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令和元年 若狭研究室夏の研究会 【第 33 回】

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(1)

令和元年

若狭研究室夏の研究会

【第 33 回】

2019

9

7

日・8 日

群馬県 渋川市 ホテル天坊

(2)

参加者 若狭研究室

若狭研OB・OG 若狭 雅信(教授)

前山 智明 矢後 友暁 (助教) 岩見 法之 西村 晨平 (M2) 石川 若松 郁佳 (M2) 長谷川 貴一 篠原 優太 (M1) 知々田 優介 (M1) 細田 敦也 (M1) 田代 愛実 (B4) 原田 楠子 (B4) 松岡 萌香 (B4)

(3)

発表プログラム

1. イオン液体中での光誘起電子移動反応に対する磁場効果

西村 晨平

2. 三重項増感反応によるゲルミレンの発生に関する検討

若松 郁佳

3. トリプレットフュージョンの10 Tまでの磁場効果測定の検討

篠原 優太

4. ミセル中DPHの過渡吸収測定

知々田 優介

5. ミセル水溶液中でのベンゾフェノンの磁場効果の温度依存性

細田 敦也

6. 色素吸着したDPAによるトリプレットフュージョンの観測

田代 愛実

7. イオン液体中での低磁場効果の測定

原田 楠子

8. 増感剤によるアップコンバージョンの観測

松岡 萌香

(4)

2018.9.7~8 夏の研究会

イオン液体中での光誘起電子移動反応に対する磁場効果

M2 西村晨平

【序論】

イオン液体(ILs)とは常温で液体状態の塩である。初めて合成されたイオン液 体は空気中で不安定であったが、1990 年代初頭には空気や水に安定なイオン液 体が報告され、研究が盛んになった。イオン液体には不揮発性や不燃性、高粘 度といった特徴をもっている。また、ラジカル対に磁場を印加すると、スピン 変換速度が変化して散逸ラジカル収量に影響を及ぼす。この効果を磁場効果と いい、ラジカル対の周辺環境を考察する要因になりえるものである。

当研究室では、土田によってカチオン構造のアルキル鎖の長さによって異な るイオン液体を粘度に磁場効果の大きさをプロットすると粘度の大きさに対し て磁場効果の大きさが比例的に大きくなることが分かった。しかし、この実験 結果で得られた磁場効果はBenzophenone(BP)1,4-Diazabicyclo[2.2.2]octane

(DABCO)による電子移動反応によるものであった。そこで今回はHoffmann

論文に記載されていたBPとの電子移動反応の際にドナーとしてDABCOの代 わりに成りえるTriethylAmine(TEA)1-Methyl pyrrolidine(MeP)を用いた。測定 装置には過渡吸収測定装置を使用して、磁場効果が発現しているか確認を行っ た。今回は各ドナーがBPと、どのような反応が起こっているかを予想してい く。

TriethylAmine(TEA) 1-Methyl pyrrolidine(MeP)

【実験】

イオン液体DTMA TFSAを合成し、ヘキサンと水で洗浄したのちに、ディフュ ージョンポンプによる真空乾燥を行った。TEAとMePは共にTMPA、TMOA には溶解しなかったため今回の実験では溶媒にDTMA TFSAを用いた。BP

10mM、TEA,MeP 100mMを加えて溶液調製し、過渡吸収測定を行った。励起光

にはNd:YAGレーザーの第三高調波(355nm)を使用し、検出光源にはXeフラッ

シュランプを使用した。また、電磁石により磁場印加を行った。

(5)

【結果と考察】

Figure1TEABPの過度吸収スペクトルを示した。グラフから約530nm

にピークが確認できており、DABCOの際に存在する690nmにピークは確認で きなかった。これより、BPアニオンラジカルは確認できないため、電子移動 反応が起こっていないことが確認できる。そのため三重項のベンゾフェノンと TEAが水素引き抜き反応を行っていると予想することができる。

Figure2MePBPの過度吸収スペクトルを示した。グラフから550nm

720nmにピークが確認できており、BPアニオンラジカルとBPケチルラジカル

の両方が存在していると予想できる。そのため、MePの際は電子移動反応と水 素引き抜き反応の両方が進行していると予想できる。ただし、Absorbanceが非 常に小さくしか取れていないため後日、MePに関しては再度実験を行う。

Figure1 TEA(100mM)BP(10mM)DTMA TFSA溶液の過渡吸収スペクトル Figure2 MeP(100mM)BP(10mM)DTMA TFSA溶液の過渡吸収スペクトル

また、スペクトルで得られたピークの波長での磁場効果についての検討は当日 に行う。

【参考文献】

(1)土田暉 修士論文(2019)

(2)N.Hoffmann and H.Gorner, Phys.Chem 2014,383,451-455

0 0.05 0.1 0.15

400 500 600 700

Absorbance

Wavelength (nm) 30(ns) 40(ns) 50 (ns) 60(ns) 90(ns) 400(ns)

0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05

400 500 600 700 800

Absorbance

wavelength(nm) 240ns 320ns 400ns 480 ns 720 ns

(6)

令和元年度 若狭研究室 夏の研究会 (2019.9.7)

三重項増感反応によるゲルミレンの発生に関する検討

M2 若松 郁佳

【序論】14族元素の一つであるゲルマニウムは、

最も一般的な同族元素である炭素と異なる化学 的性質を持つことが知られている。これらの低 配位化合物は非常に不安定で、例えば2 価炭素 化学種のカルベンは非常に反応活性なことで知 られている。カルベンには一重項と三重項の 2 つの電子スピン状態が存在する。それぞれのス

ピン状態で反応挙動は異なり、これまで盛んに研究が行われてきた。ゲルマニウム類縁体 であるゲルミレンも同様で、これまで、直接的な光照射による一重項ゲルミレンの発生お よび反応性に関しては報告がされている1)。一方、光によるエネルギー移動反応を介した 三重項ゲルミレン発生の報告例は未だない。そこで本研究では、図 1 の三重項増感反応

による、3,4-ジメチル-1,1-ジフェニルゲルマシクロペンテン(1)からの三重項ゲルミレン発

生を目的として実験を行った。

これまで、既報にあるような無極性溶媒中での直接光励起による一重項ゲルミレン発 1)を再現した。また、極性溶媒中での一重項ゲルミレン発生および三重項増感は困難で あることを確認している。今回、三重項増感剤(Sens)としてチオキサントン(TX)を用いた 無極性溶媒中での三重項増感について、過渡吸収測定とその解析、および定常光照射によ る生成物分析実験を行ったので、報告する。

【実験】Nd:YAGレーザー第三高調波(355 nm)を励起光、キセノンフラッシュランプを検

出光とした過渡吸収測定装置を使用して、1TXが共存したシクロヘキサン溶液中での 三重項増感を行った。次に、捕捉剤として四塩化炭素(CCl4)を添加した同試料に、キセノ ンアークランプ(USHIO, UXL-500D)を光源とした定常光照射装置を用いて連続光を照射

した後、GC/MS 測定により最終生成物を確認した。励起光源と試料の間には分光器

(RITSU, MC-10N)をはさみ、励起光を374 nmに設定した。

【結果と考察】三重項増感を行う前段階として、Sens である TX のみでの過渡吸収測定 を行った結果、3TX*は無極性溶媒とは反応しづらく、エネルギー移動が可能と判断した (2)。そこで、1を添加した場合での過渡吸収測定を行った結果、650 nmおよび430 nm

1

1.三重項増感反応によるゲルミレンの発生

(7)

に現れる成分の寿命が変化したため( 3)、それぞれ の減衰曲線の解析を行った。まず、3TX*による650 nm の吸収について、1の添加により減衰速度が増加した ことから、3TX*1がエネルギー移動などの何らかの 反応を起こしていると言える。減衰速度の濃度依存よ り、反応速度定数は6.79×108 M-1s-1と算出した。次に、

430 nmでの減衰曲線について解析を行った(4)TX のみの場合は1成分 2次式でfittingできたため、TX が溶媒と水素引き抜き反応を起こして生じた TX チルラジカルによる吸収と帰属した。一方、1を添加 すると減衰曲線の形状が変化し、これを1 成分 1 式でfitting した結果、1.52 µsという寿命をもつ新た な過渡種の発生を確認した。この新たな過渡種は三重 項増感反応により生じたゲルミレンであると予想す る。これを直接光励起による一重項ゲルミレンの減衰 曲線(500 nm)と比較すると、最大吸収波長が 430 nm であり異なること、一重項ゲルミレン(2 次式 fitting) とは異なり1次式でfittingできることから、スピン 状態の異なる三重項ゲルミレンが発生していると予 想する。

続いて、発生した過渡種を同定するために、定常 光照射装置を用いた生成物分析を行った。捕捉剤と してCCl4を添加した同試料に連続光を照射した後、

GC/MS測定を行い、最終生成物を確認した結果、ジ

クロロジフェニルゲルマンとクロロジフェニルゲル マンという 2 つのゲルミレン捕捉生成物が得られ

た。このことから、三重項増感によるゲルミレンの発生を確認できた。しかし、得られた 2 つの捕捉生成物は既報にあるような一重項ゲルミレンの捕捉生成物と一致するため 2) 三重項増感反応により得られたゲルミレンが一重項か三重項かは区別できなかった。

【参考文献】

1) William, J. L.; Cameron, R. H; and Ignacio, V. B. J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 16105-16116.

2) Lawrence, A. H.; William, J. L. Can. J. Chem. 2011, 89, 241–255.

3.シクロヘキサン溶液中での1 (11.7 mM)と

TX (0.777 mM)の過渡吸収スペクトル

2.シクロヘキサン溶液中での

TX (1.04 mM)の過渡吸収スペクトル

4.430 nmにおける減衰曲線の比較

(8)

2019 夏の研究会 トリプレットフュージョンの 10 T までの磁場効果測定の検討

M1 篠原優太

【Abstract】

Triplet fusion (TF) is photochemical process that one singlet exciton (S1) is generated from two triplet excitons (T1). TF is used for photon upconversion. But the mechanism of TF has not been known clearly yet. Therefore, we study magnetic field effect of TF to understand the mechanism of TF. In this study, Anthracene crystal were used as TF material. When the crystal is irradiated with light having a wavelength corresponding to the energy of the excited triplet state, ST absorption occurs and T1 is generated. Then TF occurs and fluorescence is emitted.

We observe the change in intensity of this fluorescence due to the magnetic field. The magnetic field effect of TF up to 10 T has not been measured yet. We examined the excitation light source to measure this effect up to 10 T.

【序論】

トリプレットフュージョン(TF)とは二つの三重項励起子(T1)から一つの一重項励起

子(S1)が生成する光化学過程である。TFは光子のアップコンバージョンに利用されて

いるが、TFの機構はまだ解明されていない。TFによって生成したS1が基底一重項状 態(S0)に戻るときに発する蛍光の強度は磁場によって変化する。この磁場効果の観測 と解析することで、TFの機構の解明につながる可能性があり、私たちは10 Tまでの 磁場効果の観測を目指している。

本研究では、TF の磁場効果測定にアントラセン結晶を用いた。結晶に励起三重項 状態のエネルギーに相当する波長の光を照射すると、本来は禁制だがわずかに ST 吸 収を起こしてT1が生成してTFが起こり、非常に弱いながら蛍光が放出される。この 蛍光の磁場による強度の変化を磁場効果として観測した。蛍光強度は低磁場で増加し 高磁場で減少する。すでに2 Tまでのアントラセンの TFの磁場効果は測定されてい るが[1]、まだ10 TまでのTFの磁場効果は測定されていない。超伝導磁石を用いて10 TまでのTF磁場効果の測定を目指して、装置の検討を行った。

【実験】

TFの磁場効果測定にはアントラセン結晶を用いた。アントラセン結晶の蛍光は400

~500 nm の間にピークが存在する。よって観測波長は 400~500 nm に設定した。励 起 光 源 は He-Ne レ ー ザ ー(melles griot, 05-LHP-151, 出 力 5 mW, 632.8 nm)LED(thorlabs, M660L4, 最大出力3120 mW 660 nm)を用いた。まず、励起光のスペ クトルを測定し、測定を阻害する波長の光が含まれていないか調べた。また、TF の 1.6 Tまでの磁場効果や0磁場の時のTFによって発せられる蛍光の約1時間の強度 変化を測定し、どちらの光源の強度が安定して測定に適しているか検討した。励起光 を結晶に照射する際、He-Ne レーザーは直接照射し、LED は光ファイバーで光を集 めて照射した。磁場印加には電磁石を使用した。

(9)

【結果と考察】

Fig.1He-NeレーザーとLED400~500 nmの間のスペクトルを示す。2つのス ペクトルを比較するとHe-Neレーザーには複数のピークが現れた。アントラセン結晶 の TF の磁場効果を測定する際の観測波長は 400~500 nm に設定しているため、He- Ne レーザーを使用するとこの波長の光が測定の妨げになる可能性がある。また、ア ントラセンの蛍光の波長と重なる可能性もある。LED の方には 400~500 nm 間にピ ークは見られなかった。このため LED ではフィルター等で光を遮らずに測定できる ようになる。従って、観測の妨げになる光を発していないという点で LED の方が測 定に適していると言える。

Fig.2Fig.3He-NeレーザーとLEDを用い て同条件で測定した TF の磁場効果の 0-1.6 T(up)

1.6 -0 T(down)で測定したものをそれぞれ示す。

縦軸のR(B)はB Tの時の蛍光強度を0 Tでの蛍光

強度で割ったものである。He-Ne レーザーでの測 定では、測定結果にばらつきが確認された。特に

1.5 T 付近で大きくばらついていることが分かっ

た。LEDでの測定ではレーザーでの測定よりも測 定のばらつきはほとんどなかった。また、He-Neレ ーザーを励起光源として用いた時に、零磁場での TFによる蛍光強度変化を測定したところ、1時間 で約10 %程変化していた。LEDでは1時間で0.4 % の減少が見られた。従って測定がばらつく原因と しては、He-Ne レーザーの出力の不安定さが可能 性として考えられる。また、He-Neレーザーの測定では

1.5 T 付近で強度が大きく変化することから、装置にも磁場が影響している可能性が

ある。このことから He-Neレーザーよりも LEDの方が、安定性が高いので測定に適 していると言える。これらの結果から 10 TまでのTF磁場効果測定には LEDの方が 励起光源として適していると考えた。

[1]R. C. Johnson, R. E. Merrifield, P. Avakian, R. B. Flippen. Phys. Rev. Lett. 19, 285 (1967) 0

50 100

400 450 500

intensity [a.u.]

Wavelength [nm]

Fig.1 He-Neレーザー(左)とLED(右)の400-500 nm間の放出光スペクトル

Fig.2 He-NeレーザーでのTF磁場効果

Fig.3 LEDでのTF磁場効果 0.7

0.8 0.9 1

0 0.5 1 1.5

R(B) [a.u.]

磁場[T]

測定1 up 測定1 down 測定2 up 測定2 down 測定3 up 測定3 down

0.7 0.8 0.9 1

0 0.5 1 1.5

R(B) [a.u.]

磁場[T]

測定1 up 測定1 down 測定2 up 測定2 down 測定3 up 測定3 down

0 5 10

400 450 500

intensity [a.u.]

Wavelength [nm]

(10)

2019.09.07夏の研究会

ミセル中

DPH

の過渡吸収測定

M1知々田 優介

【序論】

DPHは右図のような構造式で表され、当研究室でシングレッ トフィッションと呼ばれる光反応を起こすことで研究されて います。シングレットフィッション(SF)とは、一重項励起子 が隣接する基底状態の分子にエネルギーを受け渡し

二つの三重項励起子になる反応過程であり、ショックレー

クワイサー限界を超える可能性がある多重項励起子生成過程として注目されています。

また当研究室の先行研究では固体のDPHの蛍光は磁場依存性を持ち、磁場効果を発現す ることがわかっています。そこで本研究では、DPHをミセル中に溶かし、過渡吸収測定を 行いました。

【実験】

DPH 0.12mmolをトリトン100(オクチルフェノールエトキシレート)0.015mmolとイオン交

換水50mlに混ぜた後に、スターラーで撹拌させて1ヶ月静置させた。その後溶液の過渡 吸収測定を行った。励起光にはNd:YAG レーザーの第三高調波(355 nm)を使用し、検出光 源にはXeフラッシュランプを使用した。また、通常の過渡吸収セルでの測定は試料の劣 化が激しかったために、試料を再調整してフロウでの実験を行った。この時、光の散乱を 防ぐため、試料の懸濁を取ろうとより薄いDPHの濃度で実験を行ったが、試料が懸濁し ない場合は過渡吸収の信号を見つけることができなかった。DPH 0.3mmol、トリトン100

0.15mmolと水400mlを混ぜてフロウで過渡吸収測定を行った。レーザーは同様の条件で測

定を行ったが吸光度を大きくするためにレーザーパワーを上昇させた。

【結果と考察】

右図が過渡吸収セルにお いての過渡吸収測定のス ペクトルである。どちら の吸収もμs程度の寿命 があるが、ヘキサン系で DPHの過渡吸収結果 と比べると一重項特性の 吸収の寿命が大幅に伸び ている。詳細な議論は当 日に行う。

DPH(1,6-Diphenyl-1,3,5hexatriene)

0 0.05 0.1 0.15 0.2

400 500 600

吸光度

波長(nm)

10μ 20μ 30μ 50μ 70μ

(11)

2019.09.07夏の研究会

下図がそれぞれの吸収極大でのdecayグラフである。(横軸:μs,縦軸吸光度)

また、右図がフロウで 過渡吸収を行いフルス ケール400μ秒に変え て行った過渡吸収スペ クトルである。

前図と同様に横軸が波 長で縦軸が吸光度を表 している。実験系の蛍 光寿命の再現が行え ず、酸素による消光が 行われた可能性があ る。当日decayデータ を交えた考察を行う。

【参考文献】

(1) Yoichi Murakami, Hitomi Kikuchi,and Akio Kawai.Kinetics of Photon Upconversion in Ioni Molecules.J.Phys.Chem.B2013,117,2487-2494

(2) C. Carnero Ruiz,* J. A. Molina-Bol ́ıvar, and J. Aguiar Thermodynamic and Structural Studies of Triton X-100 Micelles in Ethylene Glycol-Water Mixed Solvents Received April 9, 2001. In Final Form: July 23, 2001

y = 0.1581e-0.018x R² = 0.9886

0 0.05 0.1 0.15 0.2

0 20 40 60 80

吸光度

時間(μs) 0

0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07

0 20 40 60 80

吸光度

時間(㎲)

0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35

400 450 500 550 600

吸光度

波長(nm)

1μs 5μs 10μs 20μs 50μs 100μs 200μ

(12)

2019年夏の研究会

ミセル水溶液中でのベンゾフェノンの磁場効果の温度依存性

M1細田敦也

【序論】一般的な同位体濃縮は質量差に基づく性質の差を利用するため,重原子では濃縮が 困難になる.そこで核スピンの違い(磁気同位体効果)を用いた同位体濃縮法が研究されてき .その中で収量検出磁気共鳴(RYDMR)の原理を応用した,光反応で生じた三重項ラジカル 対に磁場とマイクロ波を用いてスピン変換速度を選択的に制御するという手法では,片方の 同位体のみを準位選択的に制御できることが知られている(1),反応最終生成物に対する同 位体濃縮は報告されていない.本研究室

では水野,岩見らにより本反応系(Fig.1) での同位体濃縮の研究(2),(3)が行われて おり,再結合生成物の単離と原理的に本 反応系により同位体濃縮が可能である ことが報告されているが,実際に同位体 濃縮された生成物の単離には至ってい ない.

磁場効果が大きくなるような反応条件 の探索を目的として,Tween20ミセル水溶

液中でのBPの水素引き抜き反応の磁場効果の温度依存性及び濃度依存性の測定を行った ので報告する.

【実験】

BP 10 mMのミセル水溶液(Tween20)をフローさせながら磁場を印加し,過渡吸収測定を行

った.励起光にはNd-YAGレーザーの第三高調波(355nm)を使用し,検出光源にはXeフラッ シュランプを使用した.

温度依存性の測定

温度は10℃~35℃の6点で測定した.

濃度依存性の測定

30,60,90 mMTween 20 水溶液を用いた.

【結果と考察】BPTween20 ミセル水溶液中の磁場効果測定では10℃~35℃の温度範囲 で温度が上昇するほど磁場効果が大きくなる温度依存性が観測された(Fig.2).この磁場効果 が大きくなる主な原因は0 Tにおけるラジカル対の再結合反応速度の増加によるものであ ると考えられる.

Fig.1 本研究で用いる反応系

(13)

また,磁場効果のミセル濃度依存性がほとんど見られない(Fig.3)のは磁場効果がミセルの サイズや,1ミセル当たりのBPの分子数といった条件に敏感でないことを示している.詳細 は当日議論する.

Fig.2 磁場効果の温度依存性

Fig.3 磁場効果の濃度依存性

【参考文献】

(1) Okazaki,M;Toriyama,K,J.Phys.Chem,99,489(1995) (2)水野智久,修士論文(2018)

(3)岩見法之,修士論文(2011) 1

1.2 1.4 1.6 1.8 2 2.2 2.4

0 0.4 0.8 1.2 1.6

R(B,2.5 μs)

B(T)

10℃

20℃

30℃

1 1.2 1.4 1.6 1.8 2 2.2 2.4

0 0.4 0.8 1.2 1.6

R(B,2.5 μs)

B(T)

30 mM 60 mM 90 mM

(14)

201997日(土) 色素吸着したDPAによるトリプレットフュージョンの観測

田代愛実(B4) 背景・目的

トリプレットフュージョンとは隣接する二つの三重項励起子(T1)から一つの一重項励起子(S1) を生成する過程のことで,このS1から基底一重項状態(S0)に下がる過程で生じる蛍光のことを遅 延蛍光という.トリプレットフュージョンは低エネルギーの励起状態分子から高エネルギーの励 起状態分子が生成され蛍光の発光効率が上がるため,有機ELへの応用が期待されている.1969

Nickelらによって色素吸着したアントラセンからの遅延蛍光が観測されている.1本研究では色

素増感遅延蛍光の観測を目的とする.色素を結晶につけるためアントラセンを再結晶により大き な結晶を得ようと試みたが大きい結晶は得られなかった.一方で9,10-ジフェニルアントラセン

(DPA)の再結晶を行ったところ,アントラセンより大きな結晶が得られ,DPAとアントラセンの励

起光波長は値が近く,構造も似ているためDPAに色素を浸してトリプレットフュージョンの観測 を試みた.

反応Scheme (R:ローダミンb,D:DPA)

実験

実験で使用した試料は9,10-ジフェニルアントラ

セン(DPA),ローダミン-bである.

DPA ローダミンb

DPAの再結晶は溶媒にトルエンを用いた.DPAの結晶を砕き,結晶の表面処理後, NaHSO3含有 ローダミンb溶液に結晶を浸した.この溶液の入った容器をアルミホイルで巻き光が入るのを防 いだ.溶液に浸した結晶を取り出し,吸収スペクトルと蛍光スペクトルの測定により遅延蛍光の観 測をした. 吸収スペクトル測定ではエタノールを溶媒として結晶を溶かした.蛍光スペクトル測 定に分光蛍光光度計FP6600を用いた。遅延蛍光は励起光強度の二乗と蛍光強度に比例すること が知られている2ため,蛍光強度測定を行った.励起光光源として543.5nmHe-Neレーザーを用 い,ローダミンb溶液に浸したDPAに照射した.レーザーの前にY52,結晶から出た光を集光する のにレンズを二枚置き,光ファイバーの前にバンドパスフィルター500を置いた.蛍光強度測定で はレーザーの前にNdフィルターを置き様々な割合で光を弱め,励起光強度と蛍光強度を測定し た.また,He-Neレーザーに遅延蛍光と同じ青い光が混ざっている可能性があるため,蛍光光度計 でレーザーの発光スペクトルを測定した.

(15)

結果・考察

ローダミンb溶液に浸したDPAの結晶は部分的 にピンク色に染まっていた.

UVスペクトルではローダミンb溶液に浸した DPAのスペクトルはDPAの試料のスペクトルと等 しかった.

蛍光スペクトルの結果は以下の通りである.グラ フでは ローダミンbRb,ローダミンbに浸した DPADPA-Rbと略した. Fig. 1, Fig. 2からDPA- RbRbの吸収波長である550nmの波長の励起光 を照射したところ, DPA自体の蛍光(励起光370nm) を発するときのと同様な形のグラフは得られなか った. しかし,DPA-Rb370nmの励起光を照射し たところ,蛍光が見られた.UVスペクトル,蛍光ス ペクトルの結果から,遅延蛍光は見られなかった.

次に蛍光強度測定の結果を示す.Fig. 3 は励起光 強度の二乗と蛍光強度との関係を示している.励起 光強度の二乗に対して蛍光強度をプロットし,近似 曲線を出すと近似曲線は一次関数式となり原点を 通らなかった.この蛍光は遅延蛍光でないだろう.

また,レーザーの発光スペクトルから,445nm付近 の光が混ざっていた.

今後の予定

He-Neレーザーを励起光光源とし,フィルターを

用いた集光をして遅延蛍光の観測をしたが,レーザ ー自体に青い光が混ざっており,強度も安定しなか った.励起光光源をLEDに代用し,フィルターを通

して遅延蛍光の観測を行いたい.また,DPAにローダミンbが浸っていない可能性もあると考えて DPAの大きい結晶の作成もしたい. 1972年にはアントラセンに色素を吸着させ発する遅延蛍光の 磁場依存性が顕著であったことがMerrifieldらによって観測された.3遅延蛍光の観測ができた後, 磁場効果の観測も行いたい.

参考文献

1. B.Nickel, H.Staerk, A.Weller, Chem.Phys.Lett.4,27(1969) 2.井早安正編,”励起三重項状態”,株式会社南江堂(1975)P177

3. R.P.Groff, R.E.Merrifield, A.Suna, andP.Avakian, Phys.Rev.Lett.29,823(1972) -2

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20

400 450 500

Int.

波長(nm)

DPA- Rb 550nm mediu m DPA 370nm low

Fig.2 蛍光スペクトル

-10 40 90 140 190

400 450 500 550 600

Int.

DPA-Rb 550nm DPA-Rb 370nm DPA 370nm low

Fig.1 蛍光スペクトル

y = -0.0156x - 0.0035

-0.035 -0.03 -0.025 -0.02 -0.015 -0.01 -0.005 0

0.00 0.50 1.00 1.50 2.00

蛍光強度(V)

励起光強度の二乗(mW)2

Fig.3 蛍光強度と励起光強度の二乗の関係

(16)

夏の研究会 2019.9.7

イオン液体中での低磁場効果の測定

B4 原田 楠子

【序論】

イオン液体とは常温で液体の塩である. 20世紀初頭に関心 がもたれ始め, 1992年にWilkes等の成果1)によりそれまでの イオン液体の大きな欠点とされていた水や空気の不安定さが 解消され, 安定な常温融解塩として一気に脚光を浴びるよう になった. イオン液体には, 不燃性, 高粘度, 高い熱安定性, 難揮発性, 高デザイン性などの特異的な性質がある2).

ラジカル対に磁場を印加すると,スピン変換速度に変化が見 られ,ラジカル収量が変化する.この効果は磁場効果と呼ばれ る.

当研究室では, 電荷を持ったラジカルイオン対を生じる Benzophenone(BP), 1.4-Diazabicyclo[2.2.2]octane(DABCO)のイ オン液体では, 中性ラジカルと比べ大きな磁場効果が観測さ れており, その原因は溶液-溶媒クーロン相互作用によるもの とされている3). 磁場効果の中でも低磁場効果は負の磁場効 果としてミセルで観測されており, 低磁場効果が顕著に存在 しうる最適条件を模索する研究が行われている4). 本研究で

BPDABCOを溶質として使用して, 低磁場効果をイオン液体で観測し, イオン液体

の特異的性質を利用し, 低磁場効果が顕著に観測できる最適条件を検討することを目的と している. 今回はその前段階として, 低磁場効果をイオン液体で観測実験を行ったので報 告する.

【実験】

イオン液体N,N,N-トリメチル-N-プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホ Figure.1 使用したイオン 液体, 溶質

(17)

ニル)アミド(TMPA TFSA)を合成し, ヘキサンと水で洗浄し, ディフュージョンポンプに よる真空乾燥を行った. N,N,N-トリメチル-N-プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメ タンスルホニル)アミド(TMPA TFSA)にBP 10 mM, DABCO 100 mMTMPA TFSA溶液を 調製し過渡吸収測定を行った. 励起光にはNe:YAG レーザーの第三高調波(355 nm)を使用 し, 検出光源にはXeフラッシュランプを使用した.

【結果・考察】

Figure. 2BP 10 mM, DABCO 100 mM, TMPA溶液に -30 Gから30 Gの低磁場範囲 での磁場効果を示した. また, 波長690 nmで測定した. 690 nmBP DABCOの光誘起電 子移動反応により生じるベン ゾフェノンアニオンラジカル BP・―の吸収である. 縦軸に示 MFE

MFE =𝐴𝑏𝑠(𝐵 𝑇)−𝐴𝑏𝑠(0 𝑇)

𝐴𝑏𝑠(0 𝑇) × 100 (%)

の式で求めた. Figure. 2より15 G~20 G付近に最も低く磁場効果が見られ, 低磁場効果と 考えられる負の磁場効果が観測された.

【今後の予定】

・より精度の高い低磁場効果を観測するため, 今回3回で行った測定を5回などそれ以上 の回数で行う.

【参考文献】

1.J.S.Wilkes,M.J.Zawarottko,J.chem.Soc.,Chem.Commum.,1992,965.

2. イオン液体研究会監修(西川恵子, 大内幸雄, 伊藤敏幸, 大野弘幸, 渡邊正義 著),

“イオン液体の科学・新世代液体への挑戦・”, p1-3, 丸善出版(2012).

3. Yago, Y.Ishii, M.Wakasa, J.Phys. Chem. C 2014, 118, 22356-22367.

4. http://scm2019.tomo.nsc.ru/images/SCM2019Book.pdf p37

Figure. 2 BP(10 mM), DABCO(100 mM), TMPA

溶液690 nmにおける磁場効果

(18)

増感剤によるアップコンバージョンの観測

2019/09/07 B4松岡萌香 [背景・目的]

三重項融合とは,反応物(T1)の総エネルギーが励起一重項(S1)状態と基底一重項(S0)状態よりも大きい時 に起こる.

今回受容体で9,10-ジフェニルアントラセン(DPA)を,増感剤で白金オクタエチルポルフィリン(PtOEP) 使用した.DPAを励起一重項状態にするため,増感剤であるPtOEPを使用した.増感剤は,光照射によっ て励起一重項状態から項間交差を起こし励起三重項状態となり,この励起三重項状態からエネルギー移 動が起こり,受容体の励起三重項状態へと移動する.この受容体の二つの励起三重項状態から三重項融合 が生じ,励起一重項状態が生成され,基底一重項状態に下がる過程で発する蛍光を遅延蛍光という.この 蛍光は受容体が直接励起によって起こる蛍光よりエネルギーが高い.この長波長光が短波長に変換でき る技術であるアップコンバージョンに注目した.近年,アップコンバージョンは将来的に太陽光発電の高 効率化や光触媒への応用が期待されている.

今回は三種類の有機溶媒それぞれにDPAPtOEPを加えたものを蛍光スペクトル測定と過渡吸収測定 を用いて,アップコンバージョンが起こるか調べた.

9,10-ジフェニルアントラセン 白金オクタエチルポルフィリン

[実験・結果]

今回使用した三種類の有機溶媒である,ジクロロメタン,クロロベンゼン,3-クロロプロペンそれぞれに PtOEPDPAを加え蛍光スペクトルを室温で測定した.この時,PtOEPの濃度は6.0×10-5mol/L,DPAの濃

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度は1.0×10-3mol/Lとした.次に,過渡吸収でサンプルの発光を観測した.蛍光スペクトル測定,過渡吸収測 定ともに励起波長は535 nmで観測した.

実験結果は以下のようになった. Figure1 光測定の結果から432nm付近に発光が見ら れた.これにより,アップコンバージョンが 起きたと考えられる.有機溶媒の粘度が高く なると三重項融合の収率が上がる傾向があ るが,高くなりすぎると逆に低くなることが わかっており、これも今回の実験で再現す ることが出来た.また,蛍光スペクトルに535 nmの励起波長を当てたところ青色に発色していたことからもアップコンバージョンが起きていると考 えられる.Figure2,Figure3は過渡吸収装置を用いてジクロロメタンを溶媒に用いて観測した発光の結果で あり,Figure2DPAの励起一重項での蛍光の430 nmでの発光の様子を示しており,Figure3ではPtOEP の励起三重項のりん光の640 nmでの発光の様子を示したものである.蛍光スペクトルで得られたような 発光のピークと増感剤のりん光のピークを観測することが出来なかった.これは,蛍光スペクトル測定よ りも励起波長を当てた際に観測できる蛍光を拾いにくいためだと考えられる.

[今後の予定]

磁場をかけて発光を測定することで,三重項融合の収率が変化するのか観察する.また,溶媒をイオン液 体に変え,有機溶媒と比べて三重項融合の収率の変化が起こるのかについても測定する.

[参考文献]

1)杉森彰, “化学新シリーズ 光化学” p80~82 株式会社裳華房 (2006)

2)Kana Yokoyama , Yusuke Wakikawa, Tomoaki Miura, Jun-ichi Fujimori, Fuyuki Ito, and Tadaaki Ikoma, J. Phys.

Chem. B2015, 119, 52, 15901-15908 -0.2

-0.1 0 0.1 0.2 0.3

0.00 5.00 10.00 15.00 20.00

Abs(a.u.)

time(µs) Fig2 0

5 10 15

400 450 500

intensity (a.u.)

Wavelength (nm)

Fig1 DPA PtOEP

dichloromethane 535nm DPA PtOEP chlorobenzen 535nm DPA PtOEP 3- chloropropene 534nm

-0.15 -0.1 -0.05 0 0.05 0.1 0.15 0.2

0.00 5.00 10.00 15.00 20.00

Abs(a.u.)

time(µs) Fig3

Fig1 DPA PtOEP

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