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各テクストにおける受身文タイプの割合の比較

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(1)

第7章テクスト別受身文タイプの分布

 本章では,第3章〜第6章で取り出された受身文タイプの,各テクストにおける割合を示 し,それぞれを比較することで,テクスト別の受身文タイプの特徴を考察していく。本研究 で扱ったテクストについては,第1章3で詳しく述べたが,次の4つのテクストである。

 ・小説の会話文テクスト  ・小説の地の文テクスト  ・新聞(報道文)テクスト  ・評論文テクスト

 受身文の4大分類,15中分類,また小分類の各タイプの分布には,それぞれのテクストの 特徴がよく表れている。以下では,まず,4つの各テクストにおける受身文の4大分類の割 合,中分類の割合を示し,比較する。次に,テクストごとに,全サブタイプの割合を示し,

受身文タイプの分布にどのような特徴があるか,またその理由を考察していく。

1

各テクストにおける受身文タイプの割合の比較

 本節では,受身文の4大分類と15中分類の各テクストにおける割合を比較し,それぞれ のテクストにおける現れ方の特徴を見ていく。

1.1 4大分類の割合の比較

 次の表は,4つの各テクストにおける受身文の4大分類の割合である。その下に,割合を 円グラフにしたものを並べて示した。表では,割合を小数第一位まで示したが,グラフでは 少数以下は四捨五入している。

(2)

表9:各テクストにおける4大分類の割合 小説の会話文テクスト

受身文タイプ 用例数 割合 有情主語有情行為者 1092 79.0%

有情主語非情行為者 72 5.2%

非情主語一項 206 14.9%

非情主語非情行為者 12 0.9%

合計 1382 100.0%

新聞(報道文)テクスト

受身文タイプ 用例数 割合 有情主語有情行為者 109 23.3%

有情主語非情行為者 14 3.0%

非情主語一項 331 70.9%

非情主語非情行為者 13 2.8%

合計 467 100.0%

   非情非情

非情一項  1%

有情非情  5%

       情有情        79%

小説の会話文テクスト    非情非情

    3%  有情有情

非情一  71%

有情非情  3%

小説の地の文テクスト

受身文タイプ 用例数 割合 有情主語有情行為者 346 43.8%

有情主語非情行為者 70 8.9%

非情主語一項 340 43.0%

非情主語非情行為者 34 4.3%

合計 790 100.0%

評論文テクスト

受身文タイプ 用例数 割合 有情主語有情行為者 50 8.1%

有情主語非情行為者 21 3.4%

非情主語一項 507 82.0%

非情主語非情行為者 40 6.5%

合計 618 100.0%

非情一  43%

非情非情  4%

有情有情  44%

      有情非情        9%

小説の地の文テクスト

   非情非情有情有情     6%   8% 有情非情       3%

      非情一項        82%

新聞(報道文)テクスト        評論文テクスト   図7:各テクストにおける4大分類の割合(円グラフ)

(3)

 4大分類の割合の比較だけでも,それぞれのテクストの特徴が見て取れる。小説の会話文 テクストは,やはり話し言葉に近い文脈構造を持っていると考えられ,この文脈構造にふさ わしい受身文タイプ,すなわち有情有情受身文が多く現れている。一方で,非情一項受身文 も一割以上を占めているが,どのような受身文タイプが表れているかは,後の各節で詳しく 見ていく。

 小説の地の文テクストは,登場人物の立場から登場人物の動作や考えや感情を描写する文 脈や場面描写や人物描写,事情説明などさまざまな文脈の入り混じるテクストである。受身 文タイプの割合にもそうした特徴が表れており,有情有情受身文と非情一項受身文がほぼ同 じ割合で表れているのが目に付く。また,有情者の心理・生理的状態を述べる有情非情受身 文の割合が比較的高いのも特徴である。

 新聞(報道文)テクストは,書き言葉の特徴を持つため,やはり非情主語の非情一項受身 文の割合が高い。一方で,有情者をめぐる事件の報道や,政治家や要人に関する報道も少な

くないことから,有情有情受身文も一定の割合で現れているのが特徴的である。

 最後に,評論文テクストであるが,このテクストは,非情一項受身文の割合が圧倒的に高 いのが特徴である。また,非情非情受身文の割合も比較的高いが,これは,次の中分類の比 較を見れば分かるように,非情非情受身文の〈関係型(II関係)〉の割合が高いためである。

論理的な表現の多い文脈には,〈関係型〉の受身文がしばしば用いられるためだろう。

1.2 15中分類の割合の比較

 次に,15中分類の割合を示す。15中分類の割合は,まず,テクスト別に順位を表と円グ ラフで示すことにする。各テクストにおける割合は,次のようになっている。

表10:各テクストにおける15中分類の順位 小説の会話文

順位 受身文タイプ 用例数 割合

1 被変化型 333 24.1%

2 被態度型 331 24.0%

3 被認識活動型 210 15.2%

4 被動作型 117 8.5%

5 変化型 90 6.5%

6 被はた迷惑型 74 5.4%

7 有情非情受身文 72 5.2%

8 習慣的社会活動型 63 4.6%

9 存在型 17 1.2%

10 認識活動型 15 1.1%

11 超時的事態型 14 1.0%

12 態度型 6 0.4%

13 現象受身型 6 0.4%

14 関係型 4 0.3%

15 無変化型 1 OJ%

16 その他 29 2.1%

合計 1382 100.0%

小説の地の文

順位 受身文タイプ 用例数 割合

1 変化型 162 20.5%

2 被変化型 125 15.8%

3 被態度型 83 10.5%

4 被認識活動型 75 9.5%

5 存在型 73 9.2%

6 有情非情受身文 70 8.9%

7 被動作型 53 6.7%

8 習慣的社会活動型 48 6.1%

9 認識活動型 30 3.8%

10 超時的事態型 22 2.8%

11 関係型 15 1.9%

12 現象受身型 14 1.8%

13 被はた迷惑型 10 1.3%

14 態度型 3 0.4%

15 無変化型 2 0.3%

16 その他 5 0.6%

合計 790 100.0%

(4)

新聞(報道文)テクスト

順位 受身文タイプ 用例数 割合

1 変化型 171 36.6%

2 習慣的社会活動型 97 20.8%

3 被変化型 58 12.4%

4 存在型 26 5.6%

5 被態度型 24 5.1%

6 認識活動型 18 3.9%

7 態度型 16 3.4%

8 有情非情受身文 14 3.0%

9 被動作型 11 2.4%

10 被認識活動型 11 2.4%

11 関係型 10 2.1%

12 被はた迷惑型 4 0.9%

13 現象受身型 3 0.6%

14 超時的事態型 2 0.4%

15 無変化型 1 0.2%

16 その他 1 0.2%

合計 467 100.0%

評論文テクスト

順位 受身文タイプ 用例数 割合

1 変化型 184 29.8%

2 習慣的社会活動型 177 28.6%

3 存在型 79 12.8%

4 超時的事態型 49 7.9%

5 関係型 37 6.0%

6 被変化型 23 3.7%

7 有情非情受身文 21 3.4%

8 被態度型 18 2.9%

9 認識活動型 10 1.6%

10 態度型 7 t1%

11 被動作型 5 0.8%

12 被認識活動型 3 0.5%

13 現象受身型 1 0.2%

14 被はた迷惑型 0 0.0%

15 無変化型 0 0.0%

16 その他 4 0.6%

合計 618 100.0%

AI有情非情 受身文   52%

AA被はた 迷惑型  54%

11変化型  65%

被型臼動%

M

その他

112% AA被変化

活動型 152%

1%

被態度 240%

小説の会話文テクスト

   その他

11習慣的 12.8%

社会活動

  型  6.1%

AA被動作

 型 6.7%

AI有情非 情受身文  8.9%

 Il存

11変化型

AA被認識 活動型  9.5%

1 O.5%

AA被変化

 型 15.8%

小説の地の文テクスト

その他

AA被態度

 型 5.1%

Il存在型  5.6%

AA被

1変化型

36.6%

その他

15.0%

11関係型  6.0%

11超時的 事態型  79%

 11存在

 128%

変化型

29.8%

1・2.4%    11習慣的       11習慣的      社会活動       社会活動

     ・芸・       2竃%

新聞(報道文)テクスト         評論文テクスト    図8:各テクストにおける15中分類の順位(円グラフ)

(5)

 上の円グラフでは,有情主語の受身文タイプを赤・榿系で色づけ,非情一項受身文の各タイ プを青・緑・系で色づけた。

 受身文の15中分類の順位を示した上のグラフから分かることを簡単に述べよう。まず,

会話文テクストにのみ,〈被はた迷惑型〉が5%以上の割合を示すものとして含まれている。

これは,〈被はた迷惑型〉が話し言葉の文体,っまり私的な事実や感情を述べる文脈構造にな じむ受身文タイプであることを示している。逆に,書き言葉テクストの文脈には,もっとも なじまないタイプであるとも言える。

 次に,小説の地の文テクストであるが,ここには赤系と青・緑系が入り混じり,先にも述 べたように,有情主語受身文と非情主語受身文がほぼ同じ割合で現れていることが見て取れ る。有情有情受身文の場合は,小説の会話文に現れた順位と同じように,〈被変化型(AA変 化)〉がもっとも多く,次いで〈被態度型(AA態度)〉,〈被認識活動型(AA認識)〉,〈被動 作型(AA動作)〉とつづいている。しかし,ここに有情非情受身文が〈被動作型〉よりも多 い割合で現れている。これは,先にも触れたように,有情非情受身文の〈心理・生理的状態 型(AI心理)〉の割合が高いためである。一方,非情一項受身文の中分類がいかに現れてい るかを見ると,他の2つの書き言葉テクストに比べ,〈習慣的社会活動型(11社会)〉よりも

〈存在型(11存在)〉の割合が高くなっていることが分かる。これは,小説の地の文テクス トに特徴的な〈存在様態受身型(11存在)〉の割合が高いためである。後のサブタイプの割 合で確認されたい。

 書き言葉テクストである新聞(報道文)テクストと評論文テクストでは,〈変化型(11変 化)〉と〈習慣的社会活動型(11社会)〉が非常に高い割合を占めていることが分かる。特に,

事実報告としての文脈が多い新聞(報道文)テクストでは,〈変化型〉が圧倒的な割合を示し ている。一方,評論文テクストでは,〈存在型(11存在)の割合が低くないが,これは,〈存 在確認型〉の割合が高いためである。また,評論文テクストでは,時間を越えた一般的な論 理や法則,事実などが述べられる文脈が多いため,〈超時的事態型(11超時)〉や〈関係型(II 関係)〉の割合が高いのも特徴的である。一方で,新聞〈報道文〉テクストでは,有情有情受 身文の〈被変化型(AA変化)〉の割合が比較的高いが,これは,有情者に起こる(起きた)

社会的な変化(逮捕,選抜,新任など)を述べる文脈に〈被社会的変型(AA変化)〉が頻繁 に用いられるためである。

 次に,15中分類の1つ1つのタイプごとに,4つのテクストの割合を並べて棒グラフで示 したものを次ページに載せた。このグラフを見ると,すべてのテクストを通じて,〈無変化型

(11無変化)〉がほとんど現れていないことが分かる。〈無変化型〉とは,接触動詞に代表さ れる,無変化動詞による非情一項受身文のタイプである。〈無変化型〉の頻度が低いのは,事 態の変化局面(特に結果)に着目する非情一項受身文に,変化の局面を含まない無変化動詞 がなじまないためであると考えられる。非情一項受身文は,通常,動作主を背景化して,「何 が起きるか(起きたか)という結果に注目するという意味・機能的特徴を持つ。こうした特 徴に,変化(結果)を含まない無変化動詞は,要素としてなじまないのだろう。なお,同じ 無変化動詞でも,有情者が主語に立つタイプである〈被動作型(AA無変化)〉の割合は低く ない。こうした接触動詞の受身文の特徴については,第8章2.3で詳しく議論している。

 また,〈現象受身型(11現象)〉の割合も非常に低いが,これはタイプとしての生産性,つ まり動詞の種類が少ないということも関連している。これに対し,〈認識活動型(11認識)〉

と〈態度型(11態度)〉は,いずれも生産性は非常に高いにも関わらず,すべてのテクスト を通じて頻度が低い。これは,心理動詞による非情主語受身文の特徴として第8章2.2で詳

(6)

しく議論している。心理動詞による非情主語受身文は,個別の動作主の個別一回的な事態と してよりも,不特定一般の動作主の反復・習慣的な活動,つまり〈習慣的社会活動型(11社 会)〉として述べられることが圧倒的に多いのである。このため,個別一回的な事態である〈認 識活動型(11認識)〉と〈態度型(11態度)〉は生産性が高いにも関わらず,頻度が非常に低

くなっている。

0%     5%     10%    15%    20%    25%    30%    35%    40%    45%    50%

ミ蘂麟難

  緊燃

D ..葦

撈ケ攣鐸繍

■小説会話 誌ャ説地の文 告V聞報道文 黒]論文

.灘ケ.之i 轡.ぎ灘

  AA被変化型

@ AA被動作型

@AA被認識活動型

@ AA被態度型

@AA被はた迷惑型

@Al有情非情受身文

@ 11変 化 型

@ 11無変化型

@ 11認識活動型

@ 11態 度 型

@ 11存 在 型

繒K慣的社会活動型

@11超時的事態型

@ ll現象受身型

@ ll関 係 型

@   そ の 他

琴.餐誉

鐸須

攣学攣響攣麟.

戸.遥

図9:15中分類の各タイプにおける4つのテクストの割合の比較(棒グラフ)

(7)

2 各テクストにおける全サブタイプの割合

 1で見た受身文の4大分類と15中分類のテクスト間の比較を踏まえ,本節では各テクス トにおけるより細かいサブタイプの分布を見ていく。受身文タイプの表れ方を具体的に見て いくことで,テクストジャンルと受身文タイプとの関連を探りたい。

2.1 小説の会話文テクスト

 1のテクスト間の比較においても表を挙げたが,ここに再度,小説の会話文テクストにお ける4大分類と15中分類の割合を示しておく。

表11:小説の会話文テクストにおける4    大分類の割合

受身文4大分類

受身文タイプ 用例数 割合

有情主語有情行為者 1092 79.0%

有情主語非情行為者 72 5.2%

非情主語一項 206 14.9%

非情主語非情行為者 12 0.9%

合計 1382 100.0%

表12:小説の会話文テクストにおける15    中分類の順位

小説の会話文

順位 受身文タイプ 用例数 割合

1 被変化型 333 24」%

2 被態度型 331 24.0%

3 被認識活動型 210 15.2%

4 被動作型 117 8.5%

5 変化型 90 6.5%

6 被はた迷惑型 74 5.4%

7 有情非情受身文 72 5.2%

8 習慣的社会活動型 63 4.6%

9 存在型 17 12%

10 認識活動型 15 1.1%

11 超時的事態型 14 1.0%

12 態度型 6 0.4%

13 現象受身型 6 0.4%

14 関係型 4 0.3%

15 無変化型 1 0.1%

16 その他 29 2」%

合計 1382 100.0%

 会話文テクストでは,やはり有情有情受身文の割合が高くなっている。15中分類の順位を 見ると,有情有情受身文では,〈被直接作用型(直接受身文)〉の4タイプが上位を占めてい る。このうち,動作動詞による受身文が〈被変化型〉と〈被動作型〉,心理動詞による受身文 が〈被認識活動型〉と〈被態度型〉である。この動作動詞と心理動詞の2つのタイプをそれ ぞれ合わせると,心理動詞による受身文(541例)の方が動作動詞による受身文(450例)

よりも多くなっていることが興味深い。

 一方,非情一項受身文も15%ほどの割合を示している。15中分類の割合を見ると,これ は,非情一項受身文の〈変化型(11変化)〉と〈習慣的社会活動型(11社会)〉の割合が比較

(8)

的高いためであることが分かる。会話文テクストには,次のような〈変化型〉と〈習慣的社 会活動型〉の受身文が現れている。

(1) 「ああ、それはね、つまり、今目の新聞をごらんになりましたかな。[麺]がまた削られ  ましたよ。そういう事情なもんだから、個人賞より団体賞のほうが金が生きるだろうと思い  ましてな」 (裸の王様) 〈状態変化型(11変化)

(2)十年ほど前に、京橋のお店あてに、そのノートと写真の小包が送られて来て、差し出し人は  葉ちゃんにきまっているのですが、その小包には、葉ちゃんの住所も、名前さえも書いてい  なかったんです。 (人間失格) 〈位置変化型(11変化)

(3)自由の女神のタイマツからアンパンのヘソにいたるまで、あらゆるものが盗まれてるんです。

 きのうなんぞ、台湾沖に発生した低気圧が盗まれましてね、とたんに天気がよくなりました」

  (プンとフン) 〈所有変化型(11変化)

(4) 「恋愛のない結婚なんて許れないことだわ」 (楡家) 〈社会的約束型(11社会)

 受身文タイプの現れ方をより詳しく探るために,サブタイプの割合を見てみよう。まず,

会話文テクストにおけるサブタイプの順位を30位まで表に示す。

表13:会話文テクストにおけるサブタイ vの順位(30位まで)

15 状態変化型 31 2.2%

16 被催促型 25 t8%

順位 サブタイプ 用例数 割合 17 やられる 26 1.9%

1 被相手言語活動型 159 11.5% 18 被知的認識型 23 1.7%

2 被評価動作的態度型 124 9.0% 19 社会的約束型 23 t7%

3 被接触型 88 6.4% 20 被知覚認識型 20 1.4%

4 被社会的状態変化型 76 5.5% 21 被随伴型 20 1.4%

5 被生理的変化型 75 5.4% 22 被接近的態度型 18 1.3%

6 被はた迷惑型 74 5.4% 23 結果的型 17 1.2%

7 被表現的態度型 66 4.8% 24 位置変化型 17 1.2%

8 心理・生理的状態型 64 4.6% 24 所有変化型 15 1.1%

9 被相手要求的態度型 60 4.3% 26 社会的思考型 14 1.0%

10 被位置変化型 46 3.3% 27 存在様態受身型 13 0.9%

11 被所有変化型 45 3.3% 28 特徴規定型 12 0.9%

12 被感情=評価的態度型 40 2.9% 29 被知的態度型 11 0.8%

13 被心理的変化型 33 2.4% 30 被相手提示型 8 0.6%

14 被強制使役型 30 2.2%

 サブタイプの順位を見ると,15中分類の順位では分からなかった特徴が見えてくる。15 中分類では,〈被変化型(AA変化)〉が第1位を占めていたが,サブタイプにおいて,もっ とも割合が高いのは〈被相手言語活動型(AA認識)〉である。動詞で言えば,「言われる」

という動詞による受身文がもっとも多くなっている。

(5) 「T大付属とか0学院っていうのは,もうお金やコネじゃダメなんですってね。親の学歴で  すって。親がそこの出身で,しかも下からじゃないとむずかしいって。でもそんなこと言わ  れても,今さらどうしようもないしねえ・…」(女友だち)

(9)

(6) 「[前略]父の会社の営業部にいる寺坂という人のこと。……このあいだ灘から正式に、婚約  をとりきめるからそのつもりでおれって、言われたの。だって、十も年が違うのよ」(青春の  蹉跣)

(7)「さっき電車の中で喧嘩をしていたろう。あれはね、圏が譲からやかましく言われて、厭  な男と結婚を迫られているからなんだ。[後略]」(金閣寺)

 次に多いのが,動作的な態度の動詞で構成される〈被評価動作的態度型(AA態度)〉であ る。このタイプは,個人の有情者間の感情や評価といった態度的動作を含んだ対人関係を表 わすタイプで,会話文テクストに非常に特徴的なタイプである。

(8) 「とぼけないで! 匡亟コヨは、小学校の頃いじめられた復讐に鍵蓬灘を跳ねたのよ」(砂の  上の恋人たち)

(9) 「会って,いったい何を言えばいいのかな。繭護嚢には新しい家族もあることだし,それに国  は捨てられたわけじゃない。[後略]」(冷静と情熱)

(10) 「[前略]電報打ったの、こんどがはじめてよ。辮擁鍵灘に話したら笑われちゃった。」(恥の  譜)

 ただし,〈被評価動作的態度型〉には,動作主が不特定一般の人々である〈社会的評価型(11 社会)〉に近い受身文も見られる。こうした例は,動作主が一般化されていても《個人vs個 人》の関係が述べられていると判断したが,〈社会的評価型〉に分類してもいい例である。

(11) 「いいんだよ。医]は灘騰にそんなふうにあつかわれるのは慣れてるんだ」(ドナウ)

(12) 「なんだか,寒いってだけでじぶんが苛められているような気になってくるんです」(帰れ  ぬ人々)

 なお,本研究では,より心理的な感情=評価を表す〈被感情=評価的態度型(AA態度)〉と,

より動作的な評価の態度を表す〈被評価動作的態度型(AA態度)〉と,言語活動による評価 的態度を表す〈被表現的態度型(AA態度)〉を別々のタイプとして立てたが,この3タイプ の用例をあわせて〈被評価的態度型〉とすることも可能だろう。その場合,会話文テクスト においては,頻度がもっとも高いタイプとなる。

 第3位には,無変化動詞である接触動詞で構成される〈被接触型(AA無変化>>上がって いる。これも会話文テクストにきわめて特徴的である244。

(13) 「図は、灘総鞭難に三年の間、毎週一回ずつ殴られたんです。一回ぐらい殴ったっていい  でしょう」(あすなろ)

(14)するとね、1灘織に抱かれて頬ずりされたとき、頬っべたがチクチク痛かったようなことが  あったようだ、ということを思い出したんだ。(樹々は緑か)

(15) 「戦争の終りに、脱走しようとして畿難に撃たれたという話だった。[後略]」(死者の奢り)

同じ接触動詞による受身文でも,非情一項受身文の〈無変化型〉は,いずれのテクストにお いても頻度が低いのに対し,有情者が主語に立つ〈被接触型〉の頻度は非常に高くなってい る。こうした接触動詞による受身文の,主語の有情・非情の別による頻度の偏りとその理由 244ただし,3位という順位は極端に高いかもしれない。今回のデータでは同じ作品における同じ動詞による受 身文が多く見つかった。1つは『冬の旅』の「刺される」であり(13例),もう1つは『楡家の人々』における

「もぐりこまれる,とびこまれる」である(10例)。しかし,こうした用例の偏りをかんがみても,やはり接触 動詞が要素となった有情主語受身文の割合の高さは特徴的である。

(10)

については,第8章2.3で詳しく議論する。

 第4位の〈被社会的状態変化型(AA変化)〉では,「逮捕される,兵隊にとられる」とい った動詞のほか,「社会的機関一二位置変化V一ラレル」(「留置所に入れられる」)という構造 で社会的な状態変化を表わす例も少なくない。

 第5位には〈被生理的変化型(AA変化)〉が位置しているが,これは,ジャンルがフィク ションであるため,「殺される」という動詞の用例が多いからで,「殺される」ないしそれに 準ずる動詞(銃殺される,虐殺される)などが24例ある。ただし,「殺される」による受身 文の,作品による偏りは見られない。

 同じような割合で第6位に〈被はた迷惑型(AA迷惑)〉が上がっている。〈被はた迷惑型〉

というタイプが,他の細かいサブタイプと同じレベルにあるかどうかは検討の余地があり,

より細かいサブタイプを設けるならば,順位も変わってくるかもしれない。しかしながら,

本研究の分類で,評論文及び新聞テクストでは1例も用例がなかったのに対し,会話文テク ストでは高い割合で現れているとすれば,これは会話文テクストに特徴的な受身文タイプで あると言わなければならない。

 第7位の〈被表現的態度型(AA態度)〉には,多い方から,「叱られる」が14例,「怒ら れる」が7例,「怒鳴られる」が5例,「からかわれる」が5例という割合で現れている。表 現的態度動詞は,言語活動によって感情=評価的な態度を表わすことを表わす。このため,〈被 表現的態度型〉は,第1位の〈被相手言語活動型(AA認識)〉と第2位の〈被評価動作的態 度型(AA態度)〉とを合わせたような意味・構造を持っている。

 また,会話文テクストには,他のテクストにはほとんど見られない,「やられる」という動 詞による受身文が目立つ。この「やられる」と言う動詞による受身文は,有情有情受身文の 周辺に位置づけたが,動作主は自然現象でもあり得,また,物理的動作でも心理的変化でも

あり得る事態である。これも,会話文に特徴的な受身文である。

 以上,小説の会話文テクストにおける割合の上位に現れた受身文タイプを概観した。タイ プ別のすべての受身文タイプの割合を,表と棒グラフに示しておく。

(11)

表14:会話文テクストにおける有情有情受身文の割合 有情主語有情行為者受身文

1  5  中  分  類 用例数 割 合 サ  ブ  タ  イ  プ 用例数 割 合 被   変   化   型

i A A  変 化 )

333 24.1% 被位 置 変 化 型 46 3.3%

被  随  伴  型 20 1.4%

被心理的変化型

33 2.4%

被生理的変化型

75 5.4%

被社会的状態変化型 76 5.5%

被 所 有 変 化 型 45 3.3%

被所有物の変化型

8 0.6%

被 強 制 使 役 型 30 2.2%

被   動   作   型

iAA 無 変 化 )

117 8.5% 被  接  触  型 88 6.4%

被  催  促  型 25 1.8%

被 相 手 動 作 型 4 0.3%

被 認 識 活 動 型 i A A  認 識 )

210 15.2% 被 知 覚 認 識 型 20 1.4%

被 知 的 認 識 型 23 1.7%

被相手言語活動型

159 11.5%

被 相 手 提 示 型 8 0.6%

被   態   度   型 i A A  態 度 )

331 24.0% 被感情=評価的態度型 40 2.9%

被 知 的 態 度 型 11 0.8%

被表現的態度型

66 4.8%

被呼称的態度型

5 0.4%

被評価動作的態度型 124 9.0%

被相手要求的態度型 60 4.3%

被接近的態度型

18 1.3%

被相手への態度型

7 0.5%

被はた迷惑型(AA迷惑) 74 5.4% 被 は た 迷 惑 型 74 5.4%

そ     の     他 27 2.0% や  ら  れ  る 26 1.9%

そ    の    他 1 0.1%

合      計 1092 79.0%

表15:会話文テクストにおける有情非情受身文の割合 有情主語非情行為者受身文

1  5  中  分  類 用例数 割 合 サ ブ タ イ プ 用例数 割 合 状    態    型

i A I 心 理 )

72 52% 心理・生理的状態型 64 4.6%

不  可  避  型 1 0.1%

陥   る   型 7 0.5%

そ     の    他 0 0.0% そ   の   他 0 0.0%

合         計 72 5.2%

(12)

表16:会話文テクストにおける非情一項受身文の割合

非情主語一項受身文

1  5 中  分  類 用例数 割 合 サ ブ タ イ プ 用例数 割 合 90 6.5% 状 態 変 化 型 32 2.3%

変    化    型

i 1 1 変 化 ) 位 置 変 化 型 17 1.2%

所 有 変 化 型 15 1.1%

結   果   型 17 1.2%

表   示   型 1 0.1%

実   行   型 8 0.6%

無変化型(11無変化) 1 0.1% 無  変  化  型 1 0.1%

15 1.1% 知 覚 認 識 型 0 0.0%

認  識  活  動  型

i 1 1 認 識 ) 知 的 認 識 型 3 0.2%

発見的認識型

5 0.4%

言 語 活 動 型 7 0.5%

6 0.4% 判   断   型 3 0.2%

態    度    型

i 1 1 態 度 ) 意 義 づ け 型 2 0.1%

要   求   型 0 0.0%

表   現   型 1 0.1%

17 1.2%

存在様態受身型

13 0.9%

存    在    型

i 1 1 存 在 )

抽象的存在型

2 0.1%

抽象的所有型

0 0.0%

存 在 発 見 型 0 0.0%

存 在 確 認 型 2 0.1%

63 4.6%

社会的思考型

14 1.0%

習慣的社会活動型

i 1 1 社 会 ) 社会的言語活動型 8 0.6%

社会的呼称型

8 0.6%

社会的評価型

7 0.5%

社会的関心型

0 0.0%

社会的意義づけ型 3 0.2%

社会的約束型

23 1.7%

14 1.0% 特 徴 規 定 型 11 0.8%

超 時 的 事 態 型

i 1 1 超 時 )

論理的操作型

0 0.0%

限   定   型 3 0.2%

そ    の    他 0 0.0% そ   の   他 0 0.0%

合         計 206 14.9%

表17:会話文テクストにおける非情主語非情行為者受身文の割合 非情主語非情行為者受身文

1  5 中 分  類 用例数 割 合 サ ブ タ イ プ 用例数 割 合 現象受身型(II現象) 6 0.4% 現 象 受 身 型 6 0.4%

4 0.3% 影 響 関 係 型 1 0.1%

関    係    型

i I I 関 係 )

論理的 関係型

2 0.1%

位 置 関 係 型 1 0.1%

そ    の    他 2 0.1% そ   の   他 2 0.1%

合         計 12 0.9%

(13)

0%  1%  2%  3%  4%  5%  6%  7%  8%  9%  10% 11% 12% 13% 14% 15% 16%

   被位置変化型   被心理的変化型   被生理的変化型

被社会的状態変化型  被所有関係変化型  被所有物の変化型    被強制使役型      被接触型      被催促型    被相手動作型    被知覚認識型    被知的認識型  被相手言語活動型    被相手提示型 被感情=評価的態度型    被知的態度型   被表現的態度型   被呼称的態度型 被評価動作的態度型 被相手要求的態度型   被接近的態度型  被相手への態度型    被はた迷惑型      やられる   有情有情その他  心理・生理的状態型       陥る型      不可避型   有情非情その他     状態変化型     位置変化型     所有変化型       結果型       表示型       実行型      無変化型     知覚認識型     知的認識型    発見的認識型     言語活動型       判断型     意義づけ型       要求型       表現型   存在様態受身型    抽象的存在型    抽象的所有型     存在確認型    社会的思考型  社会的言語活動型    社会的呼称型    社会的評価型    社会的関心型    社会的約束型  社会的意義づけ型     特徴規定型    論理的操作型       限定型   非情一項その他     現象受身型     位置関係型    論理的関係型     影響関係型   非情非情その他

2.4

33

3.3%

55

0.%

22%

0.3 1

.8%

17%

4 6

0.%

.8%

0.4

」2,9%

1   8

5

0

1.3

4,3

0.1%

1.9%

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0.1%1 0.1%

17%

図10:小説の会話文テクストにおけるサブタイプの割合

(14)

2.2 小説の地の文テクスト

 小の説地の文のテクストは,話しことばに近い会話文テクストと書きことばである評論 文・新聞テクストの特徴がまさに半々に現れている。4大分類を見てもわかるように,有情 有情受身文と非情一項受身文の割合がほぼ同じ値である。15中分類の順位を見ると,非情 一項受身文の代表的なタイプである〈事態実現型(変化型)〉が最上位に位置しているが,す ぐに有情有情受身文である〈被変化型(AA変化)〉と〈被態度型(AA態度)〉と〈被認識活 動型(AA認識)〉が続いている。一方で,〈存在型(11存在)〉及び有情非情受身文が多いの は,小説の地の文テクストの特徴と言える。これは,より詳しいサブタイプの順位を見れば 分かるように,〈存在様態受身型(11存在)〉と〈心理・生理的状態型(AI心理)〉の割合が 高いためである。一方で,新聞テクストと評論文テクストでは高い割合を示す〈習慣的社会 活動型(11社会)〉がそれほど多くは現れていない。このことから,小説の地の文テクスト では,新聞や評論文といった書きことばのテクストに比べ,同じ非情主語受身文でも個別具 体的な事態としての受身文タイプが多いということが言えそうである。

表18:小説の地の文テクストにおける4

   大分類の割合

受身文4大分類

受身文タイプ 用例数 割合

有情主語有情行為者 346 43.8%

有情主語非情行為者 70 8.9%

非情主語一項 340 43.0%

非情主語非情行為者 34 4.3%

合計 790 100.0%

表19:小説の地の文テクストにおける1    5中分類の順位

小説の地の文

順位 受身文タイプ 用例数 割合

1 変化型 162 20.5%

2 被変化型 125 15.8%

3 被態度型 83 10.5%

4 被認識活動型 75 9.5%

5 存在型 73 9.2%

6 有情非情受身文 70 8.9%

7 被動作型 53 6.7%

8 習慣的社会活動型 48 6.1%

9 認識活動型 30 3.8%

10 超時的事態型 22 2.8%

11 関係型 15 1.9%

12 現象受身型 14 t8%

13 被はた迷惑型 10 1.3%

14 態度型 3 0.4%

15 無変化型 2 0.3%

16 その他 5 0.6%

合計 790 100.0%

 サブタイプの分布を見ても,やはり小説の地の文は,書きことばと話しことばの特徴を半 分ずつ有しているというのがその特徴である。このため,小説の地の文テクストでは,他の

(15)

テクストに比べ,タイプごとの割合の偏りが比較的少なく,様々なタイプが一定の割合で現 れている。他のテクストでは,27位前後のタイプですでに割合が1%未満となっているのに 対し,小説の地の文テクストでは,36位でようやく1%を切っている。

表20:小説の地の文テクストにおけるサ    ブ タイプの順位(30位まで)

順位 サブタイプ 用例数 割合

1 位置変化型 62 7.8%

2 心理・生理的状態型 61 7.7%

3 存在様態受身型 57 7.2%

4 状態変化型 47 5.9%

5 被相手言語活動型 44 5.6%

6 被位置変化型 31 3.9%

7 被接触型 30 3.8%

8 被評価動作的態度型 27 3.4%

9 被相手要求的態度型 23 2.9%

10 実行型 22 2.8%

11 特徴規定型 21 2.7%

12 被社会的状態変化型 19 2.4%

12 被所有変化型 19 2.4%

14 社会的呼称型 17 2.2%

15 被生理的変化型 16 2.0%

15 結果型 16 2.0%

17 現象受身型 14 t8%

17 被知的認識型 14 t8%

19 被強制使役型 13 1.6%

19 被知覚認識型 13 1.6%

21 被心理的変化型 12 1.5%

21 被催促型 12 1.5%

21 所有変化型 12 1.5%

24 被相手動作型 11 1.4%

24 被随伴型 11 1.4%

24 被表現的態度型 11 1.4%

24 抽象的存在型 11 1.4%

28 被接近的態度型 10 1.3%

28 被はた迷惑型 10 1.3%

28 位置関係型 10 1.3%

28 社会的言語活動型 10 1.3%

 以下では,主に小説の地の文テクストに特徴的な受身文タイプを概観していく。

 まず,もっとも特徴的なのが,〈存在様態受身型(11存在)〉の割合が高いことである。こ れは,場面の情景を描写する文脈構造が多い小説の地の文で,知覚場面のモノのあり方を述 べる文タイプの1っである〈存在様態受身型〉が要請されるためと考えられる。逆に,他の テクストではこの〈存在様態受身型〉はほとんど見られない(波下線は存在場所)。

(16)瞬間、ぎんは息を呑んだ。眼の前に木製の台があり、その上に睡ヨが敷かれている。(花

 埋み.地)

(17)彼のうつむいた目が、それをとらえた。黒い岩肌の地面の上に、二つの物体が置かれてい  た。いつもの見なれた景色の中に、それは、よけいな邪魔物であった。(点と線地)

(18)田圃から視線を移すと、土蔵の鉄の棒のはまっている窓から、土蔵の内部が見えた。どこ  史に魎でも造られてあるのか、土蔵の内部は明るく、ミシンが一台置かれてあるのが見

 えた。(あすなろ.地)

 同じく場面描写の文脈構造で用いられると考えられる〈現象受身型(II現象)〉も,他のテ クストでは0.5%未満なのに対し,相対的に割合が高くなっている(第17位)245。

(19)夕焼はその色を濃くして、水の面も赤かった。港の中の海なので、籔は静かだったが、そ  れでも防波壁の下の水は小さく波立っていた。藻や木屑や塵芥が黒ずんで打寄せられ、たぶ  たぶと揺れていた。(植物群.地)

245なお,〈存在様態受身型〉と〈現象受身型〉は,いずれも金水1991で古代語に存在した非情の受身とされる 受身文タイプである。

(16)

(20)台風一過の言葉どおり、翌朝は見事な秋晴れであった。光の中で水は急速に引いていた。

 三日前まで青々と輝いていた畑地は泥難でおおわれ、土砂と石塊がところかまわず散らばっ  ていた。皆は声も立てず、それを眺めていた。(花埋み.地)

(21)鐡難雛に照らされた壁にはいずれも快適な室内用の小旋律がただよっていた。(裸の王様.

 地)

 また,登場人物の心理描写といった文脈構造の要素となる〈心理・生理的状態型(AI心理)〉

が第2位に位置しているのも特徴的である。

(22)憤怒に似た感情が、彼の底から湧き上ってきたが、それはすぐに大気に蒸発し去って、あ  とには躯の中に異変の予感が残った。嚢翻⑳獺麹藻灘纏難鞭灘.暴動懸蓬灘灘鑛1繊鐵嚢懸蒸懲i  に捉えられた。(植物群.地)

(23)圏は蕪難鞭鐵璽におされて相槌をうつ。だが、といって診て貰わないわけにもいかない。

  (花埋み.地)

(24)しかし間もなく困は、織罐簿難謹馨藻鍵灘隷騰口 (i}穰繋繍馨譲藝欝懇懸懸懸縫糠・難灘繊羅  礪に驚かされた。(華岡青洲.地)

 この他,非情一項受身文の〈事態実現型〉の中でも,〈位置変化型(11変化)〉の割合がも っとも多くなっていることも目を引く。この〈位置変化型〉も,参照時の場面で進行してい る状況を描写する文脈構造によく用いられている。実体の位置変化を描写することで,場面 の状況を細かく伝え,臨場感を持たせる効果があると考えられる(波下線は着点/起点場所)。

(25)かよの指図で二人の下男が荷物を運び込んだ。二人とも荻野の家の者だった。台所向きの 小道具を除いて、箪笥、長持、鏡台といったぎんの身の廻りのものはすべて部屋へ持ち込ま  れた。(花埋み.地)

(26)同時にBBCの試写室には、マーガレット王女はじめ、王室、政界、学界の大立物がつめ  かけ、マッカーサー君の世紀の大特種フィルムの試写を待っていた。現像が終わったフィル  囚は大至急で乾燥され、映写機にかけられ、第一回の試写がはじまった。(プンとフン.地)

(27)魎ヨはとうにかきだされ、水をかけられて黒い焼木杭になった薪が、コンクリートの床  の上でまだぶすぶすと煙をあげていた。(楡家.地)

 〈位置変化型(11変化)〉とした中には,〈存在様態受身型(11存在)〉にかなり近い受身 文もあり,このために割合が多くなっている側面もある。

(28)いつみにいっても鑛の紙は白く、絵具皿は乾き、團もはじめにおかれた場所にきちんとk  うえられたままだった。(裸の王様.地)

(29)木綿のモンペをつけ、白いほおかぶりをしながら、力隷はしゃがみ込み、押し流されてき  亟]を抱え込んでいる。(花埋み.地)

 一方で,小説の地の文テクストには,他のテクストには現れないような,〈位置変化型(11 変化)〉の受身文がある。次のように,動作主の身体部位や動作など,広義身体的所有物(分 離不可能所有物)が主語に立つ受身文である。特に,「目/視線が人/モノに位置変化V一

國」という受身文が多い。

(30)冴子は執拗に鮎太の上半身を抱きすくめていたが、やがてくっくっと切れ切れに笑った。

 EE垂ii]が鮎太の頬に捺された。(あすなろ.地)

(17)

(31)京子に加える荒々しい力は、そのまま彼女の中に吸い込まれ、やがてその躯は皮膚の内側  から輝きはじめる。(植物群.地)

(32)門礼の後に立っていた加恵は、まさか自分にまで於継が気付くとは思わなかったので、困  嚇がぴたりと自分の眉間に据えられたときは、小太刀の先を当てられたように緊張し  身動きもできなかった。(華岡青洲.地)

(33)一年の時も、二年の時も、進級成績は抜群で、開校以来の秀才というような言葉が、教室  で大人しい鮎太に好意を持つ国漢の教師の口から出されたりした。(あすなろ.地)

 こうした表現は,実験的な表現が生み出されやすい小説の地の文というテクストジャンル に特有の受身文である。〈位置関係型(II関係)〉も,他のテクストに比べ,相対的に割合が 高いが,ここにも小説の地の文に特有の表現が見られる。(34)は通常の〈位置関係型〉で,

こうした受身文は他のテクストにも見られるが,(35)や(36)のように,有情者の身体的特徴 が二格ないしデ格の行為者として述べられる受身文は,小説の地の文に特徴的な受身文であ

る。

(34)俵瀬村の名主、荻野綾三郎の家はこの麦畑のほぼ中程にあった。正面に長屋門を持ち裏に  白い蔵をもった豪壮な邸は、縷難灘騰獺繋鎌に黒々とおおわれて、堤の上から見ると平地の  中の城のような構えを見せていた。 (花埋み.地)

(35)白粉気のない薄桃色の顔は灘繋鵜で覆われているようにみえた。 (植物群.地)

(36)一方、隣に継馨顯灘書一鎌に包まれて、しかし明らかに首をしゃっきりさせて乗っている  その姉龍子のほうは、そんな職人の挨拶にはてんで気がつかないようだった。 (楡家.地)

 また,小説の地の文テクストでは,会話文テクストで上位を占める〈被評価動作的態度型

(AA態度)〉及び〈被接触型(AA無変化)〉と同じ割合で〈被位置変化型(AA変化)〉が現 れている。これも,小説の地の文に特有の受身文の使用があるためと考えられる。次のよう な受身文は,「わたしは〜された」というような会話文テクストの受身文には現れにくい受身 文だろう。有情者が主語に立っているが,モノ扱い的である。特に,主語に立つ有情者の特 定性が低い(39)や(40)などは,モノ扱いとして〈位置変化型〉に分類してもいい受身文で ある(波下線は着点/起点場所)。

(37)医ヨは仮牢に七日いたあと、石川島の「人足寄場」へ送られた。(さぶ.地)

(38)だから匝亙]は綿帽子を冠って見事な花嫁衣裳で王辿.まで窓をあけた駕籠で運ばれると、た  だ一人で家の中に上らなければならなかった。(華岡青洲.地)

(39)いつどんな怪我人や悪疾患者が担ぎこまれてくるか分らないが、血を見ても膿を見ても驚  くようでは医者の妻は勤まらない。(華岡青洲.地)

(40)しかし、これも昨日の庭の掃除と一緒で、Uを肩に下げた一団の小学校の生徒たちが狩り  集められると、鮎太は作業から放免された。(あすなろ.地)

以上,小説の地の文テクストにおける受身文タイプの分布の特徴を概観した。

すべてのサブタイプの割合は以下のようになっている。

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