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うつ病を合併した社交不安障害に対する認知行動療 法の実際

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うつ病を合併した社交不安障害に対する認知行動療 法の実際

著者 小松 智賀

雑誌名 東京家政大学附属臨床相談センター紀要

巻 14

ページ 19‑27

発行年 2014‑03

出版者 東京家政大学附属臨床相談センター

URL http://id.nii.ac.jp/1653/00010083/

(2)

うつ病を合併した社交不安障害に対する認知行動療法の実際

小松 智賀

Cognitive behavioral therapy for social anxiety disorder complicated by depression Chika KOMATSU

要旨

本論文はうつ病を合併した社交不安障害患者に対して認知行動療法を行った面接過程について報告する。うつ症状に ついては生活リズムを調整することによってうつ症状の改善と症状の安定を目指し、SAD症状についてはClark & Wells

(1995)の認知モデルをベースとしてSADの症状の悪循環の心理教育を行い、ビデオフィードバックや安全行動なしの 課題を実施した。その結果、うつ症状(SDS)、不安症状(STAI)、SADの重症度評価(社交不安障害検査)において改 善がみられ、社会的な活動が増加し、治療効果がみられたことから、面接で行った治療の工夫について考案した。

キーワード:社交不安障害 うつ病 認知行動療法

【はじめに】1

社交不安障害(social anxiety disorder :以下 SAD とする)は、他者の注視を浴びるかもしれない社 会的状況に対する顕著で持続的な恐怖感、不安反 応、そうした状況からの回避行動を特徴とした不 安障害であり、生活への支障度が高い障害である

(American Psychiatric Association :APA, 2000)¹⁾。

例えば SAD 患者は、人前でスピーチをする場面 や他者との会話や会議、書字や公共の場での飲食 など他者の視線を浴び、他者からの評価を受ける 可能性のある状況において過度な不安を喚起す る。その際、顔面の紅潮、動悸、振戦、声の震え、

発汗、胃腸の不快感、下痢といった身体症状、ま たは場合によってはパニック発作のような形を とることもある。

SAD の生涯有病率は 0.5~16%である(Furmark,

2002)²⁾。そして、生涯のうちに約 80%は精神科

併存症を伴うとされる³⁾。SAD に多い併存症とし て、気分障害、他の不安障害、人格障害、アルコ

1

医療法人和楽会 心療内科・神経科赤坂クリニック

ール症、摂食障害などであるが、この併存症の割 合は、SAD の発症年齢によって異なり、SAD が 早期に発症するほど高くなるといわれている³⁾。

Lecrubier ⁴⁾は、うつ病、アルコール症の合併は 15

歳未満に SAD を発症した患者に多く、うつ病を 合併すると SAD の重症度が増すと報告している。

また、うつ病の合併では、 SAD が先行して発症す る場合がほとんどであるとされている⁵⁾。

SAD の多くは小児期・思春期に発症し、慢性的な

経過をたどり、自然寛解しにくいのが特徴であり、

平均罹病期間は 20 年といわれている。また、受 診率、診断率、治療率が低い割に SAD の QOL

(quality of life; 生活の質)への影響は大きく、生 産性や昇進といった仕事面や、収入や失業率とい った経済面、友人関係や恋愛に与える影響が大き いといわれている⁶⁾。SAD の疫学研究からは、学 業不振、中途退学、就労不振、無職、アルコール 乱用などがみられ、社会経済的に低い群で多く、

SAD 患者の半数以上は独身、離婚、別居のいずれ

かであるとの報告がある⁷⁾。このようなことから

(3)

うつ病を合併した社交不安障害に対する認知行動療法の実際

-20-

も SAD による心理社会的な負担は大きく、早期 介入をすることの有効性が指摘されている⁸⁾。

SAD の治療法としては、薬物療法と心理療法が 考えられるが、Heimberg(2002)⁹⁾は、薬物療法と 心理療法の併用が、 SAD の長期的な治療効果の持 続を考慮するうえで、最も有効であると指摘して いる。Liebowitz et al.(1999)¹⁰⁾は、薬物療法と集 団認知行動療法の効果の比較検討を行ったとこ ろ、薬物療法の SAD 症状への即効性と認知行動 療法の長期的な効果を指摘している。

SAD の認知行動療法的アプローチとしては Clark & Wells(1995)

11

⁾と Rapee & Heimberg(1997)

12

⁾ のモデルを中心に発展してきた。この両者のモデ ルの共通点としては、 SAD 患者はパフォーマンス 場面で他者に見られる自己の行動を低く見積も り、自己の不安が他者にどのように映るかについ て過度に見積もるという点を指摘している。

そこで本論文では、うつ病を合併した社交不安 障害の症例に対して Clark & Wells の SAD の認知 モデルを基に介入を行い改善がみられた面接過 程を通し、面接での工夫点などについて考察を加 えたいと思う。

【症例概要】

症例は、個人が特定できないように論文の主旨 を損なわない程度に改訂を加えた。

症例(以下、 Cl とする) ; A さん、 20 歳代前半、

男性。

主訴;視線恐怖。自分の視線が他者を不快にし ているのではないかと思う。過眠。やる気が出な い。

家族歴;両親(40 歳代) 、弟(高校生) 、家族 4 人で同居。母が治療は受けていないものの、軽い 視線恐怖があった。

既往歴・手術歴;小学校 3 年生まで小児喘息が

あり 1 年ほど服薬した。手術歴はなし。

成育歴・現病歴;2 人同胞の長男として成育。

幼少児は、外遊びより家で遊ぶことの方が好きで、

集団活動が苦手であった。友人は中学校の頃から 同じ音楽の趣味の友人が一人いる。高校 1 年生の 頃より、憂うつ感が出現し他者の視線が気になっ たり、自分の視線が気になるようになった。高校 2 年生時では、理由もなく落ち込み学校を欠席す ることが 2、3 日続いた。精神科を受診したもの の、2、3 回の通院で中断してしまった。高校 3 年生時には、月に 1 度気分の落ち込みで学校を欠 席するようになった。大学受験に失敗し、予備校 に通い始めたものの、他者の視線が怖く、自分の 視線が他者を不快にさせているのではないかと いう心配から教室で授業を受けることが苦痛と なっていった。X-2 年 10 月には予備校に通えな くなり、精神科を受診。薬物療法を開始するもの の、自己中断してしまったり、なかなか継続した 通院ができず、転院を繰り返していた。X-1 年、

調子に波があり、調子が悪いときは一日起きあが れない日もあったものの、全体的な抑うつ気分は 改善してきたことから、コンビニのアルバイトを 始めた。しかし、接客がストレスであり、また、

簡単なミスに過度な自己責任を感じてしまい 1 ヶ月ほどでやめてしまった。 X 年 5 月、 当院初診。

抗うつ薬、抗不安薬による薬物療法を開始した。

薬物療法により抑うつ気分や気力減退の改善が みられ外出する機会も増えてきた。しかし、依然 として視線恐怖に対する不安が継続し、このこと が社会復帰の妨げとなっていると、主治医の判断 から薬物療法と並行して、薬物療法開始から 5 ヶ 月後に心理療法を導入することになった。

【面接過程】

面接は 1 回 30 分で実施した。ただし、#4 の行

(4)

動実験の回のみ時間を延長し 50 分とした。

第1回の面接では、インテーク面接を実施した。

主訴、成育歴、現病歴、現在の生活状況、カウン セリングに対する希望を聴取した。視線恐怖につ いては、電車や映画館などでの他者の視線は気に ならなくなったものの、教室や食事場面では他者 から自分がみられているような気がして、どのよ うに見られているのかが気になり不安になると のことであった。自己視線については、自分の視 線が他者を不快にさせているような気がすると のことであった。また、対人関係については、天 気の話題などあたりさわりのない会話はできる ものの、徐々に相手との親密さが増していくと何 を話してよいのかわからなくなってしまうとの ことであった。現在の生活状態は、昼寝を含めた 睡眠時間が 10 時間を超えており、過眠状態であ った。就寝時刻は 12 時頃とおおよそ一定である ものの、起床時刻は早くて 7 時、遅いと 10 時~

12 時とバラバラであった。日中は、特に予定が なく外出は母親と買い物に行く程度であり、時々 料理や洗濯などの家事の手伝いをしていた。予定 がなく暇な時間につい昼寝をしてしまうことも 多いとのことであった。カウンセリングに対する 希望は、つい考え方がネガティブになってしまう ため、それをどうにかしたいということと、専門 学校などへの進学やアルバイトなども考えたい が今の自分では恐怖心もあり具体的に考えるこ とができない、将来を前向きに考えられるように なりたいとのことであった。初回の宿題として、

質問紙の回答と睡眠時間や外出などの生活状況 の記録をつけることとした。

第 2 回面接は、 初回から約 2 週間後に実施した。

まず、初回後の 2 週間の生活状況は変わらず過眠 状態であり、一度は午前中に目が覚めるものの、

眠気が強く午後 2 時や夕方まで寝てしまう日も

あった。このような過眠の時期が 2 年前より繰り 返しあるとのことであった。インテーク時に話し たネガティブな思考については、人が集まる場な どにおいて、「視線で人を不快にさせてしまうよ うな自分がこの場にいていいのだろうか」といっ たような対人関係についての思考が多く、また将 来に対する不安は SAD による行動制限によるも のが大きいと考えられた。そこで、うつ症状に対 しては、就寝時刻や起床時刻を調整し、日中の活 動を増やすようにするといった生活リズムの調 整を行い、 SAD に対する治療を並行して行なうこ ととした。この回の面接では、Clark & Wells の認 知行動モデルを用いて、Cl の SAD 症状の悪循環 の理解を促した。その際に、Cl と作成した SAD モデル図を図.1 に示した。

図.1 では、SAD 症状が出やすい社会的場面と して「教室で授業を受けているとき」をとりあげ、

モデル図に沿って以下のような説明を行った。こ のような場で「(自分の)視線が相手を不快にし ているんじゃないか、自分がおかしいと思われる んじゃないか」といった自動思考が出てきて、緊 張、不安といった感情が出現し、体の震え、こわ ばり、動悸といった身体症状が現れる。そして、

自分が恐れるような状況、状態にならないように Cl は「なるべく教室の後ろの方に座る、うつむ いて視線を合わせないようにする」といった安全 行動をとってしまい、このような自動思考や不安 感情、症状や安全行動が、過度な自己注目につな がり悪循環になっていくという SAD が成り立つ のである。Cl は、この説明に納得し、この悪循 環にならないように治療をしていくということ で Cl の治療の方針に対する同意を得た。

第 3 回面接は、第 2 回面接から 1 週間後に実施

した。安全行動が SAD 症状を維持してしまって

いるという機能を理解してもらうために安全行

(5)

うつ病を合併した社交不安障害に対する認知行動療法の実際

-22-

1 Clark & Wells(1995)に基づいたAさんの認知モデル

状況

教室で授業を受けているとき

自動思考

(自分の)視線が相手を不快にしているのではないか 他人の視線が気になる、自分がおかしいと思われているのではないか

不安感情・症状

緊張、不安

体のふるえ、こわばり、動悸

安全行動

教室の後ろの席に座る 他人と目を合わせないように下を向く

人の多いところに行かない

自己注目

動あり/なしのビデオフィードバックを行った。

ターゲットとする安全行動は「視線を下にしてう つむいてしゃべる」として 3 分程度自己紹介をし てもらった。ビデオフィードバック内容としては、

1 回目は安全行動ありでよいので普段通りに話す、

2 回目は安全行動をあえて強調して話す、3 回目 は安全行動なしで話すという課題を設定し、ビデ オ撮影を行った。それから、ビデオ撮影をする前 に自分が他者からどう見られているかという予 測をしてもらいながら「スピーチ不安行動評定尺 度」を記入してもらい、ビデオ撮影後、3 回目の 安全行動なしでのビデオを客観的視点から同様

に「スピーチ不安行動評定尺度」を記入してもら った。なお、ビデオを見る際に「ここに映ってい るのは自分ではなく他人だと思ってみてくださ い」と教示した。 「スピーチ不安行動評定尺度」

の結果を その結果、1 回目の普段通りの話し方

では「自分が想像していたほどおかしくは見えな

かった」とのことであり、2 回目の安全行動を強

調した話し方では「視線が下に向いていると暗く

みえる。緊張しているようにみえる」とのことで

あった。3 回目の安全行動なしでは「下を向かな

い方が明るく見える、緊張しているようには見え

ない」とのことであったことから、他者から客観

(6)

2 ビデオ撮影前の評価と3回目安全行動なしのビデオをみての評価の比較

1 非常に緊張した声 非常の落ち着いた声

2 速すぎる 適当な早さ

3 単調/抑揚がない 適度なメリハリがある

4 発音が不明瞭 発音が明瞭

5 余分な単語や音節が 余分な単語や音節が

気になる 気にならない

6 言葉がなかなか 言葉がスムーズに

でてこない でてくる

7 視線の使い方がへた 視線の使い方がうまい

8 無表情/ 豊かな表情/

こわばった表情 余裕のある表情

9 不適切な笑いが 不適切な笑いが

気になる 気にならない

10 こわばている/ 力が抜けている

緊張している

11 無関係な動きが 無関係な動きが

気になる 気にならない

12 ジェスチャーの量が ジェスチャーの量が

過剰/不足 適度である

13 意味もなく体を揺らす 意味もなく体を

揺らさない

14 直立不動/ 余裕のある姿勢

かたい姿勢

15 全般的に不安が 全般的に不安が

非常に高い 非常に低い

3回目安全行動なしのビデオをみての評価 ビデオ撮影前の評価

1 2 3 4 5

調

-5 -4 -3 -2 -1 0

0 1 2 3 4 5

1 2 3 4 5

-5 -4 -3 -2 -1 -5 -4 -3 -2 -1 0

0 1 2 3 4 5

1 2 3 4 5

-5 -4 -3 -2 -1 -5 -4 -3 -2 -1 0

0 1 2 3 4 5

1 2 3 4 5

-5 -4 -3 -2 -1 -5 -4 -3 -2 -1 0

0 1 2 3 4 5

1 2 3 4 5

-5 -4 -3 -2 -1 -5 -4 -3 -2 -1 0

0 1 2 3 4 5

1 2 3 4 5

-5 -4 -3 -2 -1 -5 -4 -3 -2 -1 0

0 1 2 3 4 5

1 2 3 4 5

-5 -4 -3 -2 -1 -5 -4 -3 -2 -1 0

0 1 2 3 4 5

1 2 3 4 5

-5 -4 -3 -2 -1 -5 -4 -3 -2 -1 0

的にみえる自己像について確認した。そして、安 全行動が逆に緊張を増加しているということを Cl に説明した。ビデオ撮影前と 3 回目撮影後に 評価してもらった「スピーチ不安行動評定尺度」

の結果を図.2 に示した。この回の宿題として、週

末に短期アルバイトの説明会があるとのことか ら、この説明会で「下を向かないで話を聞く」と いうことを課題とした。

第 4 回面接は第 3 回面接の 2 週間後に実施した。

生活リズムは徐々に改善してきており、日中に昼

こわばっている/

(7)

うつ病を合併した社交不安障害に対する認知行動療法の実際

-24-

寝をすることがなくなり、日中の活動量も増加し てきたことに伴い、抑うつ気分も改善し落ち込む ことも減少した。宿題であったアルバイトの説明 会で下を向かないようにするということは、実行 することができ、電車の中などでも下を向かない ようにしたところ、逆にその方が気持ちが楽にな り人の視線も気にならなくなったとのことであ った。今回の面接では、より不安の程度が強く回 避している状況で安全行動をしないという課題 を実施した。課題の内容としては、ファーストフ ード店に混んでいるお昼の時間帯に行き、店の中 央にある対面になるテーブル席に座って食事を するという状況を設定し、 「うつむきながら食事 をする」という安全行動をとらないようにすると いうものとした。その際に治療者はファーストフ ード店に同行し、Cl の視界に入らない場所で、

Cl とその周囲の人を観察するようにした。課題 実施の結果、下を向いて食事をしていたときは

「周囲の人は自分のことを見ているのではない か、もし自分と目が合う人がいたら、露骨に目を そらすのではないか」と思っていたが、実際に視 線を上げて食事をしてみたところ「顔を上げてい たほうが楽、周囲の人は個人個人でそれぞれ行動 をしていて自分のことを気にする人はいなかっ た、自分と視線があっても、不快そうに視線をそ らす人もいないし自分の視線が他者を不快にさ せているわけではなさそう」という見解が得られ た。

第 5 回面接は、第 4 回面接の 4 週間後に実施し た。この間に短期アルバイトに欠勤することなく 行くことができた。このことが自信となり、不定 期なものであるが長期のアルバイトも始めるこ とも決めたとのことであった。睡眠時刻も一定と なってきており生活リズムも整ってきた。第 6 回 面接は第 5 回面接の 4 週間後に実施した。生活リ

ズムは安定した状態であり、以前 1 ヶ月でやめて しまったコンビニのアルバイトも始めてみたと のことであった。ミスをすることもあったが、過 度に自分を責めることもなく、わからないことが あったら先輩や上司に聞くことができていると のことであった。第 7 回面接は第 6 回面接の 2 ヶ 月後に実施した。多少調子の波はあるものの、ア ルバイトも続けることができており、他者の視線 も気にならないとのことであった。この回に、初 回に宿題として実施した質問紙と同様の質問紙 を実施してもらい結果のフィードバックを行い、

面接を通しての改善点を確認し、今後問題となり そうなことについて検討した。Cl 自身も自分の 力でやっていけそうとのことからカウンセリン グ終結となった。初回時に宿題とした質問紙の結 果と終結時の質問紙の結果の比較を図.3 に示し た。この結果をみると、うつ症状、不安症状、 SAD の重症度尺度のすべてにおいて改善が認められ た。質問紙の説明を表 4 に示した。

【考察】

本症例は、幼少児に SAD を発症し、その後う つ病を合併した症例と考えられる。薬物療法によ り、うつ症状が改善し、 SAD 症状においても多少 の改善がみられたものの、他者と自己に関する視 線恐怖が持続し、社会復帰に対しても SAD によ る行動制限が認められたことから心理療法の導 入となった。そこで、認知行動療法による介入を 開始し、改善のみられているうつ症状については、

生活リズムを調整しつつ行動を活性化させるこ とにより、より安定した状態を目指した。そして、

SAD 症状については、 Clark & Wells の認知行動モ

デルを基に SAD 症状の悪循環の理解を促し、ビ

デオフィードバックや安全行動なしの課題を実

施することにより他者からこうみられているだ

(8)

3 面接初回時と終結時の質問紙の結果

50

58

75

50

56 52

41 45 48

43 42

49

0 10 20 30 40 50 60 70

80 初回面接時

終結時

4 質問紙の解説

質問紙の名称 質問紙の概要

Self-rating Depression Scale(SDS) Zung により作成された抑うつ症状の評価尺度。20 項目、4 段階評価。カットオフ は 40 点である。

State-Trait Anxiety Inventory(STAI) Spielberger が作成した不安状態を測定する尺度。状態不安、特性不安それぞれ 20 項目で構成される。4 段階評価。

不安感受性尺度日本語版; Anxiety Sensitivity Index (ASI)

村中らによって日本語版が作成された。不安感受性を測定するための尺度。16 項目で構成され、5 段階評価。

社交不安障害検査 貝谷らにより作成された。日常生活の状況における恐怖度と回避度、不安の身 体症状、日常生活の支障度の 4 側面から SAD の重症度を評価する。

Liebowitz Social Anxiety Scale(LSAS) Liebowitz により作成された。24 の社会的状況に対して恐怖度と回避度を評価す る。SAD の重症度を測定できる。

ろう自己イメージが変容され、回避していた社会 的状況にチャレンジすることができるようにな った。安全行動をしないことによって、選択的に 自己注目していた状態が、周囲にも注目できるよ うになり、周囲の客観的な情報を得ることができ るようになり、これが自己の歪んだイメージの修 正をさらに促進し、その結果、社会的状況におけ る緊張や恐怖が低減したと考えられる。

城月ら(2011)¹³⁾によると、社交不安の高特性 者は単純にビデオ映像を観察すると、その内容や 様子をネガティブに捉え、客観的に評価すること ができないと述べている。そのため、ビデオフィ

ードバックにおいて介入効果を示すためには、ビ デオ映像の観察の前に認知的介入を併用するこ とが重要であるとしている。本症例においては、

この点については「ビデオの中に映っているのは 自分ではなく他人だと思って見てください」とい う教示を行った。本症例では行わなかったが、治 療の工夫として低い自己評価と他者評価の差異 を検討するために、客観的な評価者を設けて、

SAD 患者のビデオを一緒に見ることを設定する こともある。

SAD は内気や恥ずかしがり屋といった単なる

性格的な問題として受診行動につながることが

(9)

うつ病を合併した社交不安障害に対する認知行動療法の実際

-26-

少ないという問題点も見られたが、本やインター ネットなどでの情報が得やすい社会になったと いうこともあり、徐々に受診行動につながること も増えていると思われる。しかし、本症例にもみ られるように、 SAD は発症時期が早く、就学や仕 事、友人関係や恋愛などの QOL への影響は大き いという特徴がみられることから、 SAD に対して 適切な治療を行うことが、その後の Cl の転帰や QOL に重要な意味をもつと考えられる。

【文献】

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2) Furmark T. 2002 Social phobia; overview of community survey. Acta Psychiatr Scand, 105, 84-93.

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11) Clark DM. & Wells A. 1995 A cognitive model of social phobia. In Heimberg. Liebowitz. Hope &

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12) Rapee RM. & Heimberg RG. 1997 A cognitive- behavioral model of anxiety in social phobia.

Behaviour Research and Therapy, 35, 741-75.

13) 城月・笹川・野村 2011 ビデオ観察と認知的

介入からなるビデオフィードバックがスピ

ーチ課題の自己評価に与える影響. 認知療法

研究, 4(1), 37-45.

(10)

Abstract

In this paper, I have described the course of Cognitive behavior therapy for a case of social anxiety disorder (SAD) complicated by depression. In the interview, by adjusting the lifestyle, we aimed at stability and improvement of depressive symptoms for depression. We understand the symptoms of SAD from a view of the cognitive model of Clark & Wells (1995), and carried out a speech task by videofeedback without a safety behavior. The result, improvement was observed severity rating depressive symptoms (SDS), anxiety symptoms (STAI), and the SAD severity (social anxiety disorder scale).

Key word:Social anxiety disorder Depression Cognitive behavior therapy

図 1  Clark & Wells(1995)に基づいた A さんの認知モデル
図 2  ビデオ撮影前の評価と 3 回目安全行動なしのビデオをみての評価の比較  1 非常に緊張した声 非常の落ち着いた声 2 速すぎる 適当な早さ 3 単調/抑揚がない 適度なメリハリがある 4 発音が不明瞭 発音が明瞭 5 余分な単語や音節が 余分な単語や音節が 気になる 気にならない 6 言葉がなかなか 言葉がスムーズに でてこない でてくる 7 視線の使い方がへた 視線の使い方がうまい 8 無表情/ 豊かな表情/ こわばった表情 余裕のある表情 9 不適切な笑いが 不適切な笑いが 気になる 気になら
図 3  面接初回時と終結時の質問紙の結果  50 58 75 50 56 52 41 45 48 43 42 49 01020304050607080 初回面接時終結時 表 4  質問紙の解説  質問紙の名称  質問紙の概要

参照

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