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大 田南畝の狂詩の文法

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大 田南畝の狂詩の文法

浅 山 佳 郎

厳 明

1は じめ に 1.1目 的

本稿 は 、 大 田南 畝 の狂 詩 集 で あ る 『壇 那 山人 藝 舎 集 』(岩 波 書 店 全 集 版) を資 料 と して 、狂 詩 の文 法 的特 徴 に つ い て 論 じる もの で あ る。

結 論 と して 、 次 の2点 を指 摘 す る。1つ は 、 狂 詩 に用 い られ てい る言 語 が、 古 典 中 国 語 の 日本 に お け る変 容 体 の̲̲̲̲で あ る こ とであ る。 も う1つ は、 そ の 変容 が 、母 語 で あ る 日本 語 の 転 移 、 お よ び 日本 漢 詩 が持 つ第2言 語 と して の性 格 の2つ に よ って 説 明 し うる もの で あ る こ とで あ る ω。

1.2資 料

狂 詩 の資 料 と して は前述 した 『壇 那 山 人藝 舎 集 』 を 用 い る。 南 畝 の 狂詩 集 と して は 『通 詩 選 』 の シ リー ズ の方 が 有 名 で あ る が 、 これ は 『唐 詩 選 』 の パ ロデ ィ で あ り、 『通 詩 選 』 の 各 詩 は そ れ ぞ れr唐 詩 選 』 の各 詩 を 直 接 下 敷 き に して作 られ て い る。 そ の た め に 、 文 法構 造 は大 き く も とのr唐 詩 選 』 の詩 句 に 制 約 され てい る。 これ は 、 狂詩 の 文 法 を 検 討 す るた め の 資 料 と して、 『通 詩 選 』 が 適 当 な 対 象 とな らな い こ とを 意 味 す る。 ま た同 じ く 南 畝 に はr寝 惚 先 生 文集 』 が あ るが 収 め られ た詩 が少 な い。 よ っ て、 量 的

に もあ る程 度 ま とま って お り、 かつ 個別 の 中国 詩 の直 接 的 な 影 響 を受 け て い な い 『壇 那 山 人 藝 舎 集 』 を用 い る。

『壇 那 山 人 藝 舎 集 』 に は、5言 律 詩 が4首 、7言 律 詩 が14首 、5言 絶

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句 が14首 、7言 絶 句 が65首 収 め られ て い る。 そ れ らの1つ1つ の詩 句 を単 位 と して 、そ の 文 法 構 造 を分 析 す る(2}。 全 部 で97首 、460句 で あ る。

これ と対 比 す る 資 料 と して 『唐 詩 選 』 を 用 い る。 『唐 詩 選 』 を 選 択 す る 理 由 は 、 『通 詩 選 』 シ リー ズ を 作 って い る と こ ろ か らみ て 、 南 畝 の 中 国詩 学 習 の 対 象 と して 『唐 詩 選 』 が 最 も重 要 な もの で あ った ろ う と予 測 す るか らで あ る。 本 稿 で は 『唐 詩 選 』 か ら、 上 記 の 南畝 の 『壇 那 山人 藝 舎 集 』 に 収 め られ た各 詩 体 の 詩 数 と一 致 す る まで 、 適 当 に97首 を抽 出 した。 この 抽 出 に あ た って は 基 本 的 に無 作 為 に選 ん だ が 、作 者 が で き る か ぎ り重 複 し な い よ うに心 が け た。 以 下 、 本 稿 で 『唐 詩 選 』 とい う時 は 、 この 抽 出 した 97首 を 指 す 。

2前 提

2.1狂 詩 の 言 語 分 析 の意 味

本 稿 が 、狂 詩 を と りあ げ るの は、 狂 詩 を 日本 漢詩 の 一 部 と して位 置 づ け る こ とが 可 能 で あ る とい う作 業 上 の仮 説 に基 づ く。 日本 漢 詩 は 、 東 ア ジ ア に 共 通 の 表 現 形 式 で あ る漢 詩(古 典 中 国 語 詩)の 変容 体 の1つ で 、 日本 に お い て 日本 化 した もの とと ら え る こ とが で き る。 そ して 、 狂 詩 は 形 式 上 も 内 容 上 も、 規 範 的 に 中 国 の 漢 詩 を と らえ る態 度 か ら最 も か け 離 れ る の で、

日本 漢 詩 が持 つ 漢詩 の 日本 化 とい う特 性 の最 も極 端 な 例 と見 る こ とが で き る。 換 言 す れ ば 、 い わ ゆ る 「和 臭 」 の 最 も極 端 な 例 と考 え る こ とが で き る の で あ る。 この 仮 説 の上 で 、本 稿 は 問題 を 文 法 に限 定 し、文 法 上 で 狂 詩 を 漢 詩 の 変 容 体 と と らえ る こ とが適 当 か 否 か 、 さ らに適 当 だ とす れ ば どの よ

うな 文 法 的 な特 徴 を持 つ か を論 じる。

狂 詩 が 、 字 数 のみ を漢 詩 に 合 わせ て 漢 字 で表 記 した 形 式 であ り、 漢 詩 と は ま っ た く異 な る別 種 の 表 現 形 式 で あ る とす れ ば 、 そ の 言 語 につ い て の分 析 の 意 味 は 狂 詩 に と どま る の み で あ り、 日本 漢 詩 全 体 とは か か わ らな い。

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人田南畝の狂詩の文法3 しか し、 も し狂詩 が 広 い 意 味 での 「漢 詩 」 の 範 囲 に入 り、古 典 中 国語 を最 も 日本 化 させ た例 で あ る とす れ ば 、 そ の 言 語 的 な特 徴 は、 日本 漢 詩 全 体 に お い て古 典 中 国語 が どの よ うに変 化 したか を 見 る指 針 とな る。 これ が、 本 稿 で 狂 詩 の言 語 的 な分 析 を行 な う理 由 で あ る。

以 下 、 まず 、 狂 詩 を言 語 的 に古 典 中 国 語 に よ る漢 詩 の 変 化 した もの と見 る こ とが 可 能 で あ る とい う根 拠 を3つ 示 す(3)。

2.2根 拠(1)各 字 の 句 成 分 と しての 分 布

ま ず 、r壇 那 山人 藝 舎 集 』 お よ び 『唐詩 選 』 各 詩 句 の 各 字 につ い て、 句 の成 分 と して の分 布 を 示 す 。 この 調 査 に あ た って 、本 稿 では 、「述 語 」「補 語 」

「連 体 修 飾 語 」 「連 用 修 飾 語 」 「虚 詞 」 の5種 類 に分 類 した ㈲。 この分 類 は 、 句 を 成 立 させ る要 素 成分 と して の分 類 に品 詞 的 な 要 素 で あ る 「虚 詞 」 を 加

え た もの で、 統 一 性 に 欠 け る。 た だ し、 定型 詩 を 各 字 の レベ ル で分 析 す る 場 合 、 中国 語 で は形 態 論 的 な 品詞 分 類 が 難 しい の で、 品 詞 と しての 分 類 に 完全 に 依 拠 す るわ け に も行 か ず、 また定 型 詩 が 語 と字 に つ い て一 定 の 関 係 を一 貫 して維 持 してい るわ け で は な い の で、 句 成 分 と して の 分類 の み に依 拠 す る わ け に もい か な い 。 よ っ て、 こ こでは 「虚 詞 」 を加 え て大 き く5つ に分 け る分 類 法 を と る。

以 下 、 そ の 分 類 につ い て説 明 を加 え て お く。

「述 語 」 は、 動 詞 述 語 ま た は 形 容 詞 述 語 と して 機 能 して い る字 を 指 す。 古 典 中 国 語 に は この ほ か に 名 詞 述 語 が 存 在 す る。 「黄 金 七 千 斤(黄 金 は 七 千 斤 な り)」 の よ うな 判 断 文 と呼 ば れ る文 の 述 語 で あ る。 この 判 断 文 も 完 結 した文 で あ り、 名 詞述 語 も完 全 な 述 語 であ るか ら、 本 来 は本 稿 の分 類

であ る 「述 語 」 に 帰属 させ な け れ ば な らな い。 しか し、中 国語 に お い て は、

判 断 文 が 主 題 一評 述 形 式 を と って、そ の 範 囲 が か な り広 くな る場 合 が あ り、

判断 が あ い まい にな る可 能 性 が あ る の で 、 こ こで は 形式 上動 詞 述語 と形 容

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詞 述 語 の み を 「述 語 」 とす る。

「補 語 」 は 、 主 題 とな る 名 詞 句 ま たは 述 語 に対 して項 と な る名 詞 句 また は独 立 した 名 詞 句 を 指 す 。 つ ま り 「楓 樹 林(楓 樹 の 林)」 の 「楓 樹 」 な ど の よ うな 、連 体 修 飾 の機 能 を 果 たす 名 詞 句 以 外 の全 て の 名 詞 句 全 て を指 す 。

「補 語 」 とい う用 語 は 、 中 国語 文 法 と して は 、述 語 に 後 置 さ れ る名 詞 句 の うち 、「賓 語 」以 外 の 結果 状 態 な どを 示 す もの を指 す の が 本 来 の意 味 で あ る 。

しか し本 稿 で は、 述 語 に対 して 項 とな る名 詞 句 とい う 日本 語 文 法 にお け る

「補 語 」 の概 念 を 用 い 、 さ らに それ を拡 大 して、 「連 体 修 飾 語 」 以 外 の名 詞 句 全 て を 便 宜 的 に 「補 語 」 と呼 ぶ こ とに す る。 そ の 結 果 、 本 稿 の 「補 語 」 に は、 「主題 」 名 詞 句 を 含 む い わ ゆ る 「主語 」 と 「賓 語 」 とい う、 述 語 の 前 後 に置 か れ る 全 て の 名 詞 句 、 お よ び動 詞 述 語 ま たは 形 容 詞 述 語 を持 た な い 詩 句 の 名詞 句 な どを 含 む こ とに な る。

「連 体 修 飾 語 」 は、 名 詞 、 形 容 詞 、 動 詞 が 名 詞 の 前 に 置 か れ て 、 そ の 名 詞 を 修 飾 して い る もの で あ り、 「連 用 修 飾 語 」 は、 名 詞 、 形 容 詞 、 動 詞 、 副 詞 が動 詞 の 前 に置 か れ て 、 そ の動 詞 を修 飾 して い る もの で あ る。

「虚 詞 」 は、 句 の 成 分 と して は 、 「連 用 修 飾 語 」 に分 類 され る もの が 多 い が 、必 ず しもそ れ ば か りで は ない 。 ま た、近 世 の 日本 の 中 国 語 学 習 者 に と っ て 「虚 詞 」 が き わ め て 重 要 な分 類 で あ り、 そ う した意 識 を 反 映 させ つ つ 、 各 字 ご との文 法 性 の分 布 を 見 る ため に は、 これ らを 「連 用 修 飾 語 」 に含 め

る の で は 十分 で な い と考 え、 独 立 した分 類 項 目の1つ と した。 な お 、 本 稿 で は、 伝 統 的 に 「虚 詞 」 とされ る もの か ら、 情 態 ・程 度 ・量 の副 詞 を 除 い た もの を 「虚 詞 」と して あ つ か っ た。 これ らは 「連 用修 飾 語 」 に分 類 す る 。

以 上 の分 類 に基 づ い て、r壇 那 山 人 藝 舎 集 』 とr唐 詩 選 』 の 各 詩 句 の 各 字 につ い て、 そ の 成 分 と して の 分 布 を比 較 した の が、 次 の グ ラ フ で あ る。

な お 、 こ こで 「1字 」 か ら 「7字 」 とい うの は 、 各 詩 句 の 「第1字 め」 か ら 「第7字 め」 の 意 味 であ り、5言 詩 につ い て は 、 そ の 第1字 め を7言 詩

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人 田 南 畝 の 涯 詩 の 文 法5

の 第3字 め に相 当す る もの とみ な して集 計 した 。 そ の ため 第1お よ び第2 字 は372字 、第3字 以 後 は460字 が総 計 数 とな る。

グラフ 『壇那山人藝舎集」,と ∫唐 詩選』 の各詩句 における成分 と しての分布

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一{ト ー唐詩選

+壇 那 山人警舎集 Q

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述 補 連 連 虚 述 補 連 連 虚 述 補 連 連 虚 述 補 連 連 虚 述 補 連 連 虚 述 補 連 連 虚 述 補 虚 語 語 体 用 詞 語 語 体 用 詞 語 語 体 用 詞 語 語 体 用 詞 語 語 体 用 詞 語 語 体 用 詞 語 語 詞

この グ ラ フ は、各 字 が、それ ぞれ 「述 語」 と して働 い てい るの か 、「補 語 」 とな る名 詞 句 と して働 い て い るの か 、 とい っ た分 布 を示 す もの で あ る 。 グ ラ フ上 で、『唐 詩 選 』と 『壇 那 山人 藝 舎 集 』の そ れ ぞ れ を示 す 線 が ほ ぼ重 な っ て お り、 各 字 が 「述 語 ・補 語 ・連 体 修 飾 語 ・連 用 修 飾 語 ・虚 詞 」 の どれ に な る か とい う数 値 が 『唐 詩 選 』 と 『壇 那 山人 藝 舎 集』 で ほ ぼ 同 じであ る こ とに な る。 これ は 、 各 字 の 成 分 と して の分 布 が南 畝 の 狂詩 と漢詩 とで近 似

して い る こ とを示 す 。

つ ま り、句 の 成分 とい う点 か ら考 え る限 り、主 題 、述 語 、述 語 の項 とい っ た狂 詩 の 文 法 的 な基 本 構 造 は 、 『唐 詩 選 』 中の 漢 詩 と大 き く異 な って は い な い と考 え る こ とが で き る。 狂 詩 は、 一 見 す る と漢詩 と して の 言語 構 造 を 大 き く壊 して い る よ う に見 え な が ら、 実 際 は、 この グ ラ フ に 見 る よ うに 、 か な り接 近 して い る。

な お 、 こ こ で比 較 的 大 き な ズ レを 見 せ て い る5字 め と7字 め の 「述 語 ・

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補 語 ・連 体 修 飾 語 」 の 問題 に つ い て は 、 以 下 のr3.2」 で あつ か う。

2.3根 拠(2)日 本 語 に基 づ く句 の構 造

次 に、日本 語 の 言 い まわ しに 基 づ い て い る と判 断 で き る句 を と りあ げ る。

狂 詩 に は 、 あ き らか に 日本 語 の諺 や 慣 用 表現 な どに基 づ い て書 か れ た部 分 が あ る。 次 の例 は 、 「鬼 の 目に も涙 」 とい う 日本語 に 基 づ い た もの で あ る。

前半 の 「鬼 の 目」 は、 助 詞 「の」 を 除 い た だ けで そ の ま ま擬 似 的 な漢 語 と して 用 い て お り、 そ れ以 外 の 後 半 部 分 は 「含 涙 雨 」 とい う動 詞 と 目的格 名 詞 の 構 造 を 持 つ 動 詞 句 に翻 訳 され てい る。

(1)鬼 目亦 応 含 涙 雨(南 畝 「題 白壁 画」 詩 そ の1)

こ う した表 現 の 大 半 は、 この 「鬼 目」 の よ う に、 語 彙 は 日本 語 そ の ま ま の語 彙 を 漢 字 表 記 した もの が 用 い られ る。 問 題 は文 法 で あ る,,日 本 語 と中 国 語 で は 基 本 的 な語 順 に 差 が あ る。 も し狂 詩 が、 単 に 漢 字 表 記 とい う外 面 だ け を 漢 詩 と似 せ た もの で あ り、 古 典 中国 語 に よ る漢 詩 とは根 本 的 に 異 な る もの で あ る とす れ ば 、 語 順 に おい て も 日本 語 の 文 法 が 優 先 す る可 能 性 が あ り、 い っぽ う、 か な りはず れ た もの で は あ って も、 狂 詩 が基 本 的 に古 典 中 国語 に よ る漢詩 と して の枠 組 み を残 す もの で あ る とす れ ば 、 中 国語 の 語 順 が 文 法 と して 優 先 的 に な る は ず で あ る。

中 国語 と 日本 語 の 基 本 的 な語 順 に つ い て み るな らば 、 この 間 題 は と くに 述 語 動 詞 と 「賓 語 」 の 間 で 顕 著 にな る。 中 国語 で は 「賓 語 」 が 動 詞 の後 ろ

に 置 か れ る の に対 し、 日本 語 で は前 に置 かれ る か らで あ る。

以 下 の(2)のaは 、日本 語 の語 順 に よ る例 であ り、「目 く じ らを 立 て る」

が 「目観 立 」 とい う語 順 の ま まに な って い る。bは 、 中 国語 の 語 順 に よ る 例 で あ り、 「槌 で 庭 を掃 く」 が 「以 槌 掃 庭 前 」 と い う よ うに 、 中 国 語 の 介

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大田南畝の狂詩の文法7 詞構 造 の 動 詞 句 にな っ て い る。

(2)a猟 師 目JH立 相 尋(南 畝 「題 鯨 吹潮 図」 詩) b家 々以 槌 掃 庭 前(南 畝 「大 黒 賛 」 詩)

南 畝 の 『壇 那 山人 藝舎 集 』 に は 、 上 の 例 の よ うな 口本 語 の 言 い まわ しに 基 づ く表 現 を 、 全 部 で 約38例 認 め る こ とが で き る。 これ を 日本 語 の 語 順 が反 映 して い る もの 、 中 国 語 の 語 順 に置 き換 え られ てい る もの 、 どち ら と もい え な い もの に分 け る と、以 下 の よ うな 数 値 に な る。

(3)a日 本 語 語 順 が反 映 す る もの b中 国語 語 順 に な って い る もの

cど ち ら と もい え ない もの

620

と くに 、動 詞 と 目的格 名 詞 句 か らな る もの は、 ほ ぼ 全 て 中 国語 の 語 順 に な って お り、 そ れ が 「喫 茶 」 の よ うな語 彙 的 な レベ ル で は な く、 上 に 見 た

「槌 で庭 を 掃 く」 の よ うな 句 レベ ル で 行 わ れ て い る こ とは、 少 な く と もあ る程 度 ま で は、 狂 詩 が 中 国 語 と して 形 成 しよ う とす る意 識 の も とに作 られ てい る こ とを示 す 。

2.4根 拠(3)各 詩 句 の理 解 可 能性

最 後 に 、各 詩 句 を 中 国 語 と して 見 た場 合 の 理 解 度 を 見 る。 以 下 の数 値 は、

中 国語 と して 解釈 した場 合 の 意 味 と本 来 の狂 詩 と して の意 味 の比 較 を 、 ほ ぼ一 致 す る もの 、 問題 の あ る もの 、 中 国語 と して は理 解 で き な い もの の3 つ に分 類 した もの で あ る。

この判 定 に は 、 まず 、 中 国語 を母 語 とす る厳 明 が 、 資 料 と した 『壇 那 山

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人 藝 舎 集 』 の 各 詩 句 を 中 国語 と して 読 ん で解 釈 し、 そ の解 釈 を 、 日本 語 を 母 語 とす る浅 山 が 岩 波 全 集 版 の 底 本 に加 え られ て あ る訓 点 に 基 づ い て 訓 読 した場 合 の 解 釈 と比 較 して 行 っ た。 「ほ ぼ0致 す る もの 」 は両 者 の解 釈 が ほ ぼ 同 じに な った も の 、 「問題 の あ る もの 」 は 中 国語 と して 解 釈 す る こ と が 可 能 で は あ るが 、 訓 読 した場 合 の 日本 語 と して の 解 釈 とは異 な る もの 、

「理 解 で きな い もの 」 は 中 国 語 と して は解 釈 す る こ と が不 可 能 な もの で あ る。

alDC

) 4 (

ほ ぼ一 致 す る も の

問題 のあ るもの 理解で きない もの

227(49.x%) 160(34.8%)

7(15.9%

この 比較 に は 、 固 有 名 詞 や 背 景 の事 情 な ど とい っ た必 要 な情 報 の 欠 如 に よ る理 解 不 能 ま た は誤 差 は加 え て い な い 。 こ う した 問題 は、 中 国 にお け る 漢 詩 内 部 にお い て も、 時 代 差 や 地 域 差 な どに よ って 存 在 す る もの で あ り、

そ こに用 い られ た言 語 自体 に基 づ くもの で は ない か らで あ る。

この 数 値 に よれ ば、 必 要 な情 報 を 注 と して加 え る とい う条 件 が 満 た され れ ば、 南 畝 狂 詩 の約 半 数 の 詩 句 が 古 典 中 国語 に よ る漢 詩 と して も正 し く理 解 可 能 で あ り、言 語 的 な 理 由 で全 く理 解 で き な い もの は2割 に満 た な い こ

とに な る。 これ も、 狂 詩 が 漢 詩 の変 容 の 一 部 で あ り、 そ れ とは まっ た く異 な る もの で は な い とい う視 点 を支 持 す る根 拠 で あ る。

こ こ まで見 た3つ の根 拠 は、 狂 詩 が 古 典 中 国語 を 基 本 的 な枠 組 み と して 作 られ て い る こ とを 示 す もの で あ った 。 狂 詩 は、 一侃 漢 詩 の ルー ル を 完 全 に 壊 して い る よ うに見 え る が 、 そ れ は 平 灰 と押 韻 とい う音 声 面 にお い て顕 著 であ っ て も、 句 の構 造 とい う点 で は 、 基 本 的 に古 典 中 国 語 に よ る漢 詩 の 枠 組 み に従 っ てい る。 逆 に い えば 、 狂 詩 に お け る 言語 上 の 非 中 国的 な 特 性

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大出南畝の狂詩の文法9 は、 漢 詩 の 日本 化 を 考 え る上 で 、 そ の 言 語 上 の 問題 につ い て の基 準 とな る とい う こ とが で き る 。

3狂 詩 の 文 法 的 な 問題 点 3.1名 詞 句 だ け か らな る句

南 畝 狂 詩 の各 詩 句 の 文 法 を 『唐 詩 選 』 の 詩 句 と比 較 す る場 合 、最 も顕 著 な特 徴 の1つ が 動 詞 述 語 また は形 容 詞 述 語 を 持 た な い詩 句 、つ ま り名 詞 の み で構 成 され て い る詩 句 が 多い こ とで あ る。

先 の 「2.2」 で詩 句 の 各 字 の 成 分 と して の 分 布 を 比 較 したが 、 総 計 の 数 を 見 る と、 「補 語 」 とな る名 詞 が南 畝 で1520字 、 『唐 詩 選 』 で1446字 であ り、南 畝 が 『唐 詩 選 』 の1.05倍 とほ ぼ 同 じ水 準 にな るの に対 して 、「述 語 」 とな る動 詞 や 形 容 詞 は 、 南 畝 で529字 、 『唐 詩 選 』 で709字 で あ り、

南 畝 は 『唐 詩 選 』 の0.75倍 に過 ぎ な い。 つ ま り、 南 畝 の狂 詩 は 全 体 と し て述 語 動 詞 や 述 語 形 容 詞 が 少 な い 。

本 稿 で あ つ か う 『壇 那 山人 藝 舎 集 』 と 『唐 詩 選 』 に お け る 「名 詞 句 だ け か ら な る詩 句 」 の数 値 は 以 下 の よ うに な る(5)。 な お 、()内 の%は 総 句 数 に お け る名 詞 句 だ けか らな る詩 句 の 占め る割 合 で あ る。

(5)r壇 那 山人 藝 舎 集 』 r唐 詩 選』

78句(17.0%) 27句(5.9%)

量 的 に 南 畝 の狂 詩 は 『唐 詩 選 』 の3倍 近 くにな り、 また、 南 畝 に お け る 当該 の詩 句 数 が17%に な る と こ ろ か ら 見 て、 これ は狂 詩 と漢 詩 の 顕 著 な 構 造 差 の1つ であ る と判 断 で き る。

南 畝 の狂 詩 に お け る 「動 詞 ・形 容 詞 述 語 の 無 い 句 」 は、 大 き く2つ に分 け る こ とが で きる 。1つ は 、 漢 詩 の一 般 的 な 特 徴 であ る前4字 ま た は前2

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字 と後3字 に2分 した分 析 が 可 能 な もの で あ り、 も う1つ は 、 そ う した分 析 が 不 可 能 な もの で あ る。 以 下 、南 畝 の狂 詩 にお い て 「動 詞 ・形 容 詞 述 語 の ない 句 」 が 多 くな る理 由を 、 この2つ に分 け て考 え る。

まず 、 第1の 、 漢 詩 の 一 般 的 な構 成 で あ る前4(2)字 と後3字 に 分 け られ る もの で あ る。 これ は南 畝 の 狂 詩 と 『唐 詩 選 』 の 漢 詩 とで 同 じ構 造 を 持 つ もの で あ る。 た とえ ば、 次 の2つ のabそ れ ぞれ に 、構 造 上 の 差 を 見 る こ とは難iしい 。

(6)a高 雄紅葉美 人顔 b蘭 陵美酒鯵 金香 (7)a飯 田町上小 松軒 b姑 蘇城外寒 山寺

(南 畝 「壬 寅 中村 座秋 狂 言 」 詩) (李 白 「客 中 行 」 詩)

(南 畝 「七 月 二 十 六 夜 過 小 松 軒 遇 雨」 詩) (張 継 「楓 橋 夜 泊 」 詩)

これ らは 基 本 的 に2つ の2字 名 詞 の後 ろ に2字+1字 の 名 詞 句 を置 く構 造 で、 名 詞 句 を重 ね て い く比 較 的 単 純 な 方 法 で あ る。 そ して、 この構 造 が 南 畝 の狂 詩 に お い て は きわ め て 多 い。

動 詞 述 語 は 、名 詞 句 とあ る格 関 係 を持 つ こ とが 可 能 であ り、 動 詞 述 語 の 存 在 は文 法 的 な構 造 を 決 定 す る。 逆 に 動 詞述 語 を 持 た な い場 合 、動 詞 に よ る構 造 を持 つ こ とは で き な い 。 そ の 意 味 で名 詞 句 のみ か らな る詩 句 は、 構 造 が ゆ るや か で 、 作 りや す い とい う こ とが で き る。 構 造 の制 約 が ゆ るい こ とに よ る作 りや す さ、 生産 性 の 高 さは 、 狂 詩 が古 典 中 国語 とい う外 国語 に よ って 書 か れ てい る とす る な ら、 非 母 語 に よ る表 現 を 比較 的 に 容 易 にす る 方 向 で は た ら く。 こ こに 見 た 名 詞 句 を3つ 重 ね る形 式 は 、そ の1つ で あ り、

狂 詩 の 文 法 的 な特 徴 の1つ が 、 生 産 の 容 易 さ とい う第2言 語 と して の合 理 的 な 要 求 に基 づ くこ とを 示 す 。

第2の 前4(2)字 と後3字 とい う分 析 が不 可 能 な もの の 多 くは 、 固有

(11)

大田南畝の狂詩の文法ll 名 詞 が そ う した2字 を単 位 とす る基 本 的 な 漢 詩 の 構造 を 壊 して い る もの で あ る。 も と も と、 名 詞 の み を重 ね て 、動 詞 や 形容 詞 とい っ た述 語 を 持 たな い 詩 句 は 、 『唐 詩 選 』 にお い て も固 有 名 詞 が 多 め に用 い られ る{6}。 南 畝 狂 詩 で は、 さ らにそ れ が 漢 詩 の 基 本 的 な構 造 を壊 す よ うに は た ら く。以 下 の よ うな例 で あ る。

(8)a高 縄 十八 町 b仮 名手本忠 臣蔵

(9)a天 下市川海老蔵 b矢 倉太鼓声

(南畝 「 品川潮干」詩)

(南畝 「 小野氏宅観戯場番付 山田氏春 日部氏 在坐」 詩)

(南畝 「 題栢錘外郎売 図」詩) (南畝 「 顔 見世」詩)

(8)は 、 単 一 の 語 句 とみ な す こ とが 可 能 な 固有 名 詞 に よ っ て詩 句 全 体 が 成 り立 っ て い る もの で あ り、(9)は 固 有 名 詞 が 、 前4(2)字 と後3 字 の 分 か れ 目に ま たが っ て用 い られ て い る もの で あ る。

また この ほ か に 、構 造 と して は 先 に述 べ た3つ の名 詞 句 か らな る もの で あ る が、 固有 名 詞 の み に よ っ て1つ の詩 句 が 成 り立 っ て い る もの もあ る。

以 下 の例 で あ る。

(10)a団 十 伝 九 七 三 郎(南 畝 「題 三 優 人 図」 詩) b阿 亀 阿徳 阿 多 福(南 畝 「題 阿福 女 図」 詩)

こ う した、 固 有 名 詞 が 多 用 され て、 動 詞 ・形 容 詞 述 語 が用 い られ な くな る こ とにつ い て は、 母 語 であ る 日本 語 の影 響 を指 摘 す る こ とが で き る。 い うまで もな く、 南 畝 の 狂詩 にお い て は 日本 の 固有 名 詞 は ほぼ そ の ま まの表 記 で用 い られ る こ とが 多 い。 そ して 、 日本 語 の 固 有 名 詞 は 中国 語 に比 べ て

(12)

長 くな りが ち であ り、 そ の た め1つ の 名 詞 が2字 か ら3字 あ るい は4、5 字 を 占め る こ とに な り、 漢 詩 の基 本 的 な 構 造 に もあ わ な くな る。 さ ら に こ

う した長 い名 詞 が詩 句 の大 半 を 占め た場 合 、 動 詞 句 を形 成 す るた め の 空 間 を十 分 に確 保 す る こ とが で き な い の で、 名 詞 句 だ けか らな る詩 句 が 増 え る

こ とに な る。

以 上 、 このr3.1」 項 で は 、 狂 詩 の文 法 的 な 特 徴 の1つ と して 、 名 詞 句 だ け か らな る詩 句 が 多 い こ とを示 し、 そ の 理 由 と して 、 母 語 で あ る 日本 語 か らの 影 響 、 お よ び複 雑 な 構 造 を避 け る こ とに よ って 生 産 性 の 高 さ を 確 保 しよ う とす る第2言 語 と して の合 理性 の2つ を 指 摘 した。

3.2連 体 修 飾 を含 む 句

『壇 山 人 芸 者 集 』 と 『唐 詩 選 』 の 各 詩 句 の 文 法 的 な 構 造 を 、 「2.2」 項 で 見 た各 字 の 句 成 分 と して の 分 布 か ら比 較 す る と、南 畝 の 狂 詩 に以 下 の2 点 の 特 徴 を 指 摘 す る こ とが で き る。

(11)a『 壇 山 人 芸 者 集 』 の 狂 詩 は 『唐 詩 選 』 の漢 詩 よ り5・6字 め に

「連 体 修 飾 語 」 が 多 い 。

b『 壇 山人 芸 者 集 』 の狂 詩 は 『唐 詩 選 』 の 漢詩 よ り7字 め に 「補 語 」 が 多 く、 「述 語 」 が少 な い 。

これ は どち らも同 じ こ とを 指 す 。 つ ま り、 各詩 句 の 最 後 の3字 が 連 体 修 飾 を 持 つ 名 詞 句 とな る率 が 、南 畝 の狂 詩 に お い て 『唐 詩 選 』 の漢 詩 よ りも 高 い とい う こ とで あ る 。 そ して この 差 は、 他 の字 が持 つ 句 成分 と して の差 の大 き さ に 比較 して も と りわ け 大 きい こ とか ら、有 意 味 に 異 な って い る と 考 え る こ とが で き る。

各 詩 句 の最 後 の3字 が 連 体 修 飾 語 句 を持 つ 名詞 句 に な っ てい る詩 句 の 数

(13)

大 田 南 畝 の 狂 詩 の 文法13

値 は 以 下 の通 りで あ る。 な お()内 の%は 、総 句数 に 占め る割 合 で あ る。

(12)『 壇 那 山 人 藝舎 集 』 r唐 詩 選 』

177句(38、5%) 90句(19.6%)

この数 値 に よれ ば 、末 尾3字 の 連 体 修 飾 構 造 は 、南 畝 の狂 詩 が 『唐 詩 選 』 の漢 詩 の2倍 に の ぼ る。 も と も と連 体 修 飾語 自体 が 南 畝 の 狂詩 で は全 体 的 に 多 く、「2.2」 項 で用 い た分 類 の総 計 で も南 畝 の632字 に対 し 『唐 詩 選 』 の473字 と、1.34倍 に な る。 そ れ と比 較 して も、 この 末 尾3字 の 連 体 修 飾 は 多 い。

そ して 、最 後 の3字 が連 体 修 飾 語 句 を 持 つ 名 詞 句 の 大半 は 、以 下 の(13) に見 る よ うな2字 の名 詞 句 が連 体 修 飾 部 とな り後 ろに1字 の底 名 詞 が 置 か れ る もの で あ る。 南 畝 の狂 詩 で もr唐 詩選 』の漢 詩 で も8割 以 上 を 占め る 。

(13)a今 日暫 同芳 菊 酒(王 之 換 「九 日送 別 」 詩) b美 女 不 如 悪 女 情(南 畝 「題 阿福 女 図 」 詩)

末尾3字 が連体修飾 部を持つ名詞句 とな る場合 、 この名詞句 に対 する動 詞が その前 に置 かれ、その動詞 に対 して当該 名詞句が 目的格 または場所格 な どの格 関係 を持 つ場合 が多い。上の例 もそ うであるが、以 下のaは 目的 格、bは 場所格 の例 である。

(14)a横 笛 休 吹 塞 上 聲(張 喬 「宴 邊 將 」 詩) b宮 閾 参 差 落 照 間(盧 繍 「長 安 春 望 」詩)

こ う した末 尾3字 の 連 体 修 飾 部 を 持 つ 名 詞句 が前 の 動 詞 に対 して格 関係 を 持 つ とい う構 造 は 、 中 国 語 詩 と して も特殊 な もの で は な い 。 た だ 、 そ れ

(14)

が 狂 詩 に お い て 偏 向 して 用 い られ る傾 向 が あ る とい う こ との 理 由 と して は、 以 下 の2点 を 考 え る こ とが で き る。

第1は 、母 語 と して の 日本 語 の影 響 で あ る。 日本 語 は 中 国語 よ り長 め の 連 体 修 飾 部 を 持 ちや す い 〔7)。と くに動 詞 に後 置 され る名 詞 を 底 とす る場 合 、

古 典 中 国 語 は長 め の連 体 修 飾 部 を確 保 で きな い。 そ れ は 、古 典 中 国語 で も 連 体 修 飾 部 は名 詞 句 の 前 に 置 か れ るの で、 連 体 修 飾 部 が動 詞 と当 該 の 名 詞 の 間 に挟 まれ る こ とに な るか らであ る。 こ う した 理 由 もあ って 、 古 典 中国 語 で は、 連 体 修 飾 部 を 持 つ 名 詞 を、 日本 語 に比 べ る とや や 避 け る傾 向 にあ る。 こ う した 日本 語 と中 国語 の 差が 、 狂 詩 に用 い られ る連 体 修 飾 に反 映 し た とい う理 由 で あ る。

も う1つ は 、 末 尾3字 が 連 体 修 飾 部 を持 つ 名詞 であ る場 合 、1つ の詩 句 全 体 の 構 造 が や や 簡 単 に な りや す い とい う理 由 で あ る。

末尾3字 が 連 体 修 飾 部 を持 つ 名詞 句 で あ る場 合 、 そ の 前 に は述 語 が1つ しか な い 可 能 性 が 高 い 。 実 際 に 、r唐 詩 選 』 にお い て は、 末 尾3字 が 連 体 修 飾 部 を 持 つ 名 詞 句 で あ る90の うち 、 前 に2つ 以 上 の 述 語 を持 つ もの は 8つ に す ぎず 、『壇 那 山 人 藝 舎 集 』で は177の うち12に す ぎな い 。 つ ま り、

末 尾 が連 体 修 飾 部 を 持 つ 名 詞 で あ る場 合 、1つ の 詩 句 全 体 は1述 語 の構 造 とな る 。

述 語 は格 関 係 な どに よ っ て句 の構 造 に制 約 を 与 え る の で 、 そ れ が1つ で あ る場 合 、2つ 以 上 で あ る よ りも全 体 の 構 造 が 作 りや す い こ とに な る ⑧。

作 りや す さ、 つ ま り生 産 性 の高 さ は、 外 国 語 を 学 習 す る際 に有 利 で あ る 。 述 語 が1つ の構 造 は 、2つ の もの よ り単 純 で 生 産 性 が 高 くな る。 そ して 、

1述 語 は 、結 果 的 に 末 尾3字 に名 詞 句 を要 求 しが ち にな る。 狂 詩 の末 尾3 字 に連 体 修 飾 句 が 多 くな る理 由 の1つ で あ る。

以 上 、 この 「3.2」 項 で は 、 狂 詩 の文 法 的 な 特 徴 の1つ と して、 連 体 修 飾 が 多 くな る こ とを示 し、 そ の理 由 と して、 前 項 と同様 に 、 日本 語 か ら

(15)

大 田 南畝 の 狐 持の 文 法15

の転移 と第2言 語の合理性を指摘 した。

3.3格 関 係 の 問 題

次 に 、 南 畝 の狂 詩 を 中 国 語 と して 見 た場 合 の問 題 点 と して 、 あ る述 語 に 対 して、 格 関係 が不 適 当な 名 詞 句 が 用 い られ てい る とい う こ とを 指 摘 す る

こ とが で き る。 次 の よ うな 例 であ る。

(15)積 也 瘡 奇 哉(南 畝 「病 積 」 詩)

この 詩 句 の 訓 読 は 、底 本 に加 え られ て い る訓 点 に した が え ば 、 「し ゃ く や つ か へ に き な る か な」で あ る。詩 と しての 本 文 で あ る 「積 也 搭 奇 哉 」は、

この 訓 読 日本 語 を 、 そ の ま ま直 接 的 に漢 字 表 記 した もの で あ る。

この 構 造 につ い て は 、 「也 」 の 用 法 の 問 題 は 置 くと して、 「積 」 と 「病 」 とい う病 名 の後 ろ に 「奇 」 とい う述 語 を 置 く こ とが、 古 典 中 国語 と して適 当で な い とい う こ とを指 摘 で き る。 古 典 中国 語 と して の 「奇 」 とい う述 語 は 、rN奇 」 とい う形 式 の場 合 は 、 「Nが 奇 で あ る」 とい う意 味 に用 い る の が普 通 だ か らで あ る。 い っぽ う 日本 語 と して の 「奇 」 とい う語 は、 訓 読 み

「く し」 で も、音 読 み に よる 「きな り」 で も、「病 に奇 し」 や 「病 に 奇 な り」

な ど とい う表現 が 可 能 で あ る。 つ ま り、 日本 語 で は 「奇 」 とい う述 語 の 対 象 を 「に」 とい う格 に よ っ て示 す こ とが で き る。 これ に対 して 、 古 典 中 国 語 と して は 、 「奇N」 と後 ろに 名 詞 を 置 く場 合 で も、rNを 奇 とす る」 とい う 目的 語 一動 詞 述 語 構造 とは な るが 、 日本 語 の よ うな 「Nに 奇 で あ る 」 と い う格 関 係 は あ らわ せ な い 。

こ う した例 は、 そ れ ほ ど多 くは な い 。 中 国 語 が 格 助 詞 を持 た な い こ と、

対象 が 詩 な の で表 現 上 の 制約 が ゆ るい こ と とい っ た理 由か ら、 許 容 さ れ る 名 詞 と動 詞 ・形 容 詞 の範 囲 の は ば が 大 きい か らで あ る。 そ れ で もい くつ か

(16)

の不 適 当 な 格 関 係 が 南 畝 の狂 詩 に は 存 在 す る。

これ らは理 論 的 に は、2つ に分 け られ る。1つ は 日本 語 の格 関係 が 転 移 した も の で あ り、 も う1つ は 日本 語 の 格 関 係 とは 関 わ らな い もの で あ る 。 以 下 の(16)例 は 日本 語 の格 助 詞 の 影 響 であ る。

(16)自 大神宮多贔屓 「 南畝 「 瀬川仇 浪得戯 字」詩)

訓 読 は 「大 神 宮 よ り贔屓 多 し」 で あ る。 「自」は 起 点 の介 詞 と して は 「ヨ リ」 とい う訓 が 可 能 で も、比 較 の対 象 と して は使 え な い。 い っぽ う 日本 語 で は 比 較 の対 象 も 「よ り」 とな るの で、 そ う した 日本語 の 格 が影 響 した も の で あ る

しか し、 こ う した例 は少 な く、 個 別 の例 に対 して は 、 日本 語 の 格 関 係 が 影 響 した か ど うか 明確 に な らな い。 以 下 の例 は、 日本 語 の 「に 」 や 「で 」

とい っ た格 助 詞 の転 移 とみ る こ と もで き るが 、 明 確 では な い 。 しか し、 い ず れ に しろ古 典 中 国 語 の 名 詞 と動 詞 の 関係 と して は、不 適 当な 組 み 合 わせ

で あ る もの で あ る。

(17)a泥 坊 眠物 見(南 畝 「松 」 詩)

b坂 東 一 藝 満 金 箱(南 畝 「記 辛 丑顔 見世 」 詩 そ の1)

c懸 声 忽 昇 肩 輿 去(南 畝 「溝 店夜 雨(叡 麓八 景 そ の8)」 詩)

a例 は 、 底 本 の 訓 点 に よ れ ば 「物 見 に 眠 る」 と訓 読 す る。 「物 見 の 松 に 眠 る」 の 省 略 か 、 あ る い は 「に」 が情 況 を 示 す もの で 「物 見 を して い る う ち に 眠 る」 の か は置 く と して 、 い ず れ に しろ古 典 中 国 語 と して 「眠 」 に対 す る格 関 係 を 持 つ こ と は難 しい 。 「眠 花 」 や 「眠 雲 」 な どの よ うに 「眠 」 とい う動 詞 が そ の 場 所 を 示 して い る とみ な せ る名 詞 を後 置 す る例 は あ る

(17)

大田南畝の狂詩の文法17 が 、 どち らも 「妓 女 で遊 ぶ 」 「隠棲 す る」 とい う意 味 の 比 喩 で 用 い られ る

もの で あ り、 「花(雲)の 中 に 眠 る」 とい う状 態 を 言 う もの であ って 、 一 回性 の 「眠 る」 とい う事 態 を記 述 す る もの で は な い 。

b例 も、底 本 の 訓 点 に よれ ば 「坂 東 一 の芸 金 箱 に満 つ 」 と訓 読 す る 。 「坂 東 一 の芸 」 に よ って 「金 箱 」 が 「満 」 ち る とい う意 味 で あ ろ う と推 測 す る が、「芸 」 とい う名 詞 とそ の後 ろ に置 か れ る 「満」 とい う動詞 との 格 関 係 は 、 日本 語 と して は 「で」 を 予 想 す る こ と も可 能 であ る が 、 中 国語 と して は不 明 で あ る。

c例 も、底 本 の訓 点 に よれ ば 「懸 け 声 忽 ち肩 輿(よ つ で)を 昇(か)き 去 る」 と訓 読 す る。 や は り 「懸 声 」 が 後 ろ の述 語 部 分 と格 関係 を持 ち得 な い。 この 例 で は、 日本 語 と して も 「懸 声 」 は 「肩 輿 を 昇(か)く 」 の 「か

く」 とい う動 詞 と格 関係 を持 て な い。

古 典 中 国 語 は 、 格 関 係 を 明 示 す る要 素 を 十分 に は持 た な い 。 基 本 的 には 動詞 の 前 後 とい う2つ の位 置 が、 そ の動 詞 に対 して何 らか の 格 関 係 を持 つ こ とを 意 味 す る。 一 般 的 に 「主 語 」お よ び 「賓 語 」 と呼 ばれ る位 置 で あ る。

これ に対 し、 日本 語 で は格 関係 が 、格 助 詞 に よ って よ り明示 され や す い 。 あ る動 詞 が どの よ うな名 詞 句 を要 求 す るか は 、 日本 語 と中国 語 でか な り 共 通 しつ つ も、 そ れ ぞ れ の動 詞 でや や 異 な る部分 を 含 む 。 この 名 詞 と動 詞 の組 み 合 わせ に 関 す る情 報 は 、1つ1つ の動 詞 ご とに学 習 され な けれ ば な らず 、 学 習 と して は やや 負 担 が大 き い 。 とこ ろが 、 中 国 語 の 場 合 、格 助 詞 に相 当す る格 関係 を表 示 す る要 素 が無 い 。これ が逆 に 日本 語 で あ れ ば、誤 っ た格 関係 を あ る名 詞 と動 詞 の 間 に成 立 させ る場合 で も、 何 らか の 格助 詞 を 用 い な けれ ば な らな い が 、 中 国語 で は 、 動 詞 の 前 後 とい う位 置 が あ る だけ で あ り、さ ま ざ まな 名 詞 句 をか な り自 由 に動 詞 の前 後 に置 くこ とが で き る。

結 果 的 に、 あ る動 詞 が本 来 取 り得 る格 関係 を超 えて 、 名詞 句 が 用 い られ る こ とを 引 き起 こす。 これ は 、漢 文 に格 助 詞 が 用 い られ る こ とが 基 本 的 に

(18)

ないの で、 名詞句 と述 語 との関係 がやや ルー ズに把握 され るためで あ り、

格 関係 が述語 の前 と後の位置 のみ によ る とい う比較的容 易な規則 の過剰適 用 である。

この 「3.3」 項 では、狂 詩 の文法的 な特徴 の1つ と して、格 関係 が 中 国語 で許容 され る範 囲を超 えて用い られ る傾 向があ る ことを挙げ 、その原 因 として、母語 であ る日本語か らの影響 と第2言 語 に見 られ る規則 の過剰 適 用が認 め られ る ことを指 摘 した。

3.4虚 詞 の用 法

最 後 に 、虚 詞 の 特 徴 を と りあ げ る。虚 詞 は、 こ こで 資料 と した 『壇 那 山 人 藝 舎集 』 とr唐 詩 選 』 を比 較 した場 合 、 南 畝 狂 詩 の 用例 の ほ うが や や 少 な い 。 『唐 詩 選 』の0.87倍 程 度 で あ る。 これ に副 詞 を加 え て もや は り0.86 倍 程 度 に と どま る。 これ は、 南 畝 の 狂詩 に、 名 詞 句 が 多 く動 詞述 語 お よび 形 容 詞 述 語 が 少 な い こ とに起 因す る。 虚 詞 も副 詞 と同様 に句 全 体 ま た はそ の 中心 部 分 で あ る述 語 に対 して直 接 的 な 機 能 を 持 って い る もの が 多 い か ら で あ る。

た だ し、 虚 詞 の 特 徴 を 見 る場 合 、 こ こで 資 料 と した 詩 句 総 数460で は や や 不 安 定 に な る 可 能 性 が あ る。 よ っ て 「唐 詩 」 に つ い て は 、 浅 山 (1998)(9}で 用 い た1676詩 句 の デ ー タ を 用 い る こ と と し、 そ れ に あ わ せ る形 で狂 詩 の デ ー タを 調 整 して両 者 を比 較 す る こ と とす る。 そ の結 果 が以 下 の 表 で あ る。 この 表 は 、 狂 詩 の 用 例 が460詩 句 か らの もの で絶 対 数 と

して は不 足 す る の で 、 百分 率 で比 較 し、 参考 の た め に()内 に 『壇 那 山 人 藝 舎 集 』 で の使 用 実 数 を記 した 。 さ らに 、最 右 欄 に は、 も し唐 詩 と同 じ 詩 句 数 が 確 保 され た場 合 に は 、 狂 詩 の虚 詞 使 用数 が 唐 詩 の 何 倍 に な るか を 示 した。

(19)

大田南畝の狂詩の文法19 表 狂 詩 と唐 詩 の虚 詞 使 用 量 比較

唐詩 狂詩 唐詩 に対す る倍率

疑問反語の虚詞

10.9%

11.7%(31)

1.10

否定の虚詞

23.6°/a

17.0%(45)

0.74

ア スペ ク トの虚 詞 7.6%

4.9%(13)

比況 の虚 詞

4.0%

7.6%(20)

1.93

真偽判断の虚詞

11.0%

15.5%(41)

1.44

取 り立 ての虚詞

15.2%

12.1%(32)

評価 の虚 詞

12.2% 12.E°/a(32) 1.01

その他 の虚詞

15.4%

18.9%(50)

1.26

唐 詩 か らの 差 を 、 最 右 欄 の 「倍 率 」 で 見 る と、 『壇 山 人 芸 者 集 』 の ほ う が 有 意 味 に低 い と考 え る こ とが で き る の は 、 「不 、 非 、 無 」 な どの 「否 定 の虚 詞 」 で あ る。 この ほ か に 「ア ス ペ ク トの虚 詞 」 も低 い が 、 絶 対 数 が 少 な い の で 、 簡 単 に は判 断 で き な い。

この 「否 定 の 虚 詞 」 が 狂詩 で少 な い 理 由 は確 実 に し難 い 。 とい うの は 、 動作 の 否 定 で あ る 「不 」 の比 率 は狂 詩 と唐詩 とで あ ま り変 わ らず 、 差 が 大 き い の は 存 在 の否 定 で あ る 「無 」 だ か らで あ る。 上 で 見 た よ うに 南 畝 の 狂 詩 はr唐 詩 選 』の漢 詩 よ り も名 詞 句 が 多 くな りが ち で あ る こ とを考 え る と、

名詞 の 否 定 に用 い られ や す い 「無 」 が 、比 較 的 に 名詞 句 の 多 い 狂 詩 で、 唐 詩 よ りは るか に少 な くな って い る こ とに な る。

い っぽ う、 『壇 那 山 人 藝 舎 集 』 の ほ うが 有 意 味 に高 い と考 え る こ とが で き る の は 、 「元 、正 、 必 、 恐 」 お よ び 「知 、 識 」 な どの 「真 偽 判 断 の 虚 詞 」 と分 類 し た もの で あ る。 この 問題 には 、 「む 、 べ し、 だ ろ う」 な どの 日本 語 の推 量 助 動 詞 と呼 ば れ る 「真 偽 判 断 」 用 の表 現 形 式 が転 移 した 可能 性 を 予 測 す る こ とが 可 能 で あ る。 ま た 「如 ・若 」 な ど比 況 の認 定 を示 す虚 詞 の 用 例 数 が 多 い こ と も、 日本 語 にお い て それ らが 「真 偽 判 断 」 モ ダ リテ ィか

(20)

らの連 続 と して と らえ らる可 能 性 が あ る とす る と、 同 じよ うに 日本語 の 転 移 を予 測 す る こ とが 可 能 で あ る。

この 「3.4」 項 で は 、 虚 詞 の使 用 に関 して 、 南 畝 の 狂 詩 に は、 漢 詩 と 比 べ て 一 定 の 傾 き が あ り、 そ の 一 部 は 母 語 で あ る 日本 語 の影 響 を 認 め得 る

こ とを 指 摘 した。

4結 論

以 上 の 検 討 を通 して 、 本稿 で は 、 以 下 の 結 論 を 提 示 す る。 まず 、 (A)大 田南 畝 の 狂 詩 が 、基 本 的 に 漢詩 に 用 い られ る古 典 中 国 語 を そ の文 法 的 な枠 組 み と して い る こ と

であ る。 次 に 、

(B)大 田南 畝 の狂 詩 が 、以 下 の4点 にお い て、 文 法 的 に古 典 中国 語 と異 な る こ と

名 詞 句 の多 用 連 体 修 飾 句 の 多用 格 関 係 の拡 大 虚 詞 使 用 の傾 斜 で あ る。 さ らに、

(C)(B)で 指 摘 す る狂 詩 の文 法 的 な特 徴 は 、 多 くの場 合 、 母 語 で あ る 日本 語 の影 響 と第2言 語 と して の 合 理 性 を 、 そ の原 因 と して認 め 得 る こ と

を 指 摘 す る。

(21)

大 田 南 畝 の狂 詩 の 文 法21

(1)第2言 語 の 概 念 、 お よ び そ の 研 究 史 に つ い て は 山 岡 俊 比 古(1997)な ど を 参 照 の こ と。

(2)以 下 本 稿 で は 、資 料 と し て 詩 の1つ1つ の 句 を 指 す 場 合 「詩 句 」 と い う語 を 用 い る 。 文 法 用 語 と し て の 「句 」 と 区 別 す る た め で あ る 。

(3)狂 詩 を 最 極 端 と す る 日 本 漢 詩 ・日 本 漢 文 の 言 語 を 、 中 国 語 か ら の 変 容 と して 記 述 す る こ と は 、 日本 人 の 書 い た 漢 詩 に 用 い ら れ て い る 言 語 を 、 中 国 語 を 一 端 と す る 中 間 言 語 とみ な す こ と で あ る 。 中 間 言 語 に は 、 そ れ 自体 の 言 語 的 な 整 合 性 が 予 想 で き る の で 、 これ に よ っ て 、 狂 詩 を 含 む 日 本 漢 詩 の 言 語 的 な 特 性 を 、 中 国 語 と して の 誤 用 で は な く 、 共 通 語 と して の 性 格 を 持 つ 古 典 中 国 語 の 地 域 的 な 変 容 と して 記 述 す る こ とが で き る 。 な お 、 中 間 言 語 に つ い て は 山 岡(1997)な ど を 参 照 の こ と。

(4)古 典 中 国 語 の 句 成 分 と して は 、 「主 語 」 「謂 語(述 語)」 「賓 語(目 的 語)」 「定 語(連 体 修 飾 語)」 「状 語(連 用 修 飾 語)」 「補 語(「 賓 語 以 外 の 述 語 後 置 成 分)」 の6種 類 に 分 け る の が 一 般 的 な 分 類 で あ る 。人 民 教 育 出 版 社 中 学 語 文 室(1984)、 劉 景 農(1994)

な ど を 参 照 の こ と。 な お 、()内 の 日 本 語 訳 は 、 日本 語 文 法 に お け る そ れ ぞ れ の 用 語 の 定 義 と重 な る も の で は な く、 便 宜 的 な 訳 語 で あ る 。

(5)前 述 し た よ う に 、 古 典 中 国 語 に は 名 詞 述 語 に よ る 判 断 文 が あ り 、 動 詞 述 語 と形 容 詞 述 語 を 除 い た だ け の 「述 語 動 詞 の な い 句 」 の 中 に は 判 断 文 が 含 ま れ る こ と に な る 。 本 来 は こ れ も 除 か な け れ ば な ら な い が 、 判 断 が あ い ま い に な る 可 能 性 が あ り 、 こ こ

で は 判 断 文 も 「名 詞 句 だ け か ら な る 詩 句 」 に 含 め た 。 た だ し 、 論 者 の 判 断 で は 、 こ の う ち 、 同 一 認 定 ま た は 属 性 認 定 を 示 す 狭 義 の 判 断 文 は 、 南 畝 で13例 、a唐 詩 選 』 で2例 で あ る 。 これ を 除 く と 「名 詞 句 だ け か ら な る 詩 句 」は 、南 畝 で65例(14.1%)、

『唐 詩 選 』 で25例(5.4%)と な る 。

(6)今 回 の 資 料 で は 全 体 と して 固 有 名 詞 を 含 む 詩 句 は25%程 度 で あ る の に 対 し、 名 詞 句 だ け か ら な る 詩 句 で は62%程 度 に な る 。

(7)古 典 中 国 語 の 連 体 修 飾 節 に つ い て は 、章 士 剣(1907)や 黎 錦 煕(1924)な ど で 、「之 」 と い うマ ー カ ー が 指 摘 さ れ る 。 こ の マ ー カ ー が 詩 語 と して ふ さ わ し く な い と い う理 由 か ら か 、 詩 に お い て は 用 い ら れ る こ と が 少 な い こ と も 、 連 体 修 飾 を 減 ら す 理 由 に な る か と 考 え る 。

(8)狂 詩 が 述 語 に よ る 構 造 上 の 制 約 を さ け る の で は な い か と い う 問 題 に つ い て は 、 連 体

(22)

修 飾 と 関 わ っ て 次 の 事 実 も 指 摘 で き る 。 『唐 詩 選 』 中 の 漢 詩 や 南 畝 の 狂 詩 に お け る 連 体 修 飾 部 は 、 名 詞 句 に よ っ て 構 成 さ れ る も の が 大 半 で あ る が 、 ま た 動 詞 句 に よ っ

て も 作 り う る 。 「共 言 東 閣 招 賢 地 」(孫 遂 和 左 司 張 員 」 詩)な ど で あ る 。 末 尾3字 が 連 体 修 飾 部 を 持 つ も の の う ち で 、 こ う し た 動 詞 句 に よ る 連 体 修 飾 の 例 は 、 南 畝 の 狂 詩 で13例 、 『唐 詩 選 』 で15例 で あ る 。 絶 対 数 は ほ ぼ 同 じで あ る が 、 『唐 詩 選 』

の ほ う が も と も と連 体 修 飾 が 少 な い の で 、 末 尾3字 が 連 体 修 飾 部 を 持 つ 名 詞 句 全 体 に 対 して こ の 種 の 連 体 修 飾 の 占 め る 比 率 は 、南 畝 で7.3%、 『唐 詩 選 』で16.7%と な っ て お り、 南 畝 は 半 分 ほ どで あ る 。 こ こ に も動 詞 句 の 多 用 を 避 け よ う とす る 傾 向 を 見 る こ と が 可 能 で あ る 。

(9)本 論 に お け る 虚 詞 の 分 類 は 、 こ の 浅 山(1998)と 同 じ で あ り、 詳 し く は そ ち ら を 参 照 さ れ た い 。 こ こ で は 、 「恐 、 定 、 元 、 必 」 と い っ た 真 偽 判 断 の 虚 詞 と 同 じ機 能 を は た し て い る 知 覚 動 詞 「知 、 識 、 思 」 な ど を 、 「真 偽 判 断 の 虚 詞 」 に 含 め た こ と を 記 して お く。 さ ら に 「接 続 の 虚 詞 」 を は ず した の で 、 総 数 と し て は 、 上 に 述 べ た 唐 詩1に 対 す る 狂 詩0,87よ りは や や1対1に 近 い 数 値 に な っ て い る 。 ま た 、 表 を 簡 単 に す る た め 、 量 の 少 な い も の は 「そ の 他 」 に ま と め た こ と が 、 浅 山(1998)の 表 と は 異 な る 。

参考文献

浅 山 佳 郎 」998.「 伊 藤 仁 斎 の 漢 詩 に お け る 虚 辞 に つ い て 」.r漢 文 学 解 釈 与 研 究 』 第1輯

黎 錦 煕.1924.『 新 著 国 語 文 法 』.商 務 印 書 館 劉 景 農,1994.『 漢 語 文 言 語 法 』,中 華 書 局

人 民 教 育 出 版 社 中 学 語 文 室.1984.『 中 学 教 学 語 法 系 統 提 要 』.人 民 教 育 出 版 社 山 岡 俊 比 古.1997.『 第2言 語 習 得 研 究(新 装 改 訂 版)』.桐 原 ユ ニ

章 士 剣.1907.r中 等 国 文 典 』.商 務 印 書 館

参照

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主任審査委員 早稲田大学文学学術院 教授 博士(文学)早稲田大学  中島 国彦 審査委員   早稲田大学文学学術院 教授 

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を世に間うて一世を風塵した︒梅屋が﹁明詩一たび関って宋詩鳴る﹂

«к себе самому». Выражение себя или внешнего мира через себя – это своего рода формула эстетической природы романса. Причѐм это самовыражение нередко бывает

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