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富山県におけるイノシシ・ニホンジカの記録

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(1)

富山県におけるイノシシ・ニホンジカの記録

著者 南部 久男, 吉村 博儀

雑誌名 富山市科学文化センター研究報告

25

ページ 41‑49

発行年 2002‑03‑25

URL http://repo.tsm.toyama.toyama.jp/?action=repos itory̲uri&item̲id=782

(2)

富山県におけるイノシシ・ニホンジカの記録*

南 部 久 男 ・ 吉 村 博 儀

富山市科学文化センター

〒939‑8084宮山市西中野町1‑8‑韮

OnInhabitationRecordS0fwildofwildboar,S"s "砿,mndsik TOyamaPre北cmre,CentralJapan

"q池,mndsikadeer,α御'"s〃 、",in

HisaoNAMBUandHiroyoshiYOSHIMURA

ToyamaScienceMuseum

l831NishmakanomachiToyamashiToyama9398084,JAPAN

富山県におけるイノシシ,ニホンジカの近年の生息状況をアンケート,鳥獣関係統 計等より調査した。イノシシは1988〜2001年にかけ11市町村の標高20〜640mの範囲 で,ニホンジカは1995〜2001年にかけ8市町村の標高20m〜700mで確認され,両種は 現在も一部の地域で定着していると思われる。近年の北陸地方でのイノシシの増加は

1987年冬以降の降雪量の減少が一因と思われる。

キーワード:イノシシ,ニホンジカ,富山県,降雪量

Weinvestigatedoninhabitationrecordsoftwomammals,wildboar,S"sr,and sikadeerCev"sIppo"byinfbnnationofinhabitationbyquestlonnalreandhuntingre cordsWildboarwasprovedtohavebeenrecorded廿omlltownsfmml988to2001 whereassikadeerfTom8towns廿oml995to2001Therangeofaltimdeofinhabita tlonareainwildboaris廿om20mto640m,whereasthatofsikadeerwas丘om20m

to700m.ItseemsthatthetwomammalsmhabitinsomeareasofToyamaPrefbcmre

now,Oneoftheimportantfactorsofsuchaincreaselnnumberofwildboarln Hokmkudistrictareconsideredtobeduetodecreaslngofamountofsnowfallinwinter

afterl987・

KeywordS、Wildboar,Sikadeer,ToyamaPrefechlre,Snowfall

は じ め に

及 び ニ ホ ン ジ カ

イノシシS"SSC'Q/2J及びニホンジカCe "s〃Ippo〃

は,1970年代には北陸地方(富山県)から東北地方日 本海側の多雪地帯には生息しないことが知られている (環境庁,1979;Ⅱ甫乳類分布調査科研グループ,1979)。

近年福井県では両種とも増加し,石川県でもイノシシ が増加していることが指摘されている(林,2001)。

富山県では両種とも生息していなかったが(富山県、

1979),近年目撃されるようになり(南部,1999),イ ノシシは狩猟統計にも挙がるようになってきた。その

*富山市科学文化センター研究業績第265号

ため,両種のアンケート調査を行い,さらに,狩猟統 計や有害駆除数より,近年の富山県を中心とした地域 の両種の生息状況を調査したので報告する。また,イ ノシシやニホンジカの分布は積雪と関係があるとされ (常田他,1981;常田・丸山,1981),周辺地域の降雪 量と両種の積雪地帯への進出との関係についても考察

した。

調 査 方 法 1 . ア ン ケ ー ト

(3)

南 部 久 男 ・ 吉 村 博 儀

図 1 積 雪 観 測 地 点

l富山,2.稲谷,3.金沢,4.鳥越,5.山中,6.福井,7.大野,&今庄,9.小浜,l().

尚山,lL神岡,12.河合,13.白川,14高山。飛騨北部,吉城郡と大野郡白雌 村;飛騨南部,高山市と大野郡(白川村除く):長野北部,北安曇・長野・北 信地方事務所管内;長野中部・松本・佐久・上小地方事務所管内;長野南部・

諏訪・伊那・下伊那・木曽地方事務所管内.

図2富山県のイノシシの記録(1988‑2001年)

今回と前回(南部,1999)のアンケートより作図。数字記入の地点は今1回に 結果で,本文中の地点番号に対応。▲は飼育個体の可能性が大きい記録。

富山県内のアンケートは,平成13年度富山県鳥獣保 護員48名及び烏獣保護員以外9名の計57名にご協力い ただいた。アンケート方法は概ね南部(1999)に従い 2001年10月中旬から11月中旬に実施した。回答は、39 名からいただき、その内、イノシシの目撃情報等(本 人以外の情報含む)は14名、ニホンジカのそれは、8 名から寄せられた。回答者をお寄せいただいた方の住 所の市町村別人数は次の通りである(括弧内は人数)。

朝日町(1),入善町(1),宇奈月町(1),黒部市(2),滑川 市(1),上市町(1),大山町(1),立山町(1),大沢野町 (1),滑川市(1),富山市(4),婦中町(2),細入村(2) 八尾町(2),小杉町(1),大門町(1),新湊市(2),高岡市

(2),氷見市(1),上平村(1),福光町(1),城端町(1)。

また,年令の幅は,21‑30歳(1名),41‑50歳(2名),51 60歳(14名),61‑70歳(14名)。さらに近年の新潟県 西部の情報を野紫木洋氏に,長野県北西部の情報を大 町市山岳博物館にご提供いただいた。

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白岩川

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20Km

図3富山県のニホンジカの記録(1995‑2001年)

今回と前回(南部,1999)のアンケートより作図。数字記入の地点は今回 の結果で,本文中の地点番号に対応。▲は飼育個体の可能性が大きい記録。

3.積雪

1981年冬(1980年12月〜1981年3月)〜1998年冬に おける北陸地方及び岐阜県飛騨地方の標高600m以下 の13積雪観測ポイントにおける「降雪量」,「最大積雪 深」,「積雪30cm以上の日数」,「積雪50cm以上の日 数」を気象庁(1998a,b,c;1999a,b;2000)により求めた (図l)。便宜上,標高別に3つ(低地,里山,山地)に 区分した。低地(標高10m以下);福井県小浜(小浜 市遠敷,標高10m),同県福井(福井市豊島,標高9m)着

2.狩猟統計等

1986年度(昭和61年度)〜1999年度(平成11年度)

のイノシシ,ニホンジカの狩猟数,有害駆除数は烏獣 関係統計(環境庁(環境省),1988〜2001)より求め,

平成12年度の狩猟数,有害駆除数等は,各県の関係課 に問い合わせた。岐阜県飛騨地方のイノシシの有害駆 除数は飛騨県事務所林務課(1977〜1998)によった。

(4)

石川県金沢(金沢市西念,標高6m),富山県富山(富 山市石坂,標高9m):里山(標高100m〜300m),福 井県今庄(今庄町今庄標高160m),同県大野(大野市 九三蛇塚,標高182m),石川県山中(山中町栢野,標 高126m),同県鳥越(吉野谷村吉野,標高180m),富 山県猪谷(細入村猪谷,標高215m):山地(標高40篭

、〜600m),岐阜県高山(高山市桐生,標高560m),

同県白川(白川村鳩谷,標高478m),河合(河合村角 川,標高471m,同県神岡(神岡町殿,標高455m)。

調 査 結 果 及 び 考 察 L ア ン ケ ー ト 結 果

アンケート結果を,確認場所の地名,標高(、),地 点番号(図2,3に対応する),メッシュ番号(環境庁、

1997),確認年月日,確認状況に分け以下に記す。標高 は地図から推定し,確認状況は,電話等で補足確認し た内容も加えた。−印はデータ不明を示す。

l ) イ ノ シ シ 図 2

< 富 山 県 >

1.大山町長順一,(1),5437‑62‑85,2000年度(平成12年度}

の猟期に熊野川ダム下流で目撃情報があった。

2大山町東黒牧,140‑200m,(2).5437‑72‑11.12,2001年

(平成13年)の雪の有る時期(平成13年2月15日までの猟 期)に5‑6頭狩猟されたらしい。

3.大山町福沢, 00‑200m,(2),5437‑72‑00,01,2001年

(平成13年)1月15日,雪の中で足跡を目撃。3頭ほど捕獲 されている。

4大山町小坂,400m,(4),5437‑62‑33,2000年度(平成12 年度)の猟期,2000年度の猟期にイノシシ猟をしている ハンターを目撃。

5.大山町糊ケ原,200m,(3),5437‑62‑93,2001年(平成13 年)9月,2001年9月5日頃より2週間ほど,イノシシが数 頭出没し,3枚の田の稲を踏み倒し,稲の穂先を食べる。

大小の足跡が残り,田の中に泥遊びをしたような跡が見 られた。稲刈り後には見られなくなった。

6.大沢野町今生津神通川第二ダム付近(神通川右岸)、

140m,(5),5437‑61‑58,2000(平成12年)年9月上旬,雑 木林で1頭目撃。

7.大沢野町須原,200‑300m,(6),5437‑61‑66,1996‑1997年 頃(4‑5年前),猟期に足跡目撃。

8.大沢野町須原,300m,(6),5437‑61‑66,2001(平成13年》

8月30日,山沿いの水田で刈り取り前の稲が踏み倒され,

稲が食べられる。複数の足跡より数頭いたと思われる。

9.大沢野町須原〜八尾町,‐,(6),5437‑61‑66,2000年秋,

子供連れ目撃。

10.細入村,‐,‐,‐,1995‑1996年頃(5‑6年前),アスファル ト脇に土が掘られた跡を目撃。

11.細入村・大沢野町・八尾町の御蔭山周辺,200‑500m (7),5437−61−35.36.37.25.26.27.15.16.17.1999

年度(平成11年度)と2000年度の猟期,1999年度(平成1i 年度)と2000年度(平成12年度)の猟期に何頭か狩猟さ れたらしい。

12.細入村庵谷シ200m,(8),5437‑61‑08,2001年4月20日,

畑が掘りかえされる。

13.細入村猪谷川,200‑500m.(9),5437−51−56.67.68 2001年4月中旬月,クマのパトロール中に目撃。

14.細入村加賀沢,300‑500m,(10),5437‑51‑37.38.27 1993‑1994年(7.8年前),多くの掘られた穴を目撃。

15.細入村笹津山,200‑400m,(7),5437−61−66.67.56.匁 2COO年11月,1頭と足跡目撃。

16.細入村楠原,300m,(7),5437−61−36.37.26.27,2000 年度(平成12年度)の猟期,2000年度(平成12年度)の 猟期にイノシシ猟が行われていた。

17.細入村楠原御鷹山,300m,(7),5437‑61‑36.37,2000年.

2001年,ヌタ場や足跡が見られた。

18.細入村楠原・猪谷・笹津,‐,‐,‐,1997‑1998(3‑4年)前 楠原,猪谷,笹津では3‑4年前から見られる。

19.細入村楠原御鷹山,300m(7),5437‑61‑36.37,2000年 9月,御蔭山中腹で親1頭,子3頭目撃。

20.細入村・大沢野町・八尾町(御鷹山周辺),300m,(7)、

5437−61−36.37.26.27,1999年11月,1999年11月の初猟 の頃にイノシシ猟をしているハンター目撃。

21.細入村庵谷,200‑300m,(8),5437‑61‑07.08,2000年春、

メス1頭が溝で死んでおり,腹に子を宿していた。

22.八尾町栃折・同大長谷,‐、‐,‐,1996年(平成8年)くら いから.八尾町栃折,大長谷で時々目撃したことを聞く。

23.八尾町中根,200‑300m,(11),5437‑61‑42.43,2001年2 月,猟期に1頭が積雪のある林を歩いているのを目撃。

24.山田村居船,400m,(12),5437‑60‑54.44,1995‑1996年 頃(5‑6年前),人が入らないところでヤマイモが掘ってあっ た。

25.山田村居船,400m,(12),5437‑60‑54.44,2001年(平 成13年)4月,山菜取りの際に,カタクリやヤマイモ,杉 の木の根を掘った跡があり,糞も沢山あった。20年ほど まえから同じ場所で山菜とりをしているが初めての経験。

26.山田村数納,400m,(12),5437‑60‑45,2001年2月11日,

スギ林にいた8頭(メス6頭,オス2頭)を狩猟。80Kgほど

のメスもいた。

27.山田村深道,400‑500m,(12),5437‑60‑44,20001年5月3 日,クマのパトロール中に2頭目撃。

28.大門町竹原,50m,(13),語37‑00‑042001年9月上旬,

ゴルフ場付近でウリ坊1頭が車に蝶かれたたと聞く。

29.高岡市西田,100m,(14),5537‑10‑61,1998年(平成10 年)12月,5‑6年前よりイノシシがいると聞き,その後被 害が見られるようになった。タケノコ林に掘った跡がみ られ,3頭ほど目撃したことがある。2‑3年前に4頭狩猟さ れたと聞き,それ以後は見ていない。

30.氷見市上田,20‑100m,(15),5536−27−24.25.14.15,

1995‑1996年頃(5‑6年前)の春,5‑6年前の春にジャガイ モ畑が荒されていた。

31.氷見市上田20−100m,(15),5536‑27‑24.25.14.15, 2001年,2‑4頭が農作物を荒らしている。

(5)

南 部 久 男 ・ 吉 村 博 儀

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19861987198819891990199119921993199419951996199719981999年度

図7岐阜県飛騨地方,岐阜県高山市,長野県北部福井 県嶺北地方のイノシシの有害駆除数の推移。

図4日本のイノシシ,ニホンジカの狩猟数及び有害駆除 数の推移。計は狩猟数と有害駆除数の合計。

0000000000000000000頭幅和銅加あ加幅㈹5

4000

3500

3000

2500

2000

1500

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500

1988198919901991199219931994199519961997199819992000年度 1988198919901991199219931994199519961997199819992000年度

図8福井県,岐阜県,長野県のニホンジカの狩猟数及び 有害駆除数の合計の推移。

図5福井県,岐阜県,長野県のイノシシの狩猟数及び有 害駆除数の合計の推移。

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1988198919901991199219931994199519961997199819992000年度

1988198919901991199219931994199519961997199819992000年度

図9石川県,富山県,新潟県のニホンジカの狩猟数 石川県,富山県,新潟県,岐阜県飛騨地方のイノシ

シの狩猟数の推移。

飛騨地方は2000年度のデータのみ。有害駆除は石川県で200()年度 に3頭挙がり,図には含めてある。

図 6

34.福光町吉見谷,500m,(17),5436‑56‑67.57,200()年

(平成12年)12月20日,3頭目撃。

<新潟県西部・長野県北西部>

1.新潟県中郷村岡沢新田,1999年6月2日,山中でオス2頭≦

メス2頭を猟友会捕獲。

2.新潟県新井市吉木,1999年11月10日,住宅街の人家の植 32.福光町刀利,200,(16),5436‑56‑44.34,1998年(平成10

年)1月8日,1頭狩猟を試みたが獲り逃がし,石川県側へ

逃げる。

33.福光町刀利周辺,300‑400m,(16),5436‑56‑44.34,19醜 年頃(10年ほど前),10年ほど前よりイノシシがいる形跡 が見られた。最近はいたるところ穴だらけである。

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(6)

え込みに逃げ込み逃走。

3.新潟県上越市上稲塚,1999年11月7日,住宅街の人家の ガラスを破り侵入。

4.新潟県出雲崎市野坪,1998年1月4日,国道8号線で5頭

(体重60Kgのメス1頭,オスの子2頭,メスの子2頭)蝶死。

5.新潟県中郷村大沼原,2001年4月上旬,山中の畑地で2頭

目撃。

6.長野県大町市平加蔵,1993年10月,青木湖周辺で目撃。

7.長野県小谷村栂池,2000年頃,目撃。

8.長野県大町市周辺,‐,10年ほど前にはイノシシ・シカ の話は問いたことはがなかったが,最近3‑4年前より時々

聞くようになった。

光町,山田村,細入村)である。福光町,細入村,大沢 野町,立山町,山田村では,現在も定着していると思 われる(図2)。福光町への進出は1988年頃より,岐阜 県境から細入村への進出は1993年頃よりはじまり,さ らに1997年頃より大沢野町,大山町へと北上進出して きたと思われる。散発的に確認されている庄川町・小 矢部市。上市町(南部,1999)や現在も確認されてい る氷見市での記録は飼育されていた個体の可能性が大 きいと思われる。富山県では、八尾町で1ヶ所(平成 10年現在)、上市町で1ヶ所(平成12年現在)イノシシ が飼育されている。また,高田(1994)によれば,猪 豚が1977〜1990年(昭和52〜平成2年)に朝日町で,

氷見市の山間部でも約50頭が食肉目的で飼育されてい た。2001年の農業被害は,大山町,大沢野町,氷見市

で見られた。

イノシシの全国の狩猟統計及び有害駆除頭数は年々 増加しており(環境庁,1988〜2001),1989年度(平成 1年度)と1999年度(平成11年度)を比較すると狩猟 数と有害烏獣駆除数の合計は,全国では1.8倍(1989 年度,71026頭;1999年度,152392頭)に増加し(図4),

岐阜県では2.4倍(1332頭,3179頭),長野県2.9倍(956 頭,2734頭),福井県では8.9倍(263頭,2250頭)と,

いずれの県も全国平均を上回るが,特に福井県での増

加が著しい(図5)。

富山県の1989〜2000年度の狩猟数は,1995年度に2 頭,1999年度に18頭,2000年度に25頭,新潟県では1996 年度に2頭,1999年度に9頭,20000年度に2頭が挙がり

(図6),有害駆除数は両県とも0頭である。石川県の 1989〜1993年度の狩猟数は10頭以下であったが,1994 年度より30頭を越し,ここ3年(1998〜2000年度)は,

147頭,95頭,215頭と著しく増加し(図6),有害駆除 数は2000年度にのみ3頭挙がっている。なお、富山県 の近年のイノシシの狩猟統計には、飼育されていたイ ノシシまたはイノブタが含まれていると思われる。

石川県では,1970年代には南部で福井県からの移動 個体が季節的に生息し(石川県,1979),1978年度以降 (1986年度除く)毎年狩猟されており,近年では金沢 市以南に分布し,繁殖定着しているとされる(野崎,

1999)

福井県の1997〜2000年におけるイノシシの有害駆除 数は,北部(嶺北)で4,26,73,29頭,南部(嶺南)

で113,308,348,592頭と増加している。

岐阜県飛騨地方の1971年度(昭和46年度)からのイ ノシシの有害駆除数は,変動はあるものの年々除々に 増加し,1990〜2000年度では1995年度の29頭を除くと 30頭から85頭の範囲である(図7)。1996〜2000年度の

2 ) ニ ホ ン ジ カ 図 3

< 富 山 県 >

l・立山町城前,500m,(1),5437‑73‑33,2000年9月,オス、

頭が牧場で餌を食べる。

2.立山町城前,500m,(1),5437‑73‑33,2000年10月下旬.

オス1頭の目撃情報。

3.大沢野町寺津橋右岸,200m,(2),5437‑61‑09,2001年;

月15日(22時15分),右岸の道路を横断し,川側から山側 に移動するのを目撃。オスの成獣で,枝分かれした角を 持つ大型固体。

4.庄川町小牧,180m,(3),5437‑60‑40,2000年(平成12年》

9−10月頃,庄川船着場周辺の山でオス1頭目撃。

5.福光町刀利,200m,(5),5436‑56‑54.44,2000年(平成 12年)10月25日,林道でオス1頭目撃。

6.福光町吉見谷,500m,(4),5436‑56‑66.56,1999年(平 成11年)12月10日,オス1頭目撃。

<新潟県西部・長野県北西部>

1.新潟県糸魚川市市野々御前山,1998年6月4日,雑木林に

オス1頭。

2.新潟県青海町上路湯ノ谷,1998年6月,雑木林にオス1頭。

3.長野県白馬村神城,2000年10月13日.長野オリンピック.

時のクロスカントリー競技場付近でオス1頭が車と衝突。

4.長野県大町市三日町,2001年9月29日,2頭以上の足跡確

5.長野県大町市平山崎,2001年10月19日,大糸線山崎付近 でオス1頭列車にはれられる。

6.長野県大町市平梁場,2001年10月29日,車との衝突によ ると思われたオスの死亡個体。

Ⅱ イ ノ シ シ , ニ ホ ン ジ カ の 生 息 状 況 l ) イ ノ シ シ

今回と前回(南部1999)のアンケート結果から,

イノシシは,1988〜2001年にかけ,11市町村(城端町 福光町,庄川町,氷見市,細入村,大沢野町,八尾町,

山田村,立山町,上市町,朝日町)で確認された。標 高の範囲は,前回(南部1999)が90m(庄川町) 640m(城端町),今回は20m(氷見市)〜500m(福

(7)

南 部 久 男 ・ 吉 村 博 儀

福井県,石川県,富山県,岐阜県飛騨地方の1981年冬(12月〜3月)〜1998年冬(12月〜3月)における「降雪量(C、)」、

「最深積雪深(c、)」,「30cm以上積雪日数」,「50cm以上積雪日数」。

1998abc1999a,b;200081868798198119801219813) 1986(19851219863)198719861219983)1998199712199838798/8186

を示す。

表 1

│R7‑98/81‑8f

ては,3頭,5頭,27頭と増加している(図7)。

富山県,新潟県,岐阜県飛騨北部,長野県北部では 1970年代イノシシほとんど生息しないとされる(富山 県,1979;岐阜県,1979;長野県,1979;新潟県,1979)。

1990年代にはイノシシは,福井県,岐阜県南部,長野 県南部で狩猟数,有害駆除数とも年々増加している。

石川県,│岐阜県北部の飛騨地方でも最近狩猟数が増え 1970年代にほとんど生息していなかった富山県,新潟 県でも最近狩猟されるようになっている。富山県では ウリ坊も目撃さていることより,繁殖定着しつつある と考えられる。富山県での記録は,紳通川水系の市町 村で多いが,本水系は飛騨地方中央部の流域を含むこ とより,富山県へは岐阜県側から紳通川水系沿いに進 出してきたこと思われる。石川県境付近の福光町でも 目撃されているが,それより東の市町村での確認情報 駆除数は,30,46,47,44,85頭と増加し,いずれも飛

騨地方南部の吉城郡と高山市で捕獲されたものであり,

吉城郡清見村と高山市では,それぞれ14,25,27,28,

29頭と4,5,10,10,21頭と年々増えている。

2000年度の飛騨地方のイノシシの狩猟数は計125頭 で,大野郡78頭(白川村は2頭),高山市41頭,吉城郡6 頭(河合村3頭,紳岡町1頭)である。高山市での捕獲 数が飛騨地方の市町村で最も多く,富山県境の市町村

(白川村,河合村,神岡町)の合計は6頭である。

長野県の1990〜2000年度の有害駆除数は,中部で7

〜309頭,南部で99〜331頭の範囲で増加し,最近3年間 (1998〜2000年度)では,中部で160,177,309頭,南部 で300,472,741頭と増加している。北部では,1990〜

1997年度まではほとんど駆除されていなかったが

(1990年度と1993年度に1頭),1998〜2000年度にかけ

降雪量、

地点・標信

N(81‑86

平均 最小‑最大

N(87‑98 平盤 最小‑最大

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最小‑最大

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日数≧30cm N(81‑86

最小‑最大 N(87‑9$

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(8)

が定着していると思われる。婦中町,八尾町及び福 岡町の目撃個体は飼育されていた個体と思われる(南 部,1999)。

全国の狩猟統計及び有害駆除頭数は年々増加してお り,1989年度(平成1年度)と1999年度(平成11年度)

を比較すると狩猟数と有害烏獣駆除数の合計は,全国 では3.8倍(1989年度34893頭;1999年度133274頭),

岐阜県では1.8倍(433頭,772頭),長野県では4.1倍 (725頭,2954頭),福井県では,8.3倍(55頭,457頭)

と増加し,福井県では全国平均をかなり上回る(図8)。

1989年度(平成1年度)〜2000年度(平成12年度)

にかけ,石川県では1995年度に3頭,1999年度5頭,富 山県では,1995年度に5頭,1999年度1頭,新潟県では,

1992年度に3頭,1999年度2頭が狩猟されているにすぎ ず,有害駆除は挙がっていない(図9)。

岐阜県北部の飛騨地方では1996〜2000年度の5年 間の有害駆除数は0頭で,狩猟数は,2000年度に吉城郡 河合村で3頭が挙がっているだけである。長野県の 1995〜2000年度の有害駆除数は,中部及び南部では増 加し,1995年度と2000年度を比較すると,中部では60 頭と426頭,南部では363頭と1288頭,と増加し,北部 では2000年度に1頭駆除されているに過ぎずない。福 井県嶺南地方では,1997〜2000年度にかけ,有害駆除 数は22,14,55,176頭と増加しているが,嶺北地方で はいずれの年も0頭である。

富山県,新潟県,岐阜県飛騨地方,長野県北西部で は,1970年代ニホンジカほとんど生息しないとされて いるが(富山県,1979;岐阜県,1979;新潟県,1979;

長野県,1979),明治時代には石川県や富山県に生息 したことが知られている(南部・石坂,2001)。1990 年代,福井県南部,岐阜県南部,長野県南部では狩猟 数は増加している。岐阜県北部の飛騨地方,石川県,

富山県,新潟県ではわずかではあるが狩猟され,富山 県や新潟県西部,長野県北西部では少数が目撃され,

石 川 県 加 賀 地 方 で も オ ス ジ カ が 希 に 目 撃 さ れ て い る (野崎1999)。これらのことより,近年少数が福井県 側,岐阜県側,長野県北西部側から石川県や富山県,

新潟県へ進出しているものと思われる。なお,富山県 の目筆個体は、一部飼育個体の可能性もあり,注意が

必要である。

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図101981年冬〜1998年冬の北陸地方及び岐阜県飛騨地方 の降雪量の年変動。地点は本文参照。

は今回のアンケートでは得られず,石川県側からの進 出は県境付近でとどまっていると思われる。

2 ) ニ ホ ン ジ カ

今回と前回(南部,1999)のアンケート結果から,

1995〜2()01年に8市町村(福光町,福岡町,庄川町,婦 中町,八尾町,大沢野町,上市町,朝日町)で確認され た。標高の範囲は前回(南部,1999)が20m(婦中町》

〜700m(上市町)で,今回は180m(庄川町)〜500m (立山町・福光町)であった。確認された個体は,ほ とんどがオスl個体であった。福光町では現在も少数

Ⅲ 降 雪 量 と の 関 係

イノシシ,ニホンジカの生息域は,積雪と関係があ るとされ(常田・丸山,1981;常田他,1981),島根県 での近年のイノシシの増加は降雪量の減少が関係して いるとされている(島根県,1997,2000)。

(9)

南 部 久 男 ・ 吉 村 博 儀

1981年冬(1981年12月〜1982年3月)〜1998年冬の,

北陸地方,岐阜県飛騨地方の13降雪観測地点では,「降 雪量」の年平均は,1987年冬以降,全地点で減少した が,特に低地での減少が顕著であった(図10,表l)。

「最大積雪深」も低地と里山で「降雪量」と同様1987 年冬以降減少傾向が見られ,11地点で減少したが,山 地の「白川」と「高山」ではほとんど減少は見られな かった。「30cm以上の積雪日数」の年平均は,1987年 冬以降全地点で減少傾向が見られたが,低地での減少 は,里地,山地よりも顕著であった。「50cm以上の積 雪日数」の年平均も「30cm以上の積雪日数」と同様 に,1987年冬以降全地点で減少傾向が見られたが,低 地での減少は,里山,山地よりも顕著であった。また その減少の割合は「30cm以上の積雪日数」の減少の 割合よりさらに顕著であった。

このように,北陸地方の低地では,1987年冬以降

「降雪量」の減少は著しく,「30cm以上積雪日数」,「50 cm以上積雪日数」の減少は「降雪量」の減少よりも

さらに顕著であった。「里山」,「山地」においても1987 年冬以降「降雪量」は減少し,「30cm以上積雪日数」,

「50cm以上積雪日数」も減少がみられた。

積雪に対するイノシシの自然分布の限界は,30cm以 上平均積雪日数70日以上とされる(常田・丸山,1981)。

「30cm以上積雪日数70日以上」の地点は,1987年冬以前 では13地点中8地点であったが,1987年冬以降では,1 地点(白川)に減少した。特に,低地の4地点(富山,

福井,金沢,小浜)では,10日以内と激減した。岐阜 県飛騨地方の「高山」では1987年冬以前と以降では,

「30cm以上積雪日数」の年平均は,25.8日と15.0日で どちらもかなり少ない。「白川」及び「河合」では,

1987年冬以降,それぞれ1040日が81.2日に,90〃日が 63.8日と70日前後に減少している。「神岡」では,

75.3日が4L7日に,富山県南部の「猪谷」では,81.2 日が41.4日とかなり減少している。このように,降雪 量から見ると,もともと積雪の多い岐阜県飛騨北部,

富山県南部では,現在もイノシシにとっては冬期の生 存が厳しい地域が多いと言えるが,「神岡」,「猪谷」の ように,地域によっては生存可能な場所も増えている と思われる。今回のアンケートの結果より,冬期(2 月)に富山県南部の山田村でイノシシが狩猟されてい ることは,富山県南部の山地でも冬期にも生存できる

地域があることを示している。

積雪に対するニホンジカの自然分布の限界は,50じ、

以上平均積雪日数10日以上とされる(常田・丸山,

1981)。50cm以上積雪日数10日以上は,1987年冬以前 では13地点中12地点であったが,1987年冬以降では8

地点に減少した(表1)。1987年以前では,「小浜」だけ が8.7日と10日以内であったが,1987年冬以降では,北 陸地方の低地(福井,小浜,金沢,富山)全ての地点 で2日以下と大幅に減少し,「大野」、「今庄」,「山中」

でも15日以下となり,「高山」では10日以下となって いる。降雪量からすると,ニホンジカにとっては,里 山,山地では冬期の生存に厳しい地域が多いと思われ るが,低地では冬期でも生存できる地域が増えている

と言える。

福井県では,イノシシとニホンジカの両種が,石j'三 県ではイノシシの増加が著しく,富山県でもイノシシ の増加傾向が見られる。この一因は,1987年冬以降の 低地での「降雪量」の著しい減少や「30cm以上積雪 日数」,「50cm以上積雪日数」の減少によると思われる。

Ⅳ ま と め

近年の北陸地方のイノシシの動向は,日本海の沿岸 に近い山地側では,福井県から石川県へと分布を広げ 岐阜県側からは神通川水系沿いに富山県へと分布を広 げつつあると言える。その一因は1987年冬以降の降雪 量の減少にあると思われる。ニホンジカもイノシシと 同様な傾向が見られるが,イノシシに比べる分布の拡

大はまだ遅いと思われる。

謝 辞

富山県鳥獣保護員等の皆様にはアンケートに御協力いた だき,貴重なデータを提供していただきました。敬称は略 させていただきますが、ここに、厚くお礼申し上げます

(五一'一音順)。

富山県鳥獣保護員の皆様:青木政文,赤座久明,浅井勝男,

穴田哲,今井芳正,内山宝造,浦崎悦朗,浦田啓一,桧物 芳晴,大田保文,大沼進,岡部信保,片山国丸,金田米雄,

北川修,小林忠行,酒井昌則,坂田健,笹山治一,下田 友康,菅孝允,杉林修,杉本忠夫,瀬口吉秋,高島秀雄,

高林義之,谷口忠敏,田村実,鶴丸次郎,寺田正義,士池 仁一,中久之,中谷信一,西川正雄,狭間正雄,羽馬誠一,

早川由信,菱谷杉蔵,前田誠,松田勉,村瀬良信,山崎 保之,山下栄治,山田政夫,山根武夫,山野浩平,湯浅純孝,

湯浅輝久.鳥獣保護員以外の皆様:勝田栄造,小林英治,

小林英俊,竹原昇,谷口要,西岡満,松木洋,間宮

寿頼,山本茂行.

野紫木洋氏(青海町)には新潟県西部の,大町市山岳博 物館副館長宮野典夫氏,同館清水博文氏には長野県北西部 のイノシシ,シカにつきましてご教示いただきました。富 山県自然保護課,石川県自然保護課,福井県自然保護課,新 潟県環境企画課,│岐阜県自然環境森林課,長野県森林保全課§

島根県森林整備課には狩猟数,有害駆除数,文献につきまし てご教示いただきました。石川県自然保護課林哲氏,富山 県自然保護課松為幸夫氏,福井県自然保護センター松村俊

(10)

幸氏,岐阜県飛騨地域振興局環境課堀部佳子氏,富山市ファ ミリーパーク小杉潤氏,同穴田美佳氏,富山県東部家畜保 健所本多秀次氏にはイノシシ・シカの生息状況や文献をご 教示いただき、科学技術庁防災科学技術研究所長岡雪氷防 災実験所石坂雅昭博士には,降雪の資料につきましてご教 示いただきました。富山県動物生態研究会の皆様には貴重 なご意見をいただきました。富山科学文化センター布村昇 館長にはご指導いただき、志波友子氏には作図をしていた だきました。御協力いただきました諸機関ならびに各位に

厚くお礼申し上げます。

文 献

福井県,1979.第2回自然環境保全基礎調査動物分布 調査報告書(ロ甫乳類),45pP.

│岐阜県,1979.第2回自然環境保全基礎調査動物分布 調査報告書(Ⅱ甫乳類),78pp

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飛騨県事務所林務課,1977〜1998昭和51年〜平成10 年林業統計書.

Ⅱ甫乳類分布調査科研グループ,1979.カモシカ・シカ・

ツキノワグマ・ニホンザル・イノシシの全国的生息 分布ならびに被害分布.生物科学,31(2):96−112 石川県,1979.第2回自然環境保全基礎調査動物分布

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環境庁編,1979.動物分布調査報告書(Ⅱ甫乳類)全国

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