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初期キャリアにおけるモビリティ ― 高度成長期の 若者たち ―

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(1)

初期キャリアにおけるモビリティ ― 高度成長期の 若者たち ―

著者 吉田 崇

雑誌名 評論・社会科学

号 73

ページ 1‑23

発行年 2004‑03‑20

権利 同志社大学人文学会

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000004672

(2)

︹論文︺

初 期 キ ャ リ ア に お け る モ ビ リ テ ィ

││高度成長期の若者たち││

吉 田 崇

︵文学研究科社会学専攻博士後期課程︶

一問題の所在

バブル崩壊以降の長引く景気低迷のなか︑完全失業率は二〇〇一年七月に五・〇%を記録した︒とりわけ︑若年層を

とりまく雇用情勢の悪化は深刻であり二〇〇三年時点での二十四歳以下の失業率は一〇%を上回っている︵十五〜十九

一一・九%︑二十〜二十四歳

当のたんや︑今日若営者の親世代に相破経九︑・八%︶︒また大ぐ手企業のあいつ

する中高年のリストラ︵人員整理︶も︑若者の将来キャリアに対する見通しを不透明なものにしている︒大企業の倒産

やリストラによって︑いわゆる日本的雇用慣行の主柱である﹁終身雇用﹂の神話は崩壊し︑﹁いい学校に入り︑いい会

社に就職し︑そのまま定年まで勤める﹂という﹁約束された将来﹂を手に入れることは困難になっている︒

若年期の就業︑とりわけ﹁学校から職業への移行﹂過程において︑失業︑就職難とともに今日もっとも社会的関心を

集めている問題は﹁フリーター﹂の存在であろう︒近年︑学校卒業後も定職に就かない/就けない︑﹁フリーター﹂層

が確実に増加しており︑その数は二〇〇二年時点で二〇九万人︵男性九四万人︑女性一一五万人︶にも達している︵厚生労

― 1 ―

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働省二〇〇三︶︒フリーターに対する評価は︑大きくふたつに分けることができる︒すなわち︑必ずしも正社員として

の企業への帰属にこだわらない新しいライフスタイルとして肯定的にとらえられる場合と︑就業意欲の低下として否定

的にとらえられる場合である︒これらは︑いずれも個人の自由な選択の結果としてフリーターをとらえているが︑フリ

ーターの増加を﹁中高年の雇用維持の代償として新卒の採用を抑制﹂した結果︑すなわち社会や経済のシステムの問題

としてとらえる議論もある︵玄田二〇〇一︶︒このほかにも︑フリーターをめぐっては︑社会保障制度へ及ぼす影響や

社会階層の不平等の観点︑たとえば豊かな親という﹁既得権﹂に依存した﹁パラサイト・シングル﹂︵山田一九九九︶

や豊かな社会が問題の表面化を回避しているといった議論など︑さまざまな観点から問題が指摘されている︒

このように今日の若者の将来展望は必ずしも明るいものではないが︑いたずらに不安感をあおっても問題解決にはな

らない︒しばしば︑今日の若年層のかかえる問題に対しては︑日本的雇用慣行の崩壊といった﹁大きな物語﹂のなかで

論じられたり︑年長者の個人的体験をもとに論評されたりする︒しかし︑これらどちらも︑フリーター登場以前のキャ

リアが︑いかなるものであったのかを教えてはくれない︒個人の体験を一般化することができないのは言うまでもない

が︑仮に日本的雇用慣行の崩壊が事実であるとしても︑そのような慣行が遍在的であったとはいえないからである︒い

ま必要なのは︑遠回りにみえるかもしれないが︑客観的なデータにもとづいて︑これまでの世代が経験した職業キャリ

アを描き出すことであろう︒

そこで本稿では︑今日の若者でなく︑﹁かつての若者﹂︑すなわち︑現在の中高年世代が彼ら・彼女らの若年期に経験

してきたキャリアを︑モビリティ︵移動性︶の観点から分析することによって︑今日の若者に起こっている変化を浮き

彫りにすることを目的とする︒ここで︑学校を卒業してから三十四歳までの職業キャリアのことを﹁初期キャリア﹂と

呼ぶことにする︒モビリティに着目する理由は︑かつての若者たちが︑労働市場においてどの程度の移動を経験してい

たのかを知ることで︑雇用の不安定化が指摘される今日の状況を相対化することが可能となるらである︒なお︑労働市 初期キャリアにおけるモビリティ

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場の流動性そのものが政策目標として掲げられることがあるが︑本稿で用いるモビリティ︵移動性︶という言葉には︑

そのような価値判断は含まれておらず︑キャリアにおける移動と定着の意味で用いる︒

二使用するデータとサンプルの位置づけ

二・一データについて

本稿では︑一九九五年の﹁社会階層と社会移動全国調査﹂︵以下︑SSM調査︶のA票をメイン・データとして用い

る︒SSM調査は一九五五年以来︑一〇年ごとに計五回行なわれている全国調査で︑職業経歴に関する質問項目を備え

ていることが大きな特色である︒職業経歴とは︑就職してからの就業継続や転職などの履歴のことであり︑SSM調査

では︑学校を卒業してからはじめて就いた職業︵

初職︶から調査時の職業︵

現職︶にいたるすべての職業経歴につ

いて︑無職状態を含めて回顧式の質問をしている︒それぞれの職業経歴データは︑従業先︑従業上の地位︑仕事の内容

︵職種︶︑産業︑企業規模︑役職︑そしてそれぞれの職歴の開始年齢についての情報を備えている︒

職業経歴データは﹁非定型的﹂データと呼ばれている︵原一九九二︶︒これは︑各人の経験した職業経歴開始のタイ

ミング︵年齢︶や移動を経験する回数が人によってさまざまであるためである︒たとえば就職や離職・転職のタイミン

グはすべての職業経歴ごとに異なり︑その結果それぞれの職歴の持続︵継続︶期間も異なってくる︒また︑職歴数は︑

就職してから職業的地位に何の変化もない一回から︑企業内での仕事や地位の変化︑あるいは離職・転職を重ねて一〇

回を超えることもある︒なお︑一度も就職したことがない人の職歴数は〇回となる︒SSM調査では︑従業先の移動を

ともなわない︵同じ従業先内での︶職歴移動についても把握することができるが︑初期キャリアでは昇進の分析は困難

なため︑本稿では︑従業先の移動を含む離職・転職に焦点をあてて分析する︒なお︑職業経歴データについては定型的

― 3 ―

初期キャリアにおけるモビリティ

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な分析方法が確立していないため︑以下では︑探索的に分析をすすめていく︒

二・二出生コーホート区分

本稿での分析対象は﹁初期キャリア﹂である︒したがって︑対象者は三十四歳以上に限定される︒また︑学歴を用い

た分析において︑新制の学歴に限定するため︑対象者の上限を一九三六年生まれ︵調査時五十九歳︶までとした︒これ

らのサンプルについて︑出生コーホートによる違いを明らかにするために︑生まれ年で五年ごとに区切った次の五つの

出生コーホートを用いる︒

一九三六︱四〇︵昭和十一︱十五︶年生まれ

一九四一︱四五︵昭和十六︱二十︶年生まれ

一九四六︱五〇︵昭和二十一︱二十五︶年生まれ

一九五一︱五五︵昭和二十六︱三十︶年生まれ

一九五六︱六〇︵昭和三十一︱三十五︶年生まれ

このなかで一九四六︱五〇年コーホートは︑狭義には一九四七︱四九︵昭和二十二︱二十四︶年生まれを指す﹁団塊

の世代﹂にほぼ相当する︒しばしば︑団塊の世代によって今日の働き方やライフスタイルが一般化したと言われるが︑

以下の分析では︑団塊の世代をはさんでの出生コーホートごとの変化に注目していく︒また︑就職年齢を十五歳から二

十二歳と考えると︑団塊の世代が就職したのは一九六二年から一九七一年に相当し︑一九五五年から一九七三年にいた

る高度経済成長期の真っ只中で︑初期キャリアを開始したことになる︒

なお︑男女でキャリア形成が異なることはほとんど自明であるが︑﹁実際にどの点でどのように異なるかを実証した

研究はほとんどない﹂︵盛山一九九九︶ため︑以下では︑男女それぞれについて同じ枠組みでの分析をおこない︑とく 初期キャリアにおけるモビリティ

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に女性のキャリアに大きな影響を及ぼす結婚や出産といったライフ・イヴェント変数については扱わない︒

二・三サンプルの位置づけ││フリーター世代との比較││

本稿は︑今日の若者を直接の分析対象とはしていないが︑ここでは比較対照として︑若年層のフリーター率とその趨

勢について概観しておく︒なお︑初期キャリアを三十四歳までとしたのは︑次のような代表的なフリーターの定義に用

いられる年齢にそろえたためである︒

﹁代表的な﹂というのは︑フリーターの定義は︑論者や研究者によってことなり︑統計資料を用いてフリーターを抽

出するには際にさまざまな操作的定義が用いられているからである︒たとえば﹃労働白書︵平成十二年版︶﹄︵二〇〇〇

年︶は次のように定義している︒﹁年齢は十五〜三十四歳と限定し︑

漓いけおに先め勤はてつ現に者るいてし業就在る

呼称が﹃アルバイト﹄又は﹃パート﹄である雇用者で︑男性については継続就業年数が一〜五年未満の者︑女性につい

ては未婚で仕事を主にしている者とし︑

滷バおらず﹃アルイしト・パート﹄ても現つ在無業の者にい学ては家事も通の

仕事を希望する者﹂︒

日本労働研究機構の﹁就業構造基本調査﹂の再分析研究会では︑先の﹃労働白書﹄の定義から︑学生アルバイト︑無

職の既婚者︑勤続年数の条件を除き︑次のような独自の定義を行なっている︒﹁年齢は十五〜三十四歳︑在学しておら

ず︑女性については配偶者のいないものに限定し︑

漓呼トイバルア・トーパ﹁が称る有けおに先め勤はていつに者業﹂

である雇用者

滷をアルバイト﹂の仕事希ト望する者﹂︵小杉・・ー現家在無業者については事パも通学もしておらず﹁堀

二〇〇二

二六︶︒表 :

1

﹂別のフリーター率か学ら年齢別の部分の歴・は〇︑小杉・堀︵二〇二別︶の表一︱六﹁年齢み

を抜粋したものである︒

― 5 ―

初期キャリアにおけるモビリティ

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これによると︑調査年度とともに︑どの年齢階級においてもフリー

ター率はほぼ一貫して増加していることが分かる︒また︑年齢階級別

にみると︑男性では年齢が若いほどフリーター率が高く︑十五〜十九

歳でのフリーター率は︑一九八七年時点で既に一五%近くに達してい

る︒一方︑女性では年齢階級による一貫した傾向はみられない︒

ところで︑モビリティの観点から初期キャリアをとらえる時︑調査

年度度ごとのフリーター率の増減よりも︑入職時から三十四歳までの

プロセスが問題関心となる︒そこで︑世代ごとのフリーター率の年齢

推移についてみてみよう︒表

1

下にめ斜へルセ右をらかルセ上左︑読

むと︑出生コーホートごとのフリーター率の年齢推移を示している︒

十五〜十九歳時のフリーター率を把握できる一九六三︱六七年出生コ

ーホート以降について図示すると︑図

1

のようになる︒

コーホートごとにみてみると︑一九六三︱六七年コーホートでフリ

ーター率がもっとも低い︒ただし女性は年齢とともに一貫して増加し

ており︑三十〜三十四歳時では一五%近くに達している︒次の一九六

八︱七二年コーホートでは一九六三︱六七年コーホートとくらべて一

〇代でのフリーター率が約二倍となっている︒これは︑一九八〇年代

に入ってからフリーターが増加しはじめたという知見と一致してい

る︒ただし︑このコーホートの男性の場合︑二〇代後半でのフリータ

1 年齢別フリーター率(%)

1997年 6.4 24.4 10.6 4.4 2.4 16.3 29.2 16.9 13.6 14.3

(出典:小杉・堀(2002)表1−6より一部抜粋)

1992年 4.4 15.7 6.6 3.0 1.5 10.2 15.1 9.2 10.2 10.8 1987年

4.0 14.8 6.1 2.5 1.6 10.8 14.4 8.9 12.1 13.4 1982年

2.4 7.8 3.8 1.7 1.3 7.3 6.7 6.1 9.6 10.5 男性計

15〜19歳 20〜24歳 25〜29歳 30〜34歳 女性計

15〜19歳 20〜24歳 25〜29歳 30〜34歳

初期キャリアにおけるモビリティ

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ー率は五%を下回っており︑年齢とともにフリーターから離脱していったこ

とがうかがえる︒さらに次の一九七三︱七七年コーホートにかけては︑一〇

代のフリーター率は︑ほぼ同じだが︑二〇代前半でのフリーター率が増加し

ていることが注目される︒最後に︑もっとも若い一九六三︱六七年コーホー

トでは︑二〇代にかけての推移は分からないが︑一〇代のフリーター率が︑

男性で二四・四%︑女性で二九・二%と︑突出した値を示している︒また︑

男女別にみると︑男性では年齢とともに一貫してフリーター率が減少するの

に対して︑女性では必ずしも減少しておらず︑むしろ増加することの方が多

いことが分かった︒

以上︑一九九七年までのフリーター増加に関するデータを確認したが︑こ

のことから明らかなように︑先に述べた本稿での分析対象となっている五つ

の出生コーホートにおいては︑男女ともにフリーターはほとんど存在しない

とみてよいだろう︒はたしてフリーター登場以前は︑長期的・安定的なキャ

リアというものが遍在的に存在したのであろうか︒

三初期キャリアの概要

三・一コーホートごとにみた学歴構成

まず︑初職入職に深くかかわる︑学歴についてみておこう︒表2は︑コー

1 男女、出生コーホート別にみたフリーター率の年齢推移(%)

(出典:小杉・堀(2002)表1−6の数値をもとに再構成)

― 7 ―

初期キャリアにおけるモビリティ

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ホートごとの学歴と教育年数の平均値および標準偏差を示したも

のである︒教育年数は︑義務卒を九年︑高校卒を一二年︑短大・

高専卒を一四年︑大学卒を一六年として算出したものである︒な

お︑ここでは中退も卒業として扱っている︒また︑大学院卒が一

六ケース︵男一三︑女三︶あったが︑以下では大学卒に含めて分

析する︒

教育年数の平均値をみると︑男女ともに若い世代になるほど長

くなっている︒また︑いずれのコーホートにおいても男性のほう

が女性よりも教育年数が長い︒標準偏差をみると︑男女ともに安

定的に推移しており︑その値は女性のほうが小さい︒これは女性

の方が男性よりも大学卒比率が低く短大比率が高いため︑大半を

占める高校卒との分散が小さいためであろう︒

学歴の構成についてみると︑まず義務卒は︑男女ともに若いコ

ーホートになるにつれて大幅に減少している︒ただし︑中等教育

が普遍化するのは男女ともに一九五六︱六〇年コーホート以降

で︑一九四六︱五〇年コーホート︵団塊の世代︶では男女ともに

ほぼ二〇%が義務卒であった︒次に高校卒は︑男性の場合︑高校

職業科卒が一九五一︱五五年コーホートまで増加傾向にあり︑高

校普通科卒は一貫して二〇%程度である︒一方︑女性の場合︑高

2 男女、コーホート別にみた教育年数と学歴構成

N

124 132 178 147 109 69 125 174 187 177 151 814 学歴(%)

大学卒 16.9 16.7 23.0 27.9 49.5 25.9 1.6 2.9 5.9 7.9 19.9 7.6 短大卒

0.8 3.0 2.2 2.0 0.9 1.9 4.8 5.7 10.2 10.7 21.9 10.7 高校普 通科卒 21.0 21.2 20.2 20.4 20.2 20.6 33.6 33.3 41.7 36.2 30.5 35.4 高校職 業科卒 25.0 33.3 33.1 36.7 24.8 31.2 12.8 20.1 23.0 31.6 24.5 23.0 義務卒

36.3 25.8 21.3 12.9 4.6 20.4 47.2 37.9 19.3 13.6 3.3 23.3 年数(年)

S.D.

2.4 2.3 2.5 2.4 2.3 2.5 1.8 1.8 1.8 1.7 1.8 1.9 平均 11.6 12.0 12.4 12.8 13.9 12.5 10.8 11.1 11.9 12.1 13.1 11.8 コーホート

1936−40 1941−45 1946−50 1951−55 1956−60

計 1936−40 1941−45 1946−50 1951−55 1956−60

計 男性

女性

初期キャリアにおけるモビリティ

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校職業科卒が一九五一︱五五年コーホートまで増加傾向にあるのは男性と同様だがその割合は男性より低い︒高校普通

科卒の割合は一貫して男性より高く一九四六︱五〇年コーホートでは四〇%を超えている︒

なお︑表には示していないが︑男女ともに職業科卒の割合がもっとも高い一九五一︱五五年コーホートの高卒者に占

める学科の内訳は︑男性では︑工業科︵三七%︶︑普通科︵三六%︶︑商業科︵一五%︶︑農業科︵一二%︶と工業科が

普通科を上回り︑女性では普通科︵五三%︶︑商業科︵二五%︶︑家庭科︵二〇%︶と普通科が過半数を占めている︒

最後に大学卒︑短大卒︵高専を含む︶を合わせた高等教育についてみると︑男性では短大︵高専︶卒が一貫して低

く︑大学卒は一九四六︱五〇年コーホートでは二〇%強︑一九五六︱六〇年コーホートでほぼ五〇%に達している︒一

方︑女性では︑短大卒が一定割合を占めており︑大学卒が増加するのはもっとも若い一九五六︱六〇年コーホート以降

である︒ただし一九五六︱六〇年コーホートでも大学卒と短大卒を合わせた高等教育は四〇%程度であり︑男性より一

〇%低い︒

以上のことを︑文部科学省の﹁学校基本調査﹂を用いて確認しておこう︒図

2

校性女︵大短︑高はの別年生出︑の

み︶︑大学の進学率をコーホート単位で集計し︑表

2

しるあでのもた示の図てね重と果結︒

これによると︑男女いずれも︑すべてのコーホートにおいて︑学校基本調査の値よりもSSM調査の方が高校進学率

が高くなっている︒高等学歴︵短大︑大学︶進学率では︑両調査のあいだにほとんど差がないことを考えると︑SSM

調査のサンプルには高校進学者が過大︵義務卒者が過少︶に含まれているといえる︒そして︑この差は一九四〇︱四五

年コーホートの男性︑一九四六︱五〇年コーホートの女性でとくに大きく︑一〇%以上となっている︒このように︑S

SM調査では︑やや学歴インフレの傾向があるものの︑進学率上昇のおおよその傾向は把握することができる︒以下で

は︑このような偏りについても留意ながら分析を進めていく︒

― 9 ―

初期キャリアにおけるモビリティ

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三・二コーホートごとにみた初職就業

ここでは初職についてみていこう︒表

3

は初職入職年齢の平均と標準偏

差および従業上の地位の構成を示したものである︒ただし︑初職入職年齢

を二十五歳以下に限定してある︒これは︑三十四歳までの初期キャリアを

分析するにあたり︑一〇年以上の職業経歴を確保したかったためである︒

このような二十五歳以下での初職就業者が︑それぞれの出生コーホートに

占める割合を﹁経験率﹂として示した︒男性の経験率はほぼ一〇〇%であ

り︑女性の場合は一九三六︱四〇年コーホートでは約八〇%と低いが︑一

九四一︱四五年コーホート以降︑九〇%以上となっており︑若いコーホー

トになるほど経験率は高くなっている︒これはひとつには一九三六︱四〇

年コーホートから順に一二︑五︑六︑五︑五ケースあった一度も就職した

ことのない人が減少したためである︒

まず︑初職入職年齢をみると︑男性ではコーホートが若くなるにつれて

高くなっている︒これは表

2

化でのもうなもとに歴で学高︑にうよたみあ

る︒一方︑女性でも高学歴化しているが︑入職年齢に一貫した傾向はみら

れない︒標準偏差でみると︑女性の方が男性より小さいが︑これは男性と

比べて女性の方が学歴格差が小さいためだと考えられる︒ただし︑ここで

は初職就職年齢を二十五歳以下に限定してある点に注意が必要である︒

次に︑従業上の地位についてみていく︒全体で見ると男女ともに正規雇

2 出生コーホート別にみた高校、短大、大学進学率の推移(%)

(実線が1995SSM調査、破線が文部科学省「学校基本調査」

初期キャリアにおけるモビリティ

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(12)

用が八〇%を超えており︑パート・アルバイトと合わせ被雇用者割

合は若いコーホートになるほど︑ほぼ一貫して高くなっている︒こ

れは言うまでもなく自営業︵家族従業者含む︶の縮小の裏返しであ

り︑一九三六︱四〇年コーホートにおいて男女ともに二〇%近く存

在した自営業層は︑その後︑急速に減少している︒とりわけ︑女性

の一九四六︱五〇年コーホート以降での減少が著しい︒

また︑初職でパート・アルバイトに就くものは一貫して低いが︑

男女とも一九五一︱五五年コーホートから微増している︒一九五六

︱六〇年コーホートでの初職がパート・アルバイトである割合は︑

1

ー同ぼほと値数の代〇一のトホでーコ年七六︱三六九一たみじ

である︒

以上から高学歴化と初職の被雇用化︑女性の就業の一般化︑を確

認できた︒しかし︑キャリアの分析では︑より詳細な職業区分が必

要となる︒そこで︑企業規模を考慮した総合職業分類︵原・盛山

一九九九︶を用いて︑コーホートごとの初職の職業構成をみたのが

次の表

4

の〇〇三が員業従︑は分区とで業企小中と業企大︒るあ人

以上か未満かによる︒なお︑Nの欄が表

3

より少ないのは︑企業規

模についての欠損値があるためである︒

男性では︑大企業ホワイトカラーと専門職の拡大がみてとれる︒

3 男女、コーホート別にみた初職経験率、入職年齢、従業の上地位

N 122 131 173 142 107 675 101 155 172 167 143 738 従業上の地位(%)

自営業 18.9 16.0 13.9 9.2 7.5 13.2 22.8 14.8 5.8 5.4 5.6 9.9 パート

3.3 3.1 1.7 2.8 4.7 3.0 6.9 8.4 3.5 6.0 7.7 6.4 正規雇用

77.9 80.9 84.4 88.0 87.9 83.9 70.3 76.8 90.7 88.6 86.7 83.7 年齢(歳)

S.D.

2.47 2.42 2.52 2.53 2.44 2.59 2.20 2.09 1.78 2.02 2.02 2.07 平均 18.0 18.2 18.8 19.1 20.4 18.8 18.2 17.9 18.6 18.5 19.5 18.5 経験率

(%)

98.4 99.2 97.2 96.6 98.2 97.8 80.8 89.1 92.0 94.4 94.7 90.7 コーホート

1936−40 1941−45 1946−50 1951−55 1956−60

計 1936−40 1941−45 1946−50 1951−55 1956−60

計 男性

女性

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初期キャリアにおけるモビリティ

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ブルーカラーでは一貫した傾向はみられないが︑中小企業ブルーカラ

ーは︑団塊の世代︵一九四六︱五〇年コーホート︶まで︑もっとも高

い割合を示しており︑その後︑大企業ホワイトカラーに取って代わら

れるが︑全コーホートを通じてもっとも主要な入職経路のひとつは中

小企業ブルーカラーとであったということができる︒また︑自営部門

は︑ホワイトカラー︑ブルーカラーともに一貫した傾向はみられず︑

3

林がろことるよに小縮の門部農では少減たし貫一の業営自たみ大

きいと考えられる︒

女性でも︑専門職およびホワイトカラーの拡大が確認できる︒ただ

し︑女性の場合︑中小企業ホワイトカラー比率の高さが目立つ︒一

方︑ブルーカラーについては︑男性とは異なり中小企業ブルーカラー

への就業が一貫して減少していおり︑全コーホートを通じて女性のも

っとも主要な入職経路は事務・販売といったホワイトカラー職であっ

たといえる︒自営業比率はいずれのコーホートにおいても低く︑団塊

の世代以降︑家業を手伝うよりも︑雇用者として働くことが一般化し

たことが分かる︒

三・三学歴別にみた初職就業

学歴によって初職の職業構成に違いはみられるだろうか︒表

5

は︑

4 男女、コーホート別にみた初職の総合職業分類(%)

N 120 123 163 138 102 646 95 149 157 159 139 699 農業 10.0

8.1 3.7 3.6 1.0 5.3 11.6 4.7 1.3 0.6 1.4 3.3 自営B

5.8 8.1 9.2 4.3 2.9 6.3 5.3 3.4 1.9 1.9 0.7 2.4 中小B

33.3 27.6 27.0 23.2 25.5 27.2 21.1 18.8 14.0 10.7 6.5 13.7 大B 14.2 13.0 12.3 16.7 9.8 13.3 3.2 11.4 9.6 15.1 3.6 9.2 自営W

3.3 2.4 1.8 1.4 2.9 2.3 6.3 7.4 2.5 2.5 1.4 3.9 中小W

15.8 13.8 17.2 10.1 11.8 13.9 33.7 22.1 29.9 22.6 31.7 27.5 大W 11.7 16.3 18.4 27.5 27.5 20.1 8.4 25.5 28.0 28.3 28.1 24.9 専門

5.8 10.6 10.4 13.0 18.6 11.5 10.5 6.7 12.7 18.2 26.6 15.2 コーホート

1936−40 1941−45 1946−50 1951−55 1956−60

計 1936−40 1941−45 1946−50 1951−55 1956−60

計 男性

女性

初期キャリアにおけるモビリティ

― 12 ―

(14)

学歴ごとの初職の総合職業分類を︑コーホートを区分せずに示したも

のである︒

男性の場合︑義務卒では中小企業ブルーカラーの割合が圧倒的に高

く︑農業の割合も他の学歴と比較して高い︒これには出生コーホート

にもとづく時代効果もあるが︑ホワイトカラー職への入職経路がほと

んど存在しないことを示している︒高校卒では︑職業科ではブルーカ

ラー職が五〇%以上を占めるのに対して︑普通科ではホワイトカラー

職が五〇%以上を占める︒大学卒は︑専門職と大企業ホワイトカラー

で︑全体の三分の二以上を占めている︒

ここで時代背景を確認しておく︒柴垣和夫によると︑高度成長期の

初期の一九五五年から一九六〇年にかけて︑新規中卒︑新規高卒の求

人倍率が急増した︵それぞれ一・一↓一・九︑〇・七↓一・五︶︒と

りわけ︑成長産業の重化学工業では︑技術革新に対応できる知的レベ

ルと柔軟性をもった労働力を必要としていた︒さらに︑中小企業や中

小企業は︑都市の新卒者が大企業に就職する傾向が強かったため︑農

村の新卒者を吸収しなければならなかった︵柴垣一九八九︶︒こうし

た﹁集団就職﹂は一九五三年に制度化され︑一九六四年にピークを迎

えたとされ︵猪木二〇〇〇︶︑昭和三〇年代︵一九五五〜六四年︶は

﹁集団就職の時代﹂︵加瀬一九九七︶とも呼ばれている︒図

2

でみたと

5 男女、学歴別にみた初職の総合職業分類(%)

N 133 207 128 12 166 646 158 164 253 77 47 699 農業 10.5

6.3 4.7 0.0 0.6 5.3 11.4 1.8 0.4 1.3 0.0 3.3 自営B

7.5 7.7 8.6 0.0 2.4 6.3 3.8 3.0 2.4 0.0 0.0 2.4 中小B

63.2 23.2 24.2 16.7 6.6 27.2 38.6 4.3 11.1 0.0 0.0 13.7 大B

9.0 25.1 10.9 33.3 2.4 13.3 19.0 6.7 8.7 0.0 2.1 9.2 自営W

0.8 2.9 4.7 0.0 1.2 2.3 3.8 3.0 3.2 6.5 6.4 3.9 中小W

6.0 10.6 21.9 0.0 19.3 13.9 15.2 39.0 33.2 14.3 19.1 27.5 大W

3.0 15.9 22.7 16.7 37.3 20.1 1.9 34.8 31.2 35.1 17.0 24.9 専門

0.0 8.2 2.3 33.3 30.1 11.5 6.3 7.3 9.9 42.9 55.3 15.2 学 歴 義 務 卒 職業科卒 普通科卒 短 大 卒 大 学 卒

計 義 務 卒 職業科卒 普通科卒 短 大 卒 大 学 卒

計 男性

女性

― 13 ―

初期キャリアにおけるモビリティ

(15)

おり︑SSM調査では義務卒が過少サンプルであったことも考慮すると︑この時期﹁金の卵﹂と呼ばれた新規中卒労働

者が︑当時の基幹産業を支えていた中小企業へ未熟練工として流入したことが︑このデータからも確認できよう︒

女性の場合︑義務卒ではブルーカラーが六〇%以上を占めている︒高校卒では男性ほど普通科と職業科卒での違いが

明瞭でなく︑ホワイトカラー職に就く傾向が強い︒これは一般事務や販売職といった職業では︑専門知識が就職時にそ

れほど求められないからだと考えられる︒対照的に︑男性の場合︑大企業ブルーカラー職に占める職業高校卒の占有率

は六〇%以上となるが︑これは工業科での技能形成が就職に有利にはたらくということがあるのかもしれない︒また女

性の短大卒︑大学卒では専門職の割合が高く︑大学卒では半数を超えている︒

四初期キャリアにおける移動と定着

四・一移動回数

モビリティをもっとも端的に表す指標は移動回数︵頻度︶であろう︒ここでは︑まずコーホートごとに初職就職から

三十四歳までの従業先経験数の平均値と標準偏差および従業先経験数の分布をみてみる︵表

6

︶︒経験数一回とは初職

での従業先に三十四歳時も就いている︑または︑初職での従業先は離職しているが新たな従業先に勤めていない︵無職

のままである︶ことを意味する︒ここで︑モビリティ概念を︑被雇用者と自営業者とを区分せずに適用すると︑数値の

解釈が複雑になるため︑以下では︑初職が被雇用である者に限定する︒被雇用者には︑正規雇用︵正社員︶と非正規雇

用︵パート︑アルバイト︑派遣社員︶が含まれる︒これは表

3

以おな︒るいてめ占を上%で〇八の体全︑りおとたみ︑

Nの欄が表

4

先歳までの正確な従業経十験数を把握できなか四三よ・り少ないのは︑離職転︑職年齢の欠損値によりっ

たことによる︒ 初期キャリアにおけるモビリティ

― 14 ―

(16)

まず︑経験数の平均を見ると︑男女ともに二回未満とみることが

できる︒経験数の増減にコーホートによる趨勢的な変化はみられな

い︒標準偏差については男女ともに︑若いコーホートになるほど大

きくなる傾向がみられ︑移動性向のばらつきが拡大しているといえ

る︒従業先経験数の分布をみると︑一回が男女ともに四〇%近くあ

り︑二回以下が八〇%近くを占めている︒男女ともにコーホートに

よる趨勢的な変化はとくにみられない︒

それでは︑学歴による移動傾向はどうであろうか︒学歴ごとに表

6

従務義︑とるみを数験経先業のとでま歳四十三らか職初の様同卒

と大学卒とでは卒業年齢に最短で七年の開きがあり︑三十四歳に至

るまでの経験数をそのまま比較することはできない︒そこで︑全て

の学歴について︑就職してから一〇年後までの従業先経験数をみる

ことで初期キャリアの移動傾向を把握することにする︵表

7

︶︒

男性の場合︑義務卒でもっとも多く︑大学卒でもっとも少ない︒

分布でみても︑大学卒は過半数が一回で︑二回以下が九〇%近くを

占めている︒一方女性は︑大学卒がもっとも多く︑短大卒がもっと

も少ない︒ただし︑女性の大学卒はケース数が少ないため︑この数

値だけで移動性が高いと判断するのは難しい︒

このような移動は︑どのようなタイミングで起きているのだろう

6 男女、コーホート別にみた34歳までの従業先経験数

N 90 105 135 123 93 546 75 125 160 155 135 650 経験数分布(%)

4回以上

10.0 9.5 11.9 15.4 10.8 11.7 5.3 3.2 4.4 8.4 10.4 6.5 3回 15.6 16.2 14.1 11.4 7.5 13.0 14.7 16.0 14.4 12.9 12.6 14.0 2回 34.4 41.0 34.1 33.3 38.7 36.1 46.7 38.4 36.9 34.8 42.2 38.9 1回 40.0 33.3 40.0 39.8 43.0 39.2 33.3 42.4 44.4 43.9 34.8 40.6 経験数(回)

S.D.

1.10 1.14 1.40 1.41 1.36 1.30 0.96 0.87 0.93 1.11 1.11 1.01 平均 2.00 2.09 2.11 2.15 1.99 2.08 1.96 1.82 1.81 1.92 2.04 1.90 コーホート

1936−40 1941−45 1946−50 1951−55 1956−60

計 1936−40 1941−45 1946−50 1951−55 1956−60

計 男性

女性

― 15 ―

初期キャリアにおけるモビリティ

(17)

か︒次の図

3

は︑入職後一

〇年目までの︑各入職経過

年数ごとの従業先の移動を

ともなう離職・転職または

無職からの入職が起こった

割合の三年移動平均を︑学

歴ごとに示したものであ

る︒なお︑男性の短大卒は

ケースが少ないため示して

いない︒

これによると︑男性で

は︑全期間にわたって義務

卒の移動率が高く︑また大

学卒がほぼ一貫して低い値

を示している︒期間をめぐ

る変化では︑全体的に︑経

過年数が長くなるほど移動

率が低下し︑従業先へ定着

性が高まることが分かる︒

7 男女、学歴別にみた入職後10年目までの従業先経験数

N 112 169 104 10 150 545 129 160 244 68 40 641 経験数分布(%)

4回以上

9.8 5.9 10.6 10.0 2.7 6.8 4.7 2.5 2.5 1.5 12.5 3.4 3回 22.3 8.9 7.7 10.0 8.0 11.2 10.1 9.4 12.3 4.4 10.0 10.1 2回 33.0 37.9 37.5 40.0 35.3 36.1 42.6 41.3 34.8 41.2 27.5 38.2 1回 34.8 47.3 44.2 40.0 54.0 45.9 42.6 46.9 50.4 52.9 50.0 48.2 経験数(回)

S.D.

1.25 0.91 1.08 0.99 0.81 1.02 0.87 0.75 0.83 0.72 1.19 0.84 平均 2.16 1.75 1.88 1.90 1.61 1.82 1.78 1.68 1.68 1.56 1.90 1.70 学 歴

義 務 卒 職業科卒 普通科卒 短 大 卒 大 学 卒

計 義 務 卒 職業科卒 普通科卒 短 大 卒 大 学 卒

計 男性

女性

3 男女、学歴別の入職経過年数×従業先移動率3年平均(%)

初期キャリアにおけるモビリティ

― 16 ―

(18)

一方︑女性では︑入職四年目前後をピークとする移動傾向がみられる︒この

移動は︑結婚・出産による離職と考えられる︒女性の場合も︑期間の後半で

移動率が低下しているが︑無職を続ける場合も﹁非移動﹂とカウントされる

ので︑これをそのまま定着率の高さとみなすことはできない︒

四・二初職への就業継続

次に非移動︑すなわち初職従業先への就業継続からモビリティをとらえて

いく︒ここでも︑初職が被雇用である者に限定している︒入職経過年数ごと

に初職と同じ従業先へ勤めている者の割合を︑コーホートごとに示すと図

4

のようになる︒

4

も分がとこい高が率続継の職初りかよ性女が方の性男︑にから明らか

る︒また︑初職の従業先への就業継続者が半減するまでに要する年数をみる

と︑女性で四年前後であるのに対し︑男性では八年前後と︑ほぼ二倍の差が

ある︒

さらに︑入職経過年数ごとの就業継続/離職傾向をみるには︑図

4

の曲線

︵生存曲線︶の傾き計算するのが有効である︒傾きはハザード率と呼ばれ︑

入職経過年数ごとの辞めやすさ︵危険率︶を意味している︒ハザード率の三

年移動平均を示すと︑図

5

のようになる︒

これによると︑男性では入職一〇年目までの前半では〇・一前後であり︑

4 男女、コーホート別の入職経過年数×初職継続率(%)

― 17 ―

初期キャリアにおけるモビリティ

(19)

後半になると︑ほとんどのコーホートで〇・〇五以下まで低下している︒一

方︑女性は︑前半での離職ハザードは〇・二前後である︒これは毎年二〇%

ずつが辞めていくことを示している︒また︑女性のなかでも︑一九五一︱五

五年コーホートは他のコーホートと比べて入職三〜五年目にかけての離職ハ

ザードが高い︒このことについて︑本稿とはコーホート区分が異なるが︑一

九四八︱五二年コーホートにおいて﹁石油ショックによって︑結婚での退職

が増加した﹂とする今田幸子︵一九八八︶の報告もある︒なお︑女性の一九

三六︱四〇年コーホートにおいて︑入職七年目以降の離職ハザードが他のコ

ーホートと比べて大きくなっているのは︑離職率の分母︵初職をまだ続けて

いる人︶自体が小さくなったための不安定な傾向である︒

4

男がのたし示に別歴学︑女︑とていつに率続継職初の様同図

6

であ

る︒ここでも初職は被雇用に限定してある︒なお︑ケース数の少ない男性・

短大卒については示していない︒

これによると︑大学卒男性においてもっとも継続率が高いことが分かる︒

以下︑高校職業科卒︑高校普通科卒︑義務卒と続いている︒これに続くの

が︑大学卒女性である︒女性の場合︑高卒︵普通科︑職業科︶と短大卒にお

いて継続率にはほとんど差がないこと読み取れる︒

今日の若者の就業意識の低下を示す数字として﹁七・五・三﹂転職という

言葉がある︒これは︑一九九〇年代における新規学卒の就職者の三年以内に

5 男女、コーホート別の入職経過年数×初職離職ハザード(3年平均)

初期キャリアにおけるモビリティ

― 18 ―

(20)

離職する割合が︑中学卒で七割︑高

校卒で五割︑大学卒で三割にのぼる

状況を表す言葉である︵玄田二〇

〇一︶︒図

6

を用いて本稿でのサン

プルについても︑三年以内に離職す

る割合をみると︑女性ではどの学歴

でもほぼ四割で大学卒の方がむしろ

離職率が高く︑男性では大学卒で二

割︑高校卒で三割︑義務卒で四割と

なっている︒このことから︑とくに

男性で︑高度成長期における新規学

卒者の就業継続率は高かったことが

分かる︒

6

と同様に︑初職の総合職業分

類ごとに初職の就業継続率について

みたものが図

7

である︒

これによると︑男性では専門職と

大企業ホワイトカラーといった高学

歴比率の高い職業での就業継続率が

6 男女、学歴別の入職経過年数×初職継続率(%)

7 男女、初職総合分類別の入職経過年数×初職継続率(%)

― 19 ―

初期キャリアにおけるモビリティ

(21)

高い︒企業規模別にみると︑ホワイトカラー︑ブルーカラーともに中小企業よりも大企業の方が就業継続傾向が高く︑

とりわけ大企業ホワイトカラーは安定的な職業であることが分かる︒また︑男性の主要な初職カテゴリのひとつである

中小企業ブルーカラーの就業継続率は低く︑約五年で半減していることが分かる︒これらの傾向は︑終身雇用制が大企

業のみにみられる特徴である︑という知見と一致している︒

これに対し︑女性では職業による差はほとんどない︒専門職︑大企業ホワイトカラーの継続率も低い︒女性の場合︑

大企業ホワイトカラーに就職しても︑︵男性とは異なり︶企業内で技能形成をつむチャンスに恵まれず︑結婚とともに

退職したと考えられる︒これは結婚・出産といったライフ・イヴェントは︑学歴や初職の職業カテゴリにかかわらず︑

就業継続にとって大きな障害となってきたことを示している︒

五まとめ

本稿では︑若年層のキャリア形成についてモビリティの観点から探索的に分析をすすめてきた︒ここでは分析結果の

要約と︑フリーター登場以前のキャリア像についてまとめる︒

団塊の世代以降︑男女ともに高学歴化とともに雇用労働化とホワイトカラー化がすすみ︑ホワイトカラー化は高学歴

女性において顕著であった︒

三十四歳までの︑あるいは就職後一〇年までの移動頻度や移動時期からみたモビリティは︑男女とも︑コーホートに

よる差はほとんど確認できなかった︒男性の場合︑学歴が高いほど︑また専門職や大企業ホワイトカラーといった職業

威信の高い職業ほど︑モビリティが低く︑安定的だといえる︒一方︑女性では︑学歴︑職業分類にかかわらず男性と比

べてモビリティが高く︑とりわけ初職の継続率が低かった︒これは︑結婚や出産といったライフ・イヴェントによる離 初期キャリアにおけるモビリティ

― 20 ―

(22)

職を反映しての結果だと考えられるが︑本稿では個別のライフ・イヴェントの効果よりはむしろ︑初期キャリアにおけ

るモビリティの男女差を明らかにすることに関心があったので︑ライフ・イヴェント変数を用いた分析にまでは踏み込

まなかった︒これについては別稿を準備している︒

男性の場合︑全コーホートを通じてもっとも主要な入職経路のひとつは中小企業ブルーカラーであり︑就業継続率の

低さから移動性の高さが予想された︒また︑高学歴あるいは工業系の職業高校や企業内でのOJTなどによる技能形成

が進むほど︑初職への定着率が高まることが推察された︒これについては︑今後より厳密な分析を行なう必要があろ

う︒

これらの結果を︑フリーターという働き方をネガとしたときの︑ポジとしてとらえると︑フリーター登場以前のキャ

リア形成は次のようなものであったと考えられる︒男性では︑高学歴化を背景に︑企業への定着が強まったが︑安定を

享受できたのは男性の中でも一部だけであり︑主要な職業のひとつであった中小企業ブルーカラーでは初職離職傾向が

高かった︒教育投資は安定を得るためと考えることができ︑﹁いい学校へ入る﹂というのはそれなりに意味があった時

代であった︒これに対し女性では︑高学歴化は進んだものの︑学校でのスキルが男性とくらべて職業と直結しておら

ず︑さらに企業内での技能形成のチャンスにも恵まれていなかったため︑企業への定着はライフ・イヴェントによって

大きく左右されたといえる︒さらに︑今日のフリーター数︵男性九四万人︑女性一一五万人︶や︑﹁女性は明らかにフ

リーターから離脱しにくい﹂という調査結果︵小杉二〇〇三︶からも︑女性の労働市場における地位は周辺的なもので

あり続けているといえる︒

最後に︑本稿は初期キャリアのなかでも︑主に初職の継続/離職についての分析にとどまり︑転職行動からモビリテ

ィについてとらえることが不十分であった︒この点については︑今後の課題としたい︒

― 21 ―

初期キャリアにおけるモビリティ

(23)

﹇付記﹈一九九五年SSMデータの使用にあたり一九九五SSM研究

会の許可を得た︒

注︵1︶もっとも︑ここでは最終学歴を問題としているため︑短大・大

学への進学者を含まない︒短大・大学進学者を含めれば︑普通科

卒の割合は常に職業科卒よりも高くなる︒

︵2︶二六歳以上で初職に就くことが比較的多かった一九三六︱四〇

年︑一九四一︱四五年コーホートでは︑入職年齢を限定しない場

合︑入職年齢の標準偏差はそれぞれ六・九歳︑五・四歳と大きく

なる︒

︵3︶総合職業分類は︑下表のように職種︵SSM職業大分類︶︑従業

上の地位︑規模︵従業員数︶の組み合わせで構成されている︵原

・盛山一九九九

xixより︶︒ :

︵4︶ただし︑ここでは出身地を問題にしていないので︑﹁集団就職﹂

でないものも含まれている︒また︑職業経歴における地域間格差

︵市部/郡部︶を扱った論文としては佐藤︵二〇〇〇︶がある︒

︵5︶n年目の初職継続者をCnとおくと︑n年目の離職ハザードは︑Hn

=︵Cn1

nn1C/C︶と定義される︒ −

文献

玄田有史︵二〇〇一︶﹃仕事のなかの曖昧な不安││揺れる若者の現

在﹄中央公論新社︒

原純輔︵一九九二︶﹁定型データと非定型データ﹂原純輔編﹃非定型デ

表 総合8分類の構成要件

規模(従業員数)

官公庁

官公庁、300人以上 300人未満 官公庁以外 300人未満 官公庁、300人以上 300人未満 従業上の地位

経営者・役員 被雇用者 被雇用者 経営者・役員 自営業者・家族従業者 被雇用者

被雇用者

自営業者・家族従業者 職種(SSM大分類)

専 門

管理・事務・販売 管理・事務・販売 管理・事務・販売 熟練・半熟練・非熟練 熟練・半熟練・非熟練 熟練・半熟練・非熟練 農 業

総合8分類 専 門 大 ホ ワ イ ト 中小ホワイト 自営ホワイト 大 ブ ル ー 中 小 ブ ル ー 自 営 ブ ル ー 農 業

初期キャリアにおけるモビリティ

― 22 ―

(24)

ータの処理・分析法に関する基礎的研究﹄︵文部省科学研究費補助金研究成果報告書︶一︱一三ページ︒

原純輔・盛山和夫︵一九九九︶﹃社会階層││豊かさの中の不平等﹄東京大学出版会︒

今田幸子︵一九八八︶﹁職業経歴のコーホート分析﹂雇用職業総合研究所﹃職研調査報告書七七女性の職業経歴︱一九七五年︑

一九八三年﹁職業移動と経歴︵女子︶調査﹂再分析﹄雇用職業総合研究所︑五二︱一〇一ページ︒

猪木武徳︵二〇〇〇︶﹃日本の近代7経済成長の果実一九五五〜一九七二﹄中央公論新社︒

加瀬和俊︵一九九七︶﹃集団就職の時代﹄青木書店︒

小杉礼子・堀有喜衣︵二〇〇二︶﹁若者の労働市場の変化とフリーター﹂小杉礼子編﹃自由の代償/フリーター││現代若者の就業

意識と行動﹄日本労働研究機構︑一五︱三五ページ︒

小杉礼子︵二〇〇三︶﹃フリーターという生き方﹄勁草書房︒

厚生労働省︵二〇〇三︶﹃労働経済白書︵平成十五年版︶﹄︒

佐藤嘉倫︵二〇〇〇︶﹁高度成長の光と影﹂原純輔編﹃日本の階層システム1近代化と社会階層﹄東京大学出版会︑一三七︱六

〇ページ︒

盛山和夫︵一九九九︶﹁女性のキャリア構造の特性と動向﹂﹃日本労働研究雑誌﹄四七二号︑三六︱四五ページ︒

柴垣和夫︵一九八九︶﹃昭和の歴史9講和から高度成長へ﹄小学館︒

山田昌弘︵一九九九︶﹃パラサイト・シングルの時代﹄筑摩書房︒

― 23 ―

初期キャリアにおけるモビリティ

参照

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