潤滑油汚染物質の色相判別法
著者 山口 智彦, 本田 知己, 岩井 善郎, 上田 正絋, 佐 々木 徹
雑誌名 福井大学工学部研究報告
巻 51
号 1
ページ 81‑88
発行年 2003‑03
URL http://hdl.handle.net/10098/3124
Mem.Fac.Eng,Fukui Univ。,VoL51,No,1(March2003)
潤滑油汚染物質の色相判別法
山口智彦*本田知己**
岩井善郎** 上田正紘***佐々木 徹****Imvestigatiom ofOil Com佃mimatiom by Co1orimetric Ama1ysis
ToshihikoYAMAGUCHI*,TomomiHONDA淋,怖shiroIWAI淋,
Masa阯m UEDA淋*㎜d Akim SASAKI****
(Received Febmary19.2003)
Contaminantsinhydrau1icand1ubricatingoilsareha㎜舳to1ubrication.Therearetwotypesof oi1c1ean1iness st㎝dards;one is based on partic1e count1ike NAS1638,IS04406,SAE AS4059 and JIS B9930,the other on gravimetric ana1ysis like ASTM D4898and JIS B9931.The partic1e count method can te11us the number ofp航ic1es in㏄rtain size r㎝ges…㎜d the gravimetric method the gross weight of contaminant in a certain quantity.But they c三㎜not teu us what exact1y the c㎝t㎜inants are.When oi1is used in machines此r a1ong time,it洲1be oxidized.As oi1 oxidation products are of mo1ecu1ar size,it is di節。u1t to examine them by the particle co㎜t method.The authors have investigated the co1or ofcontamina皿ts co11㏄ted on membrane舳ers by a co1orimetric device and危md that the co1or of the cont㎜inants in used oi1shows㏄れain cha工acteristics.
κ印〃b〃∫:Oi1Contamination,P航icu1ate Cont㎝linants,FiIters,Co1or Sensor
1.緒 言
潤滑油の汚染粒子による設備トラブルは極めて多 く,90%以上のトラブルが汚染粒子によるものであ ることはよく知られている川.油中の汚染物の管理 とその問題点等についてはさまざまな研究がなされ,
多数の出版物もある[2H4】.
広く一般的に使われている汚染物の分析法は,粒 子数計測法と重量法である.前者は,NAS1638回,
IS04406圧61,SAEAS4059[71やJIS B9930[8】のような粒
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大学院工学研究科物質工学専攻 機械工学科
教育地域科学部
クリーンテック工業(株)
Materia1s Engineering Course,Graduate Schoo1 Dept.ofMechanica1Engin㏄ring
Facu1ty ofEducation
子カウント法である.この方法では,粒子サイズは カウントできるが,汚染物の種類や性質は全くわか らない.後者は,ASTMD4898【91やJISB9931口01とい った重量法である.これはメンブランフィルタでサ ンプル油を濾過して,その濾過前後の重量差を測定 することで固体不純物の質量を測定する方法である.
この方法では汚染物質の総重量はわかるが,汚染物 質が何かは特定できない.NAS等級申では,粒子カ
ウント法だけでなく重量法も併用することを勧めて
いる.
近年,佐々木ら川は,溶剤抽出法にて油圧オイル 中の汚染粒子に関する研究結果を報告している.そ れによると,2年以上使用した油圧オイルでほとん
ど油に溶けない酸化生成物はトルエンで溶解するこ とができ,不溶解分が極微量の微粒子として残るこ とが示されている.このように,化学分析でよく行 われる溶剤抽出法は粒子ごとに分別できる点では優 れた方法であるが,抽出に時間を要し,有害で引火 性を伴うという欠点がある.メンブランフィルタで 供試油を濾過すると,汚染粒子の種類によって特徴
82
的に着色されるが,その色は油の色ではなく濾過に よって捕捉された0.8μm以上の油中の汚染物の色
である.
本研究で対象とするサンプルオイルは,相当汚れ ていて,粒子計測法による分析が困難である.そこ で本研究では,メンブランフィルタで捕捉された汚 染物の色を色の三原色,R(赤),G(緑),B(青),各 色256階調で表し,汚染粒子の色とサンプルオイル の性状との関係を見つけ出すために新しい汚染度分 析手法の開発を目的とした.
解像度300dpi×600dpi,入力30bits/pixel,RGB各色 1024階調(約10億色),出力24bits/pixe1,RGB各色 256階調(約1677万色)である.
Ce皿阯。se acetate 0.8μm 25m皿
H
Ce1Iu1o鴉A㏄伽ePlaim1・0μm Filter Wi血。血G㎡ds
MembramFi1値rG1assWhdow
2.測定原理および方法
本研究の測定原理は,光源から試料(メンブラン フィルタ上に捕捉した汚染粒子)に光を照射して,試 料からの反射光をR,G,Bに感度を持つ光電受光
器で受光するものである工121 工13】.メンブランフィルタ
で捕捉した汚染物の色の一例とセンサヘッド部を Fig.1に示す.本研究では,グリッド線の無い,孔径 0.8μm,フィルタ直径25㎜のセルロース・アセテ ートの白色のメンブランフィルタを利用した.セン サヘッド部は,光源LED(Light Emi廿ing Diode)から メンブランフィルタに光を照射し,フィルタ表面の 散乱光を受光素子CIS(C㎝tact Image Sensor)で受光 するように構成されている.受光素子は素子ごとに
レンズを設け,スキャナ原稿と等倍の像を
CMOS(Comp1em㎝邸Meta1Oxide Semiconductor)上 に写して光信号を電子信号に変えて読み取る.本研 究で用いたスキャナの仕様は,CIS平面走査方式で,
Fig.1Membr㎜e舳er㎝d schematic viewofsensorhead
Co鴨r
Membrane Pa眈h
λ
亨、旦
V鵜・1□[]/
・[[二]
舳・・Ψi…耐
@・[二」
晦㎜
Fig.2Experimenta1proced皿e br co1orimetricεma1ysis
妻
㌧ 1
1 2
㌣
4 5 6 7 8 9
○ 匁
10 11 12 13
14 15 16 17 18
19 20 21 23 24 25 26 27
22
?f 浴
一
Fig.3Some ex㎜p1es ofmembrane patches
3. 計測方法
サンプルオイルの濾過量は1Om7で,真空引きに よる一般的な濾過法を採用した.メンブランフィル タで濾過し,乾燥させた後,フィルタの色をスキャ ンした. 連の計測手順をFi&2に示す.本論文で は,濾過後汚染物質が捕捉されたメンブランフィル タをメンブランパッチと呼ぶ.
パーソナルコンピュータにて,メンブランパッチ の色を画像編集ソフトPhotoshop(Adobe社製)にて,
R,G,B各色256階調で表した.各色R,G,B値
はある幅を持つため,R,G,B各色の抽出にはヒストグラムを使い,中間値を採用した.
Fig.3に,ランダムに採最したメンブランパッチの 画像の一例を示す.これらの画像はメンブランパッ チ表面をスキャンした結果で,黒色,灰色,茶色,
黄色,白色とさまざまな色を示している.Fig.4は XYZ表色系の色度図であり,オイルサンプル色が座 標上にプロットされている.この色度図は,色彩工 学の分野では色を表す場合によく用いられる1141川51.
オイルサンプルの色度図による表示方法では,非常 に狭い範囲に分布が集中し,色を分析することは困 難である.また,サンプルをランダムに配列した表 現では,非常に漠然としていて油の分析を行う際は
より困難に陥る.
があることがわかる.本論文では単にR,G,Bの 数値だけでなく,新たに,R−G,G−B,R−Bの差 に注目した.ここで,R−G,G−B,R−Bの差が0 の色は必然的に黒あるいは白となる.
すべてのサンプルの,R,G,Bの値を計算し,各 産とその中の最大差の一例をTab1e2に示す.また,
すべてのサンプルをA〜K,Zのグループに分け,最 大差がOの場合をZ,(1〜10)をA,(11〜20)をBと 順にグループ分けし,最大差が(101)を超えるもの
はKとグループ分けした.本研究で測定した全サン プル中の25%程度は,Zグループに属した.つまり メンブランパッチの色は,黒あるいは白を意味する
、
03
0.7
0,6
0.5
0■
03
0−2
0,1
0
0 0.1 02 0.3 04 0.5 0∬ 0.7 0−8
,
Fig.4Chromaticity coordinate
4.計測結果および考察
4.1メンブランパッチの色
本研究で採取したサンプル数は732個で,さまざ まな工場の種々の機械から無作為に収集したもので ある.サンプルオイルの種類をTab1e lに示す.すべ てのメンブランフィルタの色は,Fig.5のように,R,
G,Bを頂点とする3次元上に各色256階調で表し
た.このように三次元図面上にプロットすると,黒と白を結ぶ対角線上と対角線から赤,黄の方向へ少 し膨らんで分布することがわかる.次に分布状態を 明らかにするために,3次元図面をA,B,Cの方向 から見た2次元の座標A:R−G,B:G−B,C:B−Rを図 示すると,Fig.6のようになる.汚染物質の色は,対 角線上から赤と黄色側に分布していることがわかる.
このように汚染物を並べることにより,不明瞭な汚 染物の色を捉えることが可能になった.Fig.7にサン プルごとのR,G,Bの値の一例を示す.この図は,
縦軸に0〜255の各色の値と,横軸にサンプルの番号 を示している.それぞれのサンプルに対して,R,G,
Bの値を縦軸上に重ねてプロットする.図から3つ の色の数値には,拡がりがある場合と近接する場合
Tab1e1S㎜maryofAm1yzedOi1Samp1es
Oi1 Number ofSam Ies
H drau1ic oi1s 405
Lubricatin 0ilS 45
Cu耐in OiIS 45
Washin Oi1S 8
Test oi1s 75
0ther 154
Tota1 732
M8記60値
{255.0.255
㎜
(。億
8I●=
(o
㌘・・
{255.0.0〕
( 5. 5.
Y61■ow
(255,255.0〕
q●■
(①.255,255,
o㎜I■
仙255.0,
Fig−53−D so1id fig㎜e and color distribution ofa皿a1yzed
membrane patches
84
G
+一1…舳 早A 国
々・m 帥
0
255 0123456789 2㎝ SpecimenNumber
153B Fig.7Examp1es ofR,G㎝d B va1ues地r some 早
102 membr㎝e patches 51
0
0 ド,本研究では,Zグループに属したサンプルはす 051−02−53204255 255204153102510
G R べて白色であった.Fig.8にZ,A〜Kのグループご
Fig.6Projectedtwo−dimensiona1distributi㎝sofR−G, とに分けたメンブランパッチの画像の一例を示す.
G.B andB.R サンプルをグループ分けした場合のメンブランパッ
Tab1e2Examp1esoftheVa1uesofR,GandBandtheirDi脆rentia1Va1ues,andGroupCode
度■
■
lI ■ 1
25
Q151051 0
一 1I
11
1 3
1
Specimen
R G B
R−G G−B R・B /Ma虹mumci価erentia1
C1assi丘。ation
@ Code
2・1 120 42 1O 78 32 11O 110
K
2−2 208 186 159 22 27 49 49
E
2・3 138 80 14 58 66 124 124
K
2・4 65 46 22 19 24 43 43 E
2・5 254 251 232 3 19 22 22 C
2・6 247 219 186 28 33 61 61
G
2・7 239 223 209 16 14 30 30 C
2・8 185 98 17 87 81 168 168
K
2・9 57 44 35 13 9 22 22 C
2 !0 255 255 255 O 0 O O Z
2・11 116 103 90 13 13 26 26 C
2・12 36 18 15 18 3 21 21 C
2−13 52 23 15 29 81 37 37
D
2114 134 113 83 21 30 51 51 F
2 15 70 36 11 34 25 59 59 F
2・16 255 235 208 20 27 47 47 E
2−17 213 155 100 58 55 113 113
K
2 18 62 31 23 31 8 39 39
D
2・19 255 255 255 O O 0 O Z
2・20 237 171 95 66 76 142 142
K
2.21 124 61 8 63 53 116 116
K
2−22 99 22 8 77 14 91 91 J
2 23 92 28 12 64 16 80 80
H
2 24 254 220 141 34 79 113 113
K
C1assification
Code Di脆rentia1
Z
A
B
C
D
d
e
G
H
h
i
j
Fig.8Appe班㎝ces ofmembrane patches in each c1assiication ofgroup code
チの色は,Aグループは,R−G,G−B,R−B値の 差が小さいので,黒と白の対角線上の色に近い色と なり,黒あるいは灰色で,Kグループは茶色であっ た.この差の値を3次元上で区別すると,最大差の 小さいものは白と黒を結ぶ対角線上がそれに近接し て分布する.また最大差の大きいものは対角線から 赤色と黄色側に膨らんで分布する傾向を示した.
4.2酸化生成物の色
酸化生成物がトルエンに溶解することはよく知ら れている工151.酸化生成物の色を知るために,サンプ ルオイルを任意に集め,その詳細を調べた.まず,
メンブランパッチをビーカーに移し,トルエン1OmJ を加えて浸した.次に,フィルタ内部へ浸透した汚 染物も完全に溶解させるために,超音波洗浄機で洗 浄した.最後に,トルエンで溶解した溶液をもう一 度同じメンブランフィルタで濾過した.トルエンで
溶解したものが酸化生成物で再度濾過した場合,フ ィルタを通過する.しかしトルエンに不溶解なもの はフィルタで捕捉されるのである.つまりトルエン 洗浄前後の色の違いは,酸化生成物が関与している
ことになる.
トノレエンでの洗浄前と洗浄後のメンブランフィル タの画像をFig.9に,その詳細をTab1e3に示す.茶 系色はR値が高くB値が低くなり,その結果として R−B値が大きくなる.また男系色はR,G,Bすべ
ての値が低く,結果としてR−G,G−B,R−Bの
値も低くなる.茶系色のメンブランパッチをトルエンで洗浄すると,白色になりR−G,G−B,R−B
の値は0になる.このことから茶系色はトルエンに 溶解する酸化生成物であると言える.男系色のメン ブランパッチはトルエンで洗浄後は灰色となる.こ のことからパッチに存在するものはトルエンに溶解 する酸化生成物とオイル中に存在する灰色の物質で86
騎 一 ・ ・
噛
繋
灘
鱗一
・ B
鑑
麗, 鰯鰯
鱗
鱗
融,
搬 .
Fig.9Co1or ofmembr㎝e patches bebre and aier washing with to1uene
Tab1e3 C1assification ofOi1s shown in Fig.9
S ecimen Oi1
5−1 Hydraulicoi1
5−2 Hydrau1icoi1
5−3 Hydrau1icoi1
5−4 Lubricatin oi1
5−5 H draulic oi1
5−6 Hydrau1ic oi1used without丘Iter 5−7 Hydrau1ic oi1used without fi1ter 5−8 Hydraulic oi1他r ress machine 5−9 Hydrau1ic oi1br ress machine 5−10 Hydrau1ic oi1forconcrete mixerused
@ with a coarse filter
5−11 Kerosene used without i1ter 5−12 Kerosene used with i1ter 5−13 Hydrau1ic oiI地rdie−castin machine
あると言える.トルエン洗浄結果の一例をFig.10に 示す.この図からすべての汚染物質を含むオイルに はトルエンで溶解する酸化生成物が存在すると言え る.また,フィルタが無い場合やキメの粗いフィル タ中を循環した,現場のオイルにはトノレエンに溶解 する酸化生成物とトルエンに溶解しない灰色の物質 が含まれることがわかった、
5.緒 言
1.油中汚染物を,メンブランパッチの色を解析す
ることで簡易に測定する分析法を開発し,実際に使 用された多品種のサンプルオイルで実証した.
2.メンブランフィルタで集められた汚染物は,R,
G,Bの三次元上で黒色と白色の対角線上より赤色 と黄色よりに少し放物線を描くように拡がって分布
する.
3.メンブランフィルタ上の黒色の汚染物に対する R,G,Bの値はそれぞれが近づくような値を示し,
茶色の場合のR,G,Bの値はそれぞれが分散する.
4.メンブランフィルタ上の黒色と茶色の汚染粒子 をトルエンで洗浄すると,黒色の場合は少し灰色の 物質が残り,茶色の場合はほとんどが溶解して何も 残らないか,ほんのわずかに灰色の物質が残った.
すなわちここで溶解した物質が酸化生成物である.
(Pre88ureo1・Lubhcatingoi1)
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一手
11叫
一半咄 敲ay
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