論文審査の結果の要旨
氏名:中 村 秀
専攻分野の名称:博士(医学)
論文題名:高齢者脳梗塞例の転帰予測に関する研究:脳萎縮を加味した新たな評価法
Study on outcome prediction of elderly patients with cerebral infarction
-new predictive method in consideration of influence of brain atrophy 審査委員:(主 査) 教授 木 下 浩 作
(副 査) 教授 阿 部 修 教授 長 尾 建 教授 山 本 隆 充
高齢者における広範囲脳梗塞は、若年者とは異なり特有の臨床経過をたどり、生命および機能予後には 脳萎縮の頭蓋内圧緩衝が影響するという報告が散見される。そこで広範囲な梗塞となりうる中大脳動脈
(MCA)領域の脳梗塞において、従来の ASPECTS DWI Score (ADS)
や研究者が提唱する梗塞面積の測定方法およびその補正値が、生命・機能予後の予測因子になるかを検討したものである。
【対象と方法】60歳以上の
MCA
領域の脳梗塞患者(86例)で、発症から約24
時間経過したCT
上の低 吸収域となった部位をADS
および梗塞面積の測定を行い、生命・機能予後に寄与するかを検討した。研究 者が提唱する梗塞面積の測定方法とは、Picture Archiving and Communication Systems(面積測定ツー ル)を用いた計測(Area法; cm2)であり、発症から2
週間後、6ヵ月後、1年後の生命予後、および6
ヵ 月後、1
年後のmodified Rankin Scale (mRS)との関係を検討した。
また、脳萎縮の指標としてEvans index (EI)を用い、梗塞面積を EI
で除した補正値 (area/EI) ならびにADS
にEI
を乗じた補正値 (ADS×EI) を 用いて予後予測因子となりうるかを検討した。【結果】
Receiver Operating Characteristic (ROC)
曲線より求めたArea under the curve (AUC)
値によ る評価では、梗塞面積で評価するArea
法が急性期死亡の予測として優れていた(Area: AUC=0.916, ADS:AUC=0.857)。研究者が提唱した EI
およびinter-caudate distance (ICD)
による除算で補正するこ とによりAUC
は更に高値となり、急性期予後予測にはEI
もしくはICD
による除算を用いた評価が優れ ている結果となった (AUC: Area / EI= 0.921, Area / ICD= 0.927 )。Area/EI
はArea/ICD
に比べて検者間 誤差が少なく、急性期転帰予測として最も適していた。急性期における神経症状悪化の予測においても、Area / EI
はAreaに比べて優れていた (Areaの AUC
値, 95 %CI: 0.966-0.967, Area/EI のAUC
値95 %CI:
0.970 -0.971, t
検定 p< 0.01)。一方、AreaおよびArea/EI
のいずれが発症6
ヵ月の慢性期の時点での機 能予後の予測に優れているかをROC
曲線およびAUC
値にて検討した結果、急性期の結果とは異なりArea
法の方が優れている結果となった (AreaのAUC
値95 % CI: 0.910-0.921, Area/EI
のAUC
値 95 %CI:0.857-0.860, t
検定p< 0.01)。
【結論】急性期生命予後は、梗塞面積を直接測定する
Area
法でより高い精度で予見ができ、脳萎縮に起 因する頭蓋内圧緩衝作用を反映するEI, ICD
を用いることにより更に精度が向上した。EI
は検者間での誤 差が少なく、研究者の提唱するEI
での除算による補正(Area/EI)
が優れている。これらの補正による計 算は、臨床で簡便に用いることができ、臨床経過の予測が難しい高齢者脳梗塞患者に対して有用な予後予 測法となることを明らかにした。よって本論文は,博士(医学)の学位を授与されるに値するものと認められる。
以 上 平成26年2月19日