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論文内容要旨

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Academic year: 2021

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論文内容要旨

論文題名

遺伝毒性に対する実質的な閾値形成における

DNA

ポリメラーゼκの役割 に関する研究

専攻科目名 毒物学 氏名 兼丸祐紀

内容要旨

遺伝毒性発がん物質の作用には閾値がなく如何に低用量であってもヒ トに発がんリスクを及ぼすものとして、医薬品等の化学物質に対する各種 規制がなされてきた。一方、生体には

DNA

修復、アポトーシスなど遺伝 毒性に対する多様な生物学的防御機構が備わっており、これらが遺伝毒性 物質の作用に対する実質的な閾値を形成している可能性が考えられる。本 研究では、DNA 損傷を乗り越えて複製を行うことで細胞死を回避する機 構である損傷乗り越え

DNA

合成(TLS)に関わるポリメラーゼの一種、

DNA

ポリメラーゼκ (Pol κ)について、遺伝毒性の閾値形成における役 割を検討した。具体的には、

Pol

κがどのような

DNA

損傷に対して

TLS

に関わるか、及びその過程は遺伝情報にどのような影響を与えるかを明ら かにすることを目的として、以下の検討を実施した。

1

章では

Pol

κ欠損/不活性化ヒト細胞株を遺伝的改変により樹立し、

種 々 の 遺 伝 毒 性 物 質 に 対 す る 感 受 性 を 検 討 し た 。 結 果 、

Pol

κ は

benzo[a]pyrene

の 代 謝 中 間 体 で あ る

benzo[a]pyrene-7,8-dihydrodiol- 9,10-epoxide

mitomycin C (MMC)、bleomycin

といった作用機序の異 なる複数の遺伝毒性物質に対し、そのポリメラーゼ活性を介して細胞死を 抑制することが示唆された。また、hydrogen peroxide 等、酸化的

DNA

損傷を引き起こす物質に対して、ポリメラーゼ活性以外の構造ドメインが 細胞を保護している可能性が示された。

2

章では、Pol κが

TLS

を行う過程で、遺伝情報に与える影響を明 らかにするために、

Pol

κ改変細胞にチミジンキナーゼ遺伝子を指標とし た突然変異検出系を導入すると共に、染色体異常試験や姉妹染色分体交換 試験の試験条件を設定することで、

Pol

κ改変細胞を用いて点突然変異か

(2)

ら染色体レベルの異常までを総合的に評価可能な遺伝毒性評価系を構築 した。

3

章では、

MMC

を被験物質として、

Pol

κが

MMC

の致死作用を抑 制する過程でどのような

DNA

損傷をどの程度の忠実度で乗り越えている か、

Pol

κ改変細胞を用いた一連の遺伝毒性評価系を用いてその機序を検 討した。結果、

Pol

κは

MMC

が誘発する

CG

部位での

DNA

鎖間架橋を

error-free

に乗り越えることで、変異誘発や染色体レベルでの異常を抑制

し、細胞の致死を回避していることが示唆された。

以上、一連の研究により、

Pol

κはヒト細胞内において異なる作用機序 を持つ多様な遺伝毒性物質の致死作用の抑制に関与していること、及び

MMC

をモデルとして

Pol

κによる

error-free

TLS

が遺伝毒性を抑制 することを示した。また、本研究において構築した

Pol

κ欠損/不活性化 細胞株を用いたマルチエンドポイント遺伝毒性評価系は、ヒト細胞内で化 学物質の遺伝毒性に対する

Pol

κの防御的役割を検討する上で有用な手 段となることを示した。本研究成果は、Pol κによる

error-free

TLS

が遺伝毒性に対する実質的な閾値形成に重要な役割を果たす科学的知見 を提供することで、特に極低用量域での遺伝毒性影響と生体防御機構との 関係に対する理解を深め、将来的に基礎科学と規制科学との調和がとれた 遺伝毒性評価・リスク管理プロセス策定の一助になるものと考える。

参照

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