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カーネル平滑化統計量に基づくノンパラメトリック 推測

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

カーネル平滑化統計量に基づくノンパラメトリック 推測

森山, 卓

https://doi.org/10.15017/1931731

出版情報:Kyushu University, 2017, 博士(数理学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

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(様式6-2)

氏 名 森山 卓

論 文 名 Nonparametric inference based on kernel smoothed statistics

(カーネル平滑化統計量に基づくノンパラメトリック推測)

論文調査委員 主 査 九州大学 教授 前園宜彦 副 査 九州大学 教授 西井龍映 副 査 九州大学 教授 増田弘毅 副 査 九州大学 准教授 二宮嘉行

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

ノンパラメトリックな推測法は順位に基づく推測から始まり,統計的リサンプリング法へと発展 し,母集団分布を特定しない方法として様々な場面で活用されている.このような流れの中で,密 度関数を直接推定するカーネル法が Fix and Hodges (1951)や Akaike (1954)により導入され Rosenblatt (1956)やParzen (1962)により定式化された.その後滑らかな推測結果を与えるものと して研究され,1990年代以降はパラメトリック法との融合によるセミパラメトリックな推測,バイ アスの低減,密度関数のサポートが有界な時のバイアスの改善などが研究され,汎用性のある手法 として定着している.しかしながらこれまでの研究は様々な成果が得られているが,バイアスの改 善に主力が置かれ,推定量の分散の低減は確立された方法が無く,ほとんど研究されていなかった.

Ćwik and Mielniczuk (1989) により密度関数の比に対して,それぞれの密度関数の推定量を代入す る方法よりも分散が小さくなる直接型の推定量が提案された.本論文ではこのアイデアを一般化し,

ハザード関数の直接型推定量の構成に成功している.またサポートの境界の推定と境界バイアスの 改良を同時に行う新たな方法の開発を行い,さらにカーネル法を利用した順位検定統計量の連続化 に成功し,有意確率の恣意性を解消する成果を得ている.

統計量が比で表されるときには,推定したい分母の値が小さい時に,データの少しの変化の影響 を受けて,全体の統計量が大きく変動する傾向が生じる.このために比の推定量の分散が大きくな る.この問題を解決するために変換に基づくカーネル型密度関数推定量のアイデアを利用して Ćwik

and Mielniczuk (1989) は分数の形ではない密度比の推定量の導出に成功している.本申請論文で

はこの手法を生存関数と密度関数の比であるハザード関数へ拡張し,新しい直接型推定量の導出を 行い,その理論的な平均二乗誤差を求めている.この新しい推定量の分散は,従来の分母・分子に 推定量を代入する自然な推定量より小さいことが示されており,特に生存時間の分布として重要な 指数分布関数では平均二乗誤差を常に改善することが示されている.この成果は Moriyama and Maesono (2016, A new kernel estimator of hazard ratio and its asymptotic mean squared error.

arXiv:1611.08049) としてまとめられ,国際誌に投稿中である.また他の比の統計量についての拡

張にも成功しており,条件付き密度関数や関連するノンパラメトリック回帰として投稿準備中であ る.これらの成功は従来のバイアス縮小とは異なる視点で,分散の縮小についての先駆けとなる成 果と判断され,研究の発展が期待される.

本論文ではさらに推定したい密度関数のサポートが有界な場合に生じる境界バイアス問題の解決 に取り組んでいる.これらは 1990 年代以降に盛んに研究され,サポートの境界が既知の場合には

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様々な解決法が提案されている.ここではサポートの境界のノンパラメトリック推定と境界バイア スの改善を同時に行う統計手法を提案し,その理論的な性質を明らかにしている.この問題につい

てはHall and Park (2002)において指摘されているが,本格的な研究はほとんど行われておらず,

この問題に対する先駆的な論文として今後の研究の発展が期待される分野である.この成果は申請 者が 単独 で行 っ てい る研 究で あ り Moriyama (2017, A new method of joint nonparametric estimation of probability density and its support. arXiv:1704.0815) としてまとめられている.

本論文の残りの部分では,カーネル法を利用した順位検定統計量の平滑化を議論している.順位 検定の研究は局所検出力(Pitman の漸近相対効率)による比較が主流であった.しかし Lehmann

and D’abrera (2006) などで指摘されているように,順位検定の分布関数のジャンプが細かいほど

有意確率が小さくなるという問題がある.有意確率は帰無仮説の下で計算されるものであり,従来 の局所検出力の議論では無視されていた問題である.経験分布関数の平滑化の一つがカーネル型分 布関数推定量と考えられ,この対応関係に着目して,有意確率の問題を解決している.カーネル型 による平滑化を行うと,有意確率が分布に依存するようになるが,正規近似の精密化を求めること により,この依存性も実用的な意味で解決できることを示している.これは世界に先駆けての成果 であり,一標本問題についてはMaesono, Moriyama and Lu (Smoothed nonparametric tests and approximations of p-values, Annals of the Institute of Statistical Mathematics) に掲載が確定し ている.二標本問題についても,有意確率及び検出力について理論的な比較を行い,シミュレーシ ョンでその理 論の正確性 を検証し ている. これは Moriyama and Maesono (2017, Smoothed nonparametric two-sample tests. arXiv:1704.07977)としてまとめられ,現在投稿中である.これ らの新しい平滑化順位検定は漸近的には通常の順位検定と同等であり,局所検出力の性質も引き継 いでいることが示されている.順位検定統計量を平滑化する研究はいくつか提案されているが,理 論的な性質を明らかにするとともに高次の分布近似を求めたのは,本研究が初めてであり,これま で明確でなかった順位検定の問題点を明らかにするとともに,その解決を提案したのは先駆的な成 果と判断される.

これらは理論的な研究であり,具体的な応用や関連する分野への適用はこれからであるが,研究 成果は理論的なバックグラウンドもしっかりしたもので,今後の発展が期待できる.また共同研究 において申請者は問題点を的確に把握し,その問題の解決にも大きく貢献している.単独での研究 成果も得ており,ノンパラメトリック推測の研究ではすでに頭角を現している.これらの実績から,

今後も研究者としてリードしていける知識と資質を十分に備えていると判断される.

以上の観点から,本論文の結果はカーネル法に基づくノンパラメトリック推測の分野において価 値ある業績と認められる.よって本研究者は博士(数理学)の学位を受ける資格があるものと認め る.

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