 1.36 1.16
戦 略的 ミ ドル行動分析
付表 3.戦 時適応 の因子分析
311
F 1 F2 F3, F4̲ .F 5 ‑ F二6 新製品開発. jJiag: .267 .217 ‑.288 .162 .‑153 異業種分野への進 出 ‑.1ー52 .057 JjBB̲ .232 ..181 .113 海外進 出 .068 ・.045 .063 ‑.021 .802‑㌔ ;..‑035 M&A (吸収 .合併) ‑.032 .0一16 .144 .212‑ .792 一一.034̲. 技術提携 ̀438 .252 .308 ‑.203 .439 .005‑ 広告宣伝活動 の強化 ‑.006 ‑.235 ‑.‑275 ‑.051 ‑.̲074 上̲旦星ヱ
‑.営業販売網 の拡充 ‑.152 .195 ‑.159 ‑.211 .087 .718 生産設備の 自動化 .730 .131 ‑.237 ‑.058 ‑.066. .066
戦略情報システム(SⅠS)の構築
CⅠや社名変更の導入 , ...12058‑ .7 .077439 ‑.0」臼5迫 ‑.05 .1619 ‑.2 ,000841 A.1..0821.5 分社化 や社 内ベ ンチャー ‑.129 .604 .521. .075 .080 ‑.064 マ トリックス組織 の導入 .045 .770 ∴118 .281 ・1̲10 ‑.215
TQC活動 .029 .101 「.01.5 .771 .085‑ .070 かんぽん方式 .024 .294 .196 .729 .043 .056 生産の外注化 ̲.下請化 ‑」亘ヱa ‑.247 .478 .273 .068 丁こ280 生産 .,I程 q)管理 の改善 .819 ‑.056 .054 .275,‑.109 .061 固有値 3.2̲7 1.99 1.58 1..40‑ ・1.26. 1.08
参 考 文 献
1)Burgelman,R.A.(1983), "A Process ModeloflnternalCorporate Venturing in The】⊃iversified Majour Firm,"AdministrativeScie7We QzLaterly,28, pp.223‑44.
2)加護野忠男 (1988),『組織認識論』,千倉書房.
3)金井毒宏 (1991),『変革型 ミドルの探究』, 白桃書房.
4)Kanter,R. M.(1983),The Change Masters,New York:Simon &
Schuster(長谷川慶太郎訳,『ザ ・チェイ ンジ ・マスターズ』,二見書房,1984年).
5)Kotter,J.P.(1982),TheGeneralManagers,New York:Free(加護野忠 男,金井毒宏,谷光太郎,宇 田川富秋訳,『ザ ・ゼネラル ・マネージャー』, ダイヤ モ ン ド社,1984年).
6)Mintzberg,H.(1973),TheNatureofManagerialWork,New York:
Harper&Row (奥村哲史,須員栄訳,『マネー ジャーの仕事』, 白桃書房). 7)野中郁次郎 (1990),『知識創造の経営』, 日本経済新聞社.
8)田尾雅夫 (1986),「管理行動 と組織革新」,『組織科学』,第20巻 第 1号,pp.2‑
9.
9)Wooldridge,B.and S.Floyd (1992),"Middle Managementlnvolve一 mentinStrategyand ItsAssociationwithStrategicType:A Resear‑
achNote,"StT・ategicManagementJournal,13,pp.153‑167.