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索珊氏博士論文審査要旨

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Academic year: 2022

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(1)索珊氏博士論文審査要旨 Ⅰ.論文の主題と構成 索珊氏が提出した博士論文の表題は『日中農産品貿易における制度的障壁リスクに関す る研究』である。本論文の目的は、近年、自由貿易政策推進上の焦点となっている制度的 障壁問題のうち食品の安全基準・規制に着目し、日中間の農産品貿易、特に野菜貿易の展開 を分析対象としてその効果を検証することを通じて、理論的・政策的課題を明らかにするこ とである。 論文の構成は以下の通りである。 序 章 本論文の課題と構成 第1章 今日の貿易自由化問題における焦点の所在 第2章 日中間農産品貿易の展開 第3章 日中間野菜貿易における制度的障壁リスクの分析 -しいたけ、冷凍ほうれん草、ねぎの事例によって- 第4章 食品安全基準の制度的障壁リスクとしての性格の考察 -政府・企業レベルの政策展開の事例をとおして- 第5章 結論と今後の課題 参考文献 Ⅱ.論文の概要 グローバリゼーションの進展の下で、自由貿易政策をめぐる論点は新たな領域へと展開 している。関税など従来の国境での貿易制限措置だけではなく、国内における内外無差別 や各国の規制・制度間の差の調整が重要な課題領域として急激に台頭している。その中で、 食品の安全問題にかかる規制と自由貿易との関係は、一つ重要な論点となっている。グロ ーバリゼーションの進展の下で国民の健康・安全を守る政策手段として規制の役割への期 待が高まる一方、それが貿易障壁として機能する側面への問題が提起されているからであ る。特に、先進国の基準変更が発展途上国に対する貿易障壁となるリスクは、注目され研 究が蓄積しつつある。本論文は、この課題に取り組むために、日中間の野菜貿易の展開を 分析対象とし、特に日本の食品衛生法における残留農薬等規制のポジティブ・リスト制度へ の変更の効果を明らかにすることを通じて、食品の安全基準にかかる規制と自由貿易との 関係を巡る議論に貢献を行うことを目的としている。 第1章では、本論文の課題設定の論拠を展開している。近年の自由貿易推進装置となっ ている自由貿易協定(FTA)の動向から、第一に、自由貿易政策推進上の焦点が、国境での 制限措置(伝統的貿易障壁)から制度的障壁つまり国内の制度・規制の内外差異の是正・調 整の問題(非伝統的貿易障壁)に移行していること、第二に農産品貿易が貿易自由化推進.

(2) においてセンシティブな分野であり続けている点を確認している。そして、その2点が交 錯・重複する問題として農産品貿易における自由貿易と安全基準の問題に関わるリスクを 整理し、グローバリゼーションの進展にともない、その重要性が高まっていることを明ら かにしている。グローバリゼーションの進展がもたらす生産(流通)者と消費者間の情報 の非対称性によるリスクの拡大に対応して市場を補完し、自由貿易の進展を支えるはずの 安全基準に関する制度が、逆に貿易障壁として機能する点に問題が所在する点をとらえて いる。 第2章では、日中それぞれにおける農産品貿易の位置づけと日中間農産品貿易の展開を 整理し、そこでの自由貿易推進上の政策課題(貿易摩擦)と貿易動向に影響を及ぼした事 象を抽出している。その検討に基づいて、日中間の野菜貿易が自由貿易と食品の安全性と の関係を検討する上で好適な研究対象であることを明らかにしている。これらは双方にと り貿易相手先としての依存度が高く、また貿易摩擦や食品安全事件の対象ともなった分野 であるからである。 第3章では、具体的にしいたけ、冷凍ほうれん草、ねぎの日本の中国からの輸入を事例 として取り上げ、伝統的貿易制限手段であるセーフガードと非伝統的貿易障壁としての可 能性をもつポジティブリスト制度への移行、そして日中間で発生した食品安全問題に係る 事象の効果を検証している。検証結果として、セーフガードの影響はねぎにおいてのみ確 認できること、ポジティブリスト制度がすべての3品目において貿易に影響を及ぼしてい たことを明らかにしている。ただし後者については、しいたけ、ねぎに対して負の効果を、 冷凍ほうれん草に対しては正の効果を有している。この相反する結果の原因について分析 を行い、ポジティブリスト制度の貿易障壁としての性格を明らかにしている。すなわち、 ポジティブリスト制度が、生産・流通過程での高い管理技術水準を必要とし、輸出者がそれ に対応する資源をもたない場合には貿易制限的効果を持つこと、他方で輸出側が対応する 能力を持つ場合には、競争他国に対する競争優位として機能する点を明らかにしている。 第4章では、第3章の分析結果を踏まえ、日中両国政府・企業の対応事例を検討し、自由 貿易と安全基準の問題を検討している。まず日本のポジティブリスト制度の移行過程を検 証し、その政策目的の合理性を確認するとともに、他方でそれへの対応が海外生産者にと っては障壁として機能する可能性を示している。またポジティブリスト制度導入後の中国 側の安全管理面での対策を検証し、技術・資金・人材という対応のための資源の不足を指摘 している。その点は、日本の輸入企業の調査においても確認されている。自由貿易と食品 の安全規制の関係を調整し、自由貿易を進展させるためには、何らかの資源の移転(投資、 生産管理技術の移転等)が課題となっていることが示されている。 第5章では論文の総括として、自由貿易と安全基準の問題に関して、日中間農産品貿易 分野での政策課題解決の課題について検討を行っている。国民の安全を守るという政策目 的と矛盾しない形で、品目区分等のより詳細な設定を行い厳密な運用を行うことで貿易障 壁としての機能を緩和する可能性や、輸出国側の生産・流通管理技術改善のための協力と連.

(3) 携の方向性について示している。 Ⅲ 論文の評価 本論文の貢献は、以下のようなものである。 まず、自由貿易と安全基準の問題にかかる論点へのアプローチとして、日中間の野菜貿 易を取り上げ、品目を複数取り上げ具体的な比較検証を行った点があげられる。貿易にお ける制度的障壁の問題は、近年研究課題として注目を集めており、実証研究の蓄積も進ん でいる。ただそれらは一般均衡分析による分野別の研究、あるいは単品の研究であり、分 析に品目毎の特徴・性格を反映する点では限界がある。本論文は、実証方法としては単純な 手法を採用しているが、それによって品目間の比較が可能となっており、この点は本論文 の優位点といえる。日中間の野菜貿易において、伝統的貿易制限政策であるセーフガード と、ポジティブリスト制度という安全基準の貿易制限効果を、品目レベルで検証し差異を 明らかすることに成功している。 特にポジティブリスト制度という安全基準の貿易制限効果について、品目間の対照的な 効果を明らかにしたことは本論文の貢献といえる。そして、日中間野菜貿易という分野内 において、ポジティブリスト制度が、しいたけ、ねぎに対して負の効果を、冷凍ほうれん 草に対しては正の効果をもつという、相反する結果の原因について、政府の政策対応、輸 入業者の調査を踏まえて、丁寧に品目毎のレベルでの比較分析を行ったことは優れた特徴 となっている。 さらに、日本のポジティブリスト制度の効果に関する品目間の差異の分析を通じて、先 進国が設定する安全基準が、それに対応する資源をもたない輸出者、途上国に対して貿易 制限的効果を持つこと、またそれが障壁とならないために技術移転等の協力・連携枠組みが 必要性である点を明確に示した点をあげることができる。 Ⅳ.結論 自由貿易推進のフロンティアが農産品貿易、また制度的障壁の調整へと展開している今 日、農産品貿易分野における自由貿易と食の安全基準との関係という問題は重要性を高め ている。国民の健康安全のリスク拡大に対処するための政策が、自由貿易を阻害する効果 をもたらすことが問題なっており、その間の調整をいかに進めるかという問題は、自由貿 易のあり方を検討する重要な論点である。特に先進国と途上国間の貿易においては、その 賦存資源の格差のゆえにより重要な問題となる。 本論文は、日中間の農産品貿易(野菜貿易)の展開上における日本のポジティブリスト 制度への移行の効果を、品目間の比較また他の貿易制限措置との比較を通じて明らかにし ており、上記の問題に対しての貢献を果たしている。この点で博士論文として優れた水準 にあるといえる。合格(優)と評価する。.

(4)

参照

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