大学生の組織選好度の推移 : 2004年から2016年ま での変化
著者 坂爪 洋美
出版者 法政大学キャリアデザイン学会
雑誌名 生涯学習とキャリアデザイン
巻 14
号 1
ページ 3‑19
発行年 2016‑10
URL http://doi.org/10.15002/00013349
1.はじめに
本稿の目的は、大学生の組織選好度について、
2004年度から2016年度までの推移を検討するこ とである。具体的には以下の2点について検討す る。第1に、2004年度から2016年度までの間に、
組織選好度の各類型を選好する程度における変化 の有無を検討する。もし変化が認められた場合に は、選好度の上昇もしくは低下といった特定の方 向への継続的な変化が認められるかを確認する。
逆にこの間で変化が認められなければ、大学生の 組織選好度は安定的な性質を持つと判断できる。
第2に、組織選好度の各類型における性差を確認 する。性差についても2004年度から2016年度ま での推移を検討し、組織選好度における性差が維 持されるのか、それとも拡大もしくは縮小する傾 向が認められるか検討する。これらを通じて、大 学生の組織選好度の特徴と安定性を明らかにする。
2.組織選好度とは何か
(1)組織選好度と組織イメージ
本稿における組織選好度とは組織イメージに対 して個人が好意を持つ程度のことである。また、
ここでいう組織イメージとは「人が組織をどうみ ているかという組織に対する概念」のことである。
例えば「安定している」というのが組織イメージ であり、「安定している」という組織イメージを どの程度好むかというのが組織選好度である。
組織イメージ研究は、組織との関係性の違いに より、特定の組織メンバーや特定の組織のメン バーになることが予定されている個人が認識する 当該組織の組織イメージを対象とする研究と、組 織メンバーではない個人が認識する組織イメージ を対象とする研究に分類される。後者は主にマー ケティング分野で行われてきた。本研究は、広く とらえれば組織の参入予定者である大学生を対象 とするものの、特定の企業に対する組織イメージ を検討するものではないことから、組織イメージ 研究の枠組みで言えば、後者に該当する。
従来、組織への参入予定者を対象とした組織イ メージ研究の多くが、特定の組織に対する組織イ メージを明らかにすることを目的としてきた。そ れは、当該組織に対する肯定的な組織イメージが、
組織への参入予定者を採用活動に動機づけると同 時に参入後の行動にも影響を与えるからである。
従ってそこでの論点は、組織はどのような組織イ メージを参入予定者に形成することが望ましいか という、組織の視点からみた論点となる。
本稿で取り上げる組織選好度では組織イメージ 研究を援用し、長期的には組織への参入予定者で ある学生がどのような組織イメージに対し好意を 持つかを明らかにするものであることから、個人 の視点から組織イメージを検討するものだと言え る。就職活動というキャリア選択場面では、個人 は数多くある組織の中から、最低限以上の好意を 持つ組織を選択し、その最低限以上の好意を持っ た組織群の中から、応募する組織を取捨選択し、
法政大学キャリアデザイン学部教授
坂爪 洋美
大学生の組織選好度の推移
―大学生の組織選好度の推移:2004年から2016年までの変化―
実際に応募するというプロセスを経る。
大学生が自分はどのような組織イメージに対し てより惹きつけられるかを明らかにすることは、
応募先企業の選択における意思決定をスムーズに するだけでなく、彼らの採用する組織にとっても 有益な情報をもたらすであろう。
(2)組織選好度の類型化
組織イメージ研究の類型化には、①企業の規模 や業種、メディアへの登場数などを用いたもの、
②「技術力の高さ」といった具体的な企業活動と いう切り口での類型化を図るもの、③対人認知研 究のフレームワークを用いたものなどがある。
本研究では、就業経験のない大学生を対象とし て組織選好度を測定することから、組織に関する 情報をあまり持たない対象者でも回答可能な対人 認知研究に基づく類型化を参照した。
対人認知研究において林(1978)は、個人が 他者のパーソナリティを認知する際に用いる枠組 みを意味する対人認知の構造として「社会的望ま しさ」「個人的親しみやすさ」「活動性」の3つを 抽出した。対人認知研究から影響を受け組織イ メージの類型化を試みた斎藤ら(1986)は組織 イメージとして、「親しみやすさ」「頼もしさ」「派 手さ」という3類型を抽出した。同様に、高橋ら
(1999)は、「野性的」「家庭的」「信頼性」とい う3類型を抽出した。これらの研究から、組織と 個人に対するイメージには「親しみやすさ」など、
ある程度の共通性があると言える。
前述の研究で用いられた尺度に共通するのは、
抽象度の高い形容詞を用いて対人認知もしくは組 織イメージを記述しようとすることである。すな わち、対人認知のフレームワークを用いた組織イ メージ研究とは、組織を擬人化し、組織イメージ をパーソナリティ構造のような形で把握しようと するものだと言える。
本研究で用いた組織選好度尺度でも、先行研究 に従い、形容詞を用いて項目作成した。同時に、
パーソナリティの5因子であるNEOAC(ビッグ5) における各類型も参照し、組織イメージの類型化
を図り、「信頼できる」「創造性のある」「機敏な」「親 しみやすい」「勤勉な」という5類型を設定した。
「信頼できる」とは、相手を信じることができ るか否かに関する次元のことであり、先行研究で も「社会的望ましさ」「頼りになる」「信頼性」と いう形で提示される類型である。項目は「誠実な」
や「しっかりした」などの形容詞で構成される。
「創造性のある」とは、何かを作り出すことへ の関心の高さや積極性に関する次元であり、項目 は「好奇心の強い」や「アイディア豊富な」な どの形容詞で構成される。付加価値を生み出す ことは組織にとって不可欠であることからこの 類型を設けた。この類型の作成に際して、ビッ グ5における開放性を参照した。ビッグ5におけ る開放性とは、「経験への開放性(Openness to
Experience)」のことであり、知的な領域におけ
る思考やイメージの高さを示す。
「機敏な」とは、環境の変化に対する対応の素 早さ・タフさに関する次元であり、項目は「臨 機応変な」「タフな」などの形容詞で構成される。
昨今の環境変化の激しさから、組織にはこれまで 以上に変化への対応が求められることから、この 類型を設定した。
「親しみやすい」とは、相手に対する親近感に 関する次元であり、先行研究でも「個人的親しみ やすさ」「親しみやすさ」「家庭的」として提示さ れている類型である。項目は「家庭的である」や
「親しみやすい」といった形容詞で構成される。
「勤勉な」とは、意志の強さや勤勉さに関する 次元であり、項目は「地道な」や「慎重な」といっ た形容詞で構成される。この類型は部分的には、
林(1978)の「社会的望ましさ」に該当するも のであり、ビッグ5でも「誠実性」として取り上 げられていることから設定した。ビッグ5におけ る誠実性とは、目的や意志をもって物事をやり抜 こうとするか否かに関する次元のことである。
(3)組織選好度の安定性
対人魅力研究を概観すると、個人が好意を持つ 他者の属性は安定的と言えることから、組織を擬
人化した上で、その選好度を問う組織選好度も安 定的だと考えられる。
一方で組織を取り巻く環境ならびに大学生の就 職活動を取り巻く環境が変化する中で、大学生が 好む組織イメージも変化するとも考えられる。そ こで、本稿では変化という切り口から大学生の組 織選好度の特徴を明らかにする。
3.方法
対象者 都内私立大学で毎年4月に2年生を対象 に実施されるキャリア発達支援検査を2004年度 から2016年度の間に受検した7368名である(男 性4672名、女性2696名)。キャリア発達支援検 査は、本稿で検討する「組織選好度」を含む、「職 業興味」「職務興味」「キャリア志向性」という4 つの概念で構成されている。年度ごとの受検者数 は表1の通りである。受検者の所属学部は、文学 部・経済学部・法学部・商学部・理工学部である。
なお、学部ごとに本調査を導入した時期はばらつ
きがある。ほとんどの学部は2004年度から実施 しているが、文学部のみ導入時期が遅く2013年 度からの実施であった。また、経済学部は2004 年度から2016年度までの間で、2005年度のみ実 施していない。
調査の実施方法 毎年4月に行われる授業オリエ ンテーション期間、学務を担当する事務部門の部 屋に調査票と回答用紙を設置した。履修登録等の 作業のために来室する大学2年生のうち、希望者 が調査票とマークシート方式の回答用紙を持ち帰 り、回答を記入後、所定の期間に予め設置された ポストに回答用紙を投函した。後日、回答結果を 個人にフィードバックするために、回答は記名式 で行われている。なお、個人へのフィードバック は毎年6月下旬から7月にかけて行っている。
使用した項目 各類型5項目、合計25項目で構 成される組織選好度尺度を用いた。各項目は肯定 的な印象を与える形容詞で構成された。回答はい ずれも「好きである=2」「どちらともいえない
=1」「好きではない=0」の3件法であった。
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
男性 588 393 354 363 365 319 296 386 284 360 367 306 291 4672
女性 304 185 170 195 207 196 174 206 172 266 235 208 178 2696
892 578 524 558 572 515 470 592 456 626 602 514 469 7368
受検年度 合計
性別 合計
表 1 受検年度別対象者数(人)
4.結果
2004年度から2016年度までのサンプルを合算 し、各尺度のα係数を算出した。その結果、「信 頼できる」で、α=.688、「創造性のある」でα
=.793、「機敏な」でα=.621、「親しみやすい」
でα=.684、「勤勉な」でα=.629であった。「創 造性のある」を除く4つの尺度で0.7を切ってお り、やや尺度としての信頼性が低い結果となっ た。
組織選好度には性差があることが想定されるこ とから、性別ごとに、2004年度から2016年度ま での推移を確認した。分析に先立ち、2004度か
ら2016年度までのサンプルを合算した上で得点 分布を確認し、正規性を想定できる程度の違いに より、推移を検討する際に用いる分析方法を確定 した。
(1)男子学生の組織選好度の推移
ヒストグラムから、「勤勉な」を除く「信頼で きる」「創造性のある」「機敏な」「親しみやすい」
という4つの尺度では、正規分布を仮定できない ことが確認された(図1〜図5)。一方で「勤勉な」
では正規分布に従うことが確認された。正規分布 が仮定できない4尺度については平均値・標準偏 差でなく、中央値ならびに箱ひげ図を用いて特徴
を把握することとした。
また、受検年度間での差異を検証するための統 計手法については分布の正規性を考慮し、正規性 が仮定できる「勤勉な」については一元配置分散 分析を用い、正規性が仮定できない「信頼できる」
「創造性のある」「機敏な」「親しみやすい」につ いては、Kruskal-Wallis検定を用いた。
以上の手続きに従い、男子学生の組織選好度の 経年での変化の有無について順番に見ていこう。
まず「信頼できる」についてである。組織選好度 の5尺度の中で、「信頼できる」は13年間一貫し て最も中央値が高い(表2)。
「信頼できる」尺度は正規分布が仮定できない ことから、中央値ならび第1四分位数・第3四分 位数を確認した。「信頼できる」尺度の得点は0 図 1 「信頼できる」のヒストグラム(男子学生)
図 2 「創造性のある」のヒストグラム(男子学生)
図 3 「機敏な」のヒストグラム(男子学生)
図 4 「親しみやすい」のヒストグラム(男子学生)
図 5 「勤勉な」のヒストグラム(男子学生)
3,000
1,000
0 .00 3.00 6.00 9.00 12.00
人数
信頼できる
(人)
2,000
2,500
1,500 1,000
0 .00 3.00 6.00 9.00 12.00
人数
創造性のある
(人)
2,000
500
2,000
1,000
0 .00 3.00 6.00 9.00 12.00
人数
機敏な
(人)
1,500
500
1,250
750
0 .00 3.00 6.00 9.00 12.00
人数
親しみやすい
(人)
1,000
500 250
1,000
600
0 .00 3.00 6.00 9.00 12.00
人数
勤勉な
(人)
800
400 200
〜10点まで分布するが、中央値が10点であり、
少なくとも半数の男子学生の得点は10点であっ た。また第1四分位数も8.0もしくは9.0と高く データの散らばり具合が小さいことがわかる(表 2・図6)。これらのことから、男子学生は「信頼 できる」組織に対して非常に高い好意を持ってい ると言える。2004年度から2016年度の間の得点 の差異を検討するために、Kruskal-Wallis検定を 行った。その結果、受検年度間で5%水準で有意 差は認められなかった(χ2=11.859, p=n.s.)。男 子学生が「信頼できる」組織を好む程度は高い水 準で安定していると言える。
男子学生が「創造性のある」組織を好む程度 は、5つの尺度のうち、「信頼できる」についで 高く、「機敏な」とほぼ同水準である。中央値は、
2004年度から2006年度までと2008年度で10点 であったが、2007年度ならびに2009年度以降 は、9点で推移している(表3)。このことから、
男子学生が「創造性のある」組織を選好する程度 は2004年度を基準とした場合、やや低下した後、
低下した水準で安定的に推移していると言える。
2014年度・2015年度は第1四分位が7点であり、
得点の低下だけでなく得点の散らばりが下に広が る年度も近年散見するようになってきている(図 7)。
2004年度から2016年度の間の得点の差異を検 討するために、Kruskal-Wallis検定を行った。そ の結果、受検年度間で5%水準で有意差は認めら れた(χ2=24.072, p<.05)。しかしながら、多重 比較の結果、5%水準で有意差が認められたペア はなかった。これらの結果から、男子学生が「創 造性のある」組織を好む程度は相対的には高い水 準にあるものの、やや低下していると言える。し かしながら、低下の幅はごくわずかであった。
男子学生が「機敏な」組織を好む程度は、「創 造のある」とほぼ同水準にある。尺度得点の中央 値は2004年度から2016年度まで一貫して9.0で あり高い水準にある。2013年度から2015年度ま では第1四分位が7.0であり、得点の散らばり具 合がやや大きくなったが、2016年度は2012年度 以前の水準に戻った(表4・図8)。同様の傾向は
「創造性のある」尺度でも認められている。
2004年度から2016年度の間の得点の差異を 図 6 「信頼できる」の箱ひげ図(男子学生)
図 7 「創造性のある」の箱ひげ図(男子学生)
表 2 「信頼できる」の中央値(男子学生) 表 3 「創造性のある」の中央値(男子学生)
10 9 8 7 6 5
信頼できる
受検年度
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
10 9 8 7 6 5 4 3
創造性のある
受検年度
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 受検年度 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
第1四分位 8.00 8.75 9.00 9.00 8.00 9.00 8.00 中央値 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 第3四分位 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 受検年度 2011 2012 2013 2014 2015 2016 第1四分位 9.00 8.00 8.00 8.00 9.00 8.00
中央値 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 第3四分位 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00
受検年度 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 第1四分位 8.00 8.00 8.00 8.00 8.00 8.00 8.00
中央値 10.00 10.00 10.00 9.00 10.00 9.00 9.00
第3四分位 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 受検年度 2011 2012 2013 2014 2015 2016 第1四分位 8.00 8.00 8.00 7.00 7.00 8.00
中央値 9.00 9.00 9.00 9.00 9.00 9.00
第3四分位 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00
検 討 す る た め に、Kruskal-Wallis検 定 を 行 っ た。その結果、0.1%水準で有意差が認められた
(χ2=33.991, p<.001)。多重比較の結果、2014年 度 は、2004年 度(p<.01)・2005年 度(p<.01)・
2006年度(p<.05)よりも、有意に得点が低い ことが確認された。同様に2016年度は2004年 度(p<.10)・2005年 度(p<.10) よ り も、 有 意 に得点が低いことが確認された。中央値自体は 2004年度から2016年度まで変わらないが、得点 の散らばりが下方に広がったことを理由として、
2014年度は他の年度との間に有意差が認められ たと考えられる。2014年度ならびに2016年度の 直近の年度で得点の低下が認められたことから、
「機敏な」組織に対する選好度は低下傾向にある ことを踏まえた上で、今後の得点の推移を慎重に 観察することが求められる。
男子学生が「親しみやすい」組織を好む程度は、
ほとんどの年度で「勤勉な」についで低い水準に ある。中央値は2011年度と2015年度のみ9.0で あったが、それ以外の多くの年度で8.0であり、
安定している。一方で、得点の散らばりが、「信
頼できる」「創造性のある」「機敏な」という3つ の尺度よりも大きく、男子学生の「親しみやす い」組織に対する選好度は個人差が大きい(表5・ 図9)。
2004年度から2016年度の間の得点の差異を検 討するために、Kruskal-Wallis検定を行った。そ の結果、受検年度間で5%水準で有意差は認めら れなかった(χ2=19.409, p=n.s.)。男子学生が「親 しみやすい」組織を好む程度は安定していると言 える。
「勤勉な」は正規分布が仮定できることから、
平均値・標準偏差を算出した。男子学生が「勤勉 な」のある組織を選好する程度は、5つの尺度の 中で最も低かった。既に見てきた4つの尺度の中 で、最も得点の低い「親しみやすい」でも中央 値は8.0であったが、「勤勉な」の平均値は5.35
〜5.69であり他の尺度と比較してかなり低い(表 6・図10)。平均値からは2004年度から2016年 度まで、「勤勉な」を選好する水準は安定的に推 移していると捉えられる。一元配置分散分析の結 果、5%水準で有意差は認められなかった(F=.699, 図 8 「機敏な」の箱ひげ図(男子学生)
図 9 「親しみやすい」の箱ひげ図(男子学生)
表 4 「機敏な」の中央値(男子学生)
表 5 「親しみやすい」の中央値(男子学生)
10 9 8 7 6 5 4 3
機敏な
受検年度
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
10 8 6 4 2 0
親しみやすい
受検年度
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 受検年度 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
第1四分位 8.00 8.00 8.00 8.00 8.00 8.00 8.00
中央値 9.00 9.00 9.00 9.00 9.00 9.00 9.00
第3四分位 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 受検年度 2011 2012 2013 2014 2015 2016 第1四分位 8.00 8.00 7.00 7.00 7.00 8.00
中央値 9.00 9.00 9.00 9.00 9.00 9.00
第3四分位 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00
受検年度 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 第1四分位 6.00 6.00 6.00 6.00 6.00 7.00 6.00
中央値 8.00 8.00 8.00 8.00 8.00 8.00 8.00
第3四分位 9.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 受検年度 2011 2012 2013 2014 2015 2016 第1四分位 7.00 6.00 6.00 6.00 7.00 7.00
中央値 9.00 8.00 8.00 8.00 9.00 8.00
第3四分位 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00
p=n.s.)。このことから、男子学生が「勤勉な」
を好む程度は他の尺度に比べて安定的に低いと言 える。
男子学生を対象とした分析の結果、受検年度間 で、有意差が認められたのは「創造性のある」と
「機敏な」の2類型であった。しかしながら、「創 造性のある」は、多重比較の結果、有意差が認め られたペアはなかった。従って、明確に変化が認 められたのは「機敏な」だけだと言える。「機敏 な」では、2014年度や2016年度が、他の年度と 比較して有意に低かったことから、近年低下傾向 にあることがうかがえる。今後も低下傾向が継続 するか、注視することが必要である。同様に、「創 造性のある」についても、多重比較で有意差は見 られなかったものの、低下する傾向がうかがえる ことから、継続して観察することが必要である。
これらの結果から、男子学生の組織選好度は比 較的安定的に推移していると考えられる。また、
各類型の尺度得点の比較から、「信頼できる」が 最も高く、それに「創造性のある」と「機敏な」
が続いて高く、「親しみやすい」「勤勉な」の順番
で低くなる。
(2)女子学生の組織選好度
男子学生同様、ヒストグラムを作成し、得点分 布を確認した。ヒストグラムから、男子学生同様、
「勤勉な」を除く「信頼できる」「創造性のある」「機 敏な」「親しみやすい」という4つの尺度で、正 規分布から逸脱することが確認された(図11〜 図14)。一方で「勤勉な」では正規分布に従うこ とが確認された(図15)。
正規分布が仮定できない4つの尺度については 平均値・標準偏差でなく、中央値・箱ひげ図を用 いて特徴を把握することとした。また、受検年度
図 10 「勤勉な」の箱ひげ図(男子学生)
表 6 「勤勉な」の平均値(男子学生)
10 8 6 4 2 0
勤勉な
受検年度
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
受検年度 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
平均値 5.43 5.49 5.56 5.55 5.53 5.67 5.64
標準偏差 2.40 2.23 2.42 2.32 2.21 2.29 2.41
受検年度 2011 2012 2013 2014 2015 2016
平均値 5.52 5.61 5.69 5.46 5.68 5.35
標準偏差 2.16 2.27 2.26 2.25 2.16 2.30
注.+ は平均値
2,000
1,000
0 .00 3.00 6.00 9.00 12.00
人数
信頼できる
(人)
1,500
500
図 11 「信頼できる」のヒストグラム(女子学生)
1,500
500
0 .00 3.00 6.00 9.00 12.00
人数
創造性のある
(人)
1,000
図 12 「創造性のある」のヒストグラム(女子学生)
間での差異を検証するための統計手法については 分布の正規性を考慮し、正規性が仮定できる「勤 勉な」については一元配置分散分析を用い、正規 性が仮定できない「信頼できる」「創造性のある」
「機敏な」「親しみやすい」については、Kruskal- Wallis検定を用いた。
「信頼できる」から順番に見ていこう。女子学 生の「信頼できる」尺度の得点は2004年度から 2016年度まで、第1四分位は9.0、中央値ならび に第3四分位は10.0であり、非常に高い水準かつ 安定的に推移している。男子学生同様、女子学生 でもこの尺度の中央値が組織選好度の5つの尺度 の中で、最も高かった(表7・図16)。
2004年度から2016年度の間の得点の差異を 検討するために、Kruskal-Wallis検定を行った。
その結果、受検年度間で1%水準で有意差が認 められた(χ2=32.785, p<.01)。多重比較の結果、
2004年度が、2007年度(p<.05)・2009年度(p<.10)・ 2010年度(p<.01)・2011年度(p<.01)・2013年 度(p<.05)・2014年度(p<.01)と比較して、女 子学生の「信頼できる」尺度の水準が低いことが 確認された。中央値、第1四分位ならびに第3四 分位で変化が認められないことから、確認のため 2004年度と1%水準で有意差が認められた2011 年度ならびに2014年度との得点分布を比較した。
その結果、2004年度の方が、低い点数まで得点 分布が広がり、中央値である10点を取った人数 の比率も低いことが確認された(図17)。従って、
中央値等での変化は認められないものの、女子学 生の「信頼できる」組織への選好度は2004年度 のみやや低く、2005年度以降は非常に高い水準 で安定的に推移していると言える。
600
400
0 .00 3.00 6.00 9.00 12.00
人数
勤勉な
(人)
500
200 100 300 1,200
800
0 .00 3.00 6.00 9.00 12.00
人数
機敏な
(人)
1,000
400 200 600
1,000
600
0 .00 3.00 6.00 9.00 12.00
人数
親しみやすい
(人)
800
400
200
図 15 「勤勉な」のヒストグラム(女子学生)
図 13 「機敏な」のヒストグラム(女子学生)
図 14 「親しみやすい」のヒストグラム(女子学生)
表 7 「信頼できる」の中央値(女子学生)
受検年度 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
第1四分位 9.00 9.00 9.00 9.00 9.00 9.00 9.00
中央値 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 第3四分位 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00
受検年度 2011 2012 2013 2014 2015 2016
第1四分位 9.00 9.00 9.00 9.00 9.00 9.00
中央値 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 第3四分位 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00
「機敏な」について見ていこう。この尺度の中 央値は2011年度が10.0であったことを除き、12 の年度で9.0であった。「信頼できる」「創造性の ある」の2つよりも低く、「親しみやすい」とほ ぼ同水準であり、5つの尺度の中で平均的な水準 にある。中央値は安定しているが、得点の散らば りは2013年度・2015年度で得点の低い方に広がっ ている(表9・図19)。
2004年度から2016年度の間の得点の差異を検 討するために、Kruskal-Wallis検定を行った。そ の結果、受検年度間で0.1%水準で有意差が認め られた(χ2=36.663, p<.001)。多重比較の結果、
2015年度と、2004年度(p<.05)・2005年度(p<.05)・ 2011年度(p<.05)の3つのペアで有意差が認め られた。2015年度の「機敏な」尺度の得点は、
2004年度・2005年度・2011年度と比較して有意 に低いと言える。これらの結果から、女子学生 の2015年度で複数年度間との間に有意差が認め られたものの、「機敏な」組織に対する選好度は、
基本的に安定しており、「信頼できる」「創造性の ある」よりやや低い水準にあると言える。
次に「創造性のある」について見ていこう。
2004年度から2016年度までの間、10の年度で中 央値が10.0、3つの年度で9.0であった。中央値 が9.0であった年度は「信頼できる」よりも低い 水準であったが、全体としては「信頼できる」と 同水準の高さにある(表8・図18)。
2004年度から2016年度の間の得点の差異を検 討するために、Kruskal-Wallis検定を行った。そ の結果、受検年度間では有意差は認められなかっ た(χ2=11.324, p=n.s.)。これらの結果から、女 子学生の「創造性のある」組織に対する選好度は、
安定的に推移し、かつ「信頼できる」とほぼ同じ 水準にあると言える。
図 18 「創造性のある」の箱ひげ図(女子学生)
図 16 「信頼できる」の箱ひげ図(女子学生)
図 17 「信頼できる」の 2004 年度・2011 年度・
2014 年度の得点分布
表 8 「創造性のある」の中央値(女子学生)
10 9 8 7 6 5 4 3
創造性のある
受検年度
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 10
9 8 7 6 5
信頼できる
受検年度
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
0 10 20 30 40 50 60 70 80
2 3 4 5 6 7 8 9 10
比 率(
%)
「信頼できる」の尺度得点 2004年 2010年2011年 2014年
受検年度 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 第1四分位 8.00 8.00 8.00 8.00 8.00 9.00 8.00
中央値 10.00 10.00 10.00 10.00 9.00 10.00 9.00
第3四分位 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00
受検年度 2011 2012 2013 2014 2015 2016
第1四分位 8.00 8.00 8.00 8.00 8.00 8.00
中央値 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 9.00 第3四分位 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00
「親しみやすい」について見ていこう。「親し みやすい」の中央値は、2004年度・2005年度が 8.0であり、2006年度以降9.0であったことから、
2004年度を基準とすると、女子学生が「親しみ やすい」を選好する程度は高まったと言える。ま た年度によって得点の散らばりにやや変動が見ら れた(表10・図20)。
2004年度から2016年度の間の得点の差異を 検 討 す る た め に、Kruskal-Wallis検 定 を 行 っ た。その結果、受検年度間で0.1%水準で有意差 が認められた(χ2=45.862, p<.001)。多重比較の 結果、2004年度は、2009年度(p<.001)・2010 年 度(p<.01)・2011年 度(p<.01)・2013年 度・
2014年度(p<.001)・2016年度(p<.05)という 6つの年度との間で有意差が認められた。同様に、
2005年度と、2014年度(p<.10)・2015年度(p<.10) の間でも有意差が認められた。これらの結果から、
女子学生が「親しみやすい」を選好する程度は、
2004年度・2005年度と比較して、高まる傾向に あり、高まった水準のまま推移していると言える。
「勤勉な」について見ていこう。男子学生同様、
女子学生でも、5つの尺度の中で最も得点が低い 結果となった。女子学生の「勤勉な」組織に対 する選好度は最も低いと言える。また、2004年 度から2016年度までの平均値は、5.36〜5.86ま でとほとんど変化せず推移している(表11・図 21)。この尺度は正規性が仮定できることから、
2004年度から2016年度の間の得点の差異を検討 するために、一元配置分散分析を行った。その結 果有意差は認められなかった(F=.979, p=n.s.)。
これらの結果から、女子学生の「勤勉な」組織に 対する選好度は低い水準で安定的に推移している と言える。
図 19 「機敏な」の箱ひげ図(女子学生) 図 20 「親しみやすい」の箱ひげ図(女子学生)
表 9 「機敏な」の中央値(女子学生) 表 10 「親しみやすい」の中央値(女子学生)
表 11 「勤勉な」の平均値(女子学生)
10 9 8 7 6 5 4 3
機敏な
受検年度
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
10 8 6 4 2 0
親しみやすい
受検年度
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 受検年度 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
第1四分位 8.00 8.00 8.00 8.00 8.00 8.00 8.00
中央値 9.00 9.00 9.00 9.00 9.00 9.00 9.00
第3四分位 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00
受検年度 2011 2012 2013 2014 2015 2016
第1四分位 8.00 8.00 7.25 8.00 7.00 8.00
中央値 10.00 9.00 9.00 9.00 9.00 9.00
第3四分位 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00
受検年度 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
第1四分位 6.00 6.00 7.00 7.00 7.00 8.00 7.00
中央値 8.00 8.00 9.00 9.00 9.00 9.00 9.00
第3四分位 9.00 9.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00
受検年度 2011 2012 2013 2014 2015 2016
第1四分位 8.00 7.00 7.00 8.00 7.00 7.00
中央値 9.00 9.00 9.00 9.00 9.00 9.00
第3四分位 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00
受検年度 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
平均値 5.41 5.55 5.70 5.61 5.70 5.61 5.55
標準偏差 2.34 2.14 2.07 2.33 2.19 2.19 2.12
受検年度 2011 2012 2013 2014 2015 2016
平均値 5.71 5.47 5.69 5.86 5.36 5.76
標準偏差 2.10 2.17 2.13 2.18 2.23 2.21
女子学生の組織選好度の変化を改めて確認す る。組織選好度の各類型の中で、有意差が認めら れたのは「信頼できる」「機敏な」「親しみやすい」
であり、有意差が認められなかった尺度は「創造 性のある」と「勤勉な」であった。
有意差が認められた「信頼できる」では2004 年度から2016年度のうち2004年度のみ、また「親 しみやすい」では2004年度と2005年度のみが 低く、それ以降は高まった水準で安定的に推移し ていた。「機敏な」では、2015年度のみ得点が低く、
それ以外の年度では安定的に推移していた。
これらのことから、女子学生の組織選好度は、
「信頼できる」と「創造性のある」が最も高い水 準にあり、「機敏な」と「親しみやすい」がそれ に続く高さにあり、「勤勉な」が最も低いこと、
さらには「信頼できる」と「親しみやすい」が 2004年度・2005年度と比べて、より高く選好さ れようになったが、2006年度以降は全体的に安 定的に推移していることが確認された。
(3)組織選好度における性差
最後に組織選好度の各類型における性差の有 無、ならびに性差が確認された場合には性差の拡 大もしくは縮小について検討した。
最初に「信頼できる」の性差である。男子学 生・女子学生とも2004年度から2016年度まで の全てでこの尺度の中央値は10.0と非常に高く、
かつ同一の数値であった。一方で、得点の散らば りには性差が認められた。2004年度から2016年
図 21 「勤勉な」の箱ひげ図(女子学生)
10 8 6 4 2 0
勤勉な
受検年度
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
度までの13の年度中、7つの年度で第1四分位の 値が男子学生の方が低く、男子学生の方が女子学 生よりも得点の散らばりが大きいと言える(図 22)。
「信頼できる」は正規性が仮定できず、かつ 男子学生と女子学生とで等分散性が保たれてい ないことから、2群の比較には、正規性ならび に等分散性を必要としない2群の検定方法であ るBrunner-Munzel検定を用いた。検定の結果、
2004年度と2015年度の2つの年度を除く11の 年度で、0.1%水準から5%水準で性差が確認され た(表12)。性差が確認されたすべての年度で、
女子学生の方が男子学生よりも「信頼できる」の 得点が高かった。これらの結果から、女子学生の 方が、男子学生よりも「信頼できる」組織に対し てより高い選好度を安定的に有すると言える。
次に「創造性のある」における性差を検討する。
この尺度の男子学生の中央値と女子学生と中央値 が同一である年度が5回、男子学生の方が女子学 生よりも高い年度が1回、女子学生よりも低い年 度が7回あった。男子学生と女子学生の中央値が 同等の年度は2010年度以前で4回と前半の時期に 集中し、逆に2011年度以降で6年度中5回、男子 学生の中央値が女子学生よりも低かった(図23)。
10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0
信頼できる
受検年度
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
注.左ボックスが男子学生・右ボックスが女子学生 図 22 「信頼できる」の男子学生と女子学生の箱
ひげ図
Brunner-Munzel検 定 の 結 果、2004年 度 か ら2016年度までの13の年度のうち、2007年度
(p<.05)・2009年度(p<.01)・2010年度(p<.05)・ 2011年度(p<.01)・2013年度(p<.05)・2015年 度(p<.05)という6つの年度で性別における有 意差が認められた(表12)。有意差が認められた 全ての年度で、女子学生の方が男子学生よりも得 点が高かった。有意差が認められた年度は2009 年度以降に集中することから、「創造性のある」
組織に対する選好度にはもともと性差は認められ なかったが、男子学生の中央値の低下を理由とし て、性差が存在するようになり、女子学生の方が やや高い傾向が発生しつつあると言える。
「機敏な」の性差について見ていこう。この尺 度では2004年度から2016年度までの13回のうち、
12回で男子学生と女子学生双方の中央値が9.00 で一致していた。そして、2011年度のみ女子学 生の方が男子学生よりも中央値が高い結果となっ た。中央値だけでなく得点の散らばりもほとんど の年度で男子学生と女子学生との間で類似の傾向 があることが特徴である(図24)。
Brunner-Munzel検定の結果、全ての年度で有 意差が認められなかった(表12)。従って、「機 敏な」組織に対する選好度については、男子学生
と女子学生で違いは見られず、両者とも比較的高 い水準にあると言える。
「親しみやすい」の性差について見ていこう。
2004年度と2005年度では、この尺度の中央値 は、男子学生・女子学生とも8.0であ同一であっ たが、2006年度以降女子学生の「親しみやすい」
尺度の中央値は一貫して9.0であった。一方、男 子学生の尺度得点の中央値は8.0をとる年度が 2004年度から2016年度のうち11の年度であり、
2011年度と2015年度のみ9.0であった。また得 点の散らばり具合も、男性の方が大きい傾向にあ ることが認められた(図25)。
Brunner-Munzel 検 定 の 結 果 、2006年 度
(p<.05)・2009年度(p<.01)・2010年度(p<.05)・ 2012年度(p<.05)・2013年度(p<.05)・2014年 度(p<.001)という6つの年度で男女差が認めら れた(表12)。また、有意差が認められた全ての 年度で女子学生の方が男子学生よりも中央値が高 かった。
これらの結果から、2004年度の時点で性差は 認められなかったが、2006年度以降女子学生の
「親しみやすい」組織を選好する程度が高まった ことを理由として、性差が認められるようになっ た。しかし、男子学生が「親しみやすい」組織を 選好する程度が2011年度と2015年度で高くなり、
10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0
創造性のある
受検年度
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0
機敏な
受検年度
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
注.左ボックスが男子学生・右ボックスが女子学生
注.左ボックスが男子学生・右ボックスが女子学生
図 23 「創造性のある」の男子学生と女子学生の 箱ひげ図
図 24 「機敏な」の男子学生と女子学生の箱ひげ図
組織選好度における性差について整理する。安 定的に性差が認められたのは「信頼できる」であっ た。女子学生の方が男子学生よりも「信頼できる」
組織に対してより高い選好度を有する。
その他に、性差における変化が認められたのは
「創造性のある」と「親しみやすい」の2つであった。
「創造性のある」では、もともと性差は認められ なかったが、男子学生の中央値の低下を理由とし て、性差が存在するようになり、女子学生の方が 男子学生よりもやや高い傾向が生じつつある。逆 に「親しみやすい」では、2004年度の時点で性 差は認められなかったが、女子学生の選好度の上 昇を理由に性差が生じた。ただし男子学生でも選 好度の上昇をうかがわせる傾向が見受けられるこ とから、今後性差が解消される可能性もある。
なお、「機敏な」「勤勉な」では、性差は認めら れなかった。
それらの年度では性差が認められなかった。この ことから、女子学生の「親しみやすい」組織に対 する選好度の上昇を理由に発生した性差は、今後 男子学生の選好度の上昇により解消される可能性 もあると考えられる。また、男子学生は女子学生 よりも「親しみやすい」組織に対する選好度のば らつきが女子学生よりも大きいことも特徴であ る。
最後に「勤勉な」の性差について見ていこう。
この尺度では、男子学生の方が女子学生よりも得 点が高かった年度が5回、女子学生の方が男子学 生よりも得点が高かった年度が7回、得点が同一 だった年度が1回であった(図26)。他の4尺度 と比較して、いずれかの性が高いといった一貫し た傾向は認められなかった。
t検定の結果、2004年度から2016年度のうち、
2014年度のみで有意差が認められた(p<.05)。
しかし、それ以外の結果では有意差は認められな かった(表12)。これらの結果から、男子学生と 女子学生では「勤勉な」組織に対する選好度に基 本的に差異はないと言える。
10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0
親しみやすい
受検年度
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
注. 左ボックスが男子学生・右ボックスが女子学生
注)***p<.001, **p<.01, **p<.05 図 25 「親しみやすい」の男子学生と女子学生の
箱ひげ図
図 26 「勤勉な」の性別ごとの平均値の推移 表 12 各尺度の男女間での検定結果
5.00 5.20 5.40 5.60 5.80 6.00
男子学生 女子学生
2004 1.387 1.186 0.589 0.171 0.158
2005 3.178*** 0.275 0.517 0.076 -0.227
2006 3.766*** 0.762 0.157 2.470* -0.665
2007 3.754*** 2.229* -0.179 1.947 -0.294
2008 3.190** -0.091 -0.987 0.810 -0.909
2009 2.624** 2.690** -0.212 2.787** 0.286
2010 3.544*** 2.321* 0.307 2.322* 0.378
2011 4.650*** 3.215** 1.418 1.792 -1.061
2012 2.304* 0.287 -1.119 2.385* 0.623
2013 3.696*** 2.144* 0.317 2.237* 0.004
2014 4.610*** 1.611 1.093 3.392*** -2.120*
2015 0.931 2.101* -0.722 0.604 1.609
2016 3.586*** 0.721 0.234 1.824 -1.921
信頼できる 創造力のある 機敏な 親しみやすい 勤勉な
Brunner-Munzel 検定統計量 t値
5.考察
性別ごとに組織選好度各類型の2004年度から 2016年度までの推移を検討した。男子学生・女 子学生とも変化が認められず安定的な性質を持つ ことが確認されたのが「勤勉な」であった。また 男子学生では「信頼できる」「親しみやすい」で も変化が認められなかった。一方女子学生では、
「創造性のある」「機敏な」で変化が認められず安 定的に推移していることが確認された。
変化が認められたのは、男子学生では「機敏な」
と「創造性のある」であった。「機敏な」では選 好度が低下する傾向が認められた。また、「創造 性のある」では明確な傾向とは言えないが、低下 する傾向にあることがうかがえる。男子学生で低 下が認められた2つの類型は、その組織に関わる 者に、物事に対して主体的もしくは能動的な態度 を持つことを求める組織イメージである。例えば
「創造性のある」組織の一員には、創造性を発揮 することが求められるということである。相対的 に見ればこの2つの類型の得点は高い水準にある が、主体的・能動的な態度を個人にも期待するよ うな組織に対する選好度が低下しているとも考え られる。
一方、女子学生では、「信頼できる」「親しみ やすい」が高まる傾向が認められた。ただし、
2006年度以降はいずれの類型も安定的に推移し ている。このことから、女子学生の組織選好度の 方が男子学生よりも安定していると判断できる。
このように、男子学生と女子学生では異なる特徴 が認められた。
性差については、「信頼できる」では一貫して 女子学生の方が男子学生よりも選好度が高いこと が確認された。さらに、「創造性のある」と「親 しみやすい」ではもともと存在しなかった性差が 認められるようになった。「親しみやすい」につ いては、女子学生の選好度が高まることで性差が 生じたが、その後男子学生でも選好度が高まる傾 向が見受けられることから、今後その性差は解消 する可能性もうかがえる。
「創造性のある」では、もともと性差はなかっ たものの、男子学生の選好度の低下を理由として、
性差が生じ、2009年度以降女子学生の方が男子 学生よりもやや高い傾向が複数年で確認されてい る。ただし、「創造性のある」と「親しみのある」
のいずれも、複数年度で性差は認められたものの、
性差が認められなかった年度も少なくないことか ら、性差についての結論を出すためには今後も推 移を見ていくことが必要である。また、「機敏な」
「勤勉な」では、性差は認められなかった。
組織選好度の各類型の選好度の高さについて確 認する。男子学生・女子学生とも「信頼できる」
が最も高く、「勤勉な」が最も低かった。男子学 生では「信頼できる」以下、「創造性のある」「機 敏な」「親しみやすい」の順番で選好度が低くな る。女子学生では「創造性のある」と「信頼でき る」の2類型が同水準で高く、以下「機敏な」「親 しみやすい」と低くなる。
男子学生・女子学生とも「信頼できる」という 類型は一貫して最も尺度得点が高く、女子学生が この類型を選好する程度は高まり、男子学生より も一層高い水準にある。2004年度から2016年度 までの大学生のキャリア・オリエンテーションの 推移について分析した坂爪(印刷中)は、女子学 生の方が男子学生よりも、一貫して「保証」を志 向する程度が高いことを明らかにしている。「保 証」とは、長期的かつ安定的な雇用をより求める 志向性のことであり、男子学生よりもより「保証」
を高く志向する女子学生は、そのニーズを実現す る可能性が高いと期待できる組織として、「信頼 できる」組織をより高く選好すると考えられる。
最後に本研究の課題を2点指摘する。第1に、
尺度の問題である。各類型を測定する尺度のうち、
「勤勉な」を除く「信頼できる」「創造性のある」「機 敏な」「親しみやすい」という4つの尺度で正規 性を仮定できる分布とはならなかった。また、現 在の尺度は、「勤勉な」を除く「信頼できる」「創 造性のある」「機敏な」「親しみやすい」という4 類型についてこれを選好する程度が低い個人を識 別することは優れているが、選好する程度が高い
個人を識別することには課題を残す。今後、SD 法の導入など反応尺度の再検討を通じて、より識 別力の高い尺度に再構成していくことが必要であ る。
第2に、対象者の問題である。本稿で用いた調 査は、特定の大学の一部の大学生を対象としたも のである。組織選好度に対して所属大学が直接的 に影響を与えることは考えにくいが、より多様な 属性をもつ大学生を対象として検証することが望 ましい。今後、対象とする大学を増やす等の作業 を通じて、より一般的な傾向を把握することが必 要である。
参考文献
林 文俊(1978)「対人認知構造の基本次元につい ての一考察」,名古屋大学教育学部紀要(教育 心理学),25,233-247.
斎藤和志・村上隆・若林満(1986)「準3相因子分 析に基づく組織イメージの構造」,経営行動科 学,1,27-40.
坂爪洋美(印刷中)「大学生のキャリア・オリエンテー ションの継時的変化―2004年から2016年まで を対象に―」,慶應経営論集.
高橋弘司・野口裕之・安藤雅和・渡辺直登(1999) 採用過程における志願者の組織イメージの形 成と測定 ―精神力動的組織行動論の視点から.
経営行動科学,13,113-123.
SAKAZUME Hiromi
Time Series Changes in Organizational Image Preferences among University Students:
Based on the survey from 2004 to 2016
The purpose of this study was to explore the time series changes in organizational image preferences among university students from 2004 through 2016. This study conceptualized organizational image as perceptual representation of an organizations overall appeal as defined by university students. Moreover, organizational image was categorized five types in referent to previous studies: Trustworthy, Creative, Rapidity, Friendly and Conscientious. A little research has been conducted on an individualʼs organizational image preference prior to employment. However, understanding individual preferences prior to employment is important today. Thus in this study, it was attempted to reveal the characteristics of organizational image preference, especially taking particular note to the time series changes among university students.
Respondents included 7368 students of a private university in Tokyo, the number of male respondents was 4672, and the number of female respondents was 2696. They answered the organizational image preference scale in April during their sophomore year in university from 2004 to 2016. The result shows both of male and female students
have consistently preferred “Trustworthy” especially female students. On the other hand, their preference level of “Conscientious” have been low consistently. Any change has not been recognized in “Conscientious” from 2004 to 2016 in male and female students, so “Conscientious” has stable trait. In male students, any change hasnʼt been recognized in “Trustworthy” and “Friendly” from 2004 to 2016, on the other hand, in female students, any change hasnʼt been recognized in
“Creativity” and “Rapidly” from 2004 to 2016.
Different trends were showed in male and female students. In male students, preference level of “Creativity” and “Rapidly” was changed.
Preference level of “Rapidly” was declined, at the same time, preference level of “Creativity” can be inferred to decline. In female students, preference level of “Trustworthy” and
“Friendly” got higher from 2004 to 2016.
Through comparing male students with female students, female students prefer “Trustworthy” more than male students, consistently. In
“Creativity” and “Friendly”, there werenʼt differences between male student and female students in 2004. But preference level of
“Friendly” of female students got higher, there has become deference between male student