論文内容要旨
High expression of FOXM1 critical for sustaining cell proliferation in mitochondrial DNA-less liver cancer cells
FOXM1
の高発現はミトコンドリアDNA
減少肝癌細胞の増殖維持に重要である
腫瘍細胞生物学 日暮大渡
近年,大規模解析により,多様な癌腫の半数以上の症例でミトコンドリ
ア
DNA(mtDNA)がその正常組織と比較して有意に減少していることが明
らかとなった.注目すべきは,この減少がゲノム
DNA
上の既知のいずれの ドライバー変異よりも広範で高頻度に生じていることである.従って,mtDNA
の減少は薬物療法のまたとない標的と考えられる.一方,mtDNAの減少は,E2F1転写ネットワークを下方制御し,細胞周期 阻害因子
p21
Cip1,p27Kip1を誘導して細胞周期の進行を停止させる.そのため
mtDNA
の減少は,増殖能の亢進という癌の特徴とは本来,相容れないものである.そこで本研究では,『mtDNA減少(mt-Low)癌細胞は,
mtDNA
減 少に伴う増殖抑制を克服するために,特異なメカニズムを獲得して癌化し た』という仮説を立てた.この克服メカニズムを解明し,破綻を誘導させ ることが出来れば,広範な癌腫の半数以上を占めるmt-Low
症例に対する 有効な治療法の開発につながる可能性がある.本研究では,mtDNA減少が 報告されている癌腫のうち,肝細胞癌の細胞株を用いてこの仮説を検証し,治療への応用の可能性を示すことを目的とした.
肝細胞癌株7種と正常肝細胞の
mtDNA
量を定量し比較したところ,4種の細胞が
mt-Low
癌細胞であり,このうち3種の細胞では,mtDNA 量が正常レベルの癌細胞と同等の増殖能を示し,細胞周期の進行を促進する転写 因子複合体
FOXM1/BMYB
がタンパク質レベルで高発現していた.RNAi干渉 により,FOXM1およびBMYB
を減少させたところ,細胞周期がG
1/S
期で停 止し,老化様形質が誘導された.これらの結果は,mt-Low 癌細胞の増殖維持に
FOXM1/BMYB
が重要な役割を果たしていることを示している.さらに
mt-Low
癌細胞でのFOXM1
タンパク質の高発現について,RNAiや 阻害剤を用いて検討したところ,脱ユビキチン化酵素OTUB1
の関与が示唆 された.GST-TUBE プルダウンアッセイによりFOXM1
のユビキチン化のレ ベルを調べたところ,FOXM1はOTUB1
により脱ユビキチン化されることでプロテアソームによる分解を回避していることが示された.
以上より,今回対象とした
mt-Low
癌細胞は,FOXM1/BMYBを高発現させることで
mtDNA
減少に伴う増殖抑制を克服している可能性が示された.また,このうち
FOXM1
の発現制御には,脱ユビキチン化酵素OTUB1
が関与し ていた.以上の結果は,OTUB1
の阻害によるFOXM1
の発現抑制などにより,FOXM1/BMYB
複合体の機能を阻害すれば,多様な癌腫の半数以上を占めるmtDNA
減少症例に対して,老化様の増殖停止を誘導することが出来ることを意味している.本知見は従来よりもインパクトのある癌個別化医療への 応用が期待される.
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