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九州大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2022

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

外国人社員の「職場における学習」と大学教育に関 する研究 : 日本企業の人材育成で起こるコンフリク トに着目して

鍋島, 有希

https://doi.org/10.15017/1807130

出版情報:Kyushu University, 2016, 博士(学術), 課程博士 バージョン:

権利関係:Fulltext available.

(2)

(様式6-2)

氏 名 鍋島 有希

論 文 名 外国人社員の「職場における学習」と大学教育に関する研究

―日本企業の人材育成で起こるコンフリクトに着目して―

論文調査委員 主 査 九州大学 教 授 松永 典子 副 査 九州大学 教 授 三隅 一百 副 査 九州大学 准教授 阿部 康久 副 査 九州大学 准教授 高松 里 副 査 一橋大学 教 授 太田 浩

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

近年、卒業後に日本企業へ就職する外国人留学生数が増加傾向にある。これに伴い、日本企業で は外国人社員の就業に関する課題があることが指摘されており、大学にはこの課題への対応が求め られている。しかし、従来の研究では、留学生の就職活動支援に関する研究が主流となっており、

日本企業での就業を見据えた大学側の教育や支援についての議論および研究は、その緒についたば かりである。そこで、本研究では、外国人社員の成長にとって重要な概念とされる「職場における 学習」に着目することにより、留学生の就業を見据えた大学教育のあり方について検討することを 目的とする。

本研究における「職場における学習」とは、「職場における個人の学びが、個人の能力向上や組織 の向上に繋がる学習」のことである。日本企業で働く外国人社員の職場における学習では、外国人 社員は日本人上司から文化的支援をあまり受けていないことや、外国人社員はインフォーマルな機 会から学習の機会を得ていることが指摘されているが、職場における学習と大学教育との関係につ いて明らかにされていない。

外国人社員の就業に関する研究および大学と仕事の接続に関する先行研究を概観した結果、前者 からは外国人社員の人材育成に対するコンフリクトに着目して外国人社員の職場における学習を検 証することが必要であることが提示され、後者からは大学教育の科目との関連について検討するこ とが有効であることが示された。そのため、2 つの研究課題を設定した。研究課題1は「人材育成 におけるコンフリクトに着目し外国人社員の『職場における学習』の促進要因を明らかにする」で ある。研究課題 2 は「『職場における学習』を促進する外国人社員の行動は、どのような大学教育 科目から影響を受けているのかについて検討する」である。

研究課題1では、外国人社員を雇用する3社を対象に事例研究を行った。調査対象となる企業は、

一般的に中小企業と呼ばれる規模の企業であり、離職者が多い製造業、離職者が少ない非製造企業、

外国人社員の雇用人数が少ない非製造企業である。調査の結果、以下のことが明らかとなった。

まず、離職者が多い製造業では、「実地研修」と配属先でのOJTというコミュニケーションに依 拠した教育方法に対する外国人社員の認識が企業の人材育成体制と異なることから、外国人社員に コンフリクトが起こることが明らかとなった。そして、外国人社員は人材育成へのコンフリクトに 対処するために本を読む、同僚に相談するなどの対応をしていた。

離職者が少ない非製造企業では、人材育成に対するコンフリクトに対して会社を経営する両親や

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就業経験のある日本人の友人等へ相談する外国人社員は職場に適応していること、誰にも相談して いない場合は状況解釈の中断が起こっていることが明らかとなった。

雇用人数が少ない非製造企業で働く外国人社員は、新入社員の外国人社員の指導を行っており、

自己の過去の経験から、マニュアルを作成する、具体的な仕事の進め方を教えるという指導方法を 採用していた。新入外国人社員は、「具体的な仕事の進め方を教える」という指導方法に対して安心 感があると評していることが明らかとなった。また、日本人上司は、日本社会・企業ルールを教え るという指導方法を行っており、この指導方法に対して新入外国人社員は、同化を求められている と解していることが明らかとなった。この結果から、「具体的な仕事の進め方を教える」という指導 方法が、職場における学習を促進させるものであることが示された。

以上の事例研究より、外国人社員が人材育成におけるコンフリクトに対する内省的観察において 他者から支援を受ける行動が、外国人社員の経験学習を促進する要因として示された。

研究課題2では、研究課題 1の調査結果をもとに、2つの大学の学部に在籍する留学生を対象と する質問紙調査を行った。集計データを因子分析した結果、「職場における学習」の学習スタイルは、

「直接相談型」、「観察・模倣型」、「分析・論理型」の3つに整理された。各因子と大学教育科目と を重回帰分析した結果、「直接相談型」は卒業研究からの影響を受けていること、「観察・模倣型」

と「分析・論理型」は大学教育からの影響を受けていないことが明らかとなった。

さらに「職場における学習」の観点からは、「直接相談型」と「分析・論理型」は、外国人社員の 組織化や多様性のある職場を作るというダイバーシティにおいて重要な行為であることが示された。

また、各因子を構成する項目を見ると、経済産業省が提示する社会人基礎力の構成要素と類似する ことが示された。

以上の結果を受けて、(1)社会人基礎力育成を通した「直接相談型」と「分析・論理型」の育成、

(2)内定者向けオリエンテーションの実施、(3)大学と企業を繋ぐコーディネーターの設置という 3 つの方策が留学生の日本企業での就業を見据えた教育支援として大学教育に必要であることが提起 された。

以上のように、本論文は企業での就業と大学教育との接続研究という分野に、外国人社員の人材 育成で起こるコンフリクトとそれへの対処方法である「職場における学習」という観点から実証的 に切り込み、外国人社員の経験学習を促進する職場での教育及び大学教育に対し、新たな人材養成 のフレームワークを提示するものである。特に、展開することが困難な企業の調査を丹念に行い、

外国人社員のコンフリクトを、それに関わる上司や同僚、友人など多角的な面から解明した点はオ リジナル性が高く、その調査をもとに大学教育に対して新たなフレームワークを提供した点が学術 的貢献として高く評価された。以上の点により、本論文は博士(学術)の学位に値すると論文調査 委員全員一致により判断された。

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