分析研究科 山崎 正夫
食塩電解で生じる
ダイオキシン類について
ダイオキシン類
ポリ塩化ジベンゾ-
p
-ジオキシン PCDDs(異性体数:75種; 毒性有:7種)
ポリ塩化ジベンゾフラン PCDFs
(異性体数:135種; 毒性有:10種) コプラナーポリ塩化ビフェニル
Co-PCBs (毒性有:12種) (PCB異性体数:209種)
2,3,7,8-T 4 CDD 毒性等量濃度(TEQ)=各異性体の濃度を最も
毒性の強い 2,3,7,8-T4CDD の 濃度に換算し、合計した値
O C
H
Cl Cl
O
O Cl
Cl Cl
H H
1 2 4 3 7 6
8 9
5
Cl
Cl C
H C
H
Cl
Cl
ジベンゾパラジオキシンの基本構造
(1~4及び6~9番の炭素 に最大8個の塩素が水素と 置換できる)
異性体と同族体
O
O 1
3 2
6 4 7 8
9
異性体
置換基の数は同 じで、置換位置 のみが異なるも の同士
一塩素体の例
(異性体数:2)
O O
1
3 2
6 4 7 8
9
1-M1CDD
O
O 1
3 2
6 4 7 8
9
2-M1CDD
2,3,7,8-T4CDD O
O
1
3 2
4 6
7
8 9
1,3,6,8-T4CDD O
O
1
3 2
4 6
7
8 9
四塩素体の例(異性体数:22)
この他、20種類
:塩素原子
同族体
置換基の位置に はとらわれず総 数が同じグルー プ全体を指す
ダイオキシン類の起源
●
燃焼過程・・・廃棄物焼却
・・・金属精錬
● PCB
製品・・・高圧トランス
・・・コンデンサー
●
農薬製造時の不純物・・・
PCP
、CNP
など●
塩素処理過程・・・過去の化学工業など
発生源により、ダイオキシン類の組成パターンが異なる
前駆体(ペンタクロロフェノール)からの生成例
ペンタクロロフェノール(PCP)
オクタクロロジベンゾ-
p
-ジオキシン(OCDD)H Cl
H Cl
塩化水素
H
O
Cl Cl
Cl
Cl
Cl
H O
Cl Cl
Cl Cl
Cl
O
O Cl
Cl
Cl Cl
Cl Cl
Cl Cl
PCPは1950年代に使われ 始め、1990年に農薬登録 が失効している。
東京都におけるダイオキシン類排出量の推移
ダイオキシン類対策特別措置法
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7
0 10 20 30 40 50 60 70
H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20
環境濃度(pg-TEQ/m
3
)大気への排出量(g-TEQ/年)
年度
大気への排出量 環境濃度(平均値)
局地的なダイオキシン類汚染の存在
●大局的にはダイオキシン類問題は終息
●土壌、底質については過去の汚染が残存
(都における事例)
食塩電解施設跡地において、PCDFsを 主成分とする土壌汚染が確認されている
●燃焼、農薬、塩素処理では説明困難
食塩電解装置の概要
陽極での反応
2Cl - → Cl 2 + 2e -
陰極での反応
2H 2 O + 2e - → H 2 + 2OH -
陽極溶液槽
( NaCl
水溶液)Cl 2
ガスNaCl
Na +
Cl -
陰極溶液槽
( NaOH
水溶液、最初は水)
H 2
ガスNaOH H 2 O
H + OH -
Na +
陽イオン交換膜
陽極
+
陰極
a-
OH - Na +
Cl -
Na +
2Cl -
Cl 2 2OH -
H 2 2H 2 O
V Cl 2
電極の種類 PCDFsの生成 黒鉛電極 ○
チタン電極 ×
食塩電解によるダイオキシンが生成の疑問
●食塩電解における薬剤は「食塩」だけである。
●電解で反応活性な塩素が生成するが、相手が
いないのにダイオキシンが生成するのか。●生成するのは大部分がPCDFsであり、パル
プ漂白などで知られている塩素反応パターン (PCDDs、PCDFs共に生成)と異なる。●黒鉛電極に含まれている「タールピッチ」が
最も疑われる。●製法・性質
タールピッチはコールタールの蒸留で得られる 無数の縮合多環芳香族(多数のベンゼン環が蜂の 巣状に結合した有機化合物)の混合物
・炭素の含有割合が高い→黒鉛と馴染みがよい
・常温で固く高温で柔軟→加工しやすい
・錆びない
・水をはじく
・導電性を持つ
●用途
タールピッチは炭素材、粘結剤、防水、防錆剤 等に使用されている
黒鉛電極に使われるタールピッチ
黒鉛電極を用いた食塩電解時における陽極溶液の変化
電解前
1日経過後 8日経過後
食塩電解に用いた黒鉛電極(左:実験前、右:実験後)
黒鉛電極を用いた食塩電解装置の外観
実験に使用したタールピッチ
実験前
80℃の水溶液中
食塩溶液に添加タールピッチを分散させた電解実験
電解実験の条件
陽極電極:チタン製電極
陽極溶液:飽和食塩水+タールピッチ粉末 電解時間:7日間
ダイオキシン類分析:陽極溶液を適宜採取して実施 その他:随時、塩化ナトリウムや水を補充
タールピッチ共存下での食塩水の電解処理における PCDFs同族体組成比率の変化
0 10 20 30 40 50 60 70
同族体組成比率/%
電解時間
M1CDF D2CDF T3CDF T4CDF P5CDF H6CDF H7CDF OCDF
1塩素体2塩素体
3塩素体
4塩素体
タールピッチ共存下での食塩水電解処理における PCDFs同族体ごとの主な異性体比率
単位:%
同族体(異性体数) 塩素置換位置 5min 60min 300min 1day 2day 4day 7day
1塩素体(4) 2- 78 76 78 73 72 70 65
2塩素体(16) 2,8- 42 43 49 50 52 51 47
1,2,8- 22 28 30 35 34 36 38
2,3,8-* 37 46 43 43 41 37 36
2,3,7,8- 41 19 24 30 32 31 32
1,2,7,8- 24 18 14 21 20 22 24
1,2,3,7,8-** - - 43 37 41 40 40
2,3,4,7,8- - - 14 10 15 16 17
1,2,3,4,7,8-*** - - 44 50 48 47 46
1,2,3,6,7,8- - - 15 8 7 8 9
* 今回のGC条件では、2,3,4-異性体と分離せず、合計値で表した
** 今回のGC条件では、1,2,3,4,8-異性体と分離せず、合計値で表した
*** 今回のGC条件では、1,2,3,4,7,9-異性体と分離せず、合計値で表した
3塩素体(25)
4塩素体(38)
5塩素体(28)
6塩素体(16)
ジベンゾフラン共存下での
食塩水の電解処理におけるPCDFsの生成過程
O
2 3 4 6
1
7 8
9
O
2 3 4 6
1
7 8
9
O
2 3 4 6
1
7 8
9
O
2 3 4 6
1
7 8
9
O
2 3 4 6
1
7 8
9
O
2 3 4 6
1
7 8
9
O
2 3 4 6
1
7 8
9
O
2 3 4 6
1
7 8
9
:塩素
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
3 0m i n 6 0m i n 9 0m i n 1 20 m in 2 40 m in 4 80 m in 2 da y 4 da y 5 da y
組成比率
電解時間
Total Co- PCBs Total PCDFs Total PCDDs
★
PCDDs、PCDFs、Co-PCBsは、ほぼ同じ比率で生成している前駆物質(ビフェニル、ジベンゾフラン、ジベンゾ-
p
-ジオキシン) 共存下での食塩電解処理における各化合物群の比率O O
H H H H
H H
H H O
H H
H H
H
H H H
H
H H H
H H H
H H H
ビフェニル
ジベンゾフラン
ジベンゾ-
p
-ジオキシンジベンゾフラン共存下での食塩水の
電解処理におけるPCDFsの同族体組成変化
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
3 0m i n 6 0m i n 9 0m i n 1 20 m in 2 40 m in 4 80 m in 2 da y 4 da y 5 da y
同族体比 率
電解時間
O8CDF
H7CDFs
H6CDFs
P5CDFs
T4CDFs
T3CDFs
D2CDFs
M1CDFs
ジベンゾ-
p
-ジオキシン共存下での食塩水の 電解処理におけるPCDDsの同族体組成変化0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
3 0m i n 6 0m i n 9 0m i n 1 20 m in 2 40 m in 4 80 m in 2 da y 4 da y 5 da y
同族体比率
電解時間
O8CDD
H7CDDs
H6CDDs
P5CDDs
T4CDDs
T3CDDs
D2CDDs
M1CDDs
ビフェニル共存下での食塩水の電解処理における Co-PCBsの同族体組成変化
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
3 0 m in 6 0 m in 9 0 m in 1 2 0 m in 2 4 0 m in 4 8 0 m in 2 d a y 4 d a y 5 d a y
同族体比率
電解時間
D10CB
N9CBs
O8CBs
H7CBs
H6CBs
P5CBs
T4CBs
T3CBs
D2CBs
M1CBs
前駆物質共存下での食塩水電解処理における各同族体ごとの 主な異性体の存在比率(異性体/同族体)
単位:%
同族体(異性体数)
塩素置換位置
30min 120min 480min 2day 5day1塩素体(2) 2- 98 99 100 87 100
2,7- 41 55 67 40 71
2,8-* 54 41 27 35 29
1,2,4- 10 9 9 6 2
2,3,7-** 68 69 77 74 95
1,2,8- 9 9 4 3 1
4塩素体(22) 2,3,7,8- 66 51 55 50 76
5塩素体(14) 1,2,3,7,8- 71 49 21 17 34
6塩素体(10) 1,2,3,4,7,8- 100 100 22 14 21
3- 13 13 24 18 19
2- 81 79 43 50 50
2,7- 12 10 11 6 9
2,8- 69 69 81 73 78
1,2,8- 37 33 30 29 28
2,3,8-*** 45 43 45 43 44
2,3,7,8- 32 33 23 20 25
1,2,7,8- 33 34 28 37 28
1,2,3,7,8-**** 25 27 38 32 32
2,3,4,7,8- 16 15 10 8 9
6塩素体(16) 1,2,3,4,7,8-***** 100 37 41 32 33
* 今回のGC条件では、2,3-異性体と分離せず、合計値で表した
** 今回のGC条件では、1,3,9-異性体と分離せず、合計値で表した
*** 今回のGC条件では、2,3,4-異性体と分離せず、合計値で表した
**** 今回のGC条件では、1,2,3,4,8-異性体と分離せず、合計値で表した
***** 今回のGC条件では、1,2,3,4,7,9-異性体と分離せず、合計値で表した
PCDDs
2塩素体(10)
3塩素体(14)
PCDFs
1塩素体(4)
2塩素体(16)
3塩素体(25)
4塩素体(38)
5塩素体(28)
ジベンゾジオキシン共存下での
食塩水の電解処理におけるPCDDsの生成過程
2 3 4 6
1
7 8
9
O O
4 6
2 3 1
7 8
9
O O
2 3 4 6
1
7 8
9
O
O 2
3 4 6
1
7 8
9
O O
4 6
2 3 1
7 8
9
O O
4 6
2 3 1
7 8
9
O O
2 3 4 6
1
7 8
9
O O
:塩素