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二大学間における双方向授業の効果と問題点

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Academic year: 2021

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二大学間における双方向授業の効果と問題点

平成 年度の双方向授業から

1.はじめに

日本語教育分野においても、その他の外国語教育分野と同様に、マルチメディアを使用 した教育の実践は進展が著しく、年々関心も高まっている。拙稿( ) では、神戸女子 大学と提携校であるニュージーランドのオークランド工科大学(以下 と略す)

間で、 ( が管理する システム)を使用した二大学間の双方向 授業について、その試行と平成 年度の授業計画について述べた。

平成 年度は、授業を通して互いにプラスになるような交流を目的に、双方の学生が、

ブログや携帯電話、 などの携帯用機器を使用し、コンピューターを媒介にした日本 語教育と日本語教員養成の双方に有益な双方向授業を行った。ニュージーランド は、

本学の提携校である。 では、 年度より、夏休みに神戸女子大学学生が 短期日 本語教育研修 を行っている。また、 では積極的に授業にマルチメディアを使用し ており、双方向授業の試みに必要な情報機器を準備することができる。双方向授業は、

との相互協力関係によって、はじめて遂行できるのである。

本稿では、平成 年度の双方向授業を通して、その授業の効果と問題点を考察する。

2.先行研究

マルチメディア使用の日本語教育に関しては、 年に加藤由香里 ( )日本語eラー ニング教材設計モデルの基礎的研究 が出版された。また、 年ハワイにおける第3回

日本語教育とコンピュータ国際会議 (通称 海

注1

外共同研究者 参

加)に続き、 年の日本における (第3回テクノロジーを利用した 外国語教育)では、 、 、ブログなどを使用した日本語教育の試みも多数報 告された。

さらに、釜山における第7回日本語教育国際研究大会について、春原( )による コ ミュニケーション環境の改善が外国人だけの負担務ではなく、マジョリティである受け入

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れ側も変わらなければ、多言語多文化的なコミュニティの構築はできない との報告もあ る。現在の日本語教育では、 互恵性 または 双方向性 がキーワードの一つとなって いる。

日本語教育を異文化間コミュニケーションの一形態であるとするならば、外国人との関 わり方は、一方向的なものではなく互恵的で双方向的でなければならない。日本語教育に 関わる双方にプラスになるような双方向的な日本語教育が必要となる。しかしながら、従 来のマルチメディアを使用した教育実践は、どれも一方向的な日本語教育の形を取ってい る。

国内での日本語教育機関が積極的にマルチメディア使用に乗り出せないことには、次の ような理由が考えられる。

現在までに日本語教育用に考案されたマルチメディア使用のプログラムが大規模か つ複雑なもので、日本語教師が個人で扱えるものではなかった。

日本語教育におけるマルチメディア使用の授業の効果が実証されていなかった。

この現状を踏まえて、筆者は、海外共同研究者である とともに、 年 3月より、勤務先の神戸女子大学と提携校であるニュージーランドのオークランド工科大 学(以下 と略す)間で、 ( が管理する システムで、

を使用)を使用した双方向授業を試行した。そして、その結果と問題点を、

年9月 平成 年度教育改革・ 戦略会議 で口頭発表した。

3.現在までの試行状況

筆者は、 年3月より、神戸女子大学と 間で、日本語教育コース受講生と日本 語学科学生とのブログを通じた交流を試験的に始めた。また、 年度3月からは、神戸 女子大学の日本語日本文学演習 受講生と、 の日本語作文授業受講生で、 の授 業での課題である自作作文を 上のブログで公開し、そのブログにアクセスし た担当の本学学生から批評やアドバイスを受けるという双方向授業の試みを開始した。

本格的な双方向授業を想定した準備段階の交流ではあったが、神戸女子大側には、実践 を通した学生の日本語教育に対する意欲の向上、 側には、授業の課題提出数の向上、

ブログへの日本語での積極的な書き込みが見られるなど、双方に十分有益であるという結 果が得られた。しかし、学生同士の交流方法、情報機器の整備状況など、いくつかの問題 点も見られた。

本研究の着想は、このような大学間での学生交流を、双方授業という形態で実践を積み、

その効果を検証して研究を重ねたいという経緯から生まれたものである。

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双方向授業のための課題

平成 年度から平成 年度までの5年間に、以下の研究課題を明らかにしたいと考え る。

研究課題1 日本語教育と日本語教員養成に使用できる双方向授業の基本的形態の検討 研究課題2 実際の授業を通した双方向的授業の効果の質的・量的な検証

上記の課題を明らかにするために、神戸女子大学と でそれぞれさらに研究課題を 設定し、神戸女子大学の日本語教員養成側からと、 の日本語教育側からの二つの視 点に沿って研究を進める。

神戸女子大学

外国人の書いた日本語を読んだり、話した日本語を聞いたりすることが、日本語教員養 成にどのように役立つかを、質的にリサーチする。

日本人学生から直接コメントを受け取ることにより、学生の授業参加への意欲はどのよ うに変化するか、日本語力の向上にどのように結びつくかを、質的・量的にリサーチす る。

予想される結果と意義

本双方向授業の特色は、学生を主体にした海外の大学との双方向授業を提案した点にあ る。

双方向的授業により双方の学生にプラスとなる

神戸女子大学の学生は、自身の日本語・日本語教授法研究に大いに役立つ。

の学生は、同世代の日本人学生を通して、さまざまなスタイルの日本語に触れること ができる。

学生にとって、手軽に持ち運びができ、興味の持ちやすい携帯用機器を使用する パソコンを使用できない環境でも、いつでも授業に参加できる。

教師にとって、 の特別な知識を必要としない

特別に専門的な知識を必要とはしない形態をとるため、情報機器の専門家でなくと も、前向きに授業を担当することができる。

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4.平成 年度の双方向授業

平成 年度は、以下の課題を明らかにするために、次に示した授業方法を使用した。

課題 双方向授業による二大学学生の意欲・知識の習得に対する意識の変化 課題 双方向授業として求められる授業方法

授業の準備

上に双方向授業のために、専用のブログを立ち上げる。

専用のブログにアクセスするために、教員、参加学生は、それぞれパスワードを受 け取る。

教員がサンプルブログを立ち上げ、実際の授業にどのように使用するかを示す。

作文用のブログの使用方法、コメントの書き方 ポッドキャスティングのためのボイスボードの使用方法

さらに、神戸女子大学とオークランド工科大学は、学生の個人情報の保護ついて細心の 注意を払い、以下の取り決めに沿って授業を行った。

本研究で使用する の は、 が担当教員と双方向授業参 加学生にのみ発行するパスワードを使用してはじめて、 閲覧や書き込みが可能になる。

そのため、限られた人員しか、授業に使用するブログやボイスボードを使用できない。

神戸女子大学では、授業参加学生に、個人情報を研究以外の目的で使用しないこと、

また個人のデータについても、名前を公表したり、個人の名前が特定されたりするよ うな形でデータの公開を行わないことを確約している。その合意の上で、学生との間 でデータの使用が可能であるという承諾書を作成した。

では、学生を対象にしたリサーチを行う際、すべて事前に学内の倫理委員会

である ( ) に許可申請

書を提出し、学生、教師双方の人権の保護、およびワイタンギ条約の遵守等について の審査を受け、リサーチの承認を得なければならない規程である。この規程により、

学生との間で承諾書を作成した。平成 年開始の授業については、平成 年 月に申 請書を提出する。

双方向授業の実際 対象となる授業科目

神戸女子大学…3年生主体の日本語日本文学演習 (日本語教育ゼミ)

…3年生主体の (以下 と略す。 日本語科では最上級レベル

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の日本語クラスで、ヨーロッパ共通参照枠 ・ レベルに相当する。 ) 参加学生数

神戸女子大学… 名(4回生4人を含む) 、 … 名 授業方法

ブログ使用の授業 文字を使用する双方向授業

使用教科書 鎌田修( ) 中級から上級への日本語 の中か ら以下のテーマを取り上げた。

授業の進め方

学生を3、4名と神戸女子大学生2、3名でグループを作る。

グループごとに一つのブログを用意する。 (全体では、4グループ程度)

学生は2週間ごとに各テーマについての作文をブログに書き込む。

神戸女子大学生は、それに対するコメントをブログに書き込む。

神戸女子大学生は、日本語教育ゼミに、 学生は にその結果を持ち帰 り、各授業で、フィードバックされた内容を検討し、共有する。

ポッドキャスティング使用の授業 音声を使用する双方向授業

使用教材 ポートレート( 年から 年まで関西地方を中心に放映されたテ レビ番組で、日本の著名人へのインタビューが 秒で収められている。本研究に遂 行にあたり使用許可受諾済み。 )

授業の進め方

担当教員が ポートレート のインタビュービデオを使用し、ビデオポッドキャ スティングを作成し、毎週月曜日に各ブログにのせる。

神戸女子大学生は、 学生の内容理解を確かめるため、質問を三つ考え、

月曜日にボイスボードから各自のグループのブログにのせる。 (事前にビデオを 視聴する)

学生は、 やコンピューターを使い、答えを考えて、ボイスボードか ら各自のグループのブログにのせる。

神戸女子大学生は、音声での答えを聞き、音声でそれに対して答え、ボイスボー ドにのせる。

(5)

テーマ1 地球を守る テーマ4 日本の会社に入るまで

テーマ2 心と体のバランス テーマ5 日本の子供たち

テーマ3 今どきの大学生 テーマ6 女と男

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の授業では、隔週の木曜日には、ビデオについてのディスカッションを 行い、それを録音しブログにのせる、神戸女子大学生もそれに音声で答える。

さらに、授業を計画どおりに進めるため、以下のような対応をした。

授業の内容については、担当者がメール、ス

注2

カイプなどで連絡を取り合って進めて いき、計画の修正が必要な場合は、迅速に対応した。

試行時に問題の多かった情報機器のトラブルについて筆者や海外共同研究者が対処 できない場合は、両大学の情報機器専門家のバックアップを受けた。また、情報機器 関連の新しい情報や機器の使用方法についても、随時説明を受けた。

5.双方向授業の効果と問題点

アンケートと聞き取り調査

授業終了後に、神戸女子大学と で、アンケートおよび聞き取り調査を行った。双 方の大学で、学生へのアンケート、インタビュー、課題提出、試験などを通じて、平成 年度の課題について検討した。神戸女子大学生については、外国人学生の日本語から、文 法・音声の誤用をどのように改めて認識したか、 学生については、日本人学生と接 して、日本語に対する学習姿勢はどのように変化したかなどを中心に、質的・量的に検討 を進めた。

神戸女子大学 授業として参加した3回生8名 質問 双方向授業に参加して

良かった点

直接外国人と交流でき、外国人にとっての日本語の難しさを生の資料から理解するこ とができた。

ボイスボードから発音を直接聞くことができた。

たいへん良かった 0人

やや良かった 6人

どちらともいえない 2人

あまり良くなかった 0人

まったく良くなかった 0人

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(7)

文章の誤用を訂正することから、自分の日本語についても考えることができた。

ブログや音声を通して、文化や考え方の違いを知ることができ、楽しかった。

良くなかった点

ボイスボードをうまく使用できなかった。

双方向の交流に十分なっていないところがあった。

パソコンの使用環境を、 と同じようにうまく整えられなかった。

自宅パソコンでは、うまくアクセスできなかった。

特に、音声をブログに載せるのに、時間がかかった。

質問 ブログを使用することで、日本語を書く時間は増えたか。

質問 ポートレートを聞くことで、さまざまなスタイルの日本語に触れる機会が増えたと 思うか。

良かった点

他の学生が書いた作文が読める。

書き直しやすい。

神戸女子大学生のコメントを残せる。

先生以外の日本人と、日本語で交流できる。

良くなかった点

音声の質が悪くて、聞き取れないことがあった。

質問の内容が難しかった。

時間がかかった。

増えた 6人

減った 1人

変わらない 5人

はい 9人

いいえ 0人

わからない 3人

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まとめ 神戸女子大学

ブログを通して外国人の日本語の読み、書きを考察する。

課題作文を読んで、コメントを掲載することで、外国人の日本語について文法の誤用、

日本語の教え方について直接知ることができ、日本語教員としての基本的知識の習得に 役立った。

ポッドキャスティングの使用に際し、内容について、 学生に質問することで、

質問文作りのポイントがわかるようになった。さらに、音声を中心にした日本語指導で は、外国人学習者の発音の問題点を正確に捉えられるようになった。

学生とのやりとりの中で、異文化に直接触れて、日本との違いを考えることが できた。

これらの成果は、日本語日本文学演習 (日本語教育)に持ち寄り、お互いに発表し、

内容を精査した結果である。

ブログを通して日本人学生から直接コメントをもらうことで、学生の日本語学習意欲 が高まった。作文の提出率が %以上になり、課題作文以外にも、 を通して、

日本人学生と日本語での交流をしようとする学生がみられた。

ポッドキャスティングの使用により、授業外でも、都合の良いときにビデオを見なが ら聴解練習ができるようになった。

同世代の学生と日本語で交流し、さまざまな日本語に触れることができ、教科書の枠 を超えた学習ができた。

平成 年度の問題点

日本とニュージーランドのコンピュータの使用環境や準備状況の差 日本でニュージーランドと同様の環境を整えるまでに時間がかかった。

携帯電話や をさらに効果的に使用した授業のあり方

日本では携帯電話を主に、ニュージーランドでは などの携帯用機器を、さらに 積極的に双方向授業で使用する。

ブログやポッドキャスティング使用の際の、質問や答え、コメントの出し方 さらにお互いの興味を引くような工夫が必要である。

すぐに授業を始めるのではなく、事前の学生同士の交流に時間をかける。

一方的な自分の意見の押しつけにならないよう工夫する。

互いに期日を守って、音声の公開をするよう努力する。

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グループでの交流以外に、授業参加者全体での交流を付け加える。

平成 年度課題の検討

課題 双方向授業による二大学学生の意欲・知識の習得に対する意識の変化

上記のアンケートや個別のインタビューから、双方向授業の形態では、神戸女子大学で も でも授業に対する意欲が高まった学生が増えた。

課題 双方向授業として求められる授業方法

今後さらに授業方法を改善していけば、双方向授業として、双方にプラスになる授業形 態を確立することができる。

平成 年度以降の授業

平成 年度から平成 年度にかけても、同様の双方向授業を行う。しかし、マルチメディ アについては、その技術の進歩はめざましい。平成 年度以降にいては、以下の点に留意 する。

技術の進歩に合わせて、 さらに効率よく双方向授業が行えるように随時工夫をする。

学生から要望が強かった 授業の中で、直接会話をしたい という声に応え、ディ スカッションなどを双方向でリアルタイムに行うようにする。

現在整備中の神戸女子大学 上での双方向的交流を開始する。

6.おわりに

双方向授業の試みは、日本とニュージーランドの二大学間で始まったばかりである。実 施にはまだ多くの問題点もあるが、マルチメディアを使用した新しい授業形態として、双 方向授業が学生の意欲や能力をお互いに相乗的に向上させることは立証された。

今後も上記にあげたような問題点について考えながら、双方の学生にもっとも良い授業 のあり方を求めて、二大学間での双方向授業を継続していきたい。

また、本研究課題であるマルチメディア使用の双方向教育の形態は、外国語教育分野の みならず、さまざまな教育・交流の分野にも応用でき、波及的な効果が期待できる授業形 態であるといえる。さらに、他分野での応用も視野に入れて研究を進めていく予定である。

本稿は、 平成 年度神戸女子大学特別助成金の交付を受けて行われた研究の成果である。

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1 本申請の海外共同研究者で、 側の調査・研究を担当している。専門は日本語

教育学。 ,講師。

2 主としてコンピューターを使用した無料の通話システムを指す。

参考文献

加藤由香里( ) 日本語 ラーニング教材設計モデルの基礎的研究 ひつじ書房 春原憲一郎( ) 学習者の多様化と日本語教育 日本語教育 第 号、

安原順子( a) 二大学間における双方向授業の試み 神女大国文 第 号、

安原順子、 ( ) 二大学間における双方向授業の試み 平成 年度 教育改革・ 戦略会議予稿集、

安原順子、 二大学間における双方向授業の試み 平成 年度教育改 革・ 戦略会議、口頭発表

( ) を使った神戸女子大学との双方向教育の試みについ

て 、口頭発表

( )

参照

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