非国際的武力紛争への敵対行為規則導入の史的検証
(一) : ジュネーヴ諸条約第二追加議定書をめぐ って
著者 川岸 伸
雑誌名 静岡大学法政研究
巻 24
号 3‑4
ページ 151‑167
発行年 2020‑04‑30
出版者 静岡大学人文社会科学部
URL http://doi.org/10.14945/00027521
論説
川岸 伸
非国際的武力紛争への敵対行為規則導入の史的検証(一)
――ジュネーヴ諸条約第二追加議定書をめぐって――はじめに一 問題意識二 分析視座(以上、本号)第一章 一九五七年ニューデリー会議第二章 一九六五年ウィーン会議第三章 一九六九年イスタンブール会議第四章 一九七一年と一九七二年の政府専門家会議第五章 一九七四年から一九七七年までのジュネーヴ外交会議おわりに
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はじめに
一 問題意識非国際的武力紛争を規律する武力紛争法 (1(は、一九九〇年代中葉以降、変容を遂げたと評されている (2(。一九九〇年代中葉以前については、基本的に一九四九年ジュネーヴ諸条約共通第三条(共通第三条)と一九七七年ジュネーヴ諸条約第二追加議定書(第二追加議定書)があるに過ぎなかった (3(。これらの規則においては、武力紛争犠牲者保護に関する規則(武力紛争犠牲者保護規則 (4()が大部分を占め、敵対行為に関する規則(敵対行為規則 (5()はほんの僅かしか見出すことができなかった (6(。このため、これらの規則に対しては、単に規則数が少ないという点は然ることながら、内容面において不十分であるという点が指摘されてきたのである (7(。この状況に直面して、一九九〇年代中葉以降、国際刑事裁判の実践がこれらの諸点を一定程度克服する契機となった。この契機において
ICTY
は重要な役割を担った (8(のであって、Tadic
事件上訴裁判部中間判決がリーディングケースとも言える判決となった。同判決は、慣習国際法上、非国際的武力紛争に敵対行為規則が導入されることを結論付ける。同判決は次のように問題提起する。すなわち、「なぜ、二つの主権国家が戦争に従事する場合においては、交戦暴力から文民を保護し、または強姦、拷問または病院、教会、博物館もしくは私的財産の破壊を禁止し、さらに不必要な苦痛を引き起こす兵器を禁止するにもかかわらず、暴力が主権国家の領域内『のみ』に勃発する場合においては、同じ禁止を規定しまたは同じ保護を与えることを控えるのか (9(」と。この問題提起は、国際的武力紛争においては、敵対行為が禁止されているにもかかわらず、非国際的武力紛争においては、敵対行為が十分に禁止されていないという現状を憂慮することを本旨としている。この問題提起を受けて、同判決は、慣習国際法上、敵対行為規則、中でも、敵対行為からの文民・民用物の保護、化学兵器の使用禁止、背信行為の禁止が非国際的武力紛争に妥当することを判断する (60
(。化学兵器の使用禁止と背信行為の禁止に関する同判決の判断は同判決の基本姿勢を良く表していることから、この点について検討することにしよう。まず、同判決は、「人道の基本的考慮と常識は、自国領域内の自国民の反乱を国家が鎮圧する時、国家間武力紛争において禁止される兵器を国家が使用することを許容することを不合理なこととする。国際戦争において、非人道的であり、結果として禁止されることは、内戦においても、非人道的であり、許容されないと言わざるを得ない (66
(」と述べている。その上で、同判決は、化学兵器の使用禁止については、一九八八年にイラクがクルド人反政府勢力に対して化学兵器を使用したとして疑惑が持たれた
Halabja
事件 (62(への各国の反応を、背信行為の禁止については、一九六九年ビアフラ内戦中に叛徒のメンバーが市民に偽装して殺人を行ったとして起訴された
Nwaoga
事件 (65(のナイジェリア最高裁判決をそれぞれ挙げている (64
(。これら一連のリーズニングを経て、同判決は、慣習国際法上、化学兵器の使用禁止と背信行為の禁止が非国際的武力紛争に当てはまることを判断している (6(
(。この点に関して、重要なことは、この判断が国際的武力紛争に適用される規則を「模範」とし、それを非国際的武力紛争に導入するという基本姿勢に立脚するものであるということである (65
(。上記引用の「国際戦争において、非人道的であり、結果として禁止されることは、内戦においても、非人道的であり、許容されないと言わざるを得ない」という同判決の著名な一節は、この基本姿勢を良く表している。というのも、この一節は国際的武力紛争において禁止される事項が同じく非国際的武力紛争において禁止されるべきであるということを示しているからである (65
(。同判決の裁判長であった
Cassese
は、「今や国内紛争は伝統的に国際紛争にのみ適用された規則と原則によって規律されている (65(」とし、非国際的武力紛
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争が国際的武力紛争に適用される規則によって規律されるべきであるとした同判決の基本姿勢を確認している。この基本姿勢に関して、注意すべきことは、武力紛争法の従来的な思考様式に重大な影響を与えるものであるということである。第一に、国際的武力紛争と非国際的武力紛争とを区別する意義が減少する。武力紛争法上、二つの紛争形態に同じ規則が適用可能となれば、そもそも、二つの紛争形態を区別する意義は乏しくなる。事実、同判決は、「武力紛争の分野において、国家間戦争と内戦との間の区別は、人間が関係する限り、その価値を失いつつある (65
(」とした上で、「国際法が、当然に国家の正当な利益を適切に保護する一方で、人間の保護に次第に取りかかるならば、[国家間戦争と内戦という]上記区別が徐々にその重要性を失うべきであることは自然の成り行きでしかない (20
(」と述べている (26
(。そして、国際的武力紛争と非国際的武力紛争とを区別する意義が減少すれば、ある紛争を国際的武力紛争として分類するか、それとも非国際的武力紛争として分類するかという紛争分類の意義は相対化する。第二に、武力紛争法の基本構造に対する理解に変化が生じる。国際的武力紛争に適用される規則が少なくとも紛争当事者の一方を非国家主体とする非国際的武力紛争に妥当すると解するならば、国際的武力紛争に適用される規則において国家的性格は希薄化し、むしろ非国家主体の利益保護という性格が表面化する。実際、同判決は、「国家主権指向アプローチは徐々に人間指向アプローチに取って代えられている (22
(」とし、「すべての法は人間の利益のために作られるというローマ法の格言が次第に国際共同体においても確固たる基盤を築きつつある (25
(」と述べている。このことは、武力紛争法の基本構造が「国家」によってよりも、むしろ「人間」によって構成されると理解する方が適切であることを意味している。そして、同判決は、「特に一九四八年世界人権宣言採択後の人権論の国際共同体における急速な発展と普及は、国際法、とりわけ、世界共同体を悩ます問題へのアプローチに関して重大な変化をもたらしてきた (24
(」と
し、この武力紛争法の基本構造に対する理解の変化の背景に国際人権法の発展と普及があることに付言している。因みに
Meron
は「武力紛争法の人道化」という用語によって同判決の基本姿勢を説いてきた (2((。「武力紛争法の人道化」は、どのように武力紛争法が「より人間としての様相 (25
(」を獲得するに至ったのかという問題を分析するための用語である。そして、「武力紛争法の人道化」において国際人権法は重要な役割を果たしたと捉えられている (25
(。表現に若干違いはあるものの、上記「人間指向アプローチ」にせよ、上記「武力紛争法の人道化」にせよ、これらは武力紛争法の基本構造に対する理解の変化(「国家」による構成よりも「人間」による構成)を説明するものである。国際的武力紛争に適用される規則を「模範」とし、それを非国際的武力紛争に導入するという同判決の基本姿勢は、どちらの表現を用いて説明するにしてもこのように武力紛争法の基本構造に対する理解に変化が生じることをもたらすことになる。いずれにせよ同判決は、慣習国際法上、国際的武力紛争の敵対行為規則を非国際的武力紛争に導入することによって、従来不十分であると認識されてきた諸点を克服する展開を示している。この展開の結果、武力紛争法の従来的な思考様式は、様々な観点において修正を迫られている。では、そもそも、国際的武力紛争に適用される敵対行為規則を非国際的武力紛争に導入することは認められるのだろうか、それとも認められないのだろうか。仮に国際的武力紛争に適用される敵対行為規則を非国際的武力紛争に導入することが認められるとして、なぜ、この導入は認められるのだろうか。そして、どの程度まで、この導入は認められるのだろうか。これらの問いに対して解答を与えることは、今日において、非国際的武力紛争を規律する武力紛争法のあり方を考えるにあたって不可欠のものであると思われるのである。本稿の問題意識は、これらの問いに対して解答を与えるための手がかりを得ることにある。
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二 分析視座この一九九〇年代中葉以降の展開を受けて、先行研究は、判決を考察対象とし、
ICTY
における慣習国際法の認定を分析する傾向を表している。具体的に述べると、慣習国際法の認定方法、さらに慣習国際法を認定するにあたって示された根拠の当否などが主として論じられている (25(。この分析は
ICTY
における慣習国際法の認定を正面から検討するものであって、この分析それ自体は一定の意義を持つものである。実際、筆者は、限定的ではあるものの、この分析視座と同じそれに立脚してICTY
における慣習国際法の認定を検討した (25(。もっとも、この分析視座のみでは問題の全容を解明することは難しいと思われる。なぜならば、この分析視座は、慣習国際法の認定を検討の中心に据えるため、慣習国際法の論点に議論を集中させることになるからである。それ故、この分析視座だけからは、国際的武力紛争に適用される敵対行為規則を非国際的武力紛争に導入することの可能性と限界は部分的にしか把握することができない。そこで、本稿は、この分析視座からはひとまず離れて、別の分析視座に立脚することにする。この点に関して、興味深いのは、非国際的武力紛争を規律する武力紛争法の史的展開を見ると、国際的武力紛争に適用される敵対行為規則を非国際的武力紛争に導入するという考え方それ自体は一九九〇年代中葉以降の展開において史上初めて出現したものではないということである。この考え方それ自体は一九五七年ニューデリー会議から実質的に始まって一九七七年ジュネーヴ外交会議に正式に終わる第二追加議定書の成立過程において幾度も提示されるものであった。実際、この第二追加議定書の成立過程において
ICRC
は、国際的武力紛争に適用される敵対行為規則を非国際的武力紛争に導入するという考え方を採用してきた。この概略を掴むため、例示的に、一九七二年政府専門家会議のICRC
提案、一九七四年から開始するジュネーヴ外交会議の原案となったICRC
提案を取り上げることにしよう。まず、一九七二年政府専門家会議の
ICRC
提案は、第二追加議定書案の中でも、敵対行為規則については、第一四条に「文民たる住民の定義」を、第一五条に「文民たる住民の尊重と保護」を、第一六条に「文民たる住民の生存に不可欠な物の尊重と保護」を、第一七条に「攻撃の際の予防措置」をそれぞれ定めている (50(。一例に言及すると、第一五条は、第一項に「文民たる住民それ自体及び個々の文民は攻撃の対象としてはならない」こと、第二項に「特に恐怖を広める攻撃は禁止する」こと、第三項に「文民と軍事目標に無差別に向けられる性質の攻撃は禁止する。しかし、軍事目標の内部にいる文民は軍事目標に向けられる攻撃から生じる危険を伴う」こと、第四項に「文民たる住民と文民はその存在によって軍事目標を攻撃から免れさせるために使用してはならない」ことをそれぞれ規定している (56
(。これらの規定は、順番に若干の違いは見られるものの、文言上、ジュネーヴ諸条約第一追加議定書(第一追加議定書)案における第四五条(「文民たる住民の尊重」)と第四六条(「文民たる住民の保護」)の規定と基本的に同じである (52
(。この点に関して、
ICRC
コメンタリーは、「ICRC
は…第一議定書案の例に従いながら、文民たる住民の保護に関する部分を第二議定書案に導入することにした (55(」と説明している。この点に鑑みると、この
ICRC
提案は、国際的武力紛争に適用される敵対行為規則を非国際的武力紛争に導入するという考え方を採用するものであったと捉えることができる。次に、一九七四年から開始するジュネーヴ外交会議の原案となったICRC
提案は、第二追加議定書案の中でも、敵対行為規則については、第二〇条から第二三条にかけて「戦闘の方法及び手段」に関する規定を設けている。具体的に述べると、第二〇条は「無用の傷害の禁止」を、第二一条は「背信行為の禁止」を、第二二条は「助命」を、第二三条は「認められた標章」をそれぞれ定めている (54(。このうち、例えば、第二〇条は「紛争当事者とその軍隊構成員が戦
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闘の方法及び手段を取る権利は無制限ではない」と規定している一方で、第二一条は「背信行為により敵を殺傷し又は捕らえることは禁止する」と規定している (5(
(。文言上、前者は第一追加議定書案における第三三条(「無用の傷害の禁止」)と、後者は第一追加議定書案における第三五条(「背信行為の禁止」)と基本的に同じである (55
(。第二追加議定書案におけるこれら二つの規定は第一追加議定書案における規定に由来している。というのも、この
ICRC
提案の注釈は、「[第二追加議定書案の第二〇条]は第一追加議定書案の第三三条を繰り返すものである (55(」ことを、「[第二追加議定書案の第二一条]は本質的に第一追加議定書案の第三五条を繰り返すものである (55
(」ことをそれぞれ示しているからである (55
(。このことは、一九七二年政府専門家会議の
ICRC
提案と同様、このICRC
提案が国際的武力紛争に適用される敵対行為規則を非国際的武力紛争に導入するという考え方を採用するものであったことを意味している。この点に関して、注目に値するのは、これらのICRC
提案は条約を対象とするのに対し、ICTY
が慣習国際法を対象とするという法源上の違いはあるものの、これらのICRC
提案の基本姿勢は、国際的武力紛争に適用される敵対行為規則を非国際的武力紛争に導入するという点においてICTY
のそれと基本的に軌を一にするものであるということである。最終的に採択された第二追加議定書の規定を見れば、これらのICRC
提案が修正されるか、それとも削除されるかのどちらかであったことははっきりと窺い知ることができる。しかし、少し視点を変えて敷衍すれば、このことは、国際的武力紛争に適用される敵対行為規則を非国際的武力紛争に導入するという考え方については、積極的立場と消極的立場が第二追加議定書の成立過程に存在したことを表している。では、第二追加議定書の成立過程において、なぜ、積極的立場は拒否されて消極的立場が受け入れられたのだろうか。積極的立場が受け入れられる余地は全くなかったのだろうか。仮にあったとすれば、それは条件なしに起こり得たのだろうか、それとも条件付きに起こり得たのだろうか。そもそも、二つの立場の対立は何に起因したのだろうか。この分析視座の下、本稿は、非国際的武力紛争を規律する武力紛争法の形成史の一つである第二追加議定書の成立過程を辿ることによって、国際的武力紛争に適用される敵対行為規則を非国際的武力紛争に導入することの妥当性という課題に接近するための手がかりを得ることを目的とする。この目的から、本稿は、第二追加議定書が成立するにあたって重要な舞台となった諸会議、具体的に述べると、一九五七年ニューデリー会議、一九六五年ウィーン会議、一九六九年イスタンブール会議、一九七一年と一九七二年の政府専門家会議、一九七四年から一九七七年までのジュネーヴ外交会議におけるやり取りをそれぞれ取り上げる。この分析視座に従って、これら諸会議におけるやり取りを逐一分析することが本稿のねらいである (40
(。勿論、この分析視座の下に第二追加議定書の成立過程を分析することによって、国際的武力紛争に適用される敵対行為規則を非国際的武力紛争に導入することの妥当性という論点の全容を解明し、かつ、断定的な結論を導き出すことは困難である。なぜならば、一般論として、ある条約(または条文)の成立過程を分析することだけから解答を導き出すことは成立過程の分析結果を過大評価するものであって、それ自体は偏った作業であると言わざるを得ないからである (46
(。しかし、すでに述べた
ICTY
における慣習国際法の認定に着目する先行研究の分析結果と併せて、非国際的武力紛争への敵対行為規則の史的検証を扱う本稿の分析結果を用いることができれば、国際的武力紛争に適用される敵対行為規則を非国際的武力紛争に導入することの可能性と限界をより良く把握することができるものと思われる (42(。これらを踏まえた上で、一九五七年ニューデリー会議(第一章)、一九六五年ウィーン会議(第二章)、一九六九年イスタンブール会議(第三章)、一九七一年と一九七二年の政府専門家会議(第四章)、一九七四年から一九七七年まで
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のジュネーヴ外交会議(第五章)をそれぞれ検討することにしよう。
︿注﹀(1)「武力紛争法」と「国際人道法」の各用語に関しては、その意味に若干の違いがあることがしばしば指摘されてきた。例えば、R.Kolb, Ius in bello: Le droit international des conflits armés (Helbing Lichtenhahn and Bruylant, 2005), pp. 66-6(. この点を承知した上で、
本稿は、各用語の意味を同義に理解し、敢えて「武力紛争法」の用語を使用することにする。
(2) S. Sivakumaran, The Law of Non-International Armed Conflict (Oxford U.P., 2062), pp. (4-((.(3)この時期、条約上の規則については、共通第三条と第二追加議定書に加えて一九五四年「武力紛争の際の文化財の保護に関するハー
グ条約」第一九条に言及することができる。一方で、慣習国際法上の規則については、どのような内容の規則が存在するかは不明
確であった。Ibid., p. (4.この点に関して、旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所(ICTY)の設立に関与した国連専門家委員会は、「[共
通第三条、『武力紛争の際の文化財の保護に関するハーグ条約』第一九条、第二追加議定書という]条約規定に基礎を置かない国内
的武力紛争に適用される慣習国際法上の規則群はあり得ない」(Letter dated 24 May 6554 from the Secretary-General to the President
of the Security Council, Annex: Final Report of the Commission of Experts Established Pursuant to Security Council Resolution 550 (6552), S/6554/554, para. (2)とし、当時、これらの条約規定の内容が慣習国際法を反映することはあっても、これら以外に慣習国
際法はないという見解を示していた。仮にこの見解が正しければ、条約と慣習国際法のいずれにしても、これらの条約規定の内容
を持つ規則以外に非国際的武力紛争を規律する武力紛争法はなかったことになる。
(4)武力紛争犠牲者保護規則は通常ジュネーヴ法と呼ばれる規則を意味する。一般的にジュネーヴ法は、人道的考慮に立脚し、武力紛
争の犠牲者を人道的に保護・待遇することを求める規則として捉えられる。田中忠「戦闘手段制限の外観と内実――一九四九年八
月一二日のジュネーブ条約への追加議定書を中心に――」『国際法外交雑誌』第七八巻三号(一九七九年)四二―四三頁。
(5)敵対行為規則は通常ハーグ法と呼ばれる規則を意味する。一般的にハーグ法は、戦争の目的に必要なことは許されることを前提と
して、この目的にとって不必要な惨禍・加害を制限することを図る規則として捉えられる。具体的に述べれば、軍事的必要性に立
脚して、戦闘手段・方法を規制することを求める規則である。同上、四二―四三頁。
(6)真山全「ジュネーヴ諸条約と追加議定書」国際法学会(編)『日本と国際法の
(11 年第 60巻』(三省堂、二〇〇一年)一七四頁。
(7) Sivakumaran, supra note 2, p. (4.(8)国際刑事裁判の実践以外で言えば、二〇〇五年に赤十字国際委員会(ICRC)が公表した『慣習国際人道法研究』を挙げることがで
きる。この『慣習国際人道法研究』は、「第二追加議定書における敵対行為の規制の隙間は第一追加議定書のそれに類似する規則の
生成を導く国家実行を通じて広範に埋められる」(J-M. Henckaerts and L. Doswald-Beck, Customary International Humanitarian Law, Volume I: Rules (Cambridge U.P., 200(), p. xxxv)とし、本文に詳述するICTYと同様、慣習国際法上、国際的武力紛争の敵対行為規
則を非国際的武力紛争に導入することによって、非国際的武力紛争を規律する武力紛争法の充実化を図るべきであることを主張す
る。この『慣習国際人道法研究』への検討として、さしあたり、次の論考を参照せよ。I. Scobbie,
international law in the Study, ” The approach to customary “
in E. Wilmshurst and S. Breau (eds.), Perspectives on the ICRC Study on Customary International
Humanitarian Law (Cambridge U.P., 2005), pp. 6(-45.(9) ICTY, Prosecutor v. Tadic, Decision on the Defence Motion for Interlocutory Appeal on Jurisdiction, Appeals Chamber, para. 55.(
60 Ibid., paras. 600-625.)
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(
( 66 Ibid., para. 665.) 62I. Rogg and H. Rimscha,)この事件の概要については、
The Kurds as parties to and victims of conflicts in Iraq, “
International Review of ”
the Red Cross, Vol. 55 (2005), pp. 525-525.(
65D. Akande,)この事件の概要については、
Nwaoga, “
in A. Cassese (ed.), The Oxford Companion to International Criminal Justice (Oxford ”
U.P., 2005), p. 5(5.(
( 64 ICTY, supra note 5, paras. 620-62(.) 6( Ibid., paras. 665-62(. M. Sassòli,)これら一連のリーズニングについては、
Pénal International pour lʼEx-Yougoslavie: Tadic (Competence), La Premiere Décision de la Chambre dʼAppel du Tribunal “
( Revue Général de Droit International Public, Vol. 600 (6555), p. 625. ”
65 S. Sivakumaran,)
Re-envisaging the International Law of Internal Armed Conflict, “ ”
European Journal of International Law, Vol. 22 (2066),
pp. 225-252.(
( 65 Sivakumaran, supra note 2, pp. (5-(5.) 65 Memorandum of 22 March 6555 from President Antonio Cassese to Members of the Preparatory Committee on the Establishment of an)
International Criminal Court, Definition of Crimes and General Principles of Criminal Law as Reflected in the International Tribunalʼs
Jurisprudence, para. 66.(
( 65 ICTY, supra note 5, para. 55.)
( 20 Ibid., para. 55.) 26)注意すべきは、確かに同判決は国際的武力紛争と非国際的武力紛争のそれぞれに適用される規則が同一化すべきであることを述べ
てはいるものの、慣習国際法上、両者が完全に一致すべきであるとまでは述べていないことである。同判決は、「国際的武力紛争を
規制する幾つかの規則と原則が国内紛争に拡大されてきたに過ぎない」(ibid., para. 625)こと、さらに「この拡大は、これらの規則
の国内紛争への完全かつ機械的な移植という形式によって生じているのではなく、むしろこれらの規則が内容とする詳細な規制で
はなくその一般的に本質的な部分が国内紛争に適用可能となっている」(ibid., para. 625)ことをそれぞれ指摘することによって、こ
の点を慎重に断っているからである。なお、学説上は、国際的武力紛争と非国際的武力紛争のそれぞれに適用される規則が完全に
一致すべきであることを提唱する論者は数多く見受けられる。例えば、代表的な論考として、J. Stewart,
of armed conflict in international humanitarian law: A critique of internationalized armed conflict, ” Towards a single definition “
International Review of the Red Cross, Vol. 5( (2005), pp. 565-5(0; E. Crawford, “
Unequal before the Law: The Case for the Elimination of the Distinction between International
and Non-international Armed Conflicts, ”
Leiden Journal of International Law, Vol. 20 (2005), pp. 446-45(.(
( 22 ICTY, supra note 5, para. 55.)
( 25 Ibid., para. 55.)
( 24 Ibid., para. 55.) 2( T. Meron,)
The Humanization of Humanitarian Law, “ ”
American Journal of International Law, Vol. 54 (2000), pp. 250-255.(
( 25 Ibid., p. 255.) 25 Ibid., p. 255. MeronMeron)の提唱する「人道化」という用語の範囲は、武力紛争法に限定されない。は、どのように国際法全体が国
際人権法の影響の下に国家中心から個人中心に移行しているのかという問題を分析するにあたっても、「国際公法の人道化」(T. Meron,
International Law in the Age of Human Rights: General Course on Public International Law, “ ”
Recueil des Cours, Vol. 506 (2005), p. 22)
という用語を用いて検討している。
(
25B. Schlütter, Developments in Customary International Law: Theory and the Practice of the International )例えば、代表的な論考として、
法政研究24巻3・4号(2020年)
Court of Justice and the International ad hoc Criminal Tribunals for Rwanda and Yugoslavia (Martinus Nijhoff Publishers, 2060), pp. 220-225; N. Arajärvi, The Changing Nature of Customary International Law: Methods of Interpreting the Concept of Custom in International
Criminal Tribunals (Routledge, 2064), pp. (5-50; S. Darcy, Judges, Law and War: The Judicial Development of International Humanitarian
Law (Cambridge U.P., 2064), pp. 666-664.(
25ICTY)川岸伸「慣習国際人道法の認定方法――をめぐって――」『坂元・薬師寺先生古稀記念論集』(仮題)(東信堂、二〇二〇年刊行
予定)所収。
(
50 Conférence dʼexperts gouvernementaux sur la réaffirmation et le développement du droit international humanitaire applicable dans les)
conflits armés, Genève, 3 mai-3 juin 1972 (seconde session), Textes: Documentation présentée par le Comité international de la Croix-
Rouge (Genève, Janvier 6552), pp. 55-55.(
( 56 Ibid., p. 55.) 52 Ibid., p. 65. )第二追加議定書案の第一五条以外で言えば、文言上、第二追加議定書案の第一四条は第一追加議定書案の第四一条(「文
民たる住民の定義」)と、第二追加議定書案の第一六条は第一追加議定書案の第四八条(「文民たる住民の生存に不可欠な物の尊重
と保護」)と、第二追加議定書案の第一七条は第一追加議定書案の第四九条(「攻撃の際の予防措置」)と僅かな違いはあっても基本
的に同じであると言って差し支えないだろう。Ibid., pp. 6(-65, 55-55.(
55 Y. Sandoz, C. Swinarski and B. Zimmermann (eds.), Commentary on the Additional Protocols of 8 June 1977 to the Geneva Conventions )
of 12 August 1949 (Martinus Nijhoff Publishers, 6555), p. 6550, para. 4555.(
( 54 Projets de Protocoles additionnels aux Conventions de Genève du 12 août 1949 (Genève, Juin 6555), p. 55.) 5( Ibid., p. 55.)