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九州大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2022

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

日本の職場における元留学生社員の適応過程に関す る研究 : 就業継続に至るまでの葛藤と葛藤解決方略 の変化に注目して

安部, 陽子

http://hdl.handle.net/2324/4784712

出版情報:Kyushu University, 2021, 博士(学術), 課程博士 バージョン:

権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)

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(様式6-2)

氏 名 安部 陽子

論 文 名 日本の職場における元留学生社員の適応過程に関する研究

―就業継続に至るまでの葛藤と葛藤解決方略の変化に注目して―

論文調査委員 主 査 九州大学 教授 松永 典子 副 査 九州大学 教授 三隅 一百 副 査 九州大学 准教授 内田 諭 副 査 九州大学 教授 郭 俊海 副 査 神戸学院大学 教授 栗原 由加

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

元留学生社員が日本での就業で抱く葛藤や葛藤解決方略、職場における適応過程や適応促進要因 については、近年、徐々に明らかになっている。しかし、元留学生社員の就業過程の中の葛藤や葛 藤解決方略がどう変化し、就業継続に至るのか、その過程については、これまで十分に明らかにさ れてきていない。そこで、本研究では、元留学生社員が就業継続に至る過程を適応と定義し、日本 の職場における元留学生社員の適応過程を解明することを目的とする。

この研究目的のもと、設定された本研究の研究課題は 3つある。まず、1つ目の研究課題は、元 留学生社員が留学生時の日本での就業において抱いた葛藤、及び就職後初期の段階に抱く葛藤は何 かという課題である。続く 2つ目の課題は、1つ目の課題で明らかになった元留学生社員が就業初 期に抱いた葛藤を含め、日本で就業する中で抱いた葛藤や葛藤解決方略が、就業過程の中で、どの ように変化し、就業継続に至るのかという課題である。最後に、3 つ目の課題として、元留学生社 員の就業過程において、日本人上司の支援はどう変化するのかという課題を設定し、元留学生社員 の葛藤解決方略に与える日本人上司の支援の影響について考察した。

上記の課題解決に向け、本研究は8章で構成された。まず、第1章の序論では研究背景を概観し、

本研究の目的や意義を述べる。第2章では、本研究で使用する理論的枠組みについて論じ、第3章 では、先行研究の概観を通し、研究課題の抽出を行う。第 4章では研究方法について述べる。第5 章では、1つ目の課題における第 1研究について、第 6章では、2つ目の課題における第 2研究に ついて、第7章では、研究課題3における第3研究について論じる。第8章では、得られた研究結 果から、本研究の結論や理論的意義、今後の日本語教育における実践的意義を述べる。

まず、第1研究では、中国人留学生108名、日本人社員101名を対象とした質問紙調査による量 的調査を行い、両者の具体的な葛藤に対する認識の差を、t検定によって分析した。続いて、追加 調査として、日本人社員の年齢と外国人との接触度という属性に着目した分散分析を行った。その 結果、留学生が日本での就業を通して抱いていた葛藤のうち、サービス残業の日常化、職場での頻 繁な挨拶、ミスに対する許容度の低さ、日本人同僚との関係の希薄さといった4つの葛藤が、実際 に日本で就職した後も、元留学生社員が引き続き抱く葛藤であることが分かった。

続く第2研究では、複線径路等至性アプローチ(TEA)を用い、実際に日本の職場で勤務してい る中国人元留学生社員4人へのインタビュー調査を通して、対象者4人の就業過程を統合したTEM 図を作成した。その TEM図から、就業初期の元留学生社員が、第 1研究の葛藤には留まらない、

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多くの葛藤を抱えていることが示された。そして、これらの葛藤に対し元留学生社員は、入社前に 抱いていた自らの覚悟を駆使しながら、辛抱するといった「妥協」や、会社や日本人社員のやり方 に自分のやり方を同調させる「譲歩」といった葛藤解決方略をとっていたことが分かった。しかし、

この時期の葛藤のほとんどは、同じ職場の同僚や上司の支援を得ることで、慣れという意識変容に 至り、解決に至っていた過程が確認された。そして、その後の就業過程では、新たに生じた葛藤に 対し、元留学生社員は、周囲からの支援や受容的態度が得られることで、自らの思考と行動を捉え 直し、自分独自の方法を確立させるといった「協調」といった葛藤解決方略を用い、葛藤を解決さ せていた経緯が確認できた。また、葛藤が解決されず継続的に存在する対象者からは、就業継続に 対する明確な意思が確認できなかった。

第3研究では、元留学生社員を指導する日本人上司5名にインタビュー調査を行い、そのデータ をSCAT(Steps for Coding and Theorization)を用い、分析した。その結果、元留学生社員の就 業初期において日本人上司は、元留学生社員の能力不足を補完するための業務内外を問わない個人 的な支援を行っており、この支援が元留学生社員の初期の葛藤を解決するのに、重要な役割を果た していたことが確認された。その後、日本人上司は元留学生社員との勤務を経る中で、元留学生社 員との認識や行動の違いを受容し、理解した行動をとるようになり、元留学生社員への支援も、個 人的な支援から、元留学生社員の成長を願った企業の取り組みとしての支援へと変化していく過程 が確認できた。

以上の3つの研究結果から、元留学生社員の日本の職場における適応過程とは、元留学生社員が 日本の就業で抱いた葛藤を、「妥協」や「譲歩」という葛藤解決方略から、「協調」という葛藤解決 方略へと変化させていく過程であることが示された。そして、その過程は、就業過程の中で継続的 に存在する葛藤の有無や、日本人上司が主導する企業の取り組みとしての支援の有無を要因とし、

最終的に、元留学生社員が就業継続の意思の選択を自ら行う過程であることが明らかになった。

以上のように、本研究は従来、定点で捉えられがちであった元留学生社員の就業過程における葛 藤及び葛藤方略が動的に変化するものであることを可視化し、特に元留学生社員が就業初期に抱え る葛藤に対する上司の支援の重要性を指摘した点において、留学生のキャリア教育研究に新たな知 見を提供するものである。以上により、本研究は博士(学術)の学位に値することが認められる。

参照

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