論文内容要旨 題名 化膿性汗腺炎患者の臨床的特徴
掲載雑誌名 SKIN SURGERY(第28巻 第 2号 2019 年)
専攻名 外科系形成外科学 住永莉華子
論文要旨
序論:化膿性汗腺炎(hidradenitis suppurativa, HS)は腋窩や陰部など の間擦部やアポクリン腺局在部位に好発し, 毛包炎による毛包破壊が付 属器に波及,慢性経過により瘢痕化がさらに毛包閉塞を招き難治性となる 慢性化膿性皮膚病変である. 欧米での有病率は 0.05-4%であり,患者の
30-40%は家族内発症を認める.患者の大半は 30-40代の女性で,長期
にわたり繰り返される排膿や疼痛,醜状のためにQOL が低下し,社会生 活に支障をきたす.さらには喫煙や肥満がリスクファクターであり,低所 得者層ほど有病率が高いことから国家的な社会問題となっている国も多 い.一方,本邦における調査はほとんどなされていない. 今回われわれは,
HSと診断された患者の診療録を元にその臨床的特徴を調べ興味深い知見 を得たため報告する.
方法:2012年 5月から 2017年11月の間に当科および関連施設において HS の診断を満たした日本人患者 46 名を対象に性別,発症年齢,罹患期 間,病変部位,喫煙,肥満度,耳垢,家族歴,重症度を調査した。
結果:34例が男性,初発年齢は平均32.4歳で平均罹患期間は7.6年であ った.肥満者(BMI≧30)は 6 例,40 例が喫煙者,半数が軟耳垢であり,
HSの家族歴を持つものが14例いた.10例において 2部位以上の病変を 認め,病変部位における性差は殿部は男性に,陰部は女性に多かった.
Hurley の重症度分類では軽症 40%,中度 40%,重症 15%であった.外 科的治療を行った症例は軽症例で 20 例中 16 例が切開排膿や病巣切除な ど,重症例では7例中5例が植皮や皮弁形成術を受けていた.
考察及び結論:今回の調査で本邦におけるHSの典型例は痩せ型の中年男 性で殿部や耳介周囲に好発するという結果になった.欧米の報告と異なっ た理由として,女性は鼠径部や外陰部の診察をためらっている可能性があ る.またリスクファクターと言われている喫煙だが欧米では男女同等なの に対し,日本では圧倒的に女性の喫煙率が低いことも性差の結果に関係し ていると考えられる.今回の調査で特筆すべきなのが、耳垢との関連であ
る。耳垢は遺伝学的にアポクリン腺が発達していると軟耳垢となる.半数 の患者が軟耳垢であり、軟耳垢を有する日本人は15%前後であることを考 慮すると,アポクリン腺の数とHS には何らかの関連性があると考えられ る.また問題点としてHS の診断はあいまいであることが挙げられる.「汗 腺炎」という病名ではあるが,アポクリン腺が原因と病理学的に証明でき る症例は少ない.どちらかといえば毛包閉塞性疾患であり acne inversa と呼ぶべきとの意見もある.本邦では慢性膿皮症と診断されている症例が 多く、逆に頭部慢性膿皮症の一型である頭部乳頭状皮膚炎や,集簇性ざ瘡 がHSと診断されている場合も散見される.今後、的確な診断・治療を行 うためには,本邦におけるHS患者の臨床的特徴を明らかにすることが重 要であり,今後全国規模での調査を行っていく必要があると考える.