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セメント硬化体の熱的性質に関する二,三の考察

Studies on thermal properties of hardenedCement paste

Masami SHOYA (昭和49年10月31日受理)

1. させるために水セメント比を35〜75%の5種に変え,単

位細骨材料をほぼ一定にした配合とした。 この示方配合 を表−1に示す。

モルタルの練りまぜには可傾式ミキサを使用し,締固 めには内部振動機を用いた。

供試体の形状および寸法は,熱拡散率測定用として 10×20cmの円柱形,熱伝導率測定用供試体は内径6cm, 外径20cm,高さ40cmの円筒形である。測定方法は,熱 拡散率の場合はGlover法を,熱伝導率は米国開拓局で 採用している直接法である。同一条件については, 2つ の試験ともに供試体個数は2個とした。

セメント水和物の熱的性質を評価するためには,硬化 モルタル供試体の熱的性質を飽水状態と絶対乾燥状態の 2つの場合について求める必要があるので次のような順 序でそれを行なった。すなわち,飽水状態の測定に用い た供試体は,打込象後1週水中養生(20±3°C水中)し たものを用い,絶乾状態の測定に用いた供試体は上記と 同様に1週水中養生した後, 3日室内放置, 3日50。C炉 中乾燥したのち引き続き炉内温度を105。Cに上げ,一定 重量になるまで乾燥させたものである。 このように段階 を追って乾燥させたのは,急激な乾燥によるひびわれを 防ぐためである。絶乾状態の測定にあたり,供試体は吸 水せぬようこれをポリエチレンで被覆して上記熱的性質 を測定した。飽水,絶乾状態の場合ともに,上記性質の 測定時の供試体温度を40。C程度とした。なお,乾燥時 にも若干の水和が進行すると考えられるが,本解析にお いては乾燥時には水和は停止しているものとしてこれを 行なっている。

コンクリート構成材料としてのセメントペーストは,

骨材相互の接合および骨材間隙の充填を行なう役割を持 つものであって, この硬化体自体の力学的および物理的 性質は周知のようにコンクリートの諸性質に大きく影響 を及ぼす。 したがって,複合材料としてのコンクリート の諸特性を把握するためには, セメントペースト硬化体 に対する十分な基礎的知識の集積と理解を深めることが 必要となろう。

本報告は,上記セメント硬化体の物理的性質の一つで ある熱的性質について行なった一解析の結果を述べるも のである。すなわち,モルタルを試料として水和段階の 異なる場合の熱伝導率および熱拡散率を実測し, またこ のモルタル構成分の容積割合をRiischのセメント硬化体 に対する概念から算定した。 さらに,複合材料的なアプ ローチから上記容積比率をもとにセメント水和物の熱的 性質を評価しようとしたもので,得られた結果をセメン

トペーストのそれと比較し,若干の考察を試ゑた。

2. 実験概要

実験に使用した試料は,普通ポルトランドセメントお よび天然砂(比重2.58,吸水量2.65%)で製造したモル タル供試体であって, セメント硬化体の水和段階を変化

表1 供試モルタルの示方配合

フ稲│空霜 単位量(kg/m3)

W/C

(%) wl c l s

35.1

45.0 55.0 65.1 75.1

19272●●●●●43322

228 255 278 296 311

650

567 505 455 414

1,355 1,358 1,367 1,375 1,381

3. 実験結果および考察

(1)モルタル供試体の絶乾および飽水状態の測定

結果

飽水状態および絶乾状態におけるモルタル供試体の熱 伝導率Kおよび熱拡散率h2の実測値と水セメント比Wc との関係を図−1に示す。なお同図にはモルタルの単位 秋田高専研究紀要第10号

134

163 193 207

(2)

セメント硬化体の熱的性質に関する二,三の考察 77

硬化モルタル 未硬化モルタル

飽水

○絶乾

100

1

260

︵二︑峯屋唖︲︒﹇×︶坐一︵○・・三E弩星淫︶望

240

220

答積比率%

200

1.8

1.7

陣Z

1.6

I 1.5

2200

︵︽Eく四二︶Q 2100

35 45 55水セメン ト比W/C (%)65 75 1 35 45 55 65 75

図2 モルタル構成物の容積比率

2000 1900 1800

にはモルタル構成物の容積割合を知る必要がある。 この ためRiiSchのセメント硬化体の硬化過程についての概念 を導入して構成分の比率を算定することとした。

Riischはセメント硬化体の硬化に関して次のような説 明をしている。すなわち,

1) ポルトランドセメントは完全な水和に至るまでに その重量の財の水と化学的に結合しうる。

2)化学的な結合によって水はその容積の》4を失な い,その結果空隙を発生する。

3)ポルトランドセメントは化学的な結合水のほかに その重量の15%をゲル水として吸着し, 105。Cの乾燥で 全て蒸発する。 このようなルーズな結合であっても, ま だ水和していないセメントとは反応することができな い。

本解析においては以上の考えをそのまま実験結果にあ てはめ各構成分の算定をした。計算の順序を示すと次の ようになる。

1) モルタルの乾燥前後の重量差が逸散した自由水,

ゲル水および砂の吸水分であるとして, これより砂の吸 水分をひいたものがセメントペースト自体からの蒸発水 量となる。

2)示方配合の単位水量からこの蒸発量(自由水十ゲ ル水)をひいた残りが結合水量である。

3) セメント重量の麺の水が結合した場合の水和度を 1と考えて,示方配合で示されたセメント量と2)で求め た結合水量から水和度を求める。

水セメント比W/C(%1 図1 モルタル供試体の表乾および絶乾状態に

おける熱拡散率,熱伝導率および単位容積 重量

容積重量βの変化もあわせて示されている。この単位容 積重量は飽水状態の場合は配合で示された各材料の単位 量の和であり,絶乾状態のそれは乾燥前後の供試体の重 量差から計算で求めた値である。図に承られるとおり,

飽水状態におけるモルタルの熱拡散率および熱伝導率は 水セメント比が大きくなるほど減少する傾向にある。 れは, モルタル中の単位細骨材量がほぼ一定であるため 熱的性質はモルタル中のセメントペースト分の承に影響 されるからであって,一般にセメントペーストの熱拡散 率および熱伝導率は水セメント比の増加にともない減少 する事実によるものである。 この事実は後に述べられる ように水セメント比の増加によってセメントペしスト中 の容積の中に占める自由水の割合が大きくなるためと考 えられる。絶乾状態における測定値も飽水状態と同様に 水セメント比の増加にともない減少するが,その絶対値 は飽水状態のそれに比し約10%内外の減少をゑている。

これは乾燥により自由水が逸散して,間隙が空気で置き かえられた結果によるためと判断される。

(2)硬化モルタル構成分の容積比率の算定 前述したように,セメント水和物の熱的性質を求める

昭和50年2月

砂の実質部分

セメント水和物

l l l

(3)

78 庄谷 4)水和により生成したセメントゲルの容積は, セメ ントの絶対容積と水和度の積に結合水量を加え,結合水 の容積の%をひいたものとなる。 さらにこれに未水和の セメント分を加えたものをセメント水和物の容積と考え ると1)〜4)の過程でゲル水, 自由水,発生空隙および セメント水和物の容積すべてが求まることとなる。

以上のような操作で求めたモルタルの構成物比率と水 セメント比の関係を図−2に示す。なお図中には比較の ため未硬化モルタルの構成分比率が併せて示してある。

ここでセメント水和物をセメントゲルと未水和セメント の和としたのは,水和過程におけるこれらの区分がはっ きりとせず,各々を単一のものとして扱う困難さによ る。図より,セメント硬化体においては水セメント比の 増加に伴ない自由水がかなり多くなる.こと,発生空隙お よびゲル水の増加は少ないことおよびセメント水和物は 逆に減少することなどが顕著に認められよう。 さらに硬 化前と硬化後を比較すると, セメントの容積は1.3〜1.6 倍にも膨れていることが注目されることといえる。

(3)セメント水和物の熱伝導率および熱拡散率の 評価

(2)節においてモルタル構成分の容積が算定されたので 本節ではこれを用いてセメント水和物の熱伝導率および 熱拡散率を評価した結果について述べる。

著者らの研究によると,次のような熱伝導率に関する 複合則が実験的に得られている。すなわち,

KM・VM=Kp・Vp+K9・Vs………(1) 上式において,

KM,VM;モルタルの熱伝導率および絶対容積 KP,VP;セメントペーストの熱伝導率および絶対容積 Ks,Vs;細骨材の熱伝導率および絶対容積

(1)式を用いれば,セメントペーストおよびモルタルの熱 伝導率および絶対容積と細骨材の絶対容積を知ることに よって細骨材自体の熱伝導率が求められることになる。

さらに,細骨材の熱伝導率が既知であれば,モルタルの 熱伝導率を知って同水セメント比のセメントペーストの それを(1)式より推定することができる。

そこで,水セメント比35%のセメントペーストの飽水 状態における熱伝導率を実測し,上記関係から表乾状態 の細骨材の熱伝導率を求め, この値を用いて逆に各水セ メント比のセメントペーストの熱伝導率を算定した。

このように計算でセメントペーストの熱伝導率を求めた のは,水セメント比が大きくなると材料の分離が著しく 測定値の信頼性に問題が生ずると考えられたためである。

次に細骨材の実質部分の熱伝導率を求めるため, (1)式 と同様な関係が吸水部分との間に成立するとして計算を

征美

行なった。この算定にあたって,供試モルタルの試験時 における温度が約40.Cであったので,吸水部分を占める 水の熱伝導率として40。Cの値を用いている。空気の40。C における熱伝導率が既知であるので,図−2で示された 硬化モルタルの容積割合を用いて上記の複合則を適用す ると,セメント水和物自体の熱伝導率が求まることにな る。その結果は,ペースとするモルタル供試体が飽水状 態であるか絶乾状態であるかによって若干異なってくる が, この差は最大4%程度であったので,飽水状態のモ ルタルをもとにして算定することとした。

次に,熱拡散率は下記のようにして求めた。すなわち 著者らの多くの実験から, コンクリートの単位容積重量 が0.5〜4t/㎡の範囲では熱拡散率h2と熱伝導Kの間に は次のような一定の比例関係が明らかとなっている。

lf=0.00138K…。.………・…・・・…(2) ここで上式のh2はm3/hr,KはKcal/m・hr・。Cのディ メンジョンを持つ。そこで(2)式を用いてセメントペース トおよびセメント水和物の熱拡散率が先に求めたそれぞ れの熱伝導率をもとに評価されることになる。

以上のようにして得られた結果を各水セメント比に対 応させて示したものが表−2であって,Kp, h,Fはセメ

ントペーストの熱伝導率および熱拡散率を示し,Kp,h2P はセメント水和物のそれを示している。 この結果から,

水セメント比の減少によりセメントペーストおよびセメ ント水和物の熱伝導率,熱拡散率はともに増大するが,

後者は前者の1.3〜1.5倍程度の大きさであることがわか った。

表2 セメント水和物およびセメントペースト の熱伝導率,熱拡散率の算定結果

W7石 琢丁F訂1"Ol55016"│"

Kp(Kcal/mh。C) │ 1.1210.9710.8510.7710.70 Kp(Kcal/mh。C) │ 1.61 1 1.43 1 1.22 1 1.07 10.94 h2p(×10‑sm2/hr)│ 155 1 1341 117 1 1061 97 h2p(×10‑5m2/hr)│ 222 1 1981 1691 1481 130

(4)考

以上の結果を考察すると次のようである。即ち,

(i)セメントペースト硬化体の熱伝導率および熱拡 散率は他の実験の実測値と同様に水セメント比の増加と

ともに却って減少する傾向が認められたが, この理由と して水セメント比が大きい程セメントペースト中の水の 容積が増加することに依存するものと考えられる。すな わち, 40。Cの温度での水の熱拡散率h2,熱伝導率Kは 秋田高専研究紀要第10号

(4)

セメント硬化体の熱的性質に関する二,三の考察 79 それぞれ0.55×10 3m2/hr,0.54Kcal/m・hr.。Cであっ

て,セメントペーストのそれよりも非常に小さな値を示 している。したがって水セメント比の増加に併ない自由 水の割合が多くなることを考えるとこの結果が妥当であ ると推察される。

(ii)未水和セメント分を含むセメント水和物の熱伝導 率および熱拡散率も水セメント比の増加とともにやはり 減少傾向を有するが, これはセメントと水との化学的結 合の程度が水セメント比により異なり, したがってその 水和物の化学的組成が異なるからであろうと思われる。

さらに, このセメント水和物は未水和セメントをも含め たものであって,一般に微粒物質の上記熱常数はかなり 大きい値であることより,未水和セメント粒子のそれも 大きな値であることが推測される。 また水セメント比の 小さいものほど水和作用が完了するのに要する時間は長 くなり, したがって同一材令においては水セメント比の 小さいセメントペーストほど熱常数の大きな未水和セメ ントを多く含むことになるから全体としてのセメント水 和物の熱常数が大きくなるのではないかと考えられる。

なお, セメント水和物の熱伝導率および熱拡散率はセ メントペーストのそれの1.3〜1.5倍程度であるが, これ はセメント硬化体内部の水和物以外の構成分の熱常数が 小さいためと判断される。

参考文献

1) BureauofReclamation,UnitedStatesDeprart‑

mentofthelnterior :BoulderCanyonProject FinalReports,PartV11‑CemcntandConcrete Investigations,Bulletini,ThermalProperties ofConcrete,1940.

2)W.チェルニン:建設技術者のためのセメントコン クリート化学, p58〜67.技報堂.

3)徳田弘,庄谷征美:複合材料としてのコンクリー トの熱拡散率,材料,Vol21, No.230, pp. 1017 1023, 1972.

4)徳田弘,庄谷征美,国分修一:膨張性セメント混 和材を用いたコンクリートの熱拡散率に関する研 究,土木学会膨張性セメント混和材を用いたコンク

リートに関するシンポジウム, 1972.

5)徳田弘,庄谷征美:コンクリートの熱特性値の測 定と二,三の考察,士木学会論文報告集212号, pp、

89〜98, 1973.

6)庄谷征美,徳田弘: コンクリートの熱拡散率に及 ぼす配合諸条件の影響,土木学会第28回年次学術講 演会概要集,第5部, pp.175〜176, 1973.

7)庄谷征美,徳田弘:セメント硬化体の熱的性質,

士木学会東北支部技術研究発表会講演概要, PP、117

〜118, 1974.

4.

一三目

以上を総括すれば次のようになる。

(1)単位細骨材量を一定としたモルタルでは水セメン ト比の増加により熱伝導率および熱拡散率は減少する。

さらに本実験の範囲では,絶乾状態の上記熱常数は飽水 状態のそれに比し, 10%内外の減少が認められた。

(2) RUschの概念から求めたモルタル構成分の容積比 率をもとにして複合材料的アプローチから求めたセメン トペースト硬化体およびセメント水和物の熱常数は,水 セメント比の増加に伴ない減少する傾向にある。 さらに 後者は前者の1.3〜1.5倍程度であることが示された。 れらの理由としては,セメントペーストでは水セメント 比の増加による自由水の増加,セメント水和物では水セ メント比の増加による未水和セメント分の減少などが主 に関連すると考えられた。

末尾ながら,本研究を行なうにあたり懇切なる御脂 導,御助言を頂きました秋田大学徳田弘教授に紙面を借

り厚く御礼申し上げます。

昭和50年2月

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