iii はじめに◀
グローバル化が進む今日の社会において、日本の教育を国際競争に負けな いものへと大きく質的に転換させる必要に迫られている。そのために提案さ れているのが、これまで行われてきたような、知識を一方的に伝えるだけの 授業から、生徒や学生らが主体的に問題を提起してその解決法を見いだして いくアクティブ・ラーニングと呼ばれる教育方法や、学校における授業と家 庭における学習を逆転させた反転授業と呼ばれる教育方法への転換である。
現在、アクティブ・ラーニングや反転授業への転換は、小学校から大学に 至るまで幅広く推し進められており、その一環として、タブレット型端末な どを活用した新たな教育方法の開発が行われている。このような最新の情報 機器を用いた教育法の利点の 1 つは、従来の紙の教科書では不可能であった、
コンピューターグラフィックスやムービーなどの視覚教材の効果的な利用が 可能になったことである。しかも、視覚教材の活用は、とりわけ、科学分野 では大きな教育効果が期待されるとともに、飛躍的に増大しつつある最近の 科学情報を効率よく理解するための手段としても、非常に役立つものになる ことは間違いないであろう。
しかしながら、現実的な問題として、アクティブ・ラーニングや反転授業 を推し進めるための基盤となる教材の電子化や、それらの教材を効果的に活 用した新たな教育方法の開発などは、諸外国と比べて大きく立ち遅れた状態 にある。その原因の 1 つとして、経済的な問題や技術的な問題がある。たと えば、電子教材を作成するために必要な市販の設備やソフトを準備するため には相当な経費が必要である。しかも、それらのソフトを自由に操作するに はかなりの技術も必要である。そのために、個人的なレベルで電子教材を作
はじめに
iv
▶はじめに
成し、それを教育に活用しようという取り組みは簡単なものではない。残念 なのは、それだけの理由で、多くの教育者たちが独自で電子教材を作成して それを新たな教育に活用しようという意欲を失ってしまうことである。
そこで、本書では、少しの知識と意欲さえあれば、誰もが実用的な電子教 材を簡単に作成して、それらを自らの教育に効果的に活用できる経済的な方 法を紹介する。ここで提案するのは、世界中で公開されている高機能なフリー ソフトを組み合わせて、実用的な電子教材を作成する方法である。敢えて、
フリーソフトを利用した方法を提案したのは、経済的な問題点と技術的な問 題点の両方を解決するためである。また、本書においては、主に、生命科学 の分野の教育に用いられる電子教材の作成について紹介しているが、その基 本的な技術や作成された教材の活用法などは、幅広い教育分野の電子教材作 りにも共通して参考になると思われる。
最後に、医学部の解剖学教育用の電子教材作成と、それらを用いた教育方 法の開発を著者と共に進めている同僚(埼玉医科大学・解剖学科)の猪股玲 子助手と亀澤 一助手の協力に感謝します。そして、本書の企画から出版に 至るまで、いろいろとお世話になった裳華房の野田昌宏氏に厚く御礼を申し 上げます。
* 本書で紹介した電子教材作成の技術開発の一部については、平成24年度の埼玉医 科大学学内グラント24‐B-1-15による助成(代表:猪股)と、平成25年度の医学教育 振興財団による助成(代表:駒崎)を受けた。
* KGT社( 現 在 は サ イ バ ネ ッ ト 社 ) か ら ボ リ ュ ー ム レ ン ダ リ ン グ ソ フ ト の
RealINTAGEをお借りした。有限会社サイネン・システムが公開しているフリーソフ
トのSSC DICOM 3D Viewerの機能の改良をお願いした。
以上、ここに謝意を表する。