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九州大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2022

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

社会参加型の地域日本語教育に関する研究 : 生活と 学習を繫ぐプログラムの開発と実践から

陳, 帥

http://hdl.handle.net/2324/4496121

出版情報:九州大学, 2021, 博士(学術), 課程博士 バージョン:

権利関係:やむを得ない事由により本文ファイル非公開 (2)

(2)

(様式6-2)

氏 名 陳 帥

論 文 名 社会参加型の地域日本語教育に関する研究

―生活と学習を繋ぐプログラムの開発と実践から―

論文調査委員 主 査 九州大学 教授 松永 典子 副 査 九州大学 教授 稲葉 美由紀 副 査 九州大学 准教授 志水 俊広 副 査 九州大学 教授 郭 俊海 副 査 九州大学 准教授 李 相穆

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

本研究は、日本国内の地域日本語教育の現状を踏まえ、知識は社会関係の中にあるとしている社 会構成主義的な観点に基づき、来日初期段階の「生活者としての外国人」が「生活のための日本語」

を学ぶことで社会との関わりを深め、自律的に成長していくことを可能とする学習プログラムを提 案し、地域日本語教室及び学習者個人の試用のもとに社会参加を促す地域日本語教育のあり方を探 るものである。

地域日本語教育研究においては、特定の研究対象(外国人配偶者、留学生、技能実習生など)に 絞った研究が数多く行われているため、それぞれに必要な日本語学習内容は解明されたが、「生活の ための日本語」を自律的に学習する方法やプロセスはまだ明らかにされていない。それは従来の研 究では支援者や教室担当者の視点からのものが多く、学習者の立場での検討が極めて不足している からだと考えられる。特に、ゼロ初級者に対しては日本語学習支援の面のみが重視されており、自 律学習を促す参加型活動や教室での学習を生活の中の実体験へと導く仕組みが欠けている。そこで、

学習者が社会との関わりの中で自ら自律的に成長していくという構成主義的学習観と、社会的成員 としての学習者が自律的に学習することを支えていくという構成主義的教育観から、地域日本語学 習/教育活動のあり方を再考する必要があると言える。

本研究は日本国内の地域日本語教育の現状を踏まえ、知識は社会関係の中にあるとしている社会 構成主義的な観点に基づき、ゼロ初級者が「生活のための日本語」を学ぶことで社会との関わりを 深め、自律的に成長していくことを可能とする学習プログラムを提案した上で、実践と検証を行い、

社会参加を促す地域日本語教育とはどのようなものかを明らかにする。このような目的を達成する ために、以下3つの研究課題を設定する。

課題1 ゼロ初級者が「生活のための日本語」を学べる自律学習プログラムとはどのようなものか 課題2 本プログラムはゼロ初級者の社会参加をどのように導くか

課題3 ゼロ初級者は日本社会の中で自律的に成長するために本プログラムをどのように活用する ことができるか

以上の研究課題を解明するために、ゼロ初級者に対するニーズ調査を実施した上で、支援者と学 習者それぞれに本プログラムを実践してもらい、記述式アンケート調査とインタビュー調査を実施 し、SCAT(Steps for Coding and Theorization)とM-GTA(Modified Grounded Theory Approach) による分析を行った。

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課題1の「生活のための日本語」を学べる自律学習プログラムとは、学習者が生活の中で必要な 日本語を選び、自分にあった学習計画を立てやすいよう、学習内容を場面シラバスで構築し、場面 ごとに学習目標、学習時間、学習活動を示したものである。また、参加型学習手法とポートフォリ オ評価を取り入れることにより、自律学習を促進する。さらに、学習者と地域日本語教室で学習を 支える支援者の相互主体的な学習を促し、支援者が活用しやすいようプログラムの活用手引きを提 示することも学習者の自律学習には必要である。課題2については、支援者と学習者個人の立場か ら、本プログラムの有効性と改善点を探った。その結果、学習者による学習の管理(学習項目の選 択、ポートフォリオ評価の活用など)が支援者に依存した学習から自律学習への転換を促している ことが示された。また、教室内の参加型学習活動と教室外の実体験活動をポートフォリオで記録す ることで、日本や日本人に対するイメージが変わり、学習者が自信を持って日本の生活の中で問題 を解決し、周りの人との関係を深め、安心した生活を送れるようになることがわかった。課題3に ついては、まず、これまでの実践で得た示唆を整理し、本プログラムの活用モデルを構築した。次 に、当活用モデルが長期滞在のゼロ初級者の「生活のための日本語」の学習および社会参加のため に適しているという仮説を立て、当モデルを2年間使用した長期滞在のゼロ初級者のケーススタデ ィを通じて分析した。その結果、本プログラムが長期滞在のゼロ初級者が社会との関わりの中で自 ら自律的に成長していくのに有効であることが検証された。

結論として、社会参加を促す地域日本語教育とは、従来の支援者主導型の学習支援から脱却し、

ゼロ初級者が自律的に成長することを支援するという観点から、地域日本語教室での支援者・他の 学習者との事前体験、相互学習を繰り返す中で、学習者の実体験からの気づきに基づき、学習と実 体験との絶えざる相互作用を促す自律学習支援であることが示唆された。

以上のように、本研究は、日本語支援の側面のみが重視される傾向にあった地域日本語教育研究 において、学習者の自律学習支援の視点からの学習活動や相互主体的な学習活動への再考を具体的 に促すものである。加えて、社会参加を促す自律学習能力がスキルや知識の習得というより、他者 との関わり合いの中で状況を築いていくものであるという独自の視点を提起している。これらの点 は、地域日本語教育研究のみならず、第二言語習得研究においても新たな知見を提供するものとし て、博士(学術)に値する価値ある業績であると判断された。

参照

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