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ちりめん本特集記事

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Academic year: 2021

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ちりめん本特集記事

 この箱(写真)、何だと思いますか? 実は ちりめん(縮緬)本が入れられていた収納ケー スなのです。

 今から9年前の平成十八(2006)年、本学図 書館は学校法人京都外国語大学の創立60周年を 記念した稀覯書展示会「文明開化期のちりめん 本と浮世絵」の開催を翌年の5月に控えて、図 録編纂の準備に追われていました。

 この展示会では、長谷川武次郎の作ったちり めん本の「日本昔噺シリーズ」の英語を中心に して、これを原典として重訳されたヨーロッパ 各国の言語版を出展する予定でしたが、その中 でも重要なフランス語版のシリーズに欠本が あって不揃いであることに気づきました。

 急遽、 国内の古書店でフランス語版を調べま したが何処にもなく、外国の古書店で探すこと にしました。結局、これを手伝っていただいた 日本有数の国際的古書店の方がフランス国内の 市場にあることを察知し、素早く購入許可を得 て発注できたことを覚えています。

 ところが、この書物が到着して驚きました。

古めいてはいましたが、ワインレッドが美しい 豪華なケースに入っているではありませんか。

ちりめん本は注文しましたが、このような入れ 物までは頼んだつもりはなく、一瞬、 「予算オー バーか」と困惑していました。取り寄せていた だいた古書店の方から「付属品」と聞かされて、

胸をなで下ろしていたことを思い出します。

 ちりめん本「日本昔噺シリーズ」のフランス 語版の刊行は、明治十八(1885)年頃から始ま り、再版も含めて大正二(1913)年頃まで続い ています。おそらく、届いたフランス語版はこ の時期に日本に滞在したフランス人が母国に戻

る際に持ち帰ったものではないでしょうか。

 その時、このケースはあったのでしょうか。

元々、ちりめん本を収納する目的で作られた ものかどうかは分かりませんが、添付されて いたフランスの古書店の説明書きには、桜の 木と竹を材料にしていると書かれていました。

この材料は、わが国の工芸品によく使われる もので、竹は網

あ じ ろ

代状に編まれているのです。こ れだけを見れば日本で作られたものというこ とになりますが、蓋のフック状の鉤は日本製 とは思えません。また、その蓋の金属部分の 模様や細工も和風とは思えず、素人では判断 を下すことはできませんでした。

 いずれにしても、これほど見事なケースに入 れられたちりめん本は、持ち主が母国へ持ち 帰ってからも大切な宝物であったはずです。そ れが、フランス語版の最終刊行年から90年以上 の時を経て、故郷の日本に戻ってきたのです。

初めて書庫に入れる時、「お帰りなさい。ここ が永住の館ですよ」と心の中で声をかけずに はおれなかったのです。         

(椛)

フランス語版ちりめん本と収納ケース

収納ケース

 幅27㎝×奥行き16㎝×高さ(最上部)23㎝

参照

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